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  • 特許-非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20221104BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221104BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221104BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221104BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20221104BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20221104BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/134
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018074973
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019186012
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 昇
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】庄司 直史
(72)【発明者】
【氏名】土田 和也
(72)【発明者】
【氏名】住谷 孝治
(72)【発明者】
【氏名】畠添 拓実
(72)【発明者】
【氏名】浅野 重人
(72)【発明者】
【氏名】安東 信雄
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-192143(JP,A)
【文献】特開2017-139068(JP,A)
【文献】特開2017-147222(JP,A)
【文献】特開2017-073281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、
負極集電体の表面に負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、
セパレータに電解液が含浸されてなる電解質層と、
を含む発電要素を有する非水電解質二次電池であって、
前記負極活物質が、ケイ素を含有し、リチウムイオンの挿入脱離が可能なSi材料を含み、
前記電解液が、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)および前記LiFSIよりも低い温度で分解反応を生じる無機リチウム塩を含有し、前記電解液における前記無機リチウム塩の濃度(mol/L)に対する前記LiFSIの濃度(mol/L)の比率(LiFSI/無機リチウム塩)が0.21以上1以下であり、かつ、前記電解液における前記無機リチウム塩の濃度が1.0~2.0mol/Lである、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記負極活物質の全量100質量%に占める前記Si材料の質量比が20質量%以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極活物質層の厚さが200~650μmである、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記無機リチウム塩がLiPFである、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記負極活物質層が、前記負極活物質の非結着体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの非水電解質二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、現実的な全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、一般に、正極活物質等の正極合剤を正極集電体の両面に塗布した正極と、負極活物質等の負極合剤を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層(電解質を保持したセパレータ)を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0005】
従来、リチウムイオン二次電池の負極には充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素・黒鉛系材料が用いられてきた。しかし、炭素・黒鉛系の負極材料ではリチウムイオンの黒鉛結晶中への吸蔵・放出により充放電がなされるため、最大リチウム導入化合物であるLiCから得られる理論容量372mAh/g以上の充放電容量が得られないという欠点がある。このため、炭素・黒鉛系負極材料でガソリン車並みの航続距離を有する車両用途の実用化レベルを満足する容量、エネルギー密度を得るのは困難である。
【0006】
これに対し、負極にLiと合金化する材料を用いた電池は、従来の炭素・黒鉛系負極材料と比較しエネルギー密度が向上するため、車両用途における負極材料として期待されている。例えば、Si材料は、充放電において下記の反応式(A)のように1molあたり3.75molのリチウムイオンを吸蔵放出し、Li15Si(=Li3.75Si)においては理論容量3600mAh/gである。
【0007】
【化1】
【0008】
ところで、特許文献1には、プロピレンカーボネート(PC)を含む非水性有機溶媒;およびii)リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)を含むことを特徴とする非水性電解液に関する発明が開示されている。特許文献1によれば、このような構成の電解液を用いることで、これを含むリチウムイオン二次電池の初期充電時に負極で強固なSEI膜を形成させることができるとされている。そしてその結果、低温出力特性を向上させつつ、高温サイクル特性、高温貯蔵後の出力特性、容量特性やスウェリング特性をも向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2015-509271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上述した特許文献1に記載の技術を、高容量および高エネルギー密度を達成可能なSi材料を含む負極活物質を用いた非水電解質二次電池に適用することを試みた。その結果、電池の温度が所定値以上に上昇した場合にさらなる発熱反応が生じ、電池の劣化が進行してしまうことを見出した。
【0011】
そこで本発明は、Si材料を含む負極活物質を用い、LiFSIを含む電解液を用いた非水電解質二次電池において、電池の温度が上昇した場合であっても、電池の劣化を引き起こしうる発熱反応の発生を抑制しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、Si材料を含む負極活物質を用い、LiFSIを含む電解液を用いた非水電解質二次電池において、LiFSIのモル濃度以上のモル濃度を有する無機リチウム塩を電解液に含ませることで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る非水電解質二次電池は、正極集電体の表面に正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液が含浸されてなるセパレータとを含む発電要素を有するものである。ここで、前記負極活物質は、ケイ素を含有し、負極活物質として機能しうるSi材料を含む。そして、前記電解液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)および前記LiFSI以外の無機リチウム塩を含有し、前記電解液における前記無機リチウム塩の濃度(mol/L)に対する前記LiFSIの濃度(mol/L)の比率(LiFSI/無機リチウム塩)が1以下である点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Si材料を含む負極活物質を用い、LiFSIを含む電解液を用いた非水電解質二次電池において、電池の温度が上昇した場合であっても、電池の劣化を引き起こしうる発熱反応の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。
図2】二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、上述した本発明に係る負極材料の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。以下では、非水電解質二次電池の一形態である、双極型リチウムイオン二次電池を例に挙げて本発明を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「双極型二次電池」とも称し、双極型リチウムイオン二次電池用電極を単に「双極型電極」と称することがある。
【0017】
<双極型二次電池>
図1は、本発明の一実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。図1に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0018】
図1に示すように、本形態の双極型二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータに電解液が含浸されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。ただし、本発明の技術的範囲は図1に示すような双極型二次電池に限定されず、例えば国際公開第2016/031688号パンフレットに開示されているような複数の単電池層が電気的に直列に積層されてなる結果として同様の直列接続構造を有する電池であってもよい。
【0019】
なお、図示はしないが、図1の双極型二次電池10において、負極活物質層15は、負極活物質としてSi材料を含む。また、負極活物質層15は、導電部材として導電性繊維である炭素繊維を含んでいてもよい。負極活物質層15が炭素繊維を含むことで、負極活物質層15の電解質層17側に接触する第1主面から集電体11側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成することができ、さらに当該導電通路と負極活物質とを電気的に接続することができる。また、負極活物質層15および正極活物質層13は、一般的な非水電解質二次電池の活物質層に含まれるバインダを含んでいない(すなわち、「非結着体」である)ことが好ましい。
【0020】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。これにより、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止し、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止している。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
【0021】
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
【0022】
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。なお、ここでは、双極型二次電池を例に挙げて本発明の実施形態を説明したが、本発明が適用可能な非水電解質電池の種類は特に制限されず、発電要素において単電池層が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の非水電解質二次電池に適用可能である。
【0023】
以下、上述した双極型二次電池の主な構成要素について説明する。
【0024】
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はないが、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0025】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0026】
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0027】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0028】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子材料のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0029】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0030】
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5~35質量%程度である。
【0031】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0032】
[負極活物質層]
負極活物質層は、放電時にリチウムイオン等のイオンを放出し、充電時にリチウムイオン等のイオンを吸蔵できる負極活物質を含む。本実施に係る非水電解質二次電池の負極活物質層は、Si材料を負極活物質として必須に含む。かようなSi材料の具体的な形態について特に制限はないが、特に好ましくは、特に高容量の負極を構成できるという観点から、SiOxまたはケイ素含有合金を必須に含むことが好ましい。また、他の好ましい実施形態では、Si材料を炭素材料とともに含むことがより好ましい。以下では、好ましいSi材料と、好ましく併用される炭素材料について、より詳細に説明する。
【0033】
本明細書中、Si材料とは、ケイ素を含有し、リチウムイオンの挿入脱離が可能な材料を意味する。Si材料としては、アモルファスSiO粒子とSi粒子との混合体であるSiOx(xはSiの原子価を満足する酸素数を表す)およびケイ素含有合金が挙げられる。これらのうちの1種のみがSi材料として用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
(SiOx)
SiOxは、アモルファスSiO粒子とSi粒子との混合体であり、xはSiの原子価を満足する酸素数を表す。xの具体的な値について特に制限はなく、適宜設定されうる。
【0035】
また、上記SiOxは、機械的表面融合処理によってSiOx粒子の表面が導電性物質で被覆されてなる導電性SiOx粒子であってもよい。かような構成とすることにより、SiOx粒子内のSiがリチウムイオンの脱離および挿入をしやすくなり、活物質における反応がよりスムーズに進行することができるようになる。この場合、導電性SiOx粒子における導電性物質の含有量は1~30重量%であることが好ましく、2~20重量%であることがより好ましい。
【0036】
上記SiOxの平均粒子径は、既存の負極活物質層13に含まれる負極活物質の平均粒子径と同程度であればよく、特に制限されない。高出力化の観点からは、好ましくは1~20μmの範囲であればよい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を有効に発現できるものであれば、上記範囲を外れていてもよいことは言うまでもない。なお、本明細書において「平均粒子径」は、レーザー回折法によって得られる体積基準のメジアン径(D50)をいうものとする。また、SiOxの形状としては、特に制限はなく、球状、楕円状、円柱状、多角柱状、鱗片状、不定形などでありうる。
【0037】
xの値は蛍光X線分析により求めることができる。例えば、O-Kα線を用いた蛍光X線分析でのファンダメンタルパラメータ法を用いて求めることができる。蛍光X線分析には、例えば、株式会社リガク製RIX3000を用いることができる。蛍光X線分析の条件としては、例えば、ターゲットにロジウム(Rh)を用い、管電圧50kV、管電流50mAとすればよい。ここで得られるx値は、基板上の測定領域で検出されるO-Kα線の強度から算出されるため、測定領域の平均値となる。
【0038】
(ケイ素含有合金)
ケイ素含有合金は、ケイ素を含有する他の金属との合金であれば特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。ここでは、ケイ素含有合金の好ましい実施形態として、SiTiGe、SiTiZn、SiTiSn、SiSnAl、SiSn、SiSn、SiZn、SiZnSn、SiZnAl、SiZn、SiAlおよびSiAlNb(式中、Aは、不可避不純物である。さらに、x、y、z、およびaは、重量%の値を表し、0<x<100、0<y<100、0<z<100、および0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である)が挙げられる。これらのケイ素含有合金を負極活物質として用いることで、所定の第1添加元素および所定の第2添加元素を適切に選択することによって、Li合金化の際に、アモルファス-結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質、例えば炭素材料(炭素系負極活物質)よりも高容量のものとなる。
【0039】
(炭素材料)
本発明に用いられうる炭素材料は、特に制限されないが、天然黒鉛、人造黒鉛等の高結晶性カーボンである黒鉛(グラファイト);ソフトカーボン、ハードカーボン等の低結晶性カーボン等の炭素材料が挙げられる。これらのうち、黒鉛またはハードカーボンを用いることが好ましい。炭素材料の形状としては、特に制限はなく、球状、楕円状、円柱状、多角柱状、鱗片状、不定形などでありうる。
【0040】
また、炭素材料の平均粒子径としては、特に制限されないが、5~25μmであることが好ましく、5~10μmであることがより好ましい。この際、上述のSiOxとの平均粒子径との比率については、炭素材料の平均粒子径は、SiOxの平均粒子径と同一であっても、異なっていてもよいが、異なることが好ましい。特に、前記SiOxの平均粒子径が、前記炭素材料の平均粒子径よりも小さいことがより好ましい。炭素材料の平均粒子径がSiOxの平均粒子径よりも相対的に大きいと、均一に炭素材料の粒子が配置され、当該炭素材料の粒子間にSiOxが配置した構成を有するため、負極活物質層内においてSiOxが均一に配置されうる。
【0041】
炭素材料の平均粒子径とSiOxの平均粒子径との粒子径の比(SiOxの平均粒子径/炭素材料の平均粒子径)は、1/250~1未満であることが好ましく、1/100~1/4であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態では、負極活物質として上記Si材料が用いられることにより、より高いサイクル耐久性を示しつつ、かつ、初期容量も高くバランスよい特性を示すことができる。また、これらのSi材料が炭素材料と併用されることによっても、これらの特性を向上させることができる。
【0043】
場合によっては、上述した炭素材料以外の負極活物質がSi材料と併用されてもよい。併用可能な負極活物質としては、例えば、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。これ以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。負極活物質としては、いわゆるプレドープされたものであってもよい。負極活物質としてプレドープされたものを用いる場合の具体的な手法としては、従来公知の知見が適宜参照されうる。なお、高容量(高エネルギー密度)の電池を得るという観点から、負極活物質の全量100質量%に占めるSi材料の質量比は、特に制限されないが、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。一方、負極活物質の全量100質量%に占めるSi材料の質量比の上限も特に制限されないが、例えば、95質量%未満である。
【0044】
負極活物質層は上述したような負極活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、導電部材、バインダなどのその他の添加剤をさらに含む。
【0045】
前記導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。負極活物質層が導電助剤を含むと、負極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0046】
導電部材は、負極活物質層中で電子伝導パスを形成する機能を有する。特に、導電部材の少なくとも一部が、負極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成していることが好ましい。このような形態を有することで、負極活物質層中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減される。その結果、電池の高レートでの出力特性がよりいっそう向上しうる。なお、導電部材の少なくとも一部が、負極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成しているか否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて負極活物質層の断面を観察することにより確認することができる。
【0047】
導電部材は、繊維状の形態を有する導電性繊維であることが好ましい。具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。なかでも、導電性に優れ、軽量であることから炭素繊維が好ましい。
【0048】
負極活物質層に用いられる任意成分のバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
【0049】
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
【0050】
また、本形態において、負極活物質層に含まれうる、導電助剤、バインダなどのその他の添加剤の配合比は、特に限定されない。それらの配合比は、非水電解質二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。なお、上述したように、本形態に係る非水電解質二次電池の負極活物質層(および正極活物質層)は、バインダを含有しないものであることが好ましい。すなわち、本形態に係る非水電解質二次電池の好ましい実施形態において、負極活物質層(および正極活物質層)は、負極活物質(正極活物質)がバインダによって結着されていない、いわゆる「非結着体」である。この際、負極活物質層(および正極活物質層)におけるバインダの含有量は、負極活物質層(正極活物質層)に含まれる全固形分量100質量%に対して、それぞれ好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。このような構成とすることで、バインダを結晶化させるための加熱乾燥工程が省略できる。また、活物質層の厚膜化とバインダの省略により、高容量(つまり、高エネルギー密度)の電池を得ることも可能となる。
【0051】
本形態の非水電解質二次電池において、負極活物質層の厚さは特に制限されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、負極活物質層の厚さは、通常1~1500μm程度、好ましくは50~1200μmであり、より好ましくは100~800μmであり、さらに好ましくは200~650μmである。負極活物質層の厚さが大きいほど、十分な容量(エネルギー密度)を発揮するための負極活物質を保持することが可能となる。一方、負極活物質層の厚さが小さいほど、放電レート特性が向上しうる。
【0052】
(負極の製造方法)
負極の製造方法は、特に制限されず、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することができる。ただし、既に述べたように、本形態においては、電池のエネルギー密度を向上させる観点から、負極活物質層において、充放電反応の進行にあまり寄与しない部材の含有量をできるだけ小さくすることが好ましい。よって、以下では、製造方法の好ましい一形態として、負極活物質層にバインダを含まない(または少量のみ含む)負極の製造方法について説明する。
【0053】
すなわち、一実施形態に係る負極の製造方法では、まず、上述した負極活物質および導電部材を溶媒とともに混合して負極活物質層用スラリーを調製する。
【0054】
ここで、負極活物質、導電部材および溶媒を混合し、負極活物質層用スラリーを調製する方法は特に制限されず、部材の添加順、混合方法等、従来公知の知見が適宜参照される。この際、溶媒としては、後述する液体電解質の溶媒が適宜用いられうる。また、リチウム塩や電解液への添加剤などをさらに含んだ電解液を、そのまま本工程における溶媒に代えて用いてもよい。
【0055】
負極活物質層用スラリーの濃度は、特に制限されない。ただし、後述する工程におけるスラリーの塗布や、さらにその後の工程におけるプレスを容易にする観点から、負極活物質層用スラリー100質量%に対する全固形分の濃度は、好ましくは35~75質量%であり、より好ましくは40~70質量%であり、さらに好ましくは45~60質量%である。濃度が上記範囲内であると、塗布で十分な厚さを有する負極活物質層を容易に形成することができる。
【0056】
次いで、多孔質シート上に上記で調製した負極活物質層用スラリーの塗膜を形成し、必要に応じてスラリーから溶媒を除去してから、当該塗膜の表面に集電体を配置する。スラリーの塗膜を塗布する方法については、特に制限されず、アプリケーター等の従来公知の知見が適宜参照される。また、スラリーから溶媒を除去するための手法についても制限はなく、例えば多孔質シートの塗膜形成面とは反対の表面から吸引ろ過を行うことにより、溶媒を除去することができる。
【0057】
ここで、多孔質シートとしては、本技術分野においてセパレータとして使用される、微多孔膜、不織布などと同様のものを使用することができる。具体的には、微多孔膜としては、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔膜が挙げられる。また、不織布としては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなどを、単独または混合して用いた不織布が挙げられる。なお、スラリーの塗布(負極活物質層の形成)後に除去されることを前提として、ニッケルメッシュやステンレスメッシュ等の金属メッシュが多孔質シートとして用いられてもよい。
【0058】
なお、上記多孔質シートは、負極活物質層の形成後に取り除いてもよいし、絶縁性の多孔質シートについてはそのまま電池のセパレータとして用いても構わない。多孔質シートをそのままセパレータとして用いる場合は、当該多孔質シートのみをセパレータとして電解質層を形成してもよいし、当該多孔質シートと別のセパレータとを組み合わせて(すなわち、セパレータを2枚以上として)電解質層を形成してもよい。
【0059】
さらに、必要に応じて、負極活物質層用スラリーの塗膜と多孔質シートとの積層体をプレスしてもよい。この際に用いられるプレス装置は、塗布した負極活物質層用スラリーの全面に均一に圧力を加えられる装置であることが好ましく、具体的には、ハイプレッシャージャッキ J-1(アズワン株式会社製)が使用できる。プレスの際の圧力は、特に制限されないが、好ましくは5~40MPaであり、より好ましくは10~35MPaであり、さらに好ましくは12~30MPaである。
【0060】
[正極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0061】
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni-Mn-Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられ、さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0062】
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
【0063】
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
【0064】
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
【0065】
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からは好ましい。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2は、一般的な民生電池で実績のあるLiCoO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3などと比較して、単位重量あたりの容量が大きく、エネルギー密度の向上が可能となることでコンパクトかつ高容量の電池を作製できるという利点を有しており、航続距離の観点からも好ましい。なお、より容量が大きいという点ではLiNi0.8Co0.1Al0.1がより有利である。他方、LiNi0.5Mn0.3Co0.2はLiNi1/3Mn1/3Co1/3並みに優れた寿命特性を有している。
【0066】
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0067】
正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは5~20μmである。
【0068】
また、正極活物質層15は、負極活物質層13について上述したのと同様に、必要に応じて、導電助剤、導電部材、バインダなどのその他の添加剤をさらに含む。ただし、負極活物質層13について上述したのと同様に、本形態に係る非水電解質二次電池の正極活物質層15もまた、バインダを含有しないものであることが好ましい。すなわち、本形態に係る非水電解質二次電池の好ましい実施形態において、正極活物質層は、正極活物質がバインダによって結着されていない、いわゆる「非結着体」である。この際、正極活物質層におけるバインダの含有量は、正極活物質層に含まれる全固形分量100質量%に対して、それぞれ好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0069】
正極(正極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法のほか、スパッタ法、蒸着法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および溶射法のいずれかの方法によって形成することができる。
【0070】
[電解質層]
本形態に係る非水電解質二次電池の電解質層は、セパレータに電解液が含浸されてなる構成を有する。
【0071】
電解液(液体電解質)は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液層を構成する電解液(液体電解質)は、有機溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が例示される。
【0072】
一方、本形態に係る非水電解質二次電池では、電解液が、リチウム塩としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI;Li(FSON)を必須に含有する。電解液がリチウム塩としてLiFSIを含有することで、出力特性(レート特性)に優れる電池が提供されうる。
【0073】
ここで、本形態に係る非水電解質二次電池では、電解液が、LiFSIに加えて、LiFSI以外の無機リチウム塩をさらに含有する。ここで、LiFSI以外の無機リチウム塩の具体的な形態について特に制限はなく、炭素原子を含まないリチウム塩であれば任意のものが用いられうる。無機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsFなどが挙げられる。なかでも、より高電圧(例えば4.7~4.8V等)での充電に耐え、サイクル特性をより向上させるという観点から、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(ホウフッ化リチウム)等が好ましく、LiPFが最も好ましい。なお、無機リチウム塩としては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
さらに、本形態に係る非水電解質二次電池では、電解液における上記無機リチウム塩の濃度(mol/L)に対するLiFSIの濃度(mol/L)の比率(LiFSI/無機リチウム塩)は、1以下であることが必須である。なお、この比率の下限値について特に制限はないが、例えば0.05以上である。また、得られる電池の容量およびサイクル耐久性の観点からは、0.2以上であることが好ましい。この比率は、例えば0.8以下(他の実施形態としては、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.33以下)であり、例えば0.25以上(他の実施形態としては、0.28以上、0.3以上)である。ここで、LiFSI以外の無機リチウム塩として2種以上が併用される場合、当該無機リチウム塩の濃度は、LiFSI以外のすべての無機リチウム塩の合計濃度を指すものとする。
【0075】
なお、電解液におけるLiFSIおよび上記無機リチウム塩のそれぞれの濃度について特に制限はない。ただし、得られる電池の容量およびサイクル耐久性の観点から、電解液におけるLiFSIの濃度は、好ましくは0.05~1.2mol/Lであり、より好ましくは0.1~1.0mol/Lである。また、電解液におけるLiFSI以外の無機リチウム塩の濃度は、好ましくは0.8~2.0mol/Lであり、より好ましくは1.0~1.9mol/Lである。
【0076】
上述したように、LiFSI以外の無機リチウム塩をそのモル濃度がLiFSIのモル濃度以上となるように電解液に含ませることで上述したような作用効果が得られるメカニズムは完全には明らかとはなっていない。ただし、以下のようなメカニズムが推定されている。すなわち、LiFSI以外の無機リチウム塩は一般に、LiFSIと比較して熱安定性が低く、LiFSIよりも低い温度で分解反応を生じる。このため、電池の通常運転以外のイベントの発生により電池の温度が上昇すると、比較的低温(通常は200℃未満)で無機リチウム塩の分解反応が進行し、分解物が負極活物質の粒子の表面にSEI被膜として堆積して内部抵抗が増加する。このため、リチウム塩として無機リチウム塩のみを含有する電解液を用いた場合には、負極活物質がSi材料を含有する場合に電池の温度が上昇したとしても、負極活物質とリチウム塩との間で急激な反応が進行する虞は低いと考えられる。これに対し、無機リチウム塩と比較して分解温度が高いLiFSIは、電池の温度が比較的高温(例えば200℃以上)となるまで分解反応を生じない。このため、LiFSIが分解反応を生じたときにはすでに電池の温度が高くなっており、このように高温の条件下においてLiFSIの分解反応が発生すると、負極活物質がSi材料を含有する場合には負極活物質とリチウム塩との間で大きな発熱を伴う反応が加速度的に進行し、これが電池の安全性を低下させる原因となっていると考えられる。そして、本形態に係る電池のように電解液が無機リチウム塩を所定の濃度で含有することで、電池の温度が上昇したときにLiFSIよりも低温で上述した分解反応が生じ、負極活物質の粒子の表面にSEI被膜を形成するとともに、高温条件下における負極活物質とLiFSIとの反応頻度を低下させることで、上述したような作用効果が発現しているものと推定している。なお、これらのメカニズムはあくまでも推測に基づくものであるため、その正否が本発明の技術的に範囲に影響することはない。なお、上述した特許文献1によれば、LiFSIにLiPF等の他のリチウム塩を併用する場合、種々の電池性能の観点から、当該他のリチウム塩とLiFSIとの混合比はモル比で1:6から1:9であることが好ましいとされている。一方、本形態に係る電池では、特許文献1において好ましいとされている範囲を大きく外れた範囲において、Si材料を負極活物質として用いた電池における新たな課題を解決することができることを見出したものである。
【0077】
電解液(液体電解質)は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような添加剤の具体例としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
本形態に係る非水電解質二次電池において、電解質層にはセパレータが用いられる。セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
【0079】
セパレータの形態としては、例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0080】
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
【0081】
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4~60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
【0082】
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5~200μmであり、特に好ましくは10~100μmである。
【0083】
また、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータ(耐熱絶縁層付セパレータ)であることが好ましい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダを含むセラミック層である。耐熱絶縁層付セパレータは融点または熱軟化点が150℃以上、好ましくは200℃以上である耐熱性の高いものを用いる。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電池の製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
【0084】
耐熱絶縁層における無機粒子は、耐熱絶縁層の機械的強度や熱収縮抑制効果に寄与する。無機粒子として使用される材料は特に制限されない。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの酸化物(SiO、Al、ZrO、TiO)、水酸化物、および窒化物、ならびにこれらの複合体が挙げられる。これらの無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来のものであってもよいし、人工的に製造されたものであってもよい。また、これらの無機粒子は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうち、コストの観点から、シリカ(SiO)またはアルミナ(Al)を用いることが好ましく、アルミナ(Al)を用いることがより好ましい。
【0085】
耐熱性粒子の目付けは、特に限定されるものではないが、5~15g/mであることが好ましい。この範囲であれば、十分なイオン伝導性が得られ、また、耐熱強度を維持する点で好ましい。
【0086】
耐熱絶縁層におけるバインダは、無機粒子どうしや、無機粒子と樹脂多孔質基体層とを接着させる役割を有する。当該バインダによって、耐熱絶縁層が安定に形成され、また多孔質基体層および耐熱絶縁層の間の剥離を防止される。
【0087】
耐熱絶縁層に使用されるバインダは、特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、アクリル酸メチルなどの化合物がバインダとして用いられうる。このうち、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸メチル、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いることが好ましい。これらの化合物は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
耐熱絶縁層におけるバインダの含有量は、耐熱絶縁層100重量%に対して、2~20重量%であることが好ましい。バインダの含有量が2重量%以上であると、耐熱絶縁層と多孔質基体層との間の剥離強度を高めることができ、セパレータの耐振動性を向上させることができる。一方、バインダの含有量が20重量%以下であると、無機粒子の隙間が適度に保たれるため、十分なリチウムイオン伝導性を確保することができる。
【0089】
耐熱絶縁層付セパレータの熱収縮率は、150℃、2gf/cm条件下、1時間保持後にMD、TDともに10%以下であることが好ましい。このような耐熱性の高い材質を用いることで、発熱量が高くなり電池内部温度が150℃に達してもセパレータの収縮を有効に防止することができる。その結果、電池の電極間ショートの誘発を防ぐことができるため、温度上昇による性能低下が起こりにくい電池構成になる。
【0090】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0091】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0092】
[シール部]
シール部(絶縁層)は、集電体同士の接触や単電池層の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いても良く、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いても良い。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが、好ましい。
【0093】
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
【0094】
[セルサイズ]
図2は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0095】
図2に示すように、扁平な双極型二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、双極型二次電池50の電池外装体(ラミネートフィルム52)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示す双極型二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、双極型電極23が、電解質層17を介して複数積層されたものである。
【0096】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装体に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0097】
また、図2に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0098】
一般的な電気自動車では、電池格納スペースが170L程度である。このスペースにセルおよび充放電制御機器等の補機を格納するため、通常セルの格納スペース効率は50%程度となる。この空間へのセルの積載効率が電気自動車の航続距離を支配する因子となる。単セルのサイズが小さくなると上記積載効率が損なわれるため、航続距離を確保できなくなる。
【0099】
したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体は大型であることが好ましい。具体的には、ラミネートセル電池の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、ラミネートセル電池の短辺の長さとは、最も長さが短い辺を指す。短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常400mm以下である。
【0100】
[体積エネルギー密度および定格放電容量]
一般的な電気自動車では、一回の充電による走行距離(航続距離)をいかに長くするかが重要な開発目標である。かような点を考慮すると、電池の体積エネルギー密度は157Wh/L以上であることが好ましく、かつ定格容量は20Wh以上であることが好ましい。
【0101】
また、電極の物理的な大きさの観点とは異なる、大型化電池の観点として、電池面積や電池容量の関係から電池の大型化を規定することもできる。例えば、扁平積層型ラミネート電池の場合には、定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積)の比の値が5cm/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である電池に対して本発明が適用されることが好ましい。このような大型でかつ高容量の電池においては、LiFSIを無機リチウム塩と併用せずに用いる場合における上記課題が特に顕在化しやすい。したがって、本発明の適用対象として、このような大型でかつ高容量の電池は特に適したものであるといえる。さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、車両要求性能と搭載スペースを両立できるという利点がある。
【0102】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0103】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0104】
[車両]
本形態の非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0105】
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、「部」は特に断りのない限り、「質量部」を意味する。
【0107】
[比較例1]
<負極ハーフセルの作製>
(負極サンプルの作製)
グローブボックス(露点は-80℃)の内部において、負極活物質であるハードカーボンと電解液とを混合し、振盪器を用いて1分間撹拌して、負極活物質スラリーを調製した。この際、固形分比率(ER)は5質量%となるように電解液の量を調節した。また、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とをEC:PC=1:1(体積比)の割合で混合した有機溶媒に、リチウム塩であるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI(LiN(SOF)))を2mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0108】
続いて、ニッケルメッシュ(目開き5μm)からなる基材上にφ15mmに型抜きしたガイドを設置した吸引治具を用意し、当該ガイドの内部に上記で調製した負極活物質スラリーを入れた。そして、ニッケルメッシュの下部より真空吸引装置を用いて吸引濾過を施すことにより、当該負極活物質スラリー中に含まれる溶媒成分を除去して、負極ケーキを得た。そして、溶媒成分が除去された負極ケーキをガイドから取り外した後に油圧プレス機を用いてプレスすることにより高密度化して、負極サンプルを得た。なお、得られた負極サンプルの空隙率は40%であった。また、得られた負極サンプルの厚さは400μmであった。
【0109】
(負極ハーフセルの組み立て)
負極ハーフセルの作用極として、上記で作製した負極ケーキを準備した。また、負極ハーフセルの対極として、リチウム金属箔(厚さ200μm)を準備した。さらに、集電体として銅箔(厚さ15μm)を2枚準備し、セパレータとしてポリプロピレン(PP)製微多孔膜(厚さ25μm)を準備した。
【0110】
上記で準備した各部材を、銅箔(集電体)/負極ケーキ(作用極)/PP製微多孔膜(セパレータ)/リチウム金属箔(対極)/銅箔(集電体)の順に積層して積層体を作製した。次いで、得られた積層体の両最外層に位置する銅箔(集電体)に電極リードを接続し、当該電極リードが外部に露出するように、上記積層体をラミネートシートからなる外装体の内部に封入した。そして、上記と同様の電解液を150μL注液した後に当該外装体を真空封止して、負極ハーフセルを作製した。
【0111】
<負極ハーフセルの評価>
(負極ハーフセルの初回充放電)
上記で作製した負極ハーフセルを45℃に設定した恒温槽(エスペック社製、PFU-3K)の内部に載置して調温し、その状態で充放電装置(北斗電工社製、HJ0501SM8A)を用いて当該負極ハーフセルに対して充電処理を施した。なお、この充電処理では、充電電流を0.05Cとし、CCCV充電(定電流・定電圧モード)にて負極の電位(vs.Li+/Li)が0.01Vに達するまで充電を行った。その後、負極の電位(vs.Li+/Li)が1.5Vに達するまで0.05Cでの定電流放電を行った。
【0112】
(負極ハーフセルの容量測定)
続いて、上記と同様の充放電条件で2サイクル目の充放電処理を行い、負極活物質の質量あたりの放電容量(mAh/g)、および負極活物質層の充放電対向面積あたりの放電容量(mAh/cm)を測定した。結果を下記の表1に示す。
【0113】
<フルセルの作製>
(正極サンプルの作製)
グローブボックス(露点は-80℃)の内部において、正極活物質である被覆リチウムコバルトアルミニウム複合酸化物(組成:LiNi0.8Co0.15Al0.05)と上記で用いた電解液とを混合し、振盪器を用いて1分間撹拌して、正極活物質スラリーを調製した。この際、固形分比率(ER)は5質量%となるように電解液の量を調節した。
【0114】
続いて、ステンレスメッシュ(目開き5μm)からなる基材上にφ15mmに型抜きしたガイドを設置した吸引治具を用意し、当該ガイドの内部に上記で調製した正極活物質スラリーを入れた。そして、ステンレスメッシュの下部より真空吸引装置を用いて吸引濾過を施すことにより、当該正極活物質スラリー中に含まれる溶媒成分を除去して、正極ケーキを得た。そして、溶媒成分が除去された正極ケーキをガイドから取り外した後に油圧プレス機を用いてプレスすることにより高密度化して、正極サンプルを得た。なお、得られた正極サンプルの空隙率は45%であった。また、得られた正極サンプルの厚さは400μmであった。さらに、正極ケーキの目付量は、正極容量Cに対する負極容量Aの比(容量比)の値がA/C=1.2となるように調節した。
【0115】
(フルセルの組み立て)
上記負極サンプルおよび正極サンプルを、セパレータとして準備したポリプロピレン(PP)製微多孔膜(厚さ25μm)を介して積層し、正極サンプル側の最外層に正極集電体としてアルミニウム箔(厚さ15μm)を配置し、負極サンプル側の最外層に負極集電体として銅箔(厚さ15μm)を配置して、発電要素を作製した。次いで、得られた発電要素の両最外層に位置する集電体に電極リードを接続し、当該電極リードが外部に露出するように、上記発電要素をラミネートシートからなる外装体の内部に封入した。そして、上記と同様の電解液を注液した後に当該外装体を真空封止して、フルセルを作製した。
【0116】
<フルセルの特性評価>
(フルセルの初回充放電)
上記で作製したフルセルを45℃に設定した恒温槽(エスペック社製、PFU-3K)の内部に載置して調温し、その状態で充放電装置(北斗電工社製、HJ0501SM8A)を用いて当該フルセルに対して充電処理を施した。なお、この充電処理では、充電電流を0.05Cとし、CCCV充電(定電流・定電圧モード)にて終止電圧4.2Vまで充電を行った。その後、終止電圧2.5Vまで0.05Cでの定電流放電を行った。
【0117】
(フルセルの放電レート特性の評価)
上記で初回充放電を行ったフルセルに対し、2サイクル目の充放電処理を行った。この際、放電時のレートを1Cおよび0.05Cに設定して同様の充放電処理をそれぞれ行い、放電容量を測定した。そして、0.05Cでの放電容量に対する1Cでの放電容量の百分率を算出して、放電レート特性の評価指標とした。結果を下記の表1に示す。
【0118】
(フルセルのサイクル特性の評価)
上記で初回充放電を行ったフルセルに対し、初回充放電と同様の充放電条件でさらに19サイクルの充放電処理を行い、20サイクル目の放電容量を測定した。そして、初回充放電における放電容量に対する20サイクル目の放電容量の百分率を算出して、サイクル特性の評価指標とした。結果を下記の表1に示す。
【0119】
(過熱時の負極の安定性の評価)
上記と同様の条件で初回充電を行った状態(SOC=100%)のフルセルをArのグローブボックス(露点は-60℃)内で解体し、負極活物質層(負極ケーキ)を取り出し、粉砕した。次いで、上記と同様のグローブボックス内で、所定温度に加熱したホットプレート上に落下させて、発火の有無を確認した。この際、ホットプレートの温度を120℃、140℃、160℃、180℃、200℃または250℃に設定し、発火が生じた温度(発火温度)を負極の安定性の評価指標とした。なお、この発火温度が高いほど、電池の温度が上昇した場合であっても、電池の劣化を引き起こしうる発熱反応の発生を抑制できることを意味する。結果を下記の表1に示す。
【0120】
[比較例2]
負極活物質の組成を、ハードカーボン100質量%から、ハードカーボン90質量%およびSiO 10質量%へと変更したこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0121】
[比較例3]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 2mol/Lから、LiFSI 1.5mol/LおよびLiPF 0.5mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例2と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0122】
[比較例4]
負極活物質の組成を、ハードカーボン100質量%から、ハードカーボン80質量%およびSiO 20質量%へと変更し、かつ、電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 2mol/Lから、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0123】
[比較例5]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiFSI 1.5mol/LおよびLiPF 0.5mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0124】
[比較例6]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiFSI 1.2mol/LおよびLiPF 0.8mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0125】
[実施例1]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiFSI 1mol/LおよびLiPF 1mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0126】
[実施例2]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiFSI 0.5mol/LおよびLiPF 1.5mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0127】
[実施例3]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiFSI 0.35mol/LおよびLiPF 1.65mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0128】
比較例8
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiFSI 0.1mol/LおよびLiPF 1.9mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0129】
[比較例7]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1.8mol/LおよびLiPF 0.2mol/Lから、LiPF 2mol/Lへと変更したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0130】
[実施例5]
負極活物質の組成を、ハードカーボン80質量%およびSiO 20質量%から、ハードカーボン90質量%およびSiO 10質量%へと変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0131】
[実施例6]
負極活物質の組成を、ハードカーボン80質量%およびSiO 20質量%から、ハードカーボン60質量%およびSiO 40質量%へと変更し、かつ、負極サンプルの厚さを300μmへと変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。
結果を下記の表2に示す。
【0132】
[実施例7]
負極活物質の組成を、ハードカーボン80質量%およびSiO 20質量%から、ハードカーボン10質量%およびSiO 90質量%へと変更し、かつ、負極サンプルの厚さを200μmへと変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0133】
[実施例8]
負極サンプルの厚さを50μmへと変更したこと以外は、上述した実施例7と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表3に示す。
【0134】
[実施例9]
負極サンプルの厚さを650μmへと変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表3に示す。
【0135】
[実施例10]
負極サンプルの厚さを1200μmへと変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表3に示す。
【0136】
[実施例11]
電解液中のリチウム塩の組成を、LiFSI 1mol/LおよびLiPF 1mol/Lから、LiFSI 1mol/LおよびLiBF 1mol/Lへと変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、負極サンプル、負極ハーフセル、フルセルをそれぞれ作製し、同様の評価を行った。結果を下記の表4に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
表1~表4に示す結果から、本発明に係る非水電解質二次電池によれば、Si材料を含む負極活物質を用い、LiFSIを含む電解液を用いた非水電解質二次電池において、電池の温度が上昇した場合であっても、電池の劣化を引き起こしうる発熱反応の発生を抑制することができることがわかる。
【符号の説明】
【0142】
10、50 双極型二次電池、
11 集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板(正極タブ)、
27 負極集電板(負極タブ)、
29、52 電池外装体、
31 シール部、
58 正極タブ、
59 負極タブ。
図1
図2