(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】燃料タンクの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/067 20060101AFI20221104BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B60K15/067
F02M37/00 301D
(21)【出願番号】P 2019042126
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】水谷 健志
(72)【発明者】
【氏名】梅村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】濱野 進太郎
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-34700(JP,A)
【文献】実開昭57-80322(JP,U)
【文献】特開2011-93349(JP,A)
【文献】特開2011-194916(JP,A)
【文献】特開2014-223877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0201124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00- 15/10
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる燃料タンクを車体に取付ける燃料タンクの取付け構造であって、
燃料を貯留するタンク本体に一体に成形される固定片と、
該固定片に設けられた貫通孔に挿通される筒本体と、前記固定片における前記車体とは反対側に配置され、前記筒本体の外周からその径方向外側に延設されるフランジ部とを有する金属カラーと、
前記金属カラーに挿通されて、前記車体に前記タンク本体を固定する締結部材とを備え、
前記金属カラーの前記フランジ部は、
前記固定片における前記車体とは反対側の面に当接される当接部と、
前記当接部の外周からその径方向外側に、前記固定片における前記車体とは反対側から離れる方向に傾斜して延設される傾斜部を有する外側フランジ部を備えていることを特徴とする燃料タンクの取付構造。
【請求項2】
前記傾斜部は、直線形状または/及び凸状の弧を有する形状である請求項1に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項3】
樹脂からなる燃料タンクを車体に取付ける燃料タンクの取付け構造であって、
燃料を貯留するタンク本体に一体に成形される固定片と、
該固定片に設けられた貫通孔に挿通される筒本体と、前記固定片における前記車体とは反対側に配置され、前記筒本体の外周からその径方向外側に延設されるフランジ部とを有する金属カラーと、
前記金属カラーに挿通されて、前記車体に前記タンク本体を固定する締結部材とを備え、
前記固定片は、車体下方向、若しくは車体上下方向において、前記貫通孔近傍に肉厚部を有し、
前記金属カラーの前記フランジ部は、
前記固定片の前記肉厚部に当接される当接部と、
前記当接部の外周からその径方向外側に延設される外側フランジ部を有することを特徴とする燃料タンクの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐炎性に優れた、車体に燃料タンクを取付ける燃料タンクの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクとして、軽量化と車内空間の拡大に寄与する樹脂製のものが利用されている。この樹脂製のタンクを車体に取付ける構造として、
図10及び
図11に示すように、燃料を貯留する燃料タンク100のタンク本体200に複数の支持ブラケット300を一体に成形し、支持ブラケット300と車体500の固定箇所にボルト700を挿通し、車体500に固着されるナット800に締め付けて固定する構造が開示されている(特許文献1の
図4)。支持ブラケット300は、燃料タンク100の側面部から水平方向に突出して形成され、ボルト700の挿通孔(ボルト孔)310には、支持ブラケット300を貫通する金属カラー400が取付けられている。(特許文献1)
【0003】
金属カラー400は、
図11(
図10のB部拡大図)に示すように、円筒状の筒本体410と、筒本体410の外周からその径方向外側に延設される円環状のフランジ部420とからなる鍔付金具である。フランジ部420は、支持ブラケット300における車体500の固定箇所とは反対側の面(車両上下方向の下面)に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の樹脂製のタンクを車体に取付ける構造において、燃料タンク100本体の下方が炎に曝された場合、この炎によって、フランジ部420が過熱されて、支持ブラケット300を構成する樹脂が軟化したり、溶融したりして、車体500に対する燃料タンク100の固定状態が緩んだり、溶融が進むと最悪の場合、燃料タンク100が落下する可能性がある。
【0006】
一方、上記の課題発生に対し、下面を覆う熱害プロテクタ等を設けて対応することが考えられるが、熱害プロテクタ設置スペースが必要となり、また、熱害プロテクタ設置に伴う重量増やコスト増になる。
【0007】
そこで、本発明は、耐炎性に優れた、車体に燃料タンクを取付ける燃料タンクの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、樹脂からなる燃料タンクを車体に取付ける燃料タンクの取付け構造であって、燃料を貯留するタンク本体に一体に成形される固定片と、固定片に設けられた貫通孔に挿通される筒本体と、固定片における車体とは反対側に配置され、筒本体の外周からその径方向外側に延設されるフランジ部とを有する金属カラーと、金属カラーに挿通されて、車体にタンク本体を固定する締結部材とを備え、金属カラーのフランジ部は、固定片における車体とは反対側の面に当接される当接部と、当接部の外周からその径方向外側に、固定片における車体とは反対側から離れる方向に延設される傾斜部を有する外側フランジ部を備えていることを特徴とする燃料タンクの取付構造である。
【0009】
請求項1の本発明では、金属カラーのフランジ部は、固定片における車体とは反対の面に当接される当接部と、当接部から外周からその径方向外側に、固定片における車体とは反対側から離れる方向に延設される傾斜部を有する外側フランジ部を備えているので、固定片において当接していない外側フランジ部により、筒本体近傍から少し離れた領域が炎に直接曝されることを防止することができる。
【0010】
燃料タンク本体の下方が炎に曝された場合、この炎によって、金属カラーが過熱され、この熱により、金属カラーのフランジ部の当接部に当接している固定片が軟化・溶融され、固定片は、燃料タンクの重さにより下方に変形するが、金属カラーのフランジ部は、外側フランジ部を備えているので、固定片のフランジ部との接触部が、当接部の外周からその径方向外側に形成されている外側フランジ部に移動する。
【0011】
その結果、固定片と金属カラーのフランジ部とが一カ所で当接し続けることを防止することができ、例え、金属カラーのフランジ部の当接部に当接している固定片が溶融し、また、溶融し続けた場合であっても、燃料タンクの落下を遅延させることができ、耐炎性を向上させることができる。また、熱害プロテクタ設置スペースが不要となり、また、熱害プロテクタ設置に伴う重量増やコスト増を抑制することができる。
【0012】
請求項2の本発明は、傾斜部は、直線形状または/及び凸状の弧を有する形状である燃料タンクの取付構造である。請求項2の本発明では、傾斜部は、直線形状または/及び凸状の弧を有する形状であるので、燃料が貯留されている燃料タンクの自重により、固定片が下方に変形を生じる際に、固定片と傾斜部の当接部分が、段階的若しくは連続的に外側フランジ部(燃料タンクのタンク本体側)に移動するので、一カ所で溶融し続けることを防止し、燃料タンクの落下を遅延させることができ、耐炎性を向上させることができる。なお、弧は、円の一部であってもよいし、楕円の一部であってもよい。また、直線と弧を組み合わせてもよい。
【0013】
請求項3の本発明は、樹脂からなる燃料タンクを車体に取付ける燃料タンクの取付け構造であって、燃料を貯留するタンク本体に一体に成形される固定片と、固定片に設けられた貫通孔に挿通される筒本体と、固定片における車体とは反対側に配置され、筒本体の外周からその径方向外側に延設されるフランジ部とを有する金属カラーと、金属カラーに挿通されて、車体に前記タンク本体を固定する締結部材とを備え、固定片は、車体下方向、若しくは車体上下方向において、貫通孔近傍に肉厚部を有し、金属カラーのフランジ部は、固定片の肉厚部に当接される当接部と、当接部の外周からその径方向外側に延設される外側フランジ部を有することを特徴とする燃料タンクの取付構造である。
【0014】
燃料タンク本体の下方が炎に曝された場合、この炎によって、金属カラーが過熱され、この熱により、金属カラーのフランジ部の当接部に当接している固定片の肉厚部が軟化・溶融され、固定片は、燃料タンクの重さにより下方に変形する。請求項3の本発明では、固定片は、車体下方向、若しくは車体上下方向において、貫通孔近傍に肉厚部を有し、金属カラーのフランジ部は、固定片の肉厚部に当接される当接部と、当接部の外周からその径方向外側に延設される外側フランジ部を有しているので、変形した固定片が、さらに当接部の外周からその径方向外側に形成されている外側フランジ部(燃料タンクのタンク本体側)に当接する。
【0015】
その結果、金属カラーのフランジ部と固定片との接触部が燃料タンクの本体側に移動するので、固定片と金属カラーのフランジ部とが一カ所で当接し続けることを防止することができ、例え、金属カラーのフランジ部の当接部に当接している固定片が溶融し、また、溶融し続けた場合であっても、燃料タンクの落下を遅延させることができ、耐炎性を向上させることができる。また、熱害プロテクタ設置スペースが不要となり、また、熱害プロテクタ設置に伴う重量増やコスト増を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記の燃料タンクの取付構造において、車両下方から見ると、固定片における筒本体近傍は、金属カラーのフランジ部に覆われている。そして、フランジ部においては、燃料タンクの固定片の車体とは反対側の面は、フランジ部の当接部と当接し、外側フランジ部とは当接していない。
したがって、外側フランジ部は、固定片における筒本体近傍から少し離れた領域が炎に直接曝されることを防止することができる。
【0017】
また、外側フランジ部は、固定片に当接していないので、炎によって、金属カラーが過熱され、この熱により、金属カラーのフランジ部の当接部に当接している固定片が軟化・溶融され、固定片が、燃料タンクの重さにより下方に変形しても、変形した固定片が、さらに当接部の外周からその径方向外側に形成されている外側フランジ部に移動する。
その結果、金属カラーのフランジ部の当接部に当接している固定片の軟化が溶融し、また、溶融し続けた場合であっても、固定片は依然として外側フランジ部と当接しており、すなわち、フランジに対する固定片の当接部分が当接部から外側フランジ部(燃料タンクのタンク本体側)に移動することにより、燃料タンクの落下を遅延させることができ、耐炎性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車体に燃料タンクが取付けられた状態を示す車両下方から見た概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を示す燃料タンクの取付構造の車両下方から見た概略図であり、
図1におけるA部拡大図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態であり、燃料タンクを車体に取付けたときの燃料タンクの取付構造の概略断面図である(
図2のX-X断面)。
【
図4】本発明の第1の実施形態であり、燃料タンクの固定片が変形したときの燃料タンクの取付構造の概略断面図である(
図2のX-X断面)。
【
図5】本発明の第1の実施形態であり、燃料タンクの固定片の変形がさらに進行したときの燃料タンクの取付構造の概略断面図である(
図2のX-X断面)。
【
図6】本発明の第2の実施形態を示す燃料タンクの取付構造の車両下方から見た概略図であり、
図1におけるA部拡大図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態であり、燃料タンクを車体に取付けたときの燃料タンクの取付構造の概略断面図である(
図6のX-X断面)。
【
図8】本発明の第2の実施形態であり、燃料タンクの固定片が変形したときの燃料タンクの取付構造の概略断面図である(
図6のX-X断面)。
【
図9】本発明の第2の実施形態であり、燃料タンクの固定片の変形がさらに進行したときの燃料タンクの取付構造の概略断面図である(
図6のX-X断面)。
【
図10】従来の燃料タンクが車体に取付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
図1から
図5に基づき、本発明の第1の実施形態の燃料タンク1の取付構造について説明する。
燃料タンク1は
図1に示すように、タンク本体2とタンク本体2の側面部から外側に突出し、車体5への固定に使用される平板状の固定片3を備えている。固定片3には、後に詳述する金属カラー4の筒本体41が挿通される貫通孔31(
図3)が形成されている。そして、燃料タンク1は、詳細は図示しないが、車両前後方向に所定の間隔をあけて配置されるクロスメンバ6、6間に配置され、
図3に示すように、固定片3の貫通孔31に金属カラー4の筒本体41を車体5の下方から挿通した後、締結部材として金属製のボルト7とナット8を使用し、ボルト7を、座金9を介して、金属カラー4の筒本体41に車体5の下方から挿入し、ナット8によって、固定片3が各クロスメンバ6、6の所定の固定箇所に取付けられて固定される。
【0020】
なお、
図1に示す燃料タンク1は、タンク本体2が平面形状で長方形であり、車両の前後および車幅方向に線対称な形状に描かれているが、平面形状は適宜選択でき、非対称な形状とすることもできる。
【0021】
また、固定片3の形状も適宜選択でき、数、大きさや厚さについても燃料タンク1が固定可能な範囲で適宜選択できる。なお、固定片3の厚さは、厚いほど、炎に曝されても軟化・溶融し難く、耐炎性に優れるが、重量の増加を招く。
【0022】
燃料タンク1は、エンジンに供給するガソリン等の燃料を貯留する容器であり、高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂からなる成形体である。
【0023】
金属カラー4は、燃料タンク1を構成する樹脂より耐炎性、耐熱性に優れる、例えば、鉄、鉄合金やステンレス等の金属からなる。金属カラー4は筒本体41と筒本体41下方であって、その筒本体41の径方向外側に拡がるフランジ部42を備えている。
図2において、金属カラー4のフランジ部42は、円形であるが、例えば、多角形状等異なる形状であってもよい。
【0024】
図3に示すように、フランジ部42の筒本体41側には、固定片3の車体5とは反対側の面に当接する当接部43と、当接部43の外周からその径方向外側に拡がり、その拡がりが固定片3における車体5とは反対側から離れる方向である傾斜部45が形成されている。さらに、傾斜部45の当接部43とは反対側の端部には、その径方向外側に拡がる鍔部46が形成されている。傾斜部45または傾斜部45と鍔部46が外側フランジ部44を形成する。なお、鍔部46は、本件発明の趣旨からは、必ずしも必要ではないが、プレス加工等で傾斜部45を精度よく形成する観点から設けられている。
【0025】
図2および
図3に示すように、金属カラー4のフランジ部42は、固定片3の下方を覆う面積が大きく形成されているので、特に、固定片3における金属カラー4の筒本体41近傍領域が炎に曝されることを防止することができる。
【0026】
次に、車体5の下方が炎に曝されたときの、固定片3の動きと、金属カラー4のフランジ部42の外側フランジ部44の働きについて、
図4と
図5に基づいて説明する。
車体5の下方が炎に曝され、金属カラー4のフランジ部42が熱せられると、固定片3のフランジ部42と当接している、すなわち、フランジ部42の当接部43における固定片3の樹脂が軟化・溶融し始める。その結果、燃料が貯留されている燃料タンク1の自重により、固定片3が下方に変形を生じる。
【0027】
そのとき、フランジ部42には、当接部43の外周からその径方向外側に拡がり、その拡がりが固定片3における車体5とは反対側から離れる方向である傾斜部45が形成されているので、
図4に示すように、固定片3とフランジ部42との当接部分が、傾斜部45の方向に移動する。一方、固定片3のタンク本体2の反対側では、金属カラー4の筒本体41近傍の樹脂は溶融するが、燃料タンク1の自重により、固定片3が下方に変形することに伴い、フランジ部42から離れる、すなわち、当接しない状態になる。
【0028】
さらに、金属カラー4のフランジ部42が熱せられると、固定片3のフランジ部42と当接している、すなわち、フランジ部42の当接部43および傾斜部45の一部における固定片3の樹脂が軟化・溶融し始める。その結果、燃料が貯留されている燃料タンク1の自重により、固定片3がさらに下方に変形を生じる。
【0029】
その結果、
図5に示すように、固定片3と金属カラー4のフランジ部42の当接部分は、傾斜部45と鍔部46方向に、
図4からさらに外側(燃料タンク1のタンク本体2側)に移動することになる。また、固定片3における金属カラー4の筒本体41近傍の樹脂がフランジ部42から離れる現象は顕著になる。
【0030】
したがって、金属カラー4のフランジ部42と固定片3との当接部分が、傾斜部45を設けることにより、燃料タンク1の自重に伴う固定片3の変形に伴い、傾斜部45側(燃料タンク1のタンク本体2側)に移動することになるので、一カ所で溶融し続けることを防止し、燃料タンク1の落下を遅延させることができ、耐炎性を向上させることができる。また、熱害プロテクタ設置スペースが不要となり、熱害プロテクタ設置に伴う重量増やコスト増を抑制することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図1、
図2、
図6から
図9に基づき、本発明の第2の実施形態の燃料タンク1の取付構造について説明する。本発明の第2の実施形態において、上述の第1の実施形態と異なる点は、第1に、固定片3に関し、固定片3は、車体下方向において、貫通孔31近傍に肉厚部32を有している点、第2に、金属カラー4のフランジ部42は、固定片3の肉厚部32における車体5とは反対側の面に当接される当接部43と、当接部43の外周からその径方向外側に延設される外側フランジ部44を有しているが、外側フランジ部44には、傾斜部45が形成されていない点にある。なお、本第2の実施形態に関し、使用する燃料タンク1および固定片3の車体5のクロスメンバ6への取付方法は、第1の実施形態と同じである。また、肉厚部32は、車体上下方向に形成してもよい。
【0032】
図7に示すように、固定片3の貫通孔31に金属カラー4の筒本体41を車体5の下方から挿通した後、金属製のボルト7を、座金9を介して、金属カラー4の筒本体41に車体5の下方から挿入し、ナット8によって、固定片3が各クロスメンバ6、6の所定の固定箇所に取付けられて固定される。このとき、金属カラー4のフランジ部42には、固定片3の肉厚部32が当接する。ここで、この肉厚部32が当接したフランジ部42の一部分をフランジ部42の当接部43といい、他の部分をフランジ部42の外側フランジ部44という。
【0033】
次に、車体5の下方が炎に曝されたときの、固定片3の動きと、金属カラー4のフランジ部42の外側フランジ部44との関係について、
図8と
図9に基づいて説明する。
車体5の下方が炎に曝され、金属カラー4のフランジ部42が過熱されると、固定片3のフランジ部42と当接している部分、すなわち、フランジ部42の当接部43における固定片3の肉厚部32の樹脂が軟化・溶融し始める。その結果、燃料が貯留されている燃料タンク1の自重により、固定片3が下方に変形を生じる。
【0034】
そのとき、
図8に示すように、固定片3とフランジ部42との当接部分が、燃料タンク1のタンク本体2側の外側フランジ部44方向に移動する。一方、固定片3のタンク本体2の反対側では、金属カラー4の筒本体41近傍の樹脂は溶融するが、燃料タンク1の自重により、固定片3が下方に変形することに伴い、フランジ部42から離れる、すなわち、当接しない状態になる。
【0035】
さらに、金属カラー4のフランジ部42が熱せられると、固定片3のフランジ部42と当接している樹脂が軟化・溶融し始める。その結果、燃料が貯留されている燃料タンク1の自重により、固定片3がさらに下方に変形を生じる。
【0036】
その結果、
図9に示すように、固定片3と金属カラー4のフランジ部42の当接部分は、外側フランジ部44方向に、
図8からさらに外側(燃料タンク1のタンク本体2側)に移動することになる。また、固定片3における金属カラー4の筒本体41近傍の樹脂がフランジ部42から離れる現象は顕著になる。
【0037】
したがって、金属カラー4のフランジ部42と固定片3との当接部分が、固定片3の貫通孔31近傍に肉厚部32設けること、金属カラー4のフランジ部42において、固定片3の肉厚部32と当接部43の外周からその径方向外側に延設される外側フランジ部44を有していることにより、燃料タンク1の自重に伴う固定片3の変形に伴い、外側フランジ部44側(燃料タンク1のタンク本体2側)に移動することになるので、一カ所で溶融し続けることを防止し、燃料タンク1の落下を遅延させることができ、耐炎性を向上させることができる。また、熱害プロテクタ設置スペースが不要となり、熱害プロテクタ設置に伴う重量増やコスト増を抑制することができる。
【0038】
本発明の燃料タンクの取付構造は、従来の金属カラーを有する場合に対して、金属カラーの形状変更という単純な構成であり、部品点数を増加することなく耐炎性を高められる上に、重量の増加を非常に小さくできる。また、コストの増大も抑制することができる。さらに、従来の金属カラーを有する場合と燃料タンクの取付作業が実質的に同じであるので、生産性の低下を生じることもない。
【0039】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0040】
上記の第1の実施形態では、外側フランジ部44の傾斜部45は、
図3に示すように、一本の直線形状であったが、複数の直線形状により、段階的に固定片における車体とは反対側から離れる度合いを大きくするようにしてもよい。また、階段状に固定片における車体とは反対側から離れる度合いを大きくするようにしてもよい。
【0041】
上記の第2の実施形態では、外側フランジ部44には、傾斜部45が形成されていなかったが、第1の実施形態と同様に、外側フランジ部44に傾斜部45(上記段落の構成を含む)を形成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 燃料タンク
2 タンク本体
3 固定片
31 貫通孔
32 肉厚部
4 金属カラー
41 筒本体
42 フランジ部
43 当接部
44 外側フランジ部
45 傾斜部
46 鍔部
5 車体
6 クロスメンバ
7 ボルト
8 ナット
9 座金