(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】エッジワイズコイルの巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20221104BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20221104BHJP
H01F 41/061 20160101ALI20221104BHJP
【FI】
H02K15/04 C
H01F41/04 F
H01F41/061
(21)【出願番号】P 2018147652
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】長田 昌浩
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-100008(JP,A)
【文献】特開2002-208530(JP,A)
【文献】特開2009-158714(JP,A)
【文献】特開2009-135222(JP,A)
【文献】特開平11-312621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H01F 41/04
H01F 41/061
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線をエッジワイズ方向に曲げ成形する曲げ成形部と、前記平角線を前記曲げ成形部に供給する供給機構と
、前記曲げ成形部及び供給機構を制御する制御装置とを含み、エッジワイズコイルを製造するエッジワイズコイルの巻線装置であって、
前記曲げ成形部は、
前記平角線の曲げ部の内縁部が当接される曲げポストと、
前記平角線の曲げ部の外縁部を保持し、前記曲げポストに向けて押し付けながら該曲げポスト周りに旋回して前記曲げ部を曲げる外径保持部と、
前記外径保持部を旋回方向に移動させる回転台と、
前記外径保持部の旋回移動時に該外径保持部を径方向にスライド移動させる径方向移動機構とを備え
、
前記制御装置には、前記外径保持部の旋回時の前記平角線の幅方向に作用する前記曲げポストへの押付け力が、旋回時の各角度において均等化されるような該外径保持部の径方向の位置の適切なパターンが予め設定されており、前記制御装置により、前記適切なパターンで前記径方向移動機構が制御されるエッジワイズコイルの巻線装置。
【請求項2】
前記径方向移動機構は、
前記回転台と同軸に設けられた第2の回転台と、
前記第2の回転台と前記外径保持部との間に設けられ該第2の回転台の回転移動を前記外径保持部の径方向の移動に変換させるカム機構と、
前記第2の回転台を前記回転台に対して任意の位相となるように回転させる制御装置とを備えて構成されている請求項1記載のエッジワイズコイルの巻線装置。
【請求項3】
平角線をエッジワイズ方向に曲げ成形してエッジワイズコイルを製造するエッジワイズコイルの巻線方法であって、
前記平角線の曲げ部の外縁部を外径保持部で保持し、前記平角線の曲げ部の内縁部を曲げポストに押し付けながら、前記外径保持部を前記曲げポスト周りに旋回させると共に、
前記外径保持部を、前記旋回移動と同期して、所定のパターンで径方向にスライド移動させながら前記平角線の曲げ部に対する曲げ成形動作を行い
、
前記所定のパターンとして、前記外径保持部の旋回時の前記平角線の幅方向に作用する前記曲げポストへの押付け力が、旋回時の各角度において均等化されるような該外径保持部の径方向の位置の適切なパターンが予め設定されているエッジワイズコイルの巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッジワイズコイルの巻線装置及び巻線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばモータ用のコイルとして、エッジワイズコイルがあり、占積率を高めることができ、小型で高性能が得られることが知られている。このエッジワイズコイルは、平角線をエッジワイズ方向に曲げ成形して、四角形をなすようにしながら厚み方向に重ねていくことにより構成される。この種のエッジワイズコイルを製造するエッジワイズコイル巻線装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。このエッジワイズコイル巻線装置は、巻線機構とその巻線機構に向けて平角線を送る送り機構とを備えている。前記巻線機構は、平角線の内側端部を支持する支点ローラ、平角線を支点ローラに押し付けながら支点ローラの周りを旋回して平角線を折り曲げるベンダ、支点ローラに沿って平角線を圧縮するプレス機構を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のエッジワイズコイル巻線装置では、平角線の曲げ部分の外周部におけるふくらみや潰れが発生しやすく、エッジワイズコイルの巻太りや巻ゆるみが生じ、エッジワイズコイルの十分な品質の向上が図られなかった。
【0005】
そこで、平角線をエッジワイズ方向に曲げ成形してエッジワイズコイルを製造するものにおいて、エッジワイズコイルの品質の向上を図ることができるエッジワイズコイルの巻線装置及び巻線方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るエッジワイズコイルの巻線装置は、平角線をエッジワイズ方向に曲げ成形する曲げ成形部と、前記平角線を前記曲げ成形部に供給する供給機構と、前記曲げ成形部及び供給機構を制御する制御装置とを含み、エッジワイズコイルを製造するものであって、前記曲げ成形部は、前記平角線の曲げ部の内縁部が当接される曲げポストと、前記平角線の曲げ部の外縁部を保持し、前記曲げポストに向けて押し付けながら該曲げポスト周りに旋回して前記曲げ部を曲げる外径保持部と、前記外径保持部を旋回方向に移動させる回転台と、前記外径保持部の旋回移動時に該外径保持部を径方向にスライド移動させる径方向移動機構とを備え、前記制御装置には、前記外径保持部の旋回時の前記平角線の幅方向に作用する前記曲げポストへの押付け力が、旋回時の各角度において均等化されるような該外径保持部の径方向の位置の適切なパターンが予め設定されており、前記制御装置により、前記適切なパターンで前記径方向移動機構が制御される。
【0007】
実施形態に係るエッジワイズコイルの巻線方法は、平角線をエッジワイズ方向に曲げ成形してエッジワイズコイルを製造するエッジワイズコイルの巻線方法であって、前記平角線の曲げ部の外縁部を外径保持部で保持し、前記平角線の曲げ部の内縁部を曲げポストに押し付けながら、前記外径保持部を前記曲げポスト周りに旋回させると共に、前記外径保持部を、前記旋回移動と同期して、所定のパターンで径方向にスライド移動させながら前記平角線の曲げ部に対する曲げ成形動作を行い、前記所定のパターンとして、前記外径保持部の旋回時の前記平角線の幅方向に作用する前記曲げポストへの押付け力が、旋回時の各角度において均等化されるような該外径保持部の径方向の位置の適切なパターンが予め設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態を示すもので、巻線装置の要部構成を示す縦断面図
【
図4】第2の回転台のカム部分の構成を概略的に示す平面図
【
図5】巻線装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、モータ等に用いられる矩形状のエッジワイズコイルの製造に適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態での製造対象となるエッジワイズコイル1の外観を示している。このエッジワイズコイル1は、例えば銅等からなり断面が平たい長方形状をなす平角線2を、エッジワイズ方向に角部に若干のRを有して角度90度ずつ曲げ、矩形状をなすようにしながら重ねていき、積層状態に巻回することにより構成される。
【0010】
本実施形態に係る巻線装置11は、上記したエッジワイズコイル1を製造するためのものであり、以下、巻線装置11の構成について、
図1~
図5を参照して述べる。この巻線装置11は、前記平角線2をエッジワイズ方向に曲げ成形する曲げ成形部12(
図1~
図3参照)と、この曲げ成形部12の右側に設けられ前記平角線2を該曲げ成形部12に供給する供給機構13(
図5参照)とを含んで構成されている。
【0011】
詳しい図示及び説明は省略するが、前記供給機構13は、長尺な平角線2をドラムに巻回して構成された供給源から平角線2を送り出し、送り出された平角線2の曲げ癖を矯正して真っ直ぐにし、所定量、即ち所定長さずつ曲げ成形部2の加工位置に供給する周知構成を備えている。この場合、
図2に一部示すように、供給機構13は、前記曲げ成形部12の右側に位置して、平角線2を図で左方に向けて水平に送り出す供給ノズル14を備えており、曲げ成形部12の加工位置には、その供給ノズル14の先端から平角線2が供給される。尚、この供給機構13による平角線2の1回の送り量や、供給動作のタイミングは、後述する制御装置により制御される。
【0012】
前記曲げ成形部12は、
図2に示すように、水平な台状のベース部15と、そのベース部15の上面に被せられる下面が開口した箱状のカバー16とを備えている。カバー16のほぼ中央部分には円形開口部16aが設けられ、この円形開口部16a部分が、平角線2の曲げ成形が行われる加工位置とされている。カバー16の上面部には、加工位置の右側に位置して、左右方向に長い第1の載置プレート17が水平に設けられている。これと共に、カバー16の上面部には、第1の載置プレート17の後方のやや離れた位置にも、左右方向に長い第2の載置プレート18が水平に設けられている。
【0013】
これら第1の載置プレート17及び第2の載置プレート18上には、平角線2の曲げ成形が終わって巻回される部分が送られて載置されるようになっている。また、前記第1の載置プレート17には、左右方向全体に延びてスリット17aが形成されており、供給ノズル14の先端から送り出された平角線2は、そのスリット17a部分を通って右方から加工位置に向けて水平に供給される。
【0014】
図1等に示すように、前記曲げ成形部12は、加工位置において前記平角線2の曲げ部の内縁部が当接される曲げポスト19と、前記平角線2の曲げ部の外縁部を保持し前記曲げポスト19に向けて押し付けながら該曲げポスト19周りに角度90度旋回して前記曲げ部を曲げる外径保持部20と、前記外径保持部20を旋回方向に移動させる回転台としての第1の回転台21等を備えている。そして、本実施形態では、前記外径保持部20の旋回移動時に該外径保持部20を径方向(矢印C方向)にスライド移動させる径方向移動機構22が設けられる。
【0015】
図1に示すように、前記ベース部15上には、前記円形開口部16aの真下部分に位置して、円筒状の支持筒部23が上方に延びて設けられている。支持筒部23の上端部には径小部23aが設けられている。前記曲げポスト19は、上下方向に長い円柱状をなし、前記支持筒部23内の中空部を上下に貫通するように設けられている。曲げポスト19の上部は、径小部23aから上方に突出して円形開口部16a部分に位置し、その上端部に径大な円形フランジ部19aが設けられている。尚、本実施形態では、支持筒部23及び曲げポスト19の中心が、垂直方向に延びる中心軸Oとなり、回転台21の回転や外径保持部20の旋回の中心となる。
【0016】
加工位置に供給された平角線2は、その内縁部、即ち図で後ろ側の辺部が、曲げポスト19の外周部に当接され、その状態で、円形フランジ部19aの下面部と、支持筒部23の径小部23aの上端面との間に上下に挟まれるようになっている。このとき、詳しく図示はしないが、曲げポスト19は支持筒部23に対し上下方向に移動可能に設けられ、シリンダ24(
図5にのみ図示)により下方に引っ張られることにより、平角線2に対する挟み付け力が得られるようになっている。
【0017】
前記外径保持部20は、曲げポスト19及び支持筒部23の径小部23aの上端部の外周側(
図1等では手前側)に配置される。この外径保持部20は、矩形状をなす下部ブロック20aと、その上方に配置された上面板20bとの間に、ローラ20cを、ベアリングを介して上下軸に沿って水平方向に回転自在に有している。前記平角線2は、その上面が、前記上面板20bの下面に当接して押えられた状態で、平角線2の外縁部がローラ20cの外周部に当接され、曲げポスト19に向けて押し付けられるようになっている。
【0018】
この外径保持部20の下部ブロック20aの外周側の下部は、側面L字状をなす支持ブロック25の上端に取付けられている。ここで、前記第1の回転台21は、中心部に円形孔を有する円板状をなし、支持筒部23の上下方向中間部分の外周部に、軸受け26を介して水平方向に回転自在に設けられている。詳しく図示はしないが、第1の回転台21は、第1のサーボモータ27(
図5参照)を駆動源とした回転駆動機構により、支持筒部23の周りを任意の角度で回転駆動されるようになっている。
【0019】
前記支持ブロック25は、支持筒部23の外側を下方に延びた後、外周方向に延びるL字状に構成され、前記第1の回転台21に支持されている。このとき、支持ブロック25の下端部の内径側部分が、第1の回転台21の上面に、ガイド部28によって、径方向(矢印C方向)にスライド移動可能に支持されている。これと共に、支持ブロック24の外周端部の下部には、丸棒状の旋回駆動用軸部29の上端部が接続されている。前記第1の回転台21には、径方向に延びる長穴21aが形成されている。この長穴21aの幅寸法は、前記旋回駆動用軸部29の外径寸法に対応し、前記旋回駆動用軸部29は、その長穴21aを貫通するように上下方向に延びている。旋回駆動用軸部29の下端部には、カムフォロア30が設けられている。
【0020】
これにより、第1の回転台21が支持筒部23の周りを回転されると、支持ブロック25ひいては外径保持部20が支持筒部23の周りを旋回する。この場合、
図3に示すように、外径保持部20が曲げポスト19の手前側の初期位置から、曲げポスト19の図で左側の曲げ位置まで、曲げポスト19の周囲を上から見て時計回りに角度90度旋回移動する。これにて、外径保持部20と曲げポスト19との協働によって平角線2に対する角度90度の曲げ成形の作業が実行される。またこのとき、旋回駆動用軸部29が長穴21a内を径方向に相対的に移動することによって、支持ブロック25ひいては外径保持部20の第1の回転台21に対する径方向への一定長さの変位が許容される。
【0021】
さて、本実施形態では、前記外径保持部20を径方向にスライド移動させる径方向移動機構22は、次のように構成されている。即ち、
図1に示すように、前記支持筒部23の外周部には、前記第1の回転台21の下方に位置して、該第1の回転台21と同軸に、第2の回転台31が軸受け32を介して水平方向に回転自在に設けられている。この第2の回転台31は、中心部に円形孔を有する円板状をなし、第2のサーボモータ33(
図5参照)を駆動源とした回転駆動機構により、支持筒部23の周りを任意の角度で回転駆動される。
【0022】
この第2の回転台31の上面部の手前側には、
図4にも示すように、凹部31aが設けられており、この凹部31a内に嵌合するように、半径方向にやや長い四角形のカムプレート34が設けられている。このカムプレート34の上面には、径方向に対しやや傾斜したカム溝34aが形成されており、このカム溝34a内に、前記旋回駆動用軸部29の下端のカムフォロア30が係合している。これにて、第2の回転台31と外径保持部20との間に、該第2の回転台31の回転移動を外径保持部20の径方向の移動に変換させるカム機構35が構成されている。
【0023】
このカム機構35においては、第1の回転台21と第2の回転台31とが同位相のままで一体的に回転駆動されると、外径保持部20の径方向の移動はない。これに対し、第1の回転台21に対し第2の回転台31の方が時計回り方向先方に位相がずれると、外径保持部20が内周側つまり曲げポスト19に近付く側に移動する。反対に、第1の回転台21に対し第2の回転台31の方が時計回り方向に対して遅れた位相となると、外径保持部20は外周側つまり曲げポスト19から離れる側に移動する。
【0024】
図5は、本実施形態の巻線装置11の電気的構成を概略的に示している。
図5に示すように、巻線装置11には、全体を制御する制御装置36が設けられている。この制御装置36は、コンピュータを主体として構成され、前記供給機構13、シリンダ24、第1のサーボモータ27、第2のサーボモータ33を制御する。これにて、制御装置36は、第2の回転台31を第1の回転台21に対して任意の位相となるように回転させることが可能とされている。
【0025】
この制御装置36は、予め設定された制御プログラムに基づいて、エッジワイズコイル1の巻線作業を自動で実行する。この巻線作業は、まず、供給機構13により平角線2を加工位置に向けて所定量だけ送り、曲げポスト19と外径保持部20との間で平角線2の両側縁を保持した状態とする。次いで、第1のサーボモータ27により第1の回転台21を回転させて外径保持部20を初期位置から曲げ位置まで旋回動作させ、平角線2をエッジワイズ方向に角度90度曲げ成形する。その後、外径保持部20を逆方向に旋回させて元の初期位置に戻した上で、供給機構13により平角線2を所定量だけ送ることを繰返すことにより行われる。
【0026】
このとき本実施形態では、平角線2の曲げ成形動作中、制御装置36は、第1の回転台21を所定の速度で回転させて外径保持部20を一定速度で旋回させるのであるが、制御プログラムには、第1の回転台21の回転位相に対する第2の回転台31の回転位相のパターンが設定されており、そのパターンに沿って第2のサーボモータ33が制御される。例えば、第1の回転台21が基準位置から角度30度回転した時点で、第2の回転台31が基準位置から角度31度回転しているといった、両回転台21、31の回転位相の関係を表すパターンである。
【0027】
この場合、上記したように、第1の回転台21と第2の回転台31との間の位相がずれることにより、カム機構35の作用により、外径保持部20を径方向にスライド移動させることができる。外径保持部20を外径方向つまり曲げポスト19から離れる方向に移動させると、平角線2の曲げポスト19への押付け力を小さくすることができ、逆に、外径保持部20を内径方向つまり曲げポスト19に近付く方向に移動させると、平角線2の曲げポスト19への押付け力を大きくすることができる。
【0028】
そこで、平角線2に対して幅方向に作用する力、つまり外径保持部20による曲げポスト19への押付け力が、膨れや潰れを生ずることのない適切な力となるように、外径保持部20の旋回中の各角度における適切な径方向の位置つまり移動パターンが、予め、作業者等により、試験的或いは理論的、経験的に求められる。そして、その適切なパターンのデータが、制御装置36に設定される。これにより、前記外径保持部20は、旋回移動と同期して、所定のパターンで径方向(矢印C方向)にスライド移動されながら平角線2に対する曲げ成形動作を実行する。
【0029】
次に、上記構成を備える巻線装置11における、エッジワイズコイル1の製造工程、即ち本実施形態に係る巻線方法について述べる。上記したように、制御装置36には、作業開始前に、曲げ成形における第1の回転台21の回転位相に対する第2の回転台31の回転位相の適切なパターンが予め設定されている。エッジワイズコイル1の巻線作業は、制御装置36により、次のようにして実行される。
【0030】
即ち、まず、供給機構13により、平角線2を供給源から曲げ成形部12の加工位置に向けて所定量だけ送る供給工程が実行される。
図3に実線で示すように、平角線2の曲げ部が加工位置に位置され、平角線2の曲げ部の両側縁部が、初期位置に位置する外径保持部20と曲げポスト19との間で前後から挟まれるように保持される。次いで、平角線2の曲げ部の内縁部を曲げポスト19に押し付けながら、外径保持部20を中心軸O周りに旋回させて平角線2をエッジワイズ方向に曲げ成形する曲げ成形の工程が実行される。
【0031】
この曲げ成形の工程は、
図3に想像線で示すように、第1のサーボモータ27により第1の回転台21を時計回り方向(矢印A方向)に角度90度回転させて外径保持部20を曲げ位置まで旋回させることにより行われる。このとき、第1の回転台21の回転と同期して、第2のサーボモータ33により第2の回転台31が所定パターンで回転駆動される。これにて、外径保持部20は、旋回移動と同期して、各機構35の作用により、角度90度の旋回移動の間に所定のパターンで径方向(矢印C方向)にスライド移動されるようになる。
【0032】
このとき、平角線2の曲げポスト19に対する押付け力が強過ぎる虞のあるところ(角度)では、外径保持部20は径方向に曲げポスト19から離れる方向に移動され、押付け力が小さく抑えられる。また、平角線2の曲げポスト19に対する押付け力が弱過ぎる虞のあるところ(角度)では、径方向に曲げポスト19に近づく方向に移動され、押付け力が大きくされる。これにて、平角線2の曲げ部の幅方向に作用する力が、外径保持部20の旋回時の各角度(位相)において均等化されるようになるのである。
【0033】
平角線2に対する曲げ成形が終了すると、外径保持部20は、平角線2の保持を解いた状態で、第1の回転台21及び第2の回転台31の逆方向への回転により、曲げ位置から矢印B方向に旋回して初期位置まで戻される。この後、再び、供給機構13により、平角線2を供給源から曲げ成形部12の加工位置に向けて所定量、この場合エッジワイズコル1の一辺の幅寸法に相当する長さだけ送る供給工程が実行され、上記の曲げ成形の工程が繰返される。これにて、平角線2は順次角度90度ずつ曲げ成形されていき、成形された部分が、順に第1の載置プレート17及び第2の載置プレート18上に積層されるように載置され、所定の巻回数のエッジワイズコイル1が得られたところで作業が終了する。
【0034】
このような本実施形態の巻線装置1及び巻線方法によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、本実施形態では、平角線2を曲げ成形する外径保持部20の旋回移動時に、該外径保持部20を径方向にスライド移動させる径方向移動機構22を設けるようにした。そして、曲げ成形の工程において、平角線2の曲げ部の内縁部を曲げポスト19に押し付けながら、外径保持部20を旋回させると共に、その旋回移動と同期して、所定のパターンで径方向にスライド移動させるようにした。
【0035】
この構成により、平角線2に対する押付け力が大きくなりすぎる位置(位相)では、外径保持部20を、曲げポスト19から径方向に離れる位置にスライド移動させ、平角線2に対する押付け力が小さくなりすぎる位置(位相)では、外径保持部20を、曲げポスト19に径方向に近づく位置にスライド移動させることができる。これにより、平角線2の曲げ部の幅方向に作用する力が、外径保持部20の旋回時の各角度(位相)において不均等になることが抑制され、平角線2の曲げ部分の外周部におけるふくらみや潰れの発生を抑制し、品質の高い曲げ作業を行うことが可能となる。
【0036】
この結果、本実施形態によれば、平角線2をエッジワイズ方向に曲げ成形してエッジワイズコイル1を製造するものにおいて、エッジワイズコイル1の品質の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。また、特に本実施形態では、前記径方向移動機構22を、第2の回転台31やカム機構35などから構成した。これにより、予め適切な動作となるように、外径保持部20の旋回動作に対する径方向の移動パターンを求めておき、その移動パターンを得るように制御装置36による制御を行うことにより、所望の動作を得ることができる。
【0037】
尚、上記した実施形態では、径方向移動機構22として、第2の回転台31やカム機構35を用いた構成を採用したが、外径保持部20を径方向に自在に移動可能なものであれば、様々な構成を採用することができる。例えばサーボモータとボールねじ機構などを用いた直線移動機構を、第1の回転台21上に設けるといった構成を採用することも可能である。その他、例えば曲げ成形部の細部の構成等についても様々な変形が可能である。
【0038】
以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
図面中、1はエッジワイズコイル、2は平角線、11は巻線装置、12は曲げ成形部、13は供給機構、19は曲げポスト、20は外径保持部、21は第1の回転台、22は径方向移動機構、23は支持筒部、25は支持ブロック、27は第1のサーボモータ、29は旋回駆動用軸部、30はカムフォロア、31は第2の回転台、33は第2のサーボモータ、34はカムプレート、34aはカム溝、35はカム機構、36は制御装置を示す。