(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】電圧比較回路、半導体装置及びモータドライバ装置
(51)【国際特許分類】
H03K 5/08 20060101AFI20221104BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20221104BHJP
H02P 6/182 20160101ALI20221104BHJP
【FI】
H03K5/08 E
H03F3/45 210
H02P6/182
(21)【出願番号】P 2018154162
(22)【出願日】2018-08-20
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-163766(JP,A)
【文献】特開平08-084493(JP,A)
【文献】特開2014-239590(JP,A)
【文献】特開平05-252017(JP,A)
【文献】特開2015-220766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/00- 5/26
H03F 1/00- 3/72
H02P 6/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1入力端子に加わる複数の第1入力電圧の何れかと第2入力端子に加わる第2入力電圧を比較する電圧比較回路において、
前記複数の第1入力端子に対応して設けられ、各々に対応する前記第1入力電圧に基づき第1比較用電圧を生成する複数の第1比較用電圧生成回路と、
前記第2入力電圧に基づき第2比較用電圧を生成する第2比較用電圧生成回路と、
前記複数の第1比較用電圧生成回路にて生成される複数の第1比較用電圧の何れかと前記第2比較用電圧との大小関係を示す信号を出力する比較器と、を備え、
各第1比較用電圧生成回路は、対応する前記第1入力電圧をカソードにて受ける第1ダイオードを有し、所定の第1定電流を前記第1ダイオードを介し、対応する前記第1入力端子に流すこと
により、対応する前記第1入力電圧よりも前記第1ダイオードの順方向電圧だけ高い電圧を前記第1比較用電圧
として生成し、
前記第2比較用電圧生成回路は、前記第2入力電圧をカソードにて受ける
第2ダイオードを有し、所定の第2定電流を前記第2ダイオードを介し、前記第2入力端子に流すことにより、前記第2入力電圧よりも前記第2ダイオードの順方向電圧だけ高い電圧を前記第2比較用電圧として生成し、
各第1比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第1MOSFETを有するとともに、前記第2比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第2MOSFETを有し、
各第1比較用電圧生成回路において前記第1MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第1ダイオードとして用いるとともに、前記第2比較用電圧生成回路において前記第2MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第2ダイオードとして用いる
、電圧比較回路。
【請求項2】
前記複数の第1比較用電圧生成回路と前記比較器との間に、前記複数の第1比較用電圧の何れかを選択的に前記比較器に供給する切り替え回路が設けられ、
前記比較器は、前記切り替え回路を介して供給された前記第1比較用電圧と前記第2比較用電圧との大小関係を示す前記信号を出力する
、請求項1に記載の電圧比較回路。
【請求項3】
前記切り替え回路は、前記複数の第1比較用電圧生成回路に対応して設けられた複数のスイッチ回路から成り、
前記第1比較用電圧生成回路ごとに、前記第1比較用電圧生成回路と前記比較器との間に、対応する前記スイッチ回路が設けられ、
前記複数のスイッチ回路の内の何れかのスイッチ回路が、対応する前記第1比較用電圧を前記比較器に伝達する対象スイッチ回路として機能する一方で、
前記複数のスイッチ回路の内の他のスイッチ回路が、対応する前記第1比較用電圧の前記比較器への伝達を遮断する非対象スイッチ回路として機能する
、請求項2に記載の電圧比較回路。
【請求項4】
各スイッチ回路において、当該スイッチ回路が前記非対象スイッチ回路として機能するとき、対応する前記第1比較用電圧に応じ、対応する前記第1比較用電圧生成回路と当該スイッチ回路との間に電流が流れ、
各スイッチ回路には、前記電流を制限する電流制限抵抗が設けられる
、請求項3に記載の電圧比較回路。
【請求項5】
各スイッチ回路は、対応する前記第1比較用電圧生成回路における前記第1ダイオードのアノードに接続された第1スイッチ用MOSFETと、前記第1スイッチ用MOSFETと前記比較器との間に直列に設けられた第2スイッチ用MOSFETと、前記第1及び第2スイッチ用MOSFET間の接続ノードと基準電位点との間に設けられた第3スイッチ用MOSFETと、を有し、
前記対象スイッチ回路として機能する前記スイッチ回路において、前記第1及び第2スイッチ用MOSFETはオン且つ前記第3スイッチ用MOSFETはオフとされる一方で、
前記非対象スイッチ回路として機能する前記スイッチ回路において、前記第1及び第2スイッチ用MOSFETはオフ且つ前記第3スイッチ用MOSFETはオンとされ、
各スイッチ回路において、当該スイッチ回路が前記非対象スイッチ回路として機能するとき、対応する前記第1比較用電圧に応じ、前記基準電位点から前記第3スイッチ用MOSFETを介し、対応する前記第1比較用電圧生成回路に向けて前記電流が流れ、当該電流を制限する位置に前記電流制限抵抗が配置される
、請求項4に記載の電圧比較回路。
【請求項6】
各スイッチ回路において、前記電流制限抵抗は、前記第1及び第2スイッチ用MOSFET間の接続ノードと前記第1スイッチ用MOSFETのバックゲートとの間に配置される
、請求項5に記載の電圧比較回路。
【請求項7】
複数相分のコイルを有して構成されるブラシレス直流モータを、1以上のコイルに生じる逆起電力の検出結果に基づきスイッチング駆動するモータドライバ装置において、
前記逆起電力の検出の対象となるコイルの第1端及び第2端の電圧を比較するための電圧比較回路として、請求項1~6の何れかに記載の電圧比較回路を備え、
前記複数相分のコイルの第1端における複数の電圧が前記複数の第1入力電圧に相当し、
前記複数相分のコイルの第2端同士は中性点にて共通接続され、
前記電圧比較回路は、前記複数の第1入力電圧に基づき所定ノードに仮想中性点電圧を発生させる仮想中性点電圧生成回路を備えて、前記仮想中性点電圧を前記第2入力電圧として用いる
、モータドライバ装置。
【請求項8】
複数相分のコイルを有して構成されるブラシレス直流モータを、1以上のコイルに生じる逆起電力の検出結果に基づきスイッチング駆動するモータドライバ装置において、
前記逆起電力の検出の対象となるコイルの第1端及び第2端の電圧を比較するための電圧比較回路として、請求項1~6の何れかに記載の電圧比較回路を備え、
前記複数相分のコイルの第1端における複数の電圧が前記複数の第1入力電圧に相当し、
前記複数相分のコイルの第2端同士は中性点にて共通接続され、
前記電圧比較回路は、前記複数の第1入力電圧に基づき所定ノードに仮想中性点電圧を発生させる仮想中性点電圧生成回路を備えて、前記仮想中性点電圧又は前記中性点に接続された端子の電圧を選択的に前記第2入力電圧として用いる
、モータドライバ装置。
【請求項9】
第1入力端子に加わる第1入力電圧と第2入力端子に加わる第2入力電圧を比較する電圧比較回路において、
前記第1入力電圧をカソードにて受ける第1ダイオードを有し、所定の第1定電流を前記第1ダイオードを介して前記第1入力端子に流すことにより、前記第1入力電圧よりも前記第1ダイオードの順方向電圧だけ高い第1比較用電圧を生成する第1比較用電圧生成回路と、
前記第2入力電圧をカソードにて受ける第2ダイオードを有し、所定の第2定電流を前記第2ダイオードを介して前記第2入力端子に流すことにより、前記第2入力電圧よりも前記第2ダイオードの順方向電圧だけ高い第2比較用電圧を生成する第2比較用電圧生成回路と、
前記第1比較用電圧と前記第2比較用電圧との大小関係を示す信号を出力する比較器と、を備え、
前記第1比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第1MOSFETを有するとともに、前記第2比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第2MOSFETを有し、
前記第1比較用電圧生成回路において前記第1MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第1ダイオードとして用いるとともに、前記第2比較用電圧生成回路において前記第2MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第2ダイオードとして用いる
、電圧比較回路。
【請求項10】
請求項1~6及び9の何れかに記載の電圧比較回路を形成する半導体装置であって、
前記電圧比較回路は集積回路を用いて形成される
、半導体装置。
【請求項11】
複数相分のコイルを有して構成されるブラシレス直流モータを、1以上のコイルに生じる逆起電力の検出結果に基づきスイッチング駆動するモータドライバ装置において、
前記逆起電力の検出の対象となるコイルの
第1端及び第2端の電圧を比較するための電圧比較回路として、
請求項1~6及び9の何れかに記載の電圧比較回路を
備える
、モータドライバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧比較回路、半導体装置及びモータドライバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパレータ等で構成される電圧比較回路には、一般的に正の電源電圧である高電位側の電源電圧と、低電位側の電源電圧とが供給される。この際、低電位側の電源電圧として負の電源電圧(0Vよりも低い電位を有する電源電圧)が提供されることもあるが、負の電源電圧が用意されずに、低電位側の電源電圧が0Vのグランド電圧とされることも多い(下記特許文献1参照)。
【0003】
一方、比較の対象となる電圧比較回路への入力電圧が負電圧(例えば1V程度)であっても、正常な比較動作が求められることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低電位側の電源電圧が0Vとされるような電圧比較回路において、負の入力電圧に対しても正常な比較動作を精度良く実現させることは容易ではない。入力電圧を分圧抵抗を用いて分圧してから電圧比較を行うという方法も考えられるが、この場合、分圧抵抗のばらつきにより比較の精度が劣化する或いは精度担保のために抵抗値調整(オフセットトリミング)が必要となることも多い。また、分圧抵抗と比較器の入力容量とでフィルタが形成されて伝搬遅延が大きくなることも懸念される。
【0006】
本発明は、低電位側の電源電圧よりも低い入力電圧に対しても良好な比較動作を実現できる電圧比較回路、及び、それを利用した半導体装置及びモータドライバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1側面に係る電圧比較回路は、複数の第1入力端子に加わる複数の第1入力電圧の何れかと第2入力端子に加わる第2入力電圧を比較する電圧比較回路において、前記複数の第1入力端子に対応して設けられ、各々に対応する前記第1入力電圧に基づき第1比較用電圧を生成する複数の第1比較用電圧生成回路と、前記第2入力電圧に基づき第2比較用電圧を生成する第2比較用電圧生成回路と、前記複数の第1比較用電圧生成回路にて生成される複数の第1比較用電圧の何れかと前記第2比較用電圧との大小関係を示す信号を出力する比較器と、を備え、各第1比較用電圧生成回路は、第1ダイオードを有し、所定の第1定電流を前記第1ダイオードを介し、対応する前記第1入力端子に流すことで生じる、前記第1ダイオードのアノード電圧から前記第1比較用電圧を生成し、前記第2比較用電圧生成回路は、第2ダイオードを有し、所定の第2定電流を前記第2ダイオードを介して前記第2入力端子に流すことで生じる、前記第2ダイオードのアノード電圧から前記第2比較用電圧を生成することを特徴とする。
【0008】
具体的には例えば、第1側面に係る電圧比較回路において、各第1比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第1MOSFETを有するとともに、前記第2比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第2MOSFETを有し、各第1比較用電圧生成回路において前記第1MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第1ダイオードとして用いるとともに、前記第2比較用電圧生成回路において前記第2MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第2ダイオードとして用いると良い。
【0009】
また具体的には例えば、第1側面に係る電圧比較回路には、前記複数の第1比較用電圧生成回路と前記比較器との間に、前記複数の第1比較用電圧の何れかを選択的に前記比較器に供給する切り替え回路が設けられ、前記比較器は、前記切り替え回路を介して供給された前記第1比較用電圧と前記第2比較用電圧との大小関係を示す前記信号を出力すると良い。
【0010】
更に具体的には例えば、第1側面に係る電圧比較回路において、前記切り替え回路は、記複数の第1比較用電圧生成回路に対応して設けられた複数のスイッチ回路から成り、前記第1比較用電圧生成回路ごとに、前記第1比較用電圧生成回路と前記比較器との間に、対応する前記スイッチ回路が設けられ、前記複数のスイッチ回路の内の何れかのスイッチ回路が、対応する前記第1比較用電圧を前記比較器に伝達する対象スイッチ回路として機能する一方で、前記複数のスイッチ回路の内の他のスイッチ回路が、対応する前記第1比較用電圧の前記比較器への伝達を遮断する非対象スイッチ回路として機能すると良い。
【0011】
更に具体的には例えば、第1側面に係る電圧比較回路に関し、各スイッチ回路において、当該スイッチ回路が前記非対象スイッチ回路として機能するとき、対応する前記第1比較用電圧に応じ、対応する前記第1比較用電圧生成回路と当該スイッチ回路との間に電流が流れ、各スイッチ回路には、前記電流を制限する電流制限抵抗が設けられると良い。
【0012】
更に具体的には例えば、第1側面に係る電圧比較回路において、各スイッチ回路は、対応する前記第1比較用電圧生成回路における前記第1ダイオードのアノードに接続された第1スイッチ用MOSFETと、前記第1スイッチ用MOSFETと前記比較器との間に直列に設けられた第2スイッチ用MOSFETと、前記第1及び第2スイッチ用MOSFET間の接続ノードと基準電位点との間に設けられた第3スイッチ用MOSFETと、を有し、前記対象スイッチ回路として機能する前記スイッチ回路において、前記第1及び第2スイッチ用MOSFETはオン且つ前記第3スイッチ用MOSFETはオフとされる一方で、前記非対象スイッチ回路として機能する前記スイッチ回路において、前記第1及び第2スイッチ用MOSFETはオフ且つ前記第3スイッチ用MOSFETはオンとされ、各スイッチ回路において、当該スイッチ回路が前記非対象スイッチ回路として機能するとき、対応する前記第1比較用電圧に応じ、前記基準電位点から前記第3スイッチ用MOSFETを介し、対応する前記第1比較用電圧生成回路に向けて前記電流が流れ、当該電流を制限する位置に前記電流制限抵抗が配置されると良い。
【0013】
更に具体的には例えば、第1側面に係る電圧比較回路において、各スイッチ回路において、前記電流制限抵抗は、前記第1及び第2スイッチ用MOSFET間の接続ノードと前記第1スイッチ用MOSFETのバックゲートとの間に配置されると良い。
【0014】
本発明に係る第2側面に係る電圧比較回路は、第1入力端子に加わる第1入力電圧と第2入力端子に加わる第2入力電圧を比較する電圧比較回路において、第1ダイオードを有し、前記第1入力電圧に基づく第1比較用電圧を生成する第1比較用電圧生成回路と、第2ダイオードを有し、前記第2入力電圧に基づく第2比較用電圧を生成する第2比較用電圧生成回路と、前記第1比較用電圧と前記第2比較用電圧との大小関係を示す信号を出力する比較器と、を備え、前記第1比較用電圧生成回路は、所定の第1定電流を前記第1ダイオードを介して前記第1入力端子に流すことで生じる、前記第1ダイオードのアノード電圧から前記第1比較用電圧を生成し、前記第2比較用電圧生成回路は、所定の第2定電流を前記第2ダイオードを介して前記第2入力端子に流すことで生じる、前記第2ダイオードのアノード電圧から前記第2比較用電圧を生成することを特徴とする。
【0015】
具体的には例えば、第2側面に係る電圧比較回路において、前記第1比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第1MOSFETを有するとともに、前記第2比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第2MOSFETを有し、前記第1比較用電圧生成回路において前記第1MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第1ダイオードとして用いるとともに、前記第2比較用電圧生成回路において前記第2MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオードを前記第2ダイオードとして用いると良い。
【0016】
本発明に係る半導体装置は、上記の第1側面又は前記第2側面に係る電圧比較回路を形成する半導体装置であって、前記電圧比較回路は集積回路を用いて形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るモータドライバ装置は、複数相分のコイルを有して構成されるブラシレス直流モータを、1以上のコイルに生じる逆起電力の検出結果に基づきスイッチング駆動するモータドライバ装置において、前記逆起電力の検出の対象となるコイルの一端及び他端の電圧を比較するための電圧比較回路として、上記の第1側面又は前記第2側面に係る電圧比較回路を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低電位側の電源電圧よりも低い入力電圧に対しても良好な比較動作を実現できる電圧比較回路、及び、それを利用した半導体装置及びモータドライバ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るハードディスク装置の機構に関わる概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るハードディスク装置の電気的な概略ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るハードディスク装置に搭載されるドライバICの外観斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るSPM及びSPMドライバの構成図である。
【
図6】SPMにおけるU相のコイルに生じる逆起電力の波形と、それに関連する信号波形を示す図である。
【
図7】
図4の逆起電力検出回路に入力される電圧の範囲を説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施例に係る電圧比較回路の構成図である。
【
図9】本発明の第1実施例に係り、1つのスイッチ回路の構成図である。
【
図10】スイッチ回路のオン状態及びオフ状態の説明図(a)と、U相、V相及びW相選択状態の説明図(b)である。
【
図11】電圧比較回路に設けられる比較器の入力段の回路例を示す図である。
【
図12】スイッチ回路における2つのトランジスタの概略的な縦構造図である。
【
図13】本発明の第1実施例に係り、負の入力電圧に対する電圧比較回路の動作説明図である。
【
図14】本発明の第1実施例に係り、特定の条件下における電圧比較回路の一部の動作説明図である。
【
図15】第1参考構成に係る電圧比較回路を示す図である。
【
図16】第2参考構成に係る電圧比較回路を示す図である。
【
図17】本発明の第2実施例に係る電圧比較回路の一部構成図である。
【
図18】本発明の第3実施例に係る電圧比較回路の一部構成図である。
【
図19】本発明の第4実施例に係る電圧比較回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“TrH”によって参照されるハイサイドトランジスタは、ハイサイドトランジスタTrHと表記されることもあるし、トランジスタTrHと略記されることもあるが、それらは全て同じものを指す。
【0021】
まず本実施形態で用いられる幾つかの用語について説明を設ける。
本実施形態において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。本実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。
後述のトランジスタTrH及びTrLを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。オン状態、オフ状態を、単にオン、オフと表現することもある。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る磁気ディスク装置としてのハードディスク装置(以下HDD装置と称する)1の機構に関わる概略構成図である。
【0023】
HDD装置1は、記録媒体である磁気ディスク10と、磁気ディスク10に対して情報の書き込み及び読み込みを行う磁気ヘッド11(以下ヘッド11とも称されうる)と、磁気ヘッド11を磁気ディスク10の半径方向に対して移動自在に支持するアーム12と、磁気ディスク10を支持及び回転させるスピンドルモータ13(以下SPM13とも称されうる)と、アーム12を回転駆動及び位置決めすることで磁気ヘッド11を磁気ディスク10の半径方向に対して移動させ且つ位置決めするボイスコイルモータ14(以下VCM14とも称されうる)と、を備える。
【0024】
HDD装置1は、更に、一対の圧電素子15と、ロードビーム16と、磁気ヘッド11を磁気ディスク10から離間した所定の退避位置に保持するランプ部17と、を備える。アーム12の先端にロードビーム16が取り付けられ、ロードビーム16の先端に磁気ヘッド11が取り付けられる。アーム12の先端部におけるロードビーム16の取り付け部付近に一対の圧電素子15が配置される。一対の圧電素子15に対して互いに逆位相の電圧を加えることで、一対の圧電素子15が互いに逆位相で伸縮し、ロードビーム16の先端の磁気ヘッド11を磁気ディスク10の半径方向において変位させることができる。
【0025】
このように、HDD装置1では、いわゆる2段アクチュエータ方式が採用されている。VCM14は、アーム12を駆動することで磁気ディスク10上において磁気ヘッド11を荒く位置決めする(相対的に荒い分解能で位置決めする)粗動アクチュエータとして機能し、一対の圧電素子15は、アーム12の位置を基準にして磁気ヘッド11の位置を調整することで磁気ディスク10上において磁気ヘッド11を精密に位置決めする(VCM14よりも細かい分解能で位置決めする)微動アクチュエータとして機能する。以下では、一対の圧電素子15から成るアクチュエータを、マイクロアクチュエータの略称“MA”を用い、MA15と称する。
【0026】
磁気ディスク10と、磁気ヘッド11と、MA15及びロードビーム16が取り付けられたアーム12と、SPM13と、VCM14と、ランプ部17は、HDD装置1の筐体内に収められる。尚、VCM14又はMA15による磁気ヘッド11の移動、変位に関し、磁気ディスク10の半径方向における移動、変位とは、円盤形状を有する磁気ディスク10の外周と中心とを結ぶ方向における移動、変位を意味するが、VCM14又はMA15による磁気ヘッド11の移動、変位が、磁気ディスク10の半径方向における移動、変位に加えて、他の方向(例えば磁気ディスク10の外周の接線方向)における移動、変位の成分を含むこともある。
【0027】
図2は、HDD装置1の電気的な概略ブロック図である。HDD装置1には、電気的な構成部品として、ドライバIC30、信号処理回路21、MPU(micro-processing unit)22及び電源回路23が設けられている。電源回路23は、ドライバIC30及び信号処理回路21、MPU22を駆動するための電源電圧を、それらに供給する。MPU22は、信号処理回路21及びドライバIC30の夫々に対し、双方向通信が可能な形態で接続されている。
【0028】
信号処理回路21は、磁気ディスク10への情報の書き込み時には、当該情報を書き込むための記録信号を磁気ヘッド11に出力し、磁気ディスク10から情報を読み出す時には、磁気ディスク10から読み出された信号に対して必要な信号処理を施し、これによって得られた信号をMPU22に送る。MPU22は、信号処理回路21の制御を通じて磁気ヘッド11による情報の書き込み動作及び読み込み動作を制御する。
【0029】
ドライバIC30は、
図3に示すような、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品(モータドライバ装置)である。尚、
図3に示されるドライバIC30のピン数(外部端子の数)は例示に過ぎない。ドライバIC30には、SPM13を駆動制御するためのSPMドライバ33、VCM14を駆動制御するためのVCMドライバ34及びMA15を駆動制御するためのMAドライバ35が設けられる他、MPU22及びドライバIC30間の双方向通信を可能とするためのIF回路(インターフェース回路)32や、IF回路32を通じてMPU22から受けた制御データに基づきドライバ33~35の動作を制御する制御回路31などが設けられる。
【0030】
MPU22は、ドライバIC30のSPMドライバ33を制御することによりSPM13の駆動制御を通じて磁気ディスク10の回転制御を行い、ドライバIC30のVCMドライバ34及びMAドライバ35を制御することによりVCM14及びMA15の駆動制御を通じて磁気ヘッド11の移動制御及び位置決めを行う。磁気ディスク10の各箇所には磁気ディスク10上の各々の位置を示す位置情報が記録されており、磁気ディスク10上に磁気ヘッド11が位置しているとき、この位置情報は磁気ヘッド11により読み取られて、信号処理回路21を通じてMPU22に伝達される。MPU22は当該位置情報に基づいてVCMドライバ34及びMAドライバ35を制御でき、この制御を通じて、VCMドライバ34がVCM14に必要な駆動電流を供給することで磁気ヘッド11の第1段階の位置決めが実現され且つMAドライバ35がMA15に必要な電圧を供給することで磁気ヘッド11の第2段階の位置決めが実現される。尚、磁気ヘッド11が磁気ディスク10上に位置しているとは、磁気ヘッド11が微小な空間を隔てて磁気ディスク10の上方に位置していることを意味する。
【0031】
磁気ヘッド11が磁気ディスク10の外周の外側に位置している場合など、磁気ヘッド11にて位置情報が読み出されていない状態においては、MPU22は、位置情報に頼らずにVCMドライバ34及びMAドライバ35を制御できる。例えば、磁気ヘッド11をランプ部17における退避位置から磁気ディスク10上に移動させる場合、MPU22は、その移動に適した所定の駆動電流をVCM14に供給することを指示する信号をドライバIC30に出力すれば良く、これによりVCMドライバ34は当該信号に基づく所定の駆動電流をVCM14に供給する。磁気ヘッド11にて位置情報が読み出されていない状態において、磁気ヘッド11の精密な位置制御は不要となるため、一対の圧電素子15に対する供給電圧はゼロとされて良い又は固定電圧とされて良い。
【0032】
図4に、SPM13及びSPMドライバ33の内部構成とそれらの接続関係を示す。ドライバIC30に設けられた外部端子には、端子OUTu、OUTv、OUTw及びTM
CTが含まれる。SPM13は、スター結線されたU相のコイル13u、V相のコイル13v及びW相のコイル13wから成る三相ブラシレス直流モータである。SPM13は、ステータと永久磁石を備えたロータとを有し、ステータにコイル13u、13v及び13wが設けられる。コイル13uの一端、コイル13vの一端、コイル13wの一端は、夫々、外部端子OUTu、OUTv、OUTwに接続され、コイル13u、13v及び13wの他端同士は中性点13nにて共通接続されている。中性点13nは外部端子TM
CTに接続される。外部端子OUTu、OUTv、OUTwは出力端子とも称され得る。尚、以下の説明において、単にロータと記した場合、それはSPM13のロータを指すものとする。
【0033】
SPMドライバ33は、U相のハーフブリッジ回路50uと、V相のハーフブリッジ回路50vと、W相のハーフブリッジ回路50wと、プリドライバ回路51と、駆動信号生成回路52と、逆起電力検出回路53と、SPM駆動制御回路54と、を備える。
【0034】
ハーフブリッジ回路50u、50v及び50wの夫々は、電源電圧VPWRが加わるラインとグランドとの間に直列に接続されたハイサイドトランジスタTrH及びローサイドトランジスタTrLから成る。トランジスタTrH及びTrLはNチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成されている。電源電圧VPWRは所定の正の直流電圧であり、ここでは例として12V(ボルト)であるとする。
【0035】
より具体的には、ハーフブリッジ回路50u、50v及び50wの夫々において、トランジスタTrHのドレインは、電源電圧VPWRが印加される第1電源端子に接続されて電源電圧VPWRの供給を受け、トランジスタTrHのソースとトランジスタTrLのドレインはノードNDにて共通接続され、トランジスタTrLのソースは第2電源端子として機能するグランドに接続されている。ハーフブリッジ回路50u、50v、50wにおけるノードNDは、夫々、出力端子OUTu、OUTv、OUTwに接続される。故に、ハーフブリッジ回路50u、50v、50wにおけるノードNDは、夫々、出力端子OUTu、OUTv、OUTwを介して、コイル13u、13v、13wの一端に接続されることになる。コイル13u、13v、13wの一端における電圧に相当する、出力端子OUTu、OUTv、OUTwに加わる電圧を、夫々、Vu、Vv、Vwにて表す。また、中性点13nに加わる電圧をVCTにて表す。
【0036】
SPM13はSPMドライバ33によりセンサレスモータとしてスイッチング駆動される。これを実現するため、逆起電力検出回路53は、端子OUTu、OUTv、OUTw及びTMCTに接続され、SPM13の回転時において、電圧Vu及び電圧VCTに基づいてコイル13uに生じる逆起電力を検出するU相逆起電力検出処理、電圧Vv及び電圧VCTに基づいてコイル13vに生じる逆起電力を検出するV相逆起電力検出処理、電圧Vw及び電圧VCTに基づいてコイル13wに生じる逆起電力を検出するW相逆起電力検出処理の内の少なくとも1つの逆起電力検出処理を行う。逆起電力検出処理による検出結果は、逆起電力検出信号BEMFとして駆動信号生成回路52に送られる。
【0037】
駆動信号生成回路52は、ロータの位置情報を含んだ逆起電力検出信号BEMFに基づいて、ハーフブリッジ回路50uに対する駆動信号DRVu、ハーフブリッジ回路50vに対する駆動信号DRVv及びハーフブリッジ回路50wに対する駆動信号DRVwを生成及び出力する。SPM13にて発生されるべきトルクを指定するトルク指令信号Trq*が駆動信号生成回路52に与えられており、駆動信号生成回路52は、トルク指令信号Trq*にて指定されたトルクがSPM13にて発生するよう、駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwを生成する。この際、例えば、所定の波形データを参照して、コイル13u、13v及び13wに正弦波状の電流が流れるよう、駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwを生成して良い。駆動信号DRVu、DRVv、DRVwの夫々はパルス幅が可変の二値信号であり、“1”又は“0”の値をとる。二値信号において、パルス幅とは、特に断りなき限り、当該二値信号の各周期において当該二値信号が“1”の値をとる区間の長さを指す。
【0038】
プリドライバ回路51は、駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwに従ってハーフブリッジ回路50u、50v及び50w内の各トランジスタのゲート電位を制御することで各ハーフブリッジ回路の状態を制御する。ハーフブリッジ回路50u、50v及び50wの内の任意の1つである対象ハーフブリッジ回路において、トランジスタTrHがオンであって且つトランジスタTrLがオフとなっている状態を出力ハイ状態と称し、トランジスタTrHがオフであって且つトランジスタTrLがオンとなっている状態を出力ロー状態と称する。トランジスタTrH及びTrLのオン抵抗がゼロであると仮定すると、例えばハーフブリッジ回路50uにおいて、出力ハイ状態であればハイサイドトランジスタTrHを介して電源電圧VPWRが出力端子OUTuに加わり、出力ロー状態であればローサイドトランジスタTrLを介してグランドの電位が出力端子OUTuに加わる(但し過渡状態を無視)。ハーフブリッジ回路50v及び50wについても同様である。
【0039】
プリドライバ回路51は、駆動信号DRVuが“1”の値を持つ区間においてハーフブリッジ回路50uが出力ハイ状態となるように且つ駆動信号DRVuが“0”の値を持つ区間においてハーフブリッジ回路50uが出力ロー状態となるように、ハーフブリッジ回路50uのトランジスタTrH及びTrLのゲート電位を制御するU相駆動動作を行う。同様に、プリドライバ回路51は、駆動信号DRVvが“1”の値を持つ区間においてハーフブリッジ回路50vが出力ハイ状態となるように且つ駆動信号DRVvが“0”の値を持つ区間においてハーフブリッジ回路50vが出力ロー状態となるように、ハーフブリッジ回路50vのトランジスタTrH及びTrLのゲート電位を制御するV相駆動動作を行う。同様に、プリドライバ回路51は、駆動信号DRVwが“1”の値を持つ区間においてハーフブリッジ回路50wが出力ハイ状態となるように且つ駆動信号DRVwが“0”の値を持つ区間においてハーフブリッジ回路50wが出力ロー状態となるように、ハーフブリッジ回路50wのトランジスタTrH及びTrLのゲート電位を制御するW相駆動動作を行う。
【0040】
U相駆動動作、V相駆動動作及びW相駆動動作により、電源電圧VPWRを駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwに従ってスイッチングした電圧が出力端子OUTu、OUTv及びOUTwに加わり、このスイッチング電圧によりSPM13がスイッチング駆動されることになる。
【0041】
但し、逆起電力検出信号BEMFを取得するために、一時的に対象ハーフブリッジ回路がハイインピーダンス状態とされることもある(詳細は後述)。対象ハーフブリッジ回路におけるハイインピーダンス状態は、対象ハーフブリッジ回路のトランジスタTrH及びTrLを共にオフ(オフ状態)とすることで実現され、これにより、対象ハーフブリッジ回路による、対応するコイルへの通電が停止される。
【0042】
SPM駆動制御回路54は、プリドライバ回路51、駆動信号生成回路52及び逆起電力検出回路53の動作を制御する(詳細は後述)。後述の信号BEMFu_EDGE、BEMFv_EDGE及びBEMFw_EDGEを含む、SPMドライバ33にて取得又は生成される任意の信号がSPM駆動制御回路54に提供されて良い。
【0043】
逆起電力検出処理を利用したSPM13のセンサレスによる駆動は、SPM13の始動時には利用できず、ロータが回転しているときにしか利用できない。本実施形態では、特に記述無き限り、ロータが或る程度の速度で回転していることを前提とする。ロータの回転を開始させる際には、公知の任意の方法にてロータの回転開始を実現すれば良い。例えば、ロータが停止している状態を起点とし、コイル13u、13v及び13wの内、コイル13uに対してのみ電流を供給してロータを特定の位置まで移動させた後、低速の一定周期でコイル13u、13v及び13wに対し順番に電流を供給する。この際、パルス幅変調を利用しつつ、コイル13u、13v及び13wへの印加電圧(Vu、Vv、Vw)を徐々に増大させてゆく。そうするとロータが回転し始め、回転速度が或る程度高まると、逆起電力検出処理を利用したSPM13のセンサレスによる駆動が可能となる。
【0044】
図5は逆起電力検出回路53の機能図である。逆起電力検出回路53は、電圧Vu、Vv及びVwの何れかを選択的に電圧V
CTと比較して、比較結果を示す逆起電力検出信号BEMFを出力する。電圧Vuと電圧V
CTとの比較結果を示す信号BEMFを特に“BEMFu”にて表し、電圧Vvと電圧V
CTとの比較結果を示す信号BEMFを特に“BEMFv”にて表し、電圧Vwと電圧V
CTとの比較結果を示す信号BEMFを特に“BEMFw”にて表す。信号BEMFuは、“Vu>V
CT”であるときに“1”の値を持ち、“Vu<V
CT”であるときに“0”の値を持つ。同様に、信号BEMFvは、“Vv>V
CT”であるときに“1”の値を持ち、“Vv<V
CT”であるときに“0”の値を持つ。同様に、信号BEMFwは、“Vw>V
CT”であるときに“1”の値を持ち、“Vw<V
CT”であるときに“0”の値を持つ。“Vu=V
CT”であるとき信号BEMFuの値は“0”又は“1”となる(信号BEMFv及びBEMFwについても同様)。
【0045】
図6に、ロータが回転することでU相のコイル13uに生じる逆起電力Euの波形を示す。逆起電力は誘起電圧と称されることもある。中性点13nの電位から見て、コイル13uの両端の内、出力端子OUTuに接続される一端に生じる電圧が逆起電力Euに相当する。ハーフブリッジ回路50uをハイインピーダンス状態とすることで、差電圧(Vu-V
CT)が逆起電力Euとして観測される。逆起電力Euは電圧値が周期的に変化する正弦波状の電圧であり、逆起電力Euの周期はロータの電気角における回転周期と一致する。ここでは、ロータの位置の電気角における位相が0°及び180°であるときに逆起電力Euがゼロとなり、且つ、当該位相が90°であるときに逆起電力Euが正の極値をとり、且つ、当該位相が270°であるときに逆起電力Euが負の極値をとるものとする。尚、本実施形態において、単に位相と記した場合又はロータの位相と記した場合、それはロータの位置の電気角における位相を指すものとする。
【0046】
特に図示しないが、ロータが回転することでコイル13vに生じる逆起電力Ev及びコイル13wに生じる逆起電力Ewも、逆起電力Euと同じ周期を持つ、逆起電力Euと同様の正弦波状の電圧となる。但し、逆起電力Ev、Ewの位相は、逆起電力Euに対して、夫々、120°、240°だけ遅れている。
【0047】
図4の回路52~54の何れかに内包されるエッジ抽出回路(不図示)は、ハーフブリッジ回路50uがハイインピーダンス状態とされる区間において、信号BEMFuに基づき、逆起電力Euがゼロを交差するゼロクロスタイミングを検出し、そのゼロクロスタイミングを特定する信号BEMFu_EDGEを出力する(
図6参照)。検出されるゼロクロスタイミングは、逆起電力Euが負である状態から正である状態に切り替わるタイミングであっても良いし、逆起電力Euが正である状態から負である状態に切り替わるタイミングであっても良いが、ここでは、前者のタイミングがゼロクロスタイミングとして検出されるものとする。そうすると、信号BEMFuの“0”から“1”への切り替わりタイミングは、上記位相が0°となるタイミングに相当する。
【0048】
同様に、エッジ抽出回路(不図示)は、ハーフブリッジ回路50vがハイインピーダンス状態とされる区間において、信号BEMFvに基づき、逆起電力Evがゼロを交差するゼロクロスタイミングを検出し、そのゼロクロスタイミングを特定する信号BEMFv_EDGEを出力する。同様に、エッジ抽出回路(不図示)は、ハーフブリッジ回路50wがハイインピーダンス状態とされる区間において、信号BEMFwに基づき、逆起電力Ewがゼロを交差するゼロクロスタイミングを検出し、そのゼロクロスタイミングを特定する信号BEMFw_EDGEを出力する。信号BEMFvの“0”から“1”への切り替わりタイミング、信号BEMFwの“0”から“1”への切り替わりタイミングは、夫々、上記位相が120°、240°となるタイミングに相当する。
【0049】
駆動信号生成回路52は、信号BEMFu_EDGE、BEMFv_EDGE及びBEMFw_EDGEの内の、任意の1つの信号若しくは任意の2つの信号に基づき、又は、全ての信号に基づき、ロータの位置(位相)を認識して適切な駆動信号DRVu、DRVv及びDRVwを生成できる。
【0050】
対象ハーフブリッジ回路がハイインピーダンス状態とされる区間をウィンドウ区間と称し、ウィンドウ区間の内、ハーフブリッジ回路50u、50v、50wがハイインピーダンス状態とされる区間を、特に夫々、U相ウィンドウ区間、V相ウィンドウ区間、W相ウィンドウ区間と称する。U相ウィンドウ区間において、プリドライバ回路51は駆動信号DRVuに基づくU相駆動動作を停止してハーフブリッジ回路50uのトランジスタTrH及びTrLをオフ状態に維持する。U相ウィンドウ区間においてV相駆動動作及びW相駆動動作は行われて良い。同様に、V相ウィンドウ区間において、プリドライバ回路51は駆動信号DRVvに基づくV相駆動動作を停止してハーフブリッジ回路50vのトランジスタTrH及びTrLをオフ状態に維持する。V相ウィンドウ区間においてW相駆動動作及びU相駆動動作は行われて良い。同様に、W相ウィンドウ区間において、プリドライバ回路51は駆動信号DRVwに基づくW相駆動動作を停止してハーフブリッジ回路50wのトランジスタTrH及びTrLをオフ状態に維持する。W相ウィンドウ区間においてU相駆動動作及びV相駆動動作は行われて良い。
【0051】
ウィンドウ区間外では通常動作が実行される。通常動作では、U相駆動動作、V相駆動動作及びW相駆動動作の全てが実行される。即ち、ウィンドウ区間外での通常動作において、プリドライバ回路51は、駆動信号DRVu、DRVv、DRVwに従いハーフブリッジ回路50u、50v及び50wを出力ハイ状態及び出力ロー状態間で切り替えるスイッチング制御を行うことで、コイル13u、13v及び13wに対し電力を供給する。
【0052】
SPM駆動制御回路54は、信号BEMFu_EDGE、BEMFv_EDGE及びBEMFw_EDGEに基づいて、U相ウィンドウ区間、V相ウィンドウ区間、W相ウィンドウ区間を設定し、設定結果に基づいてプリドライバ回路51を制御する。即ち、制御回路54は、信号BEMFu_EDGEに基づき、逆起電力Euについて検出済みの複数のゼロクロスタイミングを元に、逆起電力Euの次回のゼロクロスタイミングが生じるであろう区間をU相ウィンドウ区間として設定する。同様に、制御回路54は、信号BEMFv_EDGEに基づき、逆起電力Evについて検出済みの複数のゼロクロスタイミングを元に、逆起電力Evの次回のゼロクロスタイミングが生じるであろう区間をV相ウィンドウ区間として設定する。W相ウィンドウ区間についても同様である。
【0053】
上述の内容を基本とするHDD装置1(特に逆起電力検出回路53)についての詳細な構成例、動作例、応用例及び変形例を、以下の第1~第6実施例の中で説明する。特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、本実施形態において上述した事項が後述の第1~第6実施例に適用され、第1~第6実施例において上述の内容と矛盾する事項については、第1~第6実施例での記載が優先される。また矛盾無き限り、以下に述べる第1~第6実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち第1~第6実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0054】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。逆起電力検出回路53において、電圧比較を担う電圧比較回路への入力電圧の範囲は“-Vf”から“(VPWR+Vf)”までとなる。即ち例えば電圧Vuに注目した場合、
図7(a)に示す如く、コイル13uから端子OUTuに向けて流れる電流がハーフブリッジ回路50uのトランジスタTrHの寄生ダイオードを介し電源電圧VPWRが加わる端子に流れる際、電圧Vuは最大化されて“(VPWR+Vf)”となり、
図7(b)に示す如く、グランドからハーフブリッジ回路50uのトランジスタTrLの寄生ダイオード及び端子OUTuを介してコイル13uに電流が流れる際、電圧Vuは最小化されて“-Vf”となる。ここで、Vfは、トランジスタTrH及びTrLの寄生ダイオードの順方向電圧(例えば0.7V)を表す。
【0055】
このため、電圧比較回路は、“-Vf”から“(VPWR+Vf)”までの入力電圧(同相入力電圧)に対して正常に動作することが必要とされる。仮に、電圧比較回路に対し正の電源電圧(例えば17V)と負の電源電圧(-5V)を与えるような構成が採用されたならば、既存の技術にて、負の入力電圧に対しても正常な比較動作が担保される。但し、負の電源電圧が用意されないことも多く、この場合、電圧比較回路に対する低電位側の電源電圧は0Vとされる。以下では、電圧比較回路に対する低電位側の電源電圧が0Vとされつつも、-1Vの入力電圧まで正常な比較動作を実現できる構成を説明する。
【0056】
図8は、逆起電力検出回路53に設けられる電圧比較回路100の構成図である。電圧比較回路100は、電圧Vu、Vv及びVwの何れかを選択的に電圧V
CTと比較して、比較結果を示す逆起電力検出信号BEMF(BEMFu、BEMFv又はBEMFw)を出力する。
図8では、例として電圧Vuが電圧V
CTと比較されるかのような状況が図示されている。また、
図8では、図示の煩雑化防止のため、比較器140について入力段の構成のみが簡略化して示されており、よって、信号BEMFが出力される様子は示されていない。電圧比較回路100は、所定の電圧VCPを高電位側の電源電圧として且つ0Vを低電位側の電源電圧として動作する。電源VCPは、電源電圧VPWRよりも大きな所定の正の直流電圧であり、ここでは、電源電圧VPWRよりも5Vだけ高い17Vであるとする。
【0057】
電圧比較回路100は、3つの電圧Vu、Vv及びVwに対応する3つの比較用電圧生成回路110及び3つのスイッチ回路130と、電圧VCTに対応する比較用電圧生成回路120と、比較器140と、スイッチ制御回路150と、を備える。3つの比較用電圧生成回路110は互いに同じ構成を有し、3つのスイッチ回路130は互いに同じ構成を有する。以下では、3つの比較用電圧生成回路110を互いに区別する必要がある場合、それらを符号110[1]、110[2]、110[3]にて参照し、3つのスイッチ回路130を互いに区別する必要がある場合、それらを符号130[1]、130[2]、130[3]にて参照する。更に、説明の便宜上、以下では、電圧Vu、Vv、Vwを、夫々、電圧V[1]、V[2]、V[3]にて表すことがある。
【0058】
各比較用電圧生成回路110は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ111と、ダイオード112と、定電流回路113を備える。ダイオード112はトランジスタ111の寄生ダイオードである。故に、各回路110において、ダイオード112のアノード、カソードは、夫々、トランジスタ111のソース、ドレインに接続されることになる。但し、ダイオード112はトランジスタ111とは別に設けられたダイオードであっても良い。各回路110において、トランジスタ111のゲート及びソースは互いに接続されており、結果、トランジスタ111はオフ状態に維持されている(即ち、トランジスタ111のチャネルであるドレイン及びソース間は非導通状態に維持されている)。各回路110において、定電流回路113とトランジスタ111のソースとがノード114にて接続されており、定電流回路113は電源電圧VCPが加わる端子からノード114に向けて所定の定電流IC1を流す。定電流IC1の値は例えば10μAである。
【0059】
比較用電圧生成回路120は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ121と、ダイオード122と、定電流回路123を備える。ダイオード122はトランジスタ121の寄生ダイオードである。故に、回路120において、ダイオード122のアノード、カソードは、夫々、トランジスタ121のソース、ドレインに接続されることになる。但し、ダイオード122はトランジスタ121とは別に設けられたダイオードであっても良い。回路120において、トランジスタ121のゲート及びソースは互いに接続されており、結果、トランジスタ121はオフ状態に維持されている(即ち、トランジスタ121のチャネルであるドレイン及びソース間は非導通状態に維持されている)。回路120において、定電流回路123とトランジスタ121のソースとがノード124にて接続されており、定電流回路123は電源電圧VCPが加わる端子からノード124に向けて所定の定電流IC2を流す。定電流IC2の値は例えば10μAである。
【0060】
比較用電圧生成回路120は各比較用電圧生成回路110と同一のものであって良い。トランジスタ121及びダイオード122の電気的特性はトランジスタ111及びダイオード112の電気的特性と同じであって良く、定電流IC2の値は定電流IC1の値と同じであって良い。
【0061】
回路110[1]~110[3]の夫々について、回路110[i]は電圧V[i]を入力電圧として受け、入力電圧V[i]から比較用電圧V[i]’を生成する。iは整数を表す。上述したように、電圧V[1]、V[2]、V[3]は、夫々、電圧Vu、Vv、Vwを表すので、回路110[1]は入力電圧V[1](即ちVu)から比較用電圧V[1]’を生成し、回路110[2]は入力電圧V[2](即ちVv)から比較用電圧V[2]’を生成し、回路110[3]は入力電圧V[3](即ちVw)から比較用電圧V[3]’を生成することになる。具体的には、回路110[i]のトランジスタ111のドレインに対し電圧V[i]が入力電圧として供給され、回路110[i]のノード114での電圧が比較用電圧V[i]’として生成される。
【0062】
回路120は電圧VCTを入力電圧として受け、入力電圧VCTから比較用電圧VCT’を生成する。具体的には、回路120のトランジスタ121のドレインに対し電圧VCTが入力電圧として供給され、回路120のノード124での電圧が比較用電圧VCT’として生成される。
【0063】
図9に1つのスイッチ回路130の構成に示す。
図9に示す如く、各スイッチ回路130は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ131~133と、抵抗134及び135と、を備える。トランジスタ131及び132のオン抵抗値は例えば75Ωであり、トランジスタ133のオン抵抗値は例えば数100Ω~数kΩであり、抵抗134及び135の抵抗値は例えば100kΩである。但し、これらは例示に過ぎず、様々に変更可能である。
【0064】
各スイッチ回路130において、トランジスタ131及び132のソースとトランジスタ133のドレインはノード136にて共通接続され、トランジスタ133のソースはグランドに接続されている。トランジスタ131においてソースとバックゲートは抵抗134を介して接続され、トランジスタ132においてソースとバックゲートは抵抗135を介して接続されている。トランジスタ131及び132のゲートにはゲート制御信号CNT1が入力され、トランジスタ133のゲートにはゲート制御信号CNT2が入力される。ゲート制御信号CNT1は0Vの電位又は電源電圧VCPの電位を有する電圧信号であり、制御信号CNT1が0Vの電位を持つときトランジスタ131及び132は共にオフ状態となる一方、制御信号CNT1が電電源圧VCPの電位を持つときトランジスタ131及び132は共にオン状態となる。ゲート制御信号CNT2は0Vの電位又は5Vの電位を有する電圧信号であり、制御信号CNT2が5Vの電位を持つときトランジスタ133はオン状態となる一方、制御信号CNT2が0Vの電位を持つときトランジスタ133はオフ状態となる。
【0065】
スイッチ制御回路150(
図8参照)は、SPM駆動制御回路54(
図4参照)の制御の下、ゲート制御信号CNT1及びCNT2を各スイッチ回路130に供給することで各スイッチ回路130のトランジスタ131~133のオン/オフを制御する。尚、スイッチ制御回路150はSPM駆動制御回路54の構成要素であると解しても良い。
【0066】
図10(a)を参照し、スイッチ回路130[i]のオン状態とは、スイッチ回路130[i]のトランジスタ131及び132がオン且つスイッチ回路130[i]のトランジスタ133がオフとなる状態を指し、スイッチ回路130[i]のオフ状態とは、スイッチ回路130[i]のトランジスタ131及び132がオフ且つスイッチ回路130[i]のトランジスタ133がオンとなる状態を指す。
【0067】
図10(b)に示す如く、スイッチ回路130[1]がオン状態且つスイッチ回路130[2]及び130[3]がオフ状態となる状態をU相選択状態と称し、スイッチ回路130[2]がオン状態且つスイッチ回路130[3]及び130[1]がオフ状態となる状態をV相選択状態と称し、スイッチ回路130[3]がオン状態且つスイッチ回路130[1]及び130[2]がオフ状態となる状態をW相選択状態と称する。スイッチ制御回路150は、U相、V相、W相ウィンドウ区間において、夫々、U相、V相、W相選択状態が実現されるよう、スイッチ回路130[1]~130[3]に対する制御信号CNT1及びCNT2を生成する。
【0068】
比較用電圧生成回路110[1]~110[3]とスイッチ回路130[1]~130[3]は一対一の関係で接続される。具体的には、スイッチ回路130[i]のトランジスタ131のドレインは、対応する回路110[i]のノード114に接続される。一方、スイッチ回路130[1]~130[3]の各トランジスタ132のドレインは、比較器140の入力端子141に共通接続される。また、比較用電圧生成回路120のノード124は比較器140の入力端子142に直接接続される。コンパレータである比較器140の入力端子141、142は、夫々、非反転入力端子、反転入力端子として機能する。入力端子141、142に加わる電圧を、夫々、Vcmp1、Vcmp2にて表す。
図8の構成において、電圧Vcmp1は、U相、V相、W選択状態にて、夫々、比較用電圧V[1]’、V[2]’、V[3]’に一致し、電圧Vcmp2は常に比較用電圧V
CT’と一致する。
【0069】
電圧比較回路100において、U相、V相及びW相の内、1つの相は選択相として機能し、残りの2つの相は非選択相として機能する。スイッチ回路130[1]~130[3]がU相、V相、W相選択状態であるとき、選択相は、夫々、U相、V相、W相である。選択相についてのスイッチ回路130[i]は、対応する比較用電圧V[i]’を比較器140に伝達するよう作用し(対象スイッチ回路として機能し)、非選択相についてのスイッチ回路130[j]は、対応する比較用電圧V[j]’の比較器140への伝達を遮断するよう作用する(非対象スイッチ回路として機能する)。ここにおけるi及びjは互いに異なる整数であり、例えば、“i=1”であれば、jは2又は3である。
【0070】
図11に比較器140の入力段の詳細な回路の一例を示す。比較器140は、電圧VCPを高電位側の電源電圧とし且つ0Vを低電位側の電源電圧として動作するコンパレータである。比較器140は、入力段の構成要素として、PNP型バイポーラトランジスタとして構成されたトランジスタ143~146と、NPN型バイポーラトランジスタとして構成されたトランジスタ147及び148と、定電流回路149~151と、を備える。
【0071】
トランジスタ143において、ベースは端子141に接続され、エミッタはノード154に接続され、コレクタはグランドに接続される。トランジスタ144において、ベースは端子142に接続され、エミッタはノード156に接続され、コレクタはグランドに接続される。トランジスタ145において、ベースはノード154に接続され、エミッタはノード155に接続される。トランジスタ146において、ベースはノード156に接続され、エミッタはノード155に接続される。トランジスタ145のコレクタと、トランジスタ147のコレクタ及びベースと、トランジスタ148のベースとは互いに共通接続される。トランジスタ146及び148のコレクタ同士は互いに接続され、トランジスタ147及び148のエミッタはグランドに接続される。定電流回路149、150、151は、電源電圧VCPが加わる端子から、夫々、ノード154、155、156に向けて所定の定電流を供給する。
【0072】
このような構成により、周知のトランジスタ動作を通じて、端子141の電圧Vcmp1及び端子142のVcmp2の大小関係(高低関係)に応じ、トランジスタ148のコレクタ電圧が変化する。比較器140における図示されない出力段は、トランジスタ148のコレクタ電圧に基づき電圧Vcmp1及びVcmp2の大小関係(高低関係)を示す比較結果信号として逆起電力検出信号BEMFを出力する。この比較結果信号は、U相、V相、W相選択状態において、夫々、信号BEMFu、BEMFv、BEMFwに相当する。尚、
図11に示す回路は比較器140の入力段の等価回路であると考えて良く、電圧Vcmp1及びVcmp2の大小関係を示す信号を比較器140が出力できる限り、比較器140の内部構成を様々に変形可能である。
【0073】
図12に、各スイッチ回路130におけるトランジスタ131及び132の概略的な縦構造を示す。
図12において、p型半導体基板301は、トランジスタ131及び132を含む電圧比較回路100を集積化するための母材であり、p型半導体基板301にはグランド電位が印加される。p型半導体基板301の所定位置にn型ウェル311が形成され、n型ウェル311の上にp型ウェルとしてのp型バックケート領域312と、n型ソース領域313及びn型ドレイン領域314が形成される。p型バックケート領域312、n型ソース領域313、n型ドレイン領域314及びゲート電極315にてトランジスタ131が形成される。また、p型半導体基板301の他の所定位置にn型ウェル321が形成され、n型ウェル321の上にp型ウェルとしてのp型バックケート領域322と、n型ソース領域323及びn型ドレイン領域324が形成される。p型バックケート領域322、n型ソース領域323、n型ドレイン領域324及びゲート電極325にてトランジスタ132が形成される。n型ウェル311及び321には電源電圧VCPが印加される。抵抗134は、トランジスタ131のソース領域313とp型バックケート領域312との間に挿入され、抵抗135は、トランジスタ132のソース領域323とp型バックケート領域322との間に挿入される。
【0074】
また
図12には特に示されていないが、比較用電圧生成回路110及び120のトランジスタ111及び121は、p型半導体基板301に対して電気的に絶縁されたフローティング状態のMOSFETとして構成される。このため、ノード114からトランジスタ111に流入する電流はダイオード112を通じてドレインに抜けるしか電流経路が無く、ノード124からトランジスタ121に流入する電流はダイオード122を通じてドレインに抜けるしか電流経路が無い。
【0075】
図8に示す電圧比較回路100の動作について説明する。比較用電圧生成回路110[i]において、入力電圧V[i]及びV
CTの範囲は上述したように“-Vf”から“(VPWR+Vf)”までである。そして、電圧VCPは、電圧(VPWR+Vf)に、ダイオード112の順方向電圧を加算した電圧よりも高くなっている。このため、各回路110[i]において、定電流I
C1はノード114を介してダイオード112の順方向に流れ、結果、比較用電圧V[i]’は入力電圧V[i]よりもダイオード112の順方向電圧だけ高い電圧となる。比較用電圧生成回路120についても同様であり、電圧VCPは、電圧(VPWR+Vf)に、ダイオード122の順方向電圧を加算した電圧よりも高くなっているため、定電流I
C2はノード124を介してダイオード122の順方向に流れ、結果、比較用電圧V
CT’は入力電圧V
CTよりもダイオード122の順方向電圧だけ高い電圧となる。
【0076】
図13に、U相選択状態において、電圧Vu(即ち電圧V[1])が“-1V”であって且つ電圧V
CTも“-1V”であるときの、電圧比較回路100の各部の電圧の様子を示す。ここでは、ダイオード112及び122の順方向電圧が0.7Vであるとする。そうすると、比較用電圧V[1]’及びV
CT’は共に“-0.3V”となる。U相選択状態において、スイッチ回路130[1]はオン状態であり且つスイッチ回路130[2]及び130[3]はオフ状態であるため、“-0.3V”の比較用電圧V[1]’がスイッチ回路130[1]を介し電圧Vcmp1として端子141に加わる。
【0077】
また、比較器140を形成する各バイポーラトランジスタが能動領域で動作する際の各バイポーラトランジスタのベース-エミッタ間電圧も0.7Vであるとする。そうすると、電圧Vcmp1が“-0.3V”であるとき、トランジスタ143は能動領域にて動作可能であり、トランジスタ143のエミッタ電圧は0.4Vとなる。一方、端子142に対しては、“-0.3V”の比較用電圧V
CT’が電圧Vcmp2として加わる。電圧Vcmp2が“-0.3V”であるとき、トランジスタ144は能動領域にて動作可能であり、トランジスタ144のエミッタ電圧は0.4Vとなる。トランジスタ143及び144が能動領域で動作するときにおいて、比較器140は正しく電圧Vcmp1及びVcmp2の大小関係に応じた信号BEMFを出力できる。このため、電圧比較回路100にて比較されるべき入力電圧(
図13ではVu及びV
CT)が“-1V”であっても、正しく、その比較結果を出力することができる。
【0078】
U相選択状態において電圧V[1](即ちVu)が“-1V”より高い場合も同様であり、例えば、U相選択状態において電圧V[1]が“3V”であるならば比較用電圧V[1]’及び電圧Vcmp1は“3.7V”となり、トランジスタ143のエミッタ電圧は“4.4V”となる。電圧VCTが“-1V”より高い場合も同様である。
【0079】
U相選択状態において、電圧V[1](即ちVu)が“-1V”より相応に低い場合には正常な比較動作はできない。例えば、U相選択状態において電圧V[1](即ちVu)が“-2V”であるとき、回路110[1]における定電流IC1がノード114を介してダイオード112に流れる一方で、グランドからスイッチ回路130[1]のトランジスタ133の寄生ダイオードを介してノード136に向かう電流も、トランジスタ131のチャネルを介してダイオード112に流れる。結果として “-0.7V”程度の電圧がスイッチ回路130[1]のノード136及び比較器140の入力端子141に加わることになり、トランジスタ143は実質的に遮断状態となって電圧V[1](即ちVu)を電圧VCTと正しく比較することができなくなる。但し、正常動作すべき入力電圧の下限が“-1V”であることを前提して電圧比較回路100が設計及び使用されるので問題は無い。
【0080】
各スイッチ回路130の抵抗134及び135について説明する。各スイッチ回路130の抵抗134及び135の内、選択相における抵抗134及び135は有意に機能せず、非選択相における抵抗134及び135のみが有意が機能しうる。即ち例えば、U相選択状態においては、スイッチ回路130[1]の抵抗134及び135は有意に機能せず、スイッチ回路130[2]及び130[3]の抵抗134及び135のみが有意に機能しうる。これを、スイッチ回路130[2]に注目して説明する。
【0081】
まず、U相選択状態において、電圧Vvが“-0.7V”以上であるときには、回路110[2]のノード114の電圧(即ちV[2]’)が0V以上となるため問題は無い(このとき、回路130[2]及び110[2]に電流は流れず、回路130[2]の抵抗134にも電流は流れない)。但し、U相選択状態において、“-0.7V”よりも相応に低い電圧が電圧Vvとして加わると、
図14に示す如く、回路130[2]及び110[2]間において抵抗134を介して電流I
Jが流れる。
【0082】
図14を参照し、U相選択状態にて電圧Vvが“-2V”であることを想定して、電流I
Jに関わる説明を行う。電圧Vvが“-2V”であるとき、電圧V[2]’は“-1.3V”となる。このとき、スイッチ回路130[2]において、トランジスタ131のバックゲート及びドレイン間のpn接合(
図12においてp型バックゲート領域312及びn型ドレイン領域314間のpn接合)に電流I
Jが流れて、当該トランジスタ131のバックゲートには約“-0.6V”の電圧が加わる。この電流I
Jは、グランドから、スイッチ回路130[2]におけるトランジスタ133と、ノード136と、抵抗134と、トランジスタ131のバックゲート及びドレイン間のpn接合とを介して、回路110[2]に向けて流れることになる。仮に抵抗134が設けられずにトランジスタ131のバックゲート及びソース間が短絡されていたならば、比較的大きな電流I
Jが流れることになる。抵抗134は、この電流I
Jの大きさを小さなものに制限するための電流制限抵抗として機能する。
【0083】
トランジスタ131のバックゲート及びソース間が短絡されていたとしても、U相選択状態において電圧Vvが“-2V”程度であれば実質的な弊害は生じない可能性が高いが、電圧Vvが“-2V”よりも随分と低い場合や、スイッチ回路130[2]の構成等によっては、トランジスタ131及び133にダメージが加わる等の不都合が生じ得る。電流制限抵抗としての抵抗134の設置により、このような不都合の発生が抑制される。
【0084】
但し、抵抗134の抵抗値が0Ωであったとしても電流IJの大きさが十分に小さいことが想定される使用状況にあっては、各スイッチ回路130において、抵抗134を削除してトランジスタ131のソース及びバックゲート間を短絡して良い。
【0085】
スイッチ回路130[2]に注目して、非選択相のスイッチ回路130における抵抗134の存在意義を説明したが、これは、他の非選択相のスイッチ回路130(U相選択状態ではスイッチ回路130[3])についても同様である。
【0086】
また、
図8に示すようにスイッチ回路130[1]~130[3]は比較器140の入力端子141に繋がるノードを介して互いに接続されるが、当該ノードを介し、選択相におけるスイッチ回路130と非選択相におけるスイッチ回路130との間に電流が流れると、比較器140への入力電圧Vcmp1が非選択相の電圧(U相選択状態であればVv及びVw)の影響を受けて、選択相の電圧(U相選択状態であればVu)と電圧V
CTとの比較に支障が生じる。抵抗135は上記電流を制限する機能を担う。但し、上記電流が流れるケースが想定されないような使用状況では、各スイッチ回路130において、抵抗135を削除してトランジスタ132のソース及びバックゲート間を短絡して良い。
【0087】
図15及び
図16に、電圧比較回路100との比較に供される、第1参考構成及び第2参考構成に係る電圧比較回路910及び920を示す。電圧比較回路910では、電圧Vu、Vv及びVwの何れかが選択的に一方の比較用電圧として比較器に直接入力され、且つ、電圧V
CTが他方の比較用電圧として比較器に直接入力される。電圧比較回路910では、“-1V”の入力電圧(例えばVuとV
CT)に対して正常な比較動作を行うことができない。
【0088】
電圧比較回路920では、電圧Vu、Vv及びVwを個別に分圧抵抗で分圧し、その分圧により得た3つの電圧の何れかを選択的に一方の比較用電圧として比較器に入力し、一方で、電圧VCTも分圧抵抗で分圧し、その分圧により得た電圧を他方の比較用電圧として比較器に入力している。電圧比較回路920では、分圧抵抗の抵抗値を適切に設計することで“-1V”の入力電圧(例えばVuとVCT)に対しても正常な比較動作を行うことができる。しかしながら、分圧抵抗のばらつきにより比較の精度が劣化する或いは精度担保のために抵抗値調整(オフセットトリミング)が必要となることも多い。また、分圧抵抗と比較器の入力容量とでフィルタが形成されて伝搬遅延が大きくなることも懸念される。
【0089】
本実施形態に係る電圧比較回路100によれば、低電位側の電源電圧よりも低い入力電圧に対しても正常な比較動作を担保しつつ、当該比較動作を高精度且つ小さな伝搬遅延で実現することが可能である。
【0090】
U相選択状態を主に想定して電圧比較回路100の動作を説明したが、第1実施例に示した内容は、V相選択状態及びW相選択状態においても同様に当てはまる(選択相がU相からV相又はW相に入れ替わるだけである)。
【0091】
<<第2実施例>>
図17を参照して、第2実施例を説明する。電圧比較回路100に対し、SPM13の実際の中性点13nの電圧V
CT(以下、実中性点電圧V
CTと称することがある)の代わりに、電圧Vu、Vv及びVwに基づく仮想中性点電圧V
CT2を入力するようにしても良い。
図17は第2実施例に係る電圧比較回路100の一部構成図であり、第2実施例に係る電圧比較回路100は特に符号“100A”にて参照される。
【0092】
第2実施例の電圧比較回路100Aは、第1実施例の電圧比較回路100に対し仮想中性点電圧生成回路160を追加したものである。そして、電圧比較回路100Aでは、仮想中性点電圧生成回路160の生成電圧VCT2を実中性点電圧VCTの代わりに、比較用電圧生成回路120に入力している。その他の点に関し、第2実施例の電圧比較回路100Aは第1実施例の電圧比較回路100と同様である。
【0093】
より具体的には、仮想中性点電圧生成回路160は抵抗161~163から成り、抵抗161~163の一端に、夫々、電圧Vu、Vv、Vwが供給され、抵抗161~163の他端同士はノード164にて共通接続される。ノード164に生じる電圧が仮想中性点電圧VCT2であり、ノード164は比較用電圧生成回路120のトランジスタ121のドレインに接続される。故に、電圧比較回路100Aでは、仮想中性点電圧VCT2よりもダイオード124の順方向電圧だけ高い電圧VCT2’がノード124に加わり、ノード124が比較器140の入力端子142に接続されることで電圧VCT2’が電圧Vcmp2として比較器140に供給される。
【0094】
抵抗161~163はSPM13のコイル13u~13wを模した抵抗である。但し、抵抗161~163の抵抗値はコイル13u~13wの抵抗値と比べて随分と大きい。SPM13において、コイル13u~13wの抵抗値は実質的に互いに等しいため、抵抗161~163の抵抗値を互いに一致させることで、仮想中性点電圧VCT2は、実中性点電圧VCTと等しいとみなせる。
【0095】
第2実施例によれば、ドライバIC30の外部端子数を削減することが可能となる。即ち、電圧V
CTの入力を受けるべき外部端子TM
CT(
図4参照)を削除することが可能となる。
【0096】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。電圧比較回路100において、実中性点電圧V
CTに基づく電圧V
CT’、又は、仮想中性点電圧V
CT2に基づく電圧V
CT2’を選択的に電圧Vcmp2として比較器140に供給する構成が採用されても良い。
図18は、当該構成が実現された第3実施例に係る電圧比較回路100としての電圧比較回路100Bの一部構成図である。
【0097】
電圧比較回路100Bは、第1実施例の電圧比較回路100に対し、比較用電圧生成回路120を1つ追加すると共に、仮想中性点電圧生成回路160及び切り替え回路170を追加したものである。結果、電圧比較回路100Bには、2つの比較用電圧生成回路120が設けられることになる。説明の具体化上、実中性点電圧VCTを受ける比較用電圧生成回路120を特に“120[1]” にて参照し、仮想中性点電圧VCT2を受ける比較用電圧生成回路120を特に“120[2]” にて参照する。仮想中性点電圧生成回路160の構成、及び、生成回路160による電圧Vu、Vv及びVwに基づいた仮想中性点電圧VCT2の生成方法は第2実施例で述べた通りであり、生成回路160にて生成された仮想中性点電圧VCT2が比較用電圧生成回路120[2]に入力される。
【0098】
そして、電圧比較回路100Bでは、比較用電圧生成回路120[1]において実中性点電圧V
CTよりもダイオード122の順方向電圧だけ高い電圧V
CT’がノード124(回路120[1]のノード124)に加わり、比較用電圧生成回路120[2]において仮想中性点電圧V
CT2よりもダイオード122の順方向電圧だけ高い電圧V
CT2’がノード124(回路120[2]のノード124)に加わる。切り替え回路170は、スイッチ制御回路150(
図8参照)からの切り替え信号に基づいて、回路120[1]のノード124及び回路120[2]のノード124の何れかを選択的に比較器140の入力端子142に接続し、これによって電圧V
CT’及びV
CT2’の何れかを電圧Vcmp2として入力端子142に供給する。スイッチ制御回路150(
図8参照)は、例えば、MPU22から提供される指示信号に基づいて上記切り替え信号を生成及び出力する。
【0099】
第3実施例によれば、電圧VCT及びVCT2の内、ドライバIC30のユーザが要望する方の電圧を比較の対象とすることができる。また、原則として電圧VCTを利用するようにしつつも、断線等の影響により電圧VCTが利用できないような状況では電圧VCT2を利用するといったことも可能となる。
【0100】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。電圧比較回路において比較器140を3つ設けるようにしても良い。即ち、
図19に示す如く、比較用電圧生成回路110及び120と比較器140とから成る個別電圧比較回路210を3つ設けることで、電圧比較回路を生成するようにしても良い。3つの個別電圧比較回路210を記号“210[1]~210[3]”にて参照する。
【0101】
個別電圧比較回路210[1]~210[3]間で動作は互いに共通である。個別電圧比較回路210[i]において、比較用電圧生成回路110は電圧V[i]から比較用電圧V[i]’を生成する一方で(
図8も適宜参照)、比較用電圧生成回路120は電圧V
CT又はV
CT2から比較用電圧V
CT’又はV
CT2’を生成し(
図18も適宜参照)、比較器140は端子141に電圧Vcmp1として供給される比較用電圧V[i]’と端子142に電圧Vcmp2として供給される比較用電圧V
CT’又はV
CT2’との大小関係を示す信号を、逆起電力検出信号BEMFとして出力する。
【0102】
U相ウィンドウ区間において、個別電圧比較回路210[1]から出力される逆起電力検出信号BEMFは、コイル13uの逆起電力Euに応じた信号BEMFuとして機能し、V相ウィンドウ区間において、個別電圧比較回路210[2]から出力される逆起電力検出信号BEMFは、コイル13vの逆起電力Evに応じた信号BEMFvとして機能し、W相ウィンドウ区間において、個別電圧比較回路210[3]から出力される逆起電力検出信号BEMFは、コイル13wの逆起電力Ewに応じた信号BEMFwとして機能する。
【0103】
尚、個別電圧比較回路210[1]~210[3]間で電圧Vcmp2は共通であるため、個別電圧比較回路210[1]~210[3]に対して比較用電圧生成回路120を1つだけ設けるようにしても良い。この場合、
図19の構成を基準にして、個別電圧比較回路210[2]及び210[3]の夫々から比較用電圧生成回路120を削除し、個別電圧比較回路210[1]の比較用電圧生成回路120にて生成される比較用電圧V
CT’又はV
CT2’を、電圧Vcmp2として、個別電圧比較回路210[1]~210[3]の各比較器140の入力端子142に供給すれば良い。
【0104】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。フローティング状態のMOSFETとして構成されたトランジスタ111及び121の寄生ダイオードをダイオード112及び122として利用する方法を上述したが、上述の各実施例に係る比較用電圧生成回路110及び120において、ダイオード112及び122の夫々は、MOSFETの寄生ダイオードでなく、単なるpn接合による単体のダイオードであっても良い。この場合、上述の各実施例に係る比較用電圧生成回路110及び120において、トランジスタ111及び121を削除し、代わりに単体のダイオードをダイオード112及び122として設ければ良い。この際、トランジスタ111のソース、ドレインが接続されていたノードに、夫々、ダイオード112のアノード、カソードを接続し、トランジスタ121のソース、ドレインが接続されていたノードに、夫々、ダイオード122のアノード、カソードを接続すれば良い。
【0105】
但し、p型半導体基板301上に、直接、pn接合による単体のダイオードをダイオード112として形成すると、ダイオード112のカソードの電圧(V[i])が“-1V”であるときに、グランド電位が与えられたp型半導体基板301(
図12参照)からダイオード112のカソードに向けて電流が流れて問題が生じる。ダイオード122についても同様である。このため、pn接合による単体のダイオードをダイオード112、122として利用する場合には、p型半導体基板301に対して電気的に絶縁されたフローティング状態のダイオードとして、ダイオード112、122を構成すべきである。
【0106】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。
【0107】
電圧比較回路における低電位側の電源電圧が0Vであることを想定したが、低電位側の電源電圧は0V以外でも良い。本発明に係る電圧比較回路は、電圧比較回路への入力電圧が、電圧比較回路における低電位側の電源電圧よりも1V程度低いような状況においても、正常に比較動作を行い得る点に特徴を有する。
【0108】
トランジスタTrH及びTrLから成るハーフブリッジ回路において、トランジスタTrHのドレインは第1電源端子に接続され、トランジススタTrLのソースは第2電源端子に接続されることになるが、第1電源端子及び第2電源端子は固定された電位を有する端子であれば任意である。但し、第1電源端子における電位は第2電源端子における電位よりも高い。また、各ハーフブリッジ回路において、トランジスタTrHの寄生ダイオードとは別に、ノードNDから第1電源端子に向かう方向を順方向とするダイオードがトランジスタTrHに並列接続されていても良く、トランジスタTrLの寄生ダイオードとは別に、第2電源端子からノードNDに向かう方向を順方向とするダイオードがトランジスタTrLに並列接続されていても良い。
【0109】
駆動信号生成回路52(
図4参照)は、逆起電力検出回路53による逆起電力の検出結果とトルク指令信号Trq
*に基づいて駆動信号(DRVu、DRVv、DRVw)を生成するようにしているが、SPM13にて発生されるべきトルクが予め定まっているようなケースでは、トルク指令信号Trq
*は不要となりうる。
【0110】
SPM13が3相分のコイルにて構成される例を上述したが、SPM13が3相とは異なる複数相分のコイルにて構成されることがあっても良い。
【0111】
ドライバIC30の各構成要素は半導体集積回路の形態で形成され、当該半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置が構成される。但し、複数のディスクリート部品を用いてドライバIC30内の回路と同等の回路を構成するようにしても良い。また、SPMドライバ33単体を半導体集積回路の形態で形成し、当該半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置を構成するようにしても良い。
【0112】
トランジスタTrHがPチャネル型のMOSFETにて構成されるように各ハーフブリッジ回路を変形しても良い。トランジスタTrLをPチャネル型のMOSFETにすることも可能ではある。
【0113】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、上述の主旨を損なわない態様で、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0114】
上述の実施形態では、HDD装置1のSPM13に対するモータドライバ装置(ドライバIC30)に本発明を適用する例を挙げているが、モータを駆動する任意のモータドライバ装置に本発明を広く適用可能であり、例えば空冷用のファンモータを駆動するためのモータドライバ装置に本発明を適用しても良い。また、本発明は、コイルの逆起電力の検出用途に限らず、第1入力端子に加わる第1入力電圧(
図8の例においてVu、Vv、Vw)と第2入力端子に加わる第2入力電圧(
図8の例においてV
CT)とを比較する任意の電圧比較回路に対して本発明を広く適用可能である。用途によっては、正常動作すべき比較用電圧生成回路110又は120への入力電圧の下限が“-1V”でありながらも、比較用電圧生成回路110又は120に“-5V”といった比較的大きな負の電圧が入力されることも有り得る。このような場合において、特に上述の抵抗(電圧制限成功)134が有益に機能しうる。
【0115】
図8の構成では、第1入力端子として3つの第1入力端子(外部端子OUTu、OUTv及びOUTw、或いは、外部端子OUTu、OUTv及びOUTwに接続された3つの端子)が存在し、3つの第1入力端子に対し3つの第1入力電圧(Vu、Vv及びVw)が加わることになるが、電圧比較回路に設けられる第1入力端子の個数は1又は2でも良いし、4以上でも良い。
図4の逆起電力検出回路53においては、
図19の個別電圧比較回路210[1]~210[3]の内、何れか1つのみ又は何れか2つのみが設けられていても良く、個別電圧比較回路210[1]~210[3]の各々が本発明に係る電圧比較回路に相当すると考えても良い。
【0116】
第1入力端子及び第1入力電圧と同様に、本発明に係る電圧比較回路において、第2入力端子及び第2入力電圧の夫々の個数も2以上としても良く、この際、複数の第1入力端子及び複数の第1入力電圧に対する構成が、複数の第2入力端子及び複数の第2入力電圧に対する構成に適用されて良い。
【0117】
<<本発明の考察>>
上述の実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0118】
本発明に係る一側面に係る電圧比較回路WAは、複数の第1入力端子に加わる複数の第1入力電圧(Vu、Vv、VwとしてのV[1]、V[2]、V[3])の何れかと第2入力端子に加わる第2入力電圧(VCT又はVCT2)を比較する電圧比較回路において、前記複数の第1入力端子に対応して設けられ、各々に対応する前記第1入力電圧に基づき第1比較用電圧(V[1]’、V[2]’、V[3]’)を生成する複数の第1比較用電圧生成回路(110[1]~110[3])と、前記第2入力電圧に基づき第2比較用電圧(VCT’又はVCT2’)を生成する第2比較用電圧生成回路(120)と、前記複数の第1比較用電圧生成回路にて生成される複数の第1比較用電圧の何れかと前記第2比較用電圧との大小関係を示す信号を出力する比較器(140)と、を備え、各第1比較用電圧生成回路は、第1ダイオード(112)を有し、所定の第1定電流(IC1)を前記第1ダイオードを介し、対応する前記第1入力端子に流すことで生じる、前記第1ダイオードのアノード電圧から前記第1比較用電圧を生成し、前記第2比較用電圧生成回路は、第2ダイオード(122)を有し、所定の第2定電流(IC2)を前記第2ダイオードを介して前記第2入力端子に流すことで生じる、前記第2ダイオードのアノード電圧から前記第2比較用電圧を生成することを特徴とする。
【0119】
これにより、電圧比較回路における低電位側の電源電圧よりも低い入力電圧に対しても正常な比較動作を実現することができる。この実現にあたり、
図16の第2参考構成のような分圧抵抗は使用されないので、分圧抵抗のばらつきに起因する精度の劣化や、分圧抵抗の存在に起因する伝搬遅延の増大が抑制される。
【0120】
尚、上記複数の第1入力端子は、
図8の構成では外部端子OUTu、OUTv及びOUTwに対応し、外部端子OUTu、OUTv及びOUTwに接続された任意の3つの端子に相当すると解しても良い。上記第2入力端子は、
図8の構成では外部端子TM
CTに対応し、外部端子TM
CTに接続された任意の端子に相当すると解しても良い。或いは、上記第2入力端子は、
図17又は
図18のノード164に対応する。何れにせよ、
図8、
図17又は
図18の構成では、電圧V
CT又はV
CT2が第2入力電圧として機能する。
【0121】
具体的には例えば電圧比較回路WAにおいて、各第1比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第1MOSFET(111)を有するとともに、前記第2比較用電圧生成回路はチャネルがオフとされた第2MOSFET(121)を有し、各第1比較用電圧生成回路において前記第1MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオード(112)を前記第1ダイオードとして用いるとともに、前記第2比較用電圧生成回路において前記第2MOSFETのソース及びドレイン間の寄生ダイオード(122)を前記第2ダイオードとして用いると良い。
【0122】
また具体的には例えば電圧比較回路W
Aにおいて、前記複数の第1比較用電圧生成回路と前記比較器との間に、前記複数の第1比較用電圧の何れかを選択的に前記比較器に供給する切り替え回路(130[1]~130[3])が設けられ、前記比較器は、前記切り替え回路を介して供給された前記第1比較用電圧と前記第2比較用電圧との大小関係を示す前記信号を出力すると良い。当該切り替え回路は、
図8の構成ではスイッチ回路130[1]~130[3]にて構成される。
【0123】
より具体的には例えば電圧比較回路WAにおいて、前記切り替え回路は、前記複数の第1比較用電圧生成回路に対応して設けられた複数のスイッチ回路(130[1]~130[3])から成り、前記第1比較用電圧生成回路ごとに、前記第1比較用電圧生成回路と前記比較器との間に、対応する前記スイッチ回路が設けられ、前記複数のスイッチ回路の内の何れかのスイッチ回路(選択相のスイッチ回路130)が、対応する前記第1比較用電圧を前記比較器に伝達する対象スイッチ回路として機能する一方で、前記複数のスイッチ回路の内の他のスイッチ回路(非選択相のスイッチ回路130)が、対応する前記第1比較用電圧の前記比較器への伝達を遮断する非対象スイッチ回路として機能すると良い。
【0124】
更に具体的には例えば電圧比較回路W
Aの各スイッチ回路において、当該スイッチ回路が前記非対象スイッチ回路として機能するとき、対応する前記第1比較用電圧に応じ、対応する前記第1比較用電圧生成回路と当該スイッチ回路との間に電流が流れ(
図14の例において、非選択相のスイッチ回路130[2]について、対応する比較用電圧V[2]’に応じ、対応する比較用電圧生成回路110[2]と当該スイッチ回路130[2]との間に電流I
Jが流れ)、各スイッチ回路には、前記電流を制限する電流制限抵抗(134)が設けられると良い。
【0125】
更に具体的には例えば電圧比較回路WAにおいて、各スイッチ回路は、対応する前記第1比較用電圧生成回路における前記第1ダイオードのアノードに接続された第1スイッチ用MOSFET(131)と、前記第1スイッチ用MOSFETと前記比較器との間に直列に設けられた第2スイッチ用MOSFET(132)と、前記第1及び第2スイッチ用MOSFET間の接続ノード(136)と基準電位点との間に設けられた第3スイッチ用MOSFET(133)と、を有し、前記対象スイッチ回路として機能する前記スイッチ回路(U相選択状態ではスイッチ回路130[1]に対応)において、前記第1及び第2スイッチ用MOSFETはオン且つ前記第3スイッチ用MOSFETはオフとされる一方で、前記非対象スイッチ回路として機能する前記スイッチ回路(U相選択状態ではスイッチ回路130[2]及び130[3]に対応)において、前記第1及び第2スイッチ用MOSFETはオフ且つ前記第3スイッチ用MOSFETはオンとされ、各スイッチ回路において、当該スイッチ回路が前記非対象スイッチ回路として機能するとき、対応する前記第1比較用電圧に応じ、前記基準電位点から前記第3スイッチ用MOSFETを介し、対応する前記第1比較用電圧生成回路に向けて前記電流(IJ)が流れ、当該電流を制限する位置に前記電流制限抵抗が配置されると良い。
【0126】
更に具体的には例えば電圧比較回路WAにおいて、各スイッチ回路の前記電流制限抵抗は、前記第1及び第2スイッチ用MOSFET間の接続ノード(136)と前記第1スイッチ用MOSFETのバックゲートとの間に配置されると良い。
【0127】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 HDD装置
13 SPM(スピンドルモータ)
13u、13v、13w コイル
33 SPMドライバ
50u、50v、50w ハーフブリッジ回路
51 プリドライバ回路
52 駆動信号生成回路
53 逆起電力検出回路
54 SPM駆動制御回路
100 電圧比較回路
110、120 比較用電圧生成回路
130 スイッチ回路
140 比較器