(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20221104BHJP
A47J 36/06 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A47J27/00 103E
A47J36/06 E
(21)【出願番号】P 2018081094
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】関 一真
(72)【発明者】
【氏名】小川 靖正
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 克弘
(72)【発明者】
【氏名】坂口 修一
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 俊英
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104433820(CN,A)
【文献】特開2016-202513(JP,A)
【文献】特開2002-028076(JP,A)
【文献】特開2002-219049(JP,A)
【文献】特開平11-046974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋内で発生した蒸気を外部へ放出する通路に、着脱自在に装着される蒸気口組立を備えた炊飯器において、
前記蒸気口組立は、
前記蒸気を内部に流入させる吸気口を設け、液化した前記蒸気を回収する蒸気口と、
前記蒸気を外部へ排出する排気口を設け、前記蒸気口の上面開口部を開閉自在に覆う蒸気口キャップと、を備え、
前記蒸気口は、
略長方形状の底部と、当該底部から垂直に立ち上がる一対の対向した側壁部と、前記蒸気口キャップの開閉時の移動方向を規制
し前記側壁部に沿ってそれぞれ走る一対の案内溝と、当該案内溝より
それぞれ突出した
一対のフランジ部と、係止受部とを有し、
前記蒸気口キャップは、当該蒸気口キャップ開閉時に前記案内溝に
それぞれ嵌入する
一対の挿入突部および前記フランジ部が
それぞれ嵌入する
一対の凹部と、前記蒸気口キャップが前記上面開口部を全て覆ったときに前記係止受部に係合する係止部と、を有することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記蒸気口と前記蒸気口キャップの間を密閉するパッキンをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記係止受部が前記フランジ部に設けられ、
前記凹部には前記係止部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱自在に装着される蒸気口組立を備えた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の炊飯器は多数報告され、例えば特許文献1には、炊飯鍋内で発生した蒸気を排気する排気通路の出口部分に蒸気口ユニットが着脱自在に装着され、当該蒸気口ユニットは、蒸気が流入する接続部を設けた受け皿状の下ケースと、排気口が設けられ、前記下ケースに着脱可能に取り付けられる上ケースと、これらケース間をシールする蒸気口パッキンとを備え、上ケースは下ケースの軸部を中心として回転可能であり、下ケースにおいて軸部と反対側に設けられた係止部が、上ケースに設けられた係止受部に係合することで、上ケースと下ケースとの組立を行なう炊飯器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気口ユニットのような蒸気口組立のお手入れをするときは、この蒸気口組立の分解、組立を行なうが、上述の特許文献1のような従来の炊飯器では、係止部と係止受部との係合状態が強固であると、蒸気口組立を分解し難いという問題があった。
【0005】
図23を参照して従来の炊飯器1の蒸気口組立としての蒸気回収ユニット17を説明すると、蒸気回収ユニット17は、蒸気を内部に流入させる吸気口205を設け、液化した蒸気を回収する蒸気口201と、前記蒸気を外部へ排出する排気口204(
図1参照)を設け、蒸気口201の上面開口部を開閉自在に覆う蒸気口キャップ202と、弾性部材からなり、蒸気口201と蒸気口キャップ202を密閉するパッキン203(
図1参照)と、蒸気口キャップ202下面の周縁部に設けられ、蒸気口201の係止受部201a(
図1参照)に係合する係止部としての蒸気口フック206と、で構成されている。そして、蒸気口キャップ202にパッキン203を配設した状態で、蒸気口201に設けられる突出部201b(
図1参照)を、蒸気口キャップ202の挿入孔202a(
図1参照)に挿入し、蒸気口フック206を係止受部201aに係合することにより、蒸気回収ユニット17の組立が行なわれる。ここで蒸気回収ユニット17では、蒸気口201と蒸気口キャップ202とでパッキン203が挟まれ、突出部201bと挿入孔202aとの挿入部と、蒸気口フック206と係止受部201aとの係合部と、で組立時の蒸気口201と蒸気口キャップ202とを固定しているが、パッキン203が挟まれる力に応じ、パッキン203の弾性力が蒸気口201および蒸気口キャップ202に対して働き、この弾性力が、上述の挿入部と係合部に集中してしまっていた。そのため係合部において、蒸気口201と蒸気口キャップ202とが離れる方向に弾性力が働き、係合状態が強固になり解除し難く、蒸気回収ユニット17が分解し難くなっていた。また蒸気回収ユニット17の組立時にも、弾性力が蒸気口201および蒸気口キャップ202に対して働くため、蒸気口フック206が係止受部201aに係合し難くなる虞があり、蒸気回収ユニット17が組み立て難くなる虞があった。その一方で、上述の挟まれる力を弱くすると、蒸気口201と蒸気口キャップ202との密閉が不完全になって、これらの間から蒸気が漏れてしまう虞があり、また使用中に蒸気回収ユニット17が分解する虞があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、蒸気口組立の分解、組立が容易に行なえる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炊飯器では、鍋内で発生した蒸気を外部へ放出する通路に、着脱自在に装着される蒸気口組立を備え、前記蒸気口組立は、前記蒸気を内部に流入させる吸気口を設け、液化した前記蒸気を回収する蒸気口と、前記蒸気を外部へ排出する排気口を設け、前記蒸気口の上面開口部を開閉自在に覆う蒸気口キャップと、を備え、前記蒸気口は、略長方形状の底部と、当該底部から垂直に立ち上がる一対の対向した側壁部と、前記蒸気口キャップの開閉時の移動方向を規制し前記側壁部に沿ってそれぞれ走る一対の案内溝と、当該案内溝よりそれぞれ突出した一対のフランジ部と、係止受部とを有し、前記蒸気口キャップは、当該蒸気口キャップ開閉時に前記案内溝にそれぞれ嵌入する一対の挿入突部および前記フランジ部がそれぞれ嵌入する一対の凹部と、前記蒸気口キャップが前記上面開口部を全て覆ったときに前記係止受部に係合する係止部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蒸気口と蒸気口キャップをスライド式で組立、分解でき、容易に係止部を係止受部に係合させてロックを掛けることができ、また容易に係合を解除してロックを外すことができる。したがって、蒸気口組立の分解、組立が容易に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の参考例を示す一般的な炊飯器の縦断面図である。
【
図2】同上、主な電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施例を示す炊飯器の蒸気回収ユニットの斜視図である。
【
図4】同上、蒸気回収ユニットの下から見た斜視図である。
【
図5】同上、蒸気回収ユニットの分解斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施例を示す炊飯器の縦断面図である。
【
図10】同上、炊飯器の蓋体が開いた状態を示す概略図である。
【
図11】本発明の第3実施例を示す炊飯器において蓋体が開いた状態を示す斜視図である。
【
図12】従来のしゃもじの斜視図および側面図である。
【
図13】本発明の第4実施例を示すしゃもじの斜視図および部分拡大図である。
【
図14】第4実施例の変形例を示すしゃもじの斜視図、部分拡大図およびX-X断面図である。
【
図15】第4実施例のさらなる変形例を示すしゃもじの斜視図および部分拡大図である。
【
図16】従来の炊飯器の加熱動作を模式的に示した説明図である。
【
図17】本発明の第5実施例を示す炊飯器の加熱動作を模式的に示した説明図である。
【
図18】従来の炊飯器付属品の外装箱への収納において、計量カップの収納を示す図である。
【
図19】同上、外装箱の上面を開いた状態を示す上面図である。
【
図20】同上、
図19とは別な外装箱の上面を開いた状態を示す上面図である。
【
図22】本発明の第5実施例を示す炊飯器付属品の外装箱への収納において、外装箱の断面概略図である。
【
図23】従来の炊飯器の蒸気回収ユニットの下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の参考例を説明する。まず
図1に基づき、本発明の参考例である一般的な炊飯器の構成について説明すると、1は炊飯器であり、上方から見て前面と後面、左側面と右側面が対向する略矩形状をなし、上面が開口された炊飯器1の本体2と、本体2の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体3とにより全体が構成される。本体2は上面を開口した鍋収容部4を有し、蓋体3を開けたときに、被調理物である水や米を収容する容器としての有底状の鍋5が、その鍋収容部4に着脱自在に収容される構成となっている。鍋収容部4は、椀状で樹脂製の内枠6や、金属製の内枠リング7などを組み合わせて構成され、全体が有底筒状に形成される。
【0011】
鍋5は、熱伝導性の良いアルミニウムを主材8とし、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体9が、主材8の外面の側部下部から底部にかけて接合してある。鍋5の外側面に対向する内枠リング7の外面には、加熱手段の一例としてコードヒータを用いた胴ヒータ11を備えている。また、鍋5の側面下部から底面に対向する内枠6の外面には、鍋5の発熱体9を電磁誘導加熱する加熱手段として、加熱コイル12を備えている。
【0012】
内枠6の底部中央部には、鍋温度検出手段としての鍋センサ14が、鍋5の外面底部と弾発的に接触するように配設される。鍋センサ14は、鍋5の温度を検知して加熱コイル12による鍋5の底部の加熱温度を主に温度管理する構成となっている。
【0013】
蓋体3の前方上面には、蓋開ボタン15が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン15を押すと、本体2と蓋体3との係合が解除され、本体2の上部後方に設けたヒンジバネ(図示せず)により、ヒンジ部16のヒンジ軸を回転中心として蓋体3が自動的に開く構成となっている。また、蓋体3の後方上面には、鍋5内の被調理物から発生する蒸気を炊飯器1の外部に排出する、外付けの蒸気口組立としての蒸気回収ユニット17が着脱可能に装着される。
【0014】
蓋体3は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋19と、蓋体3の下面を形成する放熱板20と、外蓋19および放熱板20を結合させて、蓋体3の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー21とを主たる構成要素としている。蓋体3の内部にあって、放熱板20の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ22が設けられる。この蓋ヒータ22は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0015】
放熱板20の下側には、蓋体3の下部部材としての内蓋組立体23が着脱可能に設けられる。この内蓋組立体23は、鍋5の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有する金属製の内蓋24と、鍋5と内蓋24との間をシールするための弾性部材からなる蓋パッキン25と、蓋パッキン25を内蓋24の外側全周に装着するための内蓋リング26と、鍋5の内圧力を調整する調圧部27とを備えている。環状に形成された蓋パッキン25は、蓋体3を閉じた蓋閉時に鍋5の上面に当接して、鍋5と内蓋24との間の隙間を塞ぎ、鍋5から発生する蒸気を密閉するものである。
【0016】
放熱板20には、蓋体3の特に内蓋24の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ22による内蓋24の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋センサ34が設けられている。また蓋体3の内部には、鍋5内で発生した蒸気を外部へ放出する通路として、蒸気口ユニット17と調圧部27とを連通する蒸気排出経路35が形成される。調圧部27には、鍋5の内部と蒸気回収ユニット17との間の蒸気排出経路35を開閉する調圧弁36が設けられる。調圧弁36はボール状で、蓋体3の内部に設けたソレノイド37と連動し、鍋5内の蒸気を外部へ放出する場合には蒸気排出経路35を開放し、鍋5内を加圧または減圧状態にする場合には蒸気排出経路35を閉塞するように、ソレノイド37が調圧弁36を転動させる。そして加圧時には、加熱コイル12への高周波通電により鍋5内の被炊飯物が加熱され、鍋5の内圧が所定値に達すると、調圧弁36の自重に抗して蒸気排出経路35を開放することで、鍋5内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。
【0017】
38は、蓋3を本体2に閉じた状態で、鍋5の内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧手段である。減圧手段38は、鍋5を鍋収容体4に収容し、蓋3を閉じた後にソレノイド37を通電して、調圧弁36が蒸気排出経路35を塞いだ状態で、密閉した鍋5の内部圧力を低下させる。また、鍋5内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧手段38の動作源となる減圧ポンプ39の動作を停止し、鍋5内部を減圧状態に保っている。さらに、鍋5内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ39の動作を停止し、減圧ポンプ39と鍋5の内部との間を連通する図示しない経路を開放する。つまり減圧手段38は、鍋5内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0018】
41は、加熱制御手段40を含むユニット化された加熱基板組立である。加熱制御手段40は、後述する表示・操作制御手段46と組み合わせて炊飯器1の各部を電気的に制御するために、マイクロコンピュータ(マイコン)などを含んで構成され、鍋センサ14や蓋センサ34からの各温度検知信号と、後述する操作部43からの操作信号とを受けて、炊飯時および保温時に鍋5を加熱する胴ヒータ11や加熱コイル12と、蓋体3を加熱する蓋ヒータ22を各々制御すると共に、ソレノイド37と、減圧ポンプ39の動作を各々制御する。ここでは加熱制御手段40が、鍋センサ14の検知温度に基いて主に加熱コイル12を制御して鍋5の底部を温度管理し、蓋センサ34の検知温度に基いて主に蓋ヒータ22を制御して、被炊飯物に対向する内蓋24を温度管理するように構成される。
【0019】
28は、炊飯器1の表示操作ユニットとなる操作パネルである。操作パネル28は、調理に関わる様々な情報を表示する表示部42と、炊飯を開始させたり、時間や炊飯コ-スなどを選択させたりするための操作部43(
図2参照)とを備えており、これらの下面には、操作パネル28の制御手段である表示・操作制御手段46を備えた制御PC(Printed Circuit:印刷回路)板47が配置される。制御PC板47はパターン形成された導電回路部を有し、この制御PC板47に操作や表示に関わる制御用IC等を実装することで、前述の加熱制御手段40と連携した表示・操作制御手段46が構成される。
【0020】
次に一般的な炊飯器の、上記構成における主な制御系統について、
図2を参照しながら説明する。炊飯器1の各部を電気的に制御する制御手段51は、上述したように加熱制御手段40と表示・操作制御手段46とを組み合わせて構成され、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に鍋5内の被調理物を炊飯加熱する炊飯制御手段52と、保温時に鍋5内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段53と、操作部43からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋5内の被調理物が炊き上がるように、炊飯制御手段52を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段54を備えている。
【0021】
55は、制御手段51からの制御信号を受けて、加熱コイル12に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、制御手段51の出力側には、制御手段51からの制御信号を受けて、放熱板20や内蓋24を加熱するように蓋ヒータ22を駆動させる蓋ヒータ駆動手段56と、胴ヒータ22を駆動させる胴ヒータ駆動手段57と、表示部55が各々設けられる。なお上述したように、表示部43は制御手段51の表示・操作制御手段46により表示を駆動させている。前記炊飯制御手段52による炊飯時、および保温制御手段53による保温時には、鍋センサ14と蓋センサ34からの各温度検出により、加熱コイル12による鍋5の底部への加熱と、胴ヒータ11による鍋5の側面への加熱と、蓋ヒータ22による内蓋24への加熱が行なわれるように制御する。また、炊飯制御手段52による炊飯が終了し、鍋5内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段53による保温に自動的に移行し、鍋センサ14の検知温度に基づき、加熱コイル21や胴ヒータ22による鍋5への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃~76℃)に保温するように構成している。
【0022】
そして上記構成において、鍋5内に被炊飯物である米および水を入れ、操作部43の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段52による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段52は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋5内の米に対する吸水を促進させるために、鍋センサ14による鍋5の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル12と胴ヒータ11で鍋5の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋5内の水温を約45~60℃に15~20分間保持するひたしを行なう。ひたし時には鍋5内は減圧状態が維持されるので、鍋5内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
【0023】
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段52は実質的な炊飯動作を開始し、加熱コイル12により鍋5を強加熱して、被調理物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋5の底部の温度が90℃以上になり、内蓋24の温度が90℃以上で安定したら、鍋5内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。
【0024】
なお、上述の内蓋24の温度が90℃以上で安定したことは、蓋センサ34からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋センサ14と蓋センサ34とにより、鍋5の底部および内蓋24がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋5内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0025】
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段52は蓋ヒータ22による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋24の温度が100~110℃になるように、蓋センサ34の検知温度により管理される。そして、鍋5の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋5内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段52による炊飯行程を終了し、保温制御手段53により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋センサ34の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ22を通断電し、内蓋24への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98~100℃)が保持されるように、鍋5の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15~20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段53による保温に移行する。
【0026】
保温になると、鍋5内に収容するご飯の温度よりも僅かに高くなるように、加熱コイル12にて鍋5の底部と側面下部を加熱すると共に、蓋ヒータ22により内蓋24を加熱し、さらに鍋5の側面を胴ヒータ11で、ご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。
【実施例1】
【0027】
次に、第1実施例の炊飯器の詳細な構成と、それによる作用について、
図3~
図7を参照しながら説明する。
【0028】
本実施例では、蒸気口組立としての蒸気回収ユニット17’の形状と構成が参考例とは異なる。すなわち、本実施例の蒸気回収ユニット17’は、参考例の蒸気回収ユニット17と同様に、液化した蒸気を回収する蒸気口61と、この蒸気口61の上面開口部を開閉自在に覆う蒸気口キャップ62と、蒸気口61と蒸気口キャップ62の間を密閉するパッキン63とを備えるものの、蒸気回収ユニット17のように蒸気口フックがない構造であり、蒸気口61と蒸気口キャップ62との分解、組立をスライド式で行なえるように構成している。
【0029】
具体的には、蒸気回収ユニット17’は略直方体形状に形成され、蓋体3の後方上面に着脱可能に装着された際に、外蓋19上面の表面形状と一致するように構成される。また蒸気回収ユニット17’は、下面部となる蒸気口61の底部61aに吸気口65が設けられ、上面部となる蒸気口キャップ62の上面部62aに排気口64が開口形成される。そして鍋5内の被調理物から発生する蒸気を、蒸気排出経路35を経由して、吸気口65から蒸気回収ユニット17’内に流入させ、排気口64から炊飯器1の外部へと排出させている。なお吸気口65は、蒸気排出経路35との接続部も兼ねている。
【0030】
蒸気回収ユニット17’は蒸気口61と蒸気口キャップ62で外面部が構成される。また
図4に示されるように、蒸気口キャップ62は蒸気口61の上面に沿って長手方向にスライドするように移動方向が規制されており、この蒸気口キャップ62をスライドさせることにより、蒸気回収ユニット17’の分解および組立を行なうように構成される。
【0031】
蒸気口61は、吸気口65が設けられた下面視略長方形状の底部61aと、この底部61aの各辺から垂直に立ち上がる、連続した4つの側壁部61bからなり、側壁部61bの上面にパッキン63設置用の溝61cが形成される。なお底部61aや長手方向の2つの側壁部61bに、蒸気口キャップ62のスライド時に指を掛ける指掛け部や滑り止め部を設けてもよい。
【0032】
長手方向の側壁部61bの外面には、蒸気口61の長手方向に沿って走る案内溝61dがそれぞれ形成される。この案内溝61dは一方の短手方向の側壁部61bにも設けられており、3つの側壁部61bで連続した案内溝61dを形成している。この案内溝61dは、蒸気口キャップ62の開閉時のスライド移動方向を規制しており、案内溝61dの上には、当該案内溝61dより相対的に突出したフランジ部61eが形成される。本実施例のフランジ部61eの厚さは側壁部61bよりも薄く、蒸気回収ユニット17’の組立を行なった際、蒸気口61の側壁部61bの外面と蒸気口キャップ62の側壁部62bの外面とが面一になるように構成される。また長手方向の2つのフランジ部61eには、それぞれ凹形状の係止受部67が設けられる。この係止受部67が設けられる位置は、案内溝61dが形成されない側壁部61b側近傍が望ましく、誤って反対方向から蒸気口キャップ62を挿入させても、蒸気口キャップ62が完全に閉まる前に、すぐ係止受部67に後述する係止部68が係合するため、蒸気口キャップ62を誤挿入したことを速やかに知ることができる。
【0033】
蒸気口キャップ62は、排気口64が設けられ、底部61aと上面視略同一形状である板状の上面部62aと、この上面部62aの2つの長辺および1つの短辺から垂直に降下する連続した3つの側壁部62bからなり、側壁部62bを設けていない方向から蒸気口キャップ62を蒸気口61にスライドさせることで蒸気回収ユニット17’の組立を行なう。これら3つの側壁部62bの内面には、連続した挿入突部62cが形成され、
図3に示すように、蒸気回収ユニット17’の組立を行なった際に、3つの側壁部62bの挿入突部62c全てが案内溝61dに嵌入し、また蒸気口61のフランジ部61e全てが、挿入突部62cと上面部62aとの間の凹部62dに嵌入するように構成されている。
【0034】
蒸気口キャップ62の長手方向の側壁部62bに形成された凹部62dには、凸形状の係止部68がそれぞれ形成されており、係止受部67に対応した位置に配設され、正しい方向から蒸気口61に蒸気口キャップ62を挿入したとき、蒸気口キャップ62が完全に閉まった位置で係止部68が係止受部67に係止するように構成される。なお係止部68の外面をR状に形成してもよい。また上面部62aや長手方向の2つの側壁部62bに、蒸気口キャップ62のスライド時に指を掛ける指掛け部や滑り止め部を設けてもよい。
【0035】
パッキン63は弾性部材からなり、断面円形のリング状である。またパッキン63は溝61cに配設され、蒸気回収ユニット17’の組立を行なった際に、蒸気口キャップ62の上面部62aの下面に密着して、蒸気口61と蒸気口キャップ62を密閉している。
【0036】
次に、上記構成の炊飯器1について、特に蒸気回収ユニット17’の分解および組立に関する作用を説明する。蒸気回収ユニット17’の組立に関する作用を説明すると、先ずパッキン63を溝61cに嵌入して蒸気口61に配設する。そして蒸気口キャップ62を、側壁部62bを設けていない方向から蒸気口61にスライドさせると、蒸気口キャップ62の挿入突部62cが、蒸気口61の案内溝61dの長手方向入り口付近に嵌入し、また蒸気口61のフランジ部61eが、蒸気口キャップ62の凹部62dの長手方向入り口付近に嵌入する。
【0037】
そしてパッキン63上を上面部62aの下面が摺動しながら、蒸気口キャップ62を蒸気口61の上面に沿って長手方向にスライドさせると、蒸気口61の長手方向のそれぞれの案内溝61dに沿って蒸気口キャップ62の挿入突部62cがスライドし、また、蒸気口キャップ62の長手方向のそれぞれの凹部62dに沿って蒸気口61のフランジ部61eがスライドする。そしてスライド中に係止部68がフランジ部61eに当接し、このフランジ部61eに係止部68が押されて、蒸気口キャップ62の長手方向の側壁部62bがそれぞれ外側に弾性変形する。
【0038】
さらに蒸気口キャップ62を、蒸気口61の上面に沿って長手方向にスライドさせると、蒸気口キャップ62の短手方向の挿入突部62cが蒸気口61の短手方向の案内溝61dに嵌入し、また蒸気口61の短手方向のフランジ部61eが蒸気口キャップ62の短手方向の凹部62dに嵌入する。このとき、係止部68が係止受部67の位置まで移動するため、弾性力により係止部68が係止受部67に係合してロックを掛けることで蒸気回収ユニット17’の組立が完了する。このように、蒸気口61と蒸気口キャップ62をスライド式で組み立てることができ、蒸気口キャップ62側に係止部68を、蒸気口61側に係止受部67をそれぞれ2か所ずつ設けているため、容易にロックを掛けることができる構成としている。また蒸気口61および蒸気口キャップの、それぞれの長手方向の側壁部61b,側壁部62bだけでなく、それぞれの一方の短手方向の側壁部61b,側壁部62bでも挿入突部62cが案内溝61dに嵌入し、フランジ部61eが凹部62dに嵌入するため、3方向の側壁部61bおよび側壁部62bでフランジ部61e下面が挿入突部62c上面を押し下げ、パッキン63を上面部62aの下面により確実に密着させることができ、またパッキン63からの弾性力を受ける部分を分散させることができる。したがって、蒸気口61と蒸気口キャップ62をより確実に密閉することができ、その一方で、蒸気口キャップ62を容易に開閉できる。
【0039】
次に蒸気回収ユニット17’の分解に関する作用を説明すると、組立時のスライド方向と逆方向(
図4の矢印方向)に蒸気口キャップ62をスライドさせると、係止部68の係合が解除されて、蒸気口61の長手方向のフランジ部61eに係止部68が押され、蒸気口キャップ62の長手方向の側壁部62bがそれぞれ外側に弾性変形する。そしてパッキン63上を上面部62aの下面が摺動しながら、蒸気口キャップ62を蒸気口61の上面に沿って長手方向にスライドさせると、蒸気口61の長手方向のそれぞれの案内溝61dに沿って蒸気口キャップ62の挿入突部62cがスライドし、また、蒸気口キャップ62の長手方向のそれぞれの凹部62dに沿って蒸気口61のフランジ部61eがスライドする。その後、さらに同方向に蒸気口キャップ62をスライドさせることで、蒸気口61と蒸気口キャップ62の分解が行なわれ、蒸気口キャップ62の長手方向の側壁部62bの弾性変形も解除される。そして、溝61cに配設されたパッキン63を取り外すことで、蒸気回収ユニット17’の分解が完了する。
【0040】
以上のように本実施例の炊飯器1は、鍋5内で発生した蒸気を外部へ放出する通路としての蒸気排出経路35に、着脱自在に装着される蒸気口組立としての蒸気回収ユニット17’を備え、蒸気回収ユニット17’は、前記蒸気を内部に流入させる吸気口65を設け、液化した前記蒸気を回収する蒸気口61と、前記蒸気を外部へ排出する排気口64を設け、蒸気口61の上面開口部を開閉自在に覆う蒸気口キャップ62と、を備え、蒸気口61は、蒸気口キャップ62の開閉時の移動方向を規制する案内溝61dと、当該案内溝61dより突出したフランジ部61eと、係止受部67とを有し、蒸気口キャップ62は、当該蒸気口キャップ62開閉時に案内溝61dに嵌入する挿入突部62cおよびフランジ部61eが嵌入する凹部62dと、蒸気口キャップ62が蒸気口61の上面開口部を全て覆ったときに係止受部67に係合する係止部68と、を有して構成される。
【0041】
そのため、蒸気口61と蒸気口キャップ62をスライド式で組立、分解でき、容易に係止部68を係止受部67に係合させてロックを掛けることができ、また容易に係合を解除してロックを外すことができる。したがって、蒸気回収ユニット17’の分解、組立が容易に行なえる。
【実施例2】
【0042】
図8~
図10は、本発明の第2実施例の炊飯器1’を示している。なお、参考例や第1実施例の炊飯器と共通する構成には、同一の符号を付し、同一の説明は重複を避けるため極力省略する。ここでの炊飯器1’は、蓋体3’内部に炊飯器1’の付属品となるしゃもじを収納することで、しゃもじ立てを不要にしてキッチンのスペースを確保している。
【0043】
しゃもじは被炊飯物であるご飯をよそうことから、しゃもじの床や机などへの直置きは衛生上の問題があり、回避する必要がある。従来は、例えば炊飯器の側面など、炊飯器の外部にしゃもじ立てを別に設け、このしゃもじ立てにしゃもじを収納していた。しかしながら、限られたキッチンの中でしゃもじ立てを設置するスペースを確保する必要があり、置き場に困る等の問題が発生する虞があった。この問題を解決するために、しゃもじ立てを設けず、しゃもじのヘラ部分を上にして自立するしゃもじが提案されている。
【0044】
しかしながら、炊飯器とは別にしゃもじ単独で配置するため、しゃもじを置いた際に紛失する等の問題が発生する虞があった。そこで本実施例では、炊飯器1’の蓋体3’内部にしゃもじを格納する格納容器75を設けて構成している。
【0045】
本実施例の構成を、
図8~
図10を参照しながら説明すると、71は、本体2’と蓋体3’との係合部に相当するクランプであり、基端部が蓋開ボタン15の下部に当接し、蓋体3内部に設けたクランプシャフト72を中心として、外蓋カバー19に対して回転自在に軸支される。73は、クランプ71の基端部を蓋開ボタン15側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段であり、これにより、蓋開ボタン15を常時上方に押し上げる力が作用している。
【0046】
74はしゃもじであり、75はしゃもじ74を格納する格納容器である。格納容器75は、しゃもじを格納する格納容器本体75aと、この格納容器本体75aの一側に設けられる孔部75bと、格納容器本体75aの他側に設けられ、格納容器本体75aを蓋体3内部に係合させるフック75cと、を有しており、蓋体3’内部に設けられ孔部75bを貫通する軸支部76を中心として、外蓋カバー19に対して回転自在に軸支される。またフック部75cはクランプ71と連動しており、蓋開ボタン15を押圧してクランプ71の基端部が下方に押されてクランプ71が回動すると、フック部75cの係合が解除されるように構成している。そしてフック部75cの係合が解除されると、軸支部76を中心として格納容器75が回動するが、蓋体3’が開いた際にしゃもじ74を取り出しやすい所定の角度、例えば蓋体3’の下面に対して45°の角度で格納容器75の回転が停止するように構成されている。
【0047】
次に
図10を参照しつつ、上記構成の炊飯器1’について、蓋体3’を開閉時に関する作用を説明する。先ず炊飯器1’の蓋体3’が閉じている時は、クランプ71およびフック部75cの係合は解除されておらず、格納容器75はしゃもじ74と共に蓋体3’内部に収納されている。ここで蓋開ボタン15を押圧すると、クランプ71の基端部が下方に押され、クランプ71がクランプ付勢手段73の付勢力に抗して回動して、クランプ71の係合が解除される。そしてヒンジ部16のヒンジ軸を回転中心として蓋体3’が自動的に開き、本体2’に対して外蓋カバー19が略90°の角度で停止する。
【0048】
クランプ71が回動すると、このクランプ71と連動するフック部75cが矢印方向に移動し、このフック部75cの係合が解除される。そして、格納容器75への重力および蓋体3’が開くときの格納容器75への慣性力により、格納容器75が軸支部76を中心として点線矢印の方向に回動し、蓋体3’の下面に対して所定の角度で格納容器75の回転が停止する。このようにして蓋体3’が開くと同時に、しゃもじ74と共に格納容器75が外蓋カバー19から出現する。その後、ユーザはしゃもじ74を格納容器75から取り出して使用する。
【0049】
しゃもじ74の使用後、ユーザはしゃもじ74を格納容器75に格納し、格納容器75を外蓋カバー19の方に回動させて蓋体3’内部に移動させる。このとき、蓋開ボタン15およびクランプ71はクランプ付勢手段73の付勢力により元の位置に戻っているため、フック部75cにより格納容器75を蓋体3内部に係合させる。その後、ヒンジ部16のヒンジ軸を回転中心として蓋体3’を閉め、クランプ71により本体2’と蓋体3’を係合させる。
【0050】
以上のように本実施例の炊飯器1’は、本体2’と蓋体3’を係合するクランプ71と、しゃもじ74を格納する格納容器75と、この格納容器75を蓋体3’内部に係合させる、クランプ71と連動するフック部75cと、を備え、クランプ71の係合が解除されるとフック部75cの係合も解除され、蓋体3’が開くと同時に蓋体3’の外蓋カバー19からしゃもじ74と共に格納容器75が出現するように構成されている。そのため、しゃもじ立てやしゃもじを設置するスペースを確保する必要が無く、置き場に困る等の問題が発生しない。またしゃもじ74は格納容器75と共に蓋体3’内部に格納されるため、しゃもじ74の紛失等の問題が発生しない。したがって、限られたキッチンのスペースを確保でき、またしゃもじ74で被炊飯物であるご飯をよそう効率が向上し、利便性が向上する。
【実施例3】
【0051】
図11は、本発明の第3実施例の炊飯器1”を示している。なお、参考例や第1実施例、第2実施例の炊飯器と共通する構成には、同一の符号を付し、同一の説明は重複を避けるため極力省略する。ここでの炊飯器1”は、蓋体3の天面部に配置された表示部42や操作部43の他にも、第2の表示部としてのLED82や第2の操作部としての保温ON・OFF釦83を設けることで、蓋体3を閉じることなく、この炊飯器1”が保温状態であるかどうかを確認でき、また保温のON・OFFの操作ができるようにしている。
【0052】
従来の炊飯器の表示部は、例えば第2実施例の炊飯器1’の表示部42のように、本体前方に配置されるものが一般的であった。しかしながら近年、例えば参考例の炊飯器1の表示部42のように、蓋体3の天面部に配置される意匠も多くなってきている。
【0053】
炊飯器は、例えば参考例の炊飯器1のように、炊飯完了後に自動的に保温になる機能を備えているものが多い一方で、食べ終わった後に自動的に保温をOFFにするものは少なく、ユーザ自ら炊飯器の保温のOFFを操作する必要がある。このとき、表示部42が蓋体3の天面部に配置されている場合、
図11に示されるように、蓋体3の蓋開時に、表示部42は蓋体3の天面部と共に後方を向いてしまい、保温をOFFにするために表示部42を確認する場合は蓋体3を一度閉める必要があった。保温をOFFにした直後は本体2および鍋5が高温であるため、本体2および鍋5の温度が下がってから蓋体3を開けて鍋5を取り出す方法が一般的である一方で、本体2および鍋5を冷ます際は蓋体3の開放が必要となる。しかしながら表示部42が蓋体3の天面部に配置されている炊飯器1の場合は、蓋体3の開放時に表示部42が視認できないため、保温をOFFしたか否かの確認を怠る虞があった。
【0054】
そこで本実施例では、本体2に、本体2に対する蓋体3の蓋開き角度を検知する角度センサ81と、LED82とを設けている。
【0055】
本実施例の炊飯器1”の構成を、
図11を参照しながら説明すると、81は角度センサであり、ヒンジ部16に設けられ、このヒンジ部16の回転角を検出している。角度センサ81は、ヒンジ部16の回転角を検出することで本体2に対する蓋体3の蓋開き角度を検知しており、蓋体3の蓋開き角度を検知する素子として作用している。そして角度センサ81は制御手段51の入力ポートに電気的に接続しており、検出した回転角の信号を制御手段51に送信する。なお本実施例では、ヒンジ部16の回転角を測定する角度センサ81を採用したが、本体2に対する蓋体3の蓋開き角度を検知できる素子や方法であれば、これに限定されない。
【0056】
82は、発光素子としてのLEDであり、本実施例のLED82は本体2の前面に配置され、第2の表示部として作用している。またLED82は、表示部42と同様に、制御手段51の出力ポートに電気的に接続しており、この制御手段51の保温制御手段53によりLED82の点灯、消灯が制御される。なお表示部43と同様に、表示・操作制御手段46により表示を駆動させてもよい。また本実施例では、LED82の配置場所は本体2の前面を採用したが、蓋体3の開放時に視認できる場所であれば、これに限定されない。そしてLED82の代わりに、光源ユニットを少なくとも一方の端部に配置した側面発光型の光ファイバーを採用してもよく、この光ファイバーからの発光する色で、保温など、炊飯器1”の動作状況を表示するように構成してもよい。
【0057】
83は、炊飯器1の保温のON・OFFを操作可能な保温ON・OFF釦であり、本実施例の保温ON・OFF釦83はLED82と同様に本体2の前面に配置され、第2の操作部として作用している。また保温ON・OFF釦83は、操作部43と同様に、制御手段51の入力ポートに電気的に接続しており、保温ON・OFF釦83からの信号が制御手段51に送信され、制御手段51の保温制御手段53がこの信号を受けて、炊飯器1”の動作を保温状態もしくは停止状態にするように制御している。なお本実施例では、保温ON・OFF釦83の配置場所は本体2の前面を採用したが、蓋体3の開放時にアクセスしやすい場所であれば、これに限定されない。
【0058】
次に、上記構成の炊飯器1”について、特に保温時の蓋体3の開放に関する作用を説明する。参考例で上述したように保温制御手段53による保温に移行すると、鍋センサ14の検知温度に基づき、加熱コイル12や胴ヒータ11による鍋5への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度に保温する。ここで蓋開ボタン15を押すと、本体2と蓋体3との係合が解除され、ヒンジ部16のヒンジ軸を回転中心として蓋体3が開いていく。このとき、角度センサ81はヒンジ部16の回転角を検出して、この検出した信号を制御手段51に送信する。
【0059】
角度センサ81からの検出した信号により、蓋体3が所定の角度、例えば90°に到達したと検知すると、保温制御手段53は蓋体3が蓋開状態であると判断して、LED82を点灯もしくは点滅するように制御する。このように構成することで、炊飯器1”の保温時かつ蓋体3の蓋開時にのみLED82を点灯もしくは点滅するように制御できる。
【0060】
ここで保温中に保温ON・OFF釦83を操作すると、保温ON・OFF釦83からの信号が制御手段51に送信される。そして保温制御手段53が炊飯器1”の制御を停止することにより、炊飯器1”の保温がOFFになり炊飯器1”が停止状態になる。また炊飯器1”が停止状態の時に保温ON・OFF釦83を操作すると、保温ON・OFF釦83からの信号が制御手段51に送信され、保温制御手段53による保温に移行し、炊飯器1”の保温がONになる。このように構成することで、表示部42および操作部43が蓋体3の天面部に配置された炊飯器1”の蓋開時でも、蓋体3を閉じることなく炊飯器1”が保温状態かどうかを確認でき、かつ保温のON・OFF操作ができる。なお、炊飯器1”の保温のON・OFF操作は蓋体3の蓋開時に限らず、蓋体3の蓋閉時であっても動作するようにしてもよい。
【0061】
炊飯器1”が保温状態かつ蓋体3が蓋開状態のまま一定の時間が経過すると、保温制御手段53は、点灯もしくは点滅させたLED82を、例えばLED82の点滅のバリエーションを変更するなど、変動させるように制御する。このとき併せて、報知手段としての図示しないスピーカーから音を発生させ、この音によってもユーザに周知するように炊飯器1”を構成してもよい。
【0062】
以上のように本実施例の炊飯器1”は、本体2に、本体2に対する蓋体3の蓋開き角度を検知する素子としての角度センサ81と、発光素子としてのLED82とを設け、炊飯器1”の保温時かつ蓋体3の蓋開時にLED82が点灯もしくは点滅するように構成される。そのため、表示部42が蓋体3の天面部に配置されている炊飯器1”でも、蓋体3を閉じることなくこの炊飯器1”が保温状態であるかどうかを確認できる。
【0063】
また本実施例の炊飯器1”は、蓋体3の天面部に配置されている操作部43以外にも、保温のON・OFF操作ができる第2の操作部としての保温ON・OFF釦83を本体2に備えており、表示部42が蓋体3の天面部に配置されている炊飯器1”でも、蓋体3を閉じることなくこの炊飯器1”の保温のON・OFF操作ができる。
【0064】
また本実施例の炊飯器1”は、炊飯器1”が保温状態かつ蓋体3が蓋開状態のまま一定の時間が経過すると、点灯もしくは点滅させたLED82を変動させるように制御し、併せて音を発生させて周知するように構成している。そのため、炊飯器1”が保温状態かつ蓋体3が蓋開状態のまま一定の時間が経過したことをユーザに報知することができる。
【実施例4】
【0065】
本発明の第4実施例に係るしゃもじについて、
図13~
図15を参照して説明する。ここでのしゃもじは、上記各実施例における炊飯器に使用されるものである。また比較のために、従来のしゃもじについての構造を
図12に示す。なお参考例や第1~第3実施例の炊飯器と共通する構成には、同一の符号を付し、同一の説明は重複を避けるため極力省略する。
【0066】
しゃもじは被炊飯物であるご飯をよそうことから、しゃもじの床や机などへの直置きは衛生上の問題があり、回避する必要がある。従来、この問題に対して、しゃもじ立てを使用せずに、ご飯をよそう部分であるヘラ部を設置面としての床や机などに接触させないように設置する自立式のしゃもじが提案されており、例えば実用新案登録第3161134号公報には、握り柄の基端面を平坦面に形成し、この平坦面を設置面としての床や机などに当接させて、しゃもじのヘラ部を上にして縦置きし、しゃもじを自立させたものが開示されている。しかしながら、この平坦面はしゃもじの高さに対して面積が小さく、しゃもじが安定して縦置きできない虞があった。また平坦面に、このしゃもじが安定して縦置きできるのに十分な面積を与えると、この平坦面が大きくなりすぎてしまう虞があり、しゃもじの使用や設置スペース確保に難がでる虞があった。そのため、握り柄の基端面を平坦面に形成したしゃもじで、握り柄とヘラ部との間を接続する自立形状部を下方に湾曲させ、この湾曲部の最下部に、設置面に当接させる突出部を設けたものが提案されている。
【0067】
図12(A)(B)を参照して従来の自立式のしゃもじ74を説明すると、従来のしゃもじ74はポリプロピレン製であり、ご飯をよそう部分であるヘラ部91と、ユーザが把持する握り柄92と、ヘラ部91と握り柄92との間に形成される自立形状部93とを備えている。ヘラ部91のご飯をよそう面91aを上面とすると、自立形状部93は、下方に湾曲した断面略U字状に形成されており、最下部に突出部94を有して構成される。突出部94は、自立形状部93から下方に延び、しゃもじ74の長手方向と垂直に、自立形状部93を横断するように形成される。
【0068】
握り柄92は、上面が平坦な断面略三角形状に形成され、ユーザが把持する部分である把持部92aと、しゃもじ74の基端に相当する基端部92bとからなる。把持部92aは基端から先端に向かって徐々に薄板状になるように形成される。基端部92bは、しゃもじ74の重量を集中的に配分するために、大きく形成されて下方に突出し、また基端面92cが平坦に形成される。このように構成することで、基端面92cを設置面に当接させて、しゃもじ74を安定して縦置きすることができる。また面91aを上側としてしゃもじ74を横置きしたとき、しゃもじ74は突出部94を支点として握り柄92側に回転し、突出部94と基端部92b最下部だけが設置面に当接することで、ヘラ部91を設置面に接触させずにしゃもじ74を横置きすることができ、清潔に保つことができる。そして基端部92bが滑り止めとなり、把持部92aを把持しやすくなる。
【0069】
しかしながら、このような構成の従来の自立式のしゃもじ74は、ご飯をよそう際の力に対して普通のしゃもじよりも弱く、形状的な強度不足を懸念されていた。具体的には、ご飯をよそう際に加わる力の方向が
図11(A)(B)において白抜き矢印で示されているが、これらの力が自立形状部93の強度に対して強く掛かる可能性があり、ご飯をよそう際に負荷が大きく掛かると、これらの負荷により自立形状部93が破壊され、しゃもじ74が折れてしまう虞があり、また、しゃもじ74が折れてしまうという不安感を解消できなかった。そこで本実施例では、しゃもじ74の自立形状部93に対して補強形状としてリブ96や凹部97を追加で設けて構成し、ご飯をよそう際に加わる負荷に対して強度を保ち、また自立形状部93の形状を利用して利便性の向上を図っている。
【0070】
図13(A)~(D)は本実施例のしゃもじ74
IIを示している。
図13(A)はしゃもじ74
IIの上面図、
図13(B)~(D)は
図13(A)のE部分の拡大図である。
【0071】
本実施例の構成を、
図13(A)(B)を参照しながら説明すると、96は補強形状としての凸状のリブであり、自立形状部93の上面に設けられる。一点鎖線Lは、自立形状部93における突出部94の上面視の位置を示しているが、リブ96は、この一点鎖線Lに対して平行な角度にならないよう、また同一線上に配置されないように設けられている。このように構成することで、従来のしゃもじ74から大きな変更などを加えずに、
図12(A)(B)において白抜き矢印で示されているようなご飯をよそう際に加わる力に対して、突出部94だけではなくリブ96によっても、自立形状部93の変形を抑制することができ、従来のしゃもじ74より強度を保つことができる。なお、リブ96と一点鎖線Lとの角度は90°に近づく程好ましく、例えば
図13(B)において、点線で示されたリブ96の配置よりも実線で示されたリブ96の配置の方が好ましい。
【0072】
図13(C)は
図13(B)の変形例であり、リブ96を、一点鎖線Lを中心とした上面視略S字状に形成している。また
図13(D)もまた
図13(B)の変形例であり、一点鎖線Lと90°の角度で配置されたリブ96の、ヘラ部91側の端部を2股に分岐させた上面視略Y字状に形成している。なお、このリブ96の分岐点96aは、一点鎖線L上に配置しないことが好ましい。このように構成しても、
図13(B)のリブ96と同様、もしくはそれ以上の効果を得ることができる。
【0073】
図14(A)~(C)は、しゃもじ74
IIの変形例であるしゃもじ74
IIIを示している。
図14(A)はしゃもじ74
IIIの上面図、
図14(B)は
図14(A)のF部分の拡大図、
図14(C)は
図14(B)のX-X断面図である。
【0074】
本変形例のしゃもじ74
IIIの構成を、
図14(A)~(C)を参照しながら説明すると、97は補強形状として、自立形状部93の肉厚を一定にして形成された凹部であり、しゃもじ74
IIIの自立形状部93の上面に、一点鎖線Lを略中心の線として、この一点鎖線Lの方向に2つ並べて設けられる。
図14(B)(C)に示されるように、凹部97は、断面略凹形状で規定の容量を収容でき、例えば計量スプーンのように、特定の容量を計量可能な計量機能を有している。このように構成することで、凹部97の輪郭部がリブ96と同様の役割を果たして、従来のしゃもじ74から大きな変更などを加えずに、自立形状部93の変形を抑制することができ、従来のしゃもじ74よりも強度を保つことができる。また、しゃもじ74
IIIに計量機能を設けることができる。なお本変形例では、しゃもじ74
IIIの自立形状部93に凹部97を2つ設けているが、これに限定されず凹部97の数は1つでも3つ以上でもよい。また凹部97の凹形状を変形させて容量の変更をしてもよく、凹部97に、例えば“1mL”などの容量表示部を形成してもよい。
【0075】
図15(A)(B)は、しゃもじ74
IIIのさらなる変形例であるしゃもじ74
IVを示している。
図15(A)はしゃもじ74
IVの上面図、
図15(B)は
図15(A)のG部分の拡大図である。本変形例では、それぞれの凹部97の一端にすぼみ形状98を設けて構成している。このように構成することで、しゃもじ74
IIIの凹部97の効果に加えて、例えば調味料など、凹部97に収納されて計量された粉状物または液状物を、すぼみ形状98から容易に注ぐことができる。
【0076】
以上のように本実施例の炊飯器はしゃもじ74IIを備え、しゃもじ74IIはご飯をよそうヘラ部91と、ユーザが把持する握り柄92と、ヘラ部91と握り柄92との間に形成され、しゃもじ74IIを設置面としての床や机に置いた際にヘラ部91が設置面に接触しないように設けられる自立形状部93とを備え、自立形状部93は最下部から下方に延び、しゃもじ74の長手方向と垂直に設けられる突出部94を有し、この突出部94の上面視の位置としての一点鎖線Lに対して平行な角度にならないよう、かつ同一線上に配置されないように設けられた補強形状としてのリブ96を有して構成される。そのため、従来のしゃもじ74から大きな変更などを加えない簡単な構造で、ご飯をよそう際に加わる負荷に対して、リブ96により自立形状部93の変形を抑制することができ、従来のしゃもじ74よりも強度を保つことができる。
【0077】
また本実施例の炊飯器はしゃもじ74IIIを備え、しゃもじ74IIIはリブ96を設けた部分としての自立形状部93に凹部97を設けて構成されており、従来のしゃもじ74から大きな変更などを加えない簡単な構造で、従来のしゃもじ74よりも強度を保つことができ、さらに、しゃもじ74IIIに計量機能を設けることができる。
【0078】
また本実施例の炊飯器はしゃもじ74IVを備え、しゃもじ74IVはそれぞれの凹部97の一端にすぼみ形状98を設けて構成されており、凹部97に収納されて計量された粉状物または液状物を、すぼみ形状98から容易に注ぐことができる。
【実施例5】
【0079】
本発明の第5実施例に係る炊飯器1
IIIの炊飯制御について、
図17を参照して説明する。また比較のために、従来の炊飯器1の炊飯制御を
図16に示す。なお、参考例や第1~第4実施例の炊飯器と共通する構成には、同一の符号を付し、同一の説明は重複を避けるため極力省略する。
【0080】
近年、腎不全患者や血糖値の高い方の食事療法用として「低たんぱく米」(米粒タイプで米がα化されたもの)が市販されている。この「低たんぱく米」は白米を加工して作られているため含水率が20~28%と高く、一度α化されているため、水の吸水も早いという特徴を有している。そのため、この「低たんぱく米」を従来の一般的な炊飯器の白米コースで炊飯した場合は、鍋に接触する部分のご飯が固くなったり、全体にご飯がやわらかくなりすぎたりして、最適な状態で炊飯することが困難であり、食味低下の虞があった。
【0081】
図16を参照して、従来の炊飯器1の白米コースで炊飯した場合を説明すると、上述した参考例のように、一般の白米コースでは、参考例で説明したひたし(吸水工程)が炊飯制御手段52のなかに組み込まれている。このため、吸水が早くかつ吸水量も多い低たんぱく米が必要以上に鍋5内に入れた水を吸水し、このひたし工程の段階で水がなくなってしまい、中心部へ熱を伝え難くなる。さらに、低たんぱく米は糊化が早く、温度の高い鍋5の内面側から糊化が始まることにより米粒間隔がなくなり、鍋5の内面周辺の米粒間を水が通らず、中心部へ熱が伝わり難くなる。その結果、鍋5の内面側の温度だけが高くなり、中心部が十分に熱せられないまま、鍋5底面の温度が白米制御温度に達して炊飯器1の炊飯を終了することとなり、軟らかい物,炊けていない物になってしまう虞があった。そこで本実施例の炊飯器1
IIIでは、加熱コイル12が700W以上で電磁誘導加熱し、鍋5の炊飯容量を2合以下とする低たんぱく米専用の炊飯制御を設けている。
【0082】
図17を参照しつつ、本実施例の炊飯器1
IIIで低たんぱく米を炊飯する場合について説明する。先ず、鍋5内に被炊飯物である低たんぱく米および水を入れるが、本実施例の炊飯器1
IIIでは、炊飯物であるご飯の炊飯容量が2合以下の小容量になるように、低たんぱく米の炊飯専用の低たんぱく米および水の量の水位線(図示せず)を設けており、この水位線にしたがって低たんぱく米および水を鍋5内に入れる。
【0083】
次に蓋体3を閉じて操作部43を操作し、例えば低たんぱく米コースを選択すると、炊飯制御手段52による炊飯が開始する。ここで低たんぱく米コースの加熱パターンでは、
図17に示すように「ひたし」工程を省略しており、これに基づいて炊飯制御手段52が、炊飯開始から沸騰まで加熱コイル12からの通電をOFFすることなく一気に沸騰まで加熱させることにより、少ない水での加熱が可能となる。また高周波電流による加熱コイル12の電磁誘導加熱を700W以上で行ない、低たんぱく米を一気に炊き上げることで、鍋5内のご飯を、余計な吸水をさせずに炊き上げることができる。したがって、低たんぱく米をより美味しく手軽に炊き上げることができる。なお、以降の工程については、特開2006-081656号公報に詳述されているため、説明を省略する。
【0084】
以上のように本実施例の炊飯器1IIIは、被炊飯物である低たんぱく米および水を収容する鍋5と、鍋5を収容する鍋収容部4を有する本体2と、鍋5を加熱する加熱手段としての加熱コイル12と、加熱コイル12を制御する制御手段としての炊飯制御手段52と、を備え、鍋5は、炊飯物であるご飯の炊飯容量が2合以下となるように、低たんぱく米および水の量の水位線を設け、炊飯制御手段52は、加熱コイル12が700W以上で電磁誘導加熱を行ない、「ひたし」工程を省略した加熱パターンの低たんぱく米専用炊飯制御としての低たんぱく米コースで加熱コイル12を制御するように構成している。そのため、少ない水での加熱が可能となり、また低たんぱく米を一気に炊き上げることで、鍋5内のご飯を、余計な吸水をさせずに炊き上げることができ、低たんぱく米をより美味しく手軽に炊き上げることができる。
【実施例6】
【0085】
本発明の第6実施例に係る炊飯器付属品の外装箱への収納構造について、
図22を参照して説明する。ここでの炊飯器付属品は、上記各実施例における炊飯器に使用されるものである。また比較のために、従来の炊飯器付属品の外装箱への収納構造について
図18~
図21に示す。なお参考例や第1~第5実施例の炊飯器と共通する構成には、同一の符号を付し、同一の説明は重複を避けるため極力省略する。
【0086】
従来、外装箱は、例えばダンボール製であり、炊飯器などの家電製品の輸送に使用される。この外装箱内には、例えば発泡スチロール製の包装パッキンが設けられ、この包装パッキンにより、家電製品が外装箱内で動かないように保持し、この家電製品を保護している。また家電製品の付属品も、通常は当該家電製品と共に外装箱内に収納されるが、このとき、当該付属品は家電製品の中に収納されるものや、包装パッキン内に収納されるものが多かった。
【0087】
図18~
図21を参照して、従来の家電製品の一例である炊飯器1の、例えば、しゃもじ74、計量カップ103、電源コード104などの炊飯器付属品の外装箱101への収納構造について説明すると、
図18に示されるように、炊飯器1の中である鍋5内に計量カップ103が収納され、また
図19に示されるように、外装箱101と包装パッキン102とで囲まれた包装パッキン102内のスペース105にしゃもじ74が収納されていた。
【0088】
しかしながら、計量カップ103やしゃもじ74の収納される状態によっては、外装箱101の輸送時や落下時の振動で、計量カップ103が鍋5内面に接触し、またはしゃもじ74が外蓋19や本体2外面と接触し、傷がつく虞や変形する虞があった。また包装パッキン102内への収納は、しゃもじ74などの付属品の形状が変更になった場合に、包装パッキン102の形状変更、すなわち包装パッキン102の金型の変更が必要となり、変更時の費用が高価であった。そのため、これらの傷や変形を防止する対策として、
図20に示されるような、外装箱101と炊飯器1後部との間に形成されるデッドスペース106を利用する収納構造が提案されている。
【0089】
これは
図21に示されるように、2つの包装パッキン102の長手方向の長さを短縮し、包装パッキン102と外装箱101の間の、炊飯器1後部のデッドスペース106に、上端を曲げたL字状の仕切り板108を配置し、外装箱101と仕切り板108の間のスペース109に電源コード104を収納するというものである。しかしながら、上述の計量カップ103やしゃもじ74などの付属品の収納に対する対策ではなく、また包装パッキン102内への収納の問題も解決されていなかった。さらに
図21に示すように、2つの包装パッキン102上縁に亘って中蓋110を設置すると、未だ広く存在している炊飯器1後部のデッドスペース106や炊飯器1前部のデッドスペース107に付属品などを収納できず、デッドスペース106,107を有効に活用できなかった。そこで本実施例では、安価な板としての支持板111を製品としての炊飯器1上方に追加してデッドスペース106,107を活用し、炊飯器1への傷や変形を防止する構成で付属品としてのしゃもじ74、計量カップ103、電源コード104を収納している。
【0090】
図22を参照しつつ、本実施例のしゃもじ74、計量カップ103、電源コード104を外装箱101へ収納する場合について説明する。111は、炊飯器1上方に配設されるダンボール製の支持板であり、
図20で示される2つの包装パッキン102の間に設けられる。この支持板111は、炊飯器1前部のデッドスペース107の形状に合わせて形状変更可能な第1の支持部111aと、炊飯器1後部のデッドスペース106の形状に合わせて形状変更可能な第2の支持部111bと、第1の支持部111aと第2の支持部111bを接続する平板状の支持部本体111cと、から構成される。そのため、安価なダンボール製の支持板111を追加するだけで、炊飯器1前部のデッドスペース107だけでなく炊飯器1後部のデッドスペース106も活用でき、炊飯器1への傷や変形を防止する構成でしゃもじ74や計量カップ103、電源コード104を収納できる。また、ダンボール製の支持板111は加工が容易であり、しゃもじ74や計量カップ103、電源コード104の形状が変更になっても、支持板111の加工を変更するだけで対応可能であり、その一方で、支持板111自体を変更する場合も、変更時の費用が安価である。なお支持板111の配置時、支持板111の高さや収納した付属品の高さが包装パッキン102上縁より低くなるように構成することが好ましく、支持板111に付属品を収納した後、中蓋110を設置することができる。
【0091】
図22に示される炊飯器1を例にして説明すると、この炊飯器1の前面は垂直に近い角度からなり、また前部のデッドスペース107はあまり広くないので、第1の支持部111aは断面略V字状に形成され、この第1の支持部111a内にしゃもじ74を配置することでデッドスペース107に収納している。その一方で、炊飯器1の後部は段部を有して形成され、後部のデッドスペース106は広いため、第2の支持部111bは断面略L字状に形成され、この水平部分に計量カップ103を吊設する切欠きや孔(図示せず)を設けている。また第2の支持部111bの端縁を断面略コの字状に折り返して形成し、この折り返し部の上に電源コード104を配置することで、計量カップ103および電源コード104を後部のデッドスペース106に収納している。この折り返し部は、計量カップ103と電源コード104の間の緩衝材および第2の支持部111bの変形を抑制する補強材の役割を果たしている。なお、第1の支持部111aの側縁部や第2の支持部111bの側縁部が包装パッキン102に当接し、この包装パッキン102に支持されるように構成してもよく、第1の支持部111aや第2の支持部111bの変形を抑制でき、これらの第1の支持部111aや第2の支持部111bに配置される付属品と、製品としての炊飯器1との接触を抑制できる。
【0092】
なお本実施例では、
図20に示された外装箱101に支持板111を追加した構成を採用したが、
図19に示された外装箱101に支持板111を追加する構成でもよく、その場合、第1の支持部111aや第2の支持部111bは、炊飯器1の左右のデッドスペースの形状に合わせて形状が決定される。
【0093】
以上のように本実施例では、炊飯器付属品としてのしゃもじ74や計量カップ103、電源コード104の、外装箱101への収納構造であって、外装箱101は、収納される製品としての炊飯器1と、この炊飯器1が外装箱101内で動かないように保持する包装パッキン102と、炊飯器1上方に配設される安価な板としてのダンボール製の支持板111とを内部に有し、外装箱101と、炊飯器1と、包装パッキン102とで形成されるデッドスペース106,107の形状に合わせて、支持板111の第1の支持部111aおよび第1の支持部111bを、例えば断面V字状や断面L字状、断面コの字状、切欠きや孔を設けるなどの形状変更をさせる構成としている。そのため、電源コード104だけでなく、しゃもじ74や計量カップ103も炊飯器1前部のデッドスペース107や炊飯器1後部のデッドスペース106に収納することができ、また
図20に示されるように炊飯器1の左右にデッドスペースがある場合も、これらのデッドスペースに付属品を収納することができる。また支持板111は加工が容易であり、しゃもじ74や計量カップ103、電源コード104の形状が変更になっても、支持板111の加工を変更するだけで対応可能であり、その一方で、支持板111自体を変更する場合も、変更時の費用が安価である。
【0094】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、第1実施例~第6実施例の各部を組み合わせた炊飯器を構成してもよい。また、第1実施例~第6実施例の各部の構成や形状は、図示したものに限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 炊飯器
5 鍋
17’ 蒸気回収ユニット(蒸気口組立)
35 蒸気排出経路
61 蒸気口
61a 底部
61b 側壁部
61d 案内溝
61e フランジ部
62 蒸気口キャップ
62c 挿入突部
62d 凹部
63 パッキン
64 排気口
65 吸気口
67 係止受部
68 係止部