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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】車両用内装品
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20221104BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/14 20170101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/16 20170101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/225 20170101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/54 20170101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/80 20170101ALI20221104BHJP
   B60Q 3/78 20170101ALI20221104BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B60R11/02 Z
B60Q3/14
B60Q3/16
B60Q3/225
B60Q3/217
B60Q3/54
B60Q3/80
B60Q3/78
A47C31/02 B
A47C31/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018109706
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019209913
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 歩実
(72)【発明者】
【氏名】力石 智宏
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-062131(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0077338(US,A1)
【文献】米国特許第06450678(US,B1)
【文献】特開2006-062431(JP,A)
【文献】特開平04-358813(JP,A)
【文献】特開2015-039900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 11/02
B60Q 3/14
B60Q 3/16
B60Q 3/225
B60Q 3/217
B60Q 3/54
B60Q 3/80
B60Q 3/78
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1表皮材(17)と、該第1表皮材(17)の表面に、端部同士が互いに間隔部(40)を空けて対向するように配置された第2表皮材(25)及び第3表皮材(27)とを備える加飾表皮(7)と、
表面が前記加飾表皮(7)に覆われ、前記間隔部(40)に対応する位置にスリット(43)を備える芯材(9)と、
前記芯材(9)の裏側且つ前記間隔部(40)に対応する位置に配置された光源(51)と、
前記第2表皮材(25)及び第3表皮材(27)の端部間に亘り、前記第1表皮材(17)の表面との間に空間(S)が区画されるように設けられたステッチ糸(37)とを備える
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2表皮材(25)の端部と前記第3表皮材(27)の端部とが互いに対向する方向における前記間隔部(40)の幅は、前記第2表皮材(25)及び前記表皮材(27)の前記間隔部(40)に臨む各端面と前記第1表皮材(17)の表面とで形成される凹所の深さよりも大きい
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2表皮材(25)及び前記第3表皮材(27)の前記間隔部(40)に臨む各端面と前記第1表皮材(17)の表面とは、凹所を形成し、
前記ステッチ糸(37)は、前記第2表皮材(25)の端部と前記第3表皮材(27)の端部とが互いに対向する方向において、前記凹所の開口全体に亘り当該開口の上方を延びる
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記ステッチ糸(37)は、前記第2表皮材(25)及び前記第3表皮材(27)の各端部の表面に設けられている
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記第2表皮材(25)及び前記第3表皮材(27)は、互いに対向するそれぞれの端部に、前記第1表皮材(17)の表面に接するように折り返された折り返し部(29)を備え、
前記折り返し部(29)間に前記間隔部(40)が空けられている
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項において、
前記第1表皮材(17)の表面のうち、前記間隔部(40)に位置する部分は、前記ステッチ糸(37)が目視可能に投影される状態にある
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項7】
請求項において、
前記第1表皮材(17)の表面は光沢を有している
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項において、
前記光源(51)は、車両の方向指示装置(60)の作動に応じて光るものである
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項9】
請求項において、
前記光源(51)は、車幅方向に複数配置され、
複数の前記光源(51)は、前記方向指示装置(60)の指示方向と同じ方向を示すように光るものとされている
ことを特徴とする車両用内装品。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項において、
前記第1表皮材(17)、前記第2表皮材(25)及び前記第3表皮材(27)の各厚みは、0.8mm以上1.2mm以下である
ことを特徴とする車両用内装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、隣り合う表皮材の継ぎ目に線状に発光する縁部材を備えた車両内装品が開示されている。この車両内装品は、縁部材が発光することで意匠性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-189029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、縁部材の出光部が表皮材の継ぎ目から突出していて、その出光部の先端において発光するようになっており、縁部材からの光が車室内に向けて一様に発光するので、発光部分が単純となり、意匠性の点では不十分である。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用内装品の構造に工夫を加えることで、加飾パネルからの光により影を映し得るようにして、車両用内装品の意匠性を向上させるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、この発明では、対向する表皮材の端部間に間隔部を空けておき、端部間に亘ってステッチ糸を設け、間隔部を発光させてステッチ糸を陰影として浮かび上がらせるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明は、透光性を有する第1表皮材と、該第1表皮材の表面に、端部同士が互いに間隔部を空けて対向するように配置された第2表皮材及び第3表皮材とを備える加飾表皮と、表面が前記加飾表皮に覆われ、前記間隔部に対応する位置にスリットを備える芯材と、前記芯材の裏側且つ前記間隔部に対応する位置に配置された光源と、前記第2表皮材及び第3表皮材の端部間に亘り、前記第1表皮材の表面との間に空間が区画されるように設けられたステッチ糸とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記ステッチ糸は、前記第2表皮材及び前記第3表皮材の各端部の表面に設けられていることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第2表皮材及び前記第3表皮材は、互いに対向するそれぞれの端部に、前記第1表皮材の表面に接するように折り返された折り返し部を備え、前記折り返し部間に前記間隔部が空けられていることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、前記第1表皮材の表面のうち、前記間隔部に位置する部分は、前記ステッチ糸が目視可能に投影される状態にあることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、前記第1表皮材の表面は光沢を有していることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つにおいて、前記光源は、車両の方向指示装置の作動に応じて光るものであることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、前記光源は、車幅方向に複数配置され、複数の前記光源は、前記方向指示装置の指示方向と同じ方向を示すように光るものとされていることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第1~第7の発明のいずれか1つにおいて、前記第1表皮材、前記第2表皮材及び前記第3表皮材の各厚みは、0.8mm以上1.2mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、光源からの光は、スリットを通り間隔部に入射される。間隔部は透光性を有している。このため、光源の光は間隔部を透過して、間隔部が発光する。間隔部の表面側には、ステッチ糸が設けられている。このため、ステッチ糸は間隔部からの光の一部を遮る。したがって、車室内から見れば、加飾パネルからの光内にステッチ糸の影が浮かぶように生じて、意匠性を向上させることができる。
【0016】
第2の発明によれば、ステッチ糸は、第2表皮材及び第3表皮材の各端部の表面に設けられているので、ステッチ糸と第1表皮材との間の空間として、少なくとも第2表皮材及び第3表皮材の厚み分の寸法を安定して確保することができる。よって、第2表皮材及び第3表皮材の表面にステッチ糸を設けるという簡単な構成で、ステッチ糸と第1表皮材との間に十分な空間を確保することができ、立体感及び奥行感が高まる。
【0017】
第3の発明によれば、間隔部が折り返し部間に形成されているので、別途特別な部材を使用せずに第2表皮材及び第3表皮材の各端面と間隔部とで形成される凹所の深さ(空間の高さ)を、第2表皮材及び第3表皮材の厚みよりも深くすることができる。よって、ステッチ糸と第1表皮材との間の空間を十分確保することができるため、立体感及び奥行感がさらに高まる。
【0018】
第4の発明によれば、ステッチ糸の影が間隔部に映るので、立体感及び奥行感をさらに高めることができる。
【0019】
第5の発明によれば、第1表皮材の表面が光沢を有していることで、特に間隔部のうち光源によって発光しない部位に映るステッチ糸の影が際立って目視し易くなる。したがって、立体感及び奥行感をさらに高めることができる。
【0020】
第6の発明によれば、車室内から方向指示装置が作動しているか否か確認し易くなる。
【0021】
第7の発明によれば、車室内から方向指示装置が示す方向を確認し易くなる。
【0022】
第8の発明によれば、第2及び第3表皮材の各端面と第1表皮材の表面とで形成される凹所の深さを確保することができると共に、折り返し部を形成する場合には折り返し易くなる。さらに、第1表皮材が、第2表皮材及び第3表皮材に引っ張られて表面側に浮いてしまうことで、第1表皮材とステッチ糸との間に形成される空間が狭くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用内装品としての加飾パネルが取り付けられた自動車のインストルメントパネルの略左半分を示す正面図である。
図2】加飾パネルの斜視図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】加飾パネルの分解斜視図である。
図5】加飾表皮の斜視図である。
図6】コントローラの構成を示す模式図である。
図7】全てのLEDが点灯している状態のインストルメントパネルを示す正面図である。
図8】右寄りに位置するLEDが消灯している状態のインストルメントパネルを示す正面図である。
図9】左寄りに位置するLEDが点灯している状態のインストルメントパネルを示す正面図である。
図10】第1表皮材と第2表皮材とを地縫いにより縫合した状態を示す工程図である。
図11】第2表皮材に折り返し部を形成した状態を示す工程図である。
図12】第1表皮材と第3表皮材とを地縫いにより縫合した状態を示す工程図である。
図13】第3表皮材に折り返し部を形成した状態を示す工程図である。
図14】第2及び第3表皮材にラインステッチを施した状態を示す工程図である。
図15】加飾表皮の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
〈全体構成〉
図1は自動車用のインストルメントパネル1の助手席側である略左半分を示す。このインストルメントパネル1の運転席側及び助手席側には、図1に示すように、それぞれ車幅方向に帯状に延びるパネル装着部3、3が形成されている。このパネル装着部3、3には、本発明の実施形態に係る車両用内装品としての加飾パネル5、5がそれぞれ装着されて、自動車の内装に意匠的なアクセントを付与している。
【0026】
以下、助手席側のパネル装着部3に装着された加飾パネル5を例に説明する。
【0027】
図2及び図3に示すように、加飾パネル5は、前記パネル装着部3の形状に対応する横長板状のパネルである。この加飾パネル5は、加飾パネル5の表面層を構成する加飾表皮7、加飾パネル5の裏面層を構成する芯材としての樹脂製の基材パネル9、発泡ウレタン等からなるクッション材11及び発光装置50を備えている。
【0028】
〈加飾表皮〉
図3図5に示すように、加飾表皮7は、複数の表皮材が縫合されたものである。加飾表皮7は、基材パネル9の表面よりも大きい面積を有する細長いシート状のもので、基材パネル9の表面と平行に延びている。加飾表皮7は、第1表皮材17、第2表皮材25及び第3表皮材27を備えている。
【0029】
第1表皮材17は、加飾表皮7の車幅方向全体に亘って延びる細長い長方形状に形成されている。第1表皮材17は、厚みが0.8mm以上1.2mm以下であることが好ましい。第1表皮材17は、光沢及び透光性を有している。第1表皮材17は、例えば、半透明に着色された合皮からなる。具体的には、第1表皮材17を構成する軟質の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、アクリル、PC(ポリカーボネート)や、金属調の光沢及び透光性を有する材料(例えば、東レ製、商品名「ピカサス(PICASUS:商標名)」)等が挙げられる。
【0030】
第2表皮材25及び第3表皮材27は、第1表皮材17の表面に重ねられた状態で、端部同士が互いに間隔部40を空けて対向するように配置されている。第2表皮材25及び第3表皮材27は、第1表皮材17と車幅方向の長さが一致した長方形状に形成されており、厚みは0.8mm以上1.2mm以下であることが好ましい。第2表皮材25及び第3表皮材27は、例えば、例えば本革、合皮、ファブリックからなる。第2表皮材25及び第3表皮材27を合皮とする場合は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、TPO(サーモプラスチックオレフィン)、TPU(サーモプラスチックウレタン)等の樹脂材でスラッシュ成形されたものが挙げられる。
【0031】
図15にも示すように、第2表皮材25及び第3表皮材27の各端部は、第1表皮材17の長さ方向(車幅方向)に平行に延びかつ互いに一定の間隔部40を空けて対向するように配置されている。第2表皮材25及び第3表皮材27の対向している各端部には各表皮材25,27の端縁部を裏側に折り返した折り返し部29が形成されている。図3に示すように、各折り返し部29の端縁部は、各クッション材11の端部と突き合わされている。
【0032】
第2表皮材25及び第3表皮材27の対向している各端部と間隔部40とで囲まれる部分に溝状の凹所31が形成されている。また、各折り返し部29は、その凹所31側の端部で地縫い糸33により第1表皮材17と縫合されていると共に、第2表皮材25及び第3表皮材27の対向している各端部は、折り返し部29と共にラインステッチ糸35で車幅方向に第1表皮材17に対して縫合されており、このことで、第2表皮材25及び第3表皮材27の表面にラインステッチが形成されている。
【0033】
第2表皮材25及び第3表皮材27の各端部間には、その一方の表面から凹所31の開口位置を通って他方の表面に至るように平面視でX状に交差するクロスステッチ糸37が架け渡され、このクロスステッチ糸37と間隔部40との間に囲まれる部分に空間Sが形成されている。すなわち、クロスステッチ糸37は、第2表皮材25及び第3表皮材27の端部間に亘り、第1表皮材17の表面との間に空間Sが区画されるように設けられている。
【0034】
間隔部40のうち、後述する発光装置50によって発光していない部位には、クロスステッチ糸37の影39が映っている。言い換えると、第1表皮材17の表面にクロスステッチ糸37が目視可能に投影されている。
【0035】
〈基材パネル〉
図3及び図4に示すように、基材パネル9は、中間部が車両後方に向けて凹んだ細長い皿形状に形成されている。具体的には、基材パネル9は、加飾パネル5の意匠面の基体部分を構成する車幅方向に延びる横長平板状の主体部13と、この主体部13の周縁部から車両前方に向かうように傾斜して突出したテーパー部15とが一体に形成されたものである。基材パネル9は、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の樹脂材で射出成形された一体物の成形品である。基材パネル9は、表面が加飾表皮7に覆われている。
【0036】
主体部13の車両後側に位置する表面において、その上下方向中間部には、第1表皮材17の厚みと同じ深さの基材凹部19が長さ方向(車幅方向)の全体に亘って設けられている。基材凹部19は、第1表皮材17が略面一に嵌め入れられるようになっている。
【0037】
基材凹部19には、車幅方向に形成された長孔状のスリット43が形成されている。スリット43は、間隔部40に対応する位置に形成されている。スリット43の裏側には、発光装置50が配置されている。なお、基材パネル9の右端部には、スリット43が形成されていない。
【0038】
主体部13の裏面(車両前側に位置する面)には、クリップ取付台座21、掛止部45及びボス部47が一体に形成されている。クリップ取付台座21は、車両前方に向かって突出するように複数(図3及び図4では2つのみ表示)形成されている。クリップ取付台座21の先端にはクリップ23が設けられている。クリップ23をインストルメントパネル1のパネル装着部3に形成された図示しないパネル装着孔に挿入することにより、加飾パネル5をインストルメントパネル1に固定するようになっている。
【0039】
掛止部45は、車両前方に向かって突出するように2つ形成されている。各掛止部45は、スリット43の上下に1つずつ車幅方向の位置がずれるように配置されている。
【0040】
ボス部47は、車両前方に向かって突出するように2つ形成されている。各ボス部は、スリット43の左右に1つずつ配置されている。
【0041】
テーパー部15の裏面には、第2表皮材25及び第3表皮材27の各折り返し部29と反対側の端部が折り曲げられて、例えば接着により固定されている。
【0042】
〈クッション材〉
クッション材11は、加飾表皮7と基材パネル9との間に配置されている。クッション材11は、発泡ウレタン等をシート状に成形したものを基材パネル9の表面側形状に対応して切り出したものである。クッション材11は、基材パネル9と接着または粘着により一体化された状態に設けられている。
【0043】
クッション材11は、基材凹部19を除いた部分の基材パネル9表面に配置されている。クッション材11の厚さは、第2表皮材25及び第3表皮材27と同じ厚さである。このため、両表皮材25,27の各折り返し部29の端縁部が各クッション材11の端部と突き合わされ、その状態で各折り返し部29の合わせ面と各クッション材11の表面とは面一になっている。
【0044】
〈発光装置〉
発光装置50は、基材パネル9の裏側においてスリット43を塞ぐように配置されている。発光装置50は、車室内に向けて発光する。発光装置50は、基板53、複数の光源としてのLED51、及びレンズ55を備えている。
【0045】
基板53は、スリット43に沿う細長い長方形に形成された回路基板である。発光装置50は、基材パネル9に取り付けられている。具体的に、発光装置50は、各掛止部45に保持されている。また、基板53の長さ方向の両端部が基材パネル9裏面に突設したボス部47にねじ49で締結されている。基板53への給電を行う配線57は、図外で電源に接続される。
【0046】
LED51は、基板53における間隔部40に対応する位置に車幅方向(基板53の長さ方向)に並んで複数(本実施形態では8つ)配置されている。レンズ55は、基板53の表面(車両後方)側に、複数のLED51を覆うように取り付けられている。後述のコントローラ59による点灯制御により、複数のLED51は、方向指示装置60の指示方向と同じ方向を示すように光るようになっている。すなわち、LED51は、方向指示装置60の作動に応じて光るものである。
【0047】
基板53は、図6に示すコントローラ59に接続されている。図6に示すように、コントローラ59は基板53上の各LED51及び方向指示装置60に接続されている。方向指示装置60は、図示しないが運転者によるウインカーレバー等の操作に応じてON動作する左ウインカースイッチと右ウインカースイッチとを有し、運転者がウインカーレバー等を操作して自動車の曲がり方向を指示すると、それに連動して曲がり方向に対応する一方のウインカースイッチがON信号をコントローラ59に出力する。
【0048】
以下に、図7図9により、複数のLED51が方向指示装置60の作動に応じて発光する様子の一例を具体的に説明する。図7は、8つ全てのLED51が点灯している様子を示す。図8は、左側に配置された5つのLED51が点灯し且つ右側に配置された3つのLED51が消灯している様子を示す。図9は、左側に配置された2つのLED51が点灯し且つ右側に配置された6つのLED51が消灯している様子を示す。図7図9において、破線で囲われた部分は発光部Aを示す。
【0049】
方向指示装置60の非作動時は、図7に示すように基板53に設けられた全てのLED51が点灯するか、全てのLED51が消灯する。
【0050】
例えば、自動車が左に曲がる際にウインカーレバーが左方向に操作されて、左ウインカースイッチがONのとき、左側のウインカーランプ(図示せず)が点滅する。このとき、図7に示すように、コントローラ59は、加飾パネル5の全てのLED51を一旦点灯させる。そして、図8及び図9に示すように、コントローラ59は、右側のLED51から順に消灯させて、一旦全てのLED51を消灯させる。その後再び、コントローラ59は、全てのLED51を点灯させて、図7図9の点灯及び消灯動作を繰り返す。このように、LED51を光が左方向に流れるように繰り返し点滅させることにより、複数のLED51は、方向指示装置60の指示方向と同じ方向を示すように光る。
【0051】
逆に、自動車が右に曲がる際にウインカーレバーが右方向に操作されて、右ウインカースイッチがONのときには、コントローラ59は、運転席側のパネル装着部3に装着された加飾パネル5のLED51を光が右方向に流れるように繰り返し点滅させる。
【0052】
なお、複数のLED51が方向指示装置60の指示方向と同じ方向を示す光り方は、この態様に限定されないのは勿論である。
【0053】
〈加飾表皮の製造方法〉
以下に、前記構成の加飾表皮7を製造する手順を図10図15により説明する。
【0054】
まず、図10に示すように、第1表皮材17と第2表皮材25とを第1表皮材17の一方の端縁部及び第2表皮材25の端縁部が一致するように重ね合わせ、その状態で端縁部に沿った方向にミシン等で地縫いをして第1表皮材17と第2表皮材25とを地縫い糸33で縫合する。その後、図11に示すように、第2表皮材25を地縫いされた箇所を基準にして折り返すことで、第2表皮材25に折り返し部29を形成する。
【0055】
次に、図12に示すように、第1表皮材17の他方の端縁部と第3表皮材27の端縁部とを一致させてそれらを重ね合わせ、第2表皮材25の場合と同様にミシン等で地縫いをして第1表皮材17と第3表皮材27とを縫合する。その後、図13に示すように、第3表皮材27を地縫いされた箇所を基準にして折り返すことで、第3表皮材27に折り返し部29を形成する。
【0056】
このとき、第2表皮材25及び第3表皮材27の地縫い糸33が第1表皮材17への仮止めとなり、その部分を基準に折り返すことで、容易に折り返し部29を形成することができる。
【0057】
次に、図14に示すように、第2表皮材25及び第3表皮材27の表面にラインステッチ糸35が表れるように、それぞれの端部を折り返し部29の上から第1表皮材17にミシン等で縫合してラインステッチを形成する。
【0058】
その後、図15に示すように、第2表皮材25及び第3表皮材27の各端部間に2本のクロスステッチ糸37,37を千鳥状に各ラインステッチ糸35,35に係合するように掛け渡して、両表皮材25,27の端部間の部分でX状に交差するようにクロスステッチを形成する。このようにして加飾表皮7が形成される。
【0059】
そして、クッション材11が貼付された基材パネル9の表面に加飾表皮7を配置し、基材凹部19に加飾表皮7の第1表皮材17を嵌め込み、加飾表皮7の周縁部を基材パネル9のテーパー部15の裏側に折り曲げて、該裏面に接着する等して加飾表皮7と基材パネル9とを一体化することで、本実施形態の加飾パネル5が形成される。
【0060】
〈実施形態の効果〉
本実施形態によれば、複数のLED51からの光は、スリット43を通り間隔部40に入射される。間隔部40は透光性を有している。このため、LED51の光は間隔部40を透過して、間隔部40が発光する。間隔部40の表面側には、クロスステッチ糸37が設けられているため、クロスステッチ糸37は間隔部40からの光の一部を遮る。したがって、車室内から見れば、加飾パネル5からの光内にクロスステッチ糸37の影39が浮かび上がるように生じることになり、このことで意匠性を向上させることができる。
【0061】
また、クロスステッチ糸37は、第2表皮材25及び第3表皮材27の各端部の表面に設けられているので、空間Sとして、少なくとも第2表皮材25及び第3表皮材27の厚み分の寸法を安定して確保することができる。よって、第2表皮材25及び第3表皮材27の表面にクロスステッチ糸37を設けるという簡単な構成で、クロスステッチ糸37と第1表皮材17との間に十分な空間Sを確保することができ立体感及び奥行感が高まる。
【0062】
さらに、間隔部40が折り返し部29間に形成されているので、別途特別な部材を使用せずに第2表皮材25及び第3表皮材27の各端面と間隔部40とで形成される凹所31の深さを、第2表皮材25及び第3表皮材27の厚みよりも深くすることができる。よって、クロスステッチ糸37と第1表皮材17との間の空間Sを十分確保することができるため立体感及び奥行感がさらに高まる。
【0063】
また、クロスステッチ糸37の影39が間隔部40に映るので、立体感及び奥行感をさらに高めることができる。
【0064】
また、第1表皮材17の表面は光沢を有していることで、間隔部40のうちLED51によって発光しない部位に映るステッチ糸の影39が際立って目視し易くなる。したがって、立体感及び奥行感をさらに高めることができる。
【0065】
また、複数のLED51は、方向指示装置60の指示方向と同じ方向を示すように光るので、車室内から方向指示装置60が示す方向を確認し易くなる。
【0066】
ところで、第1表皮材17の厚みが薄すぎると、第1表皮材17にコシがなくなり、第2表皮材25及び第3表皮材27に引っ張られて基材パネル9から浮いてしまう虞がある。このことにより、空間Sが狭くなるので立体感及び奥行感がなくなり、意匠性が低下してしまう虞がある。また逆に、厚みが厚すぎると、基材パネル9の基材凹部19の深さを第1表皮材17の厚さに合わせて深くしなければならないので、基材パネル9の材料が増えてコストが上がってしまう。本実施形態のように、第1表皮材17の厚みが0.8mm以上1.2mm以下であれば、これらの問題が生じることはない。
【0067】
また、第2表皮材25及び第3表皮材27の厚みが薄すぎると、凹所31の深さが十分に確保できないので、空間Sが狭くなり、立体感及び奥行感がなくなってしまう。逆に、厚みが厚すぎると、折り返し部29を形成する際に第2表皮材25及び第3表皮材27を折り畳み難くなり、折り返し部29を狙った寸法に形成することができない。特に第2表皮材25及び第3表皮材27を本革としたときにこの問題は顕著である。本実施形態のように、第2表皮材25及び第3表皮材27の厚みが0.8mm以上1.2mm以下とすれば、これらの問題は解決することができる。
【0068】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、第2表皮材25及び第3表皮材27の各端部間にクロスステッチ糸37を架け渡しているが、クロスしないようにステッチ糸を架け渡してもよい。
【0069】
前記各実施形態では、車両用内装品として加飾パネル5を挙げているが、本発明はこれに限定されない。例えば、インストルメントパネルのグローブボックスリッド(蓋体)やドアトリム、リヤコンソールのボックスリッド等、表皮が設けられる車両用内装品に適用可能である。
【0070】
前記各実施形態では、第2表皮材25及び第3表皮材27はそれぞれ別体の表皮材としているが、本発明はこれに限定されない。例えば1枚の表皮材の一端を第2表皮材25、他端を第3表皮材27としてもよい。その場合、加飾表皮7は例えば筒状に形成される。
【0071】
前記各実施形態では、加飾パネル5にクッション材11を設ける場合、基材パネル9にクッション材11を貼付した後に、そのクッション材11が貼付された基材パネル9の表面を加飾表皮7で覆うようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば成形型に加飾表皮7と基材パネル9とをセットして、これらの間に発泡樹脂原料を注入し、その発泡樹脂原料を発泡硬化させることでクッション材11を設けるようにしてもよい。また、クッション材11を設けずに基材パネル9の表面を直接加飾表皮7で覆うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明では、例えば車両用内装品に用いられる立体感及び奥行感に優れた加飾表皮が得られ、発光による高い意匠性が得られて有用である。
【符号の説明】
【0073】
5 加飾パネル(車両用内装品)
7 加飾表皮
9 基材パネル(芯材)
17 第1表皮材
25 第2表皮材
27 第3表皮材
29 折り返し部
37 クロスステッチ糸(ステッチ糸)
40 間隔部
43 スリット
51 LED(光源)
60 方向指示装置
S 空間
図1
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