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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】グランドピアノの大屋根用反射防止具
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/00 20190101AFI20221104BHJP
【FI】
G10C3/00 250
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018110482
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019211733
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【氏名又は名称】新井 孝治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 広彦
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/080391(WO,A1)
【文献】実開昭57-195188(JP,U)
【文献】実開昭48-41227(JP,U)
【文献】米国特許第6172293(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 1/04,3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、当該大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が当該大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、
前記大屋根後及びその上に折り畳まれた前記大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、
この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の前記大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、
を備え
前記反射防止具本体は、
前記大屋根後の上面を覆う大屋根後用カバー部と、
この大屋根後用カバー部と一体に構成され、前記大屋根後上に折り畳まれた前記大屋根前の上面を覆う大屋根前用カバー部と、
を有しており、
前記大屋根後用カバー部は、前記大屋根後の上面とほぼ同様の形状を有し、
前記大屋根前用カバー部は、前記大屋根前の上面とほぼ同様の形状を有し、前記大屋根後用カバー部の右前端部に連なりかつ右方に延びるように形成されており、
前記反射防止具本体が前記大屋根に装着された状態において、前記大屋根後用カバー部と前記大屋根前用カバー部の連接部分が、前記大屋根前の右端部を上下に回り込んだ状態になることを特徴とするグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【請求項2】
大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、当該大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が当該大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、
前記大屋根後及びその上に折り畳まれた前記大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、
この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の前記大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、
を備え、
前記保持手段は、前記反射防止具本体の外周部に、これに沿って連続的に延びるように設けられるとともに、伸縮自在のゴムからなり、当該外周部を、前記大屋根後及び/又は前記大屋根前の下面側に回り込んだ状態に保持する保持部材を有していることを特徴とするグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【請求項3】
大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、当該大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が当該大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、
前記大屋根後及びその上に折り畳まれた前記大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、
この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の前記大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、
を備え、
前記保持手段は、前記反射防止具本体の所定部位に取り付けられ、前記大屋根後の下面に上方から回り込んだ状態で、当該大屋根後の下面に設けられた係止部に掛け止めされる掛止め部材を有しており、
前記掛止め部材は、所定長さを有するひも状に形成され、前記反射防止具本体において前記大屋根後の高音側の内側に凹んだ湾曲部に対応する部位に取り付けられていることを特徴とするグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【請求項4】
大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、当該大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が当該大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、
前記大屋根後及びその上に折り畳まれた前記大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、
この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の前記大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、
を備え、
前記反射防止具本体は、
前記大屋根後の上面を覆う大屋根後用カバーと、
この大屋根後用カバーと分割した状態に構成され、前記大屋根後上に折り畳まれた前記大屋根前の上面を覆う大屋根前用カバーと、
を有し、
前記保持手段は、
前記大屋根後用カバーの外周部に、これに沿って連続的に延びるように設けられるとともに、伸縮自在のゴムからなり、当該外周部を、前記大屋根後の下面側に回り込んだ状態に保持する後用保持部材と、
前記大屋根前用カバーの外周部に、これに沿って連続的に延びるように設けられるとともに、伸縮自在のゴムからなり、当該外周部を、前記大屋根前の下面側に回り込んだ状態に保持する前用保持部材と、
を有していることを特徴とするグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【請求項5】
前記保持手段は、前記大屋根後用カバーの所定部位に取り付けられ、前記大屋根後の下面に上方から回り込んだ状態で、当該大屋根後の下面に設けられた係止部に掛け止めされる掛止め部材を有しており、
前記掛止め部材は、所定長さを有するひも状に形成され、前記大屋根後用カバーにおいて前記大屋根後の高音側の内側に凹んだ湾曲部に対応する部位に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【請求項6】
前記反射防止具本体は、前記大屋根に着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【請求項7】
前記保持手段は、粘着性を有するとともに、前記反射防止具本体及び前記大屋根の一方に設けられ、当該反射防止具本体を前記大屋根後及び/又は前記大屋根前の上面に張り付けた状態に保持する粘着部材を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のグランドピアノの大屋根用反射防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏する際などに使用され、開放されたグランドピアノの大屋根による照明の反射を防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なグランドピアノでは、その外周面が黒色で塗装され、艶出し加工が施されている。具体的には、鍵盤蓋、側板及び大屋根など、外部から見える部分の大部分が艶出し加工されている。特に、グランドピアノの天板である大屋根については、開放した際に、下面も外部から見えるため、大屋根の上面に加えて下面にも、艶出し加工が施されている。また、大屋根は一般に、所定形状を有する大屋根後と、この大屋根後の前側にヒンジを介して連結され、横長矩形状を有する大屋根前とで構成されている。大屋根を開放する際には、大屋根前を後方に折り返して大屋根後上に載置し、その大屋根後を、大屋根前と一体に、低音側(左側)のヒンジを中心として上方に回動させ、下方から大屋根突揚棒によって支持する。
【0003】
上記のように、大屋根の上面及び下面が艶出し加工されたグランドピアノを、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏するコンサートなどに使用する場合、そのピアノは、ステージの中央前部に設置され、大屋根がステージの後方に回動し、約45度傾斜した状態に開放される。また、上記の演奏時には、ピアノの直ぐ後ろ側に指揮者が立ち、ステージの天井に設置されている照明装置により、ステージ全体が上方から明るく照らされる。このような状態で演奏が行われる場合、指揮者を見るオーケストラの奏者にとって、ピアノの大屋根で反射した照明が目に入り、非常にまぶしく感じることがあり、それにより、指揮者を十分に見ることができないことで、演奏に支障が生じるおそれがある。
【0004】
上記のような問題を回避するために、大屋根の上面に艶消し加工を施すことが行われている。しかし、この場合には、1台のピアノにおいて、鍵盤蓋や側板などの艶出し加工が施された部分と、艶消し加工が施された大屋根が混在し、ピアノの美観が損なわれてしまう。また、大屋根の上面にスプレーによって艶消し塗料を塗布することも行われている。しかし、この場合には、比較的大きな大屋根の全体に、艶消し塗料を、ムラ無く、均一に塗布しなければならず、その作業が煩雑で手間もかかってしまう。
【0005】
さらに、前述した問題を回避するために、例えば特許文献1に開示されたグランドピアノ用カバーを使用することが考えられる。このグランドピアノ用カバーは、化学繊維の生地から成り、グランドピアノのピアノ本体の全体を覆うサイズを有している。また、このカバーは、3つのカバーで構成されており、具体的には、大屋根後を覆う屋根板カバー、大屋根前及び鍵盤蓋を覆う前カバー、及び側板を覆う側板カバーで構成されている。屋根板カバーは、大屋根後の上面全体を覆うとともに、左右及び後側の外周部が大屋根後のそれよりも外方に広がった状態に形成されている。また、前カバーは、その後端部に設けられた面ファスナーを介して、屋根板カバーの前端部に着脱自在に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭57-195188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のグランドピアノ用カバーでは、大屋根を開放する場合、前カバーが屋根板カバーから取り外され、大屋根上に屋根板カバーのみが載置された状態になる。このため、大屋根前が大屋根後の上に折り畳まれた状態で大屋根が開放されると、大屋根前が何ら覆われていないため、その大屋根前による前述した照明の反射問題が解消されない。また、屋根板カバーは、その左右及び後側の外周部が大屋根後のそれよりも外方に大きく広がっているため、大屋根が開放された状態では、屋根板カバーの右側(開放されたときの上側)の外周部が大屋根後の周縁部から垂れ下がり、その部分が観客席側から見えるため、ピアノ本体の見栄えが悪化してしまう。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ピアノ本体の良好な外観を維持しながら、開放された大屋根による照明の反射を確実に防止することができるグランドピアノの大屋根用反射防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、を備え、反射防止具本体は、大屋根後の上面を覆う大屋根後用カバー部と、この大屋根後用カバー部と一体に構成され、大屋根後上に折り畳まれた大屋根前の上面を覆う大屋根前用カバー部と、を有しており、大屋根後用カバー部は、大屋根後の上面とほぼ同様の形状を有し、大屋根前用カバー部は、大屋根前の上面とほぼ同様の形状を有し、大屋根後用カバー部の右前端部に連なりかつ右方に延びるように形成されており、反射防止具本体が大屋根に装着された状態において、大屋根後用カバー部と大屋根前用カバー部の連接部分が、大屋根前の右端部を上下に回り込んだ状態になることを特徴とする。
【0010】
グランドピアノの大屋根は一般に、低音側の奥行き寸法が長く、高音側の奥行き寸法が短い所定形状の大屋根後と、その前端部に折り畳み可能に連結された横長矩形状の大屋根前とで構成されている。また、大屋根を開放する場合、大屋根前を後方に回動し、大屋根後上に折り畳んだ状態で、高音側が持ち上げられ、低音側に前下がりに傾斜した状態で突揚棒によって支持される。これにより、大屋根は、演奏者側から見て、左下がりに傾斜した姿勢に開放される。このような大屋根に装着される本発明の大屋根用反射防止具では、反射防止具本体が、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される。また、大屋根に装着された反射防止具本体は、保持手段により、開放時における傾斜した姿勢の大屋根から脱落しないように保持される。
【0011】
前述したように、上記のグランドピアノが、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏するコンサートに使用される場合、大屋根がステージの後方に回動し、約45度傾斜した状態に開放される。この場合、ステージの天井に設置されている照明装置によって、ステージ全体が明るく照らされても、大屋根に上記の大屋根用反射防止具が装着されることによって、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前の上面全体が覆われるので、大屋根で照明が反射するのを確実に防止でき、それにより、オーケストラの奏者がまぶしく感じることがなく、良好な環境で演奏することができる。また、傾斜した姿勢の大屋根から反射防止具本体が脱落しないように保持する保持手段として、観客席側からほとんど見えず、必要最小限のもので構成することにより、ピアノ本体の良好な外観を維持することができる。以上のように、本発明によれば、ピアノ本体の良好な外観を維持しながら、開放された大屋根による照明の反射を確実に防止することができる。
【0016】
また、上記の構成によれば、反射防止具本体の大屋根後用カバー部が大屋根後の上面を覆う一方、大屋根前用カバー部が大屋根後上に折り畳まれた大屋根前の上面を覆い、両カバー部が一体に構成されている。このように、上記の大屋根後用カバー部及び大屋根前用カバー部を有する単一の反射防止具本体によって、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前の上面全体を容易に覆うことができる。
【0018】
さらに、上記の構成によれば、大屋根後用カバー部の右前端部に、大屋根前用カバー部が連なり、右方に延びている。例えば、シート状の材料から成る反射防止具本体を大屋根に装着する場合、まず、大屋根後用カバー部を大屋根後上に重ね合わせるように載置する。次いで、大屋根前を、後方に回動させて折り畳み、大屋根後用カバー部上に載置する。そして、大屋根前用カバー部を左方に折り畳み、折り畳まれている大屋根前上に載置する。これにより、大屋根の大屋根後及び大屋根前の上面がそれぞれ、反射防止具本体の大屋根後用カバー部及び大屋根前用カバー部によって覆われる。また、この場合、大屋根が開放された状態において、大屋根後用カバー部と大屋根前用カバー部の連接部分が、大屋根前の右端部を上下に回り込んだ状態になる。これにより、反射防止具本体が左方に滑り落ちるのを防止することができる。
【0019】
請求項に係る発明は、大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、を備え、保持手段は、反射防止具本体の外周部に、これに沿って連続的に延びるように設けられるとともに、伸縮自在のゴムからなり、外周部を、大屋根後及び/又は大屋根前の下面側に回り込んだ状態に保持する保持部材を有していることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、反射防止具本体の外周部が、大屋根後及び/又は大屋根前の下面側に回り込んだ状態で、保持部材によって保持される。この保持部材は、反射防止具本体の外周部に、これに沿って延びるように設けられており、例えば、反射防止具本体を布などのシート状の材料でカバー状に構成するとともに、上記の保持部材を反射防止具本体の外周部に沿って連続的に延びる伸縮自在のゴムで構成することにより、反射防止具本体を大屋根に上方から被せるだけで、反射防止具本体の外周部を大屋根の下面側に容易に回り込んだ状態にすることができる。以上により、反射防止具本体を、大屋根にしっかりと装着することができる。
【0021】
請求項に係る発明は、大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、を備え、保持手段は、反射防止具本体の所定部位に取り付けられ、大屋根後の下面に上方から回り込んだ状態で、大屋根後の下面に設けられた係止部に掛け止めされる掛止め部材を有しており、掛止め部材は、所定長さを有するひも状に形成され、反射防止具本体において大屋根後の高音側の内側に凹んだ湾曲部に対応する部位に取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、反射防止具本体の所定部位に取り付けられた掛止め部材が、大屋根後の下面に上方から回り込んだ状態で、大屋根後の下面の係止部に掛け止めされる。これにより、大屋根が開放された状態において、反射防止具本体を掛止め部材によって支持でき、反射防止具本体が大屋根から脱落するのを阻止することができる。また、掛止め部材は、所定長さを有するひも状に形成され、大屋根後の高音側において内側に凹んだ湾曲部に対応する、反射防止具本体の部位に取り付けられ、大屋根後の下面の係止部に掛け止めされることにより、反射防止具本体を、大屋根後の湾曲部において外方に広がるのを防止するとともに、その湾曲部にぴったりと沿った状態に装着することができる。
請求項4に係る発明は、大屋根後及び大屋根前で構成される開閉自在の大屋根に装着され、大屋根が傾斜した姿勢に開放された状態において、上方からの照明が大屋根によって反射するのを防止するためのグランドピアノの大屋根用反射防止具であって、大屋根後及びその上に折り畳まれた大屋根前に対し、それらの上面全体を覆った状態に装着される反射防止具本体と、この反射防止具本体を、開放時における傾斜した姿勢の大屋根から脱落しないように保持する保持手段と、を備え、反射防止具本体は、大屋根後の上面を覆う大屋根後用カバーと、この大屋根後用カバーと分割した状態に構成され、大屋根後上に折り畳まれた大屋根前の上面を覆う大屋根前用カバーと、を有し、保持手段は、大屋根後用カバーの外周部に、これに沿って連続的に延びるように設けられるとともに、伸縮自在のゴムからなり、外周部を、大屋根後の下面側に回り込んだ状態に保持する後用保持部材と、大屋根前用カバーの外周部に、これに沿って連続的に延びるように設けられるとともに、伸縮自在のゴムからなり、外周部を、大屋根前の下面側に回り込んだ状態に保持する前用保持部材と、を有していることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のグランドピアノの大屋根用反射防止具において、保持手段は、大屋根後用カバーの所定部位に取り付けられ、大屋根後の下面に上方から回り込んだ状態で、大屋根後の下面に設けられた係止部に掛け止めされる掛止め部材を有しており、掛止め部材は、所定長さを有するひも状に形成され、大屋根後用カバーにおいて大屋根後の高音側の内側に凹んだ湾曲部に対応する部位に取り付けられていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載のグランドピアノの大屋根用反射防止具において、反射防止具本体は、大屋根に着脱自在に構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、反射防止具本体が大屋根に着脱自在であるので、例えば大屋根用反射防止具がコンサートホールに備えられている場合において、前述したように、グランドピアノが、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏するコンサートに使用されるときには、大屋根用反射防止具を大屋根に装着する一方、グランドピアノがソロ演奏のコンサートに使用されるときには、大屋根用反射防止具を大屋根から取り外しておくことで、ピアノの美観を確保しながら、コンサートを行うことができる。このように、大屋根用反射防止具を、必要に応じて、グランドピアノに取り付けたり、取り外したりすることができる。また、例えば、反射防止具本体が布などのシート状の材料で構成され、比較的小さく折り畳み可能であれば、調律師が、大屋根用反射防止具を携帯し、自身が調律したグランドピアノに対し、必要に応じて、大屋根用反射防止具を取り付けることができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれかに記載のグランドピアノの大屋根用反射防止具において、保持手段は、粘着性を有するとともに、反射防止具本体及び大屋根の一方に設けられ、反射防止具本体を大屋根後及び/又は大屋根前の上面に張り付けた状態に保持する粘着部材を有していることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、粘着性を有する粘着部材が、反射防止具本体及び大屋根の一方に設けられているので、その粘着部材を介して、反射防止具本体を、大屋根後及び/又は大屋根前の上面に容易に張り付けることができ、加えて、反射防止具本体が不要になったときには、その反射防止具本体を大屋根から容易に取り外すことができる。また、反射防止具本体の平面形状を、大屋根前が大屋根後上に折り畳まれた状態の大屋根の上面全体とほぼ同じ形状に形成することにより、反射防止具本体を上記大屋根の上面にぴったりと張り付けることができる。この場合には、反射防止具本体を観客席側から全く見えなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態によるグランドピアノの大屋根用反射防止具を説明するための図であり、(a)は、大屋根が閉鎖された状態のグランドピアノの斜視図、(b)は、大屋根用反射防止具が大屋根に装着されたグランドピアノにおいて、大屋根が開放された状態を示す斜視図である。
図2】(a)は、大屋根の平面図、(b)は、大屋根の側面図である。
図3】第1実施形態の大屋根用反射防止具を示す平面図であり、(a)は、反射防止具本体がカバー状に形成された大屋根全体用カバー、(b)は、反射防止具本体がシート状に形成された大屋根全体用シートを示す。
図4】開放された大屋根による照明の反射を説明するためのグランドピアノの正面図であり、(a)は、大屋根用反射防止具が装着されていない状態、(b)は、大屋根用反射防止具が装着されている状態を示す。
図5】本発明の第2実施形態による大屋根用反射防止具が大屋根に装着されたグランドピアノにおいて、大屋根が開放された状態を示す斜視図である。
図6】第2実施形態の大屋根用反射防止具を示す平面図であり、(a)は大屋根後用カバー、(b)は大屋根前用カバーを示す。
図7】本発明の第3実施形態による大屋根用反射防止具が大屋根に装着されたグランドピアノにおいて、大屋根が開放された状態を示す斜視図である。
図8】第3実施形態の大屋根用反射防止具を示す平面図である。
図9】第3実施形態の大屋根用反射防止具の装着手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態による大屋根用反射防止具が装着されるグランドピアノを示しており、同図(b)は、大屋根に大屋根用反射防止具を装着し、その大屋根が開放された状態のグランドピアノを示している。同図(a)及び(b)に示すように、このグランドピアノ1は、3本の脚部1aで下方から支持されたピアノ本体2と、その上面を開閉する大屋根3とを備えている。なお、以下の説明では、グランドピアノ1を演奏する演奏者側から見たときの手前側を「前」、奥側を「後」、低音側である左側を「左」、高音側である右側を「右」として説明するものとする。
【0027】
ピアノ本体2の前部には、各々が前後方向に延び、多数の白鍵及び黒鍵が左右方向に並設された鍵盤4が設けられ、その鍵盤4の上側に、開閉自在の鍵盤蓋5が設けられている。また、ピアノ本体2の後部には、所定形状の金属製のフレーム6が設けられ、そのフレーム6の側方を囲うように、側板7が配置されている。なお、図示しないが、フレーム6には、多数の弦が前後方向に延びるように張設され、またフレーム6の下側に、各鍵に対応し、鍵の押鍵に伴って打弦する多数のアクションが左右方向に並設されている。
【0028】
側板7は、所定の厚さ及び高さを有しており、前述したように、フレーム6の左右及び後側の側方を連続して囲うように配置されている。また、側板7の左部には、複数の屋根角蝶番8を介して、大屋根3が前後方向に延びる水平軸線を中心として回動自在に取り付けられている。さらに、側板7の右内面には、所定長さを有する大屋根突揚棒9の基端部が、図示しない金具を介して上下方向に回動自在に支持されており、この大屋根突揚棒9により、大屋根3が開放した状態に支持される。
【0029】
図2(a)及び(b)はそれぞれ、大屋根3の平面形状及び側面形状を示している。図2(a)及び前記図1に示すように、大屋根3は、側板7の平面形状とほぼ同様の外形を有し、低音側(図2(a)の左側)の奥行き寸法が長く、高音側(図2(a)の右側)の奥行き寸法が短い所定形状の大屋根後11と、横長矩形状に形成され、大屋根後11の前側にヒンジ(図示せず)を介して、後方に折り畳み可能に連結された大屋根前12とで構成されている。また、大屋根前12の下面前端部には、左右方向に延びる上口棒12aが突設されている。
【0030】
大屋根3を開放する場合には、まず、大屋根前12を後方に回動させ、大屋根後11上に折り畳む(図2の2点鎖線で示す状態)。なおこの場合、大屋根前12の上面の大部分が、大屋根後11に重なる一方、大屋根前12の上面の右前部が大屋根後11に重ならず、外部に露出した状態になる。次いで、大屋根後11の右端部を持ち上げ、その下面の所定位置に設けられた受皿部11aに、大屋根突揚棒9の先端部を係合させる。これにより、大屋根3は、左下がりに約45度傾斜した姿勢で開放される(図1(b)参照)。
【0031】
以上のように構成されたグランドピアノ1では、その外表面の大部分が黒色で塗装されかつ艶出し加工が施されている。また、大屋根3では、閉鎖時の上面に加えて下面も、黒色でかつ艶出し加工が施されている。このグランドピアノ1を、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏するコンサートにおいて使用する場合、前述したように、ステージの中央前部に設置され、大屋根3がステージの後方に回動し、約45度傾斜した状態に開放される。そしてこの場合、大屋根3による前述した照明の反射を防止するために、大屋根3に大屋根用反射防止具14が装着される。
【0032】
本実施形態の大屋根用反射防止具14は、大屋根前12が大屋根後11上に折り畳まれた状態の大屋根3の上面全体を、単一のシート状の材料で覆うものである。図3(a)は、大屋根用反射防止具14の反射防止具本体としての大屋根全体用カバー15を示している。この大屋根全体用カバー15は、所定材料(例えばポリエステル)の布から成り、黒色の色彩を有している。なお、以下の説明では、大屋根全体用カバー15を適宜、「全体カバー15」というものとする。
【0033】
全体カバー15は、上記大屋根3の上面とほぼ同じ形状を有し、その大屋根3の外周部において下面側に若干回り込めるサイズを有している。また、全体カバー15の外周部には、その外周部に沿って連続的に延び、伸縮自在の保持ゴム15a(保持手段、保持部材)が設けられている。これにより、大屋根3に装着された全体カバー15は、その外周部が、保持ゴム15aによって、大屋根3の下面側に回り込んだ状態に保持され、したがって、大屋根3が左下がりに傾斜した姿勢に開放された場合でも、大屋根3から脱落することはない。
【0034】
また、全体カバー15には、大屋根3の後述する係止部13に掛け止めされる掛止め部材16(保持手段)が設けられている。この掛止め部材16は、所定長さを有するひも状のものであり、全体カバー15の外周部の所定位置、具体的には、大屋根後11の高音側において内側に凹んだ湾曲部11bに対応する部位に取り付けられている。そして、掛止め部材16は、大屋根後11の裏面側に回り込み、大屋根後11の裏面の所定位置に設けられている係止部13に掛け止めされる。これにより、全体カバー15は、大屋根後11の湾曲部11bにおいて、図3(a)の1点鎖線Pで示すように広がるのを防止されるとともに、大屋根後11の湾曲部11b、及び折り畳まれた大屋根前12の右後端部にぴったりと沿った状態に装着される。このように、全体カバー15は、上記の保持ゴム15aに加えて、掛止め部材16により、大屋根3からの脱落が防止される。なお、上記の係止部13は、新規に設置する他、大屋根3が搬送中に誤って開放されるのを防止するための既存のロック機構の大屋根掛金を利用することができる。
【0035】
一方、図3(b)は、上述した大屋根用反射防止具14の変形例としての大屋根用反射防止具17を示している。この大屋根用反射防止具17は、上記大屋根用反射防止具14と同様、大屋根前12が大屋根後11上に折り畳まれた状態の大屋根3の上面全体を、単一のシート状の材料で覆うものであり、反射防止具本体として、大屋根全体用シート18を備えている。この大屋根全体用シート18は、所定材料(例えばポリエステル、フェルト)の布や、薄板状のパネル、合成樹脂製のフィルムなどから成り、黒色の色彩を有している。なお、以下の説明では、大屋根全体用シート18を適宜、「全体シート18」というものとする。
【0036】
全体シート18は、上記大屋根3の上面とほぼ同じ形状及びサイズを有している。また、全体シート18の外周部には、大屋根3の上面との間に、複数の粘着テープ18a(保持手段、粘着部材)が設けられている。各粘着テープ18aは、両面テープなどで構成され、図3(b)に示すように、全体シート18の裏面の外周部に、これに沿って延びるように適宜、接着されている。これにより、大屋根3に装着された全体シート18は、その外周部が、複数(図3(b)では9枚)の粘着テープ18aを介して、大屋根3の上面に張り付けられた状態に保持される。
【0037】
なお、上記の粘着テープ18aは、全体シート18の裏面及び大屋根3の上面の一方にあらかじめ取り付けられる。したがって、全体シート18を大屋根3に装着する場合、全体シート18を大屋根3上に載置して位置決めした後、各粘着テープ18aの剥離紙をはがし、その粘着テープ18aを介して、全体シート18を大屋根3に張り付ける。
【0038】
ここで、図4を参照して、グランドピアノ1を、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏するコンサートにおいて使用する際の大屋根3による照明の反射について説明する。図4(a)は、上述した大屋根用反射防止具14、17が大屋根3に装着されていない状態のグランドピアノ1を示している。図4(a)に示すように、グランドピアノ1の上方からの照明(白抜き矢印で図示)は、大屋根3の上面、より具体的には、大屋根後11の上面、及びその上に折り畳まれた大屋根前12の上面において反射し、その反射光(黒矢印で図示)がオーケストラ側を照射する。この場合には、オーケストラの奏者にとって、反射光が目に入り、非常にまぶしく感じ、演奏に支障が生じるおそれがある。
【0039】
これに対し、図4(b)は、大屋根3に大屋根用反射防止具14(全体カバー15)を装着した状態を示している。同図に示すように、この場合、グランドピアノ1の上方からの照明は、大屋根3に装着されている大屋根用反射防止具14で反射することはなく、したがって、大屋根用反射防止具14が装着されていない場合(図4(a))と異なり、照明による反射光がオーケストラ側を照射することはない。
【0040】
以上にように、本実施形態の大屋根用反射防止具14、17によれば、グランドピアノ1が、オーケストラをバックにピアノ協奏曲を演奏するコンサートに使用される場合、大屋根3に、全体カバー15又は全体シート18を装着する。これにより、ステージの天井に設置されている照明装置によって、ステージ全体が明るく照らされても、大屋根3に上記の全体カバー15又は全体シート18が装着されているので、大屋根3で照明が反射するのを確実に防止でき、それにより、オーケストラの奏者がまぶしく感じることがなく、良好な環境で演奏することができる。
【0041】
また、全体カバー15及び全体シート18はいずれも、大屋根3に対して着脱自在であるので、例えば大屋根用反射防止具14、17がコンサートホールに備えられている場合において、その大屋根用反射防止具14、17を、必要に応じて、グランドピアノ1に取り付けたり、取り外したりすることができる。加えて、例えば調律師が、大屋根用反射防止具14、17を携帯する場合には、自身が調律したグランドピアノに対し、必要に応じて、大屋根用反射防止具14、17を取り付けることができる。
【0042】
また、全体カバー15の外周部には、保持ゴム15aが設けられているので、全体カバー15を大屋根3に上方から被せるだけで、全体カバー15の外周部を大屋根3の下面側に容易に回り込んだ状態にすることができる。これにより、全体カバー15を、大屋根3にしっかりと装着することができる。加えて、図1(b)に示すように、全体カバー15を大屋根3に装着した場合でも、大屋根後11の裏面、及び大屋根前12の上面の右前端部の大部分が、観客席側から見える状態になる。前述したように、大屋根3の表裏面は艶出し加工が施されているため、上記の裏面及び右前端部を、観客席側から通常と同様、艶出し加工された部分が輝いているように見ることができ、グランドピアノ1を観客席側から見る観客に違和感を感じさせることはない。
【0043】
さらに、大屋根用反射防止具17の全体シート18は、大屋根前12が大屋根後11上に折り畳まれた状態の大屋根3の上面全体とほぼ同じ形状及びサイズを有しているので、全体シート18を上記大屋根3の上面全体にぴったりと張り付けることができる。これにより、全体シート18は、観客席側から全く見えないので、ピアノ本体2の良好な外観を確保することができる。
【0044】
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第2実施形態による大屋根用反射防止具21について説明する。図5は、大屋根用反射防止具21が装着された大屋根3を開放した状態のグランドピアノ1を示し、図6は、大屋根用反射防止具21の平面図である。この大屋根用反射防止具21は、前述した全体カバー15や全体シート18を備えた第1実施形態の大屋根用反射防止具14、17と異なり、上記の全体カバー15を、大屋根後用カバー22と大屋根前用カバー23の2つに分割したタイプのものである。
【0045】
なお、以下の説明では、本実施形態の大屋根用反射防止具21を、前述した第1実施形態の大屋根用反射防止具14と区別しやすくするために適宜、前者21に「分割型」を、後者14に「全体型」の文言を付するものとする。
【0046】
図6(a)及び(b)はそれぞれ、大屋根用反射防止具21の反射防止具本体としての大屋根後用カバー22及び大屋根前用カバー23を示している。両カバー22、23は、所定材料(例えばポリエステル)の布から成り、黒色の色彩を有している。なお、以下の説明では、大屋根後用カバー22及び大屋根前用カバー23をそれぞれ適宜、「後カバー22」及び「前カバー23」というものとする。
【0047】
後カバー22は、大屋根後11の平面形状とほぼ同じ形状を有し、その上面のほぼ全体を覆うとともに、大屋根後11の左右及び後側の側方において下面側に若干回り込めるサイズを有している。また、後カバー22の外周部の所定部位、例えば左右及び後側の外周部には、それらの外周部に沿って連続的に延び、伸縮自在の後用ゴム22a(保持手段、保持部材)が設けられている。これにより、大屋根後11に装着された後カバー22は、大屋根3が左下がりに傾斜した姿勢に開放された場合でも、大屋根後11から脱落することはない。
【0048】
また、後カバー22には、大屋根3の前記係止部13に掛け止めされる掛止め部材24(保持手段)が設けられている。この掛止め部材24は、第1実施形態の掛止め部材16と同様、所定長さを有するひも状のものであり、後カバー22の外周部の所定位置、すなわち、大屋根後11の湾曲部11bに対応する部位に取り付けられている。そして、掛止め部材24は、大屋根後11の裏面側に回り込み、大屋根後11の裏面の係止部13に掛け止めされる。これにより、後カバー22は、大屋根後11の湾曲部11bにおいて、図6(a)の1点鎖線Qで示すように広がるのを防止されるとともに、湾曲部11bにぴったりと沿った状態に装着され、上記の後用ゴム22aに加えて掛止め部材24により、大屋根後11からの脱落が防止される。
【0049】
一方、前カバー23は、大屋根前12の平面形状とほぼ同じ形状を有し、その大屋根前12を大屋根後11上に折り畳んだときの上面全体を覆うとともに、大屋根前12の左右及び後側の側方において下面側に若干回り込めるサイズを有している。また、前カバー23の外周部の所定部位、例えば左右及び後側の外周部には、それらの外周部に沿って連続的に延び、伸縮自在の前用ゴム23a(保持手段、保持部材)が設けられている。これにより、大屋根前12に装着された前カバー23は、大屋根3が左下がりに傾斜した姿勢に開放された場合でも、大屋根前12から脱落することはない。
【0050】
なお、本実施形態では、2つのカバーとしての後カバー22及び前カバー23を備えた大屋根用反射防止具21について説明したが、上記の両カバー22及び23に代えて、前述した第1実施形態の全体シート18を2つに分割し、大屋根後11及び大屋根前12にそれぞれ対応する大屋根後用シート及び大屋根前用シートを採用することも可能である。
【0051】
以上のように、本実施形態の分割型の大屋根用反射防止具21によれば、大屋根3の大屋根後11及び大屋根前12にそれぞれ、後カバー22及び前カバー23を装着することにより、前述した第1実施形態の全体型の大屋根用反射防止具14、17と同様の効果、すなわち、大屋根3で照明が反射するのを確実に防止でき、それにより、オーケストラの奏者がまぶしく感じることがなく、良好な環境で演奏することができる。また、後カバー22及び前カバー23は、大屋根後11及び大屋根前12にそれぞれ着脱自在であるので、第1実施形態の全体型の大屋根用反射防止具14、17と同様、両カバー22、23を、必要に応じて、グランドピアノ1に取り付けたり、取り外したりすることができるとともに、調律師による携帯性も確保することができる。さらに、分割型の大屋根用反射防止具21の後カバー22及び前カバー23は、全体型の大屋根用反射防止具14の全体カバー15に比べて、平面形状が単純な構成を有しているため、比較的簡単に作製することが可能である。
【0052】
次に、図7及び図8を参照して、本発明の第3実施形態による大屋根用反射防止具30について説明する。図7は、大屋根用反射防止具30が装着された大屋根3を開放した状態のグランドピアノ1を示し、図8は、大屋根用反射防止具30の平面図である。この大屋根用反射防止具30は、大屋根3の大屋根後11及びその上に折り畳まれた大屋根前12の上面を覆う反射防止具本体31と、この反射防止具本体31に取り付けられ、大屋根3の前記係止部13に掛け止めされる掛止め部材34(保持手段)とを備えている。
【0053】
図8に示すように、反射防止具本体31は、大屋根後11の上面を覆う大屋根後用カバー部32と、大屋根後11上に折り畳まれた大屋根前12の上面を覆う大屋根前用カバー部33とを有しており、両カバー部32、33が一体に構成されている。この反射防止具本体31は、所定材料(例えばポリエステル、フェルト)の布から成り、黒色の色彩を有している。なお、以下の説明では、大屋根後用カバー部32及び大屋根前用カバー部33をそれぞれ適宜、「後カバー部32」及び「前カバー部33」というものとする。
【0054】
後カバー部32は、大屋根後11の平面形状とほぼ同じ形状を有し、その上面のほぼ全体を覆うように形成されている。また、後カバー部32の右部の所定位置には、第1及び第2実施形態の掛止め部材16、24と同様に構成され、大屋根後11の裏面の係止部13に掛け止めされる掛止め部材34が取り付けられている。
【0055】
一方、前カバー部33は、大屋根前12の平面形状とほぼ同じ、すなわち横長矩形状を有しており、後カバー部32の右前端部に連なりかつ右方に延びるように形成されている。
【0056】
図9は、大屋根用反射防止具30の装着手順を順に示している。なお、同図では、掛止め部材34を省略している。まず、同図(a)に示すように、反射防止具本体31の後カバー部32を、大屋根後11上に重ね合わせるように載置する。次いで、大屋根前12を、後方に回動させて折り畳み、同図(b)に示すように、後カバー部32上に載置する。そして、反射防止具本体31の前カバー部33を左方に折り畳み、同図(c)に示すように、折り畳まれている大屋根前12上に載置する。これにより、大屋根3の大屋根後11及び大屋根前12の上面がそれぞれ、反射防止具本体31の後カバー部32及び前カバー部33によって覆われる。
【0057】
上記のように、反射防止具本体31を大屋根3に装着した状態で、掛止め部材34を大屋根後11の下面側に回り込ませ、係止部13に掛け止めする。そして、大屋根3(大屋根後11)の右部を持ち上げ、その下面の受皿部11aに大屋根突揚棒9の先端部を係合させる。これにより、大屋根3は、左下がりに約45度傾斜した姿勢で開放される(図7参照)。
【0058】
以上のように、本実施形態の大屋根用反射防止具30によれば、前述した第1実施形態の全体型の大屋根用反射防止具14、17、及び第2実施形態の分割型の大屋根用反射防止具21と同様の効果、すなわち、大屋根3で照明が反射するのを確実に防止でき、それにより、オーケストラの奏者がまぶしく感じることがなく、良好な環境で演奏することができる。また、反射防止具本体31を大屋根3に装着した状態では、後カバー部32と前カバー部33の連接部分36が、大屋根前12の右端部を上下に回り込んだ状態になる。加えて、後カバー部32に取り付けられた掛止め部材34が、大屋根後11の下面側に回り込み、係止部13に掛け止めされる。これらにより、反射防止具本体31が、開放された大屋根3から左方に滑り落ちるのを防止することができる。さらに、反射防止具本体31は、大屋根3に着脱自在であるので、第1実施形態の全体型の大屋根用反射防止具14、17と同様、反射防止具本体31を、必要に応じて、グランドピアノ1に取り付けたり、取り外したりすることができるとともに、調律師による携帯性も確保することができる。
【0059】
なお、本発明は、説明した各実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態の全体カバー15及び全体シート18、第2実施形態の後カバー22及び前カバー23、並びに第3実施形態の反射防止具本体31の構成材料として、ポリエステルやフェルトを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、大屋根3による照明の反射を防止可能なものであれば、種々の材料を採用することが可能である。また、第1実施形態の全体カバー15には、その外周部に保持ゴム15aを設ける一方、第2実施形態の後カバー22及び前カバー23には、それらの外周部に後用ゴム22a及び前用ゴム23aをそれぞれ設けたが、これらの保持ゴム15a、後用ゴム22a及び前用ゴム23aに代えて、第1実施形態の全体シート18に設けた粘着テープ18aを使用してもよい。
【0060】
また、第2実施形態の分割型の大屋根用反射防止具21では、後カバー22及び前カバー23をそれぞれ、大屋根後11及び大屋根前12に装着したが、後カバー22及び前カバー23の一方のみを装着するようにしてもよい。
【0061】
さらに、第3実施形態の反射防止具本体31において、後カバー部32及び前カバー部33をそれぞれ、第1実施形態の粘着テープ18aを用いて、大屋根後11及び大屋根前12の上面に張り付けることも可能である。この場合には、掛止め部材34を省略することができる。
【0062】
さらにまた、第1~第3実施形態で示した大屋根用反射防止具14、17、21及び30の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 グランドピアノ
2 ピアノ本体
3 大屋根
11 大屋根後
12 大屋根前
13 係止部
14 大屋根用反射防止具
15 大屋根全体用カバー(反射防止具本体)
15a 保持ゴム(保持手段、保持部材)
16 掛止め部材(保持手段)
17 大屋根用反射防止具
18 大屋根全体用シート(反射防止具本体)
18a 粘着テープ(保持手段、粘着部材)
21 大屋根用反射防止具
22 大屋根後用カバー(反射防止具本体)
22a 後用ゴム(保持手段、保持用ゴム)
23 大屋根前用カバー(反射防止具本体)
23a 前用ゴム(保持手段、保持用ゴム)
24 掛止め部材(保持手段)
30 大屋根用反射防止具
31 反射防止具本体
32 大屋根後用カバー部
33 大屋根前用カバー部
34 掛止め部材(保持手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9