(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 7/00 20060101AFI20221104BHJP
H01C 1/01 20060101ALI20221104BHJP
H01C 1/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C1/01 Z
H01C1/02 Z
(21)【出願番号】P 2018100971
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】宮下 恭平
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 大誠
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-504161(JP,A)
【文献】実開昭62-091443(JP,U)
【文献】実公昭48-032609(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 1/01
H01C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に抵抗体と一対の電極を形成してなる抵抗基板と、
少なくとも前記抵抗基板の上面と側面を覆い全体形状が略直方体の絶縁性の
外装体と、
一方端部が前記一対の電極それぞれに接続され、他方端部が前記
外装体の長手方向の一方側面を貫通して外部に延出する一対の外部接続導体と、
を備え、
前記外装体の前記一方側面に対向する他方側面側の底面上に、該底面において外部に露出した前記抵抗基板の底面から、前記外装体の上面と下面を貫く貫通孔を挟んで離間した位置に第1の突出部を設け
、
前記外装体の底面において前記貫通孔の周縁部の全部または一部を取り囲むとともに、該周縁部から、前記抵抗基板の底面の周辺部のうち前記貫通孔側の周辺部に至る領域に第2の突出部を設け、
前記外装体の底面において前記第1の突出部と前記第2の突出部とで挟まれる領域に、前記外装体の厚さ方向において該抵抗基板の底面よりも該外装体側に窪んだ凹部を設けたことを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記貫通孔に金属ブッシュが埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記第2の突出部は、さらに前記抵抗基板の底面の周辺部全体を囲むように延出していることを特徴とする請求項
2に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記外装体の厚さ方向において前記第2の突出部と前記抵抗基板の底面と前記
貫通孔の周縁部とが同一の高さにあり、前記第1の突出部は該同一の高さを超える高さを有することを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記第1の突出部は、一定幅を有しながら前記外装体の底面の長手方向に直交する方向の全幅に渡って延伸する単一の突出部で構成され、あるいは前記外装体の底面の長手方向に直交する方向の両端部に分離して配置された所定形状の突出部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項6】
前記貫通孔を挿通する締結体によって前記抵抗器を搭載物に搭載した際、前記第1の突出部の突出面が前記搭載物に面接触するとともに前記第2の突出部が前記搭載物に密着することを特徴とする請求項
1~5のいずれか1項に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱型のパワー抵抗器(大電力用抵抗器)に関する。
【背景技術】
【0002】
電力抵抗器(パワー抵抗器)は、搭載先の筐体、ヒートシンク等の吸熱体に取り付けて使用されることがある。例えば特許文献1は、セラミック基板に抵抗膜を設けた抵抗要素の周りに成形された合成樹脂からなる略矩形状の本体と、その本体を貫通するボルト穴と、本体の一端付近において底面上に設けられた段部または突出部とを備えた電力抵抗器を開示している。
【0003】
特許文献2は、半導体チップを固着した支持板と外部リードの一部を封止樹脂で被覆した構成を有する半導体装置を開示している。また、特許文献3は、プリント基板に実装可能に設計されたフイルム型抵抗器を開示しており、平坦なセラミックチップと、そのセラミックチップの上側表面に施された抵抗フイルムと、その抵抗フイルムに電気的に接合された端子と、その端子の先端区画とセラミックチップの上側表面を埋め込む合成樹脂本体とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平11-504161号公報(特許第3756188号)
【文献】実公平04-012676号
【文献】特開平5-226106号公報(特許第2904654号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した抵抗器は、金属筐体等へ搭載する際、合成樹脂等からなる抵抗器本体部に形成した貫通孔にネジを通して締結されるが、このときネジ締結側が金属筐体へ固定されるため、振動等によりネジ締結部を中心に回転するおそれがあり、それを防ぐためにネジを強固に締め付ける必要がある。
【0006】
上記の特許文献1では、ボルト穴にボルトを通して抵抗器を吸熱体に締め付けたとき、抵抗器の下側に設けた突出部が所定の高さを有することで、合成樹脂からなるパッケージ体の反りまたは曲がりを補償する構成をとっている。特許文献3は、合成樹脂本体に設けたボルト穴が、抵抗器内の基板の底面が平坦な基台領域に対して熱移送関係で締め付けられるように、基台領域の対応する穴内に延びるボルトを受け入れるように構成している。
【0007】
しかしながら、特許文献1,3の構成では、ネジ締結時に過剰なトルクがかかると、抵抗本体に対して上部から押し付ける圧縮力が加わり、抵抗本体の熱放散部分が金属筐体等の吸熱体へ押し付けられてしまい、抵抗本体や内部の抵抗基板が破損するおそれがある。
【0008】
特許文献2の半導体装置は、封止樹脂4の裏面4bに貫通孔6を挟んで一対の凹部15が形成されているが、ねじ13に締め付けトルクを加えても封止樹脂4の裏面4bの隅部が放熱体に接触しないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属筐体等へのネジ締結時および使用時においても外装樹脂体、抵抗基板等が破損せず、かつ金属筐体等の搭載先へ抵抗器を密着させて放熱性を高めることが可能な構造を有する大電力用の抵抗器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本発明の抵抗器は、絶縁基板上に抵抗体と一対の電極を形成してなる抵抗基板と、少なくとも前記抵抗基板の上面と側面を覆い全体形状が略直方体の絶縁性の外装体と、一方端部が前記一対の電極それぞれに接続され、他方端部が前記外装体の長手方向の一方側面を貫通して外部に延出する一対の外部接続導体とを備え、前記外装体の前記一方側面に対向する他方側面側の底面上に、該底面において外部に露出した前記抵抗基板の底面から、前記外装体の上面と下面を貫く貫通孔を挟んで離間した位置に第1の突出部を設け、前記外装体の底面において前記貫通孔の周縁部の全部または一部を取り囲むとともに、該周縁部から、前記抵抗基板の底面の周辺部のうち前記貫通孔側の周辺部に至る領域に第2の突出部を設け、前記外装体の底面において前記第1の突出部と前記第2の突出部とで挟まれる領域に、前記外装体の厚さ方向において該抵抗基板の底面よりも該外装体側に窪んだ凹部を設けたことを特徴とする。
【0011】
例えば、前記貫通孔に金属ブッシュが埋設されていることを特徴とする。例えば、前記第2の突出部は、さらに前記抵抗基板の底面の周辺部全体を囲むように延出していることを特徴とする。例えば、前記外装体の厚さ方向において前記第2の突出部と前記抵抗基板の底面と前記貫通孔の周縁部とが同一の高さにあり、前記第1の突出部は該同一の高さを超える高さを有することを特徴とする。さらには、例えば、前記第1の突出部は、一定幅を有しながら前記外装体の底面の長手方向に直交する方向の全幅に渡って延伸する単一の突出部で構成され、あるいは前記外装体の底面の長手方向に直交する方向の両端部に分離して配置された所定形状の突出部で構成されることを特徴とする。また、例えば、前記貫通孔を挿通する締結体によって前記抵抗器を搭載物に搭載した際、前記第1の突出部の突出面が前記搭載物に面接触するとともに前記第2の突出部が前記搭載物に密着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ネジ締結時にモールド樹脂体および抵抗基板にかかる応力を緩和し、過剰なトルクによるモールド樹脂体および抵抗基板の破損を防止した抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る抵抗器(パワー抵抗器)を表側(上面側)から見たときの外観斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る抵抗器を裏側(底面側)から見たときの外観斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る抵抗器の側面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る抵抗器を
図1の矢視A-A´線に沿って切断した断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る抵抗器の底面に形成した各突出部と凹部の厚さ方向における寸法を示す断面図である。
【
図6】外部接続導体をリード端子とした抵抗器(パワー抵抗器)の例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る抵抗器の製造工程を時系列で示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る抵抗器を裏側から見たときの外観斜視図である。
【
図9】
図8の抵抗器の裏面を下側にして矢視C-C´線に沿って切断した断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る抵抗器を裏側から見たときの外観斜視図である。
【
図11】
図10の抵抗器の裏面を下側にして矢視D-D´線に沿って切断した断面図である。
【
図12】第1の樹脂突出部の変形例を示す図である。
【
図13】モールド樹脂に形成した段差部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る抵抗器(パワー抵抗器)を表側(上面側)から見たときの外観斜視図であり、
図2は抵抗器を裏側(底面側)から見たときの外観斜視図である。
図3は抵抗器の側面図である。また、
図4は、第1の実施形態に係る抵抗器を、
図1の矢視A-A´線に沿って切断した断面図である。
【0015】
図1等に示す第1の実施形態に係る抵抗器1は大電力用抵抗器であり、アルミナ等の絶縁基板13の表面に抵抗体と電極23を形成してなる抵抗基板15を備え、電極23に外部接続端子(ハーネス電線7a,7b)を接続して、抵抗基板15の裏面と外部接続端子の一端を外部に露出させた状態でモールド樹脂体3により封止した構成を有す
【0016】
具体的には、
図2に示すように、アルミナ等からなる直方体形状の絶縁基板13の下面側を、抵抗器1の本体部であるモールド樹脂体3より露出させたことで、抵抗基板15の下面側を除く全体がエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂(モールド樹脂、あるいは外装樹脂ともいう。)で覆われた構成になっている。絶縁基板13の上面側には、スクリーン印刷等により、例えば酸化ルテニウム系の材料からなる厚膜抵抗体(不図示)が形成されている。
【0017】
図4に示すように、モールド樹脂体3の一方端側から外部に引き出された一対のハーネス電線7a,7bは、その先端部(モールド樹脂体3に収容された部分)の被覆が除去され、圧着端子が取付けられ、はんだ、溶接、超音波接合、導電性接着剤、焼結型接合剤等により電極23に接続されている。また、ハーネス電線7a,7bに取り付けた圧着端子は、電極23との接合部近傍においてクランク状に折り曲げられている。こうすることにより、後述するガラス保護膜や抵抗基板15の表面との接触を防ぐとともに、外部からの引張応力に対する強度を確保する。
【0018】
ハーネス電線7a,7bの他方端部(モールド樹脂体3の外部に露出された部分の先端)には、ハーネス電線7a,7bをネジ等により他の電気機器、部品等に接続するための丸型端子(リングターミナル)9a,9bが、かしめ等によって圧着されている。本実施形態では丸型端子を用いているが、端子の種類はこれに限定せず、Y型端子等を用いることもできる。ハーネス電線7a,7bは樹脂により被覆されているので、後述するリード端子のように端子間の絶縁を確保する必要がない。
【0019】
つまり、抵抗器1を実装した後にハーネス電線7a,7bが他の金属部分に接触しても短絡等を起こすことはないことから、抵抗器1を機器等の内部に実装する際、ハーネス電線7a,7bを相互に近づけた配線構造が可能になる。
【0020】
モールド樹脂体3の長手方向において、抵抗基板15が配置された側とは逆側の端部近傍には、モールド樹脂体3の表面と裏面間を貫通する貫通孔5が形成されている。貫通孔5は、抵抗器1をヒートシンク、あるいはアルミダイキャスト等からなる金属筐体に取り付けて、抵抗基板15に形成した抵抗体18で発生した熱を金属筐体等に伝導させて放熱する際のネジ締結部(ネジ25を挿通するネジ穴)である。
【0021】
貫通孔5には、円筒状の金属ブッシュ8が埋設されている。金属ブッシュ8により、モールド樹脂体3で封止された抵抗器1を搭載先の金属筐体へ直接接触させてネジ締結する際にすべりが生じるのを回避し、金属ブッシュ8と金属筐体とのネジ締結により強固な取付けが可能となる。また、貫通孔5に金属ブッシュ8を埋設したことで貫通孔5の内壁等が補強され、使用時の振動によりモールド樹脂体3に亀裂等が生じることを防止でき、抵抗器1の搭載時の信頼性が向上する。
【0022】
金属ブッシュ8は、例えばステンレス、銅、鉄等からなり、これらの金属材料を所定寸法にカットして円筒状に丸める等して製造する。なお、抵抗器1の搭載先が金属でない場合、あるいは振動等が問題とならない用途での使用であれば、金属ブッシュを省略することもできる。
【0023】
図1および
図2に示す第1の実施形態に係る抵抗器1の表面と底面に着目すると、抵抗器1の裏面(
図2)においては、抵抗基板15の底面が露出するとともに、モールド樹脂体3の一部を所定形状に突出あるいは埋没させた第1の樹脂突出部4、第2の樹脂突出部14、凹部(脆弱部ともいう)10、および段差部12が形成されている。また、抵抗器1の表面(
図1)には、金属ブッシュ8の周囲にその金属ブッシュ8の軸方向端部と同一面となるようにモールド樹脂体3を隆起させてなる第3の樹脂突出部2が形成されている。
【0024】
第1の樹脂突出部4は、モールド樹脂体3の長手方向において外部接続導体(ハーネス電線7a,7b)の導出側と貫通孔5を挟んだ反対側の底面端部に形成されている。第2の樹脂突出部14は、抵抗器1の裏面(
図2)において金属ブッシュ8の軸方向端部と同一面となるようにその金属ブッシュ8の周囲を囲むとともに、抵抗基板15の全周囲に形成された突出部である。これら第1の樹脂突出部4と第2の樹脂突出部14とで囲まれる(挟まれる)領域に、抵抗基板15の底面よりもモールド樹脂体側に窪んだ凹部10が形成されている。
【0025】
図5は、抵抗器1の底面に形成した上記各突出部と凹部の、抵抗器の厚さ方向における寸法を示す断面図である。抵抗基板15の底面を基準の高さ(基準線B1で示す)としたとき、基準線B1から第1の樹脂突出部4の頂部までの高さ(基準線B2で示す)H1が、抵抗器1の底面部において最も高い。例えば、第1の樹脂突出部4は、抵抗基板15の底面よりもH1=0.05mm高く形成されている。
【0026】
第1の樹脂突出部4は、モールド樹脂体3の長手方向に直交する方向に、モールド樹脂体3の両端部間全幅に亘って形成されており、最も高い部分(頂部)を平らにした平坦部を有する。この平坦部は、抵抗器1をネジ締結して搭載先に搭載したとき、その搭載先と面接触する。その際、第1の樹脂突出部4により、ネジ(締結体)による締結時に印加された応力が緩和され、その応力を分散させることができる。
【0027】
ネジ締結の際、ネジ頭部による加圧力が第3の樹脂突出部2によっても緩和され、モールド樹脂体3への応力が分散される。なお、第1の樹脂突出部4については、応力の分散という目的が達成される限り、その頂部が緩やかな丸みを帯びた尾根状の形状としてもよい。
【0028】
第1の実施形態に係る抵抗器1では、
図2に示すように金属ブッシュ8の周囲と抵抗基板15の全周囲とを囲むように形成された第2の樹脂突出部14によって、
図5に示すように抵抗器1の底面部における金属ブッシュ8と抵抗基板15の高さを揃えている。つまり、第2の樹脂突出部14によって、金属ブッシュ8から抵抗基板15までのモールド樹脂体3の高さを同一にしている。
【0029】
これは、抵抗器1において、金属ブッシュ8や抵抗基板15がモールド樹脂体3の底面よりも突出していると、抵抗器の製造中あるいは使用中にモールド樹脂体3や抵抗基板15の欠けが生じたり、あるいはネジ締結時の圧縮力によりモールド樹脂体3、抵抗基板15や搭載先にキズ、欠け、亀裂が生じることが考えられるからである。
【0030】
逆に、金属ブッシュ8や抵抗基板15がモールド樹脂体3の底面よりも引っ込んでいる(抵抗器1の内部側へ入り込んでいる)と、実装が不安定になったり、搭載先と抵抗基板15との十分な密着性が確保できなくなる等の問題が生じる。
【0031】
なお、第2の樹脂突出部14については、少なくとも、抵抗基板15の貫通孔5側の端部から、金属ブッシュ8の周辺部のうち抵抗基板15側を囲む下半分までの範囲(
図2において符号S1に示す部分)のモールド樹脂体3を突出させて形成されていれば、その目的を達成できる。
【0032】
一方、第2の樹脂突出部14は抵抗基板15の周囲においては、抵抗基板15の寸法公差を許容した金型の設計等を考慮して、
図2に示すように、抵抗基板15の全周囲(
図2の符号S2で示す範囲)にも樹脂の突出部を形成している。これにより、設計、製造が容易になるというメリットに加えて、抵抗基板15の周囲を樹脂突出部で囲んだことで、抵抗基板15の欠けやキズ等を防止できるとともに抵抗基板15の突出高さのばらつきが抑えられ、搭載先へ密着させて良好な放熱性を得ることができる。
【0033】
第1の実施形態に係る抵抗器1では、上記のように、その底面において貫通孔5の近傍であって、外部接続導体(ハーネス電線7a,7b)を導出する側と反対側のモールド樹脂体3の長手方向端部に第1の樹脂突出部4を設けた。こうすることで、貫通孔5の金属ブッシュ8に取付用ネジを通して締め付けたときに、第1の樹脂突出部4が形成された側とは長手方向反対側の抵抗器本体部(モールド樹脂体3)の底面端部を搭載先へ押し付けるように密着させることができる。すなわち、第1の樹脂突出部4は、抵抗器1をネジ締結したときに抵抗基板15を搭載先に押し付けるように作用する。
【0034】
さらに、第1の実施形態に係る抵抗器1では、第1の樹脂突出部4の高さH1と、第1の樹脂突出部4の端部から、貫通孔5の中心までの距離Lとに相関関係を持たせている。例えば、第1の樹脂突出部4が高いほど距離Lを大きくし、第1の樹脂突出部4が低いほど距離Lを小さく形成する。また、この他に第1の樹脂突出部4の高さH1は、抵抗基板15の端部からの距離や、第2の樹脂突出部14の端部からの距離、抵抗器1全体の大きさ(抵抗器サイズ)等を併せて考慮しても良い。
【0035】
第1の実施形態に係る抵抗器1は、ネジ締結時に過剰なトルクがかかった場合であっても金属ブッシュ8により抵抗器1への影響が抑制された構造となっているが、モールド樹脂体3の金型設計の寸法公差等により第1の樹脂突出部4が高くなり過ぎてしまうこと等が考えられる。その場合、ネジ締結時の圧縮力により抵抗器1に亀裂が生じ、破損することが懸念される。
【0036】
そこで、第1の実施形態に係る抵抗器1では、仮に抵抗器1が破損しても、内部の抵抗基板に影響のない箇所が破損するようにするため凹部10を設けている。
図2、
図5等に示すように凹部10は、モールド樹脂体3の底面のうち外部接続導体(ハーネス電線7a,7b)を導出する側と反対側であって、第1の樹脂突出部4と第2の樹脂突出部14とで挟まれる領域に形成されている。凹部10は、抵抗基板15の底面
の高さを基準(基準線B1)として、これよりも低くなるように(高さH2)形成されている。
【0037】
抵抗器等では、搭載時における絶縁性を維持するという観点から、2つの導体部間にある絶縁物の表面に沿った最小距離である沿面距離(抵抗器の場合、その導体部と搭載先の金属筐体間の表面に沿った距離)を確保する必要がある。そのため、第1の実施形態に係る抵抗器1では、
図2、
図4等に示すようにモールド樹脂体3の底面の外部接続導体を導出する側の端部に段差部12が形成されている。
【0038】
段差部12によって、
図4において点線
410で示す経路の沿面距離が確保できる。
図4に示す抵抗器1では、外部との接続にハーネス電線7a,7bを用いているので、ハーネス電線と電極23との接合部から搭載基板までの沿面距離を長く確保することができる。
【0039】
段差部12は、沿面距離確保の役割を担うことのみならず、ネジ締結時等にモールド樹脂体3や抵抗基板15の角部や縁部の欠け、割れ等を防止できるという効果が奏される。
図5に示すように段差部12の高さH3は、抵抗基板15の底面の高さを基準(基準線B1)としたとき、凹部10と同じ(H2)か、あるいは抵抗器1の底面部において最も低くなるように形成する。
【0040】
第1の実施形態に係る抵抗器における外部接続端子は、上記のハーネス電線7a,7bに限定されない。
図6は、外部接続導体をリード端子とした抵抗器(パワー抵抗器)41の例を示している。
図6(a)は抵抗器41を表側(上面側)から見た平面図、
図6(b)は、
図6(a)の矢視B-B´線に沿って切断した断面図である。なお、
図6において、ハーネス電線を使用した、
図4に示す抵抗器1と同一構成要素には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略する。
【0041】
図6の抵抗器41において、リード端子27a,27bは銅等からなる線材の表面に金属めっきが施され、あるいは、絶縁基板13に形成した電極23との接合部を除く表面に絶縁コーティングを施した線材等を使用する。リード端子27a,27bも、上述したハーネス電線7a,7bと同様、
図6(b)に示すように電極23との接合部近傍においてクランク状に折り曲げられている。
【0042】
抵抗器41では、外部接続導体としてモールド樹脂体3の外部に露出し、被覆のないリード端子27a,27bを使用している。そのため、沿面距離の確保が重要であり、例えば、
図6(b)に示すように、外部接続導体を導出する側の端部に段差部22を形成して、点線61で示す経路の沿面距離を確保している。
【0043】
次に、第1の実施形態に係る抵抗器の製造方法について説明する。
図7は、第1の実施形態に係る抵抗器の製造工程を時系列で示すフローチャートである。
図7のステップS11において抵抗器の絶縁基板を準備する。ここでは、電気絶縁性および熱伝導性に優れた、例えばアルミナ基板等からなる多数個取り用の大判の絶縁基板を準備する。続くステップS13で、絶縁基板の表面と裏面それぞれに、基板分割用の溝として一次分割用の溝と二次分割用の溝を形成する。
【0044】
ステップS15で、基板上に所定形状の一対の電極をスクリーン印刷し、焼成する。電極材料として、例えば銀(Ag)系、銀-パラジウム(Ag-Pd)系の電極ペーストを使用する。そして、ステップS17において、上記一対の電極間に抵抗体ペーストをスクリーン印刷し、焼成することで、所定パターンの抵抗体を形成する。なお、これらのステップS15,17の順序については、抵抗体の形成工程を実行した後に電極の形成工程を行ってもよい。
【0045】
ステップS19では、抵抗体等が形成された絶縁基板の上面全体を覆うようにガラスを印刷して保護膜を形成する。その際、電極上のハーネス電線との接合部となる部分にはガラスを印刷せず、保護膜の上記接合部が位置する部位に、例えば直方体状の孔を形成する。すなわち、ここでの保護膜は、絶縁基板の上部全体を覆うガラス被膜であるが、ハーネス電線との接合部には被膜を形成しないので、その接合部に位置する部分には、上記の直方体状の孔が形成される。
【0046】
ステップS21において、あらかじめ基板の一方向に設けた溝を分割ラインとする1次分割を行って、基板を短冊状に分割する。続くステップS23では、上記のように短冊状に分割した基板を、あらかじめ上記一方向と直交する方向に設けた溝にしたがって2次分割し、抵抗器を個片に分割する。
【0047】
ステップS25では、電極に外部接続導体を接合する。外部接続導体としてハーネス電線を使用する場合には、一方端の被覆を所定長だけ除去したハーネス電線に圧着端子を取り付け、他方端にリングターミナルを取り付けたものを用意して、ハーネス電線の一方端を、上述したように保護膜に形成された直方体状の孔の中に導く。そして、ハーネス電線の一方端と、電極上の接合部とをはんだ付けまたは溶接等により接合する。他方端のリングターミナルは、後述のステップS27の後に取り付けても良い。
【0048】
外部接続導体としてリード端子を使用する場合は、
図6(b)に示すように、クランク状に折り曲げた一方端をはんだ付けまたは溶接により電極23に接合する。
【0049】
ステップS27ではモールド成形を行い、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂により抵抗基板の上面側と側面側すべてを覆い、下面側のみを露出するとともに、壁面に沿って円筒状の金属ブッシュを埋設した、ネジ止め用の貫通孔5を形成する。
【0050】
なお、抵抗体を形成した後の工程で、例えば、電極間において抵抗値を測定し、その値をもとにレーザビームやサンドブラスト等により抵抗体のパターンに切れ込みを入れることによって、抵抗体の抵抗値調整(トリミング)を行ってもよい。また、上記のガラス保護膜上にモールド樹脂体とは別に樹脂保護膜を形成してもよい。
【0051】
以上説明したように第1の実施形態に係る抵抗器は、抵抗器の本体部であるモールド樹脂体の底面において、貫通孔の近傍であって、モールド樹脂体の長手方向における外部接続導体の導出側と反対側の端部に第1の樹脂突出部を設け、さらに、貫通孔に埋設した金属ブッシュの周囲と抵抗基板の全周囲とを囲むように第2の樹脂突出部を形成した。
【0052】
第1の樹脂突出部によって、抵抗器を搭載先に搭載する際に貫通孔に取付用ネジを通して締め付けたとき、印加された応力を分散するとともに、この突出部が形成された側とは長手方向反対側の抵抗器本体部(モールド樹脂体)の底面端部(抵抗基板の底面)を搭載先へ押し付けるように密着できる。また、第2の樹脂突出部によって、抵抗器の底面部における金属ブッシュと抵抗基板の高さを揃えることで、抵抗器の製造中あるいは使用中におけるモールド樹脂体や抵抗基板のの欠け、あるいはネジ締結時の圧縮力によるモールド樹脂体、抵抗基板や搭載先のキズ、欠け、亀裂が生じることを防止できる。
【0053】
さらに、モールド樹脂体の底面のうち外部接続導体が導出された側とは反対側であって、第1の樹脂突出部と第2の樹脂突出部とで挟まれた領域に、抵抗器の底面において外部に露出している抵抗基板の底面の高さよりも低い凹部を形成することで、仮にネジ締結時等において抵抗器が破損することがあっても、その内部の抵抗基板に影響のない箇所を破損させることができる。
【0054】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る抵抗器(パワー抵抗器)を裏側(底面側)から見たときの外観斜視図である。
図9は、
図8の抵抗器の裏面を下側にして矢視C-C´線に沿って切断した断面図である。
図8等において、第1の実施形態に係る抵抗器と同一構成には同一の符号を付してある。また、第2の実施形態に係る抵抗器を表側(上面側)から見たときの外観は、
図1と同じであるため、ここではその図示を省略する。
【0055】
図8等に示すように、大電力用抵抗器である第2の実施形態に係る抵抗器21は、その底面側において抵抗基板15の底面が露出している。また、抵抗器21には、モールド樹脂体3の長手方向の端部のうち、抵抗基板15が配置された側とは逆側の端部(底面端部)に、尾根状に突出しながらモールド樹脂体3の長手方向と直交する方向(短手方向)に延出する第1の樹脂突出部4が形成されている。
【0056】
さらに、抵抗器21の裏面において、金属ブッシュ8の軸方向端部と同一面となるように、その金属ブッシュ8の周囲を囲むとともに抵抗基板15の全周囲に第2の樹脂突出部14が形成されている。そして、第1の樹脂突出部4と第2の樹脂突出部14との間には、モールド樹脂体3の短手方向に直線状に延びる凹部20が形成されている。
【0057】
抵抗器21では、
図9の断面図において破線で囲む部位を拡大して示すように、抵抗器21の凹部20の底面を基準としたときの抵抗基板15の底面の高さ(第2の樹脂突出部14の高さ)H5は、凹部20の底面を基準とする第1の樹脂突出部4の頂部までの高さH6よりも低い。
【0058】
すなわち、抵抗器21の底面部では、凹部20の底面が最も低い位置にあり、第1の樹脂突出部4が最も高い位置にあることから、凹部20の底面→抵抗基板15の底面→第1の樹脂突出部4の順に高くなるように形成されている。こうすることで、相対的に第1の樹脂突出部4の高さを確保できるので、抵抗器21をネジ締結して搭載先に搭載したとき、抵抗基板15の底面が搭載先の面に押し付けられやすくなり、密着した面接触による良好な放熱を実現できる。
【0059】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の第3の実施形態に係る抵抗器(パワー抵抗器)を裏側(底面側)から見たときの外観斜視図である。
図11は、
図10の抵抗器の裏面を下側にして矢視D-D´線に沿って切断した断面図である。
図10等においても、第1の実施形態に係る抵抗器と同一構成には同一の符号を付してある。また、第3の実施形態に係る抵抗器を表側(上面側)から見たときの外観は、
図1と同じであるため図示を省略する。
【0060】
図10等に示す第3の実施形態に係る抵抗器31の底面側では、抵抗基板15の底面が露出している。さらに底面側において、モールド樹脂体3の長手方向の端部のうち、抵抗基板15が配置された側とは逆側の端部(底面端部)には、尾根状に突出しながらモールド樹脂体3の長手方向と直交する方向(短手方向)に延出する第1の樹脂突出部4が形成されている。
【0061】
抵抗器31の裏面では、金属ブッシュ8の軸方向端部と同一面となるように、その金属ブッシュ8の周囲を囲むとともに抵抗基板15の全周囲に第2の樹脂突出部14が形成されている。また、第1の樹脂突出部4と抵抗基板15との間には、モールド樹脂体3の短手方向において、ネジ止め用の貫通孔5を挟んで対称な位置に一対の凹部30a,30bが形成されている。
【0062】
凹部30a,30bは、その一方端部がモールド樹脂体3の長手方向の端部の一部となり、他方端部は、一方端部の両端からモールド樹脂体3の短手方向に直線状に延びる低背壁状部と、貫通孔5の近傍において連結している。これらの連結部には、平面視したとき丸み(アール)が付与されている。
【0063】
このように、第1の樹脂突出部4と抵抗基板15との間、すなわち、抵抗器31をネジ締結する際に最もトルクのかかる貫通孔5(金属ブッシュ8)の近傍の2箇所に凹部30a,30bを形成したことで、過剰なトルクがかかったときに、これらの凹部30a,30bが割れやすくなる。その結果、抵抗器31の内部の抵抗基板15に影響のない箇所を破損させることができ、抵抗基板15への過剰トルクの影響を低減できる。
【0064】
なお、凹部30a,30bの形状は、
図10に示す例に限定されず、平面視ほぼ長方形、あるいは半円や台形でもよい。その場合、モールド成形時の樹脂の充填しやすさと、金型からの抜けやすさ(成形部分を欠けにくくする)の観点から、角部に丸み(アール)を付与する。
【0065】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、抵抗器の外部接続導体の導出側と反対側のモールド樹脂体の長手方向端部に設けた第1の樹脂突出部4は、
図2等に示す形状に限定されない。
図12(a)~(c)は、変形例に係る抵抗器の底面を平面視して示しており、
図12(a)の抵抗器51aは、外部接続導体(不図示)の導出側と反対側の抵抗器端部であって、抵抗器の長手方向に直交する方向の両端部に離間して配置した2つの矩形突出部4a,4bを第1の樹脂突出部としている。
【0066】
同様に、
図12(b)の抵抗器51bは、抵抗器端部であって、抵抗器の長手方向に直交する方向の両端部に離間して配置した2つの楕円状突出部4c,4dを第1の樹脂突出部としている。また、
図12(c)の抵抗器51cは、抵抗器端部の両端部に離間して配置した2つの三角状突出部4e,4fを第1の樹脂突出部とした例である。
【0067】
一方、
図12(d)は、
図2等に示す第1の樹脂突出部4の変形例に係る突出部44を有する抵抗器51dの外観である。抵抗器51dの底面端部において長手方向に直交する方向に延びる突出部44は、その中央部Mを長手方向両端側よりも低くして、これら両端側が、頂部が平坦な凸状部4g,4hをなす形状を有する。よって、
図12(a)~
図12(c)に示すように、第1の樹脂突出部として抵抗器の幅方向の両端に分離させて2つの突出部4a~4fを形成し、また、
図12(d)に示す突出部44のように、その両端側を中央部よりも高くして凸状部4g,4hを形成することで、モールド樹脂体の幅方向の反りを軽減し、搭載先への密着性を向上できる。
【0068】
また、沿面距離を確保するために外部接続導体を導出する側の端部に設ける段差部の形状も、
図4および
図6(b)に示す例に限定されない。例えば、
図13に示す例では、外部接続導体としてモールド樹脂体80の外部にリード端子77を露出させた抵抗器81において、モールド樹脂体80の内部側に切込みを入れた形状の段差部32を形成している。その結果、点線71で示す経路(導体部であるリード端子と実装基板間)の沿面距離を確保できる。
【符号の説明】
【0069】
1,21,31,41,51a~51d,81 抵抗器
2 第3の樹脂突出部
3,30,80 モールド樹脂体
4 第1の樹脂突出部
4a~4f,44 突出部
4g,4h 凸状部
5 貫通孔
7a,7b 外部接続端子(ハーネス電線)
8 金属ブッシュ
9a,9b 丸型端子(リングターミナル)
10,20,30a,30b 凹部(脆弱部)
12,22,32 段差部
13 絶縁基板
14 第2の樹脂突出部
15 抵抗基板
18 抵抗体
23 電極
25 ネジ
27a,27b リード端子