(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20221104BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B60H1/34 611
F24F13/14 D
(21)【出願番号】P 2018181543
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 仁士
(72)【発明者】
【氏名】小森 裕太
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一知
(72)【発明者】
【氏名】三浦 孝之
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-200418(JP,A)
【文献】特開2009-073233(JP,A)
【文献】特開2015-137018(JP,A)
【文献】特開2018-016228(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194962(JP,U)
【文献】実用新案登録第2570855(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の通風路を有する筒状のリテーナと、
前記リテーナ内に配置され、かつダンパ軸を支点として、前記通風路を開放する開位置及び閉鎖する閉位置の間で傾動するシャットダンパとを備え、
前記シャットダンパの周縁部の一部は、前記ダンパ軸から径方向における外方へ遠ざかった箇所において、同ダンパ軸の軸線に平行に延びる一対のシール部により構成され、
前記リテーナの内壁面には、前記シャットダンパが前記閉位置にあるときに前記シール部がそれぞれ接触する一対の被シール部が形成された空調用レジスタであって、
前記軸線に沿う方向における各被シール部の少なくとも一部は、同軸線に対し傾斜して
おり、
前記被シール部には、前記空調用空気の流れ方向における下流側に向けて凹む凹部が前記軸線に沿って複数形成されており、
前記シール部には、前記閉位置に達する直前に前記被シール部との間に前記空調用空気を通過させるための流路となる凹凸部が形成されている空調用レジスタ。
【請求項2】
前記軸線に沿う方向における各被シール部の全体は、同軸線に対し傾斜している請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記軸線に沿う方向における各被シール部の全体は、同軸線に対し単一の角度で傾斜している請求項2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
一対の前記被シール部は、前記軸線に対し互いに同一の角度で傾斜している請求項3に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
前記シャットダンパは、前記ダンパ軸から前記空調用空気の流れ方向における上流側へ延びる一対のダンパプレートを備え、
両ダンパプレートは、前記ダンパ軸を支点として互いに反対方向へ傾動され、
前記ダンパプレート毎の前記シール部は、前記開位置では両被シール部間の中間部分で互いに隣接し、前記閉位置では、前記流れ方向に対し傾斜した状態で前記被シール部に接触するものである請求項1~4のいずれか1項に記載の空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてくる空調用空気を通風路の吹出口から吹き出す空調用レジスタに関し、より詳しくは、通風路を開放及び閉鎖するシャットダンパが設けられた空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてくる空調用空気を吹き出す空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタの一形態として、空調用空気の通風路を有する筒状のリテーナと、通風路を開放及び閉鎖するシャットダンパとを備えるものが知られている。通風路は、上記空調用空気の流れ方向における下流端に吹出口を有している。また、シャットダンパは、通風路において上記流れ方向における吹出口よりも上流に配置されており、ダンパ軸を支点として、通風路を開放する開位置と、同通風路を閉鎖する閉位置との間で傾動する。シャットダンパの周縁部の一部は、ダンパ軸から径方向における外方へ遠ざかった箇所において、同ダンパ軸の軸線に平行に延びる一対のシール部によって構成されている。
【0003】
一方、リテーナの内壁面には、シャットダンパが閉位置にあるときに上記シール部がそれぞれ接触する一対の被シール部が形成されている。
上記空調用レジスタによると、シャットダンパが開位置まで傾動されると、各シール部が被シール部から大きく離間し、通風路が大きく開放される。そのため、空調用空気をシャットダンパよりも上記流れ方向における下流側へ流れさせることができる。これに対し、シャットダンパが閉位置まで傾動されると、各シール部が、対応する被シール部に接触し、通風路が閉鎖される。そのため、空調用空気は、シャットダンパよりも上記流れ方向における下流側へ流れることを規制される。
【0004】
上記シャットダンパの一形態として、ダンパ軸から上記流れ方向における上流側へ延びる一対のダンパプレートを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。両ダンパプレートは、ダンパ軸を支点として互いに反対方向へ傾動される。そして、開位置では、ダンパプレート毎のシール部が、両被シール部間の中間部分で、互いに隣接する。各シール部が被シール部から大きく離間し、通風路が大きく開放される。これに対し、閉位置では、各ダンパプレートが、上記流れ方向に対し傾斜した状態となる。ダンパプレート毎のシール部が、リテーナの対応する被シール部に接触し、通風路が閉鎖される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の空調用レジスタでは、シャットダンパが閉位置へ傾動されるときに、各シール部の全体が、対応する被シール部の全体に同時に当たり、打音が発生するおそれがある。
【0007】
特に、上記特許文献1に記載されているように、シャットダンパが一対のダンパプレートを備える空調用レジスタでは、空調用空気が両ダンパプレートを開かせる側(閉位置側)へ押圧する。そのため、シャットダンパが閉位置へ向けて傾動されるときに、各シール部の全体が、対応する被シール部の全体に同時に勢いよく当たり、大きな打音が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シャットダンパにより通風路を閉鎖する際の打音を低減することのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する空調用レジスタは、空調用空気の通風路を有する筒状のリテーナと、前記リテーナ内に配置され、かつダンパ軸を支点として、前記通風路を開放する開位置及び閉鎖する閉位置の間で傾動するシャットダンパとを備え、前記シャットダンパの周縁部の一部は、前記ダンパ軸から径方向における外方へ遠ざかった箇所において、同ダンパ軸の軸線に平行に延びる一対のシール部により構成され、前記リテーナの内壁面には、前記シャットダンパが前記閉位置にあるときに前記シール部がそれぞれ接触する一対の被シール部が形成された空調用レジスタであって、前記軸線に沿う方向における各被シール部の少なくとも一部は、同軸線に対し傾斜している。
【0010】
上記の構成によれば、シャットダンパが開位置まで傾動されると、各シール部が被シール部から大きく離間し、通風路が大きく開放される。そのため、空調用空気は、流れ方向におけるシャットダンパの下流側へ流れることが可能である。
【0011】
この状態から、シャットダンパによって通風路を閉鎖する場合には、同シャットダンパがダンパ軸を支点として閉位置に向けて傾動される。この傾動に伴い、シャットダンパの周縁部の一部のうち、ダンパ軸から径方向における外方へ遠ざかった箇所において、同ダンパ軸の軸線に平行に延びる一対のシール部が、リテーナにおいて対応する被シール部に接近する。シャットダンパが閉位置まで傾動すると、シール部が、対応する被シール部に接触することで、両者の間がシールされる。このときには、シール部と被シール部との接触に伴い打音が発生するおそれがある。
【0012】
ここで、各シール部がダンパ軸の軸線に平行に延びているのに対し、同軸線に沿う方向における各被シール部の少なくとも一部が、同軸線に対し傾斜している。そのため、シール部と被シール部とが同時に接触する面積は、被シール部の全体が、シール部と同様に、軸線に平行に延びている場合に比べ少なくなる。従って、シール部と被シール部との接触に伴う打音が低減される。
【0013】
上記空調用レジスタにおいて、前記軸線に沿う方向における各被シール部の全体は、同軸線に対し傾斜していることが好ましい。
上記の構成によれば、ダンパ軸の軸線に沿う方向における各被シール部の全体が、同軸線に対し傾斜しているため、シャットダンパの傾動に伴い、シール部と被シール部とが同時に接触する面積は、被シール部の一部のみが軸線に対し傾斜している場合よりも小さくなる。そのため、シール部と被シール部との接触に伴う打音がより低減される。
【0014】
上記空調用レジスタにおいて、前記軸線に沿う方向における各被シール部の全体は、同軸線に対し単一の角度で傾斜していることが好ましい。
上記の構成によれば、ダンパ軸を支点とするシャットダンパの傾動に伴い、シール部が被シール部に対し徐々に接触する。シール部と被シール部とが同時に接触する面積は、シャットダンパの傾動に伴い同程度ずつ増加してゆく。そのため、シール部が被シール部に接触し始めてから、同シール部の全体が被シール部に接触するまでの期間中、シール部と被シール部との接触に伴う打音が安定して低減される。
【0015】
上記空調用レジスタにおいて、一対の前記被シール部は、前記軸線に対し互いに同一の角度で傾斜していることが好ましい。
上記の構成によれば、一方のシール部が、対応する被シール部に接触する際に生ずる打音と、他方のシール部が、対応する被シール部に接触する際に生ずる打音とが同程度となる。
【0016】
上記空調用レジスタにおいて、前記シャットダンパは、前記ダンパ軸から前記空調用空気の流れ方向における上流側へ延びる一対のダンパプレートを備え、両ダンパプレートは、前記ダンパ軸を支点として互いに反対方向へ傾動され、前記ダンパプレート毎の前記シール部は、前記開位置では両被シール部間の中間部分で互いに隣接し、前記閉位置では、前記流れ方向に対し傾斜した状態で前記被シール部に接触するものであることが好ましい。
【0017】
上記の構成によるように、シャットダンパが一対のダンパプレートを備えるものである場合、開位置では、ダンパプレート毎のシール部が、両被シール部間の中間部分で互いに隣接する。各シール部が、対応する被シール部から大きく離間し、通風路が大きく開放される。そのため、空調用空気は、流れ方向におけるシャットダンパよりも下流側へ流れることが可能である。
【0018】
この状態から、シャットダンパによって通風路を閉鎖する場合、両ダンパプレートが、それぞれのダンパ軸を支点として、閉位置に向けて、互いに反対方向(遠ざかる方向)へ傾動される。この傾動に伴い、ダンパプレート毎の周縁部におけるシール部が、対応する被シール部に接近し、上記流れ方向に対し傾斜した状態となる。各ダンパプレートが閉位置まで傾動すると、シール部が、対応する被シール部に接触する。ダンパプレート毎のシール部が、対応する被シール部との間をシールし、通風路を閉鎖する。そのため、空調用空気は、シャットダンパよりも上記流れ方向における下流側へ流れることを規制される。
【0019】
ここで、空調用空気は、両ダンパプレートを開かせる側へ押圧する。そのため、仮に、被シール部の全体が、ダンパ軸の軸線に平行に延びていると、各ダンパプレートが閉位置へ向けて傾動されるときに、各シール部の全体が、対応する被シール部の全体に勢いよく当たり、大きな打音が発生するおそれがある。
【0020】
これに対し、上記の構成によれば、ダンパプレート毎のシール部が、ダンパ軸の軸線に平行に延びているのに対し、同軸線に沿う方向における各被シール部の少なくとも一部が、同軸線に対し傾斜している。そのため、シール部と被シール部とが同時に接触する面積は、被シール部の全体が上記軸線に平行に延びている場合に比べ少なくなる。従って、ダンパプレート毎のシール部と対応する被シール部との接触に伴う打音は、効果的に低減される。
【発明の効果】
【0021】
上記空調用レジスタによれば、シャットダンパにより通風路を閉鎖する際の打音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態を示す図であり、同空調用レジスタを空調用空気の流れ方向における上流側から見た背面図。
【
図5】(a)は、
図3におけるシール部と被シール部との関係を拡大して示す説明図、(b)は、
図5(a)の一部を拡大して示す説明図。
【
図6】
図4におけるシール部と被シール部との関係を拡大して示す説明図。
【
図7】(a)~(c)は、シャットダンパの閉位置へ向かう傾動に伴い、シール部が被シール部に徐々に接触する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0024】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その左右方向における中央部、側部等には空調用レジスタが組込まれている。
図1及び
図2に示すように、空調用レジスタ10の外殻部分は、両端が開口された筒状のリテーナ11によって構成されている。リテーナ11は、空調装置の送風ダクト(図示略)と、インストルメントパネルに設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものであり、本実施形態では複数の部材を組み付けることによって構成されている。
【0025】
リテーナ11の内部空間は、送風ダクトを通じて空調装置から送られてくる空調用空気A1の流路(以下「通風路12」という)を構成している。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側(
図2では右側)を「上流」、「上流側」等といい、同空調装置から遠い側(
図2では左側)を「下流」、「下流側」等というものとする。通風路12は、上流端に空調用空気A1の流入口13を有し、下流端に同空調用空気A1の吹出口14を有している。
【0026】
上記通風路12は、リテーナ11の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、左右方向に相対向する一対の側壁部15と、上下方向に相対向する上壁部16及び底壁部17とからなる。リテーナ11内には、吹出口14から上流に向けて順に、フィン及びシャットダンパ25が配置されている。
【0027】
フィンは、複数の下流フィン21と、複数の上流フィン22とを備えている。
複数の下流フィン21は、吹出口14から吹き出される空調用空気A1の上下方向の向きを変更するためのものであり、吹出口14の上流近傍において、互いに上下方向に離間した状態で左右方向へ延びている。各下流フィン21は、左右方向に延びる下流フィン軸(図示略)により、両側壁部15に対し、上下方向への傾動可能に支持されている。全ての下流フィン21は、リンク機構(図示略)により機械的に連結されており、互いに同じ傾向の傾きとなるように同期した状態で傾動される。
【0028】
複数の上流フィン22は、吹出口14から吹き出される空調用空気A1の左右方向の向きを変更するためのものであり、上記下流フィン21よりも上流において、互いに左右方向に離間した状態で上下方向へ延びている。
図2では、1つの上流フィン22における一部分が図示されている。各上流フィン22は、上下方向に延びる上流フィン軸(図示略)により、上壁部16及び底壁部17に対し、左右方向へ傾動可能に支持されている。全ての上流フィン22は、リンク機構(図示略)により機械的に連結されており、互いに同じ傾向の傾きとなるように同期した状態で傾動される。
【0029】
シャットダンパ25は、リテーナ11内の上流フィン22よりも上流側で通風路12を開放及び閉鎖するためのものであり、上下一対のダンパプレート26,27を備えている。
【0030】
ダンパプレート26,27毎の下流部には、左右方向に延びるダンパ軸28が設けられている。ダンパ軸28は、
図2では「×」で示す箇所に設けられている。
図2~
図4に示すように、シャットダンパ25の周縁部の一部は、ダンパ軸28から径方向における外方へ遠ざかった箇所において、同ダンパ軸28の軸線L1(
図5(a)、
図6参照)に平行に延びる一対のシール部31,32によって構成されている。シャットダンパ25が上下一対のダンパプレート26,27を備える本実施形態では、上側のダンパプレート26がシール部31を有し、下側のダンパプレート27がシール部32を有している。ダンパプレート26,27毎のシール部31,32は、ダンパ軸28よりも上流側に位置している。シール部31,32は、ダンパプレート26,27の他の部分、及びリテーナ11よりも軟質の材料によって形成されている。
【0031】
なお、
図5(a)及び
図6に示すように、シール部31には、小さな複数の凹凸部30が、上記軸線L1に沿って形成されている。これは、シャットダンパ25を開位置から閉位置へ傾動させる場合、閉位置に達する直前にシール部31と被シール部34との間で大きな渦が発生しても、凹凸部30を通過させることで小さな渦に分け、風切り音(笛吹音)を抑制するためである。同様の凹凸部30は、図示はしないが、シール部32にも形成されている。
【0032】
各ダンパプレート26,27は、ダンパ軸28を支点として、
図2において実線で示すように通風路12を大きく開放する開位置と、同
図2において二点鎖線で示すように通風路12を閉鎖する閉位置との間で、互いに反対方向へ傾動される。
【0033】
ところで、
図2に示すように、上壁部16の内壁面において、流入口13の下流近傍には段差部33が形成されている。また、底壁部17の内壁面において、流入口13の下流近傍には段差部35が形成されている。段差部35は段差部33の下方に位置している。上壁部16の内壁面と底壁部17の内壁面との上下方向の間隔は、両段差部33,35よりも上流では、下流よりも広くなっている。
【0034】
段差部33には、上側のダンパプレート26が閉位置へ傾動されたときに、シール部31が接触される被シール部34が形成されている。この被シール部34は、上側ほど上流に位置するように上記流れ方向に対し傾斜している。同様に、段差部35には、下側のダンパプレート27が閉位置へ傾動されたときに、シール部32が接触される被シール部36が形成されている。この被シール部36は、下側ほど上流に位置するように上記流れ方向に対し傾斜している。従って、両被シール部34,36の上下方向の間隔は、上流側ほど大きくなる。
【0035】
さらに、
図5(a)及び
図6に示すように、上記ダンパ軸28の軸線L1に沿う方向(左右方向)における被シール部34の全体は、同軸線L1に対し、単一の角度θ1で傾斜している。なお、図示はしないが、被シール部36の全体も、軸線L1に対し単一の角度θ1で傾斜している。本実施形態では、両被シール部34,36は、ともに左側ほど上流側に位置するように、軸線L1に対し、1°程度の角度θ1、本実施形態では、0.8°の角度θ1で傾斜している。
【0036】
図5(b)に示すように、被シール部34には、軸線L1に沿って複数の凹部37が形成されている。同様の凹部37は、図示はしないが、被シール部36にも形成されている。各凹部37は、被シール部34,36において開口し、下流側へ向けて凹んでいる。こうした複数の凹部37が一定間隔毎に形成されることで、各被シール部34,36は、軸線L1に沿って波打っている。
【0037】
図2に示すように、空調用レジスタ10は、さらに、下流フィン21、上流フィン22及びシャットダンパ25を作動させる際に操作される操作ノブ41を備えている。操作ノブ41は、複数の部材を組付けることによって構成されている。これらの部材は、大きくは、ノブ本体42を構成するものと、回転部43を構成するものとからなる。ノブ本体42は、上下方向における中間部分の下流フィン21に対し、左右方向へスライド可能に装着されている。回転部43は、ノブ本体42に対し回転可能に装着されている。
【0038】
操作ノブ41の上流には、空調用空気A1の流れ方向に沿って延びる伝達シャフト44が配置されている。伝達シャフト44の下流端部は、ジョイント45により、操作ノブ41の上記回転部43に対し、屈曲可能かつ回転伝達可能に連結されている。
【0039】
伝達シャフト44と両ダンパプレート26,27との間には、同伝達シャフト44を介して伝達される回転部43の回転の方向を変更して同ダンパプレート26,27に伝達するための回転方向変換機構TM1が設けられている。回転方向変換機構TM1は、上側のダンパプレート26の下流側に設けられたアーム部46と、下側のダンパプレート27の下流側に設けられたアーム部47と、カム部材48とを備えている。上側のアーム部46は、摺動端部46aを下流端部に備えている。下側のアーム部47は、摺動端部47aを下流端部に備えている。
【0040】
両ダンパプレート26,27には、両端が開放された外筒部材49が支持されており、カム部材48はこの外筒部材49に回転可能に装着されている。カム部材48は、上記摺動端部46a,47aが摺動可能に係合されるカム溝51を外面に有している。
【0041】
上記伝達シャフト44の上流端部は、上流側のジョイント52によりカム部材48に対し、屈曲可能かつ回転伝達可能に連結されている。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
図2の実線は、両ダンパプレート26,27がともに開位置にあるときの状態を示している。両ダンパプレート26,27は、両被シール部34,36間の略中央部分で、互いに隣接する。このとき、両シール部31,32は、空調用空気A1の流れ方向、上壁部16及び底壁部17に対し略平行となる。上側のシール部31が被シール部34から下方へ大きく離間し、下側のシール部32が被シール部36から上方へ大きく離間することで、通風路12が大きく開放(全開)されている。そのため、空調用空気A1は、ダンパプレート26,27の上側と下側とに分かれて流れる。両ダンパプレート26,27を通過した空調用空気A1は、上流フィン22、下流フィン21等に沿って流れた後、吹出口14から吹き出す。
【0043】
シャットダンパ25の開位置から閉位置への切替えは、操作ノブ41における回転部43をノブ本体42に対し、一方の方向へ回転させることにより行なわれる。回転部43の上記回転は、下流側のジョイント45、伝達シャフト44及び上流側のジョイント52を介してカム部材48に伝達される。カム部材48が回転し、カム溝51において摺動端部46a,47aが係合される位置が、それぞれ変化する。両係合位置の変化に伴い、各ダンパプレート26,27がダンパ軸28を支点として、それぞれ閉位置に向けて、互いに反対方向(遠ざかる方向)へそれぞれ傾動される。すなわち、上側のダンパプレート26は反時計回り方向へ傾動され、下側のダンパプレート27は時計回り方向へ傾動される。これらの傾動により、ダンパプレート26,27毎の周縁部におけるシール部31,32が、リテーナ11の対応する被シール部34,36に接近し、通風路12の開度が減少する。上側のダンパプレート26が、上流側ほど高くなるように傾斜した状態となり、下側のダンパプレート27が、上流側ほど低くなるように傾斜した状態となる。
【0044】
回転部43の回転により、
図2において二点鎖線で示すように、両ダンパプレート26,27がともに閉位置に達すると、シール部31が被シール部34に接触し、シール部32が被シール部36に接触する。両ダンパプレート26,27はダンパ軸28を支点として屈曲した状態となり、シール部31,32が、対応する被シール部34,36との間をシールし、通風路12を閉鎖する。そのため、空調用空気A1は、シャットダンパ25を通過して、それよりも下流側へ流れることを規制される。吹出口14からの空調用空気A1の吹き出しが停止される。
【0045】
上記のようにシール部31,32が被シール部34,36に接触するときには、その接触に伴い打音が発生するおそれがある。特に、本実施形態のように、ダンパ軸28からそれぞれ上流側へ延びる一対のダンパプレート26,27に対しては、空調用空気A1が両ダンパプレート26,27を開かせる側へ押圧する。そのため、仮に、被シール部34,36のそれぞれの全体が、ダンパ軸28の軸線L1に対し傾斜していない(軸線L1に平行である)と、シャットダンパ25が閉位置へ傾動されるときに、各シール部31,32の全体が、対応する被シール部34,36の全体に勢いよく当たり、大きな打音が発生するおそれがある。
【0046】
ここで、本実施形態では、
図5(a)及び
図6に示すように、ダンパプレート26,27毎のシール部31,32がダンパ軸28の軸線L1に平行に延びているのに対し、同軸線L1に沿う方向における各被シール部34,36の全体が、ともに左側ほど上流側に位置するように、同軸線L1に対し単一の角度θ1で傾斜している。
【0047】
そのため、上側のダンパプレート26の傾動に伴いシール部31が閉位置に近づくと、同シール部31の被シール部34との間隔は、軸線L1に沿う方向で異なる。この間隔は、
図7(a)に示すように、シール部31の左端部で最も狭く、右側ほど広くなり、右端部で最大となる。
【0048】
従って、ダンパプレート26の傾動に伴い、
図7(b)に示すように、シール部31の左端部が最初に被シール部34の左端部に接触する。シール部31の被シール部34に対する接触部分は、ダンパプレート26の傾動に伴い、
図7(c)に示すように、右側へ移ってゆく。ダンパプレート26が閉位置まで傾動すると、
図5(a)及び
図6に示すように、シール部31の右端部が被シール部34の右端部に接触する、又は接触により撓む。シール部31の被シール部34との接触面積は、ダンパプレート26の閉位置側への傾動に伴い増加してゆく。なお、
図7(c)等において、シール部31のうち被シール部34と交差した状態で図示されている部分は、実際には被シール部34との接触により撓み、同被シール部34と干渉している。
【0049】
また、図示はしないが、下側のダンパプレート27についても、上記上側のダンパプレート26と同様に、傾動に伴い、シール部32が左端部から右端部に向けて順に被シール部36に接触する。シール部32の被シール部36との接触面積は、ダンパプレート27の閉位置側への傾動に伴い増加してゆく。
【0050】
従って、シール部31,32と被シール部34,36とが同時に接触する面積は、被シール部34,36の全体が上記軸線L1に平行である場合に比べ少なくなる。その結果、ダンパプレート26,27毎のシール部31,32と、これに対応する被シール部34,36との接触に伴う打音を低減することができる。
【0051】
特に、本実施形態では、軸線L1に沿う方向における各被シール部34,36の全体が、同軸線L1に対し傾斜しているため、シール部31,32と被シール部34,36とが同時に接触する面積は、同被シール部34,36の一部のみが傾斜している場合よりも小さくなる。従って、シール部31,32と被シール部34,36との接触に伴う打音をより低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記軸線L1に沿う方向における各被シール部34,36の全体が、同軸線L1に対し、単一の角度θ1で傾斜しているため、シール部31,32と被シール部34,36とが同時に接触する面積は、シャットダンパ25の傾動に伴い同程度ずつ増加してゆく。そのため、シール部31,32が被シール部34,36に接触し始めてから、同シール部31,32の全体が被シール部34,36に接触するまでの期間中、シール部31,32と被シール部34,36との接触に伴う打音を安定して低減することができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、上側の被シール部34が、軸線L1に対し傾斜する角度θ1と、下側の被シール部36が、上記軸線L1に対し傾斜する角度θ1とが、同一に設定されている。そのため、上側のシール部31及び被シール部34の接触に伴い生ずる打音と、下側のシール部32及び被シール部36の接触に伴い生ずる打音とを同程度ずつ低減することができる。
【0054】
なお、ダンパプレート26,27の上記閉位置から開位置への切替えは、
図2に示すように、操作ノブ41における回転部43がノブ本体42に対し、上記とは逆の方向に回転されることによりなされる。回転部43の上記回転は、下流側のジョイント45、伝達シャフト44及び上流側のジョイント52を介してカム部材48に伝達される。カム部材48が回転し、各ダンパプレート26,27がダンパ軸28を支点として、それぞれ開位置に向けて、互いに反対方向(近づく方向)へそれぞれ傾動される。すなわち、上側のダンパプレート26が時計回り方向へ傾動し、下側のダンパプレート27が反時計回り方向へ傾動する。これらの傾動により、ダンパプレート26,27毎の周縁部におけるシール部31,32が、対応する被シール部34,36から遠ざかり、通風路12の開度が増大する。両ダンパプレート26,27が開位置に達すると、シール部31,32が上壁部16及び底壁部17に対し略平行な状態で互いに隣接し、通風路12が大きく開放される。
【0055】
上記のように、回転部43を回転操作することで通風路12の開度を変化させ、通風路12においてシャットダンパ25を通過する空調用空気A1の量を調整することができる。
【0056】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、各被シール部34,36に、ダンパ軸28の軸線L1に沿って複数の凹部37が形成されている(
図5(b))。
【0057】
そのため、空調用空気A1が各凹部37を通過する際に整流され、騒音の発生が抑制される。また、被シール部34,36に凹部37が設けられることで、ダンパプレート26,27がそれぞれ閉位置に傾動されたときの被シール部34,36とシール部31,32との接触面積が、凹部37が設けられない場合よりも小さくなり、接触に伴う打音をさらに小さくすることができる。
【0058】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<シャットダンパ25について>
・シャットダンパ25は、ダンパプレートが一対のダンパプレート26,27によって構成されるものから、1枚のダンパプレートによって構成され、ダンパ軸を支点として開位置と閉位置との間で傾動されるものに変更されてもよい。この場合にも、上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0059】
・シャットダンパ25を開位置と閉位置との間で傾動させるための駆動機構として、上記実施形態とは異なる構成が採用されてもよい。
例えば、吹出口14の周りに操作ダイヤルが回動可能に支持され、この操作ダイヤルとシャットダンパのダンパ軸とが、リンク機構、カム機構等により連結されてもよい。この場合、操作ダイヤルを回動させることで、その回動をリンク機構等によりダンパ軸に伝達し、シャットダンパを開位置と閉位置との間で傾動させてもよい。
【0060】
・シャットダンパ25は、ダンパ軸28により、両側壁部15に代え、上壁部16及び底壁部17に対し傾動可能に支持されるものであってもよい。
・シール部31,32における凹凸部30が省略されてもよい。
【0061】
<被シール部34,36について>
・上側の被シール部34が、ダンパ軸28の軸線L1に対し傾斜する角度θ1と、下側の被シール部36が、上記軸線L1に対し傾斜する角度θ1とが、異なっていてもよい。
【0062】
・各被シール部34,36が、ダンパ軸28の軸線L1に対し、上記実施形態とは反対側に傾斜、すなわち、右側ほど上流側に位置するように傾斜してもよい。
・上側の被シール部34と、下側の被シール部36とが、ダンパ軸28の軸線L1に対し、互いに反対方向に傾斜してもよい。すなわち、一方の被シール部34(36)は、軸線L1に対し、左側ほど上流側に位置するように傾斜し、他方の被シール部36(34)は、軸線L1に対し、右側ほど上流側に位置するように傾斜してもよい。
【0063】
・ダンパ軸28の軸線L1に沿う方向における各被シール部34,36の一部のみが、同軸線L1に対し傾斜してもよい。この場合であっても、シール部31,32と被シール部34,36とが同時に接触する面積は、被シール部34,36の全体が軸線L1に平行に延びている場合に比べ少なくなる。従って、シール部31,32と被シール部34,36との接触に伴う打音を低減する効果が得られる。
【0064】
・被シール部34,36がダンパ軸28の軸線L1に対しなす角度θ1は、上記実施形態のように単一に設定されてもよいが、同軸線L1に沿う方向における部位によって異なっていてもよい。
【0065】
例えば、被シール部34,36は、軸線L1に沿う方向における中央部分が上流側へ膨らむように湾曲されてもよいし、これとは逆に、同中央部分が下流側へ凹むように湾曲されてもよい。
【0066】
また、被シール部34,36は、軸線L1に沿う方向における中央部分が上流側へ突出する山形状に屈曲されてもよいし、これとは逆に、同中央部分が下流側へ凹む谷形状に屈曲されてもよい。
【0067】
・各被シール部34,36が上記軸線L1に対し傾斜する角度θ1が大きくなるに従い、シール部31,32の被シール部34,36との接触に伴う打音を低減する効果が大きくなる。その反面、シール部31,32と被シール部34,36との間のシール性が低下するおそれがある。従って、角度θ1の設定に際しては、打音の低減とシール性の確保とを両立できる値に設定されることが望ましい。
【0068】
・被シール部34,36における凹部37が省略されてもよい。
<フィンについて>
・上流フィン22及び下流フィン21の少なくとも一方が省略されてもよい。また、上流フィン22及び下流フィン21に対し、他のフィンが加えられてもよい。
【0069】
<適用箇所について>
・上記空調用レジスタは、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所、例えばダッシュボードに組込まれるものにも適用可能である。
【0070】
・上記空調用レジスタは、空調用空気の通風路を開放及び閉鎖するシャットダンパを有するものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…空調用レジスタ、11…リテーナ、12…通風路、25…シャットダンパ、26,27…ダンパプレート、28…ダンパ軸、31,32…シール部、34,36…被シール部、A1…空調用空気、L1…軸線、θ1…角度。