(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】金型ホルダ
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20221104BHJP
B21D 37/14 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B21D5/02 F
B21D37/14 H
(21)【出願番号】P 2018128701
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】林 史郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信広
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第02163738(DE,A)
【文献】特開2008-260066(JP,A)
【文献】特開2003-191017(JP,A)
【文献】実開昭62-029821(JP,U)
【文献】特表2012-508115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B21D 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキにおける上部テーブルの下端部又は下部テーブルの上端部に装着可能であって、金型の取付部を挿入するための挿入凹部が長さ方向に沿って形成されたホルダベースと、
前記ホルダベースに幅方向へ移動可能に設けられ、前記ホルダベースの前記挿入凹部の内壁面と協働して前記金型の前記取付部をクランプするクランプ部材と、
弾性変形によって前記クランプ部材を幅方向一方側へ押圧するように構成されたバネ部材と、
前記ホルダベースに設けられ、往復動可能でかつ往動によって前記バネ部材を幅方向一方側へ押圧するピストンを有し、前記バネ部材を弾性変形させるシリンダ
と、
前記クランプ部材が前記幅方向に移動可能に設けられた支持穴の外に配置され、前記クランプ部材を幅方向他方側へ付勢する戻し部材と、を具備し、
前記ピストンの往動が規制された状態であっても、前記バネ部材が弾性変形できるように構成されていることを特徴とする金型ホルダ。
【請求項2】
前記クランプ部材の数が複数であり、複数の前記クランプ部材は、長さ方向に沿って並んだ複数のクランプ駒であることを特徴とする請求項1に記載の金型ホルダ。
【請求項3】
前記バネ部材の数が複数であり、各バネ部材は、前記クランプ駒の基端部側に幅方向に沿って重ねて設けられた複数の皿バネであることを特徴とする
請求項2に記載の金型ホルダ。
【請求項4】
前記ホルダベースは、
前記上部テーブルの下端部又は前記下部テーブルの上端部に装着可能であって、前記挿入凹部が長さ方向に沿って形成されたベース本体と、
前記ベース本体に幅方向に傾動可能に設けられ、複数の前記支持穴が長さ方向に間隔を置いて形成された締め板と、を有し、
前記クランプ部材の数が複数であることを特徴とする
請求項1に記載の金型ホルダ。
【請求項5】
前記ピストンは、その往動によって前記締め板を介して前記バネ部材を幅方向一方側へ押圧することを特徴とする
請求項4に記載の金型ホルダ。
【請求項6】
前記バネ部材の数が複数であり、各バネ部材は、前記支持穴に設けられていることを特徴とする
請求項4又は請求項5に記載の金型ホルダ。
【請求項7】
前記シリンダは、エアシリンダであることを特徴とする
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の金型ホル
ダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキにおける上部テーブルの下端部側又は下部テーブルの上端部側に金型(パンチ金型又はダイ金型)を取付けるための金型ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキに用いられる金型ホルダは、ホルダベースを具備しており、ホルダベースには、金型の取付部としてのシャンク部を挿入するための挿入凹部が長さ方向(金型ホルダの長さ方向)に沿って形成されている。また、ホルダベースには、ホルダベースの挿入凹部の内壁面と協働して金型のシャンク部をクランプするクランプ部材が幅方向(金型ホルダの幅方向)へ移動可能又は揺動可能に設けられている。そして、金型ホルダは、クランプ部材にクランプ力を付与する構成の相違から、バネ式タイプとシリンダ式タイプ等がある。
【0003】
シリンダ式タイプの金型ホルダは、シリンダを具備しており、シリンダは、クランプ部材を幅方向一方側に押圧するピストンを有している。つまり、シリンダは、圧力流体の圧力によってクランプ部材を幅方向一方側へ押圧(付勢)するように構成されている。換言すれば、シリンダは、圧力流体の圧力によってクランプ部材にクランプ力を付与するように構成されている(特許文献1参照)。また、バネ式タイプの金型ホルダは、バネ部材を具備しており、バネ部材は、その弾性変形(縮み変形又は撓み変形)によって常時クランプ部材を幅方向一方側(クランプ方向)へ押圧(付勢)するように構成されている。換言すれば、バネ部材は、その弾性変形によって常時クランプ部材にクランプ力を付与するように構成されている(特許文献2参照)。
【0004】
なお、本発明に関連する技術として特許文献1及び特許文献2の他に、特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独立特許公報DE102005051368号明細書
【文献】米国特許第7308817号明細書
【文献】特開2003-191017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シリンダ式タイプの金型ホルダによって複数の金型を保持(装着)する場合に、複数の金型のシャンク部間において製造誤差のバラツキがあると、複数の金型のうちのいずれかの金型の保持力が著しく低下することがある。この場合、金型の個数と同数のピストンを長さ方向に沿って配置することによって複数の金型の保持力を安定させることも考えられるが、そうすると、金型ホルダの構造が複雑化して現実的ではない。一方、バネ式タイプの金型ホルダによって複数の金型を保持する場合には、複数の金型のシャンク部間において製造誤差のバラツキがあっても、バネ部材に複数のスリットを長さ方向に沿って間隔を置いて形成することにより、金型ホルダの構造を複雑化することなく、複数の金型の保持力を安定させることができる。
【0007】
しかしながら、バネ式タイプの金型ホルダにおいては、金型ホルダに対して金型を着脱する際には、クランプ部材によって金型のシャンク部をクランプするときよりも、バネ部材の弾性変形量を大きくして、クランプ部材を幅方向他方側へ移動又は揺動させる必要がある。そのため、クランプ部材によって金型のシャンク部をクランプするときに、バネ部材の本来のバネ特性を十分に発揮させることができず、バネ式タイプの金型ホルダによる金型の保持力を効果的かつ十分に高めることが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、クランプ部材によって金型をクランプするときに、バネ部材の本来のバネ特性を十分に発揮させることができる、バネ式タイプの金型ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様に係る金型ホルダは、プレスブレーキにおける上部テーブルの下端部又は下部テーブルの上端部に装着可能であって、金型の取付部を挿入するための挿入凹部が長さ方向に沿って形成されたホルダベースと、前記ホルダベースに幅方向へ移動可能に設けられ、前記ホルダベースの前記挿入凹部の内壁面と協働して前記金型の前記取付部をクランプするクランプ部材と、弾性変形(縮み変形又は撓み変形)によって前記クランプ部材を幅方向一方側(クランプ方向)へ押圧(付勢)するように構成された(換言すれば、弾性変形によって前記クランプ部材にクランプ力を付与するように構成された)バネ部材と、前記ホルダベースに設けられ、往復動可能でかつ往動によって前記バネ部材を幅方向一方側へ押圧するピストンを有し、前記バネ部材を弾性変形させるシリンダと、を具備し、前記ピストンの往動が規制された状態であっても、前記バネ部材が弾性変形できるように構成されていることである。
【0010】
本発明の実施態様に係る金型ホルダは、前記クランプ部材を幅方向他方側(アンクランプ方向)へ付勢する戻し部材(付勢部材)を具備してもよい。
【0011】
本発明の実施態様に係る金型ホルダは、前記クランプ部材の数が複数であり、複数の前記クランプ部材は、長さ方向に沿って並んだ複数のクランプ駒(クランプピース)であってもよい。この場合には、前記バネ部材の数が複数であり、各バネ部材は、前記クランプ駒の基端部側に幅方向に沿って重ねて設けられた複数の皿バネであってもよい。
【0012】
本発明の実施態様に係る金型ホルダは、前記ホルダベースは、前記上部テーブルの下端部又は前記下部テーブルの上端部に装着可能であって、前記挿入凹部が長さ方向に沿って形成されたベース本体と、前記ベース本体に幅方向に傾動可能に設けられ、複数の支持穴が長さ方向に間隔を置いて形成された締め板と、を有し、前記クランプ部材の数が複数であり、各クランプ部材は、前記支持穴に幅方向へ移動可能に設けられたクランプ駒であってもよい。この場合には、前記ピストンは、その往動によって前記締め板を介して前記バネ部材を幅方向一方側へ押圧してもよい。前記バネ部材の数が複数であり、各バネ部材は、前記支持穴に設けられてもよい。また、本発明の実施態様では、前記シリンダは、エアシリンダであってもよい。
【0013】
本発明の実施態様によると、前記金型ホルダに対して前記金型を装着する際には、まず、前記金型の前記取付部を前記ホルダベースの前記挿入凹部に挿入する。そして、前記シリンダの駆動により前記バネ部材を弾性変形させて、前記バネ部材が前記クランプ部材を幅方向一方側(クランプ方向)へ押圧(付勢)する。すると、前記クランプ部材が幅方向一方側へ移動して、前記金型の前記取付部をクランプする。これにより、前記金型ホルダに対して前記金型を装着することができ、換言すれば、前記上部テーブルの下端部側又は前記下部テーブルの上端部側に前記金型ホルダを介して前記金型を取付けることができる。
【0014】
前記金型ホルダに対して前記金型を離脱させる際には、まず、前記シリンダの駆動を解除又は前記シリンダの別の駆動により前記バネ部材を元の状態に戻す。すると、前記クランプ部材が幅方向他方側(アンクランプ方向)へ移動して、前記金型の前記取付部をアンクランプする。そして、前記ホルダベースの前記挿入凹部に対して前記金型の前記取付部を離反させる。これにより、前記金型ホルダに対して前記金型を離脱させることができ、換言すれば、前記上部テーブルの下端部側又は前記下部テーブルの上端部側から前記金型を取り外すことができる。
【0015】
前述のように、前記金型ホルダは、前記ピストンの往動が規制された状態であっても、前記バネ部材が弾性変形できるように構成されている。そのため、前記クランプ部材によって前記金型の前記取付部をクランプするときに、前記バネ部材の弾性変形量(縮み変形量又は撓み変形量)を大きくして、前記バネ部材の本来のバネ特性を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バネ式タイプの前記金型ホルダによる前記金型の保持力を効果的かつ十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダを示す断面図であり、パンチ金型を保持(装着)した状態を示している。
図1では、パンチ金型のハッチングを省略している。
【
図2】
図2(a)は、
図3におけるIIA-IIA線に沿った拡大断面図である。
図2(b)は、
図3におけるIIB-IIB線に沿った拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダの正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダの底面図である。
【
図6】
図6は、
図2(b)におけるVI-VI線に沿った部分断面図である。
【
図7】
図7は、
図2(b)におけるVII-VII線に沿った部分断面図である。
【
図8】
図8は、
図2(b)におけるVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダを示す断面図であり、ダイ金型を保持(装着)した状態を示している。
図9では、ダイ金型のハッチングを省略している。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して順次説明する。
【0019】
なお、本願の明細書又は特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「装着される」とは、直接的に装着されることの他に、別部材を介して間接的に装着されることを含む意である。また、「金型」とは、パンチ金型及びダイ金型を含む意である。「挿入凹部」とは、挿入溝及び挿入段部を含む意である。「弾性変形」とは、縮み変形及び撓み変形を含む意である。また、「長さ方向」とは、金型ホルダ又は金型の長さ方向のことをいい、第1実施形態及び第2実施形態にあっては、水平な左右方向のことをいう。「幅方向」とは、金型ホルダ又は金型の幅方向のことをいい、第1実施形態及び第2実施形態にあっては、水平な前後方向のことをいう。「幅方向一方側」とは、金型ホルダ又は金型の幅方向の一方側のことをいい、第1実施形態にあっては、前方向又は前側のことをいい、第2実施形態にあっては、後方向又は後側のことをいう。「幅方向他方側」とは、金型ホルダ又は金型の幅方向の他方側のことをいい、第1実施形態にあっては、後方向又は後側のことをいい、第2実施形態にあっては、前方向又は前側のことをいう。
【0020】
図面中、「D1」は、長さ方向、「D2」は、幅方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「U」は、上方向、「D」は、下方向をそれぞれ指している。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダ1は、プレスブレーキにおける上部テーブル3の下端部にパンチ金型5を取付けるためのユニットである。ここで、パンチ金型5は、前述の特許文献1(WO00/41824号公報)に示す公知の構成からなり、取付部としてのシャンク部7を有している。シャンク部7の前側面及び後側面には、長さ方向(左右方向)に延びたV字状の係合溝9がそれぞれ形成されている。シャンク部7の幅方向一方側の側面における係合溝9の下側には、係止突起11が設けられており、係止突起11は、シャンク部7の前側面に対して出没可能になっている。そして、本発明の第1実施形態に係る金型ホルダ1の具体的な構成は、以下の通りである。
【0022】
図1から
図7に示すように、金型ホルダ1は、長さ方向(左右方向)に延びたホルダベース13を具備しており、ホルダベース13は、上部テーブル3の下端部に複数の取付ボルト(図示省略)を介して装着可能である。また、ホルダベース13の下部(下面)には、パンチ金型5のシャンク部7を挿入するための挿入凹部としての挿入溝15が長さ方向に沿って形成されている。ホルダベース13の挿入溝15の前側の内壁面(幅方向一方側の内壁面)15f及び後側の内壁面15sには、パンチ金型5の係止突起11を係止させるための係止溝17が長さ方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0023】
ホルダベース13の後側面(後部)には、長さ方向に延びた収容凹部(収容溝)19が形成されている。ホルダベース13の後部には、複数の支持穴21が長さ方向に間隔を置いて形成されている。各支持穴21の前端は、挿入溝15側に開口されており、各支持穴21の後端は、収容凹部19側に開口されている。
【0024】
各支持穴21には、挿入溝15の前側(幅方向一方側)の内壁面15fと協働してパンチ金型5のシャンク部7をクランプするクランプ部材としてのクランプ駒(クランプピース)23が幅方向(前後方向)へ移動可能に設けられている。換言すれば、ホルダベース13の後部には、長さ方向に並んだ複数のクランプ駒23が幅方向へ移動可能に設けられている。各クランプ駒23は、その幅方向の移動によって挿入溝15の後側の内壁面15sに対して出没可能に構成されている。また、各クランプ駒23の先端側(前端側)には、パンチ金型5の係合溝9に楔作用によって係合する係合爪25が形成されている。各クランプ駒23の基端側(後端側)には、矩形のフランジ部27が形成されており、各クランプ駒23におけるフランジ部27の後側には、小径部29が形成されている。
【0025】
ホルダベース13における各支持穴21の近傍には、対応するクランプ駒23のフランジ部27を後方向(幅方向他方側)へ付勢する戻し部材(付勢部材)としてのコイルバネ31が設けられている。なお、コイルバネ31の代わりに、ウレタン等の弾性体を戻し部材として用いてもよい。
【0026】
各クランプ駒23の小径部29には、バネ部材としての複数の皿バネ33が幅方向に沿って重ねて設けられている。各複数の皿バネ33は、抜け止めリング35によって対応するクランプ駒23の小径部29に対して離脱不能になっている。各複数の皿バネ33は、その縮み変形によって対応するクランプ駒23を前方向へ押圧するように構成されている。換言すれば、各複数の皿バネ33は、その縮み変形によって対応するクランプ駒23にクランプ力を付与するように構成されている。
【0027】
図5から
図8に示すように、ホルダベース13の後側(後側面)には、全ての複数の皿バネ33を同期して縮み変形させるエアシリンダ37が設けられている。また、エアシリンダ37は、ホルダベース13の後側に設けられかつ長さ方向に延びたシリンダ本体39を有している。シリンダ本体39は、長さ方向に沿って分割された複数のシリンダセグメント39Sによって構成されている。各シリンダセグメント39Sの前部(前側面)には、2つのシリンダ室41が長さ方向に隣接して形成されている。換言すれば、シリンダ本体39の前部には、複数のシリンダ室41が長さ方向に並んで形成されている。各シリンダ室41には、ピストン43がパッキン45を介して幅方向へ気密的に往復動可能に設けられている。各ピストン43は、その往動(前方向の移動)によって対応する複数の皿バネ33を前方向(幅方向一方側)へ押圧する。各ピストン43の前側面には、クランプ駒23の小径部29の一部を受容するための複数の受容凹部47が長さ方向に間隔を置いて形成されている。
【0028】
各ピストン43は、その前側面がストッパ部としてのホルダベース13の後側面に当接すると、往動が規制されるように構成されている。そして、バネ式タイプの金型ホルダ1は、各ピストン43の往動が規制された状態であっても、各複数の皿バネ33が縮み変形できるように構成されている。
【0029】
各シリンダセグメント39Sには、圧力エア(圧縮空気)を供給するためのエア供給通路49が長さ方向に沿って形成されており、長さ方向に各隣接する一対のエア供給通路49は、連絡パイプ51を介して連絡(連通)されている。各シリンダセグメント39Sには、エア供給通路49とシリンダ室41におけるピストン43の後側を連絡するための複数の連絡通路53が形成されている。また、シリンダ本体39の左側面には、支持ブロック55が設けられており、支持ブロック55には、エア供給通路49に連通した接続配管57が設けられている。接続配管57は、工場設備のエアコンプレッサ等のエア源(図示省略)に接続可能である。シリンダ本体39の右側面には、エア供給通路49を封鎖する封鎖ブロック59が設けられている。つまり、エアシリンダ37は、その駆動により複数のシリンダ室41におけるピストン43の後側に圧力エアを同期して供給するように構成されている。
【0030】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
金型ホルダ1に対してパンチ金型5を装着する際には、まず、各複数の皿バネ33が縮み変形していない状態で、パンチ金型5のシャンク部7をホルダベース13の挿入溝15に挿入する。そして、エアシリンダ37の駆動により複数のシリンダ室41におけるピストン43の後側に圧力エアを同期して供給して、各ピストン43を幅方向へ往動(前方向へ移動)させる。すると、各ピストン43が対応する複数の皿バネ33を前方向(幅方向一方側)へ押圧して、各複数の皿バネ33を縮み変形させながら、各複数の皿バネ33が対応するクランプ駒23を前方向へ押圧する。更に、各クランプ駒23がコイルバネ31の付勢力に抗しつつ前方向へ移動して、パンチ金型5のシャンク部7をクランプする。これにより、金型ホルダ1に対してパンチ金型5を装着することができ、換言すれば、上部テーブル3の下端部側に金型ホルダ1を介してパンチ金型5を取付けることができる。
【0032】
金型ホルダ1に対してパンチ金型5を離脱させる際には、まず、エアシリンダ37の駆動を解除して、各複数の皿バネ33の弾性力(付勢力)を利用しながら、各ピストン43を幅方向へ復動(後方向へ移動)させる。すると、各複数の皿バネ33を縮み変形していない状態(元の状態)に戻す。更に、各クランプ駒23がコイルバネ31の付勢力を利用しならが後方向へ移動して、パンチ金型5のシャンク部7をアンクランプする。そして、ホルダベース13の挿入溝15に対してパンチ金型5のシャンク部7を離反させる。これにより、金型ホルダ1に対してパンチ金型5を離脱させることができ、換言すれば、上部テーブル3の下端部側からパンチ金型5を取り外すことができる。
【0033】
前述のように、金型ホルダ1に対してパンチ金型5を装着する際に、各複数の皿バネ33が弾性変形していない状態になっている。そして、前述のように、バネ式タイプの金型ホルダ1は、各ピストン43の往動が規制された状態であっても、各複数の皿バネ33が縮み変形できるように構成されている。そのため、各クランプ駒23によってパンチ金型5のシャンク部7をクランプするときに、各複数の皿バネ33の縮み変形量を大きくして、各複数の皿バネ33の本来のバネ特性を十分に発揮させることができる。
【0034】
また、前述のように、ホルダベース13の後部には、長さ方向に並んだ複数のクランプ駒23が幅方向(前後方向)へ移動可能に設けられている。各複数の皿バネ33は、その縮み変形によって対応するクランプ駒23を前方向へ押圧するように構成されている。そのため、金型ホルダ1によって複数のパンチ金型5を保持(装着)する場合に、複数のパンチ金型5のシャンク部7間において製造誤差のバラツキがあっても、その製造誤差のバラツキを各複数の皿バネ33の縮み変形によって十分かつ確実に吸収することができる。これにより、複数のパンチ金型5の保持力を長さ方向に亘ってより安定させることができる。
【0035】
従って、本発明の第1実施形態によれば、前述のように、各クランプ駒23によってパンチ金型5のシャンク部7をクランプするときに、各複数の皿バネ33の本来のバネ特性を十分に発揮させることができる。よって、本発明の第1実施形態によれば、バネ式タイプの金型ホルダ1によるパンチ金型5の保持力を効果的かつ十分に高めることができる。
【0036】
また、本発明の第1実施形態によれば、前述のように、金型ホルダ1によって複数のパンチ金型5を保持する場合に、複数のパンチ金型5の保持力を長さ方向に亘ってより安定させることができる。よって、本発明の第1実施形態によれば、複数のパンチ金型5を用いた種々の曲げ加工を高精度に行うことができる。
【0037】
(第2実施形態)
図9に示すように、本発明の第2実施形態に係るバネ式タイプの金型ホルダ71は、プレスブレーキにおける下部テーブル73の上端部にダイ金型75を取付けるためのユニットである。ここで、ダイ金型75は、取付部としてのシャンク部77を有している。そして、本発明の第2実施形態に係る金型ホルダ71の具体的な構成は、以下の通りである。
【0038】
図9から
図12に示すように、金型ホルダ71は、長さ方向(左右方向)に延びたホルダベース79を具備しており、ホルダベース79は、下部テーブル73の上端部に複数の取付ボルト(図示省略)を介して装着可能である。また、ホルダベース79は、下部テーブル73の上端部に装着可能なベース本体81を有している。ベース本体81の上部(上面)には、ダイ金型75のシャンク部77を挿入するための挿入凹部としての挿入段部83が長さ方向に沿って形成されている。
【0039】
ホルダベース79は、ベース本体81の前側面に複数の第1取付ボルト85及び複数の第2取付ボルト87を介してそれぞれ設けられた複数の締め板89を有している。複数の締め板89は、長さ方向に沿って並んでおり、各締め板89の下部は、幅方向に傾動可能(揺動可能)に構成されている。各第2取付ボルト87の頭部側には、球面座87fが形成されている。また、各締め板89の下部には、第1取付ボルト85を挿通させるための複数の段付き状の第1挿通穴91が貫通して形成されている。各締め板89の中間部(上下方向の中間部)には、第2取付ボルト87を挿通させるための複数の段付き状の第2挿通穴93が貫通して形成されている。各第2挿通穴93の後端は、第2取付ボルト87の球面座87fに接触する球面座93fが形成されている。各第2挿通穴93におけるベース本体81側には、その球面座93fと第2取付ボルト87の球面座87fとの接触状態を保つように、締め板89の中間部を前方向へ付勢する付勢部材としてコイルバネ95が設けられている。
【0040】
各締め板89の上部には、複数の支持穴97が長さ方向に間隔を置いて形成されている。各支持穴97の後端は、挿入段部83側に開口されている。各支持穴97の前端には、プラグ99が螺合して設けられている。また、各支持穴97には、挿入段部83の後側(幅方向一方側)の内壁面83fと協働してダイ金型75のシャンク部77をクランプするクランプ部材としてのクランプ駒101が幅方向(前後方向)へ移動可能に設けられている。換言すれば、ホルダベース79の前部には、長さ方向に並んだ複数のクランプ駒101が幅方向へ移動可能に設けられている。各クランプ駒101は、締め板89の後側面に対して後方向に突出している。
【0041】
各第1挿通穴91における第1取付ボルト85の頭部側には、締め板89の上部側を挿入段部83から離反させるように締め板89下部を後方向へ付勢するコイルバネ103が設けられている。換言すれば、各第1挿通穴91における第1取付ボルト85の頭部側には、締め板89を介して複数のクランプ駒101を前方向(幅方向他方側)へ付勢する戻し部材としてのコイルバネ103が設けられている。なお、コイルバネ103の代わりに、ウレタン等の弾性体を戻し部材として用いてもよい。
【0042】
各支持穴97におけるクランプ駒101とプラグ99との間には、バネ部材としての複数の皿バネ105が幅方向に沿って重ねて設けられている。各複数の皿バネ105は、その縮み変形によって対応するクランプ駒101を後方向(幅方向一方側)へ押圧するように構成されている。換言すれば、各複数の皿バネ105は、その縮み変形によって対応するクランプ駒101にクランプ力を付与するように構成されている。なお、複数の皿バネ105の代わりに、コイルバネをバネ部材として用いてもよい。
【0043】
ベース本体81の下部には、対応する複数の皿バネ105を縮み変形させる複数のエアシリンダ107が長さ方向に間隔を置いて内蔵されている。各エアシリンダ107は、シリンダ室109を有しており、各シリンダ室109には、ピストン111がパッキン113を介して幅方向へ気密的に往復動可能に設けられている。各ピストン111は、締め板89に接触するロッド部115を有している。各ピストン111は、その往動(後方向の移動)によって締め板89を介して対応する複数の皿バネ105を後方向(幅方向一方側)へ押圧する。
【0044】
各ピストン111は、締め板89の後側面がストッパ部としてのベース本体81の前側面に平行に当接すると、往動が規制されるように構成されている。そして、バネ式タイプの金型ホルダ71は、各ピストン111の往動が規制された状態であっても、各複数の皿バネ105が縮み変形できるように構成されている。
【0045】
各ピストン111のロッド部115の外周側には、各ピストン111を後方向へ付勢する第2戻し部材としてのコイルバネ117が設けられている。なお、コイルバネ117に代わりに、ウレタン等の弾性体を第2戻し部材として用いてもよい。
【0046】
ベース本体81の後側面には、長さ方向に延びた供給ブロック119が設けられている。供給ブロック119には、圧力エア(圧縮空気)を供給するためのエア供給通路121が長さ方向に沿って形成されている。エア供給通路121は、工場設備のエアコンプレッサ等のエア源(図示省略)に接続可能である。また、供給ブロック119からベース本体81に亘って、エア供給通路121と各シリンダ室109におけるピストン111の後側を連絡するための複数の連絡通路123が形成されている。
【0047】
続いて、本発明の第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0048】
金型ホルダ71に対してダイ金型75を装着する際には、まず、ダイ金型75のシャンク部77をベース本体81の挿入段部83に挿入する。そして、各エアシリンダ107の駆動により各シリンダ室109におけるピストン111の後側に圧力エアを同期して供給して、各ピストン111を幅方向へ往動(前方向へ移動)させる。すると、各ピストン111が締め板89を介して対応する複数の皿バネ105を後方向(幅方向一方側)へ押圧して、各複数の皿バネ105を縮み変形させながら、各複数の皿バネ105が対応するクランプ駒101を後方向へ押圧する。更に、各クランプ駒105がコイルバネ103の付勢力に抗しつつ後方向へ移動して、ダイ金型75のシャンク部77をクランプする。これにより、金型ホルダ71に対してダイ金型75を装着することができ、換言すれば、下部テーブル73の上端部側に金型ホルダ71を介してダイ金型75を取付けることができる。
【0049】
金型ホルダ71に対してダイ金型75を離脱させる際には、まず、各エアシリンダ107の駆動を解除して、各コイル117の付勢力を利用しながら、各ピストン111を幅方向へ復動(後方向へ移動)させる。すると、各複数の皿バネ105を元の状態に戻す。更に、各クランプ駒101がコイルバネ103の付勢力を利用しならが前方向(幅方向他方側)へ移動して、ダイ金型75のシャンク部77をアンクランプする。そして、ベース本体81の挿入段部83に対してダイ金型75のシャンク部77を離反させる。これにより、金型ホルダ71に対してダイ金型75を離脱させることができ、換言すれば、下部テーブル73の下端部側からダイ金型75を取り外すことができる。
【0050】
前述のように、バネ式タイプの金型ホルダ71は、各ピストン111の往動が規制された状態であっても、各複数の皿バネ105が縮み変形できるように構成されている。そのため、各クランプ駒101によってダイ金型75のシャンク部77をクランプするときに、各複数の皿バネ105の縮み変形量を大きくして、各複数の皿バネ105の本来のバネ特性を十分に発揮させることができる。
【0051】
また、前述のように、ホルダベース79の前部には、長さ方向に並んだ複数のクランプ駒101が幅方向(前後方向)へ移動可能に設けられている。各複数の皿バネ105は、その縮み変形によって対応するクランプ駒101を後方向(幅方向一方側)へ押圧するように構成されている。そのため、金型ホルダ71によって複数のダイ金型75を保持(装着)する場合に、複数のダイ金型75のシャンク部77間において製造誤差のバラツキがあっても、その製造誤差のバラツキを各複数の皿バネ105の縮み変形によって十分かつ確実に吸収することができる。これにより、複数のダイ金型75の保持力を長さ方向に亘ってより安定させることができる。
【0052】
従って、本発明の第2実施形態によれば、前述のように、各クランプ駒101によってダイ金型75のシャンク部77をクランプするときに、各複数の皿バネ105の本来のバネ特性を十分に発揮させることができる。よって、本発明の第2実施形態によれば、バネ式タイプの金型ホルダ71によるダイ金型75の保持力を効果的かつ十分に高めることができる。
【0053】
また、本発明の第2実施形態によれば、前述のように、金型ホルダ71によって複数のダイ金型75を保持する場合に、複数のダイ金型75の保持力を長さ方向に亘ってより安定させることができる。よって、本発明の第2実施形態によれば、複数のダイ金型75を用いた種々の曲げ加工を高精度に行うことができる。
【0054】
なお、本発明は、前述の第1実施形態及び第2実施形態の説明に限るものでなく、例えば、次のように種々の態様で実施可能である。
【0055】
即ち、例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、エアシリンダ37(107)の代わりに、油圧シリンダ(図示省略)を用いてもよい。この場合には、油圧シリンダの駆動により各複数の皿バネ33(105)を縮み変形させる。油圧シリンダの別の駆動により各複数の皿バネ33(105)を元の状態に戻す。
【0056】
また、例えば、第1実施形態において、各ピストン43を幅方向に往復動可能に構成する代わりに、上下方向に往復動可能に構成してもよい。この場合、各ピストンがカム機構(図示省略)を介して対応する複数の皿バネ33の上部を押圧する。
【0057】
更に、例えば、第1実施形態において、上部テーブル3の下端側にパンチ金型5を取付けるための金型ダイホルダ1の構成を、下部テーブル73(
図10参照)の上端側にダイ金型75(
図10参照)を取付けるための金型ホルダに適用してもよい。この場合には、ホルダベース13が下部テーブル73の上端部に装着可能に構成される。
【0058】
また、例えば、第2実施形態において、下部テーブル73の上端側にダイ金型5を取付けるための金型ダイホルダ71の構成を、上部テーブル3(
図1参照)の下端側にパンチ金型5(
図1参照)を取付けるための金型ホルダに適用してもよい。この場合には、ホルダベース79が上部テーブル3の下端部に装着可能に構成される。
【0059】
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0060】
1 金型ホルダ
3 上部テーブル
5 パンチ金型
7 シャンク部(取付部)
9 係合溝
11 係止突起
13 ホルダベース
15 挿入溝(挿入凹部)
15f 前側の内壁面
15s 後側の内壁面
17 係止溝
19 収容凹部
21 支持穴
23 クランプ駒(クランプ部材)
23f 基端面(後端面)
25 係合爪
27 フランジ部
29 小径部
31 コイルバネ(戻し部材)
33 皿バネ(バネ部材)
35 抜け止めリング
37 エアシリンダ(シリンダ)
39 シリンダ本体
39S シリンダセグメント
41 シリンダ室
43 ピストン
45 パッキン
47 受容凹部
49 エア供給通路
51 連絡パイプ
53 連絡通路
55 支持ブロック
57 接続配管
59 封鎖ブロック
71 金型ホルダ
73 下部テーブル
75 ダイ金型
77 シャンク部
79 ホルダベース
81 ベース本体
83 挿入段部(挿入凹部)
83f 後側の内壁面
85 第1取付ボルト
87 第2取付ボルト
87f 球面座
89 締め板
91 第1挿通穴
93 第2挿通穴
93f 球面座
95 コイルバネ
97 支持穴
99 プラグ
101 クランプ駒(クランプ部材)
103 コイルバネ(戻し部材)
105 皿バネ(バネ部材)
107 エアシリンダ(シリンダ)
109 シリンダ室
111 ピストン
113 パッキン
115 ロッド部
117 コイルバネ(第2戻し部材)
119 供給ブロック
121 エア供給通路
123 連絡通路