IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両 図1
  • 特許-車両 図2
  • 特許-車両 図3
  • 特許-車両 図4
  • 特許-車両 図5
  • 特許-車両 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221104BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B62D25/08 C
B60R16/04 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018160796
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020032857
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】住吉 誠
(72)【発明者】
【氏名】江藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】和田 芳雄
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-168557(JP,A)
【文献】特開昭58-12850(JP,A)
【文献】特開平9-300982(JP,A)
【文献】実開平2-100860(JP,U)
【文献】特開2012-158312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08,
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフレームと、
前記フレームに溶接された固定パネルと、
前記固定パネルの上方から下方へ通じる開口部と、
前記開口部に配置され、前記フレーム、前記固定パネル又はこれら両方に着脱可能に連結されたプレートと、
前記プレート上に設けられ前後に配置された前受け部及び後受け部と、
バッテリと、
前記前受け部と前記後受け部とにそれぞれ係止可能な2つのフック部を有し、前記バッテリを保持する保持具と、
前記バッテリの電力を伝送する電力伝送部品が収容された部品ケースと、
を備え、
前記バッテリが前記保持具を介して前記プレート上に保持され、かつ、前記部品ケースが前記プレートの下方に配置されかつ前記プレートに連結されていることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記部品ケースは、前記部品ケースの中央よりも前方と、前記部品ケースの中央よりも後方とに、前記プレートに連結される連結部を有することを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記前受け部と前記後受け部との間の中央点が、前記プレートの前後方向における中央点よりも後方に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両。
【請求項4】
前記前受け部と前記後受け部との間の中央点が、前記プレートの前後方向における中央点よりも前方に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両。
【請求項5】
前記部品ケースは、前記電力伝送部品を収容する本体部を有し、
前記バッテリの前端が前記本体部の前端よりも後方に位置し、前記バッテリの後端が前記本体部の後端よりも後方に位置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記プレートと前記部品ケースとの連結部が、前記バッテリの下方に位置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モノコック構造の車両において、エンジンルームのフレーム(枠体)又はフレームに溶接された固定パネルなどに、バッテリブラケットを介してバッテリが搭載されることがある(例えば、特許文献1の図3を参照)。フレーム又はフレームに溶接された固定パネルは剛性が高く、車両に衝撃が加わった場合でも、バッテリを十分に支持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-225750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HEV(Hybrid Electric Vehicle)などの車両においては、エンジンに加えて、モータ及びPCU(Power Control Unit)等の多くのユニットがエンジンルームに搭載される。このため、余剰スペースが少なく、多くのユニットのレイアウト自由度が低下する。エンジンを有さないEV(Electric Vehicle)あるいはモータを有さないエンジン車両であっても、車両のコンパクト化が図られることで、多くのユニットのレイアウト自由度が低下する。
【0005】
一方、補機用のバッテリ、並びに、バッテリの電力線を開閉するリレーなどの電力伝送部品は、組立及び整備上の観点から容易に着脱可能に車両に搭載できると好ましい。さらに、バッテリの支持構造には、車両に衝撃が加わった場合でもバッテリの支持が十分に維持されることが要求される。
【0006】
本発明は、バッテリ及び電力伝送部品の組立及び整備の作業性を低下させずに、バッテリ及び電力伝送部品を小さな区画に配置でき、かつ、車両に衝撃が加わってもバッテリの支持を維持できる構造を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
車体のフレームと、
前記フレームに溶接された固定パネルと、
前記固定パネルの上方から下方へ通じる開口部と、
前記開口部に配置され、前記フレーム、前記固定パネル又はこれら両方に着脱可能に連結されたプレートと、
前記プレート上に設けられ前後に配置された前受け部及び後受け部と、
バッテリと、
前記前受け部と前記後受け部とにそれぞれ係止可能な2つのフック部を有し、前記バッテリを保持する保持具と、
前記バッテリの電力を伝送する電力伝送部品が収容された部品ケースと、
を備え、
前記バッテリが前記保持具を介して前記プレート上に保持され、かつ、前記部品ケースが前記プレートの下方に配置されかつ前記プレートに連結されていることを特徴とする車両である。
【0008】
ここで、「車体のフレーム」とは、フレーム構造におけるフレームに加え、モノコック構造における枠体、サイドメンバ、クロスメンバ及び補強フレーム等が含まれる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両において、
前記部品ケースは、前記部品ケースの中央よりも前方と、前記部品ケースの中央よりも後方とに、前記プレートに連結される連結部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両において、
前記前受け部と前記後受け部との間の中央点が、前記プレートの前後方向における中央点よりも後方に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両において、
前記前受け部と前記後受け部との間の中央点が、前記プレートの前後方向における中央点よりも前方に位置することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両において、
前記部品ケースは、前記電力伝送部品を収容する本体部を有し、
前記バッテリの前端が前記本体部の前端よりも後方に位置し、前記バッテリの後端が前記本体部の後端よりも後方に位置することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両において、
前記プレートと前記部品ケースとの連結部が、前記バッテリの下方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バッテリと電力伝送部品とがプレートの上下に配置されることで、バッテリと電力伝送部品とを水平方向に並べて配置する場合と比べて、小さな区画に配置できる。さらに、プレートが着脱可能に連結されるので、固定パネルの開口部の下方に電力伝送部品を配置しても、プレートを外して電力伝送部品を取り出し及び取り付けることができる。すなわち、電力伝送部品の組立及び整備の作業性が向上する。さらには、プレートが、フレーム、固定パネル又はこれら両方に連結されることに加えて、部品カバーの連結により補強されるので、車両が衝撃を受けてもプレートの変形が抑制され、バッテリの支持を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両を示す図である。
図2】実施形態1のバッテリ及び電力伝送部品の支持構造を示す分離斜視図である。
図3】実施形態1のバッテリ及び電力伝送部品の支持構造を示す側面図である。
図4】(A)及び(B)は実施形態1の支持構造に衝撃が加わったときの作用を説明する図である。
図5】実施形態2のバッテリ及び電力伝送部品の支持構造を示す側面図である。
図6】(A)及び(B)は実施形態2の支持構造に衝撃が加わったときの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両を示す図である。図2は、実施形態1のバッテリ及び電力伝送部品の支持構造を示す分離斜視図である。図3は、実施形態1のバッテリ及び電力伝送部品の支持構造を示す側面図である。本明細書において前後上下左右の各方向は、車両の前後上下左右の各方向を意味する。
【0017】
本発明の実施形態に係る車両1は、HEV、EV、エンジン自動車などである。車両1は、図1に示すように、フレームEと、フレームEに溶接された固定パネルH1、H2と、バッテリプレート20と、バッテリB及びその保持具30と、電力伝送部品C及びその部品ケース40とを備える。バッテリプレート20は、本発明に係るプレートの一例に相当する。
【0018】
フレームEは、例えば、モノコック構造におけるエンジンルーム(EVの場合は任意の部品室)Aの枠体である。フレームEとこれに溶接された固定パネルH1、H2とは一体化されて高い剛性を有する。
【0019】
固定パネルH1、H2の間には、固定パネルH1、H2の上方から下方へ通じる開口部Q1が設けられている。開口部Q1には、バッテリプレート20が配置される。バッテリBは保持具30を介してバッテリプレート20の上に保持される。バッテリプレート20の下には電力伝送部品Cを収容した部品ケース40が保持される。
【0020】
バッテリBは、例えば鉛蓄電池などであり、走行モータを駆動する電力を蓄積する高電圧バッテリよりも低い電圧(12V等)を出力する低電圧バッテリである。バッテリBは、エンジンのセルモータを駆動する電力、又は、エンジンの補機、制御回路及びアクセサリ機器等を駆動する電力を供給する。あるいは、車両1がEVの場合、バッテリBは、制御回路、PCU及びアクセサリ機器等を駆動する電力を供給する。
【0021】
電力伝送部品Cは、バッテリBの電力伝送路を開閉するリレーを含み、バッテリBの電力を伝送する。電力伝送部品Cは、部品ケース40内に固定される。
【0022】
バッテリプレート20は、バッテリBが搭載される金属板又は補強された樹脂板である。図ではバッテリプレート20として平板形状の例を示すが、バッテリプレート20には凹凸又は波形状の部分が含まれてもよい。
【0023】
バッテリプレート20は、フックが通されてフックを係止する前受け部25及び後受け部26を有する。前受け部25及び後受け部26は、前後方向に並んで、バッテリプレート20の上面に設けられている。図3に示すように、バッテリBが配置されたとき、前受け部25及び後受け部26はバッテリBの前面及び背面の近傍に位置する。
【0024】
バッテリプレート20は、固定パネルH1に連結される第1連結部21と、固定パネルH2に連結される第2連結部22と、部品ケース40と連結される第3連結部23及び第4連結部24とを有する。第1連結部21と第3連結部23とは、バッテリプレート20の後部に設けられ、第2連結部22と第4連結部24とは、バッテリプレート20の前部に設けられている。第1連結部21~第4連結部24は、ボルトにより連結されるボルト孔(ボルト挿通孔又はネジ穴)である。
【0025】
保持具30は、複数のフック部31、32と、複数のフック部31、32の間に介在する金具又はバンド等の介在部材33とを備える。複数のフック部31、32がバッテリBの前後でバッテリプレート20の前受け部25及び後受け部26にそれぞれ係止され、介在部材33が上からバッテリBを押さえることで、バッテリBがバッテリプレート20に保持される。
【0026】
部品ケース40は、電力伝送部品Cの下方、並びに、前後左右の水平方向のうちの少なくとも三方(例えば前方、左方、右方)を覆う本体部40Aと、他の部材に連結されるフランジ40Bとを有する。部品ケース40は、金属部材又は補強された樹脂部材である。フランジ40Bには、固定パネルH1に連結される第1連結部41と、固定パネルH2に連結される第2連結部42と、バッテリプレート20に連結される第3連結部43及び第4連結部44と、フレームEに連結される第5連結部45とが設けられている。第1連結部41、第3連結部43及び第5連結部45を有するフランジ40Bは、部品ケース40の後部に設けられ、第2連結部42と第4連結部44を有するフランジ40Bは、部品ケース40の前部に設けられている。第1連結部41~第5連結部45は、ボルトにより連結されるボルト孔(ボルト挿通孔又はネジ穴)である。
【0027】
フレームE及び固定パネルH1、H2には、開口部Q1の周囲に連結部51~55が設けられている。連結部51~55は、バッテリプレート20の第1連結部21及び第2連結部22と、部品ケース40の第1連結部41、第2連結部42及び第5連結部45とにそれぞれ対応した位置にある。連結部51~55は、ボルトにより連結されるボルト孔(ボルト挿通孔又はネジ穴)である。
【0028】
図3に示すように、支持構造の各要素が組み付けられた状態では、バッテリプレート20の前受け部25と後受け部26との間の中央点P1が、バッテリプレート20の前後方向における中央点P0よりも後方に位置する。すなわち、バッテリBはバッテリプレート20の後方寄りに配置される。これにより、前受け部25よりも前方にバッテリプレート20の余剰部分が生じる。
【0029】
さらに、支持構造の各要素が組み付けられた状態で、バッテリBの前端は部品ケース40の本体部40Aの前端よりも後方に位置し、バッテリBの後端は部品ケース40の本体部40Aの後端よりも後方に位置する。言い換えれば、バッテリBと部品ケース40とが上下に重なる配置とされ、かつ、部品ケース40の本体部40AがバッテリBよりも車体前端の近くに配置される。
【0030】
さらに、バッテリプレート20と部品ケース40とが連結される第3連結部23、43は、バッテリBの下方に位置する。第3連結部23、43には、前後に並んだ複数のボルト孔が含まれる。なお、第3連結部23は、ボルトの頭部がバッテリBと干渉しないように、ボルトの頭部を収容する凹部を有してもよい。
【0031】
<着脱方法>
【0032】
バッテリB及び電力伝送部品Cを支持する構造の各要素は、次のように組み付けられる。まず、部品ケース40の本体部40Aが開口部Q1の内側に配置される。そして、フランジ40Bの第1連結部41、第2連結部42及び第5連結部45が、固定パネルH1、H2及びフレームEの連結部53~55にそれぞれボルトにより連結される。電力伝送部品Cは、部品ケース40の組み付け前にあるいはその後に、部品ケース40に固定される。
【0033】
部品ケース40が連結されたら、次に、バッテリプレート20が開口部Q1に配置される。そして、第1連結部21~第4連結部24が、固定パネルH1、H2の連結部51、52並びに部品ケース40の第3連結部43及び第4連結部44に、それぞれボルトにより連結される。その後、バッテリプレート20の上にバッテリBが載せられ、さらに、保持具30のフック部31、32が前受け部25と後受け部26とに係止され、これによりバッテリBが固定される。
【0034】
上記の工程と逆の工程を経ることで、開口部Q1の下方に固定された電力伝送部品Cを上方に露出させ、開口部Q1から電力伝送部品Cの整備を行うことができる。さらに、開口部Q1から部品ケース40とともに電力伝送部品Cを取り外したり取り付けたりすることができる。
【0035】
<衝撃時の作用>
図4(A)及び(B)は、実施形態1の支持構造に衝撃が加わったときの作用を説明する図である。
【0036】
フレームE及び固定パネルH1、H2は、溶接により一体化され、高い剛性を有する。一方、バッテリプレート20は、連結箇所が一部に限られることから、フレームE及び固定パネルH1、H2よりも剛性が低い。さらに、バッテリプレート20の軽量化が図られる場合には、よりバッテリプレート20の剛性が低下する。
【0037】
車両1に前方から衝撃が加わった場合、図4(A)に示すように、フレームE、固定パネルH1、H2及びバッテリプレート20には前後方向の圧縮力F1が作用し、バッテリBには前方に倒れる方向の慣性力F2が作用する。
【0038】
この場合、仮にバッテリプレート20が単体でバッテリBを支持していると、前後方向の圧縮力F1によりバッテリプレート20が固定パネルH1、H2よりも変形し、かつ、バッテリBが慣性力F2により前方に傾斜する。バッテリBが前方に傾斜することで、保持具30の後方のフック部32には引っ張り力が生じ、フック部32は後受け部26に留まる。一方、バッテリプレート20のバッテリBの下方部分が例えばV字状に折れ曲がりかつバッテリBが前方に傾斜すると、保持具30の前方のフック部31に緩みが生じ、フック部31が前受け部25から外れやすくなる。
【0039】
一方、本実施形態の支持構造では、バッテリプレート20に部品ケース40が連結されることで閉断面構造が実現され、バッテリプレート20単体の構成と比べて、その剛性が向上する。このため、上記衝撃が加わった場合でも、バッテリプレート20単体の構成と比べて、図4(B)に示すように、バッテリプレート20の変形が抑制される。変形の抑制により、保持具30が緩んでフック部31、32が前受け部25及び後受け部26から外れることが抑制され、バッテリBの支持が維持される。
【0040】
さらに、本実施形態の支持構造では、部品ケース40はバッテリBよりも車体前端の近くに配置されている。これにより、バッテリプレート20の前受け部25がある範囲の圧縮力F1に対する剛性がより向上し、前受け部25が浮き上がるような変形がより抑制される。これにより、特に前方のフック部31が緩んでしまうことが抑制され、バッテリBの支持が維持される。
【0041】
さらに、バッテリプレート20のバッテリBの下方には部品ケース40と連結される第3連結部23、43がある。このため、この範囲が折れ曲がるような変形がより抑制される。これにより、特に前方のフック部31が緩んでしまうことが抑制され、バッテリBの支持が維持される。
【0042】
さらに、バッテリBは、バッテリプレート20の後方寄りに支持されているため、部品ケース40による補強の強度よりも大きな衝撃が生じた場合、バッテリプレート20の前方の余剰部分が先に変形して、バッテリBの下方部分の変形を抑制する。これにより、バッテリプレート20におけるバッテリBの下方の範囲、保持具30の前後のフック部31、32及び介在部材33からなる、左右方向から見たときの矩形の形状部分が維持される。したがって、このような場合でも、保持具30のフック部31、32が緩むことが抑制され、バッテリBの支持が維持される。
【0043】
<実施形態効果>
以上のように、実施形態1の車両1によれば、開口部Q1でバッテリプレート20が着脱可能に連結され、バッテリプレート20の上にバッテリBが配置され、その下方に電力伝送部品Cが配置される。したがって、バッテリBと電力伝送部品Cとが固定パネル上で水平方向に並んで配置される場合と比較して、エンジンルームAの小さな区画にバッテリBと電力伝送部品Cとを配置できる。さらに、バッテリプレート20を取り外して、開口部Q1の上方から電力伝送部品Cの整備等を行えるので、電力伝送部品Cを整備するのに良好な作業性が得られる。一方、バッテリプレート20は、着脱可能に連結される構造であるため、互いに溶接されたフレームE及び固定パネルH1、H2に比べて剛性が低い。しかし、バッテリプレート20の下側に部品ケース40が連結されていることで、バッテリプレート20が補強され、この補強により、車両1の前方から衝撃が加えられたときに、バッテリプレート20の変形が抑制される。したがって、保持具30のフック部31、32に緩みが生じることが抑制され、バッテリBの支持を維持できる。
【0044】
さらに、実施形態1の車両1によれば、部品ケース40の前部に第4連結部44を有し、後部に第3連結部43を有し、これらがバッテリプレート20に連結される。これにより、バッテリプレート20と部品ケース40とで閉断面構造が実現され、バッテリプレート20の部品ケース40による補強の強度が向上する。したがって、車両1の前方から衝撃が加えられたときに、バッテリプレート20の変形をより抑制できる。
【0045】
さらに、実施形態1の車両1によれば、バッテリプレート20の前受け部25と後受け部26との間の中央点P1が、バッテリプレート20の前後方向における中央点P0よりも後方に位置する。これにより、バッテリBの前方にバッテリプレート20の余剰部分が生じ、車両1に大きな衝撃が生じた場合に、余剰部分が先に変形することで、バッテリプレート20のバッテリBの底面に対向する部分の変形を抑制できる。したがって、このような場合でも、バッテリBの支持を維持できる。
【0046】
さらに、実施形態1の車両1によれば、バッテリBの前端は部品ケース40の本体部40Aの前端よりも後方に位置し、バッテリBの後端は部品ケース40の本体部40Aの後端よりも後方に位置する。したがって、バッテリBと電力伝送部品Cとを縦に重なるレイアウトで配置でき、かつ、バッテリプレート20の前受け部25の周囲の剛性を向上できる。この剛性の向上により、車両1が衝撃を受けたときにバッテリプレート20の前受け部25の周辺の変形を抑制でき、保持具30の前側のフック部31の緩みが抑制されて、バッテリBの支持を維持できる。
【0047】
さらに、実施形態2の車両1によれば、バッテリプレート20と部品ケース40との第3連結部23、43がバッテリBの下方に配置されるため、この部分の剛性が向上する。したがって、車両1が衝撃を受けたときに、バッテリプレート20におけるバッテリBの下方の部分がV字状に折れ曲がって、保持具30の前側のフック部31が緩んでしまうことを抑制できる。これにより、バッテリBの支持を維持できる。
【0048】
(実施形態2)
図5は、実施形態2のバッテリ及び電力伝送部品の支持構造を示す側面図である。図6
(A)及び図6(B)は実施形態2の支持構造に衝撃が加わったときの作用を説明する図である。
【0049】
実施形態2は、主にバッテリプレート20内のバッテリBの配置が実施形態1と異なる。実施形態1と同様の構成要素については、実施形態1と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、バッテリプレート20の前受け部25と後受け部26との間の中央点P2は、バッテリプレート20の前後方向における中央点P0よりも前方に位置する。すなわち、バッテリBはバッテリプレート20の前方寄りに配置される。これにより、後受け部26よりも後方にバッテリプレート20の余剰部分が生じる。
【0051】
車両1に前方から衝撃が加わると、図6(A)に示すように、フレームE、固定パネルH1、H2及びバッテリプレート20に前後方向の圧縮力F1が作用し、バッテリBに前方に倒れる方向の慣性力F2が作用する。しかし、実施形態2のバッテリBの支持構造においても、バッテリプレート20が部品ケース40の連結によって補強されることで、バッテリプレート20の変形が抑制され、これによりバッテリBの保持を維持できる。
【0052】
さらに、大きな衝撃が加わった場合には、図6(B)に示すように、バッテリプレート20の後部の余剰部分が先に変形することで、バッテリプレート20の中央から前方の部分の変形を抑制できる。これにより、左右方向から見てバッテリBを囲う矩形の形状部分(すなわち、バッテリプレート20のバッテリBの下方部分、保持具30の前後のフック部31、32及び介在部材33)が維持され、保持具30のフック部31、32が緩むことが抑制される。したがって、大きな衝撃が加わった場合でも、バッテリBの支持を維持できる。
【0053】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、フレームEに2つの固定パネルH1、H2が溶接されている例を示したが、フレームに一体的な固定パネルが溶接され、一体的な固定パネルに開口部が設けられていてもよい。また、上記実施形態では、フレームEがモノコック構造におけるエンジンルームAの枠体である例を示したが、車体のフレームはフレーム構造におけるフレーム、モノコック構造におけるサイドメンバ、クロスメンバ及び補強フレーム等であってもよい。また、上記実施形態では、部品ケース40が電力伝送部品Cの下方、左右及び前方を覆う構成として説明したが、電力伝送部品Cの上方又は後方を覆う構成としても良いし、前方、左右、下方の何れかを覆わない構成としてもよい。また、バッテリプレートは固定パネル、フレーム又はこれら両方に連結されればよいし、部品ケースは固定パネル及びフレームに連結されずに、バッテリプレートのみに連結されてもよい。その他、各要素の形状又は素材など、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
A エンジンルーム
B バッテリ
C 電力伝送部品
E フレーム
H1、H2 固定パネル
Q1 開口部
20 バッテリプレート(プレート)
21~24 第1連結部~第4連結部
25 前受け部
26 後受け部
30 保持具
31、32 フック部
33 介在部材
40 部品ケース
40A 本体部
40B フランジ
41~45 第1連結部~第5連結部
51~55 連結部
P0、P1、P2 中央点
図1
図2
図3
図4
図5
図6