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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20221104BHJP
   F24C 3/02 20060101ALI20221104BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F24C3/12 M
F24C3/02 Q
A47J37/06 366
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018122631
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020003131
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】根笹 典政
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223457(JP,A)
【文献】特開2009-066086(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01974637(EP,A1)
【文献】特開2015-006219(JP,A)
【文献】特開平05-033942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼網を使用した焼網調理及びグリルプレートを使用したプレート調理が可能な加熱庫と、
加熱庫内を加熱する上下バーナと、
加熱庫後方の左右中央部近傍に配置された第1温度検知手段と、
加熱庫後方であって、第1温度検知手段よりも側方で、且つ第1温度検知手段よりも上方に配置された第2温度検知手段と、
上下バーナの燃焼を制御する燃焼制御部と、
加熱調理中、第1温度検知手段で検知される第1庫内温度TH1と、設定される異常過熱防止温度とを対比して、上下バーナを強制消火させるかどうかを判定する異常過熱判定部と、
異常過熱防止温度として、所定の焼網用異常過熱防止温度TkA、または焼網用異常過熱防止温度TkAより高い所定のプレート用異常過熱防止温度TkPを設定する異常過熱防止温度設定部と、
加熱調理中、第2温度検知手段で検知される第2庫内温度TH2と、焼網用異常過熱防止温度TkAより低い所定の判定温度Tdとを対比して、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAに設定するか、プレート用異常過熱防止温度TkPに設定するかを判定する調理器具判定部と、を有し、
加熱調理中、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になると、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAに設定し、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、異常過熱防止温度をプレート用異常過熱防止温度TkPに設定するように構成されている加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
初期設定における異常過熱防止温度は、プレート用異常過熱防止温度TkPに設定されており、
加熱調理中、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になると、異常過熱防止温度をプレート用異常過熱防止温度TkPから焼網用異常過熱防止温度TkAに変更させる加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱調理器において、
初期設定における異常過熱防止温度は、焼網用異常過熱防止温度TkAに設定されており、
加熱調理中、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になったときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAからプレート用異常過熱防止温度TkPに変更させる加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼網を使用した焼網調理及びグリルプレートを使用したプレート調理が可能な加熱庫を有する加熱調理器に関する。特に、本発明は、加熱調理中、異常過熱が生じたときに上下バーナを強制消火させる加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
手動で上下バーナの加熱量を調節しながら加熱調理する手動調理以外に、加熱庫後方の左右中央部に庫内温度センサを設け、庫内温度センサで検知される庫内温度に基づいて加熱調理中の上下バーナの加熱量を自動で調節する自動調理が可能な加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1)。従来、加熱庫を利用した加熱調理に使用される調理器具としては、線材からなる焼網が使用されてきたが、最近、焼網以外に皿状のグリルプレートも使用されている。そのため、特許文献1の加熱調理器では、焼網調理モードやプレート調理モードで自動調理するための専用スイッチが設けられており、使用者が設定する調理器具や被調理物の種類に合わせて、自動調理中の加熱量が設定されている。また、自動調理中、上下バーナの消火不全などの誤動作が生じた場合を考慮して、庫内温度センサで検知される庫内温度が所定の異常過熱防止温度になると、強制的にガスバーナを消火させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-213554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焼網調理とプレート調理とでは、庫内温度の温度上昇の程度が異なる。そのため、各調理器具に適切な異常過熱防止温度を設定することが望まれる。特許文献1のような調理器具に応じた専用スイッチが設けられ、自動調理が可能な加熱調理器では、使用者が調理モードを選択することにより、各調理モードの自動調理における異常過熱防止温度の設定を変更することができる。
【0005】
しかしながら、調理器具に応じた専用スイッチが設けられておらず、手動調理のみが可能な加熱調理器や、自動調理が可能な加熱調理器で手動調理を行う場合、使用者は調理器具の種類を選択できないため、調理器具に応じた異常過熱防止温度が設定されない。そのため、例えば、焼網用の異常過熱防止温度(以下、「焼網用異常過熱防止温度」という)のみが設定されている加熱調理器でグリルプレートを使用したプレート調理を行うと、被調理物の調理終了前に庫内温度が焼網用異常過熱防止温度まで上昇してしまい、調理途中で上下バーナが強制消火されるという問題がある。一方、プレート用の異常過熱防止温度(以下、「プレート用異常過熱防止温度」という)のみが設定されている加熱調理器で焼網を使用した焼網調理を行うと、異常過熱が生じた場合に、上下バーナの消火が遅れるという問題がある。手動調理を行う場合でも、異常過熱防止温度を使用者が調理器具に応じて変更可能な専用スイッチを別に設けることも考えられるが、コストが増加する。また、使用者が調理器具の選択を誤ったり、専用スイッチの設定を忘れたりした場合、上記と同様の問題が生ずる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、焼網を使用した焼網調理及びグリルプレートを使用したプレート調理が可能な加熱庫を有する加熱調理器で手動調理を行うときに、いずれの調理器具を用いる場合でも、調理終了前に上下バーナが強制消火されることなく、異常過熱時には安全に加熱調理を停止させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
焼網を使用した焼網調理及びグリルプレートを使用したプレート調理が可能な加熱庫と、
加熱庫内を加熱する上下バーナと、
加熱庫後方の左右中央部近傍に配置された第1温度検知手段と、
加熱庫後方であって、第1温度検知手段よりも側方で、且つ第1温度検知手段よりも上方に配置された第2温度検知手段と、
上下バーナの燃焼を制御する燃焼制御部と、
加熱調理中、第1温度検知手段で検知される第1庫内温度TH1と、所定の異常過熱防止温度とを対比して、上下バーナを強制消火させるかどうかを判定する異常過熱判定部と、
異常過熱防止温度として、所定の焼網用異常過熱防止温度TkA、または焼網用異常過熱防止温度TkAより高い所定のプレート用異常過熱防止温度TkPを設定する異常過熱防止温度設定部と、
加熱調理中、第2温度検知手段で検知される第2庫内温度TH2と、焼網用異常過熱防止温度TkAより低い所定の判定温度Tdとを対比して、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAに設定するか、プレート用異常過熱防止温度TkPに設定するかを判定する調理器具判定部と、を有し、
加熱調理中、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になると、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAに設定し、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、異常過熱防止温度をプレート用異常過熱防止温度TkPに設定するように構成されている加熱調理器が提供される。
【0008】
加熱庫内に上下バーナが設けられている場合、下火バーナからの燃焼排気は、加熱時間の経過に伴い、燃焼排気のドラフト効果が大きくなって、加熱庫下方から加熱庫後方の左右中央部に向かって流れやすくなる。そのため、加熱庫後方の左右中央部近傍に第1温度検知手段を設ければ、異常過熱が生じたときの庫内全体の温度を検知することができる。また、皿状のグリルプレートが加熱庫内に収容されている場合、焼網に比べて加熱庫下方の燃焼排気は上方に流れ難いから、プレート調理で加熱調理が進行したときの第1温度検知手段で検知される第1庫内温度TH1は焼網調理よりも高くなる。そのため、プレート用異常過熱防止温度TkPは焼網用異常過熱防止温度TkAよりも高く設定することが好ましい。従って、加熱調理中、第1温度検知手段で検知される第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA、または焼網用異常過熱防止温度TkAより高いプレート用異常過熱防止温度TkPになったときに上下バーナを強制消火させるかどうかを判定することにより、各調理器具を使用したときの加熱調理を進行させつつ、安全に調理を停止させることができる。
【0009】
また、線材からなる焼網が加熱庫内に収容されている場合、加熱庫下方の燃焼排気は焼網の線材間を通過して、加熱庫上方にも流れる。これに対して、皿状のグリルプレートが加熱庫内に収容されている場合、グリルプレートによって燃焼排気の加熱庫上方への流れが阻害される。そのため、加熱庫後方であって、第1温度検知手段よりも側方で、且つ第1温度検知手段よりも上方に配置された第2温度検知手段で検知される第2庫内温度TH2は、焼網調理の方がプレート調理よりも高くなる。特に、加熱調理初期はドラフト効果が小さいだけでなく、プレート調理が行われている場合、加熱調理初期における加熱量は大きな熱容量を有するグリルプレートの温度を上昇させるのに消費されるから、焼網調理が行われているときの第2庫内温度TH2とプレート調理が行われているときの第2庫内温度TH2との温度差が大きい。
【0010】
従って、少なくとも第2庫内温度TH2と焼網用異常過熱防止温度TkAより低い所定の判定温度Tdとを対比すれば、焼網が使用されているか、グリルプレートが使用されているかを判定できる。そして、加熱調理中、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になると、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAに設定し、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、異常過熱防止温度をプレート用異常過熱防止温度TkPに設定することにより、調理器具に応じた専用スイッチを有していない加熱調理器で手動調理を行う場合でも、使用されている調理器具に応じた異常過熱防止温度を設定することができる。
【0011】
好ましくは、上記加熱調理器において、
初期設定における異常過熱防止温度は、プレート用異常過熱防止温度TkPに設定されており、
加熱調理中、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になると、異常過熱防止温度をプレート用異常過熱防止温度TkPから焼網用異常過熱防止温度TkAに変更させる。
【0012】
上記加熱調理器によれば、初期設定における異常過熱防止温度はプレート用異常過熱防止温度TkPに設定されているから、第2庫内温度TH2が判定温度Tdに到達しなければ、異常過熱防止温度は焼網用異常過熱防止温度TkAよりも高温のプレート用異常過熱防止温度TkPに維持される。従って、プレート調理が行われているときに、調理途中で調理が停止されるのを防止することができる。
【0013】
一方、既述したように、焼網調理の場合、加熱調理初期における第2庫内温度TH2はプレート調理よりも高い。従って、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になれば、焼網が使用されていると判定できる。これにより、加熱調理初期に異常過熱防止温度がプレート用異常過熱防止温度TkPから焼網用異常過熱防止温度TkAに変更されるから、焼網調理が行われているときに異常過熱が生じた場合、確実に上下バーナを強制消火させることができる。
【0014】
好ましくは、上記加熱調理器において、
初期設定における異常過熱防止温度は、焼網用異常過熱防止温度TkAに設定されており、
加熱調理中、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になったときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAからプレート用異常過熱防止温度TkPに変更させる。
【0015】
上記加熱調理器によれば、初期設定における異常過熱防止温度は焼網用異常過熱防止温度TkAに設定されており、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkAに到達したときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上であれば、異常過熱防止温度は焼網用異常過熱防止温度TkAに維持される。これにより、焼網調理が行われているときに異常過熱が生じた場合、確実に上下バーナを強制消火させることができる。
【0016】
一方、プレート調理の場合、加熱調理が進行すると第2庫内温度TH2は第1庫内温度TH1よりも低くなるから、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkAに到達したときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、グリルプレートが使用されていると判定できる。これにより、異常過熱防止温度が焼網用異常過熱防止温度TkAからプレート用異常過熱防止温度TkPに変更されるから、プレート調理が行われているときに、調理途中で調理が停止されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、調理器具に応じた専用スイッチが設けられていない加熱調理器で手動調理を行う場合でも、使用されている調理器具に応じた異常過熱防止温度が設定されるから、調理途中で加熱調理が停止されることを防止できる。これにより、手動調理で被調理物を過不足なく加熱することができ、焼き上がりの良好な被調理物を得ることができる。また、いずれの調理器具を用いる場合でも、異常過熱時には安全に加熱調理を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の加熱調理器の概略縦断面図である。
図3図3は、図1の加熱調理器の概略横断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す回路図である。
図5図5は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器で異なる調理器具を用いて加熱調理が行われたときの加熱時間と第1及び第2庫内温度との関係を示す相関図であり、(a)は、焼網を用いた場合の相関図を、(b)は、グリルプレートを用いた場合の相関図を示す。
図6図6は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係る加熱調理器で異なる調理器具を用いて加熱調理が行われたときの加熱時間と第1及び第2庫内温度との関係を示す相関図であり、(a)は、焼網を用いた場合の相関図を、(b)は、グリルプレートを用いた場合の相関図を示す。
図8図8は、本発明の実施の形態2に係る加熱調理器の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。図1は、本実施の形態に係る加熱調理器の一例であるビルトイン式のガスコンロを示す概略斜視図であり、図2は、概略縦断面図、図3は、概略横断面図である。なお、焼網15とグリルプレート20とは入れ替えて使用されるため、図2図3では、グリルプレート20が用いられている状態を例に挙げて説明する。
【0020】
本実施の形態に係るガスコンロは、天板30の上面に複数のコンロバーナ31,32,36を備える。コンロ本体3の内部には、グリル庫(加熱庫)2が設けられており、グリル庫2は、被調理物を載置させた焼網15やグリルプレート20が収容される矩形箱状の焼成部12と、焼成部12の後方から天板30の上面後部に開設された排気口27に向かって斜め上方に延びる排気部13とを備える(図2参照)。
【0021】
グリル庫2の前面開口部100には、前後にスライド開閉するグリル扉21が設けられている。グリル扉21の後面下方には、グリル庫2内へ向かって連結板210が延設されており、連結板210に支持枠18が連結されている。なお、本明細書では、グリル扉21とグリル庫2の奥側とが対向する方向を前後方向、グリル庫2の幅方向を左右方向、グリル庫2の高さ方向を上下方向という。
【0022】
焼網調理を行う場合、支持枠18と、支持枠18の下部に着脱自在に支持された汁受け皿16と、汁受け皿16の上方に配置された焼網15とが使用される。一方、プレート調理を行う場合、支持枠18と、汁受け皿16と、支持枠18の上部に着脱自在に支持されたプレート支持枠19と、プレート支持枠19上に配置されたグリルプレート20とが使用される。
【0023】
焼網15は、金属製の丸棒材を平面視略矩形状に折り曲げて形成された略矩形状の焼網枠体150と、焼網枠体150の左右方向に対向する左右辺を連結する複数の金属製の細丸棒材154とを備える。
【0024】
グリルプレート20は、略矩形浅皿状の本体部と、本体部の前後左右の周縁から上方に起立した側壁部とを備える。本体部には、被調理物のグリルプレート20への接触面積をできるだけ小さくして被調理物が貼りつき難くなるように、左右方向に延在する凸条部と凸条部間に形成された凹部とが前後方向に等間隔で複数形成された波形の凹凸部が形成されている。グリルプレート20は、例えば、高熱伝導率のアルミニウム製の成形品や鋳造品の他、鉄、銅などの他の金属やセラミック製の成形品が用いられる。なお、被調理物の油や水分の飛散を防止するために、グリルプレート20の上方を蓋部材で覆ってもよい。
【0025】
図2及び図3に示すように、グリル庫2の焼成部12は、加熱手段としてグリル庫2の上壁22に沿って配設される上火バーナ56と、グリル庫2の左右の側壁23,24に沿って前後方向に延在する下火バーナ55とを備える。
【0026】
上火バーナ56は、下面部がセラミック製の板体で構成された表面燃焼式のセラミックバーナであり、板体の下面部に複数の炎孔560が形成されている。従って、上火バーナ56が点火された際には、炎孔560から噴射されたガスの燃焼排気及び輻射熱により被調理物が加熱される。
【0027】
下火バーナ55は、ステンレス製の2つの樋状体を上下に重ね合わせて構成されており、樋状体のグリル庫2の左右中央側の側端面には複数の炎孔550が形成されている。炎孔550は、グリル庫2の左右中央部に向けて略水平にガスを噴射するよう水平横向きに開放している。また、下火バーナ55は、焼網15またはグリルプレート20をグリル庫2内に収容したとき、焼網15またはグリルプレート20と汁受け皿16との間に位置している。従って、下火バーナ55が点火されると、炎孔550から噴射されたガスの燃焼排気及び輻射熱がグリル庫2下方の左右中央域に放出され、これらを下方から加熱する。
【0028】
グリル庫2の後壁25は、前面開口部100から見たとき、左右中央部の上部域に排気用開口80が開口するように凹状に形成されており、焼成部12と排気部13とは排気用開口80を介して連通されている。従って、加熱調理中に発生する被調理物の油や臭気成分、水分等を含む燃焼排気は、排気用開口80から排気部13を通って排気口27に導かれ、ガスコンロの外部に排出される。排気部13は、排気用開口80の下端を形成する後壁25の左右中央部の上端から後方斜め上方に延設された傾斜部を有する。
【0029】
排気部13の傾斜部における排気用開口80近傍の左右中央部近傍には、第1温度センサ(第1温度検知手段)14aが配設されている。第1温度センサ14aの感熱部は、傾斜部から焼成部12の内方に向かって斜め上方に突出するように設けられている。第1温度センサ14aは、加熱調理中のグリル庫2後方の左右中央部近傍の庫内温度を検知し、検知信号を後述する制御装置に出力する。第1温度センサ14aの周囲は、加熱調理中に被調理物から飛散する油等による汚染を防ぐため、センサカバー14cで覆われている。
【0030】
また、前面開口部100から見たとき、グリル庫2の後壁25の左側壁23近傍であって、且つ上壁22近傍の側方上方部には、第2温度センサ(第2温度検知手段)14bが配設されている。すなわち、第2温度センサ14bは、グリル庫2後方であって、第1温度センサ14aよりも側方で、且つ第1温度センサ14aよりも上方に配置されている。第2温度センサ14bの感熱部は、後壁25から焼成部12の内方に向かって略水平に突出するように設けられている。第2温度センサ14bは、加熱調理中のグリル庫2後方の側方上方部近傍の庫内温度を検知し、検知信号を後述する制御装置に出力する。
【0031】
図4は、本実施の形態のガスコンロの回路図である。なお、制御装置Cは、上下バーナ56,55だけでなく、コンロバーナ31,32,36の燃焼も制御するが、以下では上下バーナ56,55についてのみ説明し、コンロバーナ31,32,36については説明を省略する。
【0032】
図4に示すように、上下バーナ56,55にはそれぞれ、ガス供給管500から分岐した分岐管551,561が接続されており、ガス供給管500には、メイン弁V1が配設されている。分岐管551,561には、火力切替弁V2,V3が配設されており、火力切替弁V2,V3のバイパス管553,563にはオリフィス554,564が設けられている。これらメイン弁V1、及び火力切替弁V2,V3は、制御装置Cでその開閉が制御される。具体的には、グリルスイッチ37でオンオフ操作が行われて、メイン弁V1が開閉すると、上下バーナ56,55の両方に燃料ガスが供給または停止される。また、グリルスイッチ37の火力調節操作が行われると、火力切替弁V2,V3が開閉され、上下バーナ56,55の火力が調節される。
【0033】
制御装置Cには、上記第1及び第2温度センサ14a,14b、電源スイッチ29、グリルスイッチ37、メイン弁V1、火力切替弁V2,V3、液晶表示部300、イグナイタ600、及び熱電対602,502などが電気配線を介して接続されている。
【0034】
制御装置Cは、マイクロコンピュータなどで構成されている。マイクロコンピュータには、所定の制御プログラムが組み込まれており、制御プログラムに基づいて上下バーナ56,55の燃焼などが制御される。また、図示しないが、マイクロコンピュータは、機能構成として、メイン弁V1や火力切替弁V2,V3を開閉して上下バーナ56,55の燃焼を制御する燃焼制御部と、加熱調理中、第1温度センサ14aで検知される第1庫内温度TH1と設定される異常過熱防止温度とを対比して、グリル庫2内が異常過熱状態にあるかどうかを判定する異常過熱判定部と、異常過熱防止温度として、所定の焼網用異常過熱防止温度TkAまたは所定のプレート用異常過熱防止温度TkPを設定する異常過熱防止温度設定部と、加熱調理中、第2温度センサ14bで検知される第2庫内温度TH2と所定の判定温度Tdとを対比して、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAに設定するか、プレート用異常過熱防止温度TkPに設定するかを判定する調理器具判定部とを有している。さらに、マイクロコンピュータのメモリには、焼網用異常過熱防止温度TkA、プレート用異常過熱防止温度TkP、及び判定温度Tdの設定値を含むデータテーブルが格納されている。
【0035】
下記の表1は、焼網用異常過熱防止温度TkA、プレート用異常過熱防止温度TkP、及び判定温度Tdの各設定値を含むデータテーブルである。これらの各設定値は、実験により予め求められたものであり、グリル庫2のサイズや上下バーナ56,55の能力などに応じて適宜設定される。
【0036】
【表1】
【0037】
図5(a)は、本実施の形態のガスコンロで焼網調理を実行したときの調理時間と庫内温度との関係の一例を示し、図5(b)は、本実施の形態のガスコンロでプレート調理を実行した場合の調理時間と庫内温度との関係の一例を示す。
【0038】
図5(a)(b)の対比から分かるように、加熱調理初期における第2庫内温度TH2の温度上昇の程度は、焼網調理の方がプレート調理よりも大きい。これは、焼網調理の場合、グリル庫2下方の燃焼排気は焼網15の線材間を通過して、グリル庫2上方に流れるのに対し、プレート調理の場合、グリルプレート20によって燃焼排気のグリル庫2上方への流れが阻害されるためである。特に、加熱調理初期では燃焼排気のドラフト効果が小さいため、プレート調理ではグリル庫2上方の温度が上昇し難いだけでなく、グリルプレート20は焼網15よりも大きな熱容量を有するため、加熱調理初期における加熱量はグリルプレート20の温度を上昇させるのに消費される。そのため、加熱調理初期において、焼網調理が行われているときの第2庫内温度TH2とプレート調理が行われているときの第2庫内温度TH2との温度差が大きくなる。
【0039】
また、図5(b)に示すように、プレート調理では、加熱調理が進行したとき、第1庫内温度TH1は第2庫内温度TH2よりも高くなることが分かる。これは、プレート調理ではグリル庫2下方の燃焼排気は上方に流れ難いから、加熱調理が進行してドラフト効果が大きくなると、第1温度センサ14aに向かって流れる燃焼排気が多くなるためである。
【0040】
従って、例えば、焼網調理における第2庫内温度TH2がプレート調理における第2庫内温度TH2よりも高い温度領域で、第1庫内温度TH1がプレート用異常過熱防止温度TkPに到達するときの第2庫内温度TH2以上の判定温度Tdを設定し、第2庫内温度TH2が判定温度Tdに到達しているかどうかを判定すれば、焼網15が使用されているか、グリルプレート20が使用されているかを判定できる。また、判定温度Tdが、第1庫内温度TH1がプレート用異常過熱防止温度TkPに到達するときの第2庫内温度TH2以上に設定されれば、プレート調理が行われているときに調理途中で調理が停止されることもない。
【0041】
具体的には、本実施の形態では、初期設定の異常過熱防止温度はプレート用異常過熱防止温度TkPに設定されており、第2庫内温度TH2が判定温度Tdに到達しなければ、異常過熱防止温度はプレート用異常過熱防止温度TkPが維持される(図5(b))。従って、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になっても、上下バーナ56,55は強制消火されないから、調理途中で調理が停止されるのを防止することができる。
【0042】
一方、焼網調理の場合、第2庫内温度TH2は第1庫内温度TH1よりも高い。従って、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になれば、焼網15が使用されていると判定できる。従って、異常過熱防止温度をプレート用異常過熱防止温度TkPから焼網用異常過熱防止温度TkAに変更させる(図5(a)の(I))。これにより、焼網調理が行われているときに異常過熱が生じた場合、確実に上下バーナ56,55を強制消火させることができる。
【0043】
図6は、本実施の形態のガスコンロにおける制御動作の一例を示すフローチャートである。
使用者が、電源スイッチ29をオンし、グリルスイッチ37をオンして上下バーナ56,55が点火されると、異常過熱防止温度として初期設定のプレート用異常過熱防止温度TkPの設定値が読み込まれる(ステップST1~ST2)。次いで、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される第1及び第2庫内温度TH1,TH2が監視され、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になるかどうかの調理器具判定が実行される(ステップST3)。このとき、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば(ステップST3で、No)、初期設定のプレート用異常過熱防止温度TkPが維持され、第1庫内温度TH1がプレート用異常過熱防止温度TkP以上になるかどうかの異常過熱判定が実行される(ステップST6)。そして、第1庫内温度TH1がプレート用異常過熱防止温度TkP以上になると(ステップST6で、Yes)、プレート調理中に異常過熱が生じたと判定され、メイン弁V1を閉弁させて上下バーナ56,55を強制消火させる。
【0044】
一方、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上になると(ステップST3で、Yes)、調理器具が焼網15と判定され、異常過熱防止温度がプレート用異常過熱防止温度TkPから焼網用異常過熱防止温度TkAに変更されて、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になるかどうかの異常過熱判定が実行される(ステップST4~ST5)。そして、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になると(ステップST5で、Yes)、焼網調理中に異常過熱が生じたと判定され、メイン弁V1を閉弁させて上下バーナ56,55を強制消火させる。
【0045】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のガスコンロによれば、調理器具に応じた専用スイッチが設けられていない加熱調理器で手動調理を行う場合でも、使用されている調理器具に応じた異常過熱防止温度で異常過熱判定を実行することができるから、調理途中で調理が停止されることを防止できる。これにより、手動調理で被調理物を過不足なく加熱することができ、焼き上がりの良好な被調理物を得ることができる。また、いずれの調理器具を用いる場合でも、異常過熱時には安全に加熱調理を停止させることができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態におけるガスコンロは、制御動作が異なる以外、実施の形態1と同様であるため、同一の構成は説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0047】
図7(a)に示すように、焼網調理の場合、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkAに到達したときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上であれば、焼網15が使用されていると判定できる。
【0048】
一方、図7(b)に示すように、プレート調理の場合、加熱調理が進行すると第2庫内温度TH2は第1庫内温度TH1よりも低くなるから、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkAに到達したときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、グリルプレート20が使用されていると判定できる。
【0049】
従って、実施の形態1と同様の判定温度Tdを設定し、加熱調理中、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkAに到達したときに、第2庫内温度TH2と判定温度Tdとを対比することにより、焼網15が使用されているか、グリルプレート20が使用されているかを判定できる。
【0050】
具体的には、本実施の形態では、初期設定の異常過熱防止温度は焼網用異常過熱防止温度TkAに設定されるため、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になったときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上であれば、異常過熱防止温度は焼網用異常過熱防止温度TkAに維持される(図7(a))。これにより、焼網調理が行われているときに異常過熱が生じた場合、確実に上下バーナ56,55を強制消火させることができる。
【0051】
一方、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になったときに、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば、異常過熱防止温度を焼網用異常過熱防止温度TkAからプレート用異常過熱防止温度TkPに変更させる(図7(b)の(II))。これにより、プレート調理が行われているときに、調理途中で調理が停止されるのを防止することができる。
【0052】
図8は、本実施の形態のガスコンロにおける制御動作の一例を示すフローチャートである。
実施の形態1と同様に、上下バーナ56,55が点火されると、異常過熱防止温度として初期設定の焼網用異常過熱防止温度TkAの設定値が読み込まれる(ステップST21~ST22)。次いで、第1及び第2温度センサ14a,14bで検知される第1及び第2庫内温度TH1,TH2が監視され、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になったかどうの異常過熱判定が実行される(ステップST23)。このとき、第1庫内温度TH1が焼網用異常過熱防止温度TkA以上になると(ステップST23で、Yes)、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であるかの調理器具判定が実行される(ステップST24)。そして、第2庫内温度TH2が判定温度Td以上であれば(ステップST24で、Yes)、焼網調理中に異常過熱が生じたと判定され、メイン弁V1を閉弁させて上下バーナ56,55を強制消火させる。
【0053】
一方、第2庫内温度TH2が判定温度Td未満であれば(ステップST24で、No)、調理器具がグリルプレート20と判定され、異常過熱防止温度が焼網用異常過熱防止温度TkAからプレート用異常過熱防止温度TkPに変更されて、第1庫内温度TH1がプレート用異常過熱防止温度TkP以上になるかどうかの異常過熱判定が実行される(ステップST25~ST26)。そして、第1庫内温度TH1がプレート用異常過熱防止温度TkP以上になると(ステップST26で、Yes)、プレート調理中に異常過熱が生じたと判定され、メイン弁V1を閉弁させて上下バーナ56,55を強制消火させる。
【0054】
従って、本実施の形態のガスコンロにおいても、調理途中で調理が停止されることを防止できるから、手動調理で被調理物を過不足なく加熱することができ、焼き上がりの良好な被調理物を得ることができる。また、いずれの調理器具を用いる場合でも、異常過熱時には安全に加熱調理を停止させることができる。
【0055】
(その他の実施の形態)
上記実施の形態ではいずれも、第1温度センサは排気通路内に設けられているが、グリル庫後方の左右中央部近傍であれば、グリル庫の後壁の下方に設けられてもよい。また、第2温度センサは、グリル庫の左側壁近傍であって、上壁近傍の後壁の上方部に設けられているが、第1温度センサよりもグリル庫の左右方向いずれか一方の側方であれば、左右側壁近傍よりも内方に設けられてもよい。また、第2温度センサは、第1温度センサよりも上方であれば、上壁近傍よりも下方に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
2 グリル庫(加熱庫)
14a 第1温度センサ(第1温度検知手段)
14b 第2温度センサ(第2温度検知手段)
15 焼網
20 グリルプレート
55 下火バーナ
56 上火バーナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8