(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】建物の柱梁接合部構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20221104BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 508P
(21)【出願番号】P 2018188066
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 峰里
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119316(JP,A)
【文献】実開平05-078701(JP,U)
【文献】特開平04-312639(JP,A)
【文献】特開2014-055505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
E04B 1/38 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁とを備える建物においてH型鋼からなる梁同士が交差するとともに前記梁同士と柱とが交差する柱梁接合部に適用され、
交差する前記梁同士で挟まれる部分であって前記柱の外側面に対応する部分には、前記梁におけるウェブの厚さ方向の側面及び前記梁における上下のフランジの厚さ方向の側面に対し固定されている塞ぎ板が設けられており、
前記柱梁接合部における前記塞ぎ板によって囲まれた部分には、前記柱の鉄筋が通されるとともに同柱のコンクリートが流し込まれる建物の柱梁接合部構造において、
前記梁における上下のフランジ間であって前記柱の外側面に対応する部分には上下方向に延びる板状のスチフナが配置されているとともに、同スチフナが前記梁のウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し溶接されており、
前記塞ぎ板は、前記ウェブ側の端部が前記上下のフランジ間であって前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態で同スチフナに固定されており、そのスチフナを介して前記梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し固定されて
おり、
前記塞ぎ板における前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、同部分の厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分から離れた側面側で前記スチフナに対し溶接されており、その溶接によって前記塞ぎ板が前記スチフナに対し固定されていることを特徴とする建物の柱梁接合部構造。
【請求項2】
鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁とを備える建物においてH型鋼からなる梁同士が交差するとともに前記梁同士と柱とが交差する柱梁接合部に適用され、
交差する前記梁同士で挟まれる部分であって前記柱の外側面に対応する部分には、前記梁におけるウェブの厚さ方向の側面及び前記梁における上下のフランジの厚さ方向の側面に対し固定されている塞ぎ板が設けられており、
前記柱梁接合部における前記塞ぎ板によって囲まれた部分には、前記柱の鉄筋が通されるとともに同柱のコンクリートが流し込まれる建物の柱梁接合部構造において、
前記梁における上下のフランジ間であって前記柱の外側面に対応する部分には上下方向に延びる板状のスチフナが配置されているとともに、同スチフナが前記梁のウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し溶接されており、
前記塞ぎ板は、前記ウェブ側の端部が前記上下のフランジ間であって前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態で同スチフナに固定されており、そのスチフナを介して前記梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し固定されて
おり、
前記塞ぎ板における前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、ボルト及びナットによって前記スチフナに対し締結されるとともに、同部分の厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分から離れた側面側で前記スチフナに対し溶接されるものであり、その溶接と前記ボルト及び前記ナットとにより前記塞ぎ板が前記スチフナに対し固定されていることを特徴とする建物の柱梁接合部構造。
【請求項3】
鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁とを備える建物においてH型鋼からなる梁同士が交差するとともに前記梁同士と柱とが交差する柱梁接合部に適用され、
交差する前記梁同士で挟まれる部分であって前記柱の外側面に対応する部分には、前記梁におけるウェブの厚さ方向の側面及び前記梁における上下のフランジの厚さ方向の側面に対し固定されている塞ぎ板が設けられており、
前記柱梁接合部における前記塞ぎ板によって囲まれた部分には、前記柱の鉄筋が通されるとともに同柱のコンクリートが流し込まれる建物の柱梁接合部構造において、
前記梁における上下のフランジ間であって前記柱の外側面に対応する部分には上下方向に延びる板状のスチフナが配置されているとともに、同スチフナが前記梁のウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し溶接されており、
前記塞ぎ板は、前記ウェブ側の端部が前記上下のフランジ間であって前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態で同スチフナに固定されており、そのスチフナを介して前記梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し固定されて
おり、
前記塞ぎ板における前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、前記ウェブの厚さ方向の側面側の端部に、前記スチフナから離れるように曲がっている曲げ部を有していることを特徴とする建物の柱梁接合部構造。
【請求項4】
前記塞ぎ板における前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、前記ウェブの厚さ方向の側面側の端部に、前記スチフナから離れるように曲がっている曲げ部を有している請求項1
又は2に記載の建物の柱梁接合部構造。
【請求項5】
前記塞ぎ板における前記スチフナの厚さ方向両側面のうち前記梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、ボルト及びナットによって前記スチフナに対し締結されており、それらボルト及びナットによって前記塞ぎ板が前記スチフナに対し固定されている請求項
3に記載の建物の柱梁接合部構造。
【請求項6】
前記スチフナは、前記ウェブの厚さ方向の側面に対し前記フランジよりも大きく突出している請求項1~
5のいずれか一項に記載の建物の柱梁接合部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の柱梁接合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に示されるように、鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁とを備える建物、すなわち柱RC梁S構法で建てられた建物においては、梁同士が交差するとともに上記梁同士と柱とが交差する柱梁接合部が存在している。
【0003】
図12に示すように、柱梁接合部31で互いに交差する梁32としては、H型鋼が用いられる。この梁32は、上下方向に立った状態となる板状のウェブ32aと、そのウェブ32aの上下両端から水平方向に突出するフランジ32bと、を有している。そして、交差する梁32同士で挟まれる部分であって柱の外側面に対応する部分には、梁32におけるウェブ32a及びフランジ32bの厚さ方向の側面に対し溶接されている塞ぎ板33が設けられている。そして、柱梁接合部31における塞ぎ板33によって囲まれた部分には、柱の鉄筋が通されるとともに同柱のコンクリートが流し込まれる。
【0004】
図13は、塞ぎ板33と梁32との溶接部分の平断面を示している。
図13から分かるように、塞ぎ板33のウェブ32a側の端部(
図13では左端部)は、その厚さ方向の両側(
図13の上下両側)でウェブ32a及びフランジ32bに対し溶接されている。そして、そうした溶接によって塞ぎ板33が梁32に対し固定されている。
【0005】
柱RC梁S構法では、鉄筋コンクリート造の柱を形成した後、その柱の上端部に梁同士の交差部分(柱梁接合部)を配置する。更に、柱梁接合部における塞ぎ板に囲まれた部分には、その柱梁接合部よりも上段の柱を形成するための鉄筋が通されるとともに、同柱を形成するためのコンクリートが流し込まれる。このコンクリート及び上記鉄筋により、上記柱梁接合部よりも上段の柱が形成される。建物の柱RC梁S構法では、このように柱と梁とが上段に向けて段階的に形成される。そして、柱RC梁S構法で建てられた建物の柱梁接合部では、塞ぎ板が剪断抵抗となるとともに、同塞ぎ板によって柱梁接合部内のコンクリートの拘束が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】鉄筋コンクリート柱・鉄骨梁混合構造の設計と施工 2001年1月10日 日本建築学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した建物の柱梁接合部構造では、
図12及び
図13に示す塞ぎ板33におけるウェブ32a側の端部を梁32に対し固定する際、塞ぎ板33の上記端部における厚さ方向の両側(
図13の上下両側)をウェブ32a及びフランジ32bに対し溶接しなければならない。しかし、塞ぎ板33の上記端部における厚さ方向両側面のうち梁32同士の交差部分に近い側面側(
図13の上側)のウェブ32a及びフランジ32bに対する溶接については、交差する梁32同士及び塞ぎ板33で囲まれた狭い部分の内側から、塞ぎ板33の上記端部とウェブ32a及びフランジ32bとの境界部分に対して実施しなければならない。従って、上記溶接を行う作業者が、交差する梁32同士及び塞ぎ板33で囲まれた部分であってウェブ32a及びフランジ32bの厚さ方向の側面付近といった狭い部分に溶接のために手を入れにくくなることは否めず、それに起因して塞ぎ板33を梁32に固定するための作業が困難となっていた。
【0008】
本発明の目的は、塞ぎ板を梁に固定するための作業が困難となることを抑制できる建物の柱梁接合部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する建物の柱梁接合部構造は、鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁とを備える建物においてH型鋼からなる梁同士が交差するとともに梁同士と柱とが交差する柱梁接合部に適用される。交差する梁同士で挟まれる部分であって柱の外側面に対応する部分には、上記梁におけるウェブの厚さ方向の側面及び前記梁における上下のフランジの厚さ方向の側面に対し固定されている塞ぎ板が設けられる。そして、柱梁接合部における塞ぎ板によって囲まれた部分には、柱の鉄筋が通されるとともに同柱のコンクリートが流し込まれる。上記梁における上下のフランジ間であって柱の外側面に対応する部分には上下方向に延びる板状のスチフナが配置されているとともに、同スチフナが前記梁のウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し溶接される。また、上記塞ぎ板は、ウェブ側の端部が上記上下のフランジ間であって上記スチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態で同スチフナに固定されており、そのスチフナを介して上記梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し固定される。
【0010】
上記構成によれば、塞ぎ板を梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し固定する際には、まず梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対しスチフナが溶接される。詳しくは、スチフナがウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し、スチフナの厚さ方向両側のうち梁同士の交差部分に近い側と同交差部分から離れた側との両方で溶接される。スチフナにおける厚さ方向両側のうちの梁同士の交差部分に近い側での上記ウェブ及びフランジに対する溶接については、交差する梁同士によって挟まれる部分に塞ぎ板が存在していない状態で行われるため、その塞ぎ板によって上記溶接が行いにくくなることはない。その後、塞ぎ板におけるウェブ側の端部が上下のフランジ間であって上記スチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれ、その状態で塞ぎ板がスチフナに対し固定される。こうした塞ぎ板の固定は、スチフナに対し行われることから、梁におけるウェブの厚さ方向の側面から離れた位置で行われるようになり、ウェブの厚さ方向の側面付近という狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記固定のための作業を狭い場所で行わなくてもよい分、その作業が行いにくくなることを抑制できる。そして、塞ぎ板がスチフナに固定されることにより、同塞ぎ板がスチフナを介して梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に対し固定されるようになる。
【0011】
上記建物の柱梁接合部構造において、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、同部分の厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分から離れた側面側でスチフナに対し溶接されており、その溶接によって上記塞ぎ板が上記スチフナに対し固定されているものとすることが考えられる。
【0012】
この構成によれば、梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に溶接されたスチフナに対する塞ぎ板の固定が、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分の同スチフナに対する溶接によって行われる。この溶接はスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分から離れた側面側から行われるため、同溶接のための作業を梁同士及び塞ぎ板によって囲まれた部分の内側といった狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記溶接のための作業を狭い場所で行わなくてもよい分、その作業が行いにくくなることを抑制できる。また、柱梁接合部における塞ぎ板によって囲まれた部分にコンクリートが流し込まれると、同コンクリートが塞ぎ板を梁同士の交差部分から離れる方向に押すため、それによって塞ぎ板における梁側の端部がスチフナに対し押し付けられる。従って、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分が、そのスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側で同スチフナに対し溶接されていないとしても、上記側面側でのスチフナと塞ぎ板との固定が弱くなることはない。
【0013】
上記建物の柱梁接合部構造において、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、ボルト及びナットによってスチフナに対し締結されており、それらボルト及びナットによって上記塞ぎ板が上記スチフナに対し固定されているものとすることが考えられる。
【0014】
この構成によれば、梁におけるウェブ及びフランジの厚さ方向の側面に溶接されたスチフナに対する塞ぎ板の固定が、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分と同スチフナとのボルト及びナットによる締結を通じて行われる。このボルト及びナットによる締結は、梁におけるウェブの厚さ方向の側面から離れた位置で行われるようになり、ウェブの厚さ方向の側面付近といった狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記ボルト及び上記ナットによる締結のための作業を狭い場所で行わなくてもよい分、その作業が行いにくくなることを抑制できる。
【0015】
上記建物の柱梁接合部構造において、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、ボルト及びナットによってスチフナに対し締結されるとともに、同部分の厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分から離れた側面側でスチフナに対し溶接されるものであり、その溶接とボルト及びナットとにより上記塞ぎ板が上記スチフナに対し固定されているものとすることが考えられる。
【0016】
この構成によれば、次のようにスチフナに対する塞ぎ板の固定を行うことができる。すなわち、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分と同スチフナとをボルト及びナットによって締結し、その状態のもとで上記部分の厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分から離れた側面側でのスチフナに対する溶接を行う。このように、スチフナと塞ぎ板とがボルト及びナットによって締結された状態のもとで上記溶接が行われることにより、その溶接の際にスチフナと塞ぎ板との位置ずれ等が生じることを抑制でき、上記溶接を行いやすくすることができる。また、柱梁接合部における塞ぎ板によって囲まれた部分にコンクリートが流し込まれるとき、同コンクリートにより塞ぎ板が梁同士の交差部分から離れる方向に押されることにより、同塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分が、スチフナから離れる方向に向けて、上記溶接された部分を中心に回動しようとする。こうしたことを上記ボルト及びナットによって抑制することができる。
【0017】
上記建物の柱梁接合部構造において、上記スチフナは、ウェブの厚さ方向の側面に対しフランジよりも大きく突出しているものとすることが考えられる。
この構成によれば、スチフナにおいて、ウェブの厚さ方向の側面に対し上下のフランジよりも大きく突出している部分に対し、塞ぎ板を上下にスライド移動させることにより、同塞ぎ板のウェブ側の端部を上記スチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込むことが可能になる。このため、塞ぎ板におけるスチフナに対応する部分を、同スチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に簡単に差し込むことができるようになる。
【0018】
上記建物の柱梁接合部構造において、塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、ウェブの厚さ方向の側面側の端部に、スチフナから離れるように曲がっている曲げ部を有しているものとすることが考えられる。
【0019】
この構成によれば、柱梁接合部における塞ぎ板によって囲まれた部分にコンクリートが流し込まれるとき、同コンクリートにより塞ぎ板が梁同士の交差部分から離れる方向に押されることにより、同塞ぎ板におけるスチフナの厚さ方向両側面のうち梁同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分が、同スチフナの先端部から外れる方向に変位しようとする。しかし、そうした変位については、流し込まれたコンクリートによって埋められる上記曲げ部が上記変位の抵抗となることによって抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、塞ぎ板を梁に固定するための作業が困難となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】同柱梁接合部における梁同士の交差部分を示す斜視図。
【
図4】梁のウェブ及びフランジに対し溶接されたスチフナ、並びに、塞ぎ板におけるスチフナに連なる部分を示す平断面図。
【
図5】梁に対する塞ぎ板の組み付け態様を示す斜視図。
【
図6】梁に対する塞ぎ板の組み付け態様を示す斜視図。
【
図7】スチフナに対する塞ぎ板の固定態様を示す斜視図。
【
図8】梁のウェブ及びフランジに対し溶接されたスチフナ、並びに、塞ぎ板におけるスチフナに連なる部分を示す平断面図。
【
図9】梁に対する塞ぎ板の組み付け態様を示す斜視図。
【
図11】スチフナに対する塞ぎ板の固定態様の他の例を示す斜視図。
【
図12】建物の柱梁接合部における梁同士の交差部分の従来例を示す斜視図。
【
図13】塞ぎ板と梁との固定態様の従来例を示す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、柱RC梁S構法で建てられた建物の柱梁接合部構造の第1実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、柱RC梁S構法で建てられた建物は、鉄筋コンクリート造の柱1と鉄骨造の梁2とを備えている。こうした建物においては、梁2同士が交差するとともに上記梁2同士と柱1とが交差する柱梁接合部3が存在している。上記梁2は、H型鋼であって、上下方向に立った状態となる板状のウェブ2aと、そのウェブ2aの上下両端から水平方向に突出するフランジ2bと、を有している。
【0024】
図3は、
図1及び
図2に示される柱梁接合部3において、交差する梁2同士を示している。梁2における上下のフランジ2b間であって柱1(
図1、
図2)の外側面に対応する部分には、上下方向に延びる板状のスチフナ4が配置されている。このスチフナ4は、梁2におけるウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面と直交しており、且つ、それら側面に対し溶接されている。また、スチフナ4における梁2のウェブ2aの厚さ方向の側面からの突出量は、梁2における上下のフランジ2bの上記側面からの突出量と等しくされている。
【0025】
柱梁接合部3において、交差する梁2同士で挟まれる部分であって、柱1の外側面に対応する部分にはそれぞれ、スチフナ4に連なるL字状に屈曲された塞ぎ板5が設けられている。この塞ぎ板5における梁2のウェブ2a側の端部は、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態で、上記スチフナ4に固定されている。そして、塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、ウェブ2a側の端部が梁2における上下のフランジ2b間に位置している。
【0026】
図4は、梁2におけるウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し溶接されたスチフナ4、及び、塞ぎ板5における上記スチフナ4に連なる部分の平断面を示している。
図4から分かるように、スチフナ4は、その厚さ方向の両側(
図4の上下両側)でウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し溶接されている。そうした溶接によってスチフナ4が梁2におけるウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し固定されている。なお、上述したように溶接された部分R2,R3は、スチフナ4とウェブ2a及びフランジ2bとの境界部分に沿って延びている。
【0027】
また、塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側(
図4では上側)に差し込まれた部分は、同部分の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分から離れた側(
図4の下側)で、スチフナ4に対し溶接されている。なお、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対し溶接された部分R1は、同スチフナ4に沿って上下方向(
図4の紙面と直交する方向)に延びている。そして、上記溶接によって塞ぎ板5がスチフナ4に対し固定されている。更に、塞ぎ板5がスチフナ4に固定されることにより、同塞ぎ板5がスチフナ4を介して梁2のウェブ2a及びフランジ2bに対し固定されている。
【0028】
なお、上述した溶接としては例えば隅肉溶接とすることが考えられるが、部分溶け込み溶接や完全溶け込み溶接といった他の溶接とすることも可能である。
建物の柱RC梁S構法では、鉄筋コンクリート造の柱1(
図2等)を形成した後、その柱1の上端部に
図3に示す梁2同士の交差部分を配置する。更に、
図2に示すように、梁2同士の交差部分(柱梁接合部3)における塞ぎ板5に囲まれた部分には、柱梁接合部3よりも上段の柱1を形成するための鉄筋6が通されるとともに、
図1に示されるように同柱1を形成するためのコンクリート11が流し込まれる。このコンクリート11及び上記鉄筋6により、上記柱梁接合部3の上側に同柱梁接合部3よりも上段の柱1が形成される。建物の柱RC梁S構法では、このように柱1と梁2とが上段に向けて段階的に形成される。そして、柱RC梁S構法で建てられた建物の柱梁接合部3では、塞ぎ板5が剪断抵抗となるとともに、同塞ぎ板5によって柱梁接合部3内のコンクリート11の拘束が行われる。
【0029】
次に、本実施形態における建物の柱梁接合部構造の作用について説明する。
塞ぎ板5を梁2におけるウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し固定する際には、まずウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し
図4に示すようにスチフナ4が溶接される。詳しくは、スチフナ4におけるウェブ2a側の端部が、ウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し、スチフナ4の厚さ方向両側(
図4の上下両側)で溶接される。スチフナ4の上記端部における厚さ方向両側のうち梁2同士の交差部分に近い側(
図4の上側)のウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対する溶接については、交差する梁2同士によって挟まれる部分(
図3参照)に塞ぎ板5が存在していない状態で行われるため、その塞ぎ板5によって上記溶接が行いにくくなることはない。その後、塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部(
図4では左端部)が、上記スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側(
図4の上側)に差し込まれる。
【0030】
詳しくは、
図5に示すように、L字状の塞ぎ板5を弾性によって元に戻り得る程度に鋭角に折り曲げる。そして、交差する梁2同士によって挟まれる部分であってスチフナ4よりも梁2同士の交差部分に近い側に、上述したように折り曲げた塞ぎ板5を挿入した後、その塞ぎ板5が弾性によって元の状態に戻されると、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分が同スチフナ4に対し接触する。これにより、
図6に示されるように、塞ぎ板5の同スチフナ4に対応する部分が、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態となる。更に、このときには、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分、すなわち梁2のウェブ2a側の端部が、その梁2における上下のフランジ2b間に位置する。
【0031】
塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分は、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれる。このときには、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分(ウェブ2a側の端部)が、梁2における上下のフランジ2b間に位置することにより、塞ぎ板5がスチフナ4に対し上下方向について位置決めされる。この状態のもと、塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部が、
図4にR1で示すように厚さ方向両側のうち梁2同士の交差部分から離れた側(
図4の下側)で、スチフナ4に対し溶接される。この溶接は、スチフナ4に対し行われることからウェブ2aの厚さ方向の側面から離れた位置で行われる。更に、上記溶接は、スチフナ4の厚さ方向両側のうち梁2同士の交差部分から離れた側(
図4の下側)から行われる。これらのことから、上記溶接のための作業を、ウェブ2aの厚さ方向の側面付近や、梁2同士及び塞ぎ板5によって囲まれた部分の内側といった狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記溶接のための作業を狭い場所で行わなくてもよい分、その作業が行いにくくなることを抑制できる。
【0032】
その後、梁2同士の交差部分(柱梁接合部3)が、
図2に示すように柱1の上端部に配置される。そして、柱梁接合部3における塞ぎ板5に囲まれた部分には柱梁接合部3よりも上段の柱1を形成するための鉄筋6が通されるとともに、
図1に示すように同柱1を形成するためのコンクリート11が流し込まれる。このように流し込まれたコンクリートは塞ぎ板5を梁2同士の交差部分から離れる方向に押すため、それによって
図4に示す塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部がスチフナ4に対し押し付けられる。従って、塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側(
図4の上側)に差し込まれた部分が、そのスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側で同スチフナ4に対し溶接されていないとしても、上記側面側でのスチフナ4と塞ぎ板5との固定が弱くなることはない。
【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)スチフナ4をウェブ2a及びフランジ2bの厚さ方向の側面に対し、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側で溶接する際、その溶接が梁2同士によって挟まれる部分に塞ぎ板5が存在していない状態で行われる。従って、その塞ぎ板5によって上記溶接が行いにくくなることはない。また、ウェブ2a及びフランジ2bに溶接されたスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に、塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部が差し込まれた状態のもと、その端部がスチフナ4に対し溶接によって固定される。このときの固定については、スチフナ4に対し行われることからウェブ2aの厚さ方向の側面から離れた位置で行われるようになり、そのウェブ2aの厚さ方向の側面付近といった狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記固定を狭い場所で行わなくてもよい分、その固定のための作業が行いにくくなることを抑制できる。これらのことから、塞ぎ板5を梁2に対し固定するための作業、詳しくはスチフナ4を介して塞ぎ板5を梁2のウェブ2a及びフランジ2bに固定するための作業が困難となることを抑制できる。
【0034】
(2)スチフナ4に対する塞ぎ板5の上記溶接は、塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部がスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態のもと、その差し込まれた部分の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分から離れた側面側でスチフナ4に対し行われる。このように上記溶接が上記側面側から行われるため、その溶接のための作業を梁2同士及び塞ぎ板5で囲まれた部分の内側といった狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記溶接のための作業を狭い場所で行わなくてもよい分、その作業が行いにくくなることを抑制できる。
【0035】
(3)また、スチフナ4に対する塞ぎ板5の上記溶接は、塞ぎ板5における梁2のウェブ2a側の端部が同梁2における上下のフランジ2b間に位置してスチフナ4に対し塞ぎ板5が上下方向について位置決めされた状態のもとで行われる。このため、上記溶接の際、スチフナ4と塞ぎ板5との上下方向についての位置ずれが生じることを抑制でき、その溶接を行いやすくすることができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本実施形態の第2実施形態について、
図7~
図9を参照して説明する。
図7に示すように、本実施形態の柱梁接合部3においては、梁2のウェブ2a及びフランジ2bに溶接されたスチフナ4が、同ウェブ2aの厚さ方向の側面に対し梁2における上下のフランジ2bよりも大きく突出している。そして、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分(ウェブ2a側の端部)は、同スチフナ4におけるウェブ2aからフランジ2bよりも突出した部分の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれており、上記部分に対し複数のボルト7及びナット8により締結されている。
【0037】
図8に示すように、スチフナ4と塞ぎ板5との厚さ方向に重なる部分にはそれぞれ、ボルト7を通すための孔9,10が形成されている。また、塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部は、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側(
図8の上側)に差し込まれた状態のもと、同部分の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分から離れた側面側(
図8の下側)でスチフナ4に対し溶接されている。そして、この溶接と上記ボルト7及びナット8とにより、塞ぎ板5がスチフナ4に対し固定されている。更に、塞ぎ板5がスチフナ4に固定されることにより、同塞ぎ板5がスチフナ4を介して梁2のウェブ2a及びフランジ2bに対し固定されている。
【0038】
図9に示すように、梁2同士の交差部分(柱梁接合部3)において、スチフナ4に対し塞ぎ板5を固定する際には、交差する梁2同士によって挟まれる部分であってスチフナ4よりも梁2同士の交差部分に近い側に対し、L字状の塞ぎ板5が上方から下方にスライド移動される。これにより、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分が、同スチフナ4における梁2のフランジ2bよりも突出した部分の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に接触する。このときには、塞ぎ板5の同スチフナ4に対応する部分(ウェブ2a側の端部)が、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態となる。更に、このときにはスチフナ4の孔9と塞ぎ板5の孔10とが対応して位置するよう、スチフナ4に対する塞ぎ板5の位置合わせも行われる。
【0039】
そして、連通する孔9,10に対しボルト7が挿通され、そのボルト7とナット8とによりスチフナ4と塞ぎ板5とが締結される。更に、塞ぎ板5におけるウェブ2a側の端部は、スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた状態のもと、
図8にR1で示すように上記差し込まれた部分の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分から離れた側面側(
図8の下側)でスチフナ4に対し溶接される。上述したように、スチフナ4と塞ぎ板5とをボルト7及びナット8で締結することにより、且つ、スチフナ4と塞ぎ板5とが溶接されることにより、スチフナ4に対し塞ぎ板5が固定される。
【0040】
以上詳述した本実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(4)スチフナ4に対する塞ぎ板5の固定は、同塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分と同スチフナ4とのボルト7及びナット8による締結、且つ、上記部分のスチフナ4に対する溶接によって行われる。従って、塞ぎ板5をスチフナ4に対し固定するために必要とされるボルト7及びナット8の数を少なく抑えることができる。
【0041】
(5)上記ボルト7及び上記ナット8によるスチフナ4と塞ぎ板5との締結は、梁2におけるウェブ2aの厚さ方向の側面から離れた位置で行われるため、そのウェブ2aの厚さ方向の側面付近といった狭い場所で行わなくてもよくなる。従って、上記ボルト7及び上記ナット8による締結のための作業を狭い場所で行わなくてもよい分、その作業が行いにくくなることを抑制できる。このため、塞ぎ板5を梁2に対し固定するための作業、詳しくはスチフナ4を介して塞ぎ板5を梁2のウェブ2aに固定するための作業が困難となることを抑制できる。
【0042】
(6)塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分と同スチフナ4とをボルト7及びナット8によって締結し、その状態のもとで上記部分の厚さ方向両側のうち梁2同士の交差部分から離れた側でのスチフナ4に対する溶接を行うことが可能となる。このように、スチフナ4と塞ぎ板5とをボルト7及びナット8で締結した状態のもとで上記溶接を行うことにより、その溶接の際にスチフナ4と塞ぎ板5との位置ずれ等が生じることを抑制できるため、上記溶接を行いやすくすることができる。
【0043】
(7)スチフナ4は、梁2におけるウェブ2aの厚さ方向の側面に対し上下のフランジ2bよりも大きく突出しているため、その突出している部分に対し塞ぎ板5を上下にスライド移動させることにより、同塞ぎ板5のウェブ2a側の端部を上記スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込むことが可能になる。このため、塞ぎ板5におけるスチフナ4に対応する部分を、同スチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に簡単に差し込むことができる。
【0044】
(8)柱梁接合部3における塞ぎ板5によって囲まれた部分にコンクリート11が流し込まれるとき、同コンクリート11により塞ぎ板5が梁2同士の交差部分から離れる方向に押される。これにより、塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分が、スチフナ4から離れる方向に向けて、上記溶接された部分R1(
図8)を中心に回動しようとする。こうしたことをスチフナ4と塞ぎ板5とを締結するボルト7及びナット8によって抑制することができる。
【0045】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態において、塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分は、
図10に示すように梁2におけるウェブ2aの厚さ方向の側面側の端部にスチフナ4から離れるように曲がっている曲げ部5aを有するものであってもよい。
【0046】
この場合、柱梁接合部3における塞ぎ板5によって囲まれた部分にコンクリート11が流し込まれるとき、同コンクリート11により塞ぎ板5が梁2同士の交差部分から離れる方向に押される。これにより、塞ぎ板5におけるスチフナ4の厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込まれた部分が、同スチフナ4の先端部から外れる方向に変位しようとする。しかし、そうした変位については、流し込まれたコンクリート11によって埋められる上記曲げ部5aが上記変位の抵抗となることによって抑制される。
【0047】
なお、
図10に示す曲げ部5aは、塞ぎ板5におけるスチフナ4と厚さ方向に重なる部分に対し180°曲げられているが、90°や135°といった180°以外の角度で曲げられているものであってもよい。
【0048】
・第1実施形態において、スチフナ4と塞ぎ板5との固定を溶接によって行うだけでなく、それに加えて第2実施形態のようにボルト及びナットによる締結によっても行うようにしてもよい。
【0049】
・第1実施形態において、スチフナ4に対する塞ぎ板5の溶接を行わず、スチフナ4と塞ぎ板5とをボルト及びナットで締結することにより同スチフナ4に対し塞ぎ板5を固定してもよい。この場合、塞ぎ板5のウェブ2a側の端部とスチフナ4における上記端部を厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込んだ部分とをボルト及びナットで締結することにより、それらボルト及びナットのみでスチフナ4と塞ぎ板5とを固定することができる。
【0050】
・第2実施形態において、スチフナ4に対する塞ぎ板5の溶接を必ずしも行う必要はない。この場合、塞ぎ板5のウェブ2a側の端部とスチフナ4における上記端部を厚さ方向両側面のうち梁2同士の交差部分に近い側面側に差し込んだ部分とをボルト7及びナット8で締結することにより、それらボルト7及びナット8のみでスチフナ4と塞ぎ板5とを固定することができる。
【0051】
・第2実施形態において、
図11に示すように、塞ぎ板5を上記溶接のみによってスチフナ4に対し固定するようにしてもよい。この場合、ボルト7及びナット8による締結を行わなくてもよい分、スチフナ4に塞ぎ板5を固定するための作業にかかる手間をより少なくすることができる。
【0052】
・第1及び第2実施形態において、スチフナ4における梁2同士の交差部分とは反対側の面、すなわち塞ぎ板5が差し込まれる側とは反対側の面と、梁2におけるウェブ2aの厚さ方向の側面とに亘るよう支持板を溶接してもよい。この場合、柱梁接合部3における塞ぎ板5に囲まれた部分に流し込まれたコンクリート11により、塞ぎ板5及びスチフナ4が梁2同士の交差部分から離れる方向に押されたとき、それに伴ってスチフナ4が変形することを上記支持板によって抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…柱、2…梁、2a…ウェブ、2b…フランジ、3…柱梁接合部、4…スチフナ、5…塞ぎ板、5a…曲げ部、6…鉄筋、7…ボルト、8…ナット、9…孔、10…孔、11…コンクリート。