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特許7169795磁気共鳴イメージング装置および高周波増幅回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置および高周波増幅回路
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221104BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61B5/055 351
G01N24/00 580C
G01N24/00 580Y
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018131384
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020006013
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 治貴
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532136(JP,A)
【文献】特開2018-019776(JP,A)
【文献】特表2010-525855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0195118(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0212193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00-24/14
G01R 33/28-33/64
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器の入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求める算出部と、
前記算出部が求めた前記スリューレートが閾値より小さいと、前記増幅器の出力RFパルスにもとづいて前記入力RFパルスに対して遅延処理を含む補正をしてから当該補正後の前記入力RFパルスを前記増幅器に入力させる一方、前記スリューレートが前記閾値以上であると、前記入力RFパルスを補正せずに前記増幅器に入力させる制御部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記算出部および前記制御部は、
前記増幅器を含む高周波増幅回路とは別体として設けられる、
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記算出部および前記制御部は、
前記入力RFパルスのデジタル波形を生成するシーケンスコントローラから出力された前記デジタル波形をデジタルアナログ変換して前記入力RFパルスを生成して前記高周波増幅回路に出力するRF波形生成部の後段、かつ、前記高周波増幅回路の前段、に設けられた計測回路に含まれる、
請求項記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記算出部および前記制御部は、
前記入力RFパルスのデジタル波形を生成するシーケンスコントローラに含まれる、
請求項記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記算出部および前記制御部は、
前記入力RFパルスのデジタル波形を生成するシーケンスコントローラの後段かつ前記高周波増幅回路の前段に設けられたRF波形生成部であって、前記シーケンスコントローラから出力された前記デジタル波形をデジタルアナログ変換して前記入力RFパルスを生成して前記高周波増幅回路に出力するRF波形生成部、に含まれる、
請求項記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記算出部および前記制御部は、
前記増幅器を含む高周波増幅回路に含まれる、
請求項記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記入力RFパルスを前記出力RFパルスにもとづいて補正した補正RFパルスと、未補正の前記入力RFパルスと、を入力されるとともに、前記制御部による前記スリューレートに応じた制御にもとづいて前記補正RFパルスと前記入力RFパルスのいずれかを出力して前記増幅器に入力する切替部、
をさらに備えた請求項1ないしのいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記算出部が求めた前記スリューレートに応じて前記切替部を制御することにより、前記補正RFパルスと前記入力RFパルスのいずれを前記増幅器に入力するかを前記スリューレートに応じて切り替える、
請求項記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記入力RFパルスの位相およびゲインの少なくとも一方を前記出力RFパルスにもとづいて補正し、補正した前記補正RFパルスを前記切替部に与える補正部、
をさらに備えた請求項またはに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記スリューレートが前記閾値以上であると、前記遅延処理を含む補正を行わず未補正の前記入力RFパルスをそのまま前記増幅器に入力させる、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
増幅器の入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求める算出部と、
前記入力RFパルスに対して前記増幅器の出力RFパルスにもとづいて遅延処理を含む補正した補正RFパルスと、未補正の前記入力RFパルスと、を入力されるとともに、前記補正RFパルスと前記入力RFパルスのいずれかを出力して前記増幅器に入力する切替部と、
前記算出部が求めた前記スリューレートに応じて前記切替部を制御前記スリューレートが閾値より小さいと前記補正RFパルスを前記増幅器に入力させる一方、前記スリューレートが前記閾値以上であると未補正の前記入力RFパルスを前記増幅器に入力させる制御部と、
を備えた高周波増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置および高周波増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置はX線による被ばくの問題がなく、低侵襲に体内の検査を行うことができるため、現在の医療において不可欠なモダリティ装置である。
【0003】
MRI装置は静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生するMR(Magnetic Resonance)信号を再構成して画像を生成する撮像装置である。このMR信号を得るため、高周波パルス(RFパルス)を被検体に印加する。RFパルスは、所定の電力となるように増幅器で増幅されて被検体に照射される。被検体の安全面の観点や撮像画像の精度の観点から、増幅器から出力されるRFパルスには安定性および線形性が求められる。
【0004】
増幅器から出力されるRFパルスの安定性および非線形性を改善する方法として、フィードバック処理が挙げられる。フィードバック処理は、増幅器が実際に出力したRFパルスの少なくとも一部をモニタし、この出力RFパルスにもとづいて、増幅器に入力するRFパルスを補正する処理である。
【0005】
一方、被検体に印加されるRFパルスとして、sincパルスのほか、超短波の矩形波や台形波が利用されるようになってきた。しかし、矩形波や台形波は立ち上りが急峻である(スリューレートが高い)。このため、矩形波や台形波のRFパルスにフィードバック処理を適用すると、増幅器から出力されるRFパルスの立ち上りが悪くなってしまい、画質を悪化させてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2010-525855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、増幅器の入力RFパルスに対してフィードバック処理を行うか否かを、入力RFパルスのスリューレートに応じて切り替えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、算出部と、制御部とを備える。算出部は、増幅器の入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求める。制御部は、増幅器の出力RFパルスにもとづく入力RFパルスの補正を行うか否かを、算出部が求めたスリューレートに応じて制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るMRI装置の一構成例を示すブロック図。
図2】RFパルスとして台形波を用いる場合における、RFパルスの立ち上りへのフィードバック処理による影響の一例を示す説明図。
図3】フィードバック処理を行うための従来の構成について説明するための図。
図4】本実施形態に係るスリューレートに応じたフィードバック処理選択の第1制御方法に係る構成を説明するための図。
図5】本実施形態に係るスリューレートに応じたフィードバック処理選択の第2制御方法に係る構成を説明するための図。
図6】本実施形態に係るスリューレートに応じたフィードバック処理選択の第3制御方法に係る構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置および高周波増幅回路の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るMRI装置1の一構成例を示すブロック図である。
【0012】
MRI装置1は、装置本体(磁石架台ともいう)100、制御キャビネット300、コンソール400、寝台装置500、およびRF(Radio Frequency)コイル20を有する。装置本体100、制御キャビネット300、および寝台装置500は、一般に検査室に設置される。コンソール400は一般に、検査室に隣接する制御室に設置される。
【0013】
装置本体100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、およびWB(Whole Body)コイル12を有する。これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。
【0014】
制御キャビネット300は、傾斜磁場電源31(x軸用31X、y軸用31Y、z軸用31Z)、RF受信器32、RF送信器33、およびシーケンスコントローラ34を有する。
【0015】
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、および入力インターフェース43を有する。コンソール400は、ホスト計算機として機能する。
寝台装置500は、寝台本体50と天板51を有する。
【0016】
装置本体100の静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体P、たとえば患者、が搬送されるボア内に静磁場を発生させる。ボアとは、装置本体100の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石10は、たとえば、超電導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超電導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源(図示せず)から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間、たとえば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。なお、静磁場磁石10は、超電導コイルを内蔵した超電導磁石に限定されず、永久磁石であってもよい。
【0017】
傾斜磁場コイル11は、静磁場磁石10と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定される。傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場電源31から供給される電流により、x軸、y軸、z軸の方向に傾斜磁場を形成する。
【0018】
寝台装置500の寝台本体50は、天板51を上下方向および水平方向に移動することができる。たとえば、寝台本体50は、天板51に載置された被検体を撮像前に所定の高さまで移動させる。また、撮像時には、天板51を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0019】
WBコイル12は、傾斜磁場コイル11の内側に被検体を取り囲むように概略円筒形状に固定されている。WBコイル12は、RF送信器33から伝送されるRFパルスを被検体に向けて送信する。また、水素原子核の励起によって被検体から放出される磁気共鳴信号、即ちMR(Magnetic Resonance)信号を受信する。
【0020】
MRI装置1は、WBコイル12の他、図1に示すように局所コイル20を備える。局所コイル20は、被検体の体表面に近接して載置されるコイルである。局所コイル20には様々な種別があり、たとえば、図1に示すような被検体の胸部や腹部、或いは脚部に設置されるボディコイル(Body Coil)や、被検体の背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)といった種別がある。局所コイル20は受信専用または、送信専用、あるいは、送信と受信を双方行う種別のものであってもよい。局所コイル20は、たとえば、ケーブルを介して天板51と着脱可能に構成されている。
【0021】
RF受信器32は、WBコイル12や局所コイル20からのチャンネル信号、即ち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
【0022】
RF送信器33は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいてRFパルスを生成する。生成したRFパルスはWBコイル12に伝送され、被検体に印加される。RFパルスの印加によって被検体からMR信号が発生する。このMR信号を局所コイル20またはWBコイル12が受信する。RF送信器33の詳細については図3-6を用いて後述する。
【0023】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場電源31、RF受信器32およびRF送信器33をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。スキャンによってRF受信器32から生データを受信すると、シーケンスコントローラ34は、この生データをコンソール400に送信する。シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備している。この処理回路は、たとえば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。シーケンスコントローラ34の詳細については図3-6を用いて後述する。
【0024】
コンソール400は、記憶回路41、ディスプレイ42、入力インターフェース43、および処理回路40を備える。記憶回路41は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。記憶回路41は、各種の情報やデータを記憶する他、処理回路40が具備するプロセッサが実行する各種のプログラムを記憶する。
【0025】
ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の表示デバイスである。入力インターフェース43は、たとえば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル等であり、各種の情報やデータを操作者が入力するための種々のデバイスを含む。
【0026】
処理回路40は、たとえば、CPUや、専用または汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路41に記憶した各種のプログラムを実行することによって、各種の機能を実現する。処理回路40は、FPGAやASIC等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路40は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0027】
ここで、RFパルスとフィードバック処理の関係について説明する。
【0028】
図2は、RFパルスとして台形波を用いる場合における、RFパルスの立ち上りへのフィードバック処理による影響の一例を示す説明図である。また、図3は、フィードバック処理を行うための従来の構成について説明するための図である。
【0029】
従来、図3に示すように、RF送信器33は、たとえばRF波形生成ユニット331とRFアンプ332を備えていた。シーケンスコントローラ34で生成されたRFパルスのデジタル波形は、RF波形生成ユニット331でデジタルアナログ変換されて、RFアンプ332に入力される。
【0030】
RFアンプ332は、補正回路61、増幅器62、方向性結合器63を備える。RFアンプ332に入力されたRFパルス(以下、入力RFパルスという)は、増幅器62で増幅されて出力される。増幅器62から出力されたRFパルス(以下、出力RFパルスという)は、方向性結合器63に入力され、方向性結合器63を介して出力されて、たとえばWBコイル12を介して被検体に印加される。方向性結合器63は、出力RFパルスの一部を取り出して補正回路61に与える。補正回路61は、増幅器62の出力RFパルスの安定性および非線形性を改善するよう、入力RFパルスの位相およびゲインの少なくとも一方を補正(フィードバック処理)したRFパルス(以下、補正RFパルスという)。
【0031】
一方で、最近、UTE(Ultrashort TE)やZTE(Zero TE)など、非常に短いTEの撮像法が利用されるようになってきている。この種の撮像法では、RFパルスとして矩形波や台形波の超短波(たとえばパルス幅が20~40μsec程度など)が用いられる。
【0032】
フィードバック処理では、発振のリスクを避けるためにRFパルスを遅延させることがある。このため、入力RFパルスが矩形波や台形波であると、立ち上りが急峻でありスリューレート(単位時間あたりの電圧変動値[V/sec])が高いために、フィードバック処理による遅延の影響を大きく受けてしまう。
【0033】
したがって、増幅器62の出力RFパルスの波形が所望の波形とは異なってしまい、面積も大きく変わってしまう(図2右上参照)。入力RFパルスのパルス幅が短い場合には、出力RFパルスは立ち上りきる前に立ち下がりを迎えてしまうことになりうる。増幅器62の出力RFパルス波形が所望の波形とは異なってしまうと、スライス特性の悪化やフリップ角不足などをまねいてしまい、画質を悪化させてしまう場合がある。
【0034】
一方で、入力RFパルスとして、たとえばパルス幅が1000μsec程度のsincパルスが用いられる場合、立ち上りが遅延しても画質への影響は無視できる程度である。したがって、この種の入力RFパルスを用いる場合は、増幅器62のばらつき等を考慮し、増幅器62の出力RFパルスの安定性および非線形性を改善するためにフィードバック処理を行うことが好ましい。
【0035】
そこで、本実施形態に係るMRI装置1は、増幅器62の入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求め、求めたスリューレートに応じて、入力RFパルスに対してフィードバック処理を行うか否かを制御する。この制御およびスリューレートの算出は、RF送信器33およびシーケンスコントローラ34の少なくとも一方で行われる。
【0036】
次に、本実施形態に係るRF送信器33およびシーケンスコントローラ34の構成および作用について説明する。
【0037】
図4は、本実施形態に係るスリューレートに応じたフィードバック処理選択の第1制御方法に係る構成を説明するための図である。第1制御方法に係る構成は、従来の構成に対してスリューレート計測回路333およびマルチプレクサ71を付加した構成を有する。
【0038】
スリューレートに応じたフィードバック処理の選択切り替えの第1制御方法に係る構成において、RF送信器33は、RF波形生成ユニット331と、RFアンプ332と、スリューレート計測回路333とを有する。
【0039】
RF波形生成ユニット331は、RFアンプ332とは別体として設けられるとともに、シーケンスコントローラ34の後段かつスリューレート計測回路333の前段に設けられる。RF波形生成ユニット331は、シーケンスコントローラ34で生成されたデジタル波形をデジタルアナログ変換して入力RFパルスを生成し、スリューレート計測回路333に与える。RF波形生成ユニット331は、RF波形生成部の一例である。
【0040】
RFアンプ332は、図3に示した従来のRFアンプ332の構成に加えてさらに、マルチプレクサ71を有する。RFアンプ332は、高周波増幅回路の一例である。
【0041】
マルチプレクサ71は、入力RFパルスと、補正回路61によりフィードバック処理された補正RFパルスと、を入力されるとともに、スリューレート計測回路333から出力される制御信号に応じて入力RFパルスと補正RFパルスのいずれかを出力して増幅器62に入力する。補正回路61は、補正部の一例である。また、マルチプレクサ71は、切替部の一例である。
【0042】
図4に示す第1制御方法に係る構成において、スリューレート計測回路333は、RFアンプ332とは別体として設けられるとともに、RF波形生成ユニット331の後段かつRFアンプ332の前段に設けられる。また、スリューレート計測回路333は、増幅器62の入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求める算出部として機能するとともに、入力RFパルスにフィードバック処理を行うか否かを入力RFパルスのスリューレートに応じて制御する制御部として機能する。スリューレート計測回路333は、計測回路の一例であるとともに、計測回路が含む算出部および制御部の一例である。
【0043】
具体的には、スリューレート計測回路333は、RF波形生成ユニット331から入力RFパルスが入力されるごとに、リアルタイムに入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求める。そして、スリューレート計測回路333は、スリューレートが閾値より小さいと、制御信号(以下、フィードバック制御信号という)をマルチプレクサ71に与えて補正RFパルスを出力するよう指示する。また、スリューレートが閾値以上であると、入力RFパルスを補正せずにそのまま出力して増幅器62に入力させるよう指示するフィードバック制御信号をマルチプレクサ71に与える。
【0044】
図4に示す第1制御方法に係る構成によれば、入力RFパルスに対してフィードバック処理を行うか否かを、入力RFパルスのスリューレートに応じて切り替えることができる。このため、たとえばUTEやZTEなどの撮像シーケンスであって用いられる入力RFパルスが超短波の矩形波や台形波である場合には、フィードバック処理を行わない未補正の入力RFパルスを増幅器62に入力することができるため、立ち上り波形の悪化を防ぐことができる。また、入力RFパルスがsincパルスなどのスリューレートの低い波形を有する場合は、フィードバック処理後の補正RFパルスを増幅器62に入力することができるため、増幅器62の出力RFパルスの安定性および非線形性を確実に改善することができる。
【0045】
なお、図4に示す第1制御方法に係る構成ではスリューレート計測回路333がRFアンプ332とは別体として設けられる場合の例を示したが、その変形例として、スリューレート計測回路333をRFアンプ332に設けてもよい。この場合、シーケンスコントローラ34およびRF波形生成ユニット331を従来の構成のまま変更することなく、RFアンプ332を置き替えるだけで図4に示す構成と同等の構成を実現することができる。
【0046】
図5は、本実施形態に係るスリューレートに応じたフィードバック処理選択の第2制御方法に係る構成を説明するための図である。第2制御方法に係る構成は、スリューレート計測回路333を備えず、スリューレート計測回路333の算出部および制御部の機能をシーケンスコントローラ34が有する点で第1制御方法に係る構成と異なる。他の構成および作用については図4に示す第1制御方法に係る構成と実質的に異ならないため同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図5に示す第2制御方法に係る構成において、シーケンスコントローラ34は、デジタル波形を生成するほか、さらに上記の算出部および制御部としても機能する。具体的には、シーケンスコントローラ34は、入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求め、スリューレートが閾値より小さいと、制御信号(以下、フィードバック制御信号という)をマルチプレクサ71に与えて補正RFパルスを出力するよう指示する。また、スリューレートが閾値以上であると、入力RFパルスを補正せずにそのまま出力して増幅器62に入力させるよう指示するフィードバック制御信号をマルチプレクサ71に与える。
【0048】
シーケンスコントローラ34は、撮像シーケンスの情報を取得可能である。このため、撮像シーケンスに用いられる入力RFパルスの波形情報も、あらかじめ取得可能である場合がある。この場合は、シーケンスコントローラ34は、入力RFパルスの波形からリアルタイムに直接スリューレートを求めるのではなく、撮像シーケンスの情報にもとづいて入力RFパルスのスリューレートを取得してもよい。
【0049】
図5に示す第2制御方法に係る構成によっても、図4に示す第1制御方法に係る構成と同様の効果を奏する。また、図5に示す第2制御方法に係る構成は、図4に示す第1制御方法に係る構成よりもスリューレート計測回路333がないぶん簡素な構成といえる。
【0050】
図6は、本実施形態に係るスリューレートに応じたフィードバック処理選択の第3制御方法に係る構成を説明するための図である。第3制御方法に係る構成は、スリューレート計測回路333を備えず、スリューレート計測回路333の算出部および制御部の機能をRF波形生成ユニット331のFPGA81が実現する点で、主に第1制御方法に係る構成と異なる。
【0051】
図6に示す第3制御方法に係る構成では、RFアンプ332は増幅器62および方向性結合器63を有する。一方、本構成では、補正回路61およびマルチプレクサ71は、RF波形生成ユニット331が有する。
【0052】
また、図6に示す第3制御方法に係る構成では、図5に示す第2制御方法に係る構成と同様に、RF波形生成ユニット331は、RFアンプ332とは別体として設けられるとともに、シーケンスコントローラ34の後段かつRFアンプ332の前段に設けられる。本構成では、図6に示すように、RF波形生成ユニット331は、補正回路61、マルチプレクサ71を有するほか、FPGA81およびDAC82を有する。
【0053】
RF波形生成ユニット331のFPGA81は、マルチプレクサ71から入力されたデジタル波形にもとづいて入力RFパルスの立ち上りのスリューレートを求め、求めたスリューレートに応じてフィードバック制御信号を出力する。DAC82はシーケンスコントローラ34で生成されたデジタル波形をデジタルアナログ変換して入力RFパルスを生成する。
【0054】
図6に示す第3制御方法に係る構成によっても、図4に示す第1制御方法に係る構成と同様の効果を奏する。また、図6に示す第3制御方法に係る構成は、図4に示す第1制御方法に係る構成および図5に示す第2制御方法に係る構成に比べ、RFアンプ332にマルチプレクサ71を付加する必要がなく、汎用的なRFアンプ332として高周波増幅回路を利用することができる。
【0055】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、増幅器62の入力RFパルスに対してフィードバック処理を行うか否かを、入力RFパルスのスリューレートに応じて切り替えることができる。
【0056】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0057】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0058】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
33 RF送信器
34 シーケンスコントローラ
61 補正回路
62 増幅器
71 マルチプレクサ
81 FPGA
331 RF波形生成ユニット
332 RFアンプ
333 スリューレート計測回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6