(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】鋸工具の製造方法及び鋸工具
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20221104BHJP
B24D 3/06 20060101ALI20221104BHJP
B24D 99/00 20100101ALI20221104BHJP
B24D 11/00 20060101ALI20221104BHJP
B23D 61/18 20060101ALI20221104BHJP
B23D 61/12 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B24D3/00 340
B24D3/06 B
B24D99/00 C
B24D11/00 G
B23D61/18
B23D61/12 B
(21)【出願番号】P 2018129713
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】504279326
【氏名又は名称】株式会社アマダマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】辻本 晋
(72)【発明者】
【氏名】川上 達也
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-318198(JP,A)
【文献】登録実用新案第3114197(JP,U)
【文献】特開2014-151395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0151554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24D 3/06
B23D 61/18
B23D 61/12
B24D 99/00
B24D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の周囲の空間のうち、前記母材の所定の高さ位置から下方側の空間を所定粒径の球状粒子で充填する球状粒子充填工程と、
前記周囲の空間のうち、前記所定の高さ位置から上方側の空間を、前記所定粒径と実質的に同径の砥粒と前記砥粒より径の大きい間引き用粒子とを含む混合粒子群で充填する混合粒子群充填工程と、
前記母材にめっき層を形成し、前記めっき層によって前記球状粒子及び前記混合粒子群を保持する保持工程と、
前記めっき層によって保持された前記球状粒子及び前記混合粒子群のうちの、前記球状粒子及び前記間引き用粒子を液流で除去し、
前記めっき層の前記母材における前記所定の高さ位置から
下方側の部分を、前記球状粒子が抜けた跡としての球面状の凹部が形成されたものとし、前記所定の高さ位置から上方側の部分
を、前記砥粒のみが残存した砥粒固着部
とする砥粒固着部形成工程と、を含んで、前記砥粒固着部を有する鋸工具を製造する鋸工具の製造方法。
【請求項2】
母材の周囲の空間のうち、前記母材の所定の高さ位置から下方側の空間を所定粒径の球状粒子で充填する球状粒子充填工程と、
前記周囲の空間のうち、前記所定の高さ位置から上方側の空間を、前記所定粒径と実質的に同径の砥粒と前記砥粒より径の大きい間引き用粒子と前記砥粒と実質的に同径の調整用粒子とを混合した混合粒子群で充填する混合粒子群充填工程と、
前記母材にめっき層を形成し、前記めっき層によって前記球状粒子及び前記混合粒子群を保持する保持工程と、
前記めっき層によって保持された前記球状粒子及び前記混合粒子群のうちの、前記球状粒子,前記間引き用粒子,及び前記調整用粒子を液流で除去し、前記母材における前記所定の高さ位置から上方側の部分に前記砥粒のみが残存した砥粒固着部を形成する砥粒固着部形成工程と、を含んで、前記砥粒固着部を有する鋸工具を製造する鋸工具の製造方法。
【請求項3】
前記砥粒固着部形成工程は、
前記球状粒子,前記間引き用粒子
,及び前記調整用粒子を除去した後に、前記めっき層の上に別のめっき層を積層するめっき層積層工程を含むことを特徴とする請求項
2記載の鋸工具の製造方法。
【請求項4】
前記砥粒固着部の砥粒分布度を50(個/cm
2)以下にすることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の鋸工具の製造方法。
【請求項5】
胴部と、
前記胴部の側縁部に形成されためっき層と、
前記めっき層の一部
としての、直線状の境界の一方側である第1の範囲に形成され、所定の砥粒分布度で前記めっき層に保持された砥粒を有する砥粒固着部と、
前記めっき層における前記第1の範囲を除く
前記境界の他方側である第2の範囲に、
前記砥粒に実質的に粒径が等しい球状粒子の球面の一部に合致する複数の球面状の凹部が
、整列して形成されている鋸工具。
【請求項6】
前記凹部の球面の曲率は、前記球面に合致する球面を有する球体を前記凹部に仮想配置したときに、隣接する前記球体同士の隙間に前記砥粒が進入不能な曲率であることを特徴とする請求項5記載の鋸工具。
【請求項7】
前記所定の砥粒分布度は、50(個/cm
2)以下であることを特徴とする請求項
5又は請求項6記載の鋸工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥粒が電着により固定されている砥粒固着部を有する鋸工具の製造方法及び鋸工具に関する。
【背景技術】
【0002】
砥粒がめっき層によって固着されている砥粒固着部を有する鋸工具が知られている。特許文献1には、切刃部に砥粒が固着した帯鋸刃が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
砥粒固着部は、一般に、所望の砥粒を混入しためっき液中に鋸工具の母材を浸漬し、その状態で電着を行って形成する。
この方法では、母材の表面状態の違いなどにより、砥粒固着部において砥粒が均一に分布せず、単位面積当たりの個数で示される分布度にばらつきが生じることがある。
砥粒固着部における砥粒の分布度が高すぎる部分は、砥粒で削った切り粉をクーラントと共に溜め得るチップポケットが少ないため、目詰まりが生じ易い。
そのため、砥粒固着部を、砥粒の分布度が所望の密度で均一となるよう形成して砥粒固着部に十分なチップポケットを確保し、目詰まりを生じにくくする工夫が望まれている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、目詰まりしにくい砥粒固着部を有する鋸工具の製造方法及び鋸工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の手順及び構成を有する。
1) 母材の周囲の空間のうち、前記母材の所定の高さ位置から下方側の空間を所定粒径の球状粒子で充填する球状粒子充填工程と、
前記周囲の空間のうち、前記所定の高さ位置から上方側の空間を、前記所定粒径と実質的に同径の砥粒と前記砥粒より径の大きい間引き用粒子とを含む混合粒子群で充填する混合粒子群充填工程と、
前記母材にめっき層を形成し、前記めっき層によって前記球状粒子及び前記混合粒子群を保持する保持工程と、
前記めっき層によって保持された前記球状粒子及び前記混合粒子群のうちの、前記球状粒子及び前記間引き用粒子を液流で除去し、前記めっき層の前記母材における前記所定の高さ位置から下方側の部分を、前記球状粒子が抜けた跡としての球面状の凹部が形成されたものとし、前記所定の高さ位置から上方側の部分を、前記砥粒のみが残存した砥粒固着部とする砥粒固着部形成工程と、を含んで、前記砥粒固着部を有する鋸工具を製造する鋸工具の製造方法である。
2)
母材の周囲の空間のうち、前記母材の所定の高さ位置から下方側の空間を所定粒径の球状粒子で充填する球状粒子充填工程と、
前記周囲の空間のうち、前記所定の高さ位置から上方側の空間を、前記所定粒径と実質的に同径の砥粒と前記砥粒より径の大きい間引き用粒子と前記砥粒と実質的に同径の調整用粒子とを混合した混合粒子群で充填する混合粒子群充填工程と、
前記母材にめっき層を形成し、前記めっき層によって前記球状粒子及び前記混合粒子群を保持する保持工程と、
前記めっき層によって保持された前記球状粒子及び前記混合粒子群のうちの、前記球状粒子,前記間引き用粒子,及び前記調整用粒子を液流で除去し、前記母材における前記所定の高さ位置から上方側の部分に前記砥粒のみが残存した砥粒固着部を形成する砥粒固着部形成工程と、を含んで、前記砥粒固着部を有する鋸工具を製造する鋸工具の製造方法である。
3) 前記砥粒固着部形成工程は、
前記球状粒子,前記間引き用粒子,及び前記調整用粒子を除去した後に、前記めっき層の上に別のめっき層を積層するめっき層積層工程を含むことを特徴とする2)に記載の鋸工具の製造方法である。
4) 前記砥粒固着部の砥粒分布度を50(個/cm2)以下にすることを特徴とする1)~3)のいずれか一つに記載の鋸工具の製造方法である。
5) 胴部と、
前記胴部の側縁部に形成されためっき層と、
前記めっき層の一部としての、直線状の境界の一方側である第1の範囲に形成され、所定の砥粒分布度で前記めっき層に保持された砥粒を有する砥粒固着部と、
前記めっき層における前記第1の範囲を除く前記境界の他方側である第2の範囲に、前記砥粒に実質的に粒径が等しい球状粒子の球面の一部に合致する複数の球面状の凹部が、整列して形成されている鋸工具である。
6) 前記凹部の球面の曲率は、前記球面に合致する球面を有する球体を前記凹部に仮想配置したときに、隣接する前記球体同士の隙間に前記砥粒が進入不能な曲率であることを特徴とする5)に記載の鋸工具である。
7) 前記所定の砥粒分布度は、50(個/cm2)以下であることを特徴とする5)又は6)記載の鋸工具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、砥粒固着部の目詰まりが生じにくい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る鋸工具の製造方法の実施例の製造方法で製造可能な砥粒鋸刃51を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(b)におけるS1c-S1c位置での断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の製造方法で製造可能な砥粒鋸刃52を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(b)におけるS2c-S2c位置での断面図である。
【
図3】
図3は、実施例の製造方法で製造可能な砥粒鋸刃53を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(b)におけるS3c-S3c位置での断面図である。
【
図4】
図4は、実施例の製造方法で用いる電気めっき装置1を示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施例1の製造方法における電着工程での母材17と混合粒子群2との配置関係を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施例1の製造方法においてめっき層23を形成した状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の製造方法における水洗後の状態を示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1の製造方法で形成した砥粒固着部512を示す部分断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2の製造方法における電着工程での母材17と混合粒子群2Aとの配置関係を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施例2の製造方法において1次めっき層25を形成した状態を示す部分断面図である。
【
図11】
図11は、実施例2の製造方法における水洗後の状態を示す部分断面図である。
【
図12】
図12は、実施例2の製造方法において2次めっき層26を形成した状態を示す部分断面図である。
【
図13】
図13は、実施例2の製造方法で形成した砥粒固着部512を示す部分断面図である。
【
図14】
図14は、実施例3の製造方法における電着工程での母材17と混合粒子群2と球状粒子28との配置関係を示す模式図である。
【
図15】
図15は、実施例3の製造方法で形成した砥粒固着部512を示す部分断面図である。
【
図16】
図16は、実施例4の製造方法における電着工程での母材17と混合粒子群2Aと球状粒子28との配置関係を示す模式図である。
【
図17】
図17は、実施例4の製造方法で形成した砥粒固着部512を示す部分断面図である。
【
図18】
図18は、砥粒22の粒度ごとの、砥粒22と調整用粒子24との調整混合比βと砥粒分布度xとの関係などを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る鋸工具の製造方法を、実施例1~4の鋸工具の製造方法により説明する。
【0010】
各実施例の鋸工具の製造方法で製造する鋸工具の例を、
図1~
図3に示す。これらはいずれも、砥粒固着部を有する鋸工具である。以下、砥粒固着部を有する鋸工具を砥粒鋸刃と称する。
図1は、フラットタイプの砥粒鋸刃51を示し、
図2は、繰り返しタイプの砥粒鋸刃52を示し、
図3は、歯切りタイプの砥粒鋸刃53を示している。
図1~
図3それぞれにおいて、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は、(b)における指示位置での断面図である。
【0011】
図1に示される砥粒鋸刃51は、帯状の胴部511の一側縁部に、砥粒固着部512を有する。
砥粒固着部512は、砥粒22(
図8参照)が、胴部511に対しその幅方向及び厚さ方向に突出して固着している部分である。砥粒固着部512は、幅方向の端面が平坦であり、長手方向のいずれの位置においても横断面形状は一定である。
【0012】
図2に示される砥粒鋸刃52は、帯状の胴部521の一側縁部に、間隙部523を挟んで繰り返し形成された複数の砥粒固着部522を有する。
砥粒固着部522は、砥粒22(
図8参照)が、胴部521に対しその幅方向及び厚さ方向に突出して固着している部分である。
胴部521の長手方向において、間隙部523の長さは、砥粒固着部522の長さの例えば同程度とされている。
砥粒固着部512は、幅方向の端面が平坦であり、
図2(b)の側面視で概ね半円状となるように形成されている。
【0013】
図3に示される砥粒鋸刃53は、帯状の胴部531の一側縁部に、胴部531の長手方向に繰り返し形成された複数の切り歯部534を有する。各切り歯部534には砥粒固着部532が形成されている。
砥粒固着部532は、砥粒22(
図8参照)が、胴部531に対しその幅方向及び厚さ方向に突出して固着している部分である。
【0014】
砥粒鋸刃51,52,53の胴部511,521,531に対し、砥粒固着部512,522,532は、めっき工程及び水洗工程を経て形成されている。
次に、砥粒鋸刃51~53のうち、砥粒固着部512を有する砥粒鋸刃51を代表として砥粒固着部512の形成方法を詳述する。
以下の説明において、砥粒固着部512を形成する胴部511を、被めっき部材として母材17と称する。
【0015】
図4を参照して、実施例1~4で用いる電気めっき装置1を説明する。
電気めっき装置1は、めっき用電源11,めっき槽12,電極14,攪拌装置15,及び個槽16を備えている。
【0016】
めっき槽12には、めっき液13が収容される。電極14及び攪拌装置15は、めっき槽12にめっき液13が必要量だけ収容された際に、めっき液13に浸漬するように配置される。
図4は、電極14及び攪拌装置15がそれぞれ一対配置された例を示す。
【0017】
個槽16は、めっき槽12により、収容されためっき液13に浸漬されるように支持されている。
個槽16は、上部が開放された籠であって、母材17を収容できるように母材17の形状に合わせて形成されている。
個槽16は、不図示の枠体と、枠体間に張られ、母材17に固着する砥粒の大きさに応じた目開きのメッシュ16aと、を有する。
【0018】
電気めっき装置1において、一対の電極14,14は陽電極としてめっき用電源11に接続される。攪拌装置15は、モータ15aを備え、モータ15aの動作によってめっき槽12に収容されためっき液13を攪拌する。
個槽16には、あらかじめマスキング処理が施された母材17と、混合粒子群2(詳細後述)が収容される。母材17は陰電極としてめっき用電源11に接続される。
【0019】
めっき工程の実施に際し、母材17は、砥粒固着部512を形成する範囲以外の非めっき範囲PM〔
図1(b)参照〕に、めっき層が形成されないようにするためのマスキング処理を施しておく。マスキング処理は、レジスト剤の塗布或いはレジストテープの貼付など、周知の方法で行う。
【0020】
(実施例1)
電気めっき装置1を用い、母材17に砥粒固着部512を形成する実施例1の手順を説明する。
まず、めっきの準備作業を説明する。
めっき液13は、スルファミン酸浴のめっき液とし、例えば、スルファミン酸ニッケル400(g/L)、塩化ニッケル0~30(g/L)、ホウ酸30~40(g/L)を含みpH3.5~4.5に調整されたものを使用する。
めっき作業中は、不図示のヒータによりめっき槽12の温度制御を行い、めっき液13を温度50(℃)で維持しておく。めっき液13は、温度のばらつきができるだけ小さくなるように攪拌装置15で攪拌しておく。
【0021】
混合粒子群2を作成する。
図5に示されるように、混合粒子群2は、間引き用粒子21の数と砥粒22の数とを所定の混合比で混合して作成する。混合比は、例えば1:2である。
以下、この間引き用粒子21と砥粒22との混合比を間引き混合比αと称する。また、間引き混合比αの1:2の比率を、比率αaとする。
【0022】
間引き用粒子21は、砥粒22に対する粒径比率が約6.46となるものを選択する。
例えば、砥粒22を、粒度#60/80(中央粒径226μm)のダイヤモンド砥粒とし、間引き用粒子21として中央粒径1.46mmのガラスビーズとする。
砥粒22の粒径に対する間引き用粒子21の粒径の比率を粒径比率Dとすると、粒径比率Dは、約6.46倍又はそれ以上に設定するとよい。特に、粒径比率Dを約6.46倍に設定し、間引き用粒子21が例えば六方最密充填構造で密集した場合に、隣接する間引き用粒子21同士の間隙Saに、砥粒22が大きな隙間を生じることなく配置され得るのでよりよい。また、間引き混合比率αを比率αaにすると、比率αaが六方最密充填構造の間引き用粒子21の数と間隙Saの数との比率に対応するため、砥粒22が複数の間隙Saにもれなく配置されて好ましい。
【0023】
上記準備後、めっき作業を開始する。
まず、個槽16に対し、母材17を入れ、次いで母材17が隠れるように混合粒子群2を投入する。これにより、母材17の周囲の空間に、混合粒子群2が充填して配置される。
これにより、
図5に示されるように、母材17の表面には、密集した間引き用粒子21と、隣接した間引き用粒子21の間の間隙Saに進入した砥粒22と、が接触、又は近接した状態となる。
めっき液13をめっき槽12に投入して個槽16をめっき液13に浸漬させる。
【0024】
この状態で、電極14と母材17との間に所定の電圧を印加して電着工程を実行する。この電着工程により、
図6に示されるように、母材17に砥粒22の粒径の約半分の厚さのめっき層23を形成する。
【0025】
次いで、めっき層23を形成した母材17を取り出して水洗工程を実行する。
水洗工程は、流体の液流の圧力によって母材17の表面を洗う工程である。流体の例として水があり、以下、この工程を便宜的に水洗工程と称する。
砥粒22は、その粒径の半分程度がめっき層23に埋もれると共に、滑らかな表面の球体ではなく表面に凹凸があることから、めっき層23にからまってしっかり保持されている。そのため、水洗工程では、水の勢いで流されることはなく母材17上に残る。
一方、粒径が大きい間引き用粒子21は、めっき層23に埋もれている部分が粒径の1/12程度の僅かであると共に、滑らかな表面の球体であるため、めっき層23による保持力は弱く、水の勢いでめっき層23から外れて流される。
【0026】
そのため、
図7に示されるように、水洗工程によって母材17には、砥粒22が、間引き用粒子21が存在していた分だけ広い間隔で固着される。めっき層23には、間引き用粒子21が外れた跡とし凹部23aが形成されている。
すなわち、母材17には、
図5に示されためっき工程前の状態から、めっき工程によって
図8に示されるように砥粒22が間引きされた状態で固着した砥粒固着部512が形成される。
【0027】
砥粒22の間引きの程度は、間引き混合比αを調整することにより、ある程度調整可能である。間引き混合比αを、既述の比率αaである3:2にすると、母材17の表面に面した複数の間隙Saのほぼ全箇所に砥粒22が進入して配置されるため、砥粒22の間引き程度は最小となる。すなわち、間引かれた状態における、砥粒22の最高の分布度が得られる。
間引き混合比αの調整において、混合粒子群2における砥粒22の混合比率を下げると間引きの程度は大きくなり、砥粒固着部512における砥粒22の分布度を下げることができる。
【0028】
上述の実施例1は、砥粒鋸刃51に限らず、砥粒鋸刃52,53における砥粒固着部522,532の形成にも用いることができる。
【0029】
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対し、
図9に示されるように混合粒子群2を混合粒子群2Aとし、めっき層の形成回数を1回から2回にした例である。
めっき液13の組成と、50(℃)での温度維持及び攪拌装置15による攪拌は、実施例1と同じである。
【0030】
まず、混合粒子群2Aについて説明する。
図9に示されるように、混合粒子群2Aは、間引き用粒子21と砥粒22と調整用粒子24とを混合して作成する。
調整用粒子24は、砥粒22の粒径と実質的に同じ粒径(同径)で、砥粒22の比重に近いビーズを選択して用いる。
実質的に同じ粒径とは、調整用粒子24の粒径が、砥粒22の粒度に対し、JIS B4130で規定される2枚目のふるいの目開きと3枚目のふるいの目開きとの間にあるものを意味する(
図18参照)。
例えば、
図18に示されるように、砥粒22が粒度#100/120の場合、調整用粒子24の粒径は、127μm以上165μm以下の範囲で設定されていればよい。
また、間引き用粒子21は、砥粒22及び調整用粒子24に対する粒径比率Dが約6.46となるものを選択する。
例えば、砥粒22を、粒度#60/80(中央粒径226μm),真比重3.51のダイヤモンド砥粒とする場合、調整用粒子24を中央粒径226μm,真比重3.85のジルコンビーズとする。また、間引き用粒子21を中央粒径1.46mmのガラスビーズとする。
【0031】
粒径比率Dを約6.46とすると、間引き用粒子21が例えば最密充填構造で密集した場合に、隣接する間引き用粒子21同士の間隙Saに、砥粒22及び調整用粒子24のいずれか一方が大きな隙間を生じることなく配置され得るのでよりよい。
【0032】
また、間引き混合比αを、間引き用粒子21の数と他の二つの粒子の合計数との混合比率としたときに、比率αaとすることで、母材17の表面に面した複数の間隙Saの全箇所に、必ず砥粒22及び調整用粒子24のいずれか一方が配置される。
すなわち、間引き用粒子21と、砥粒22及び調整用粒子24と、の混合比は、実施例1における間引き混合比αに対応させることができる。
【0033】
砥粒22の数と調整用粒子24の数との混合比は調整混合比βと称する。
混合粒子群2Aについて、間引き混合比αを上述の比率αa(αa=1:2)とし、調整混合比βを、砥粒22:調整用粒子24=1:1.16とする。この場合の混合粒子群2Aにおける3つの粒子の混合比率は、間引き用粒子21:砥粒22:調整用粒子24=1.08:1:1.16となる。この比率を比率βaとする。
【0034】
混合粒子群2Aは、あらかじめ、砥粒22及び調整用粒子24それぞれが間引き用粒子21に対して均一に分布するようによく混合しておく。調整用粒子24として比重が砥粒22の比重に近いものを選定することで、分布は偏りなく良好に均一化できる。
【0035】
上記準備後、めっき作業を開始する。
まず、個槽16に対し、母材17を入れ、次いで母材17が隠れるように混合粒子群2Aを投入する。これにより、母材17の周囲の空間に、混合粒子群2Aが充填して配置される。
すなわち、
図9に示されるように、母材17の表面には、密集した間引き用粒子21と、隣接した間引き用粒子21の間隙Saに進入した砥粒22及び調整用粒子24のいずれか一方と、が接触、又は近接した状態となる。
【0036】
この状態で、電極14と母材17との間に所定の電圧を印加して電着工程を実行する。この電着工程により、
図10に示されるように、母材17に砥粒22の粒径の1/4程度の厚さの1次めっき層25を形成する。
【0037】
次いで、1次めっき層25を形成した母材17を取り出して水洗工程を実行する。
砥粒22は、その粒径の1/4程度が1次めっき層25に埋もれると共に、滑らかな表面の球体ではなく表面に凹凸があることから、1次めっき層25にからまってしっかり保持されている。そのため、水洗工程では、水の勢いで流されることはなく母材17上に残る。
一方、粒径が大きい間引き用粒子21は、1次めっき層25に埋もれている部分が、1/24程度の極めて僅かであると共に、滑らかな表面の球体であるため、1次めっき層25による保持力は弱く、水の勢いで1次めっき層25から外れて流される。
また、調整用粒子24は、粒径の1/4が1次めっき層25に埋もれているものの滑らかな表面の球体であるため、1次めっき層25にしっかりとは保持されてなく、水の勢いで1次めっき層25から外れて流される。
【0038】
そのため、
図11に示されるように、水洗工程によって母材17には、砥粒22が、間引き用粒子21及び調整用粒子24が存在していた分だけ広い間隔で固着される。すなわち、砥粒22は、調整用粒子24が混入されていない場合よりも間引きされた状態で母材17に固着する。
【0039】
次いで、電着工程を再度実行して、
図12に示されるように、1次めっき層25の上に2次めっき層26を積層しためっき層27を形成する。以下、このめっき層27をめっき体27と称する。
めっき体27を形成することにより、砥粒22は、1次めっき層25だけの場合よりも厚く埋もれるので、母材17への固着がより強固になる。めっき体27の厚さは、例えば、砥粒22の粒径の約半分とする。
これにより、母材17には、
図9に示されためっき工程前の状態から、めっき工程によって
図13に示されるように砥粒22がより間引きされた状態で固着した砥粒固着部512が形成される。
【0040】
実施例2では、砥粒固着部512における砥粒22の間引きの程度を、間引き用粒子21と砥粒22及び調整用粒子24との混合比である間引き混合比αと、砥粒22と調整用粒子24との混合比である調整混合比βと、によって調整できる。
図18は、砥粒22の粒度ごとの、砥粒22と調整用粒子24との調整混合比βと砥粒分布度xとの関係を示す表である。砥粒分布度xは、単位面積あたりの砥粒数であり、個/cm
2で示される。
【0041】
例えば、砥粒通過径として、JIS B 4130に規定される2枚目及び3枚目のふるいのそれぞれの目開きA2及びA3(μm)の平均値を砥粒通過径dとし、集積した間引き用粒子21の隣接粒子同士の間隙Saの内接球直径として対応づける。これにより、砥粒通過径dを最大粒径とする砥粒が、便宜的に間隙Saに進入可能と規定される。
砥粒通過径dが内接球直径となる間隙Saを構成する間引き用粒子21の直径φaは、D=6.464×dで示される。
【0042】
図18の数値で説明すると、目開きA2は271μm、目開きA3は181μm、砥粒通過径dは226μm、間引き用粒子21の直径φaは、1.46mmである。
【0043】
この条件において、砥粒22と調整用粒子24との混合比である調整混合比βを変えて実施例2の電着手順により砥粒固着部512を形成し、砥粒分布度xとの関係を求めた。ここでは、調整混合比βにおいて、砥粒22:調整用粒子24=1:yとし、砥粒分布度xと数値yとの関係として求めた。
その結果、#60/#80の粒度において、調整用粒子24の比率を下げるほど、砥粒分布度xは大きくなり、
y=(108.210/x)-1の関係が近似式として得られた。
例えば、砥粒分布度xを5,25,50とする調整用粒子24の比率は、それぞれ20.64,3.3,1.16である。
【0044】
ここで、実施例1及び実施例2における砥粒分布度xについて説明する。
鋸工具の砥粒固着部を形成する従来方法は、間引き用粒子を用いることなく、めっき液に砥粒のみを混入して電着を行うものである。この場合、母材にめっき層で固着された砥粒の砥粒分布度は、一般に数百(例えば700個/cm2)程度となる。
【0045】
しかしながら、この鋸工具をある程度使用した後、砥粒固着部の砥粒を観察すると、粒度が#60/80の砥粒では、加工に寄与した砥粒が全体の約2%、粒度が#40/50の砥粒では、加工に寄与した砥粒が全体の約4%しかないことが判明している。
これは、砥粒の許容された粒径範囲内における、粒径の大きい方の砥粒のみが母材から他の砥粒よりも高く突出して被加工部材に当たるためである。
加工に寄与しない突出量の小さい砥粒が、粒度#60/80の砥粒では全体の約98%、粒度#40/50の砥粒では全体の約96%に及ぶことは、チップポケットが小さく目詰まりし易くなっていることを意味する。
また、加工に寄与しない砥粒が多く固着していることは、砥粒の使用量を低減して低コスト化できる余地がある。
【0046】
これに対し、実施例1及び実施例2は、間引き用粒子21を用い、隣接する間引き用粒子21の間隙Saに進入した砥粒22のみを母材17に対し、それぞれめっき層23及びめっき体27で固着するものである。
そのため、固着した砥粒22の粒径は、間隙Saの大きさに応じた上限値(上述の砥粒通過径d)が決まり、粒径の中央値がその上限値に近い値となる。
従って、実施例1及び実施例2の製造方法で製造した砥粒鋸刃は、固着した砥粒全数に対して加工に寄与する砥粒数の比率が従来よりもはるかに大きくなっている。換言するならば、従来よりも小さい砥粒分布度でも、同様の加工効果が得られる。
【0047】
検討の結果、実施例1及び実施例2の製造方法を用いた場合、砥粒分布度xは、50(個/cm
2)以下であれば、従来相当の加工効果が得られることが判明した。これに基づき、
図18では、砥粒分布度xについては、5,25,50を例示してある。
【0048】
このように、砥粒分布度xを小さくできる実施例1及び実施例2の製造方法で製造した鋸工具は、従来の鋸工具よりもチップポケットが大きいため目詰まりしにくく、砥粒の使用量が少ないため低コストになる。
また、チップポケットが大きいことから、冷却効果が高く、加工に伴う鋸工具の過剰な温度上昇が抑制される。これにより、被加工部材の熱による変質などの影響及び鋸工具の熱劣化などの影響が抑制される。
【0049】
次に、実施例3及び実施例4を説明する。実施例3及び実施例4は、個槽16に収容された母材17において、個槽16の底から所定の高さ方向の位置P1(
図4参照)までの範囲への砥粒22の付着を防止する方法である。実施例3及び実施例4は、それぞれ実施例1及び実施例2に対応した方法であり、砥粒鋸刃51を製造する例を代表として順に説明する。
【0050】
(実施例3)
実施例3について
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は、実施例1で参照した
図5に対応し、電着動作前の母材17の上端部近傍を拡大した図である。
図15は、水洗工程を実行した後の、形成された砥粒固着部512を示す図である。
【0051】
実施例3は、次の手順を含む。すなわち、個槽16に母材17を収容した状態で、混合粒子群2を投入する前に、砥粒22と同じ粒径又は近い粒径の球状粒子28を投入し、球状粒子28を母材17の周囲の空間における高さ方向の位置P1まで充填して配置しておく。そして、その後、実施例1で説明した混合粒子群2を投入し、混合粒子群2を母材17の周囲の、高さ方向の位置P1よりも上側の空間に充填して配置する。これ以外の手順は、実施例1と同様である。
球状粒子28及び混合粒子群2を投入した状態は、母材17の周囲の空間において、位置P1より下方側の範囲Aaが球状粒子28のみが充填して配置され、位置P1から上方側の範囲Abが、混合粒子群2が充填して配置された状態になっている。
【0052】
位置P1より下方側の範囲Aaは、砥粒22が含まれていない球状粒子28のみが投入されている範囲である。そのため、範囲Abは、めっき工程後の水洗工程で球状粒子28が流れた後、保持されて残留する粒子は存在しない。
位置P1より上方側の範囲Abは、混合粒子群2が投入されている範囲であり、実施例1と同様に、水洗により間引き用粒子21が流されて砥粒22が間引かれた状態で残存する。めっき層23には、間引き用粒子21の跡としての凹部23aが形成されている。
【0053】
実施例3によって例えば砥粒鋸刃51を製造した場合、砥粒固着部512が形成されていない範囲にも、めっき層23が形成されている。また、範囲Aaのめっき層23には、球状粒子28が抜けた跡として球面状の凹部23bが、整列して形成されている。これらの点で実施例1によって製造した鋸工具とは外観が異なる。
すなわち、実施例1によって砥粒固着部512を形成した場合、母材17において砥粒固着部512が形成されていない範囲は、マスキング処理が施されてめっき層23が形成されないためである。
凹部23bの球面の曲率は、砥粒22に実質的に粒径が等しい球状粒子28の球面の一部に合致する。そのため、凹部23bの球面の曲率は、その球面を有する球体を前記凹部に仮想配置したときに、隣接する球体同士の隙間に砥粒22が進入不能な曲率となる。
【0054】
(実施例4)
実施例4について
図16及び
図17を参照して説明する。
図16は、実施例2で参照した
図9に対応し、電着動作前の母材17の上端部近傍を拡大した図である。
図17は、実施例4によりめっき体27を形成した後の砥粒固着部512を示す図である。
【0055】
実施例4は、次の手順を含む。すなわち、個槽16に母材17を収容した状態で、混合粒子群2Aを投入する前に、砥粒22と同じ粒径又は近い粒径の球状粒子28を高さ方向の位置P1まで充填して配置しておく。そして、その後、実施例2で説明した混合粒子群2Aを投入し、混合粒子群2Aを母材17の周囲の、高さ方向の位置P1よりも上側の空間に充填して配置する。これ以外の手順は、実施例2と同様である。
球状粒子28及び混合粒子群2Aを投入した状態は、母材17の周囲の空間において、位置P1より下方側の範囲Aaが球状粒子28のみが充填して配置され、位置P1から上方側の範囲Abが、混合粒子群2Aが充填して配置された状態になっている。
【0056】
位置P1より下方側の範囲Aaは、砥粒22が含まれていない球状粒子28のみが投入されている範囲である。そのため、範囲Aaは、電着工程後の水洗工程で球状粒子28が流れた後、保持されて残留する粒子は存在しない。
位置P1より上方側の範囲Abは、混合粒子群2Aが投入されている範囲であり、実施例1と同様に、水洗工程によって間引き用粒子21及び調整用粒子24が流されて砥粒22が実施例3対し、より間引かれた分布度が低い状態で残存する。
【0057】
実施例4によって砥粒固着部512を形成した場合、母材17において砥粒固着部512が形成されていない範囲にも、めっき体27が形成されている。この点で実施例2により製造した鋸工具とは外観状で異なる。
すなわち、実施例2によって砥粒固着部512を形成した場合、母材17において砥粒固着部512が形成されていない範囲は、マスキング処理が施されてめっき体27が形成されていないためである。
【0058】
実施例3及び実施例4は、砥粒固着部の他部位との境界となる下端が直線状となる
図1,3に示される砥粒鋸刃51,53の製造に好適である。実施例3及び実施例4は、砥粒固着部512,532を形成する部位の下端部512a,532aの高さ位置を位置P1としてめっき工程を実行するものである。これにより、砥粒固着部512,532の下端部512a,532aは位置P1で直線状となり、使用する砥粒22の量を低減することができる。
実施例3及び実施例4を
図2に示される砥粒鋸刃52に適用する場合は、砥粒固着部512の下端部512aの高さ位置を位置P1とし、位置P1よりも上方側の砥粒固着部522を形成しない部分に、従来のマスキング処理を施しておけばよい。
この場合も、1次めっき層25或いはめっき体27の形成時に、位置P1よりも下方側には砥粒22が不要となるので、めっき作業において使用する砥粒22の量を低減することができる。
【0059】
特に、
図3に示される切り歯部534を有する砥粒鋸刃53の製造では、切り歯部534において砥粒固着部532を形成しない歯底部533のマスキング処理が難しく、歯底部533に無駄な砥粒22が固着してしまう場合が多い。
実施例3及び実施例4は、砥粒鋸刃53の製造において、砥粒固着部532を形成する部位の下端部532aの高さ位置を位置P1として砥粒固着部532を形成するものである。これにより、歯底部533への砥粒22固着をより確実に防止できる。
【0060】
実施例3及び実施例4において、球状粒子28として実施例2で説明した調整用粒子24を用いることができる。
【0061】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0062】
実施例1及び実施例3におけるめっき層23の厚さは、砥粒22の粒径の半分程度に限定されるものではなく、水洗工程で砥粒22は流れず、間引き用粒子21のみを流して除去できる範囲で自由に設定できる。
実施例2及び実施例4における1次めっき層25の厚さは、水洗工程で砥粒22が流れず、間引き用粒子21及び調整用粒子24を流して除去できる範囲で自由に設定してよい。また、2次めっき層26の厚さも適宜設定してよい。
実施例2及び実施例4において、2次めっき層26を形成せず、1次めっき層25のみにより砥粒22を保持するものであってもよい。
【0063】
砥粒22の材質はダイヤモンド砥粒に限定されない。砥粒22の材質は、CBN(立方晶窒化ホウ素)或いは酸化アルミニウムであってもよい。間引き用粒子21,調整用粒子24,及び球状粒子28の材質も限定されない。
【0064】
鋸工具は実施例1~4で説明した、胴部511~531が帯状の砥粒鋸刃51~53に限定されない。胴部511~531は円盤状であってもよい。鋸工具は、押し又は引きの動作で被加工部材を削る砥粒固着部522を有する工具であれば、全体の外形形状は限定されない。
【0065】
砥粒鋸刃51~53において、砥粒固着部512~532は、母材17である胴部511~531における第1の範囲に形成されており、第1の範囲以外の第2の範囲に、砥粒22は製造工程上の誤固着以外に固着されていない。
【符号の説明】
【0066】
1 電気めっき装置
11 めっき用電源、 12 めっき槽、 13 めっき液
14 電極、 15 攪拌装置、 15a モータ、 16 個槽
16a メッシュ
17 母材(陰電極)
2,2A 混合粒子群
21 間引き用粒子、 22 砥粒
23 めっき層、 23a,23b 凹部
24 調整用粒子
25 1次めっき層、 26 2次めっき層
27 めっき体(めっき層)
28 球状粒子
51 (フラットタイプの)砥粒鋸刃
511 胴部、 512 砥粒固着部、 512a 下端部
52 (繰り返しタイプの)砥粒鋸刃
521 胴部、 522 砥粒固着部、 522a 下端部
53 (歯切りタイプの)砥粒鋸刃
531 胴部、 532 砥粒固着部、 532a 下端部
533 歯底部、 534 切り歯部
Aa,Ab 範囲、 A2,A3 目開き
d 砥粒通過径、 D 粒径比率
PM 非めっき範囲
P1 位置
Sa 間隙
x 砥粒分布度
y 数値
α 間引き混合比、 αa 比率
β 調整混合比、 βa 比率
φa 直径