IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ライフスタイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図1
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図2
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図3
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図4
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図5
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図6
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図7
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図8
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図9
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図10
  • 特許-微細気泡発生器、及び家電機器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】微細気泡発生器、及び家電機器
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/40 20220101AFI20221104BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20221104BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20221104BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20221104BHJP
   D06F 39/00 20200101ALI20221104BHJP
【FI】
B01F25/40
B01F23/20
B01F23/2373
D06F39/08 301B
D06F39/00 Z
D06F39/08 301A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018140242
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020015013
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】内山 具典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-099655(JP,A)
【文献】特開2015-174055(JP,A)
【文献】特開2006-167175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00ー25/90
D06F 39/08
D06F 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が通過可能な第1流路と、前記第1流路の断面積を局所的に縮小することで前記第1流路を通過する液体中に微細気泡を発生させる第1衝突部と、を有する第1流路部材と、
前記第1流路部材全体を内部に収容するとともに、前記第1流路部材の下流側に設けられ液体が通過可能な第2流路と、前記第2流路の断面積を局所的に縮小することで前記第2流路を通過する液体中に微細気泡を発生させる第2衝突部と、を有する第2流路部材と、
を備え
全体として段付きの円筒形状に形成されている微細気泡発生器。
【請求項2】
前記第2流路の内径は、前記第1流路のうち前記第1衝突部が設けられている部分の内径よりも大きい、
請求項1に記載の微細気泡発生器。
【請求項3】
前記第2衝突部における液体の通過可能な領域の面積は、前記第1衝突部における液体の通過可能な領域の面積よりも大きい、
請求項1又は2に記載の微細気泡発生器。
【請求項4】
前記第1衝突部は、前記第1流路内の内周面から前記第1流路の径方向の中心へ向かって突出した少なくとも1つの第1突出部を有し、
前記第2衝突部は、前記第2流路内の内周面から前記第2流路の径方向の中心へ向かって突出した少なくとも1つの第2突出部を有し、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記第1流路及び前記第2流路の周方向へ向かってずらして配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の微細気泡発生器。
【請求項5】
前記第1流路又は前記第2流路の内部と外部とを連通し、前記第1流路又は前記第2流路内に外気を導入可能な外気導入経路、を更に備えている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の微細気泡発生器。
【請求項6】
前記外気導入経路は、液体が衝突部を通過する際に負圧となる負圧領域に接続されている、
請求項5に記載の微細気泡発生器。
【請求項7】
水を使用する家電機器であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の微細気泡発生器を備えた家電機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、微細気泡発生器、及び家電機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファインバブルやウルトラファインバブル、又はマイクロバブルやナノバブルと称される直径が数十nm~数μmサイズの微細気泡が注目されてきている。このような微細気泡を含んだ水を、例えば洗剤等を使用する洗浄作業に用いることで、洗剤の分散性や洗浄対象物への浸透性を高めることができ、洗浄効果を向上させることができる。
【0003】
このような微細気泡を発生させる手段として、流体力学のいわゆるベンチュリ効果を利用した微細気泡発生器が知られている。このような微細気泡発生器は、水等の液体が流れる流路の断面積を局所的に縮小することでその流路を通る液体を急激に減圧させ、これにより液体中の溶存空気を析出させて微細気泡を発生させることができる。しかしながら、微細気泡の原料は水中に溶け込んだ残存空気であるため、微細気泡の生成濃度には限りがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-40448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、微細気泡の生成効率の向上を図ることができる微細気泡発生器、及び微細気泡発生器を備えた家電機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の微細気泡発生器は、液体が通過可能な第1流路と、前記第1流路の断面積を局所的に縮小することで前記第1流路を通過する液体中に微細気泡を発生させる第1衝突部と、を有する第1流路部材と、前記第1流路部材全体を内部に収容するとともに、前記第1流路部材の下流側に設けられ液体が通過可能な第2流路と、前記第2流路の断面積を局所的に縮小することで前記第2流路を通過する液体中に微細気泡を発生させる第2衝突部と、を有する第2流路部材と、を備え、全体として段付きの円筒形状に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態について、微細気泡発生器の適用対象の一例であるドラム式洗濯機を示す図
図2】第1実施形態について、微細気泡発生器の適用対象の一例である縦型洗濯機を示す図
図3】第1実施形態について、微細気泡発生器が注水ケースに組み込まれた状態を示す部分断面図
図4】第1実施形態による微細気泡発生器を示す断面図
図5】第1実施形態について、図4のX5-X5線に沿って切断した微細気泡発生器を拡大して示す断面図
図6】第1実施形態について、図4のX6-X6線に沿って切断した微細気泡発生器を拡大して示す断面図
図7】第2実施形態による微細気泡発生器を示す断面図
図8】第2実施形態について、図7のX8-X8線に沿って切断した微細気泡発生器を拡大して示す断面図
図9】第3実施形態による微細気泡発生器を示す断面図
図10】第3実施形態について、図9のX10-X10線に沿って切断した微細気泡発生器を拡大して示す断面図
図11】第3実施形態について、図10のA-A線及びB-B線に沿って切断した断面における圧力分布及び流速ベクトルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態による微細気泡発生器について、図1図6を参照して説明する。図1及び図2は、本実施形態による微細気泡発生器60を、例えば洗濯機10、20のような水を使用する家電機器に適用した例である。
【0010】
図1に示す洗濯機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、扉14、モータ15、及び排水弁16を備えている。なお、図1の左側を洗濯機10の前側とし、図1の右側を洗濯機10の後側とする。また、洗濯機10の設置面側つまり鉛直下側を、洗濯機10の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を、洗濯機10の上側とする。洗濯機10は、回転槽13の回転軸が水平又は後方へ向かって下降傾斜したいわゆる横軸型のドラム式洗濯機である。この場合、水槽12及び回転槽13は、洗濯物を収納する洗濯槽として機能する。
【0011】
図2に示す洗濯機20は、外箱21、水槽22、回転槽23、内蓋241、外蓋242、モータ25、及び排水弁26を備えている。なお、図2の左側を洗濯機20の前側とし、図2の右側を洗濯機20の後側とする。また、洗濯機20の設置面側つまり鉛直下側を、洗濯機20の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を、洗濯機20の上側とする。洗濯機20は、回転槽23の回転軸が鉛直方向を向いた縦型洗濯機である。この場合、水槽22及び回転槽23は、洗濯物を収納する洗濯槽として機能する。
【0012】
図1及び図2に示すように、洗濯機10、20は、それぞれ注水装置30を備えている。注水装置30は、それぞれ外箱11、21内の上後部に設けられている。注水装置30は、図1及び図2に示すように、給水ホース100を介して、例えば図示しない水道の蛇口など外部の水源に接続される。
【0013】
注水装置30は、図1及び図2に示すように、注水ホース301、注水ケース40、電磁給水弁50、及び微細気泡発生器60を有している。注水ケース40は、全体として容器状に形成されており、内部に洗剤や柔軟剤等を収容可能に構成されている。注水ケース40は、図3にその一部を示すように、ケース本体41、吐出空間42、微細気泡微細気泡発生器収容部43、及び連通部44を有している。
【0014】
ケース本体41は、中空の容器状に形成されて、注水ケース40の外側形状を構成している。詳細は図示しないが、ケース本体41内には、洗剤を収納する洗剤ケースや柔軟剤を収納する柔軟剤ケースが出し引き可能に設けられている。吐出空間42は、ケース本体41の内部に形成された空間であり、電磁給水弁50から供給された水の吐出を受ける部分である。
【0015】
微細気泡発生器収容部43は、ケース本体41に微細気泡発生器60を収容し取り付けるための空間であり、外部に連通している。微細気泡発生器収容部43は、例えば内径が異なる複数の円筒形状によって、いわゆる段付きの円筒形状に形成されている。本実施形態の場合、微細気泡発生器収容部43の内径は、ケース本体41の外側からケース本体41の内側へむかうにつれて段階的に小さくなっている。
【0016】
連通部44は、吐出空間42と微細気泡発生器収容部43との間を例えば円筒形状に貫いて形成されている。連通部44によって、吐出空間42と微細気泡発生器収容部43との間は連通している。
【0017】
電磁給水弁50は、図1及び図2に示すように、外部の水源と注水ケース40との間、すなわち給水ホース100と注水ケース40との間に設けられている。注水ホース301は、注水ケース40と、水槽12、22内とを接続している。電磁給水弁50は、外部の水源から注水ケース40を介して水槽12、22内に給水する給水経路を開閉するものであり、図示しない洗濯機10、20の制御装置からの制御信号によって開閉動作が制御される。
【0018】
電磁給水弁50が開状態になると、外部の水源からの水は、電磁給水弁50、注水ケース40、及び注水ホース301を介して、水槽12、22内に注水される。その際、注水ケース40内に洗剤や柔軟剤が収容されていれば、その洗剤や柔軟剤は、注水ケース40内を通過する水によって水槽12、22内に流し落とされる。そして、電磁給水弁50が閉状態になると水槽12、22内に対する注水が停止される。
【0019】
電磁給水弁50は、図3に示すように、流入部51と吐出部52とを有している。流入部51は、図1又は図2に示すように、給水ホース100に接続されている。吐出部52は、図3に示すように、注水ケース40に接続されている。また、吐出部52は、例えばフランジ部521を有している。フランジ部521には、ねじ等の締結部材53が通される。そして、この締結部材53は、ケース本体41の壁部にねじ込まれる。これにより、吐出部52は、ケース本体41に取り付けられる。
【0020】
微細気泡発生器60は、水等の液体が微細気泡発生器60の内部を通過する際に、その液体の圧力を急激に減圧することで、その液体中に溶存している気体例えば空気を析出させて微細気泡を発生させるものである。本実施形態の微細気泡発生器60は、水道圧を印加することによって、直径100μm以下の気泡を含む微細気泡いわゆるファインバブルを発生させることができる。更に本実施形態の微細気泡発生器60は、粒径がナノオーダーのウルトラファインバブルを含むファインバブルを発生させることができる。なお、本実施形態では、粒径が100μm以下の気泡をファインバブルと称し、粒径が1μm以下つまりナノオーダーの気泡をウルトラファインバブルと称する。
【0021】
図3の例において、電磁給水弁50の吐出部52から吐出された水は、微細気泡発生器60内を図3の右側から左側へ向かって流れる。この場合、図3に示された微細気泡発生器60について見ると、図3の紙面右側が微細気泡発生器60の上流側となり、図3の紙面左側が微細気泡発生器60の下流側となる。
【0022】
微細気泡発生器60は、図4に示すように、全体として段付きの円筒形状に形成されている。図3に示すように、微細気泡発生器60は、注水ケース40の微細気泡発生器収容部43内に収容されている。この場合、微細気泡発生器収容部43の内面と微細気泡発生器60の外面との間には、ケース側シール部材45が設けられている。ケース側シール部材45は、例えばゴム等の弾性部材で構成されたOリングである。
【0023】
ケース側シール部材45は、微細気泡発生器収容部43の内面と微細気泡発生器60の外面との間を水密に維持する。これにより、ケース側シール部材45は、例えば注水ケース40の吐出空間42に充満した液体が、微細気泡発生器収容部43の内面と微細気泡発生器60の外面との隙間を通って注水ケース40外へ逆流することを防いでいる。なお、ケース側シール部材45は、例えば注水ケース40又は微細気泡発生器60と一体に構成しても良い。
【0024】
微細気泡発生器60は、樹脂製であって、図4に示すように、別体に構成された第1流路部材70と第2流路部材80と組み合わせて構成されている。第1流路部材70は、フランジ部71を一体に有し、全体として段付きの円筒形状に形成されている。
【0025】
また、第1流路部材70は、第1流路72と第1衝突部73とを有している。第1流路72は、液体が通過可能な流路であって、第1流路部材70を一方向に貫いて形成されている。第1流路72は、絞り部721とストレート部722とを含んで構成されている。絞り部721は、第1流路部材70の上流側から下流側つまり第1衝突部73側へ向かって内径が縮小する形状に形成されている。すなわち、絞り部721は、流路の断面積つまり液体の通過可能な領域の面積が上流側から下流側へ向かって連続的に徐々に減少するようないわゆる円錐形のテーパ管状に形成されている。
【0026】
ストレート部722は、絞り部721の下流側に設けられている。ストレート部722は、内径が変化しない、すなわち流路の断面積つまり液体の通過可能な領域の面積が変化しない円筒形、いわゆるストレート管状に形成されている。
【0027】
第1衝突部73は、第1流路72のストレート部722内に設けられており、流路であるストレート部722の断面積を局所的に縮小することでストレート部722を通過する液体中に溶存している空気を微細気泡として析出させる。第1衝突部73は、絞り部721及びストレート部722を構成する部材つまり第1流路部材70に一体に形成されている。本実施形態の場合、第1衝突部73は、第1流路72の下流端部つまりストレート部722の下流端部に設けられている。なお、第1衝突部73は、ストレート部722の途中部分に設けられていても良い。
【0028】
第1衝突部73は、少なくとも1つの第1突出部731を有して構成されている。本実施形態の場合、第1衝突部73は、図5に示すように、複数の第1突出部731、この場合、4本の第1突出部731によって構成されている。各第1突出部731は、ストレート部722の断面の周方向に向かって相互に等間隔に離間した状態で配置されている。
【0029】
各第1突出部731は、ストレート部722の内周面からストレート部722の径方向の中心へ向かって突出した棒状又は板状に形成されている。本実施形態において、各第1突出部731は、ストレート部722の径方向の中心へ向かって先端部が尖った錐状に形成されている。そして、各第1突出部731の先端部分は、微細気泡の発生に必要な所定のギャップが確保されている。
【0030】
ストレート部722に流入した液体は、第1流路72のストレート部722において第1突出部731が設けられていない箇所を通る。この場合、図5に示すように、ストレート部722を断面方向に見た場合において第1突出部731が設けられていない隙間部分、つまりストレート部722に流入した液体が通過する部分を、第1通過領域732と称する。
【0031】
第2流路部材80は、第1流路部材70のうち少なくとも第1衝突部73部分を内部に収容している。本実施形態の場合、第2流路部材80は、第1流路部材70全体を内部に収容している。なお、第1流路部材70の一部分、例えばフランジ部71が、第2流路部材80の第1流路部材収容部82から外部に突出し、電磁給水弁50の吐出部52が第1流路部材70に直接挿入される構成であっても良い。
【0032】
図4に示すように、第2流路部材80は、吐出部挿入部81、第1流路部材収容部82、第2流路83、及び第2衝突部84を有している。吐出部挿入部81、第1流路部材収容部82、及び第2流路83は、第2流路部材80内に形成されて相互に連通している。本実施形態の場合、吐出部挿入部81、第1流路部材収容部82、及び第2流路83は、上流側から下流側つまり第2衝突部84側へ向かって内径が小さくなる段付きの円筒形状に形成されている。
【0033】
吐出部挿入部81は、第2流路部材80における上流側に設けられている。吐出部挿入部81には、図3に示すように、電磁給水弁50の吐出部52の先端部分が挿入される。吐出部挿入部81の内面との吐出部52の外面との間には、給水弁用シール部材54が設けられている。給水弁用シール部材54は、例えばゴム等の弾性部材で構成されたOリングである。
【0034】
給水弁用シール部材54は、吐出部挿入部81の内面との吐出部52の外面との間を水密に維持する。これにより、給水弁用シール部材54は、吐出部52から微細気泡発生器60に供給された液体が、吐出部挿入部81の内面との吐出部52の外面との隙間から漏れ出すことを防いでいる。なお、給水弁用シール部材54は、例えば微細気泡発生器60又は吐出部52と一体に構成しても良い。
【0035】
図4に示すように、第1流路部材収容部82は、吐出部挿入部81の下流側でかつ第2流路83及び第2衝突部84の上流側に設けられている。第1流路部材70は、第2流路部材80の内部に形成された第1流路部材収容部82に収容されている。
【0036】
第1流路部材収容部82の内面と第1流路部材70の外面との間には、発生器内シール部材61が設けられている。発生器内シール部材61は、例えばゴム等の弾性部材で構成されたOリングである。発生器内シール部材61は、第1流路部材収容部82の内面と第1流路部材70の外面との間を水密に維持する。これにより、発生器内シール部材61は、第1流路部材70に供給された液体が、第1流路部材70の外側に回り込んで第1衝突部73を通らずに第1衝突部73の下流側に至ることを防いでいる。また、発生器内シール部材61は、第1流路部材70から吐出された液体が第1流路部材収容部82の内面と第1流路部材70の外面との隙間を通って逆流することを防いでいる。なお、発生器内シール部材61は、例えば第1流路部材70又は第2流路部材80と一体に構成しても良い。
【0037】
第2流路83は、液体が通過可能な流路であって、吐出部挿入部81の下流側及び第1流路部材収容部82の下流側に設けられている。本実施形態の場合、第2流路83の内径は、第1流路部材70において第1衝突部73が設けられている部分の内径、この場合、ストレート部722の内径よりも大きい。
【0038】
第2衝突部84は、第2流路83内に設けられており、第2流路83の断面積を局所的に縮小することで、第2流路83を通過する液体中に溶存している空気、すなわち第1流路部材70の第1衝突部73で析出されなかった残りの溶存空気を微細気泡として析出させる。また、第2衝突部84は、第1衝突部73で発生した気泡のうち比較的サイズが大きいものを破砕して微細気泡化させる。
【0039】
第2衝突部84は、第2流路83を構成する部材つまり第2流路部材80に一体に形成されている。本実施形態の場合、第2衝突部84は、第2流路83の下流端部に設けられている。なお、第2衝突部84は、第2流路83の途中部分に設けられていても良い。
【0040】
第2衝突部84は、少なくとも1つの第2突出部841を有して構成されている。本実施形態の場合、第2衝突部84は、図6に示すように、第1衝突部73と同様に複数の第2突出部841、この場合、4本の第2突出部841によって構成されている。各第2突出部841は、第2流路83の断面の周方向に向かって相互に等間隔に離間した状態で配置されている。
【0041】
各第2突出部841は、第1突出部731と同様に、第2流路83の内周面から第2流路83の径方向の中心へ向かって突出した棒状又は板状に形成されている。本実施形態において、各第2突出部841は、第2流路83の径方向の中心へ向かって先端部が尖った錐状に形成されている。そして、各第2突出部841の先端部分は、微細気泡の発生に必要な所定のギャップが確保されている。
【0042】
第2流路83に流入した液体は、第2流路83において第2突出部841が設けられていない箇所を通る。この場合、図6に示すように、第2流路83を断面方向に見た場合において第2突出部841が設けられていない隙間部分、つまり第2流路83に流入した液体が通過する部分を、第2通過領域842と称する。この場合、図6に示す第2通過領域842の面積つまり第2衝突部84における液体の通過可能な領域の面積は、図5に示す第1通過領域732の面積つまり第1衝突部73における液体の通過可能な領域の面積よりも大きい。
【0043】
また、本実施形態の場合、第1衝突部73の各第1突出部731と、第2衝突部84の各第2突出部841とは、第1流路72及び第2流路83の周方向へ向かってずれている。この場合、第1衝突部73及び第2衝突部84は、それぞれ4つの第1突出部731及び第2突出部841を有している。そして、各第1突出部731及び第2突出部841は、第1流路72及び第2流路83の周方向へ向かって45°ずつ、ずらして配置されている。
【0044】
なお、第1突出部731と第2突出部841とをずらす角度は、45°に限られない。また、第1突出部731と第2突出部841との数は、同一である必要はなく、異なっていても良い。また、第1突出部731と第2突出部841との位置合わせは、種々の方法が考えられる。例えば第1流路部材70のフランジ部71と、第2流路部材80の第1流路部材収容部82とに、それぞれ対応するDカット形状を設けることで、第1突出部731と第2突出部841との位置合わせを行うようにしても良い。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、微細気泡発生器60は、第1流路部材70と、第2流路部材80と、を備える。第1流路部材70は、液体が通過可能な第1流路72と、第1流路72の断面積を局所的に縮小することで第1流路72を通過する液体中に微細気泡を発生させる第1衝突部73と、を有する。第2流路部材80は、内部に第1流路部材70を収容する。第2流路部材80は、第1流路部材70の下流側に設けられ液体が通過可能な第2流路83と、第2流路83の断面積を局所的に縮小することで第2流路83を通過する液体中に微細気泡を発生させる第2衝突部84と、を有する。
【0046】
すなわち、本実施形態において、微細気泡発生器60は、分割された第1流路部材70と第2流路部材80とを組み合させて構成されている。そして、微細気泡を発生させるための衝突部73、84は、第1流路部材70と第2流路部材80とのそれぞれに設けられている。
【0047】
この構成において、電磁給水弁50が動作して微細気泡発生器60の上流端部つまり第1流路部材70に水道圧が印加されると、まず、第1流路部材70の絞り部721からストレート部722にかけて水道水が流れる。水道水は、気体として主に空気が溶け込んだ気体溶解液体である。第1流路部材70内を通過する水は、絞り部721を通過する際に絞られて徐々に流速が増加していく。
【0048】
そして、高速流となった水が第1衝突部73に衝突し通過すると、その水の圧力が急激に低下する。その急激な圧力低下によって生じるキャビテーション効果により、水に溶存している空気が沸騰状態となって微細気泡として析出する。これにより、微細気泡発生器60は、まず第1流路部材70を通過する水の中に、いわゆるウルトラファインバブルやファインバブルを含む主に粒径が50μm以下の微細気泡を発生させる。このとき、水中には、ウルトラファインバブルやファインバブルに細分化されなかったミリオーダーの比較的大きな気泡も発生する。
【0049】
次に、第1流路部材70を通過した水は、第2流路部材80の第2流路83に流入した後、第2衝突部84に衝突し通過する。これにより、第1流路部材70の第1衝突部73では細分化しきれなかったミリオーダーの比較的大きな気泡は、第2衝突部84に衝突することで粉砕されて、ウルトラファインバブルやファインバブルを含む主に粒径が50μm以下の微細気泡に細分化される。
【0050】
このように微細気泡発生器60は、第1衝突部73で細分化しきれなかった比較的大きな粒径の気泡を、第2衝突部84で細分化することができる。これにより、微細気泡発生器60は、第1流路部材70と第2流路部材80との2段階で微細気泡を発生させることができるため、微細気泡の生成効率が向上し、濃度の高い微細気泡水を生成することができる。
【0051】
また、第2衝突部84が設けられた第2流路83の内径は、第1流路72のうち第1衝突部73が設けられている部分の内径つまりストレート部722の内径よりも大きい。これによれば、第1衝突部73を通過した水は、第2流路83内に流入すると断面積が拡大されて流速が低下するため、第2流路83内の静圧が高くなる。すると、第1流路部材70で析出された気泡は不安定となり、乱流が生じて第2衝突部84に衝突し易くなる。これにより、水中の気泡が第2衝突部84に衝突し易くなることで、第1流路部材70の第1衝突部73では細分化しきれなかったミリオーダーの比較的大きな気泡を、第2衝突部84で更に細分化され易くすることができる。その結果、微細気泡の生成効率が更に向上し、より濃度の高い微細気泡水を生成することができる。
【0052】
また、第2衝突部84における液体の通過可能な領域842の面積は、第1衝突部73における液体の通過可能な領域732の面積よりも大きい。これによれば、第2流路部材80から吐出される水の流量を極力多く確保することができるため、微細気泡発生器60から吐出される水の流量低下を抑制することができる。その結果、第1衝突部73と第2衝突部84との2段階で微細気泡を析出させる構成であっても、吐出水量の低下を抑制して水の吐出流量を比較的多く確保することができる。
【0053】
また、第1衝突部73は、第1流路72内の内周面から第1流路72の径方向の中心へ向かって突出した少なくとも1つの第1突出部731を含んで構成されている。第2衝突部84は、第2流路83内の内周面から第2流路83の径方向の中心へ向かって突出した少なくとも1つの第2突出部841を含んで構成されている。そして、第1突出部731と第2突出部841とは、第1流路72及び第2流路83の周方向へ向かってずらして配置されている。
【0054】
これによれば、第1衝突部73及び第2衝突部84を通過する水に回転力を与えて乱流を発生させ易くすることで、水中の比較的大きな気泡が第2衝突部84に更に衝突し易くなる。これにより微細気泡発生器60は、第1衝突部73で細分化しきれなかった比較的大きな粒径の気泡を、より効率良く第2衝突部84で細分化することができる。このように、微細気泡発生器60は、第1流路部材70と第2流路部材80との2段階で微細気泡を発生させることができるため、微細気泡の生成効率が向上し、濃度の高い微細気泡水を効率良く生成することができる。
【0055】
更に、微細気泡発生器60を採用した洗濯機10、20は、微細気泡発生器60の作用により、注水ケース40を通して水槽12、22内に注水される水にウルトラファインバブルを含む微細気泡を含ませることができる。ここで、洗剤の主成分である陰イオン(アニオン)界面活性剤及び微細気泡水中の微細気泡は、それぞれ個別でも汚れを落とす洗浄能力を有している。しかし、例えば微細気泡を含む水に洗剤を溶解させるなどして濃縮洗剤水に微細気泡を付与すると、疎水相互作用と称される分子間に働く引力的相互作用によって洗剤中の界面活性剤と微細気泡が吸着し、これにより界面活性剤の凝集つまりミセルがほぐれて水中に分散し易くなる。その結果、界面活性剤が汚れと短時間で反応し易い状態となって洗浄能力が向上する。
【0056】
すなわち、微細気泡を含む水に洗剤を溶解させて洗濯液を生成することで、洗剤中の界面活性剤と微細気泡との相互作用が働き、その結果、水道水に洗剤を溶かしただけの単なる洗濯液と比べて、洗浄能力を格段に高めることができる。また、汚れが乳化されて水中に分散し易くなるため、衣類に汚れが再付着することを防ぐ効果も期待できる。このような理由により、本実施形態の洗濯液は、通常の水道水に洗剤を溶かした洗濯液よりも洗浄能力が高いものとなっている。その結果、洗濯機10、20は、高い洗浄能力を発揮することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。
本実施形態の微細気泡発生器60において、第2流路部材80は、上記第1実施形態の第2流路83及び第2衝突部84に換えて、第2流路85及び第2衝突部86を有している。第2流路85の内径は、第1流路72の内径と同等または第1流路72の内径以下に設定されている。
【0058】
第2衝突部86は、上記第1実施形態の第2衝突部84と同様に、少なくとも1つ、この場合4つの第2突出部861を有している。そして、各第2突出部861の隙間には、図8に示すように、第2流路85を通る液体が通過可能な第2通過領域862が形成されている。この場合、第2衝突部86による第2通過領域862の面積は、第1衝突部73による第1通過領域732の面積よりも小さい。
【0059】
これによれば、第1流路部材70を通過した液体は、第1流路72の内径以下の内径に形成された第2流路85を通過し、第1通過領域732よりも狭い第2通過領域862を通過することで、第1衝突部73を通過したときの速い流速が維持される。これにより、第2流路85に流入した液体は、高速な流速を維持したまま第2衝突部86に衝突するため、乱流が発生し易くなる。このように、本実施形態によっても、第2流路部材80を通過する液体に乱流が更に発生し易くなって微細気泡の発生が促進され、その結果、微細気泡の生成効率が向上して濃度の高い微細気泡水を生成することができる。
【0060】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。
本実施形態の微細気泡発生器60は、図9及び図10に示すように、外気導入経路62を備えている。外気導入経路62は、微細気泡発生器60の内部と外部とを通気可能に連通する経路である。本実施形態の場合、外気導入経路62は、第1流路部材70及び第2流路部材80を貫いて形成されており、第1流路部材の第1流路72内に接続されている。この場合、外気導入経路62は、図10にも示すように、隣接する2つの第1突出部731の間に接続されている。
【0061】
これによれば、液体が微細気泡発生器60内を通過する際、液体の流れによる負圧によって、微細気泡発生器60の外部の空気が外気導入経路62を通って微細気泡発生器60内に引き込まれる。これにより、微細気泡発生器60は、予め液体中に溶存していた溶存空気だけでなく、外部からも空気を導入することで、微細気泡の生成効率を更に向上させることができる。その結果、本実施形態によっても、微細気泡の生成効率が向上して濃度の高い微細気泡水を生成することができる。
【0062】
ここで、衝突部73周辺における圧力及び流速の分布、つまり通過領域732を通過する液体の圧力及び流速の分布を見ると、図11に示すように、衝突部73における径方向の中心付近つまり突出部731の先端付近よりも、衝突部73の径方向の外側つまり突出部731の付け根部分の方が、低圧で流速も速い。
【0063】
そこで、本実施形態において、外気導入経路62は、図10に示すように、第1流路72の周方向に隣接する2つの突出部731の間、つまり突出部731の付け根部分であって第1流路72の内周面に接続されている。すなわち、外気導入経路62は、液体が衝突部73を液体が通過する際に負圧となる負圧領域に接続されている。
【0064】
これによれば、微細気泡発生器60の空気を、第1流路72及び第2流路83のうち圧力がより低くかつ流速がより速い箇所、つまり隣接する突出部731間であって突出部731の付け根部分に引き込むことができる。これにより、外部から引き込んだ空気による気泡を、第1流路72及び第2流路83のうち圧力がより低くかつ流速がより速い箇所に曝して、その気泡の更に効率良く微細化させることができる。その結果、微細気泡の生成効率が更に向上してより濃度の高い微細気泡水を生成することができる。また、外気導入経路62は、負圧領域に接続されているため、液体の逆流を防ぐことができる。
【0065】
なお、上記説明した各実施形態の微細気泡発生器60は、上述した洗濯機10、20以外にも、例えば食器洗浄機や温水便座など水道水を使用して洗浄する家電機器に適用することができる。水道水を使用する家電機器に微細気泡発生器60を適用することで、洗浄用の水道水を微細気泡が高濃度に含まれた微細気泡水にし、微細気泡による洗浄効果を付加させることができる。その結果、家電機器の付加価値を向上させることができる。
【0066】
また、上記実施形態の微細気泡発生器60は、樹脂成型品であるため、生産性が高くコストが安い。また、微細気泡発生器60は、微細気泡の発生に水道の圧力を用いており、ポンプや送風機等の装置を必要としないため、簡易な構成でかつ小型なものにすることができる。そのため、ユーザは、微細気泡発生器60を低コストで家電機器等に採用することができ、また微細気泡発生器60を採用することによる家電機器等の大型化を抑制できる。
【0067】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
図面中、10、20は洗濯機(家電機器)、60は微細気泡発生器、70は第1流路部材、72は第1流路、73は第1衝突部、731は第1突出部、80は第2流路部材、83は第2流路、84は第2衝突部、841は第2突出部、75は第1流路、85は第2流路、86は第2衝突部、861は第2突出部、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11