(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】カートン
(51)【国際特許分類】
B65D 5/42 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
B65D5/42 Z
(21)【出願番号】P 2018222058
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2017230110
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:平成30年10月2日 展示会名、開催場所:2018東京国際包装展 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-10-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】新井 亜清
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宣人
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡野 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大砂 契
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040444(JP,A)
【文献】特許第3092848(JP,B2)
【文献】特開2016-108054(JP,A)
【文献】特開2007-145396(JP,A)
【文献】特開2017-088251(JP,A)
【文献】米国特許第04821884(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/42
B65D 5/66
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面板と、前記底面板の四方にそれぞれ連接され前記四方より立ち上がる前面板と左右の側面板と後面板と、を有する箱形の本体と、
前記後面板の上縁をヒンジ部として傾動可能に前記上縁に連接され前記本体の開口部を覆う上面板を備えた蓋体と、
を有する紙製のカートンにおいて、
前記左右の側面板のそれぞれの上縁に連接され前記上縁を側方折り部として内側に折り曲げられ前記開口部内に突出する側方フラップと、前記上面板に形成され前記ヒンジ部に連接する後方フラップと、を有し、前記後方フラップを残して前記本体から前記上面板が切り離し可能であり、
前記側方折り部を跨いで、前記側面板の外側表面と前記側方フラップの外側表面と、前記ヒンジ部を跨いで、前記後面板の外側表面と前記後方フラップの外側表面と、にラップフィルムの密着部を有することを特徴とするカートン。
【請求項2】
前記前面板の上縁に連接され前記前面板の上縁を前方折り部として内側に折り曲げられ前記開口部内に突出する前方フラップを有し、
前記前方折り部を跨いで、前記前面板の外側表面と前記前方フラップの外側表面とに、ラップフィルムの密着部を有することを特徴とする請求項
1に記載のカートン。
【請求項3】
底面板と、前記底面板の四方にそれぞれ連接され前記四方より立ち上がる前面板と左右の側面板と後面板と、を有する箱形の本体と、
前記後面板の上縁をヒンジ部として傾動可能に前記上縁に連接され前記本体の開口部を覆う上面板を備えた蓋体と、
を有する紙製のカートンにおいて、
前記前面板の上縁に連接され前記前面板の上縁を前方折り部として内側に折り曲げられ前記開口部内に突出する前方フラップと、前記上面板に形成され前記ヒンジ部に連接する後方フラップと、
を有し、前記後方フラップを残して前記本体から前記上面板が切り離し可能であり
、
前記前方折り部を跨いで、前記前面板の外側表面と前記前方フラップの外側表面と、前記ヒンジ部を跨いで、前記後面板の外側表面と前記後方フラップの外側表面と、に
ラップフィルムの密着部を有することを特徴とす
るカートン。
【請求項4】
前記前方フラップが差し込み孔を有し、
前記上面板が、前縁近傍に前記上面板が切断されて形成され、前記差し込み孔より差し込まれ前記前方フラップの下方に重なる差し込み片を有することを特徴とする請求項
2又は3に記載のカートン。
【請求項5】
底面板と、前記底面板の四方にそれぞれ連接され前記四方より立ち上がる前面板と左右の側面板と後面板と、を有する箱形の本体と、
前記後面板の上縁をヒンジ部として傾動可能に前記上縁に連接され前記本体の開口部を覆う上面板を備えた蓋体と、
を有する紙製のカートンにおいて、
前記上面板に形成され前記ヒンジ部に連接する後方フラップ
を有し、前記後方フラップを残して前記本体から前記上面板が切り離し可能であり
、
前記前面板の上縁の外側表面と、前記ヒンジ部を跨いで、前記後面板の外側表面と前記後方フラップの外側表面と、に
ラップフィルムの密着部を有することを特徴とす
るカートン。
【請求項6】
前記後方フラップが、前記ヒンジ部に両端を接する略コ字形のフラップ形成線によって囲まれ、
前記フラップ形成線が連続した或いは不連続な切断部で形成され、前記フラップ形成線の前記両端から前記ヒンジ部の両端までが不連続な切断部で形成されていることを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか一項に記載のカートン。
【請求項7】
前記後方フラップが、前記ヒンジ部の両端に両端を接する略コ字形のフラップ形成線によって囲まれ、
前記フラップ形成線が不連続な切断部で形成されていることを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか一項に記載のカートン。
【請求項8】
前記後方フラップが、前記ヒンジ部から所定の距離を介して前記ヒンジ部に平行に形成された不連続な切断部からなるフラップ形成線と、前記ヒンジ部との間の領域であることを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか一項に記載のカートン。
【請求項9】
前記密着部の幅が10mm以上であることを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のカートン。
【請求項10】
前記密着部が、ニスの塗膜であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のカートン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用の紙製のカートンに関し、ラップフィルムで覆って密封し易いカートンに関する。
【背景技術】
【0002】
調理済みの総菜等食品の販売用カートンとして、箱形の容器を備えた紙製のカートンが広く用いられている。このような紙製のカートンで販売された食品を、電子レンジで加熱する際や、冷蔵庫で保存する際には、容器の開口部をラップフィルムで覆うことが多いが、紙製の容器にはラップフィルムが密着しにくく、開口部をうまく密封できないという問題があった。
【0003】
特許文献1には、紙製の容器の開口部の側部にラップフィルムの密着層を設けることにより、開口部を覆ったラップフィルムを上記側部において容器に密着させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、開口部の側部に密着層を設けただけでは、十分にラップフィルムを密着させることができない場合があり、より容易に且つ確実にラップフィルムで密封しうるカートンが望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、紙製のカートンにおいて、ラップフィルムの密着性が高く、ラップフィルムによって良好に密封しうるカートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、底面板と、前記底面板の四方にそれぞれ連接され前記四方より立ち上がる前面板と左右の側面板と後面板と、を有する箱形の本体と、
前記後面板の上縁をヒンジ部として傾動可能に前記上縁に連接され前記本体の開口部を覆う上面板を備えた蓋体と、
を有する紙製のカートンにおいて、
前記左右の側面板のそれぞれの上縁に連接され前記上縁を側方折り部として内側に折り曲げられ前記開口部内に突出する側方フラップと、前記上面板に形成され前記ヒンジ部に連接する後方フラップと、を有し、前記後方フラップを残して前記本体から前記上面板が切り離し可能であり、
前記側方折り部を跨いで、前記側面板の外側表面と前記側方フラップの外側表面と、前記ヒンジ部を跨いで、前記後面板の外側表面と前記後方フラップの外側表面と、にラップフィルムの密着部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の第二は、底面板と、前記底面板の四方にそれぞれ連接され前記四方より立ち上がる前面板と左右の側面板と後面板と、を有する箱形の本体と、
前記後面板の上縁をヒンジ部として傾動可能に前記上縁に連接され前記本体の開口部を覆う上面板を備えた蓋体と、
を有する紙製のカートンにおいて、
前記前面板の上縁に連接され前記前面板の上縁を前方折り部として内側に折り曲げられ前記開口部内に突出する前方フラップと、前記上面板に形成され前記ヒンジ部に連接する後方フラップと、を有し、前記後方フラップを残して前記本体から前記上面板が切り離し可能であり、
前記前方折り部を跨いで、前記前面板の外側表面と前記前方フラップの外側表面と、前記ヒンジ部を跨いで、前記後面板の外側表面と前記後方フラップの外側表面と、にラップフィルムの密着部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第三は、底面板と、前記底面板の四方にそれぞれ連接され前記四方より立ち上がる前面板と左右の側面板と後面板と、を有する箱形の本体と、
前記後面板の上縁をヒンジ部として傾動可能に前記上縁に連接され前記本体の開口部を覆う上面板を備えた蓋体と、
を有する紙製のカートンにおいて、
前記上面板に形成され前記ヒンジ部に連接する後方フラップを有し、前記後方フラップを残して前記本体から前記上面板が切り離し可能であり、
前記前面板の上縁の外側表面と、前記ヒンジ部を跨いで、前記後面板の外側表面と前記後方フラップの外側表面と、にラップフィルムの密着部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカートンにおいては、ラップフィルムの密着部が、ヒンジ部を跨いで形成されているため、本体の開口部をラップフィルムで覆った際に、該ラップフィルムが本体に良好に密着し、該開口部を容易に密封することができる。
【0011】
また、側方折り部を跨ぐ密着部、及び、前方折り部のそれぞれを跨ぐ密着部、の両方を設けることにより、ラップフィルムの本体への密着性がより高くなり、さらに開口部の密封性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一のカートンの一実施形態のブランクを示す上面図である。
【
図2】
図1のカートンの蓋体を開けた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1のカートンの蓋体を本体から切り離した状態の斜視図である。
【
図4】
図1のカートンの蓋体を閉じた状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)中の領域Aの拡大図である。
【
図5】本発明の第一のカートンの他の実施形態のブランクの部分上面図であり、蓋体と後面板とを示す。
【
図6】本発明の第一のカートンの他の実施形態のブランクを示す上面図である。
【
図7】本発明の第二のカートンの一実施形態のブランクを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されない。また、以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0015】
〈第一の発明〉
図1は、本発明の第一のカートンの好ましい一実施形態のブランクの上面図であり、成形後に外側となる面を示している。また、
図2は、
図1のブランクを成形した後の、蓋体を開けた状態の斜視図であり、
図3は、蓋体を切り離した状態の斜視図であり、
図4(a)は、蓋体を閉じた状態の斜視図であり、
図4(b)は、蓋体を閉じた状態の上面図であり、
図4(c)は
図4(b)中の領域Aの拡大図である。尚、
図1中の一点鎖線で示す折り部は山折りであり、破線で示す折り部は谷折りである。
【0016】
図1~
図3に示すように、本発明のカートンは、紙製の本体1と蓋体2とを備えている。本体1は、底面板10と、底面板10の四方にそれぞれ連接され、該四方を下方折り部12として上方に折り曲げ、該四方から立ち上げた前面板20と左右の側面板40,40と後面板30と、を有する箱形である。また、蓋体2は、後面板30の上縁に連接された上面板50を備えており、該上面板50は、後面板30の上縁をヒンジ部32として傾動可能に連接され、蓋体2を閉じた際に本体1の開口部を覆う。
【0017】
本発明においては、
図1~
図3に示すように、本体1と蓋体2とを備えたカートンにおいて、本体1の開口部の二対の相対する辺の少なくとも一方の対において、少なくとも一方の辺に連接するフラップを設け、該辺を跨いでフラップと、該フラップに連接する側面板40,40、前面板20、後面板30のいずれかの外側表面に、ラップフィルムの密着部を設け、他方の辺においては、少なくとも、側面板40,40、前面板20、後面板30のいずれかの外側表面に、ラップフィルムの密着部を設けることで、ラップフィルムの本体1への密着性を高めたことに特徴を有する。
【0018】
本発明において、上記フラップは、少なくとも上記一方の対の二辺のそれぞれに形成され、該フラップをそれぞれ跨いで上記密着部が形成されていることが好ましい。係る構成においては、少なくとも下記(1)を有する構成と、下記(2)の構成が挙げられる。
(1)左右の側面板40,40の上縁を側方折り部42,42として該側方折り部42,42に連接された側方フラップ41,41を設け、該側方折り部42,42を跨いで、側方フラップ41,41と側面板40,40の外側表面に密着部43,43を形成する。
(2)前面板20の上縁を前方折り部22として該前方折り部22に連接された前方フラップ21を設けると同時に、上面板50にヒンジ部32に連接する後方フラップ31を設け、該前方折り部22を跨いで、前方フラップ21と前面板20の外側表面に密着部23を形成し、ヒンジ部32を跨いで、後方フラップ31と後面板30の外側表面に密着部33を形成する。
【0019】
また、本発明においては、上記フラップを開口部の二対の相対する辺の一方の対の一方の辺にのみ形成した構成として、好ましくは以下の(3)の構成が挙げられる。
(3)上面板50にヒンジ部32に連接する後方フラップ31を設け、ヒンジ部32を跨いで後面板30と後方フラップ31の外側表面と、前面板20の上縁の外側表面と、にラップフィルムの密着部33を設ける。
【0020】
以下、上記(1)を少なくとも有する第1の実施形態、上記(2)を有する第2の実施形態、上記(3)を有する第3の実施形態を例に挙げて本発明を詳細に説明する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
本実施形態においては、左右の側面板40,40のそれぞれの上縁に連接され、該上縁を側方折り部42,42として内側に折り曲げられて本体1の開口部内に突出する側方フラップ41,41を有し、上記側方折り部42,42を跨いで側面板40,40と側方フラップ41,41のカートンの外側となる表面にラップフィルムの密着部43,43(図中の斜線のハッチングで示される領域)が形成されている。
【0022】
図1~
図3に示すように、側方フラップ41は、側方折り部42で折り曲げられて本体1の開口部内に突出し、該側方折り部42を跨いで形成された密着部43は、側方折り部42を構成する側面板40と側方フラップ41の二面にわたって、カートンの外側表面に形成されている。よって、本体1の開口部をラップフィルムで覆った際には、ラップフィルムが2箇所の側方折り部42,42を跨いで、密着部43,43において、それぞれで二面に密着するため、開口部を良好に密封することができる。
【0023】
また、本実施形態においては、
図1~
図3に示すように、前面板20の上縁に前方フラップ21を連接し、該上縁を前方折り部22として内側に折り曲げて本体1の開口部内に突出させると同時に、前方折り部22を跨いで前面板20と前方フラップ21の、カートンの外側となる表面にもラップフィルムの密着部23(図中の斜線のハッチングで示される領域)を形成する。これにより、本体1の開口部をラップフィルムで覆った際に、ラップフィルムは該開口部の3箇所、即ち、密着部43,43,23において、それぞれで二面に密着するため、より良好に開口部を密封することができる。
【0024】
尚、本実施形態においては、側面板40,40側にのみ折り部を跨ぐ密着部43,43を設けた上で、前面板20の上縁に前方フラップ21を設けず、前面板20の上縁の外側表面(密着部23の前面板20側の領域)に密着部を設けることも可能である。この場合、密着部43,43のみを設けた構成よりもラップフィルムの密着性は、高まるため、好ましい。
【0025】
尚、側方フラップ41及び前方フラップ21は、密着部43,23をそれぞれ形成するための部材であると同時に、蓋体2を閉じた際に、上面板50に重なる部材でもあり、側方フラップ41や前方フラップ21を設けることで、本体1に収納した食品が外部にこぼれ出たり、外部から異物が侵入したりするのを抑止することができる。
【0026】
さらに本実施形態においては、
図1に示すように、蓋体2の上面板50に、ヒンジ部32に両端を接する略コ字形のフラップ形成線35によって囲まれた後方フラップ31が形成されている。本実施形態において、フラップ形成線35はニック部35aと切断部35bによって形成され、カートン成形時には後方フラップ31は上面板50の一部であるが、ニック部35aを切断することで、後方フラップ31は上面板50から切り離すことができる。よって、フラップ形成線35によって後方フラップ31を上面板50から切り離すことで、蓋体2を切り離すことなく、フラップは21,31,41,41の4枚となり、より良好にラップフィルムで開口部を密封することができる。さらに、本実施形態においては、ヒンジ部32に接するフラップ形成線35の両端からヒンジ部32の両端まで、即ち、フラップ形成線35で囲まれたヒンジ部32の中央の領域32aを挟んだ両側の領域32b(便宜上、紙面右側の領域にのみ符号を付す)がミシン目で形成されており、ヒンジ部32bにおいて上面板50を後面板30から切り離すことができる。よって、フラップ形成線35とヒンジ部32bとを切断することで、後方フラップ31を残して蓋体2を本体1から切り離すことができ、本体1の開口部をラップフィルムで覆う際に、蓋体2を除くことができる。
【0027】
さらにまた、本実施形態においては、フラップ形成線35で囲まれたヒンジ部32aを跨いで後面板30と後方フラップ31の、カートンの外側となる表面にラップフィルムの密着部33(図中の斜線のハッチングで示される領域)が形成されている。
【0028】
よって、本実施形態においては、ヒンジ部32bとフラップ形成線35と、を切断して蓋体2を本体1から切り離し、後方フラップ31をヒンジ部32aで内側に折り曲げて本体1の開口部内に突出させることで、
図3に示すように、フラップは21,31,41,41の4枚となり、ラップフィルムが密着する密着部は23,33,43,43の4箇所となり、より良好にラップフィルムで開口部を密封することができる。
【0029】
本実施形態においては、側方フラップ41,41と密着部43,43、及び、後方フラップ31及び密着部33を設け、前方フラップ21及び密着部23を設けず、側方と後方の密着部43,43,33の3箇所で、側方折り部42,42及びヒンジ部32のそれぞれを跨いでラップフィルムを密着させる形態も好ましい。また、本実施形態では、側方フラップ41,41と密着部43,43とを設けておけば、前方フラップ21も後方フラップ31も設けず、後述するように上面板50をヒンジ部32から切り離せるように構成し、後面板30の上縁(ヒンジ部32)側の外側表面(密着部33の後面板30側の領域)にのみ密着部を設けてもよい。さらにまた、本実施形態では、側方フラップ41,41と密着部43,43とを設けておけば、前方フラップ21も後方フラップ31も設けず、後面板30の上縁側の外側表面(密着部33の後面板30側の領域)と前面板20の上縁側の外側表面(密着部23の前面板20側の領域)とにそれぞれ密着部を設けた形態も好ましい。
【0030】
尚、フラップ形成線35は、後方フラップ31を残して本体1から上面板50を切り離し可能に形成されていれば、不連続な切断部で形成しても、連続した切断部で形成しても良い。フラップ形成線35を不連続な切断部で形成した場合は、本実施形態のようにニック部35aと切断部35bとしても、ミシン目であってもよい。また、本実施形態においてヒンジ部32bは、本体1から蓋体2を切り離し可能に不連続な切断部で形成していれば良く、フラップ形成線35と同様に、ニック部と切断部とで形成しても良い。
【0031】
また、フラップ形成線35を、
図5(a)に示すようにヒンジ部32から所定の距離を介して該ヒンジ部32に平行に、上面板50の相対する側辺まで一直線に形成し、フラップ形成線35とヒンジ部32との間の領域を後方フラップ31としてもよいし、
図5(b)に示すように、フラップ形成線35を、両端がヒンジ部32の両端に一致する略コ字形としても、いずれでも良いが、
図5の場合はいずれもフラップ形成線35は不連続な切断部で形成する。但し、
図1に示したように、ヒンジ部32に接するフラップ形成線35の両端がヒンジ部32の両端から離れている方が、蓋体2の本体1からの切り離しがより容易となり、好ましい。
【0032】
フラップ形成線35は、上面板50に隙間を形成するため、カートン内部の蒸気抜きの作用も果たす。また、側方フラップ41、前方フラップ21、後方フラップ31は、それぞれ立ち上げて、本体1を持ち上げるための持ち手として利用することもできる。特に、本体1を持ち上げるための持ち手として利用する上で、側方フラップ41や前方フラップ21、後方フラップ31を
図1~
図3に示した形状よりも大きく形成してもよく、側方フラップ41や前方フラップ21には指を入れる孔部を設けたり、指でつかみやすいようにエンボス加工を施したりしてもよい。
【0033】
また、本実施形態においては、側方フラップ41,41と密着部43,43とを設け、必要に応じて、上記した、前方フラップ21と密着部23、或いは、前面板20の上縁側にのみ配置される密着部や、後面板30の上縁側にのみ配置される密着部を設けておけば、後方フラップ31及び密着部33を設けず、ヒンジ部32を不連続な切断部で形成し、該ヒンジ部32において、上面板50を全て本体1から切り離し可能な構成であっても良い。
【0034】
本発明においては、蓋体2を閉じた際に、輪ゴムやテープ等を利用して蓋体2が開くのを防止することができるが、予め、蓋体2を本体1に係止する構造を備えていることが好ましい。
【0035】
図1の実施形態においては、前方フラップ21を利用して、蓋体2を閉じた際の係止構造を設けている。具体的には、前方フラップ21に、差し込み孔24を設け、上面板50の前縁近傍を切断して差し込み片54aを形成しており、蓋体2を閉じる際に、該差し込み片54aを差し込み孔24に差し込むことで、該差し込み片54aの先端が前方フラップ21の下方に重なり、
図4(b)、(c)に示すように、上面板50が前方フラップ21に係止され、蓋体2を閉じた状態が維持される。
【0036】
本実施形態においては、差し込み孔24は略半円形としているが、差し込み片54aを差し込める形状であればよく、直線状のスリットであっても構わない。また、差し込み片54aは略半楕円形の切断部54bで形成されているが、差し込み片54aは、略半円形や略U字形であっても良い。また、本実施形態では、差し込み片54aを差し込み孔24に差し込み易くするため、略半楕円形の切断部54bの両端から上面板50の前縁(上方折り部52)に平行に差し込み片54aから外側に延びる切断部54cと、該切断部54cの端部から、該切断部54cに直交する方向であって前記前縁より離れる方向に延びる切断部54dが形成され、さらに、該切断部54dから間隔をおいて平行に切断部54eが形成され、切断部54cから切断部54eまで、切断部54cの延長線に内側に向けて谷折りの折り目54fが形成されている。係る構成により、本実施形態においては、差し込み片54の周辺が柔軟になり、容易に差し込み片54aを押し下げて差し込み孔24に差し込むことができる。
【0037】
本実施形態においては、蓋体2が、上面板50の前縁に連接する上方フラップ51を有しており、蓋体2を閉じた際に、
図4(a)に示すように、該前縁を上方折り部52として折り曲げて上方フラップ51を前面板20に重ねて、テープ71等で留めてもよい。
【0038】
また、本実施形態においては、本体1の開口部の形状が長方形であるが、正方形であっても良い。また、蓋体2は、本体1の開口部の長辺側に連接されているが、
図6に示すように、短辺側に連接した構成であっても良い。
【0039】
さらに、
図1の実施形態では、前面板20と側面板40、及び、後面板30と側面板40のそれぞれの連結形態として、側面板40から前面板20及び後面板30のそれぞれに連接する連結片60a、60bを備えている。よって、連結片60a,60bを連結折り部61a,61b,61cで折り曲げて折り畳み、前面板20及び後面板30にそれぞれ重ねて接着することで箱形の本体1が形成される。尚、連結片60a、60bは、谷折りと山折りの位置を変えて折り曲げる方向を変え、側面板40、40に重ねて接着しても構わない。また、係る構成では、成形時に本体1の底部に隙間が生じるおそれがなく、水分や油分の多い食品を収納した場合であっても、液漏れするおそれがなく、好ましい。尚、本発明は係る形態に限定されるものではなく、
図6に示すように、側面板40の両側辺に連結片60c,60cを設け、該連結片60c,60cをそれぞれ連結折り部61a,61aで折り曲げて前面板20,後面板30に接着することで箱形の本体1としても良い。
【0040】
本発明において、ラップフィルムの密着部23,33,43は、カートン用のニスの塗膜で形成することができる。係るニスとしては、架橋性硬化ニスや、天然ゴムラテックスを主成分とするエマルジョン、アクリル樹脂を主成分とする水性塗料が挙げられる。架橋性硬化ニスとしては、紫外線(UV)硬化型ニスが好ましく、その種類は特に制限が無く、ラジカル重合体、付加重合体、カチオン重合体のいずれでも好ましく用いることができる。これらのニスは、印刷塗工によって所望の領域に容易に付与することができる。
【0041】
上記エマルジョンや水性塗料を用いた場合には、グラビア輪転印刷、平グラビア印刷、フレキソ印刷などにした後に熱風乾燥して乾燥塗膜を得る方法が挙げられる。また、上記紫外線硬化型ニスを用いた場合には、オフセット印刷やフレキソ印刷で塗工し、紫外線を照射して硬化膜を得ることができる。また、天然ゴムラテックスを主成分とするエマルジョンを用いる場合には、紫外線などによる劣化を防止するための添加剤を加えることが望ましい。また、粘着性の高い樹脂材料を用いた場合には、ブロッキングを防止するために、ニス中の固形分に対して10質量%~20質量%程度の無機充填材又は有機充填材を添加することが好ましく、係る充填材は平均粒径が20μm以下のものが好ましい。
【0042】
また、密着部23,33,43の、それぞれ前方折り部22、ヒンジ部32、側方折り部42に直交する方向の長さ、即ち幅は、それぞれ前方折り部22、ヒンジ部32、側方折り部42を跨いで10mmあればラップフィルムを密着させるに十分であり、好ましい。また、密着部23,33,43の面積が広くなるほど、カートンの価格が上昇するため、ラップフィルムの密着性が得られる範囲で、密着部23,33,43は狭い方が好ましい。よって、密着部23,33,43はそれぞれ前方折り部22、ヒンジ部32、側方折り部42を跨いで形成されていれば、前方折り部22、ヒンジ部32、側方折り部42に沿った方向全体に形成されている必要はなく、破線状であっても、中央部と両端部のみであっても構わない。また、所望の領域にドット状に上記塗膜を形成しても良い。尚、密着部23,33,43はそれぞれ、前方折り部22、ヒンジ部32、側方折り部42の両側に均等な幅で形成されていることが望ましい。
【0043】
また、本発明のカートンは、内側に耐油ニスを塗布しておくことにより、収納する食品に油分が含まれる場合であっても、該油分がカートンにしみ込むのを防止することができる。耐油ニスとしては、一般にカートンに用いられているニスが好ましく用いられる。
【0044】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態は、基本的に、上記第1の実施形態において説明した、密着部43,43を持たず、且つ、前方フラップ21と密着部23、後方フラップ31とフラップ形成線35と密着部33、を備えたカートンであり、係る構成上の違い以外の構成、及び、構成の詳細については、第1の実施形態での説明と同様である。
【0045】
本実施形態においても、本体1の開口部をラップフィルムで覆った際には、ラップフィルムが、前方折り部22及びヒンジ部32をそれぞれ跨ぐ密着部23,33において、それぞれで二面に密着するため、開口部を良好に密封することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、側方フラップ41,41を設けなくても構わないが、側方フラップ41,41を設けることで、蓋体2を閉じた際に、該側方フラップ41,41が上面板50と重なり、本体1に収納した食品が外部にこぼれ出たり、外部から異物が侵入するのを抑止できたりすることや、本体1を持ち上げるための持ち手として利用できることから、側方フラップ41,41を設けることが好ましく、より大きく形成して指を差し込む孔部を設けることも好ましい。
【0047】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態は、上記第2の実施形態における前方フラップ21を持たない以外は、上記第2の実施形態と同様である。即ち、上記第1の実施形態において説明した、密着部43,43、前方フラップ21を持たず、後方フラップ31及びフラップ形成線35、密着部33を備え、さらに、前面板20の上縁(前方折り部22に相当)の外側表面に密着部(密着部23の前面板20側の領域)を備えたカートンであり、係る構成上の違い以外の構成、及び、構成の詳細については、第1、第2の実施形態での説明と同様である。
【0048】
本実施形態は、折り部を跨いで二面に形成された密着部が、ヒンジ部32を跨いで上面板50と後面板30とに形成された密着部33のみであるため、折り部を跨いで二面に形成された密着部が二箇所以上である第1の実施形態や第2の実施形態に比べると、ラップフィルムの密着性は劣るものの、従来の、側面にのみ密着部を設け、折り部を跨いで二面に形成された密着部を持たないカートンに比べて、ラップフィルムの密着性は高く、開口部を良好に密封することができる。
【0049】
〈第二の発明
(参考)〉
図7は、本発明の第二のカートン
(参考)の好ましい一実施形態のブランクの上面図であり、成形後に外側となる面を示している。尚、
図1に示した第一のカートンと同じ部材には同じ符号を付した。
図3中の一点鎖線で示す折り部は山折りであり、破線で示す折り部は谷折りである。尚、ヒンジ部32は破線で示しているが、これはミシン目を表しており、
図1において該ヒンジ部32は山折りである。
【0050】
上記第一のカートンで説明したように、折り部を跨ぐ密着部を少なくとも一箇所に形成することで、開口部を覆うラップフィルムの密着性は大幅に向上する。本発明の第二のカートンは、係る密着部の作用を、蓋体2を閉じた状態で、該蓋体2をラップフィルムで覆う場合に適用した発明である。
【0051】
本発明のカートンは、上記第一のカートンと同様、紙製の本体1と蓋体2とを備え、本体1は、底面板10と、底面板10の四方にそれぞれ連接され、該四方を下方折り部12として上方に折り曲げ、該四方から立ち上げた前面板20と左右の側面板40,40と後面板30と、を有する箱形である。また、蓋体2は、後面板30の上縁に連接された上面板50を備えており、該上面板50は、後面板30の上縁をヒンジ部32として傾動可能に連接され、蓋体2を閉じた際に本体1の開口部を覆う。
【0052】
本発明のカートンは、
図1に示した、ヒンジ部32を跨いで後面板30の外側表面と上面板50の外側表面に形成された密着部33を有しているが、フラップ形成線35が形成されておらず、後方フラップ31を有していない。また、前方フラップ21を有していないが、前面板20の上縁25の外側表面にラップフィルムの密着部26を有している。係る構成上の違い以外の構成については、第一のカートンと同様であり、説明を省略する。
【0053】
本発明のカートンは、蓋体2を閉じてラップフィルムで覆った際に、密着部33がヒンジ部を跨いで上面板50と後面板30とに形成されているため、前面板20に形成された密着部26と相俟って、ラップフィルムの密着性が高く、高い密封性が得られる。よって、蓋体2を切り離さずにラップフィルムで覆って加熱したり、保存したりする場合に、良好に密封することができる。
【0054】
本発明においては、上面板50に第一のカートンで説明したような後方フラップ31が形成されていないが、必要であれば、上面板50側の密着部33が残るように、部分的に上面板50を指で割くか、はさみ等で切り離すことで、実質的に
図5(a)に示した後方フラップ31を形成することも可能である。
【0055】
尚、本発明では、
図7に示したように、側方フラップ41,41を設けることが好ましい。かかる側方フラップ41,41は、ラップフィルムで覆う際に、内側に折り込んだままでも、立ち上げて持ち手としても構わない。本実施形態では、
図7に示すように、側方フラップ41,41に指を差し込む孔部44,44を設けているため、側方フラップ41,41が加熱によって高温になっても、持ち易くなっている。
【0056】
また、本実施形態では、ヒンジ部32はミシン目で形成されており、上面板50を後面板30から切り離し易くなっている。よって、蓋体2が不要な場合には、係る蓋体2を容易に切り離すことができる。また、ラップフィルムで覆った際に、高い密封性が要求されないような場合には、密着部33の、蓋体2を切り離して後面板30の上縁側に残された領域と、前面板20の密着部26と、にラップフィルムを密着させて用いることもできる。尚、ミシン目のかわりに、第一のカートンで説明したような、ニック部と切断部とを形成してもよく、不連続な切断部であれば、同様の効果が得られる。
【0057】
本発明の密着部26,33の幅、即ち上縁25,ヒンジ部32に直行する方向の長さは、10mm以上であれば、ラップフィルムの密着性が良好であるが、密着部33においては、上記したように蓋体2を切り離して用いる場合を考慮すれば、密着部33の後面板30側の領域において幅が10mm以上であることが好ましい。
【0058】
尚、本実施形態では、
図1のカートンと同様に、連結片60a、60bを連結折り部61a、61b、61cで折り曲げて折り畳む形態としているが、
図1のカートンとは山折りと谷折りの位置を変えることで、連結片60a、60bを側面板40、40に重ねる形態としている。本実施形態においても、
図1のカートンと同様に、連結片60a、60bを前面板20及び後面板30に重ねても構わない。
【符号の説明】
【0059】
1:本体、2:蓋体、10:底面板、12:下方折り部、20:前面板、21:前方フラップ、22:前方折り部、23:密着部、24:差し込み孔、25:上縁、26:密着部、30:後面板、31:後方フラップ、32,32a,32b:ヒンジ部、33:密着部、35:フラップ形成線、35a:ニック、35b:切断部、40:側面板、41:側方フラップ、42:側方折り部、43:密着部、44:孔部、50:上面板、51:上方フラップ、52:上方折り部、54a:差し込み片、54b~54e:切断部、54f:折り目、60a,60b,60c:連結片、61a,61b,61c:連結折り部、71:シール