(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221104BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221104BHJP
E02F 3/85 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
E02F9/20 M
G05D1/02 H
E02F9/20 N
E02F3/85 D
E02F3/85 B
(21)【出願番号】P 2018065143
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 志尚
(72)【発明者】
【氏名】久禮 一樹
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05924493(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076223(US,A1)
【文献】特開平02-221527(JP,A)
【文献】特開2018-016973(JP,A)
【文献】特開平02-266070(JP,A)
【文献】特開平06-081361(JP,A)
【文献】特開2002-352224(JP,A)
【文献】国際公開第2012/074838(WO,A2)
【文献】米国特許第08639393(US,B2)
【文献】国際公開第2015/181990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
G05D 1/02
E02F 3/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、前記作業機の目標軌跡を示す第1目標設計地形を決定し、
少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、前記第1目標設計地形に対して傾斜しており、前記作業機の目標軌跡を示す第2目標設計地形を決定し、
前記第1目標設計地形が前記第2目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、前記第1目標設計地形に従って前記作業機を動作させ、前記第2目標設計地形が前記第1目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、前記第2目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成
し、
前記第2目標設計地形は、退出路を含み、
前記コントローラは、
作業範囲を示す作業範囲データを取得し、
前記作業範囲の終端を通るように前記退出路を決定する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1目標設計地形、及び、前記第2目標設計地形に基づいて、カットの位置を決定し、
前記カットの位置から前記第1目標設計地形、及び、前記第2目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記第2目標設計地形は
、前記作業車両の進行方向において、前方且つ下方に向かって傾斜した進入路を含み、
前記第1目標設計地形は、前記退出路または前記進入路と交差する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
最終設計地形および鉱石層の終点の位置を取得し、
前記終点から、または前記終点よりも外側から、前記最終設計地形に対して所定角度で傾斜した方向に延びるように、前記退出路を決定する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
前記第2目標設計地形は、前記作業車両の進行方向において、前方且つ下方に向かって傾斜した進入路
を含み、
前記退出路は、前記作業車両の進行方向において、進入路よりも前方に位置し、前方且つ上方に向かって傾斜し
ており、
前記進入路の目標傾斜角は、前記退出路の目標傾斜角よりも大きい、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
複数の前記第1目標設計地形を決定し、
前記複数の第1目標設計地形とそれぞれ交差するように前記第2目標設計地形を決定する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項7】
前記第2目標設計地形の目標傾斜角を示す操作信号を出力する入力装置をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力装置から前記操作信号を受信し、
前記第2目標設計地形の傾斜角度が前記目標傾斜角となるように、前記第2目標設計地形を決定する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項8】
作業機を有する作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、前記作業機の目標軌跡を示す第1目標設計地形を決定することと、
少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、前記第1目標設計地形に対して傾斜しており、前記作業機の目標軌跡を示す第2目標設計地形を決定することと、
前記第1目標設計地形が前記第2目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、前記第1目標設計地形に従って前記作業機を動作させ、前記第2目標設計地形が前記第1目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、前記第2目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成すること
と、
前記第2目標設計地形は、退出路を含み、
作業範囲を示す作業範囲データを取得することと、
前記作業範囲の終端を通るように前記退出路を決定すること、
を備える方法。
【請求項9】
前記第1目標設計地形、及び、前記第2目標設計地形に基づいて、カットの位置を決定することをさらに備え、
前記指令信号を生成することは、前記カットの位置から前記第1目標設計地形、及び、前記第2目標設計地形に従って前記作業機を動作させる指令信号を生成することを含む、
請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2目標設計地形は
、前記作業車両の進行方向において、前方且つ下方に向かって傾斜した進入路を含む、
請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
最終設計地形および鉱石層の終点の位置を取得することと、
前記終点から、または前記終点よりも外側から、前記最終設計地形に対して所定角度で傾斜した方向に延びるように、前記退出路を決定すること、
をさらに備える、
請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記第2目標設計地形は、前記作業車両の進行方向において、前方且つ下方に向かって傾斜した進入路
を含み、
前記退出路は、前記作業車両の進行方向において、進入路よりも前方に位置し、前方且つ上方に向かって傾斜し
ており、
前記進入路の目標傾斜角は、前記退出路の目標傾斜角よりも大きい、
請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
複数の前記第1目標設計地形が決定され、
前記複数の第1目標設計地形とそれぞれ交差するように前記第2目標設計地形が決定される、
請求項
8に記載の方法。
【請求項14】
前記第2目標設計地形の目標傾斜角を示す操作信号を受信することと、
前記第2目標設計地形の傾斜角度が前記目標傾斜角となるように、前記第2目標設計地形を決定すること、
をさらに備える請求項
8に記載の方法。
【請求項15】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、前記作業機の目標軌跡を示す第1目標設計地形を決定し、
少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、前記第1目標設計地形に対して傾斜しており、前記作業機の目標軌跡を示す退出路を決定し、
前記現況地形よりも下方の領域において前記作業機を前記退出路に沿わせて動作させるとともに、前記現況地形よりも上方の領域において前記退出路に沿うように前記作業機を動作させる指令信号を生成
し、
作業範囲を示す作業範囲データを取得し、
前記作業範囲の終端を通るように前記退出路を決定する、
作業車両の制御システム。
【請求項16】
前記コントローラは、
前記第1目標設計地形、および前記退出路に基づいてカットのパスを決定し、
前記作業機を前記パスに沿うように動作させる指令信号を生成する、
請求項
15に記載の作業車両の制御システム。
【請求項17】
前記コントローラは、
最終設計地形および鉱石層の終点の位置を取得し、
前記終点から、または前記終点よりも外側から、前前記最終設計地形に対して所定角度で傾斜した方向に延びるように、前記退出路を決定する、
請求項
15に記載の作業車両の制御システム。
【請求項18】
前記退出路の目標傾斜角を示す操作信号を出力する入力装置をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力装置から前記操作信号を受信し、
前記退出路の傾斜角度が前記目標傾斜角となるように、前記退出路を決定する、
請求項
15に記載の作業車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の制御システム、方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業車両を自動的に制御するシステムが提案されている。例えば、特許文献1のシステムでは、コントローラが、作業現場での作業機の動くべき目標プロファイルを作業現場の地形などから予め設定する。コントローラは、作業現場の現況地形上の開始位置から掘削を開始し、目標プロファイルに沿って作業機を動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシステムでは、1番目の目標プロファイルの掘削が完了したときに、最終的な目標位置まで作業機が到達していない場合には、1番目の目標プロファイルよりも下方に位置する2番目の目標プロファイルを設定し、その2番目の目標プロファイルに対して掘削が行われることがある。また、2番目の目標プロファイルの掘削が完了したときに、最終的な目標位置まで作業機が到達していない場合には、2番目の目標プロファイルよりも、さらに下方に位置する3番目の目標プロファイルを設定し、その3番目の目標プロファイルに対して掘削が行われることがある。そして、最終的な目標位置まで作業機が到達するまで、目標プロファイルに対する掘削が繰り返される。
【0005】
上記のように掘削が何度も繰り返されると、作業車両が掘削を行う作業位置は、より深くなる。そのため、作業位置への進入、或いは作業位置からの退出が困難になる。その場合、作業効率が低下する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、作業車両の自動制御において作業効率の低下を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、作業機を有する作業車両の制御システムであって、コントローラを備える。コントローラは、以下の処理を実行するようにプログラムされている。コントローラは、作業機の目標軌跡を示す第1目標設計地形を決定する。第1目標設計地形は、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置する。コントローラは、作業機の目標軌跡を示す第2目標設計地形を決定する。第2目標設計地形は、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、第1目標設計地形に対して傾斜している。コントローラは、第1目標設計地形が第2目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、第1目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成する。コントローラは、第2目標設計地形が第1目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、第2目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成する。
【0008】
第2の態様は、作業機を有する作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、以下の処理を備える。第1の処理は、作業機の目標軌跡を示す第1目標設計地形を決定することである。第1目標設計地形は、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置する。第2の処理は、作業機の目標軌跡を示す第2目標設計地形を決定することである。第2目標設計地形は、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、第1目標設計地形に対して傾斜している。第3の処理は、第1目標設計地形が第2目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、第1目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成することである。第4の処理は、第2目標設計地形が第1目標設計地形よりも上方に位置している範囲では、第2目標設計地形に従って作業機を動作させる指令信号を生成することである。
【0009】
第3の態様は、作業車両であって、作業機と、作業機を制御するコントローラとを備える。コントローラは、以下の処理を実行するようにプログラムされている。コントローラは、作業機の目標軌跡を示す第1目標設計地形を決定する。第1目標設計地形は、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置する。コントローラは、作業機の目標軌跡を示す退出路を決定する。退出路は、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置し、第1目標設計地形に対して傾斜している。コントローラは、現況地形よりも下方の領域において作業機を退出路に沿わせて動作させるとともに、現況地形よりも上方の領域において退出路に沿うように、作業機を動作させる指令信号を生成する。
【発明の効果】
【0010】
第1及び第2の態様によれば、第1目標設計地形と共に、第1目標設計地形に対して傾斜した第2目標設計地形が決定される。従って、第2目標設計地形に従って現況地形を掘削することで、作業車両の作業位置への進入路、或いは退出路を確保することができる。それにより、作業効率の低下を抑えることができる。第3の態様によれば、第1目標設計地形と共に、第1目標設計地形に対して傾斜した退出路が決定される。従って、退出路に従って現況地形を掘削することで、作業車両の作業位置からの退出路を確保することができる。それにより、作業効率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
【
図2】作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
【
図4】作業車両の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【
図5】最終設計地形、現況地形、及び第1、第2目標設計地形の一例を示す図である。
【
図10】掘削された現況地形の一例を示す図である。
【
図11】掘削された現況地形の一例を示す図である。
【
図12】制御システムの第1変形例に係る構成を示すブロック図である。
【
図13】制御システムの第2変形例に係る構成を示すブロック図である。
【
図14】第1目標設計地形の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る作業車両について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態に係る作業車両1は、ブルドーザである。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0013】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、
図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。
【0014】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。
【0015】
リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Xを中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。リフトフレーム17は、走行装置12に取り付けられてもよい。
【0016】
リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。
【0017】
図2は、作業車両1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。
図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0018】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0019】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0020】
制御システム3は、入力装置25と、コントローラ26と、記憶装置28と、制御弁27とを備える。入力装置25は、運転室14に配置されている。入力装置25は、後述する作業車両1の自動制御の設定を行うための装置である。入力装置25は、オペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。入力装置25の操作信号は、コントローラ26に出力される。
【0021】
入力装置25は、例えば、タッチパネル式のディスプレイを含む。ただし、入力装置25は、タッチパネルに限らず、ハードウェアキーを含んでもよい。入力装置25は、作業車両1から離れた場所(例えば、コントロールセンタ)に配置されてもよい。オペレータは、コントロールセンタにある入力装置25から無線通信を介して作業車両1を操作してもよい。
【0022】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)を含む。コントローラ26は、入力装置25から操作信号を取得する。なお、コントローラ26は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。コントローラ26は、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御することで、作業車両1を走行させる。コントローラ26は、制御弁27を制御することで、ブレード18を上下に移動させる。
【0023】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、ブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19が制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0024】
制御システム3は、作業機センサ29を備える。作業機センサ29は、作業機13の位置を検出し、作業機13の位置を示す作業機位置信号を出力する。作業機センサ29は、作業機13の変位を検出する変位センサであってもよい。詳細には、作業機センサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。
図3に示すように、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。作業機センサ29は、作業機13の回転角度を直接検出する回転センサであってもよい。
【0025】
図3は、作業車両1の構成を示す模式図である。
図3では、作業機13の基準位置が二点鎖線で示されている。作業機13の基準位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の基準位置からの角度である。
【0026】
図2に示すように、制御システム3は、位置センサ31を備えている。位置センサ31は、作業車両1の位置を測定する。位置センサ31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ32と、IMU 33と、を備える。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。例えばGNSSレシーバ32のアンテナは、運転室14上に配置される。GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナの位置を演算して車体位置データを生成する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置データを取得する。コントローラ26は、車体位置データにより、作業車両1の進行方向と車速とを得る。
【0027】
車体位置データは、アンテナ位置のデータでなくてもよい。車体位置データは、作業車両1内、或いは、作業車両1の周辺において、アンテナとの位置関係が固定されている任意の場所の位置を示すデータであってもよい。
【0028】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角データを取得する。
【0029】
コントローラ26は、リフトシリンダ長Lと、車体位置データと、車体傾斜角データとから、刃先位置PBを演算する。
図3に示すように、コントローラ26は、車体位置データに基づいて、GNSSレシーバ32のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいて、リフト角θliftを算出する。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法データに基づいて、GNSSレシーバ32に対する刃先位置PBのローカル座標を算出する。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32に対する作業機13の位置を示す。コントローラ26は、GNSSレシーバ32のグローバル座標と刃先位置PBのローカル座標と車体傾斜角データとに基づいて、刃先位置PBのグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置PBのグローバル座標を刃先位置データとして取得する。
【0030】
記憶装置28は、例えばメモリーと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサによって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0031】
記憶装置28は、設計地形データと作業現場地形データとを記憶している。設計地形データは、最終設計地形を示す。最終設計地形は、作業現場の表面の最終的な目標形状である。設計地形データは、例えば、三次元データ形式の土木施工図である。作業現場地形データは、作業現場の広域の地形を示す。作業現場地形データは、例えば、三次元データ形式の現況地形測量図である。作業現場地形データは、例えば、航空レーザ測量で得ることができる。
【0032】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業現場の現況地形を示す。作業現場の現況地形は、作業車両1の進行方向に沿う領域の地形である。現況地形データは、作業現場地形データと上述の位置センサ31から得られる作業車両1の位置と進行方向とからコントローラ26での演算により取得される。現況地形データは、車載されたライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)などによる現況地形の測距から取得されてもよい。
【0033】
コントローラ26は、現況地形データと、設計地形データと、刃先位置データとに基づいて、作業機13を自動的に制御する。なお、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。作業車両1の走行は、コントローラ26によって自動的に制御されてもよい。例えば、作業車両1の走行制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。或いは、走行制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業車両1の走行は、オペレータによる手動操作によって行われてもよい。
【0034】
以下、コントローラ26によって実行される、掘削における作業車両1の自動制御について説明する。以下の説明では、作業車両1は、例えばスロットドージングにおける各スロットを前後に行き来して、各スロットの掘削を行うものとする。
図4は、作業車両1の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、ブレード18の現在の刃先位置PBを取得する。
【0036】
ステップS102では、コントローラ26は、設計地形データを取得する。
図5に示すように、設計地形データは、作業車両1の進行方向において、複数の参照点Pn(n=0,1,2,3,...,A)での最終設計地形60の高さZdesignを含む。複数の参照点Pnは、作業車両1の進行方向に沿う所定間隔ごとの複数地点を示す。複数の参照点Pnは、ブレード18の進行パス上にある。なお、
図5では、最終設計地形60は、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。
【0037】
ステップS103では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。コントローラ26は、記憶装置28より得られる作業現場地形データと、位置センサ31より得られる車体の位置データ及び進行方向データから演算により、現況地形データを取得する。
【0038】
現況地形データは、作業車両1の進行方向に位置する地形を示す情報である。
図5は、現況地形50の断面を示す。なお、
図5において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業車両1の進行方向における現在位置からの距離を示している。
【0039】
詳細には、現況地形データは、作業車両1の進行方向において、現在位置から所定の地形認識距離dAまでの複数の参照点Pnでの現況地形50の高さZnを含む。本実施形態において、現在位置は、作業車両1の現在の刃先位置PBに基づいて定められる位置である。ただし、現在位置は、作業車両1の他の部分の現在位置に基づいて定められてもよい。複数の参照点は、所定間隔、例えば1mごとに並んでいる。
【0040】
ステップS104では、コントローラ26は、作業範囲データを取得する。作業範囲データは、入力装置25によって設定された作業範囲を示す。
図5に示すように、作業範囲は始端と終端とを含む。作業範囲データは、始端の座標と終端の座標とを含む。或いは、作業範囲データは、始端の座標と、作業範囲の長さとを含み、始端の座標と作業範囲の長さとから、終端の座標が算出されてもよい。或いは、作業範囲データは、終端の座標と、作業範囲の長さとを含み、終端の座標と作業範囲の長さとから、始端の座標が算出されてもよい。
【0041】
コントローラ26は、入力装置25からの操作信号に基づいて作業範囲データを取得する。ただし、コントローラ26は、他の方法によって、作業範囲データを取得してもよい。例えば、コントローラ26は、作業現場の施工管理を行う外部のコンピュータから、作業範囲データを取得してもよい。
【0042】
ステップS105では、コントローラ26は、目標傾斜角を取得する。コントローラ26は、第1目標設計地形70の目標傾斜角と、第2目標設計地形80の目標傾斜角とを取得する。第1目標設計地形70と第2目標設計地形80とは、作業におけるブレード18の刃先の望まれる軌跡を示す。第1目標設計地形70と第2目標設計地形80とは、作業対象である地形の目標プロファイルであり、掘削作業の結果として望まれる形状を示す。
【0043】
第1目標設計地形70の少なくとも一部は、現況地形50よりも下方に位置する。第1目標設計地形70は、水平方向に対して傾斜している。第1目標設計地形70の目標傾斜角は、第1目標設計地形70の水平方向に対する目標角度である。
【0044】
第2目標設計地形80の少なくとも一部は、現況地形50よりも下方に位置する。第2目標設計地形80は、水平方向に対して傾斜している。或いは、第2目標設計地形80の目標傾斜角は、第2目標設計地形80の水平方向に対する目標角度である。
【0045】
図6は、第2目標設計地形80の一例を示す図である。
図6に示すように、第2目標設計地形80は、進入路81と退出路82とを含む。コントローラ26は、進入路81の目標傾斜角A2と、退出路82の目標傾斜角A3とを取得する。進入路81の目標傾斜角A2と退出路82の目標傾斜角A3とは、それぞれ独立して設定可能であってもよい。すなわち、進入路81の目標傾斜角A2と退出路82の目標傾斜角A3とは、互いに異なっていてもよい。或いは。進入路81の目標傾斜角A2と退出路82の目標傾斜角A3とは、同じであってもよい。
【0046】
進入路81の目標傾斜角A2は、作業車両1が進入路81上を後進する際に後進可能な角度の範囲内に収めることが望ましい。進入路81の目標傾斜角A2を後進可能な角度よりも大きい角度に設定した場合、作業車両1が進入路81上を後進することが困難となり、作業効率が低下するためである。進入路81の目標傾斜角A2が、後進可能な角度の上限近傍に設定された場合、作業車両1が有する能力を最大限に発揮でき作業効率が向上するので望ましい。
【0047】
退出路82の目標傾斜角A3は、作業車両1が退出路82上を前進する際に前進可能な角度の範囲内に収めることが望ましい。退出路82の目標傾斜角A3を前進可能な角度よりも大きい角度に設定した場合、作業車両1が退出路82上を前進することが困難となり作業効率が低下するためである。退出路82の目標傾斜角A3が、前進可能な角度の上限近傍に設定された場合、作業車両1が有する能力を最大限に発揮でき作業効率が向上するので望ましい。
【0048】
後進時は土を運ばないため、土を運ぶ前進時よりも作業車両1に作用する負荷が小さい。そのため、作業車両1の後進時に通過する進入路81の目標傾斜角A2は、作業車両1の前進時に通過する退出路82の目標傾斜角A3よりも大きく設定されてもよい。そうすることで、作業車両1が有する能力をより発揮でき、作業効率を向上させることができる。
【0049】
コントローラ26は、入力装置25からの操作信号に基づいて、目標傾斜角を取得する。すなわち、目標傾斜角は、オペレータが入力装置25を操作することによって設定される。ただし、コントローラ26は、他の方法によって、目標傾斜角を取得してもよい。例えば、コントローラ26は、作業現場の施工管理を行う外部のコンピュータから、目標傾斜角を取得してもよい。或いは、コントローラ26が自動的に目標傾斜角を決定してもよい。例えば、コントローラ26は、作業車両1が受ける負荷、或いは作業車両1の機械能力などから、目標傾斜角を決定してもよい。
【0050】
ステップS106では、コントローラ26は、第2目標設計地形データを決定する。第2目標設計地形データは、第2目標設計地形80を示す。コントローラ26は、作業範囲内において少なくとも一部が現況地形50よりも下方に位置するように、第2目標設計地形80を決定する。すなわち、コントローラ26は、作業車両の進行方向において、作業範囲の終端より後方、且つ、作業範囲の始端より前方の位置で、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置するように、第2目標設計地形80を決定する。
【0051】
詳細には、コントローラ26は、作業範囲の始端を通るように進入路81を決定する。コントローラ26は、作業車両1の進行方向において、前方且つ下方に向かって傾斜するように進入路81を決定する。コントローラ26は、進入路81の水平方向に対する角度が上述した目標傾斜角A2となるように、進入路81を決定する。進入路81の一部は、作業範囲内に位置している。進入路81の一部は、作業車両1の進行方向において、始端よりも後方の位置まで延びている。
【0052】
退出路82は、作業車両1の進行方向において進入路81よりも前方に位置する。コントローラ26は、作業範囲の終端を通るように退出路82を決定する。コントローラ26は、作業車両1の進行方向において、前方且つ上方に向かって傾斜するように退出路82を決定する。コントローラは、退出路82の水平方向に対する角度が上述した目標傾斜角A3となるように、退出路82を決定する。退出路82の一部は、作業範囲内に位置している。退出路82の一部は、作業車両1の進行方向において、終端よりも前方の位置まで延びている。
【0053】
なお、コントローラ26は、最終設計地形60を下方に越えないように、第2目標設計地形80を決定する。従って、コントローラ26は、最終設計地形60以上、且つ、現況地形50より下方に位置するように、第2目標設計地形80を決定する。
【0054】
ステップS107では、コントローラ26は、第1目標設計地形データを決定する。第1目標設計地形データは、第1目標設計地形70を示す。
図7に示すように、コントローラ26は、作業範囲内において、少なくとも一部が、現況地形50よりも下方に位置する第1目標設計地形70を決定する。コントローラ26は、第1目標設計地形70の水平方向に対する角度が目標傾斜角A1となるように、第1目標設計地形70を決定する。コントローラ26は、進入路81と退出路82との間に少なくとも一部が位置するように第1目標設計地形70を決定する。または、コントローラ26は、第1目標設計地形70を、進入路81または退出路82と交差するように決定してもよい。
【0055】
詳細には、
図8に示すように、コントローラ26は、上下方向に所定距離dZ、互いに変位した複数の第1目標設計地形70a-70dを生成する。所定距離dZは、入力装置25からの操作信号に基づいて設定されてもよい。所定距離dZは、作業現場の施工管理を行う外部のコンピュータから取得されてもよい。所定距離dZは、固定値であってもよい。コントローラ26は、複数の第1目標設計地形70a-70dのうち現況地形50の直下にある1つ(
図8に示す例では第1目標設計地形70b)を選択して、第1目標設計地70として決定する。なお、コントローラ26は、複数の第1目標設計地形70から1つを選択するのではなく、現況地形50よりも下方に位置する1つの第1目標設計地形70のみを決定してもよい。
【0056】
なお、コントローラ26は、最終設計地形60を下方に越えないように、第1目標設計地形70を決定する。従って、コントローラ26は、最終設計地形60以上、且つ、現況地形50より下方に位置する第1目標設計地形70を決定する。
【0057】
ステップS108では、コントローラ26は、作業の開始位置を決定する。
図9に示すように、コントローラ26は、作業車両1の進行方向に並ぶ複数のカット71-73ごとに、第1目標設計地形70に従った掘削を行う。コントローラ26は、第1目標設計地形70において、作業範囲内での各カット71-73の作業の開始位置Ps1-Ps3とその作業順序を決定する。コントローラ26は、例えば終端から、所定距離L1-L3ずつ、離れた位置を開始位置Ps1-Ps3として決定する。
【0058】
詳細には、コントローラ26は、作業範囲の終端の位置から始端側に、所定距離L1、離れた位置を、第1の開始位置Ps1として決定する。コントローラ26は、第1の開始位置Ps1から始端側に、所定距離L2、離れた位置を、第2の開始位置Ps2として決定する。コントローラ26は、第2の開始位置Ps2から始端側に、所定距離L3、離れた位置を、第3の開始位置Ps3として決定する。なお、開始位置の数は3つに限らず、3つより少ない、或いは3つより多くてもよい。そして、コントローラ26は、複数の開始位置Ps1-Ps3のうち、終端に近いものから順に掘削を行うように、作業順序を決定する。
【0059】
コントローラ26は、作業車両1の定格出力、或いはブレード18の容量などの作業車両1の機械能力に応じて開始位置Ps1-Ps3を決定してもよい。コントローラ26は、現況地形50と第1目標設計地形70との間の土量に応じて、開始位置Ps1-Ps3を決定してもよい。或いは、コントローラ26は、入力装置25からの操作信号に基づいて、所定距離L1-L3を決定してもよい。コントローラ26は、作業範囲の長さに応じて、所定距離L1-L3を決定してもよい。
【0060】
コントローラ26は、
図8に示すように、複数の第1目標設計地形70とそれぞれ交差するように、進入路81または退出路82を決定してもよい。そうすることで、作業車両1が掘削作業において深く掘りすぎてしまい作業位置への進入または退出が困難になるという状況を未然に防止することができる。また、コントローラ26は、1つの第1目標設計地形70bを決定してその第1目標設計地形70bに沿って掘削作業が完了した後に、別の第1目標設計地形70cを決定する場合であっても、進入路81または退出路82は複数の第1目標設計地形70と交差してもよい。
【0061】
ステップS109では、コントローラ26は、目標設計地形70,80に向ってブレード18を制御する。コントローラ26は、ステップS108で決定した開始位置Ps1-Ps3から作業機13による作業を開始し、ステップS106で作成した第2目標設計地形80、及び、ステップS107で作成した第1目標設計地形70に従ってブレード18の刃先位置が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。
【0062】
なお、各開始位置Ps1-Ps3から第1目標設計地形70、及び、第2目標設計地形80に到達するまでの各カット71-73のパスは、作業車両1の車速、作業機13の下降速度、地形の硬さなどの作業条件に応じて決まる。ただし、コントローラ26は、開始位置Ps1-Ps3、第1目標設計地形70、及び、第2目標設計地形80に基づいて、各カット71-73の目標パスを決定してもよい。コントローラ26は、決定されたカット71-73の目標パスにブレード18が沿うように、ブレード18を制御してもよい。
【0063】
コントローラ26は、第1目標設計地形70、及び、第2目標設計地形80のうち上方に位置する方に従ってブレード18の刃先位置が移動するように、指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。
【0064】
詳細には、コントローラ26は、作業車両1の進行方向において、第1目標設計地形70が第2目標設計地形80よりも上方に位置している範囲では、第1目標設計地形70に従って作業機13を動作させる。コントローラ26は、第2目標設計地形80が第1目標設計地形70よりも上方に位置している範囲では、第2目標設計地形80に従って作業機13を動作させる。
【0065】
例えば、
図9に示すように、コントローラ26は、ブレード18の刃先を第1の開始位置Ps1から第1目標設計地形70に向かって移動させ、第1目標設計地形70及び退出路82に沿って移動させる。これにより、カット71の掘削が行われる。コントローラ26は、ブレード18の刃先を、終端を越えた置土範囲まで退出路82に沿って移動させる。それにより、作業範囲において掘削された土が、置土範囲においてブレード18から排出される。
【0066】
なお、
図9に示すように、退出路82は、現況地形50よりも下方に位置する領域82aと、現況地形50よりも上方に位置する領域82bとを含む。コントローラ26は、現況地形50よりも下方の領域82aにおいて作業機13を退出路82に沿わせて動作させるとともに、現況地形50よりも上方の領域82bにおいて退出路82に沿うように作業機13を動作させる。現況地形50よりも下方の領域82aでは、作業機13が退出路82に沿って動作することで、掘削が行われる。現況地形50よりも上方の領域82bでは、作業機13が退出路82に沿って動作することで、掘削された土が作業機13から排出されて現況地形50上に敷かれる。
【0067】
第1の開始位置Ps1からカット71の掘削が完了すると、コントローラ26は、作業車両1を第2の開始位置Ps2に移動させる。コントローラ26は、ブレード18の刃先を第2の開始位置Ps2から第1目標設計地形70に向かって移動させ、第1目標設計地形70及び退出路82に沿って移動させる。これにより、カット72の掘削が行われる。コントローラ26は、ブレード18の刃先を、終端を越えた置土範囲まで退出路82に沿って移動させる。それにより、作業範囲において掘削された土が、置土範囲においてブレード18から排出される。
【0068】
第2の開始位置Ps2からカット72の掘削が完了すると、コントローラ26は、作業車両1を第3の開始位置Ps3に移動させる。コントローラ26は、ブレード18の刃先を第3の開始位置Ps3から、進入路81、第1目標設計地形70、及び退出路82に沿って移動させる。これにより、カット73の掘削が行われる。コントローラ26は、ブレード18の刃先を、終端を越えた置土範囲まで退出路82に沿って移動させる。それにより、作業範囲において掘削された土が、置土範囲においてブレード18から排出される。このように各開始位置からの作業が繰り返されることにより、
図10に示すように、作業範囲内で1つの第1目標設計地形70の掘削が完了する。
【0069】
作業範囲内で1つの第1目標設計地形70の掘削が完了すると、コントローラ26は、さらに下方に位置する次の第1目標設計地形70について、各カットの作業の開始位置とその作業順序を決定し、各カットの掘削を開始する。このような処理が繰り返されることにより、
図11に示すように、現況地形50が最終設計地形60に近づくように、掘削が行われる。
【0070】
図11に示すように、最終設計地形60と退出路82の交点Pxよりも手前側に鉱石層61が存在する場合に、
図11に示すように退出路82を設定すると、作業効率よく置土範囲に排土することができる。したがって、コントローラ26は、交点Pxを起点として退出路82の目標傾斜角A3で傾斜させることで、退出路82の位置を規定してもよい。交点Pxは、鉱石層61の終点に該当する。すなわち、コントローラ26は、鉱石層61の終点Pxから、最終設計地形60に対して目標傾斜角A3で傾斜した方向に延びるように、退出路82を決定してもよい。なお、退出路82が鉱石層61上にかからなければよいため、コントローラ26は、鉱石層61の終点Pxよりも進行方向側、すなわち鉱石層61よりも外側の位置から延びるように退出路82を決定してもよい。言い換えれば、コントローラ26は、作業車両1の進行方向において鉱石層61の終点Pxを越えた位置から延びるように退出路82を決定してもよい。
【0071】
ステップS110では、コントローラ26は、作業現場地形データを更新する。コントローラ26は、刃先位置PBの最新の軌跡を示す位置データによって作業現場地形データを更新する。作業現場地形データの更新は、随時、行われてもよい。或いは、コントローラ26は、車体位置データと車体寸法データとから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の軌跡を示す位置データによって作業現場地形データを更新してもよい。この場合、作業現場地形データの更新は即時に行うことができる。
【0072】
或いは、作業現場地形データは、作業車両1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。外部の測量装置として、例えば、航空レーザ測量を用いてよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データから作業現場地形データが生成されてもよい。例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮測量を用いてよい。外部の測量装置又はカメラの場合、作業現場地形データの更新は、所定周期ごと、あるいは随時に行われてもよい。
【0073】
以上説明した、本実施形態に係る作業車両1の制御システム3では、第1目標設計地形70と共に、傾斜した第2目標設計地形80が決定される。従って、第2目標設計地形80に従って現況地形を掘削することで、
図11に示すように、作業車両1の作業位置への進入路81、及び、退出路82を形成することができる。それにより、作業効率の低下を抑えることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
作業車両1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ、油圧ショベル等の他の車両であってもよい。
【0076】
作業車両1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業車両1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。その場合、作業車両1は、運転室14を備えない車両であってもよい。
【0077】
作業車両1は、電動モータで駆動される車両であってもよい。その場合、電源は作業車両1の外部に配置されてもよい。電源が外部から供給される作業車両1は、内燃エンジン及びエンジン室を備えない車両であってよい。
【0078】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラ26を有してもよい。例えば、
図12に示すように、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業車両1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、第1目標設計地形70と作業順序を決定する処理とがリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0079】
入力装置25は、作業車両1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両1から省略されてもよい。或いは、入力装置25が作業車両1から省略されてもよい。入力装置25は、走行装置12及び/又は作業機13を操作するための操作レバー、ペダル、或いはスイッチ等の操作子を含んでもよい。入力装置25の操作に応じて、作業車両1の前進及び後進などの走行が制御されてもよい。入力装置25の操作に応じて、作業機13の上昇及び下降などの動作が制御されてもよい。
【0080】
現況地形50は、上述した位置センサ31に限らず、他の装置によって取得されてもよい。例えば、
図13に示すように、外部の装置からのデータを受け付けるインターフェ-ス装置37によって現況地形50が取得されてもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形データを無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置41が計測した現況地形データを記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0081】
第1目標設計地形70の決定方法は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、第1目標設計地形70は、現況地形50を鉛直方向に所定距離、変位させたものであってもよい。或いは、
図14に示すように、第1目標設計地形70は、水平方向に延びていてもよい。或いは、コントローラ26は、最終設計地形60を第1目標設計地形70として決定してもよい。
【0082】
上記の実施形態では、第2目標設計地形80は、水平方向に対して傾斜している。しかし、第2目標設計地形80は、第1目標設計地形70に対して傾斜していてもよい。その場合、第2目標設計地形80の目標傾斜角は、第2目標設計地形80の第1目標設計地形70に対する目標角度であってもよい。或いは、第2目標設計地形80は、最終設計地形60に対して傾斜していてもよい。その場合、第2目標設計地形80の目標傾斜角は、第2目標設計地形80の最終設計地形60に対する目標角度であってもよい。第2目標設計地形80が水平に設定されてもよい。
【0083】
コントローラ26は、進入路81と退出路82との一方のみを決定してもよい。コントローラ26は、始端以外の位置を通るように、進入路81を決定してもよい。コントローラ26は、終端以外の位置を通るように、退出路82を決定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、作業車両の自動制御において作業効率の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0085】
3 制御システム
13 作業機
26 コントローラ
50 現況地形
70 第1目標設計地形
80 第2目標設計地形
81 進入路
82 退出路