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特許7169779少なくとも1種のマラカイト粉体と酸化物粉体との混合物から固体を調製する方法および前記固体の使用
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  • 特許-少なくとも1種のマラカイト粉体と酸化物粉体との混合物から固体を調製する方法および前記固体の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】少なくとも1種のマラカイト粉体と酸化物粉体との混合物から固体を調製する方法および前記固体の使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20221104BHJP
   C04B 35/45 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B01J20/06 B
C04B35/45
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018109897
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019001702
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】1755302
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504143038
【氏名又は名称】アクセンス
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ バザー-バチ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド シシェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ ロペス
(72)【発明者】
【氏名】トマ セール
(72)【発明者】
【氏名】トム フリジング
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ デュクリュー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ウザン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000855(US,A1)
【文献】特開2003-164756(JP,A)
【文献】特開昭62-282637(JP,A)
【文献】米国特許第04582819(US,A)
【文献】特表平09-510141(JP,A)
【文献】特表2010-500920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/45
B01J 20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の調製方法であって、以下の工程:
a) 少なくとも1種のマラカイトCu(OH)CO粉体、銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる金属の群から選択される1種の金属酸化物粉体、および少なくとも1種のバインダを含む一式の化合物を混合する工程であって、前記金属酸化物粉体の含有率は、金属酸化物の質量対工程a)において混合された一式の化合物に導入されるマラカイトCu (OH) CO 粉体および金属酸化物粉体の全質量の比として表されて、0.05~0.7である、工程
b) 工程a)の混合物を水溶液と接触させ、これにより得られたペースト状物を混錬する工程;
c) 工程b)において混錬されたペースト状物を、3~25MPaの圧力で押し出す工程;
d) 140℃~500℃の温度で10分~6時間の継続期間にわたって、酸素を含むガス流下に押出物を焼成する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程d)において焼成する前に、工程c)から得られた押出物を、70~160℃の温度で1~24時間の継続期間にわたって乾燥させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物の粉体の含有率は、工程a)において混合される一式の化合物に導入される金属酸化物の粉体の質量対工程a)おいてに混合される一式の化合物に導入されるマラカイトCu (OH) CO 粉体および金属酸化物粉体の全質量の比として表されて、0.10.6である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マラカイトCu(OH)CO粉体は、二峰性分布を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記マラカイトCu(OH)CO粉体は、0.1~99.9重量%の、そのD50が1~15μmである、マラカイト粒子と、99.9~0.1重量%の、そのD50が25~100μmであるマラカイト粒子とを含み、重量百分率は、前記マラカイトCu (OH) CO 粉体の全重量に対して表される、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記工程a)の一式の化合物中に含まれる前記金属酸化物は、酸化銅であり、前記一式の化合物は、酸化亜鉛を含まない、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記工程a)の一式の化合物中に含まれる前記金属酸化物は酸化亜鉛であり、前記一式の化合物は、酸化銅を含まない、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記工程b)の前記水溶液は、酸性または塩基性の解膠剤を含有する、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液は、硝酸を含有し、HNOの質量対前記金属酸化物粉体の質量の比は、0.5~10重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基性解膠剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)、炭酸アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、塩基性解膠剤の質量前記金属酸化物粉体の質量の比は、1~10重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記工程b)の水溶液は、脱イオン水である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
焼成の工程d)を、200℃~500℃の温度で行う、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅化合物をベースとする固体の調製方法、並びに、前記固体の使用、とりわけ、気体または液体の供給原料、例えば、天然ガス、バイオガス、合成ガス、二酸化炭素COを含有するガス、または液体炭化水素からの硫黄化合物の除去のための固体の使用に関する。
【0002】
本発明により調製された固体は、気体または液体の供給原料中の一酸化炭素CO、水銀を含有する化合物、またはヒ素を含有する化合物の除去のため、並びに、デュサン(Dussan)反応(水性ガスシフト反応)の触媒作用のために用いられてもよい。
【背景技術】
【0003】
銅化合物は、硫黄化合物と反応するそれらの能力のために従来技術から知られている。活性相としてのヒドロキシ炭酸銅の使用が特に興味深いものであるのは、HSとの反応が特に速いようであるからである。
【0004】
多くの文献が、酸化銅の存在下の脱硫に取り組んでいる。
【0005】
特許文献1には、99.8重量%までの酸化銅を含み得る脱硫材料が記載されている。この材料は、沈殿によって調製される。
【0006】
特許文献2には、ヒドロキシ炭酸銅およびアルミナから調製された固体を用いて液体炭化水素を脱硫するための方法が記載されている。前駆体は解膠されない。この固体は260℃超の温度で熱処理され、これにより、ヒドロキシ炭酸銅は部分的に品質劣化し、CuOが得られる。
【0007】
特許文献3には、合成ガスの工業的実施の間のCuOの低減を防止するかまたは軽減することを可能にする方法に従って開発された、CuOベースの固体を用いて合成ガス(H、CO)を精製するための方法が記載されている。この目的のために、固体は、ヒドロキシ炭酸銅およびハロゲン化添加物、例えば、NaClと、炭酸銅をCuOに完全に分解するための280~500℃の温度での焼成工程から調製される。
【0008】
特許文献4および5には、最低70重量%の銅化合物(炭酸塩または酸化物その他)を含む固体を用いることによる硫黄化合物の除去が記載されている。
【0009】
しかしながら、前記文献のいずれも、調製された材料の機械的強度の課題に取り組むものではない。
【0010】
特許文献6には、ZnOベースの固体の調製および液体または気体の供給原料の脱硫のためのその使用が記載され、前記固体は、優れた機械的強度および増大した貯蔵容量を有する。調製方法は、ZnO粉体の混合、解膠および焼成の工程を含む。前記文献によると、ZnOの塩基性解膠により、塩基性媒体中にZnOを部分的溶解させることができ、これにより、粒子のサイズの低減、より良好な分散を通した密集した固体、したがって、機械的強度における向上がもたらされる。
【0011】
しかしながら、マラカイトは、組成Cu(OH)COを有するものであり、このものは、塩基性媒体中に溶けないが、酸性媒体中には可溶である塩基性化合物である。したがって、塩基性解膠は、粒子サイズの減少につながり得るだろう、究極的には、特許文献6に記載されたような機械的強度における改善につながり得るだろう可溶化効果を有しない。
【0012】
特許文献7には、最低75重量%の銅の炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩または水酸化物を含有する捕捉塊が記載されている。当該文献は、固体の容積捕捉容量(すなわち、固体の質量ではなくその容積に対して捕捉された硫黄の量)を改善するために、少なくとも0.9kg/L、さらには少なくとも1.2kg/Lの装填密度を有する固体を得ることにも関する。前記文献には、用いられる銅化合物を分解しないように、乾燥/焼成の温度は、150℃、さらには115℃を超えるべきではないことが指し示されている。これにより、密度における向上に結果として貢献する炭酸塩および水酸化物の形態にある固体中に含有されるCOおよび/または水をカウントすることが可能となる。150℃超で、銅の炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩または水酸化物の分解により、固体の装填密度における減少がもたらされる。さらに、前記文献には、解膠工程が記載されていない。
【0013】
しかしながら、ヒドロキシ炭酸銅のみから調製された固体は、熱処理された後でさえ、特に低い機械的強度特性を有し、このことは、それらを使用し難くするものであり、特に、摩耗および微細粒子の発生による問題を有する。
【0014】
本発明による方法により、従来技術の固体のものより大きい向上した機械的強度特性と効果的な硫黄捕捉容量との両方を有する固体を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第7837964号明細書
【文献】米国特許第4582819号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/047850号明細書
【文献】米国特許第6007706号明細書
【文献】欧州特許出願公開第243052号明細書(特開昭62-282637号公報)
【文献】仏国特許出願公開第2940967号明細書
【文献】国際公開第95/24962号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の簡単な説明)
本発明は、固体の調製方法であって、以下の工程:
a) 少なくとも1種のCu(OH)CO粉体、銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる金属の群から選択される1種の金属酸化物粉体、および少なくとも1種のバインダを含む一式の化合物を混合する工程;
b) 工程a)の混合物を水溶液と接触させ、これにより得られたペースト状物を混錬する工程;
c) 工程b)において混錬されたペースト状物を、3~25MPaの圧力で押し出す工程;
d) 酸素を含むガス流下に10分~6時間の継続期間にわたって140℃~500℃の温度で押出物を焼成する工程
を含む、方法に関する。
【0017】
非常に良好な機械的強度と並んで、得られた吸着剤は、最適化された密度と細孔性を有し、これにより、硫黄の捕捉の間に分散フロント(dispersion front)を低減させながらその有用なかさ容量を最大にすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
以降の説明において、用語「本発明により調製された固体」は、限定なく、前記固体の用途に応じて吸着剤並びに触媒または捕捉塊を意味するとしても理解される。
【0019】
以降の説明において、マラカイト、ヒドロキシ炭酸銅およびCu(OH)COの用語は、区別なく用いられる。
【0020】
固体の強熱減量(loss on ignition:LOI)は、2時間にわたる550℃での焼成に付された固体のサンプルの重量%での重量喪失であるとして理解される。
【0021】
粉体は、一式の粒子であるとして理解される。
【0022】
以降の説明において、粉体または粒子のサイズ分布は、ミー散乱理論(G. B. J. de Boer, C. de Weerd, D. Thoenes, H.W.J. Goossens, Part. Charact. 4 (1987) 14-19)に基づくレーザ回折による粒度分析によって測定される。前記粉体または前記粒子の粒子サイズの分布は、中位径(D50)によって示される。中位径は、前記粒子または前記粉体の構成粒子の50容積%がその径より小さくなるような等価な球の径であるとして定義される。
【0023】
以下において、比表面積は、“The Journal of American Society”, 60, 309, (1938)に記載されたBRUNAUER-EMMETT-TELLER法から確立されたASTM D 3663-78規格に従う窒素の吸着によって決定されるBET比表面積として理解され得る。
【0024】
(工程a)混合)
本発明によると、本調製方法は、少なくとも1種のCu(OH)CO粉体、銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる金属の群から選択される1種の金属酸化物粉体、および少なくとも1種のバインダを含む一式の化合物を混合する工程a)を含む。
【0025】
本発明による方法の変形例において、前記金属酸化物は、有利には、式CuOを有する酸化銅である。この変形例において、前記化合物は、有利には、酸化亜鉛を含まない。
【0026】
本発明による方法の別の変形例によると、前記金属酸化物は、有利には、酸化亜鉛ZnOである。この変形例において、前記化合物は、有利には、酸化銅粉体を含まない。
【0027】
本発明による好ましい変形例によると、前記一式の化合物は、酸化銅CuO粉体および酸化亜鉛ZnO粉体を含む。
【0028】
一式の化合物は、有利には、工程a)において乾式で、すなわち、液体の添加なしで混合される。前記工程a)は、例えば、撹拌機または任意の他のタイプの混合機中で実施されてよい。この工程により、粉体成分の均一な混合物を得ることが可能となる。
【0029】
前記一式の化合物がCuO粉体を含む本発明による方法の好ましい配置において、CuO粉体は、有利には、1種または複数種のCu(OH)CO粉体の部分分解によって得られる。この部分分解は、例えば、1種または複数種のCu(OH)CO粉体または工程a)の一式の化合物の、100~300℃、好ましくは150~300℃、好ましくは200~300℃の温度での、1~12時間にわたる熱処理によって行われてよい。これにより、Cu(OH)CO粉体の一部のCuO粉体への変換がもたらされ、変換される割合は、熱処理の継続期間および温度に依存する。
【0030】
前記一式の化合物がCuO粉体を含む本発明による方法の好ましい配置において、Cu(OH)CO粉体およびCuO粉体の混合物の中位径(D50)は、45μm未満である。
【0031】
金属酸化物粉体の含有率(前記金属酸化物は、工程a)において混合される一式の化合物に導入される銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる金属の群から選択される)は、工程a)において混合される一式の化合物に導入される金属酸化物(1種または複数種)の粉体の質量対工程a)において一式の化合物に導入されるマラカイトおよび金属酸化物(1種または複数種)の粉体(1種または複数種)の全質量の比として、または、換言すると、比(工程a)において混合される一式の化合物に導入される銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる金属の群から選択される金属酸化物粉体(1種または複数種)の量/(工程a)において混合される一式の化合物に導入される、銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる金属の群から選択される金属酸化物粉体(1種または複数種)およびCu(OH)COの量)として表される。この比は、0.01~1、好ましくは0.05~1、好ましくは0.05~0.95、好ましくは0.05~0.7、好ましくは0.1~0.6である。
【0032】
(Cu(OH)COの供給源)
Cu(OH)CO粉体は、当業者に知られているあらゆる供給源に由来する。中位径(D50)は、有利には1~100μm、好ましくは4~80μm、好ましくは4~50μmである。特定の配置において、前記一式の化合物は、1種のマラカイト粉体のみを含み、その中位径は、1~100μm、好ましくは4~80μm、好ましくは4~50μmである。
【0033】
特定の配置において、Cu(OH)CO粉体は、有利には、二峰性分布を有する。前記マラカイト粉体は、0.1~99.9重量%、有利には2~99.9重量%、好ましくは5~99.9重量%、非常に好ましくは5~99重量%、好ましくは5~90重量%、非常に好ましくは5~85重量%の、そのD50が1~15μm、好ましくは1~10μm、非常に好ましくは4~9μmであるマラカイト粒子と、99.9~0.1重量%、有利には98~0.1重量%、好ましくは95~0.1重量%、非常に好ましくは95~1重量%、好ましくは95~10重量%、非常に好ましくは95~15重量%の、そのD50が25~100μm、好ましくは25~80μm、好ましくは30~50μmであるマラカイト粒子とを含み、重量百分率は、マラカイトの全重量に対して表される。二峰性分布により、得られる最終固体の機械的強度は改善される。
【0034】
あるいは、前記一式の化合物は、異なる粒子サイズの少なくとも2種のマラカイト粉体を含む。この配置において、前記一式の化合物は、0.1~99.9重量%、有利には2~99.9重量%、好ましくは5~99.9重量%、非常に好ましくは5~99重量%、好ましくは5~90重量%、非常に好ましくは5~85重量%の、そのD50が1~15μm、好ましくは1~10μm、非常に好ましくは4~9μmである第1のマラカイト粉体と、99.9~0.1重量%、有利には98~0.1重量%、好ましくは95~0.1重量%、非常に好ましくは95~1重量%、好ましくは95~10重量%、非常に好ましくは95~15重量%の、そのD50が25~100μm、好ましくは25~80μm、好ましくは30~50μmである第2のマラカイト粉体とを含み、重量百分率は、マラカイト粉体の全重量に対して表される。
【0035】
(CuOの供給源)
CuOは、当業者に知られているあらゆる供給源に由来してよい。それは、有利には、沈殿法またはCuO前駆体、例えば、式Cu(OH)COを有するマラカイトの焼成に由来する。
【0036】
本発明による方法において用いられる酸化銅粉体の比表面積は、通常、10~80m・g-1、好ましくは30~70m・g-1である。
【0037】
前記粉体の中位径(D50)は、有利には1~50μm、好ましくは2~35μm、有利には5~35μm、非常に有利には20~35μmである。
【0038】
本発明による方法によって固体を調製するためにCuO粉体をCu(OH)CO粉体との組み合わせで使用することにより、機械的強度および硫黄化合物の捕捉に関して向上した性能を有する固体を得ることが可能となる。
【0039】
(ZnOの供給源)
ZnO粉体は、有利には、当業者に知られているあらゆる供給源に由来し、例えば、酸化亜鉛を製造するための2つの主要な工業的方法が、フレンチ法として知られている間接的方法およびアメリカン法として知られている直接法として当業者に知られており、例えば、FR 2940967に記載されている。
【0040】
本発明による方法において用いられている酸化亜鉛粉体の比表面積は、通常10~80m・g-1、好ましくは30~60m・g-1である。
【0041】
ZnO粉体の中位径(D50)は、有利には60μm未満、好ましくは30μm未満、非常に好ましくは10μm未満である。有利には、ZnO粉体の中位径は、2~5μmであるだろう。
【0042】
(鉄およびマンガンの供給源)
酸化鉄粉体および酸化マグネシウム粉体は、当業者に知られているあらゆる供給源に由来する。
【0043】
酸化鉄粉体の中位径(D50)は、有利には60μm未満、好ましくは30μm未満、非常に好ましくは10μm未満である。有利には、酸化鉄粉体の中位径は、2~5μmであるだろう。
【0044】
酸化マンガン粉体の中位径(D50)は、有利には60μm未満、好ましくは30μm未満、非常に好ましくは10μm未満である。有利には、酸化マンガン粉体の中位径は、2~5μmであるだろう。
【0045】
(バインダ)
工程a)において混合される一式の化合物は、少なくとも1種のバインダを含む。前記バインダにより、良好な機械的強度を提供しながら前記吸着剤を形成することが可能となる。前記バインダは、有利には、粉体の形態である。
【0046】
当業者に周知であるあらゆるバインダが用いられてよい。特に、前記バインダは、有利には、例えば、粘土、例えば、カオリナイトタイプの鉱物、パリゴルスカイトタイプの鉱物、およびスメクタイト粘土鉱物、例えば、モンモリロナイトまたはベントナイトから選択されてよい。前記バインダは、アルミナ、アルミナの前駆体(好ましくはベーマイト)、シリカおよびそれらの混合物からなる群からも選択され得る。異なるタイプのバインダの使用を組み合わせることが完全に可能であり、例えば、「アルミナ」バインダと「粘土」バインダ、さらには異なるタイプの2種の粘土である。本発明による固体を調製するための好ましい実施形態によると、バインダは、ベントナイトタイプの粘土である。
【0047】
本発明による調製方法において用いられるバインダの量は、前記バインダが調製された固体の50重量%未満(完全乾燥質量を基礎に、すなわち、強熱減量の後に表される)を示すようになされるが、目的とする適用に依存する。
【0048】
銅化合物、金属酸化物(1種または複数種)、またはバインダ(1種または複数種)にかかわらず、各化合物の複数種の供給源を混合することは全く可能である。
【0049】
本発明により調製された固体が液体または気体の供給原料の脱硫のために用いられる場合、前記固体のバインダ含有率は、好ましくは15重量%~25重量%である(完全乾燥質量として、すなわち、強熱減量の後に表される)。
【0050】
(工程b)解膠および混錬)
本発明によると、吸着剤の調製方法は、工程a)の混合物を水溶液と接触させ、得られたベースト状物を混錬する工程b)を含む。
【0051】
ペースト状物を得ることをもたらすこの工程により、構成成分を分散させること、すなわち、ヒドロキシ炭酸銅、存在し得る金属酸化物(1種または複数)、並びに、バインダ(1種または複数種)、および構成成分を部分的に溶解させることができる。
【0052】
水溶液の作用の下で、異なる成分を接触させることによって、ヒドロキシ炭酸銅粒子、存在し得る金属酸化物粒子(1種または複数種)およびバインダ粒子が分散および溶解する現象が混錬の間に発生することが好ましい。しかしながら、理論によって厳密に結び付けられることを望むことなく、ヒドロキシ炭酸銅および存在し得る金属酸化物(1種または複数種)およびバインダ粒子の両方のより良好な分散が、前記調製方法によって究極的に得られる機械的強度を改善することと一致していることを仮定することが可能である。
【0053】
前記水溶液は、有利には、酸性または塩基性の解膠剤を含有する。
【0054】
前記酸性解膠剤は、硝酸、塩化水素酸、または当業者に知られている任意の他の酸、例えば、無機酸、例えば、フッ化水素酸、臭化水素酸、塩化水素酸、硝酸、亜硝酸、スルホン酸、硫酸、過塩素酸、さらには、有機性のモノ-またはジ-カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸またはブタン酸であり得る。
【0055】
本発明による方法の特定の配置において、解膠は、硝酸を含有する酸性水溶液を用いて引き起こされる。HNOの質量/金属酸化物の質量の比は、0.5~10重量%、好ましくは0.5~6重量%、有利には0.5~3重量%である。
【0056】
酸化物の質量(oxides mass)は、以下の通りに計算される:
【0057】
【数1】
【0058】
式中、moxidesは、銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数種の金属の酸化物の粉体の形態で工程a)に最初に導入される酸化物の質量であり、mCu2(OH)2CO3は、工程a)に導入されるマラカイトCu(OH)COの質量であり、MCuOは、CuOのモル質量(=80g/mol)であり、MCu2(OH)2CO3は、マラカイトCu(OH)COのモル質量(=222g/mol)である。
【0059】
前記塩基性解膠剤は、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、さらには、有機塩基、例えば、アミンまたは四級アンモニウム化合物、例えば、アルキル-エタノールアミンまたはアルキル-エトキシ化アミンから選択されるものであり得る。
【0060】
本発明による方法の特定の配置において、解膠は、塩基性解膠剤、例えば、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(tetraethylammonium hydroxide:TEAOH)、炭酸アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される塩基性解膠剤を含有する水溶液によって行われる。塩基性解膠剤の質量/金属酸化物の質量の比は、1~10重量%、好ましくは2~8重量%、有利には2~5重量%である。酸化物の質量は、前述の式と同様に計算される。
【0061】
本発明による方法の別の特定の配置において、解膠は、工程b)において、酸または塩基が加えられていない水溶液を用いて引き起こされる。驚くべきことに、酸または塩基が加えられていない水による解膠により、改善された吸着性能を、特に、硫黄化合物に示す固体を得ることが可能になることが観察された。この特定の配置において、前記工程b)における水溶液は、有利には、脱イオン水であり、例えば、イオン交換樹脂の助けを伴う。
【0062】
用いられる水溶液の量は、解膠から、実施される変形例に拘わらず、流れないが、工程c)において、当業者によって周知であり、かつ、用いられる押出設備に応じた適切な圧力条件で押し出すことができるようにもはや乾燥もしていない、ペースト状物を得るように調節される。
【0063】
試薬(Cu(OH)CO、金属酸化物(1種または複数種)、バインダ(1種または複数種)、水溶液)の接触は、バッチ式でまたは連続的に混錬することによって行われる。
【0064】
バッチ式混錬のために、設備、例えば、Zアーム、ローラまたはカムを有する撹拌機が、当業者に知られているが、任意の他の混錬設備も用いられ得る。
【0065】
工程b)における混錬の間に、1種以上の押出添加物を組み入れることが考えられ、これにより、押出の間のチャネル中のペースト状物の流動性を改善することが可能になる。これらの添加物は、当業者に周知であり、例えば、モノカルボン酸性脂肪族酸、アルキル化芳香族化合物、スルホン酸塩、脂肪酸、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体から選択されてよい。
【0066】
これらの添加物は、一般的に、撹拌機に導入された成分の全質量の0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~8重量%の含有率で加えられる。
【0067】
混錬の継続期間は、一般的に5~60分、好ましくは20~50分である。撹拌器アームの回転のスピードは、10~75回転/分、好ましくは25~50回転/分である。
【0068】
(工程c)押出)
本発明によると、吸着剤の調製方法は、工程b)において混錬されたペースト状物を、3~25MPaの圧力で押し出す工程c)を含む。
【0069】
押出の前記工程c)は、あらゆるタイプの押出機、例えば、ピストン式、一軸式または二軸式の押出機において実施されてよい。ダイの幾何学的形状により、押出物にそれの形状が与えられ、ダイは、当業者に知られているダイから選択されてよい。これらのダイは、例えば、円筒状、三葉状、四葉状、縦溝彫り、またはスリット付きであってよい。
【0070】
ダイの径は、焼成工程からの所望の固体の径により規定される。
【0071】
接触および混錬の工程b)および押出の工程c)は、有利には、同一の設備において組み合わされてよい。この実施の例において、混錬済みペースト状物は、連続的な二軸式撹拌器の終端において直接的に押し出されてよい。この実施の別の例において、1基または複数基のバッチ式撹拌器が、押出機に接続される。
【0072】
工程c)から得られた押出物は、有利には、工程d)において焼成される前に、70~160℃の温度で1~24時間にわたって乾燥させられる。この乾燥処理は、有利には、空気下にまたはより好ましくは湿潤空気下に行われてよい。乾燥処理の利点は、存在する揮発性化合物の部分を徐々に除くことにある。固体の直接的な焼成は、微視的破壊の出現をもたらすかもしれないからである。湿潤空気下の乾燥処理により、前記揮発性化合物を空気下の乾燥処理よりゆっくりと蒸発させることが可能となる。
【0073】
(工程d)焼成)
本発明によると、吸着剤の調製方法は、140℃~500℃の温度で、10分~6時間の継続期間にわたって、酸素を含むガス流下に押出物を焼成する工程d)を含む。
【0074】
焼成の前記工程d)は、酸素を含むガス流下に行われる。前記ガス流は、有利には、空気、または、不活性ガス(例えば窒素)および酸素を含むガス混合物であってよい。前記ガス流は、好ましくは、最低5容積%、好ましくは最低10容積%の酸素を含む。前記ガス流は、有利には、水、好ましくは、3容積%までの水も含む。
【0075】
焼成の前記工程d)が行われる際の温度は、140℃~500℃、好ましくは200℃~500℃、好ましくは200℃~350℃であり、継続期間は、10分~6時間、好ましくは10分~4時間、好ましくは10分~3時間、非常に好ましくは10分~2時間、非常に好ましくは15分~1時間にわたる。
【0076】
焼成工程により、マラカイトの部分を酸化銅に転化させることが特に可能となる。
【0077】
焼成の工程d)から、押出物の径は、1~10mm、好ましくは1~5mm、非常に好ましくは1.5~3.5mmである。
【0078】
押出により得られた、本発明による固体は、円筒形棒に類似した形状を有する。必要ならば、これらの棒は、それらの表面を回転させることを可能にする設備、例えば斜面溝、またはその球形化のための用いられ得る任意の他の設備に導入されてよい。
【0079】
強熱減量後の固体中に含有される酸化物の質量百分率(酸化物+CuOの含有率、CuOは、マラカイトの分解からのものである)は、以下のように決定されてよい。
【0080】
【数2】
【0081】
式中、moxidesは、銅、亜鉛、鉄、マンガンおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数種の金属の酸化物の粉体の形態で工程a)に最初に導入された酸化物の質量であり、mbinderは、工程a)において導入されたバインダの質量であり、mCu2(OH)2CO3は、工程a)において導入されたマラカイトCu(OH)COの質量であり、MCuOは、CuOのモル質量(=80g/mol)であり、MCu2(OH)2CO3は、マラカイトCu(OH)COのモル質量(=222g/mol)である。
【0082】
本発明により調製された固体は、少なくとも以下を含む:
・ 50~99重量%、好ましくは60~95重量%、より好ましくは75~85重量%の質量相当のCuO酸化物+場合により存在する金属元素の酸化物;550℃での2時間にわたる強熱減量の後に測定され、含有率は、前述の式により決定される;
・ 1~50重量%、好ましくは5~40重量%、より好ましくは15~25重量%のバインダ;質量百分率は、強熱減量の後に測定される。
【0083】
これらの含有率(重量%)は、本発明による方法により調製された固体の全質量に対して表され、550℃での2時間にわたる前駆体の分解の後に測定される。
【0084】
(本発明による方法によって得られた固体の特性)
機械的特性は、ASTM D 6175-3法によって記載されている粒子ごとの破砕試験(EGG)によって決定される。これは、少なくとも50個の粒子を含む代表的サンプルの各粒子の破壊強度を測定することからなる。結果は、押出物の長さによって荷重される。EGG値は、サンプル粒子の全てについての測定されかつ押出物の単位長さに縮小された破壊強度(daN・mm-1で表される)の平均である。
【0085】
本発明により調製された固体の場合、EGG値は、用いられたヒドロキシ炭酸銅の含有率に拘わらず0.7daN・mm-1(押出物の長さのミリメートル当たりのデカニュートン)超、好ましくは0.9daN・mm-1超である。
【0086】
さらに、吸着剤として用いられる得られた固体は、硫黄化合物、特にHS、メルカプタン、COSおよびCSを含有する気体および液体の処理に対して改善された脱硫性能を有する。
【0087】
本発明は、本発明による方法によって調製された固体の使用にも関する。
【0088】
本発明により調製された固体は、気体供給原料、例えば、気体炭化水素、例えば、天然ガス、バイオガス、二酸化炭素COを含有するガス、または合成ガス、例えば、熱併給発電プラントにおいて用いられるもの、化学合成装置、例えば、メタノール合成またはフィッシャー・トロプシュ合成装置において用いられるもの、または、液体、例えば、接触改質、異性化、または水素化の装置における供給原料として用いられる炭化水素を精製するために用いられてよい。
【0089】
本発明により調製された固体は、有利には、任意の気体または液体の供給原料であって、とりわけ、硫黄化合物、例えば、HS、COSおよび/またはCS、および/またはメルカプタンを含有するものを精製するために用いられ、その際の圧力は0.1~25MPa、好ましくは0.1~15MPaであり、その際の温度は、0~450℃、好ましくは15~300℃、好ましくは15~250℃である。
【0090】
特に、本発明により調製された固体は、有利には、フィッシャー・トロプシュ合成装置の供給原料を精製するために、0.1~15MPa、好ましくは1.5~5.0MPaの圧力、0~400℃、好ましくは0~220℃、好ましくは15~180℃の温度で操作する反応器において用いられることによって、用いられてよい。
【0091】
本発明により調製された前記固体は、液体または気体の流出物中に存在する所定のヘテロ元素、例えば、リンまたはその化合物、例えば、ホスフィンPH、および/または塩素、特に、HClの形態のものを除去するために用いられてもよく、その際の圧力は、好ましくは0.1~25MPa、好ましくは1~15MPaであり、その際の温度は、好ましくは0~200℃である。
【0092】
本発明により調製された前記固体は、液体または気体の流出物中に存在する重質金属、例えば、水銀、および/またはヒ素またはその化合物、例えば、アルシンAsHを除去するために用いられてもよく、その際の圧力は、好ましくは0.1~25MPa、好ましくは1~15MPaであり、その際の温度は、0~200℃である。
【0093】
実際に、精製されるべき供給原料が硫黄化合物に加えて水銀を含有するならば、本発明による方法によって調製された前記固体により、処理されるべき供給原料中に存在する水銀を除去することも可能となる。
【0094】
本発明により調製される固体は、有利には、処理されるべき供給原料が硫黄化合物を含有していないならば、水銀を捕捉する方法におけるそれの工業的な実施の前に硫化の工程を経てよい。
【0095】
本発明により調製された固体は、液体または気体の流出物中に存在する一酸化炭素COを除去するために用いられてもよく、その際の温度は、0~200℃であり、その際の圧力は、0.1~25MPaである。
【0096】
本発明により調製された固体は、処理されることになる気体または液体の供給原料を、前記固体と反応器において接触させることによって用いられ、この反応器は、固定床反応器、放射流反応器(radial flow reactor)、さらには流動床反応器であってよい。
【0097】
本発明により調製された固体は、還元雰囲気下に、例えば、合成ガスを伴う、水素流下に、還元されてもよく、その後に、デュサンまたは水性ガスシフト反応のための触媒として、または合成ガスからのメタノールの合成のための触媒として用いられる。
【0098】
メタノール合成反応のための触媒としての固体の典型的な利用条件は、温度:100~500℃、好ましくは150~300℃、一層好ましくは220~280℃、および圧力:0.1~25MPa、好ましくは1~15MPa、一層より好ましくは5~10MPaである。
【0099】
デュサン反応のための触媒としての固体の典型的な利用条件は、温度:100~500℃、好ましくは150~300℃、一層好ましくは180~250℃、および圧力:0.1~25MPa、好ましくは1~15MPa、一層より好ましくは1.5~10MPaである。
【0100】
(図面の説明)
図1は、下記の固体による不純物捕捉容量を測定する手順により得られ得る破過曲線の略図である。図1において、tは、破過時間であり、tは、破過時間の終わりである。
【0101】
(実施例)
(調製された固体による不純物捕捉容量を測定する手順)
本発明による方法によって調製された固体の不純物捕捉容量は、破過試験を用いて測定される。
【0102】
Sの捕捉容量を決定する試験のために、試験が行われる際の温度は50℃であり、その際の圧力は0.3MPaであり、毎時容積速度(hourly volume velocity:HVV)は、1530h-1である。毎時容積速度は、0℃および1気圧で測定されるガスの容積流量対試験される固体の容積の比として理解され得る。試験のために用いられるガスは、窒素中に0.9容積%のHSを含有する。固体を含有する反応器からの出口ガス中に存在するHSの含有率は、ガスクロマトグラフィーによって決定される。
【0103】
メチルメルカプタンCHSHの捕捉容量を決定する試験のために、試験が行われる際の温度は50℃であり、その際の圧力は0.3MPaであり、毎時容積速度(HVV)は、1530h-1である。毎時容積速度は、0℃および1気圧で測定されるガスの容積流量対試験される固体の容積の比として理解され得る。試験のために用いられるガスは、窒素中に0.2容積%のCHSHを含有する。固体を含有する反応器からの出口ガス中に存在するCHSHの含有率は、ガスクロマトグラフィーによって決定される。
【0104】
エチルメルカプタンCSHの捕捉容量を決定する試験のために、試験が行われる際の温度は50℃であり、その際の圧力は0.3MPaであり、毎時容積速度(HVV)は、1530h-1である。毎時容積速度は、0℃および1気圧で測定されるガスの容積流量対試験される固体の容積の比として理解され得る。試験のために用いられるガスは、窒素中に0.9容積%のCSHを含有する。固体を含有する反応器からの出口ガス中に存在するCSHの含有率は、ガスクロマトグラフィーによって決定される。
【0105】
一酸化炭素COの捕捉容量を決定する試験のために、試験が行われる際の温度は200℃であり、その際の圧力は0.1MPaであり、毎時容積速度(HVV)は、2600h-1である。毎時容積速度は、0℃および1気圧で測定されるガスの容積流量対試験される固体の容積の比として理解され得る。試験のために用いられるガスは、1.8容積%のCOを含有する。固体を含有する反応器からの出口ガス中に存在するCOの含有率は、ガスクロマトグラフィーによって決定される。
【0106】
本発明による方法により調製された固体による種iの捕捉容量は、物質収支を行うことによって決定される。種iの捕捉容量は、本発明内で定義されるように、破過の前に(すなわち、破過曲線を概略的に表す図1において指し示される時点tにおける)固体によって蓄積される種iの量に相当し、これは、以下の式によって計算される:
【0107】
【数3】
【0108】
式中:
:固体によって捕捉された種iの質量(g)である、
:種iの流入量(mol・分-1)である、
:種iのモル質量(g・mol-1)である、
:流入ガスの種iの含有率である、
:反応器出口における種iの含有率である、
図1に示されるような種iの破過に必要とされる時間(分)である。
【0109】
図1において、tは、破過時間であり、tは、破過時間の終点である。
【0110】
試験される固体の種iの捕捉容量は、以下の式によって提供される。
【0111】
【数4】
【0112】
式中、mは、試験の間に実施された吸着剤の質量である。
【0113】
(実施例1:従来技術に合致する)
実施例1において、参照固体A1、A2、A3、A4およびA5は、以下の加工方法:
a) Cu(OH)CO粉体およびバインダを含む一式の化合物を混合する工程;
b) 工程a)の混合物を水溶液と接触させ(解膠)、それにより得られたペースト状物を、Z-アーム混合器において30分にわたり25回転・分-1のアーム回転スピードで混錬する工程;
c) 工程b)において混錬されたペースト状物を、ピストン押出機によって、3mmの径および5~10mmの長さに、固体に応じた可変圧力で押し出す工程;
d) 固体に応じた可変温度で押出物を焼成する工程であって、1時間にわたって、空気流下に行われる、工程
により調製される。
【0114】
ベントナイト粘土がバインダとして用いられた。
【0115】
強熱減量(550℃で2時間にわたる)の後のCuO含有率または酸化物の質量百分率(CuOはマラカイトの分解からのものである)は、固体A1、A2、A3およびA4について80重量%であり、固体A5について60重量%である(補足物としてのベンドナイトを伴う)。これらの含有率は、以下の式により決定される。
【0116】
【数5】
【0117】
式中、mbinderは、工程a)において導入されたバインダの質量であり、mCu2(OH)2CO3は、工程a)において導入されたCu(OH)COマラカイトの質量であり、MCuOは、CuOのモル質量(=80g/mol)であり、MCu2(OH)2CO3は、Cu(OH)COマラカイトのモル質量(=222g/mol)である。
【0118】
固体A1、A2およびA3について、NaOH塩基の量は、導入されたCu(OH)COの全量に対して4重量%である。
【0119】
固体A4およびA5について、混錬する工程b)のための水溶液として脱イオン水が用いられる。
【0120】
押出の間に、圧力は、用いられた配合に応じて50~150barの間で変動する。
【0121】
固体A1、A2、A3、A4およびA5の配合は、表1に与えられる。
【0122】
【表1】
【0123】
押出物の機械的強度は、前述のような粒子毎の破砕試験(EGG)によって決定される。
【0124】
固体A1~A5の機械的強度は、工業的用途に関連する制約を考慮すればあまりに低い。測定されたEGG値は、焼成温度および解膠の間の水酸化ナトリウムの存否がどうであれ、0.7daN・mm-1より低い。
【0125】
固体A5中のバインダ含有量の増量およびマラカイト含有量の減少は、機械的強度におけるわずかな増強をもたらすが、それにもかかわらず、不十分であり、その硫黄の捕捉容量に損害が与えられる。この後者の場合、硫黄容量は、本発明に合致する固体の硫黄容量と比較して弱くなる。
【0126】
(実施例2:本発明に合致する)
実施例2において、本発明に合致するB1~B4として参照される固体は、以下の手順:
a) Cu(OH)CO粉体、CuO粉体、およびバインダを含む一式の化合物を混合する工程;
b) 工程a)の混合物を水溶液と接触させ(解膠)、こうして得られたペースト状物を、Z-アーム混合器において30分にわたり、25回転・分-1のアーム回転スピードで混錬する工程;
c) 工程b)において混錬されたペースト状物を、ピストン押出機により、3mmの径および5~10mmの長さに、固体に応じた可変の圧力で押し出す工程;
d) 実施例に応じた可変温度で押出物を焼成する工程であって、1時間にわたって空気流下に行われる、工程
による混錬および押出の工程によって調製される。
【0127】
バインダとしてベントナイト粘土が用いられた。
【0128】
強熱減量(2時間にわたり550℃)後のCuO含有率または酸化物の質量百分率(酸化物+CuO含有率、CuOは、マラカイトの分解からのものである)は、固体B1~B4について80重量%である。この含有率は、以下の式により決定される。
【0129】
【数6】
【0130】
式中、mCuOは、CuO粉体の形態で工程a)において最初に導入されたCuOの質量であり、mbinderは、工程a)において導入されたバインダの質量であり、mCu2(OH)2CO3は、工程a)において導入されたマラカイトCu(OH)COの質量であり、MCuOは、CuOのモル質量(=80g/mol)であり、MCu2(OH)2CO3は、マラカイトCu(OH)COのモル質量(=222g/mol)である。
【0131】
固体B1について、NaOH塩基の量は、導入されたCu(OH)COおよびCuOの全量に対して4重量%である。
【0132】
固体B2、B3およびB4について、混錬する工程b)のための水溶液として脱イオン水が用いられる。
【0133】
押出の間に、圧力は、用いられた配合に応じて50~200barの間で変動する。
【0134】
固体の配合は、表2に与えられる。
【0135】
【表2】
【0136】
本発明による調製方法におけるCuOおよびCu(OH)COの組合せ使用により、満足な機械的特性を有する固体を得ることが可能となる(EGGは、0.7daN・mm-1より大きい)。さらに、固体は、満足な硫黄容量を有し、当該文献に記載された試験条件において硫黄0.15グラム/固体のグラムより高い。
【0137】
(実施例3:本発明に合致する)
実施例3において、本発明に合致するC1およびC2として参照される固体は、以下の手順:
a) Cu(OH)CO粉体、ZnO粉体、およびバインダを含む一式の化合物を混合する工程;
b) 工程のa)混合物を水溶液と接触させ(解膠)、このようにして得られたペースト状物を、Zアーム混合器において30分にわたって25回転・分-1のアーム回転スピードにより混錬する工程;
c) 工程b)において混錬されたペースト状物を、ピストン押出機により、3mmの径および5~10mmの長さに、固体に応じた可変圧力で押し出す工程;
d) 実施例に応じた可変温度で押出物を焼成する工程であって、1時間にわたって空気流下に行われる工程
による混錬および押出の工程によって調製される。
【0138】
バインダとしてベントナイト粘土が用いられた。
【0139】
強熱減量(2時間にわたって550℃)後のCuO+ZnOの含有率または酸化物の質量百分率(酸化物+CuO含有率、CuOは、マラカイトの分解からのものである)は、固体C1およびC2について80重量%である。この含有率は、以下の式により決定される。
【0140】
【数7】
【0141】
式中、mZnOは、ZnO粉体の形態で工程a)において最初に導入されたZnOの質量であり、mbinderは、工程a)において導入されたバインダの質量であり、mCu2(OH)2CO3は、工程a)において導入されたマラカイトCu(OH)COの質量であり、MCuOは、CuOのモル質量(=80g/mol)であり、MCu2(OH)2CO3は、マラカイトCu(OH)COのモル質量(=222g/mol)である。
【0142】
固体C1およびC2について、NaOH塩基の量は、導入されたCu(OH)COおよびCuOの全量に対して4重量%である。
【0143】
押出の間に、圧力は、用いられた配合に応じて50~150barの間で変動する。
【0144】
固体の配合は、表3に与えられる。
【0145】
【表3】
【0146】
本発明に合致する調製方法におけるZnOおよびCu(OH)COの組み合わせ使用により、満足な機械的特性を有する固体を得ることが可能となる(EGGは、0.7daN・mm-1より大きい)。さらに、固体は、満足な硫黄容量を有し、文献に記載された試験条件下に硫黄0.15グラム/固体のグラムより大きい。
【0147】
(実施例4:本発明に合致する)
実施例4は、本発明に合致する固体B3の捕捉性能を示す。固体B3の調製は実施例2において記載されている。
【0148】
多様な不純物を捕捉する性能は、上記の調製された固体により不純物捕捉容量を測定する手順に従って決定された。
【0149】
以下の硫黄化合物:HS、CHSH、CSHの捕捉の容量、並びに一酸化炭素COの捕捉の容量が、手順において記載された試験条件において評価された。
【0150】
試験の結果は、表4に示される。
【0151】
【表4】
【0152】
本発明に合致する方法から得られた固体B3により、試験条件下、表4に与えられた容量に則して破過の前(tの前)に固体B3上に硫黄を隔離することによって、ガスに含有される硫黄化合物HS、CHSH、CSHを除去することが可能となるという結果が示されている。
【0153】
固体B3は、測定条件下に、反応器出口において一酸化炭素の出現を観察し始める前に(すなわち、破過tの前に)固体のグラム当たり0.23グラムのCOを捕捉することによって、一酸化炭素を含有するガスを精製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
図1】実施例により調製された固体による不純物捕捉容量を測定する手順により得られ得る破過曲線の略図であり、tは、破過時間であり、tは、破過時間の終わりである。
図1