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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/30 20200101AFI20221104BHJP
【FI】
D06F33/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018126013
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020000802
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小倉 範史
(72)【発明者】
【氏名】長井 智
(72)【発明者】
【氏名】増田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】根岸 昭博
(72)【発明者】
【氏名】須坂 祐輔
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-086634(JP,A)
【文献】特開平04-053589(JP,A)
【文献】特開平06-218183(JP,A)
【文献】特開2008-110002(JP,A)
【文献】特開平10-151291(JP,A)
【文献】特開2001-187296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転槽を収容する水槽と、
前記回転槽に収容された洗濯物を処理する洗濯処理剤を自動的に投入する投入部と、
水と前記洗濯処理剤とから生成した洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度合を判断する飽和判断部と、
前記飽和判断部で判断した前記洗濯液に含まれる前記界面活性剤の飽和度合に基づいて、前記投入部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にあると判断されたとき、前記水槽に前記洗濯処理剤を追加せず、
前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にないと判断されたとき、前記水槽に前記洗濯処理剤を追加する洗濯機。
【請求項2】
前記水槽における水の温度を水温として検出する水温検出部と、
前記水槽における水の量を水量として検出する水量検出部と、
予め設定された前記水温および前記水量と前記洗濯処理剤の投入量との関係を飽和データとして記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記飽和判断部は、前記水温検出部で検出した前記水温、および前記水量検出部で検出した前記水量と、前記記憶部に記憶された前記飽和データとに基づいて、前記洗濯液に含まれる前記界面活性剤の飽和度合を判断する請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記水槽における水の電導度を水電導度として検出する電導度検出部を、さらに備え、
前記飽和判断部は、前記電導度検出部で検出した前記水電導度に基づいて、前記洗濯液に含まれる前記界面活性剤の飽和度合を判断する請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部は、前記飽和判断部で判断した前記洗濯液に含まれる前記界面活性剤の飽和度合に基づいて、前記水槽へ追加して投入する前記洗濯処理剤の投入量を設定する請求項1から3のいずれか一項記載の洗濯機。
【請求項5】
前記水槽への水の導入を断続する給水弁部をさらに備え、
前記制御部は、前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にあると判断されたとき、前記給水弁部を開放して前記水槽へ水を供給する請求項1から4のいずれか一項記載の洗濯機。
【請求項6】
前記水槽への水の導入を断続する給水弁部と、
前記水槽からの水の排出を断続する排水弁部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にあると判断され、かつ前記水槽への水のさらなる供給ができないと判断したとき、
前記排水弁部を開放して前記水槽の水の一部または全部を排出するとともに、前記給水弁部を開放して前記水槽へ水を供給する請求項1から4のいずれか一項記載の洗濯機。
【請求項7】
前記水槽の水、または前記水槽へ供給される水を加熱する加熱部をさらに備え、
前記制御部は、前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にあると判断されたとき、前記加熱部により前記水槽の水または前記水槽へ供給される水を加熱する請求項1から4のいずれか一項記載の洗濯機。
【請求項8】
前記制御部は、前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にあると判断されたとき、前記水槽の運転時間を延長する請求項1から4のいずれか一項記載の洗濯機。
【請求項9】
前記飽和判断部で判断した前記洗濯液に含まれる前記界面活性剤の飽和度合に基づいて、前記洗濯処理剤の増量または減量を報知する報知部をさらに備える請求項1から8のいずれか一項記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯物を処理する例えば洗剤などの洗濯処理剤を、洗濯物へ自動的に提供する自動投入装置を備える洗濯機が公知である(特許文献1)。特許文献1の場合、洗濯機の制御部は、予め一定量の洗濯処理剤を投入した後、投入した洗濯処理剤が不足していると判断すると、洗濯処理剤を追加する。この場合、洗濯機は、光の強弱を検出する光センサなどを用いて、洗濯処理剤と水とが混合された洗濯液の光透過度を検出している。そして、洗濯機は、検出した洗濯液の光透過度に基づいて洗濯物の汚れ度合いを判断し、洗濯処理剤の追加が必要か否かを判断している。
【0003】
しかしながら、洗濯液に洗濯処理剤を追加しても、追加した洗濯処理剤が水に溶け込むとは限らない。洗濯処理剤は、洗濯液に溶け込まないと十分な効果を発揮しない。そのため、光透過度に基づく洗濯処理剤の追加は、水への溶解度が考慮されず、洗濯処理剤の無駄を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-141273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、洗濯物の汚れに応じて追加される洗濯処理剤の量を適正にし、洗濯処理剤の無駄を低減する洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本実施形態の洗濯機は、水槽と、投入部と、飽和判断部と、制御部とを備える。水槽は、回転する回転槽を収容する。投入部は、前記回転槽に収容された洗濯物を処理する洗濯処理剤を自動的に投入する。飽和判断部は、水と前記洗濯処理剤とから生成した洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度合を判断する。制御部は、前記飽和判断部で判断した前記洗濯液に含まれる前記界面活性剤の飽和度合に基づいて、前記投入部を制御する。また、制御部は、前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にあると判断されたとき、前記水槽に前記洗濯処理剤を追加せず、前記飽和判断部において前記水槽内の前記洗濯液における前記界面活性剤が飽和した状態にないと判断されたとき、前記水槽に前記洗濯処理剤を追加する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による洗濯機の構成を示すブロック図
図2】第1実施形態による洗濯機を示す模式的な断面図
図3】第1実施形態による洗濯機に用いる飽和データの一例を示す概略図
図4】第1実施形態による洗濯機における処理の流れを示す概略図
図5】第1実施形態による洗濯機における洗剤投入工程の流れを示す概略図
図6】第1実施形態による洗濯機に用いる洗濯物の重量と洗剤の量との関係の一例を示す概略図
図7】第1実施形態による洗濯機における洗剤追加投入工程の流れを示す概略図
図8】第2実施形態による洗濯機における電導度の出力値と飽和度との関係の一例を示す概略図
図9】第2実施形態による洗濯機における洗剤追加投入工程の流れを示す概略図
図10】第3実施形態による洗濯機における洗剤追加投入工程の流れを示す概略図
図11】第4実施形態による洗濯機における洗剤追加投入工程の流れを示す概略図
図12】第5実施形態による洗濯機における処理の流れを示す概略図
図13】第6実施形態による洗濯機における処理の流れを示す概略図
図14】第7実施形態による洗濯機における処理の流れを示す概略図
図15】第8実施形態による洗濯機における洗剤投入工程の流れを示す概略図
図16】第9実施形態による洗濯機における処理の流れを示す概略図
図17】第9実施形態による洗濯機における診断結果報知工程の流れを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、洗濯機の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に共通する部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図2に示すように洗濯機10は、外箱11、扉12、水槽13、回転槽14、モータ15、給水弁部16、排水弁部17および乾燥機構部18を備えている。本実施形態の洗濯機10は、水槽13の中心軸および回転槽14の回転中心となる軸がいずれも地面に対して傾斜している、いわゆるドラム式洗濯機である。具体的には、水槽13および回転槽14は、開口する扉12側の前方ほど上方に位置するように傾斜している。なお、洗濯機10は、ドラム式洗濯機に限らず、水槽13および回転槽14の軸が地面に対して垂直な縦型の洗濯機であってもよい。
【0009】
外箱11は、例えば鋼板などによってほぼ直方体の箱状に形成されている。水槽13は、外箱11の内側に収容されており、サスペンション19によって支持されている。回転槽14は、水槽13の内部に回転可能に収容されている。水槽13および回転槽14は、いずれも軸方向の一方の前端が開口するとともに後端が閉じた底を有する円筒状に形成されている。回転槽14は、水槽13の内側においてモータ15によって回転駆動される。
【0010】
給水弁部16は、図示しない水道管に接続され、水道管から水槽13への水の導入を断続する。給水弁部16が開放されると、水は水槽13へ導入される。給水弁部16は、外箱11の上方に設けられている。排水弁部17は、水槽13からの水の排出を断続する。排水弁部17が開放されると、水槽13の水は外部へ排出される。また、洗濯機10は、図示しない水循環部を備えていてもよい。水循環部は、水槽13から排出された水の一部または全部を水槽13へ循環させる。乾燥機構部18は、例えばヒータやヒートポンプなどを有しており、回転槽14に収容されている洗濯物を除湿して乾燥する。
【0011】
洗濯機10は、上記に加え、図1に示すように制御部20を備えている。制御部20は、CPU、ROMおよびRAMで構成されるマイクロコンピュータ21を有している。制御部20は、マイクロコンピュータ21で予め設定されたコンピュータプログラムを実行する。制御部20は、モータ15、給水弁部16、排水弁部17、投入部22、温水ヒータ23および報知部24を制御する。また、制御部20は、水温検出部31、水量検出部32、電導度センサ33、操作部34、記憶部35および重量検出部36と電気的に接続している。
【0012】
モータ15は、駆動回路41を通して制御部20によって駆動される。これにより、回転槽14は、水槽13の内側において回転する。また、回転槽14の回転は、回転センサ42によって検出される。制御部20は、回転センサ42で検出した回転槽14の回転に基づいてモータ15を制御する。給水弁部16は、駆動回路43を通して制御部20によって駆動される。給水弁部16は、電磁弁44を有している。制御部20は、駆動回路43を通して電磁弁44を駆動することにより、給水弁部16の開閉を制御する。排水弁部17は、駆動回路45を通して制御部20によって駆動される。排水弁部17は、電磁弁46を有している。制御部20は、駆動回路45を通して電磁弁46を駆動することにより、排水弁部17の開閉を制御する。
【0013】
投入部22は、駆動回路47を通して制御部20によって駆動される。投入部22は、洗濯物を処理する洗濯処理剤を自動的に投入する。具体的には、投入部22は、外箱11と水槽13との間に設けられている。投入部22は、投入機構部48、および図示しない処理剤タンクを有している。処理剤タンクは、1種類以上の洗濯処理剤を貯える。投入機構部48は、例えば図示しないアクチュエータや弁装置などを用いて、処理剤タンクに貯えられている洗濯処理剤を計量して洗濯物へ投入する。この場合、投入機構部48は、回転槽14に収容された洗濯物に直接的または間接的に洗濯処理剤を提供する。洗濯処理剤を直接的に提供する場合、投入機構部48は回転槽14の内側に洗濯処理剤を投入する。一方、洗濯処理剤を間接的に提供する場合、投入機構部48は例えば給水弁部16から水槽13へ至る図示しない水路を流れる水に洗濯処理剤を投入することにより洗濯物に洗濯処理剤を提供する。洗濯処理剤は、例えば洗濯物を洗浄するための洗剤をはじめ、柔軟剤や漂白剤などである。投入部22は、2種類以上の洗濯処理剤を自動的に投入する場合、2つ以上の処理剤タンクを有している。
【0014】
温水ヒータ23は、加熱部を構成し、駆動回路51を通して制御部20によって駆動される。これにより、温水ヒータ23は、水槽13の水を加熱する。この場合、温水ヒータ23は、水槽13に設けることにより、水槽13に貯えられている水を加熱してもよい。また、温水ヒータ23は、給水弁部16から水槽13へ至る図示しない水路を流れる水を加熱することにより、水槽13へ供給される水を加熱してもよい。報知部24は、駆動回路52を通して制御部20によって駆動される。報知部24は、表示部53および鳴動部54を有している。表示部53は、例えばランプやディスプレイによって視覚的に情報を報知する。表示部53は、外箱11の扉12側の前方において上面に設けられており、運転状態や選択対象となるコースなどの任意の情報を表示する。また、鳴動部54は、例えばブザーやスピーカによって聴覚的に情報を報知する。報知部24は、これらを通して、例えば洗濯コースや乾燥コースなどの各種の運転コースの終了やエラーなどを報知する。
【0015】
水温検出部31は、温度センサ61を有しており、水槽13に貯えられている水の温度を検出する。また、水温検出部31は、給水弁部16から水槽13へ供給される水の温度を検出してもよい。水温検出部31は、温度センサ61で検出した水の温度を電気信号として制御部20へ出力する。水量検出部32は、水位センサ62を有しており、水槽13に貯えられている水の量を水位として検出する。また、水量検出部32は、給水弁部16から水槽13へ供給される水の量を検出してもよい。水量検出部32は、水位センサ62で検出した水の量を電気信号として制御部20へ出力する。
【0016】
電導度センサ33は、水槽13に設けられている。電導度センサ33は、水槽13に貯えられている水の電導度を検出する。水槽13に貯えられている水は、洗濯処理剤と水とが混合された洗濯液である。洗濯液の電導度は、洗濯液に含まれる洗濯処理剤、特に洗濯処理剤の界面活性剤の濃度によって変化する。電導度センサ33は、この界面活性剤を含む洗濯液の電導度を検出し、電気信号として制御部20へ出力する。操作部34は、図示しない選択ボタンや非接触スイッチなどを有している。ユーザは、操作部34を通して例えば運転コースや所望の処理などを制御部20へ入力する。操作部34は、ユーザによって操作された情報を電気信号として制御部20へ出力する。
【0017】
記憶部35は、例えば不揮発性のメモリなどを有している。記憶部35は、コンピュータプログラムや洗濯機10の運転に必要なデータなどを記憶している。具体的には、記憶部35は、予め設定された飽和データを記憶している。飽和データは、水温検出部31で検出した水の温度、および水量検出部32で検出した水の量と、洗濯処理剤の投入量の上限との関係を示すデータである。記憶部35は、例えば図3に示すようにテーブルとして作成された飽和データを記憶している。この場合、飽和データは、例えば洗濯機10に適用される市販の洗濯処理剤ごとに作成してもよい。つまり、制御部2は、市販の洗濯処理剤のうち洗濯機10で使用される洗濯処理剤の飽和データを抽出して使用することができる。なお、図3に示すデータは一例であり、洗濯機10の性能や洗濯処理剤の種類などに応じて任意に変更される。また、記憶部35は、マイクロコンピュータ21のROMやRAMと共用してもよい。
【0018】
重量検出部36は、回転槽14に収容された洗濯物の重量を検出する。重量検出部36は、図示しない重量センサによって回転槽14に収容された洗濯物の重量を検出する。また、重量検出部36は、洗濯物が回転槽14に収容された後、回転槽14を駆動する際のモータ15の負荷に基づいて洗濯物の重量を検出する構成としてもよい。重量検出部36は、検出した洗濯物の重量を電気信号として制御部20へ出力する。
【0019】
制御部20は、コンピュータプログラムを実行することにより、汚れ検出部71および飽和判断部72をソフトウェア的に実現している。汚れ検出部71および飽和判断部72は、ハードウェア的に実現してもよく、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現してもよい。汚れ検出部71は、洗濯物の汚れ具合を検出する。具体的には、汚れ検出部71は、例えば光センサまたは電導度センサ33などを有している。汚れ検出部71は、洗濯物を洗濯する本格的な洗濯工程に先立って実行される短時間の簡易的な予備洗濯工程において洗濯物の汚れを検出する。そして、汚れ検出部71は、例えば光センサで検出した洗濯液の濁度、または電導度センサ33で検出した洗濯液の電導度などから、洗濯液の汚れ具合を検出する。制御部20は、汚れ検出部71で検出した洗濯液の汚れ具合に基づいて、洗濯処理剤の追加の投入が必要であるか否かを判断する。
【0020】
飽和判断部72は、水と洗濯処理剤とから生成した洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度合を判断する。洗濯物の洗浄は、界面活性剤によって促される。一方、洗濯液に含まれる洗濯処理剤が過剰になると、洗濯液に洗濯処理剤を追加しても洗浄能力は向上せず、追加する洗濯処理剤は無駄になる。つまり、洗濯液に含まれる界面活性剤は、洗濯液における特定の濃度で飽和する。そして、この界面活性剤が飽和した洗濯液にさらに洗濯処理剤を追加しても、洗浄能力の向上にはつながらない。飽和判断部72は、この洗濯液において界面活性剤の飽和度合を判断する。ここで、飽和度合とは、洗濯液にあとどのくらいの洗濯処理剤が溶け込むことができるかを示す指標である。具体的には、特定の温度および水量の洗濯液に、Ngの洗濯処理剤を投入したとき、洗濯液の界面活性剤が飽和すると仮定する。この特定の温度および水量のとき、Ngの洗濯処理剤を含む洗濯液の飽和度合は100となる。一方、Mgの洗濯処理剤を投入した洗濯液の飽和度が0~100であれば、この洗濯液にはあと(N-M)gの洗濯処理剤を追加して投入することができる。飽和判断部72は、この追加して投入できる洗濯処理剤の量を飽和度合として判断する。
【0021】
第1実施形態の場合、飽和判断部72は、水温検出部31で検出した水温および水量検出部32で検出した水量と、記憶部35に記憶された図3に示す飽和データとに基づいて、洗濯液の飽和度合を判断する。すなわち、飽和判断部72は、水温検出部31から洗濯液の温度を取得する。また、飽和判断部72は、水量検出部32で洗濯液の水量を取得する。さらに、飽和判断部72は、投入部22から投入された洗濯処理剤の投入量を取得する。飽和判断部72は、これら取得した洗濯液の温度および水量、ならびに洗濯処理剤の投入量に基づいて、投入された洗濯処理剤に含まれる界面活性剤が洗濯液において飽和度合を判断する。すなわち、飽和判断部72は、洗濯液における最新の温度および水量、ならびに洗濯処理剤の実際の投入量に基づいて、記憶部35に記憶された飽和データを参照する。そして、飽和判断部72は、投入部22から投入された洗濯処理剤に含まれる界面活性剤の飽和度合を判断する。制御部20は、飽和判断部72による判断に基づいて、洗濯処理剤の追加の有無を判断する。
以上の構成による洗濯機10の作動の流れについて説明する。なお、以下の説明では、洗濯処理剤として洗剤を用いる例について説明する。
【0022】
(洗濯機の運転工程)
まず、図4に基づいて、洗濯機10による運転工程について説明する。
制御部20は、洗濯機10の電源がオンされると、洗剤投入工程(S101)、洗濯工程(S102)、すすぎ工程(S103)、および脱水工程(S104)を順に実行する。すなわち、制御部20は、自動的な一連の流れとして洗濯物の洗濯を行なう場合、まず洗濯処理剤として洗剤を投入する洗剤投入工程を実行する。そして、制御部20は、回転槽14に収容された洗濯物を洗濯する洗濯工程を実行する。制御部20は、洗濯工程が完了すると、すすぎ工程を実行し、洗濯物を洗浄する。制御部20は、最後に脱水工程を実行し、洗濯物に含まれる水分を除去する。この場合、制御部20は、洗濯工程、すすぎ工程および脱水工程のいずれか一つ以上を2回以上実行する構成としてもよい。
【0023】
(洗剤投入工程)
次に、図5に基づいて図4に示す一連の運転工程に含まれる洗剤投入工程について詳細に説明する。
洗剤投入工程は、回転槽14に収容された洗濯物に洗剤を提供する工程である。本実施形態の場合、制御部20は、回転槽14に収容された洗濯物の重量に基づいて予め設定された量の洗剤を投入した後、洗濯物の汚れを検出する。そして、制御部20は、汚れ検出部71で検出した汚れに基づいて、洗剤の追加を行なうか否かを判断する。
【0024】
制御部20は、図4におけるS101の洗剤投入工程に移行すると、洗濯物の重量を検出する(S201)。すなわち、重量検出部36は、回転槽14に収容された洗濯物の重量を検出する。上述のように、重量検出部36は、例えば重量センサまたはモータ15の負荷などに基づいて洗濯物の重量を検出する。制御部20は、重量検出部36から洗濯物の重量を取得する。
【0025】
制御部20は、取得した洗濯物の重量に基づいて、水槽13へ給水する(S202)。制御部20は、S201で取得した洗濯物の重量に基づいて、給水量を設定する。制御部20は、例えば記憶部35に記憶されている洗濯物の重量と給水量との関係を用いて給水量を設定する。制御部20は、給水量を設定すると、電磁弁44を駆動して給水弁部16を開放する。これにより、水は、給水弁部16から水槽13へ供給される。制御部20は、給水弁部16から水槽13へ供給される水の量が設定した給水量に達すると、電磁弁44を駆動して給水弁部16を閉鎖する。これにより、水の供給は停止される。
【0026】
制御部20は、水槽13への給水とともに、洗剤を投入する(S203)。制御部20は、S201で取得した洗濯物の重量、およびS202で設定した給水量のいずれか一方または両方に基づいて、洗剤の投入量を設定する。本実施形態の場合、記憶部35は、図6に示すように洗濯物の重量mと洗剤量との関係をデータとして記憶している。制御部20は、この図6に示す関係を用いて洗剤の投入量を設定する。制御部20は、洗剤の投入量を設定すると、投入機構部48を駆動して、設定した投入量の洗剤を投入する。洗剤は、回転槽14に収容された洗濯物に投入される。この場合、洗剤の投入量は、後続する工程で洗剤を追加することを考慮して、少な目に設定してもよい。
【0027】
制御部20は、洗剤が投入されると、予備洗濯工程を実行する(S204)。制御部20は、S202で供給された水およびS203で投入された洗剤を用いて回転槽14に収容されている洗濯物の予備的な洗濯を開始する。この場合、制御部20は、予備洗濯工程として、短時間の簡易的な洗濯工程を実行する。予備洗濯工程の時間および詳細は、洗濯機10の性能や回転槽14に投入された洗濯物の量などに応じて任意に設定することができる。
【0028】
制御部20は、予備洗濯工程を実行すると、汚れ検出部71を通して洗濯水の汚れ具合を検出する(S205)。制御部20は、汚れ検出部71において、例えば洗濯液の濁度または電導度などに基づいて洗濯液の汚れ具合を検出する。制御部20は、S205で取得した洗濯液の汚れ具合に基づいて、洗濯液の汚れ具合が予め設定した設定値以上であったか否かを判断する(S206)。すなわち、制御部20は、洗濯液の濁度または電導度が予め設定した設定値以上であったか否かを判断する。この設定値は、例えば洗濯機10の性能などに応じて予め任意に設定され、記憶部35に記憶されている。
【0029】
制御部20は、洗濯液の汚れ具合が設定値未満であったとき(S206:No)、図4のS102に示す洗濯工程にリターンし、S102以降の処理を実行する。一方、制御部20は、洗濯液の汚れ具合が設定値以上であったとき(S206:Yes)、洗剤追加投入工程に移行する(S207)。
【0030】
(洗剤追加投入工程)
図7に基づいて図5のS207における洗剤追加投入工程について詳細に説明する。
制御部20は、S207において洗剤追加投入工程に移行すると、水の温度を検出するとともに(S301)、水の量を検出する(S302)。具体的には、制御部20は、水温検出部31を通して水槽13に貯えられている水の温度を取得する。また、制御部20は、水量検出部32を通して水槽13の貯えられている水の量を取得する。そして、制御部20は、S301で検出した水の温度およびS302で検出した水の量に基づいて、洗剤の投入許容量を算出する(S303)。すなわち、制御部20は、取得した最新の水の温度および水の量を用いて、記憶部35に記憶された飽和データから洗剤の投入量の上限となる投入許容量を算出する。
【0031】
飽和判断部72は、S303で算出した投入許容量が洗剤の投入量よりも大きいか否かを判断する(S304)。すなわち、飽和判断部72は、S303で算出した投入許容量と、図5に示すS203で設定した洗剤の投入量とを比較し、投入許容量が投入量よりも大きいか否かを判断する。投入許容量は、洗剤の投入量の上限、すなわち界面活性剤が飽和する量である。そのため、この投入許容量を超える洗剤を追加しても、界面活性剤が飽和した状態にあり、洗浄能力の向上にはつながらない。つまり、S206において洗濯液の汚れ具合が所定値以上であるとき、投入許容量を超える洗剤を追加しても洗浄能力は向上しない。そこで、飽和判断部72は、投入許容量と実際の洗剤の投入量とを比較し、洗濯液における界面活性剤の飽和度合を判断する。
【0032】
制御部20は、飽和判断部72において投入許容量が洗剤の投入量よりも大きいと判断されると(S304:Yes)、洗剤を追加投入する(S305)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を駆動して、洗濯物へ供給する洗剤を追加して投入する。制御部20は、S305で洗剤を追加することにより、投入された洗剤の総量が投入許容量に到達したか否かを判断する(S306)。すなわち、制御部20は、S203で投入された初期の洗剤の投入量と、S305で追加された洗剤の総量が投入許容量に到達したか否かを判断する。
【0033】
制御部20は、投入された洗剤の総量が投入許容量に到達していないと判断したとき(S306:No)、S305にリターンし、投入許容量に到達するまで洗剤の追加投入を継続する。一方、制御部20は、投入された洗剤の総量が投入許容量に到達したと判断したとき(S306:Yes)、洗剤の追加投入を停止する(S307)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を停止し、洗剤の追加投入を終了する。そして、制御部20は、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。また、制御部20は、飽和判断部72において投入許容量が洗剤の投入量以下であると判断されると(S304:No)、洗剤の追加投入することなく(S308)、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。
以上の手順により、制御部20は、洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度合に応じて洗剤を追加投入するか否かを判断している。
【0034】
第1実施形態では、飽和判断部72は、洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度合を判断する。これにより、制御部20は、洗濯液に洗濯処理剤である洗剤を追加するか否かを判断する。そして、制御部20は、飽和判断部72で判断した洗濯液における界面活性剤の飽和度合に基づいて、洗濯処理剤の追加の可否を判断する。すなわち、制御部20は、洗濯液において界面活性剤が飽和するまであとどの程度の洗濯処理剤を追加可能であるかを算出し、追加する洗濯処理剤の量を設定する。そのため、界面活性剤が飽和状態にあるとき、界面活性剤を含む洗濯処理剤の追加は回避される。その結果、無用な洗濯処理剤の消費が低減される。一方、界面活性剤が飽和状態にないとき、界面活性剤を含む洗濯処理剤が追加される。その結果、洗濯液の洗浄能力の向上が図られる。したがって、洗濯物の汚れに応じて追加される洗濯処理剤の量を適正にすることができ、洗濯処理剤の無駄を低減することができる。
【0035】
また、第1実施形態では、水槽13における水温および水量と洗剤の投入量との関係を飽和データとして記憶している。そして、飽和判断部72は、この飽和データを用いて、洗剤の実際の投入量と、取得した最新の水温および水量とから洗濯液の界面活性剤の飽和度合を判断している。これにより、飽和判断部72は、追加的な構成を必要とすることなく、洗濯液における界面活性剤の飽和度合を判断する。また、飽和データを利用することにより、制御部20および飽和判断部72は、例えば水温などのように洗濯工程の実行ごとに変化する環境に対応して追加可能な洗濯処理剤の量を設定する。したがって、飽和度合を検出するための機器を必要せず、簡単な構成で洗剤の追加の有無を判断することができるとともに、洗濯工程ごとに最適な洗濯処理剤の量を設定することができる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態では、洗濯機10は電導度検出部として電導度センサ33を備えている。電導度センサ33は、水槽13に貯えられている水の電導度を水電導度として検出する。
第2実施形態の場合、飽和判断部72は、電導度センサ33で検出した水電導度に基づいて洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度に基づいて洗濯液の飽和度合を判断する。図8に示すように電導度センサ33が検出する水電導度の出力値Eは、界面活性剤の飽和度によって変化する。この電導度センサ33の出力値Eと界面活性剤の飽和度との関係を示す飽和データは、記憶部35に記憶されている。なお、図8に示す飽和データは一例であり、界面活性剤の種類や電導度センサ33の性能などに応じて任意に変更される。このように、第2実施形態では、飽和判断部72は、第1実施形態の飽和データに代えて、水電導度の出力値Eを用いて洗濯液の飽和度合を判断している。本明細書において、飽和度合は、上述のように洗濯液に界面活性剤があとどのくらい溶け込むことができるかを示す指標である。一方、飽和度は、電導度センサ33が検出する水電導度の出力値Eに基づいて導かれる値であり、洗濯液に界面活性剤がどのくらい溶け込んでいるかを示す指標である。
【0037】
次に、第2実施形態による洗濯機10における洗剤追加投入工程について、図9に基づいて説明する。なお、第1実施形態と共通する処理については説明を省略する。また、第2実施形態では、洗濯機10の運転工程および洗剤投入工程の流れは第1実施形態と共通であるので、説明を省略する。
【0038】
(洗剤追加投入工程)
制御部20は、S207において洗剤追加投入工程に移行すると、水電導度を検出する(S401)。具体的には、制御部20は、水槽13に貯えられている水つまり洗濯液の電導度を出力値Eとして取得する。そして、制御部20は、S401で検出した水電導度の出力値Eに基づいて、界面活性剤の飽和度を取得する(S402)。すなわち、制御部20は、記憶部35に記憶された飽和データと電導度の出力値Eとを用いて界面活性剤の飽和度を取得する。
【0039】
飽和判断部72は、S402において取得した飽和度が100%未満であるか否かを判断する(S403)。この場合、飽和判断部72は、S203で設定された洗剤の投入量を参照することなく、洗濯液の水電導度から洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度を判断する。
【0040】
制御部20は、飽和判断部72において飽和度が100%未満であると判断されると(S403:Yes)、洗剤を追加投入する(S404)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を駆動して、洗濯物へ供給する洗剤を追加して投入する。制御部20は、S404で洗剤を追加すると再び洗濯液の水電導度を検出し(S405)、検出した水電導度の出力値Eに基づいて飽和度を取得する(S406)。すなわち、制御部20は、S404で洗剤を追加することによって変化する水電導度の出力値Eを検出し、この出力値Eに基づいて飽和度を取得する。飽和判断部72は、S406において取得した飽和度が100%に到達したか否かを判断する(S407)。この場合も、飽和判断部72は、S203で設定された洗剤の投入量を参照することなく、洗濯液の水電導度の出力値Eから洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度を判断する。
【0041】
制御部20は、飽和度が100%に到達していないと判断したとき(S407:No)、S404にリターンし、飽和度が100%に到達するまで洗剤の追加投入以降の処理を繰り返す。一方、制御部20は、飽和度が100%に到達したと判断したとき(S407:Yes)、洗剤の追加投入を停止する(S408)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を停止して洗剤の追加投入を停止する。そして、制御部20は、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。また、制御部20は、飽和判断部72において飽和度が100%であると判断されると(S403:No)、洗剤の追加投入をすることなく(S409)、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。
以上の手順により、制御部20は、洗剤に含まれる界面活性剤の飽和度に応じて洗剤を追加投入するか否かを判断している。
【0042】
第2実施形態では、水槽13における水つまり洗濯液の水電導度を検出している。そして、飽和判断部72は、洗濯液の水電導度の出力値Eに基づいて洗濯液の界面活性剤の飽和度を検出し、洗濯液の飽和度合を判断している。すなわち、第2実施形態では、洗濯液に含まれる界面活性剤の飽和度合は、実測値である水電導度に基づいて判断している。そのため、洗剤の初期的な投入量や追加量を参照することなく、洗濯液の最新の状態に合致する飽和度が取得される。したがって、飽和度の判断の精度が向上し、飽和度に基づく洗剤の追加量を高精度に制御することができる。すなわち、洗濯物の汚れ具合に応じて適切な量の洗濯処理剤を追加することができ、洗濯物の洗浄性能をより向上することができる。
【0043】
(第3実施形態)
第3実施形態による洗濯機における処理の流れを図10に基づいて説明する。
第3実施形態は、第1実施形態の変形であり、第1実施形態のS304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたとき以降の処理が第1実施形態と異なる。その他の処理は第1実施形態と共通であるので、相違点のみを説明し共通する処理の説明を省略する。
【0044】
制御部20は、飽和判断部72において投入許容量が洗剤の投入量以下であると判断されると(S504:No)、水槽13へ給水する(S508)。すなわち、制御部20は、電磁弁44を駆動して給水弁部16を開放し、水槽13へ給水する。このとき、制御部20は、予め設定された追加水量の水を水槽13へ給水する。制御部20は、水槽13へ給水を開始すると、水槽13における水の量を検出する(S509)。すなわち、制御部20は、水量検出部32を通して水槽13に貯えられている水の水位を取得する。制御部20は、S509で検出した水の量が追加水量に到達したか否かを判断する(S510)。追加水量は、例えば水槽13の容量や初期的な給水量などに応じて任意に設定されている。
【0045】
制御部20は、追加した水の量が追加水量に到達していないと判断すると(S510:No)、S508へリターンし、追加水量に到達するまで給水を継続する。一方、制御部20は、追加した水の量が追加水量に到達していると判断すると(S510:Yes)、給水を停止する(S511)。すなわち、制御部20は、電磁弁44を駆動して給水弁部16を閉じ、水槽13への給水を終了する。
【0046】
制御部20は、水の量が追加水量に到達すると、洗剤を追加投入する(S512)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を駆動して、洗濯物へ供給する洗剤を追加して投入する。制御部20は、S512で洗剤を追加することにより、投入された洗剤が追加投入量に到達したか否かを判断する(S513)。追加投入量は、例えばS508で設定した追加水量などに応じて設定されている。
【0047】
制御部20は、追加した洗剤の量が追加投入量に到達していないと判断すると(S513:No)、S512へリターンし、追加投入量に到達するまで洗剤の投入を継続する。一方、制御部20は、追加した洗剤の量が追加投入量に到達していると判断すると(S513:Yes)、洗剤の追加投入を停止する(S514)。すなわち、制御部20は、投入機構部48の駆動を停止して、洗剤の追加投入を終了する。制御部20は、S507において洗剤の追加投入を停止、またはS514において洗剤の追加投入を停止すると、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。
【0048】
以上の手順により、第3実施形態では、制御部20は、洗剤の投入量が投入許容量を上回るとき、水槽13への給水を実行した後、洗剤の追加投入を実行する。すなわち、洗剤に含まれる界面活性剤が飽和状態にあるとき、制御部20は水槽13へ水を追加する。これにより、投入許容量を上回っている洗剤は、水槽13へ水が追加されることにより無駄なく利用される。したがって、飽和状態にある洗濯液に含まれる界面活性剤を有効に利用することができる。また、水槽13への水の追加によって洗剤の投入許容量が増大すると、制御部20は洗剤を追加投入する。これにより、洗濯物に強い汚れがある場合でも、洗濯物は十分な量の洗剤および水で生成された洗濯液によって洗浄される。したがって、洗剤を無駄にすることなく洗浄能力を回復することができ、洗浄力の向上を図ることができる。
【0049】
(第4実施形態)
第4実施形態による洗濯機における処理の流れを図11に基づいて説明する。
第4実施形態は、第2実施形態の変形であり、第2実施形態のS403において洗濯液の飽和度が100%であると判断されたとき以降の処理が第2実施形態と異なる。その他の処理は第2実施形態と共通であるので、相違点のみを説明し共通する処理の説明を省略する。
【0050】
制御部20は、飽和判断部72において飽和度が100%であると判断されると(S603:No)、水槽13へ給水する(S609)。すなわち、制御部20は、電磁弁44を駆動して給水弁部16を開放し、水槽13へ給水する。制御部20は、S609で水槽13へ給水すると再び水電導度を検出し(S610)、検出した水電導度の出力値Eに基づいて飽和度を取得する(S611)。すなわち、制御部20は、S609で水を追加することによって変化する水電導度を検出し、この水電導度の出力値Eに基づいて飽和度を取得する。飽和判断部72は、S611において取得した飽和度が90%まで低下したか否かを判断する(S612)。すなわち、飽和判断部72は、S609における給水によって飽和状態が解消し、飽和度が90%へ低下したか否かを判断する。
【0051】
制御部20は、飽和度が90%まで低下していないと判断したとき(S612:No)、S609へリターンし、飽和度が90%に低下するまで給水以降の処理を繰り返す。一方、制御部20は、飽和度が90%まで低下したと判断したとき(S612:Yes)、水槽13への給水を停止する(S613)。すなわち、制御部20は、電磁弁44を駆動して給水弁部16を閉じ、水槽13への給水を終了する。
【0052】
制御部20は、給水を停止すると、洗剤を追加投入する(S614)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を駆動して、洗濯物へ供給する洗剤を追加して投入する。制御部20は、S614で洗剤を追加すると、再び水電導度を検出し(S615)、検出した水電導度の出力値Eに基づいて飽和度を取得する(S616)。すなわち、制御部20は、S614で洗剤を追加することによって変化する水電導度を検出し、この水電導度の出力値Eに基づいて飽和度を取得する。飽和判断部72は、S616で取得した飽和度が100%に到達したか否かを判断する(S617)。すなわち、飽和判断部72は、S614における洗剤の追加によって洗濯液における飽和度が再び100%へ到達したか否かを判断する。
【0053】
制御部20は、洗剤の追加によっても飽和度が100%に到達していないと判断すると(S617:No)、S614へリターンし、洗剤の投入、水電導度の検出および飽和度の取得を継続する。一方、制御部20は、洗剤の追加によって飽和度が100%に到達したと判断すると(S617:Yes)、洗剤の追加投入を停止する(S618)。すなわち、制御部20は、投入機構部48の駆動を停止して、洗剤の追加投入を終了する。制御部20は、S608において洗剤の追加投入を停止、またはS618において洗剤の追加投入を停止すると、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。
【0054】
以上の手順により、第4実施形態では、制御部20は、水電導度に基づく洗濯液の飽和度が100%となるとき、水槽13への給水を実行するとともに、洗剤の追加投入を実行する。すなわち、洗剤に含まれる界面活性剤が飽和状態にあるとき、制御部20は水槽13へ水を追加する。これにより、飽和度が100%となり許容量以上となっている洗剤は、水槽13へ水が追加されることにより無駄なく利用される。したがって、飽和状態にある洗濯液に含まれる界面活性剤を有効に利用することができる。また、水槽13への水の追加によって飽和度が低下すると、制御部20は洗剤を追加投入する。これにより、洗濯物に強い汚れがある場合でも、洗濯物は十分な量の洗剤および水で生成された洗濯液によって洗浄される。したがって、洗剤を無駄にすることなく洗浄能力を回復することができ、洗浄力の向上を図ることができる。
【0055】
(第5実施形態)
第5実施形態による洗濯機における処理の流れを図12に基づいて説明する。
第5実施形態は、第1実施形態の変形であり、第1実施形態のS304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたとき以降の処理が第1実施形態と異なる。図12では、S304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたときの処理のみを示している。
【0056】
制御部20は、飽和判断部72において投入許容量が洗剤の投入量以下であると判断されると(S304:No)、水の量を検出する(S701)。すなわち、制御部20は、水量検出部32を通して水槽13に貯えられている水の水位を取得する。そして、制御部20は、水槽13へ追加給水が可能かどうかを判断する(S702)。水槽13が貯え可能な水の量には上限があり、その容量は既知の値である。そこで、制御部20は、S701で検出した水槽13における最新の水の量から追加給水が可能であるか否かを判断する。制御部20は、水槽13への追加給水が可能であると判断すると(S702:Yes)、給水して洗剤を追加する(S703)。すなわち、制御部20は、水槽13への追加給水が可能であるとき、給水弁部16の電磁弁44を駆動して水槽13へ給水する。このとき、制御部20は、S701で検出した水の量に基づいて追加する水の量を設定する。これとともに、制御部20は、追加する水の量に応じた洗剤の量を設定し、投入機構部48により設定した洗剤を追加投入する。
【0057】
一方、制御部20は、追加給水が不可能であると判断すると(S702:No)、水槽13から排水する(S704)。すなわち、制御部20は、電磁弁46を駆動して排水弁部17を開放する。このとき、制御部20は、水槽13に貯えられている水の全部を排水してもよいし、一部を排水してもよい。制御部20は、水槽13からの排水を開始すると、水槽13における水の量を検出する(S705)。すなわち、制御部20は、水量検出部32を通して水槽13に貯えられている水の水位を検出する。
【0058】
制御部20は、S705で検出した水位に基づいて、排水が完了したか否かを判断する(S706)。すなわち、制御部20は、水槽13に貯えられている水の全部、または貯えられている水のうち設定した量の水が排水されたか否かを判断する。制御部20は、排水が完了していないと判断すると(S706:No)、S704にリターンし、所望の水位になるまで水槽13からの排水を継続する。一方、制御部20は、排水が完了したと判断すると(S706:Yes)、排水を停止する(S707)。すなわち、制御部20は、電磁弁46を駆動して排水弁部17を閉鎖する。
【0059】
制御部20は、排水が完了すると、水槽13へ給水する(S708)。すなわち、制御部20は、電磁弁44を駆動して給水弁部16を開放する。これにより、水は水槽13へ供給される。制御部20は、水槽13への給水を開始すると、水槽13における水の量を検出する(S709)。すなわち、制御部20は、水量検出部32を通して水槽13に貯えられている水の水位を検出する。
【0060】
制御部20は、S709で検出した水位に基づいて、目標水量に到達したか否かを判断する(S710)。すなわち、制御部20は、水槽13に貯えられている水の量が目標水量に到達したか否かを判断する。この目標水量は、S704からS707で排水した水の量に相当する。また、目標水量は、S704からS707で排水した水の量よりも少ない量に設定してもよい。
【0061】
制御部20は、目標水量に到達していないと判断すると(S710:No)、S708へリターンし、所望の水位になるまで、つまり目標水量になるまで水槽13への給水を継続する。一方、制御部20は、目標水位に到達したと判断すると(S710:Yes)、給水を停止する(S711)。すなわち、制御部20は、電磁弁44を駆動して給水弁部16を閉鎖する。
【0062】
制御部20は、給水を停止すると、洗剤を追加投入する(S712)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を駆動して、洗濯物へ供給する洗剤を追加して投入する。制御部20は、S712で洗剤を追加することにより、投入された洗剤が目標投入量に到達したか否かを判断する(S713)。目標投入量は、例えばS710で設定した目標水量などに応じて設定されている。
【0063】
制御部20は、追加した洗剤の量が追加投入量に到達していないと判断すると(S713:No)、S712へリターンし、追加投入量に到達するまで洗剤の投入を継続する。一方、制御部20は、追加した洗剤の量が追加投入量に到達していると判断すると(S713:Yes)、洗剤の追加投入を停止する(S714)。すなわち、制御部20は、投入機構部48の駆動を停止して、洗剤の追加投入を終了する。制御部20は、S703において給水および洗剤の追加を実行、またはS714において洗剤の追加投入を停止すると、図4のS102に示す洗濯工程にリターンする。
【0064】
以上の手順により、第5実施形態では、制御部20は、洗濯処理剤としての洗剤の投入量が投入許容量を上回るとき、水槽13への追加の給水が可能であるか否かを判断する。そして、制御部20は、水槽13への追加の給水が可能であるとき、給水を行なうとともに、洗剤を追加投入する。一方、制御部20は、水槽13への追加の給水が不可能であるとき、水槽13に貯えられている水の一部または全部を排水した後、水槽13に給水する。これに加え、制御部20は、給水された水の量に応じて洗剤を追加投入する。したがって、水槽13の容量にかかわらず水槽13への給水および洗剤の追加投入をすることができ、洗剤を無駄にすることなく洗浄力の向上を図ることができる。
【0065】
(第6実施形態)
第6実施形態による洗濯機における処理の流れを図13に基づいて説明する。
第6実施形態は、第1実施形態の変形であり、第1実施形態のS304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたとき以降の処理が第1実施形態と異なる。図13では、S304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたときの処理のみを示している。
【0066】
制御部20は、飽和判断部72において投入許容量が洗剤の投入量以下であると判断されると(S304:No)、温水ヒータ23をオンする(S801)。すなわち、制御部20は、駆動回路51を通して温水ヒータ23に通電する。これにより、水槽13に貯えられている洗濯液は、温水ヒータ23によって加熱される。温水ヒータ23がオンされると、制御部20は水温を検出する(S802)。すなわち、制御部20は、水温検出部31を通して水槽13に貯えられている水の温度を取得する。そして、制御部20は、検出した水温に基づいて、水槽13に貯えられている水の温度が目標温度に到達しているか否かを判断する(S803)。すなわち、制御部20は、水槽13の洗濯液が温水ヒータ23によって加熱され、目標温度まで上昇したか否かを判断する。この場合、目標温度は、洗濯機10の性能や適用する洗剤などに応じて任意に設定されている。
【0067】
制御部20は、水の温度が目標温度に到達していないと判断すると(S803:No)、S801へリターンし、目標温度に到達するまで温水ヒータ23による加熱を継続する。一方、制御部20は、水の温度が目標温度に到達したと判断すると(S803:Yes)、温水ヒータ23をオフする(S804)。すなわち、制御部20は、温水ヒータ23への通電を停止し、水槽13に貯えられている洗濯液の加熱を終了する。
【0068】
制御部20は、洗濯液の加熱を停止すると、洗剤を追加投入する(S805)。すなわち、制御部20は、投入機構部48を駆動して、洗濯物へ供給する洗剤を追加して投入する。制御部20は、S805で洗剤を追加することにより、投入された洗剤が目標投入量に到達したか否かを判断する(S806)。目標投入量は、例えばS803で設定した目標温度などに応じて設定されている。洗剤の溶解度すなわち洗濯液に含まれる洗剤の濃度は、洗濯液の温度によって変化する。言い換えると、洗剤は、洗濯液の温度が高くなるほど界面活性剤が飽和状態となる濃度が高くなる。そこで、制御部20は、洗濯水を加熱することにより洗剤の溶解度、つまり界面活性剤が飽和する濃度を高めている。このように洗濯液を加熱することにより、洗濯液にはより多くの洗剤を溶解させることができる。
【0069】
制御部20は、追加した洗剤の量が追加投入量に到達していないと判断すると(S806:No)、S805へリターンし、追加投入量に到達するまで洗剤の投入を継続する。一方、制御部20は、追加した洗剤の量が追加投入量に到達していると判断すると(S806:Yes)、洗剤の追加投入を停止する(S807)。すなわち、制御部20は、投入機構部48の駆動を停止して、洗剤の追加投入を終了する。制御部20は、S807において洗剤の追加投入を停止すると、図4に示すS102に示す洗濯工程にリターンする。
なお、制御部20は、水槽13の温度が目標温度に到達した後、温水ヒータ23をオフすることなく、水槽13に貯えられている水の温度を目標温度に維持してもよい。
【0070】
以上の手順により、第6実施形態では、制御部20は、洗剤の投入量が投入許容量を上回るとき、水槽13に貯えられている洗濯液を加熱する。そして、制御部20は、加熱によって溶解度が上昇した洗濯液に洗剤を追加投入する。したがって、洗剤の追加投入をすることができ、洗剤を無駄にすることなく洗浄力の向上を図ることができる。
【0071】
(第7実施形態)
第7実施形態による洗濯機における処理の流れを図14に基づいて説明する。
第7実施形態は、第1実施形態の変形であり、第1実施形態のS304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたとき以降の処理が第1実施形態と異なる。図14では、S304において投入許容量が洗剤投入量以下であると判断されたときの処理のみを示している。
【0072】
制御部20は、飽和判断部72において投入許容量が洗剤の投入量以下であると判断されると(S304:No)、洗濯工程の延長を設定する(S901)。すなわち、制御部20は、投入許容量が洗剤の投入量以下であるとき、図4に示すS101の洗剤投入工程に続くS102の洗濯工程における所要時間を延長する。制御部20は、例えば5分や10分などのように洗濯工程の所要時間を延長する。これにより、回転槽14に収容されている洗濯物は、所要時間を延長して洗濯工程が実行される。このように洗濯工程の所要時間を延長することにより、洗浄力が確保される。
【0073】
第7実施形態では、洗濯工程の所要時間を延長することにより洗浄力の確保を図っている。そのため、洗剤の追加をともなうことなく、洗浄力の向上が図られる。したがって、洗剤を無駄にすることなく洗浄力の向上を図ることができる。
【0074】
(第8実施形態)
第8実施形態による洗濯機における処理の流れを説明する。
第8実施形態は、上記の各実施形態に適用可能な変形例である。第8実施形態では、図4に示す第1実施形態の洗剤投入工程における処理の流れが第1実施形態と異なる。第8実施形態の場合、制御部20は、回転槽14に収容された洗濯物の重量に基づいて予め設定された量の洗剤を投入した後、洗濯液の電導度を検出する。そして、制御部20は、電導度センサ33で検出した洗濯液の電導度に基づいて、投入した洗剤が十分に溶けているか否かを判断し、洗剤の追加を行なうか否かを判断する。
【0075】
(洗剤投入工程)
第8実施形態による洗剤投入工程の処理の流れを図15に基づいて説明する。
制御部20は、図15におけるS101の洗剤投入工程に移行すると、洗濯物の重量を検出する(S1001)。そして、制御部20は、取得した洗濯物の重量に基づいて、水槽へ給水する(S1002)。制御部20は、水槽13への給水とともに、洗剤を投入する(S1003)。
【0076】
制御部20は、洗剤を投入すると、電導度センサ33を用いて電導度を検出する(S1004)。制御部20は、S1004で取得した洗濯液の電導度に基づいて、電導度が予め設定した設定値以上であったか否かを判断する(S1005)。すなわち、制御部20は、洗濯液の電導度が予め設定した設定値以上であったか否かを判断する。この設定値は、例えば洗濯機10の性能や洗剤の種類などに応じて予め任意に設定され、記憶部35に記憶されている。例えば水槽13へ給水した水の温度が低いとき、洗剤は洗濯液として水に十分に溶けないことがある。この他にも、例えば水の硬度が高いとき、または投入機構部48から水槽13までの間に異物が存在して洗剤の投入量が十分でないときなど、洗濯液に含まれる洗剤は不足するおそれがある。そこで、制御部20は、洗濯液の電導度に基づいて、洗濯液に十分な洗剤が含まれているか否かを判断する。
【0077】
制御部20は、洗濯液の電導度が設定値未満であったとき(S1005:No)、図4に示す洗濯工程にリターンし、S102以降の処理を実行する。一方、制御部20は、洗濯液の電導度が設定値以上であったとき(S1005:Yes)、洗剤追加投入工程に移行する(S1006)。
【0078】
第8実施形態では、予備洗濯工程における洗濯液の汚れ具合の検出に代えて、洗濯液の電導度を検出している。そして、制御部20は、検出した洗濯液の電導度に基づいて、洗剤の追加投入を実行するか否かを判断している。これにより、洗濯物の汚れ具合に限らず、例えば水温、水質あるいは投入機構部48の不具合などによって洗剤が不足する場合でも、洗濯液への洗剤の追加の要否が判断される。したがって、洗剤を適切に追加することができ、洗浄力の向上を図ることができる。
【0079】
(第9実施形態)
第9実施形態による洗濯機における処理の流れを図16に基づいて説明する。
第9実施形態は、上記の各実施形態に適用可能な変形例である。第9実施形態では、図16に示すように第1実施形態おける脱水工程の後に、診断結果報知工程を含んでいる(S105)。診断結果報知工程は、投入部22から投入された洗濯処理剤としての洗剤が適正な量であったか否かを報知する。投入部22から投入される洗濯処理剤の投入量は、回転槽14に収容された洗濯物の量に基づく自動的に設定に加え、例えば「多め」、「少な目」など、ユーザが任意に設定することもできる。このように、ユーザによって洗濯処理剤の量が設定されているとき、制御部20は報知部24を通して洗濯処理剤の量が適正であるか否かを報知する。また、季節の変わり目など、水温や洗濯の環境に変化が生じると、従来の洗濯処理剤の投入量は過剰または過小になることがある。この場合も、制御部20は報知部24を通して洗濯処理剤の量が適正であるか否かを報知する。
【0080】
以下、第9実施形態による洗濯機における処理の流れについて図17に基づいて洗濯処理剤として洗剤を例に説明する。
制御部20は、図16に示すS105において診断結果報知工程に移行すると、飽和以下との判断があったか否かを判断する(S1101)。すなわち、制御部20は、各実施形態における処理の流れにおいて、「洗剤の投入量が投入許容量を上回った」との判断、または界面活性剤の「飽和度が100%」との判断が出されていないか否かを判断する。換言すると、各実施形態における処理の流れにおいて、洗剤の投入量が適切であったか否かを判断する。
【0081】
制御部20は、飽和以下との判断があったと判断すると(S1101:Yes)、報知部24を通して洗剤の増量が可能であることを報知する(S1102)。すなわち、報知部24は、洗剤が無駄になっておらず、洗浄効果を高めるために洗剤の追加が可能であることをユーザに報知する。報知部24は、例えば表示部53への文字や絵柄の表示を通して、または鳴動部54からの音声を通してユーザに報知する。一方、制御部20は、飽和以下との判断がなかったと判断すると、つまり飽和状態との判断があったと判断すると(S1102:No)、報知部24を通して洗剤が過剰であることを報知する(S1103)。すなわち、報知部24は、投入された洗剤が過剰であり、無駄になっていることをユーザに報知する。
【0082】
ここで、報知部24は、洗剤の無駄をなくすためのアドバイスを報知してもよい(S1104)。この場合も、報知部24は、表示部53または鳴動部54を通してユーザにアドバイスを提供する。このとき、報知部24がアドバイスする内容としては、例えば「洗剤の投入量を減らす」、「洗剤の投入量を増やす」、「水量を減らす」、「水量を増やす」、「水温を下げる」、「水温を上げる」などである。また、報知部24は、例えば「洗剤をあと○○g追加することができます。」、「水量をあと○○リットル増やすとよいです。」、「水温を○○℃に設定するとよいです。」といった、より具体的な報知をしてもよい。
【0083】
制御部20は、S1102またはS1104で報知すると、次回以降に設定を変更するか否かを受け付ける(S1105)。ユーザは、S1102またはS1104などの報知を参考にして、洗剤の投入量に関する設定を変更するか否かを判断することができる。制御部20は、操作部34を通して、ユーザによる設定の変更の意思の入力を受け付ける。制御部20は、ユーザが設定を維持するとの判断を入力した場合(S1105:Yes)、従来の設定を維持する(S1106)。すなわち、制御部20は、ユーザによる洗剤投入量の設定を変更しない。一方、制御部20は、ユーザが設定を変更するとの判断を入力した場合(S1105:No)、従来の設定を変更して記憶する(S1107)。すなわち、制御部20は、ユーザによる洗剤投入量の設定を変更して記憶部35に記憶する。この場合、制御部20は、洗剤投入量に限らず、水量や水温に関する設定の変更を受け付ける構成としてもよい。また、制御部20は、S1104において報知したアドバイスの内容にしたがって設定を変更する構成としてもよい。
【0084】
第9実施形態では、洗剤をはじめとする洗濯処理剤の過不足が生じたとき、報知部24を通してこれをユーザに報知する。ユーザは、報知された内容を参考に、投入する洗剤の量の増減を判断することができる。したがって、洗剤をはじめとする洗濯処理剤の無駄を低減することができるとともに、洗濯処理剤の能力を最大限に引き出すことができる。
【0085】
また、第9実施形態では、ユーザは、報知された内容を参考に、次回以降の洗濯機10の運転に際する設定を変更する。これにより、ユーザは、例えば自身の好み、あるいは季節などの周囲の環境などに応じて洗濯の設定を変更することができる。したがって、自動的な洗濯処理剤の投入を利用しつつ、ユーザの希望する洗い上げ状態を確保することができる。
【0086】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば上記の複数の実施形態では、飽和判断部72において界面活性剤の飽和度合を判断した後、洗濯処理剤を許容される投入量まで追加する例について説明した。しかし、洗濯処理剤は、洗濯液における界面活性剤の飽和度合に応じて、追加する投入量を設定する構成としてもよい。一例として、飽和度合が30%未満のとき、制御部20は最初に投入した洗濯処理剤の投入量の50%を追加投入量として設定する。また、制御部20は、飽和度合が30%以上~60%未満のとき最初に投入した洗濯処理剤の投入量の30%を追加投入量として設定し、飽和度合が60%以上のとき最初に投入した洗濯処理剤の投入量の10%を追加投入量として設定してもよい。
【符号の説明】
【0087】
図面中、10は洗濯機、13は水槽、14は回転槽、16は給水弁部、17は排水弁部、20は制御部、22は投入部、23は温水ヒータ(加熱部)、24は報知部、31は水温検出部、32は水量検出部、33は電導度センサ(電導度検出部)、35は記憶部、72は飽和判断部を示す。
図1
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