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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】回転機械のケーシング及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20221104BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F02B39/00 C
F02B39/00 T
F01D25/24 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019008353
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020118061
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003623(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199364(WO,A1)
【文献】特開2018-021558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F01D 25/00
F04D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フランジ部、及び、該第1フランジ部の径方向内側に位置する凹部を有する第1ハウジングと、
第2フランジ部、及び、該第2フランジ部の径方向内側に位置して前記凹部に嵌合可能な凸部を有する第2ハウジングと、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを締結する締結部材と、を備え、
前記第1ハウジングは、前記凹部及び前記凸部の嵌合により形成される位置決め部により、前記第2ハウジングに対して径方向に位置決めされ、
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングは、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に前記位置決め部又は前記位置決め部よりも径方向外側の領域において互いに当接し、該当接の位置で前記締結部材による軸方向の締結荷重を伝達する荷重伝達部を形成するとともに、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの何れか一方には、軸方向に対して傾きを有する第1傾斜面を有し、かつ他方に向かって突出し、少なくとも一部が該他方に当接する突出部が設けられ、
前記他方は、前記突出部が嵌合される前記第1傾斜面と平行な第2傾斜面を有し、
前記荷重伝達部は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の当接によって形成される
回転機械のケーシング。
【請求項2】
前記荷重伝達部は、締結前の状態で互いに平行な面同士の当接により形成される
請求項1に記載の回転機械のケーシング。
【請求項3】
バックプレートをさらに備え、
前記荷重伝達部は、前記バックプレートよりも径方向外側に位置し、
前記荷重伝達部と前記締結部材との径方向距離は、前記バックプレートと前記締結部材との径方向距離より小さい
請求項1又は2に記載の回転機械のケーシング。
【請求項4】
前記バックプレートは、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを引き離す方向に付勢する付勢力によって前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に保持されている
請求項3に記載の回転機械のケーシング。
【請求項5】
前記バックプレートの径方向外側部分は、軸方向に沿った断面において、V字形状、C字形状、又はコの字形状を有し、
前記バックプレートは、前記径方向外側部分の弾性変形によって生じる前記付勢力によって、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に保持される
請求項4に記載の回転機械のケーシング。
【請求項6】
第1フランジ部、及び、該第1フランジ部の径方向内側に位置する凹部を有する第1ハウジングと、
第2フランジ部、及び、該第2フランジ部の径方向内側に位置して前記凹部に嵌合可能な凸部を有する第2ハウジングと、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを締結する締結部材と、を備え、
前記第1ハウジングは、前記凹部及び前記凸部の嵌合により形成される位置決め部により、前記第2ハウジングに対して径方向に位置決めされ、
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングは、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に前記位置決め部又は前記位置決め部よりも径方向外側の領域において互いに当接し、該当接の位置で前記締結部材による軸方向の締結荷重を伝達する荷重伝達部を形成するとともに、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの隙間に設けられたシール部材をさらに備え、
前記荷重伝達部は、前記シール部材よりも径方向外側に位置し、
前記荷重伝達部と前記締結部材との径方向距離は、前記シール部材と前記締結部材との径方向距離より小さ
転機械のケーシング。
【請求項7】
前記シール部材は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを引き離す方向に付勢する付勢力によって前記隙間に保持されている
請求項6に記載の回転機械のケーシング。
【請求項8】
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの少なくとも何れか一方には、他方に向かって突出し、少なくとも一部が該他方に当接する突出部が設けられ、
前記荷重伝達部は、前記突出部と前記他方の当接によって形成される
請求項6又は7に記載の回転機械のケーシング。
【請求項9】
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部の少なくとも何れか一方には、他方に向かって突出し、径方向に沿った先端面の少なくとも一部が該他方に当接する突出部が設けられ、
前記他方は、前記先端面が当接する径方向に沿った平面を有し、
前記荷重伝達部は、前記先端面と前記平面の当接によって形成される
請求項乃至8の何れか一項に記載の回転機械のケーシング。
【請求項10】
前記突出部と前記他方の少なくとも何れか一方は、少なくとも一部にショットピーニング加工面を有し、
前記荷重伝達部は、前記ショットピーニング加工面の当接により形成される
請求項乃至10の何れか一項に記載の回転機械のケーシング。
【請求項11】
前記荷重伝達部は、前記締結部材の軸方向幅の範囲内の位置に形成される
請求項1乃至10の何れか一項に記載の回転機械のケーシング。
【請求項12】
前記締結部材は、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に沿って径方向に延在する延在部を有し、
前記荷重伝達部の少なくとも一部は、前記延在部の径方向幅の範囲内の位置に形成される
請求項1乃至11の何れか一項に記載の回転機械のケーシング。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のケーシング、及び、インペラを備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械のケーシング及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械として、タービン、電動機、ポンプ、エンジン、ターボチャージャ等が知られている。このような回転機械は、複数のハウジングを締結したケーシングを備えていることが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、タービンハウジングと軸受ハウジングの間にバックプレートを挟んだ状態で、挟持具(締結部材)によってタービンハウジングと軸受ハウジングとを挟持(締結)するターボチャージャが開示されている。このターボチャージャは、締結後の状態において、タービンハウジング側フランジ部と軸受ハウジング側フランジ部とを互いに離す方向に弾性力が作用するように構成されている。
【0004】
このターボチャージャは、締結前の状態では、タービンハウジング側フランジ部と軸受ハウジング側フランジ部の間に隙間を有している。締結後の状態では、両者が互いに当接するように弾性変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/199364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成によれば、タービンハウジングと軸受ハウジングは、締結前の状態では当接しないため、締結後の状態でなければ、当接状態がわからない。また、タービンハウジング及び軸受ハウジングは、弾性変形によって当接するため、弾性変形に起因した軸方向の位置決め状態の変化が生じる。このような弾性変形によって当接する構成では、軸方向のハウジング同士の軸方向の位置決め精度を確保することが困難である。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、ハウジング同士の軸方向の位置決め精度を確保することが可能な回転機械のケーシング及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械のケーシングは、
第1フランジ部、及び、該第1フランジ部の径方向内側に位置する凹部を有する第1ハウジングと、
第2フランジ部、及び、該第2フランジ部の径方向内側に位置して前記凹部に嵌合可能な凸部を有する第2ハウジングと、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とを締結する締結部材と、を備え、
前記第1ハウジングは、前記凹部及び前記凸部の嵌合により形成される位置決め部により、前記第2ハウジングに対して径方向に位置決めされ、
前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングは、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に前記位置決め部又は前記位置決め部よりも径方向外側の領域において互いに当接し、該当接の位置で前記締結部材による軸方向の締結荷重を伝達する荷重伝達部を形成する。
【0009】
上記(1)の構成によれば、第1ハウジング及び第2ハウジングは、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に互いに当接し、その当接位置に荷重伝達部が形成される。すなわち、第1ハウジング及び第2ハウジングは、弾性変形しなくても互いに当接する。そのため、弾性変形に起因した軸方向の位置決め状態の変化を抑制することができ、ハウジング同士の軸方向の位置決め精度を確保することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記荷重伝達部は、締結前の状態で互いに平行な面同士の面接触により形成される。
【0011】
上記(2)の構成によれば、第1ハウジング及び第2ハウジングは、面接触で当接する。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシングの振動や騒音を抑えることができる。また、面接触の当接により、シーリング効果を得ることもできる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
バックプレートをさらに備え、
前記荷重伝達部は、前記バックプレートよりも径方向外側に位置し、
前記荷重伝達部と前記締結部材との径方向距離は、前記バックプレートと前記締結部材との径方向距離より小さい。
【0013】
上記(3)の構成によれば、バックプレートによる遮熱効果を得ることができる。また、ケーシングがバックプレートを備える構成であっても、バックプレートよりも径方向外側で締結部材との径方向距離が小さい位置で荷重伝達を行うことができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシングの振動や騒音を抑えることができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記バックプレートは、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを引き離す方向に付勢する付勢力によって前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に保持されている。
【0015】
バックプレートを備える構成では、荷重伝達部だけでなく、バックプレートが保持されている位置でも締結荷重が伝達され得る。複数位置で締結荷重が伝達する場合、締結状態の安定化を阻害する虞がある。しかし、上記(4)の構成は、第1ハウジングと第2ハウジングの相対的な位置関係がバックプレートによって変化することを前提としていない構成である。この場合、バックプレートには、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に保持する程度の付勢力を作用させればよい。そのため、上記(4)の構成によれば、バックプレートからの締結荷重の伝達を軽減し、主に荷重伝達部によって締結荷重を伝達させ、締結状態を安定化することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記バックプレートの径方向外側部分は、軸方向に沿った断面において、V字形状、C字形状、又はコの字形状(Rectangular U-shaped)を有し、
前記バックプレートは、前記径方向外側部分の弾性変形によって生じる前記付勢力によって、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に保持される。
【0017】
上記(5)の構成によれば、バックプレートそれ自体が弾性変形によって付勢力を生じさせる。そのため、バックプレートに付勢するための付勢部材を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの隙間に設けられたシール部材をさらに備え、
前記荷重伝達部は、前記シール部材よりも径方向外側に位置し、
前記荷重伝達部と前記締結部材との径方向距離は、前記シール部材と前記締結部材との径方向距離より小さい。
【0019】
上記(6)の構成によれば、シール部材によるシーリング効果を得ることができる。また、ケーシングがシール部材を備える構成であっても、シール部材よりも径方向外側で締結部材との径方向距離が小さい位置で荷重伝達を行うことができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシングの振動や騒音を抑えることができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記シール部材は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを引き離す方向に付勢する付勢力によって前記隙間に保持されている。
【0021】
シール部材を備える構成では、荷重伝達部だけでなくシール部材が保持されている位置でも締結荷重が伝達され得る。複数位置で締結荷重が伝達する場合、締結状態の安定化を阻害する虞がある。しかし、上記(7)の構成は、第1ハウジングと第2ハウジングの相対的な位置関係がシール部材によって変化することを前提としていない構成である。そのため、シール部材には、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に保持する程度の付勢力を作用させればよい。そのため、上記(7)の構成によれば、シール部材からの締結荷重の伝達を軽減し、主に荷重伝達部によって締結荷重を伝達させ、締結状態を安定化することができる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか1つの構成において、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの少なくとも何れか一方には、他方に向かって突出し、少なくとも一部が該他方に当接する突出部が設けられ、
前記荷重伝達部は、前記突出部と前記他方の当接によって形成される。
【0023】
上記(8)の構成によれば、突出部により荷重伝達部の形成を確実化することができる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか1つの構成において、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの何れか一方には、軸方向に対して傾きを有する第1傾斜面を有し、かつ他方に向かって突出し、少なくとも一部が該他方に当接する突出部が設けられ、
前記他方は、前記突出部が嵌合される前記第1傾斜面と平行な第2傾斜面を有し、
前記荷重伝達部は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の当接によって形成される。
【0025】
上記(9)の構成によれば、第1傾斜面と第2傾斜面の当接により、荷重伝達部が形成されるだけでなく、当接部分で径方向に位置決めされるため、ハウジング同士のセンタリング効果も得ることができる。その結果、ハウジング間の締結状態が安定化し、振動や騒音を抑えることができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れか1つの構成において、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部の少なくとも何れか一方には、他方に向かって突出し、径方向に沿った先端面の少なくとも一部が該他方に当接する突出部が設けられ、
前記他方は、前記先端面が当接する径方向に沿った平面を有し、
前記荷重伝達部は、前記先端面と前記平面の当接によって形成される。
【0027】
上記(10)の構成によれば、径方向外側位置にある第1フランジ部と第2フランジ部の間に、荷重伝達部が形成されるため、より効果的に締結荷重を伝達することができる。荷重伝達効果だけでなくハウジング同士の軸方向の位置決め効果も得ることができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、振動や騒音を抑えることができる。また、荷重伝達部は、径方向に沿った先端面及び平面の当接によって形成される。このような荷重伝達部によれば、径方向に沿っていない平面同士の当接とは異なり、分力を生じさせずに締結部材による軸方向の締結荷重を伝達することができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化する。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(8)乃至(10)の何れか1つの構成において、
前記突出部と前記他方の少なくとも何れか一方は、少なくとも一部にショットピーニング加工面を有し、
前記荷重伝達部は、前記ショットピーニング加工面の当接により形成される。
【0029】
上記(11)の構成によれば、ショットピーニング加工面の摩擦力により、ハウジング間の締結状態が安定化し、振動や騒音を抑えることができる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れか1つの構成において、
前記荷重伝達部は、前記締結部材の軸方向幅の範囲内の位置に形成される。
【0031】
締結部材の軸方向幅の範囲外の位置に荷重伝達部が形成される場合、締結荷重が第1ハウジング又は第2ハウジングに曲げモーメントとして作用する虞があり、軸方向に締結荷重が効果的に伝達しない虞がある。この点、上記(12)の構成によれば、締結部材の軸方向幅の範囲内の位置に荷重伝達部が形成されるため、軸方向に締結荷重を効果的に伝達することができる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れか1つの構成において、
前記締結部材は、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に沿って径方向に延在する延在部を有し、
前記荷重伝達部の少なくとも一部は、前記延在部の径方向幅の範囲内の位置に形成される。
【0033】
上記(13)の構成によれば、荷重伝達部は、締結部材の延在部の径方向幅の範囲内の位置に位置するため、締結部材の力点と荷重伝達部の作用点の作用線のずれが小さくなる。そのため、締結荷重を直接的に伝達することができる。
【0034】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、
上記(1)乃至(13)の何れか一つに記載のケーシング、及び、インペラを備える。
【0035】
上記(14)の構成によれば、回転機械は、上記(1)乃至(13)の何れか一つに記載のケーシングを備えている。そのため、回転機械のハウジング同士の軸方向の位置決め精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ハウジング同士の軸方向の位置決め精度を確保することが可能な回転機械のケーシング及び回転機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る回転機械の回転軸線に沿った概略断面図である。
図2】Vカップリングの構造を概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係る回転機械のケーシングの締結状態を示す拡大断面図である。
図4】一実施形態に係る回転機械のケーシングの締結状態を示す拡大断面図である。
図5】一実施形態に係る回転機械のケーシングの締結状態を示す拡大断面図である。
図6】一実施形態に係る回転機械のケーシングの締結状態を示す拡大断面図である。
【0038】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転機械100の回転軸線に沿った概略断面図である。ここでは、回転機械100がターボチャージャである場合を一例として説明する。このターボチャージャは、内燃機関に吸気を強制的に送り込むための過給機であれば特に限定されず、例えば、自動車用のターボチャージャであってもよいし、舶用のターボチャージャであってもよい。なお、回転機械100は、ターボチャージャではなく、タービン、電動機、ポンプ、エンジン等であってもよい。
【0040】
図1に示すように、回転機械100は、タービンロータ2と、タービンロータ2にシャフト8を介して連結されたインペラ10と、インペラ10を収容するコンプレッサハウジング12と、シャフト8を回転可能に支持する軸受装置14と、タービンロータ2及びシャフト8を収容するケーシング30とを備える。なお、ケーシング30は、コンプレッサハウジング12と別体ではなく、コンプレッサハウジング12を含む構成であってもよい。
【0041】
回転機械100は、不図示のエンジンの排ガスによってタービンロータ2を回転駆動し、タービンロータ2と同軸に設けられたインペラ10の回転によって空気を圧縮してエンジンに供給するよう構成されている。
【0042】
ケーシング30は、タービンロータ2を収容するタービンハウジングとしての第1ハウジング4と、軸受装置14を収容する軸受ハウジングとしての第2ハウジング16とを備える。
【0043】
この例では、第1ハウジング4をタービンハウジングとして、第2ハウジング16を軸受ハウジングとして説明している。しかし、第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、このようなハウジングに限定されない。例えば、第2ハウジング16がタービンハウジングであってもよいし、第1ハウジング4が軸受ハウジングであってもよい。第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、ここで例示していないハウジングであってもよい。
【0044】
以下の説明では、タービンロータ2の軸方向を単に「軸方向」といい、タービンロータ2の径方向を単に「径方向」といい、タービンロータ2の周方向を単に「周方向」という。回転機械100の回転軸線により近い位置を「径方向内側」といい、回転機械100の回転軸線からより離れた位置を「径方向外側」という。
【0045】
第1ハウジング4は、第1フランジ部6を外周側に有し、その第1フランジ部6の径方向内側に位置する凹部26を有する。第2ハウジング16は、第1ハウジング4の第1フランジ部6と対向する第2フランジ部18を外周側に有し、その第2フランジ部18の径方向内側に位置する凸部28を有する。凸部28は、凹部26に嵌合可能に構成される。
【0046】
また、ケーシング30は、第1フランジ部6と第2フランジ部18とを締結することによって第1ハウジング4と第2ハウジング16とを締結する締結部材20を備える。締結部材20は、例えば図2に示すVカップリングであってもよい。Vカップリングは、Vバンドクランプ、Gカップリング等とも称される。
【0047】
図2は、Vカップリングの構造を概略的に示している。Vカップリングは、半円弧状に形成された一対のクランプ片52,54の端部同士を位置合わせした状態において、一方の端部同士をリンク56で連結し、他方の端部同士をボルト58で締め付けることにより、第1フランジ部6(図1参照)と第2フランジ部18(図1参照)とを締結する。Vカップリングは、上述したようにボルト58を締め付けることにより、Vカップリング(クランプ片52,54)の周方向全体に亘って中心線Oに向けた面圧を作用させる結果として、第1フランジ部6と第2フランジ部18とを挟持するよう構成されている。なお、締結部材20は、Vカップリングのように、第1フランジ部6と第2フランジ部18とを挟持することによって第1ハウジング4と第2ハウジング16とを締結する構成に限られない。例えば、締結部材20は、第1フランジ部6と第2フランジ部18とをボルト締結するためのボルト、ナット等であってもよい。第2ハウジング16とコンプレッサハウジング12とは不図示のボルトによって連結される。
【0048】
図3は、一実施形態に係る回転機械100のケーシング30の締結状態を示す拡大断面図である。図4は、一実施形態に係る回転機械100のケーシング30の締結状態を示す拡大断面図である。図5は、一実施形態に係る回転機械100のケーシング30の締結状態を示す拡大断面図である。図6は、一実施形態に係る回転機械100のケーシング30の締結状態を示す拡大断面図である。
【0049】
幾つかの実施形態では、図3図6に示すように、第1ハウジング4は、凹部26及び凸部28の嵌合により形成される位置決め部40により、第2ハウジング16に対して径方向に位置決めされる。第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に位置決め部40よりも径方向外側の領域において互いに当接する。この当接の位置では、締結部材20による軸方向の締結荷重を伝達する荷重伝達部32が形成される。
【0050】
かかる構成によれば、第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に互いに当接し、その当接位置に荷重伝達部32が形成される。すなわち、第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、弾性変形しなくても互いに当接する。そのため、弾性変形に起因した軸方向の位置決め状態の変化を抑制することができ、ハウジング同士の軸方向の位置決め精度を確保することができる。
【0051】
また、本願発明者の知見によれば、締結部材20の軸方向の締結荷重が径方向に位置決めする位置よりも径方向内側の位置で伝達する構成では、ケーシング30のハウジング間の締結状態が安定化しないことがある。その結果、回転機械100が稼働している状態において、ケーシング30の振動や騒音が生じることがある。そのため、ハウジング同士を径方向に位置決めする位置又はその位置よりも径方向外側の位置で締結部材20の軸方向の締結荷重が伝達することが好ましい。
【0052】
この点、上記構成によれば、締結部材20による軸方向の締結荷重を伝達する荷重伝達部32は、第1ハウジング4を第2ハウジング16に対して径方向に位置決めする位置決め部40よりも径方向外側の領域に位置する。そのため、ケーシング30のハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシング30の振動や騒音を抑えることができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、図3図6に示すように、荷重伝達部32は、締結前の状態で互いに平行な面同士の面接触により形成される。
【0054】
かかる構成によれば、第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、面接触で当接する。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシング30の振動や騒音を抑えることができる。また、面接触の当接により、シーリング効果を得ることもできる。この場合、ケーシング30は、後述するシール部材34やバックプレート24を備えない構成にされてもよく、面接触の当接によってシーリング効果を得る構成にされてもよい。
【0055】
なお、ここで言う平行とは、厳密な平行に限定されず、面接触と言える程度の形状であればよい。そのため、例えば、平行には、面同士に10度以内のわずかな角度差がある場合と、一部が平行ではないものの、それ以外の部分が平行である場合とが含まれる。
【0056】
幾つかの実施形態では、図3図4及び図6に示すように、ケーシング30は、タービンロータ2と第2ハウジング16との間にタービンロータ2の背面に沿って設けられた円環状のバックプレート24を備える。バックプレート24は、第1ハウジング4と第2ハウジング16との間に保持される。バックプレート24は、第1ハウジング4内を流れる高温の排ガスから軸受装置14側への熱伝達を抑制し、かつシール性を向上させるための遮熱板として機能する。図3図4及び図6に示すように、荷重伝達部32は、バックプレート24よりも径方向外側に位置する。また、荷重伝達部32と締結部材20との径方向距離は、バックプレート24と締結部材20との径方向距離より小さい。
【0057】
かかる構成によれば、バックプレート24による遮熱効果を得ることができる。また、ケーシング30がバックプレート24を備える構成であっても、バックプレート24よりも径方向外側で締結部材20に近い位置で荷重伝達を行うことができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシング30の振動や騒音を抑えることができる。
【0058】
なお、ケーシング30は、図5に示すように、バックプレート24を備えていない構成であってもよい。また、図6において、バックプレート24は仮想線で示されている。これは、上述したように、面接触の当接によってシーリング効果を十分に得られれば、バックプレート24が必須ではないことを意味する。
【0059】
幾つかの実施形態では、図3図4及び図6に示すように、バックプレート24は、第1ハウジング4と第2ハウジング16とを引き離す方向に付勢する付勢力によって第1ハウジング4と第2ハウジング16との間に保持されていてもよい。
【0060】
一般に、バックプレート24を備える構成では、荷重伝達部32だけでなくバックプレート24が保持されている位置でも締結荷重が伝達され得る。複数位置で締結荷重が伝達する場合、締結状態の安定化を阻害する虞がある。しかし、上記構成では、第1ハウジングと第2ハウジングの相対的な位置関係がバックプレート24によって変化することを前提としていない構成である。この場合、バックプレート24には、第1ハウジング4と第2ハウジング16との間に保持できる程度の付勢力を作用させればよい。そのため、上記構成によれば、バックプレート24からの締結荷重の伝達を軽減し、主に荷重伝達部32によって締結荷重を伝達させ、締結状態を安定化することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、図3図4及び図6に示すように、バックプレート24の径方向外側部分は、軸方向に沿った断面において、コの字形状(Rectangular U-shaped)を有している。なお、バックプレート24の径方向外側部分は、軸方向に沿った断面において、V字形状又はC字形状を有していてもよい。この場合において、バックプレート24は、径方向外側部分の弾性変形によって生じる付勢力によって、第1ハウジング4と第2ハウジング16との間に保持される。
【0062】
かかる構成によれば、バックプレート24それ自体が弾性変形によって付勢力を生じさせる。そのため、バックプレート24に付勢するための付勢部材を新たに設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えることができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、例えば図5に示すように、ケーシング30は、第1ハウジング4と第2ハウジング16との間の隙間gに設けられたシール部材34を備えていてもよい。この場合において、ケーシング30は、荷重伝達部32がシール部材34よりも径方向外側に位置し、荷重伝達部32と締結部材20との径方向距離が、シール部材34と締結部材20との径方向距離より小さくなるように構成される。
【0064】
かかる構成によれば、シール部材34によるシーリング効果を得ることができる。また、ケーシング30がシール部材34を備える構成であっても、シール部材34よりも径方向外側で締結部材20との径方向距離が小さい位置で荷重伝達を行うことができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシング30の振動や騒音を抑えることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、シール部材34は、例えば図5に示すように、第1ハウジング4と第2ハウジング16とを引き離す方向に付勢する付勢力によって、隙間gに保持されていてもよい。
【0066】
一般に、シール部材34を備える構成によれば、荷重伝達部32だけでなくシール部材34が保持されている位置でも締結荷重が伝達され得る。複数位置で締結荷重が伝達する場合、締結状態の安定化を阻害する虞がある。しかし、上記構成では、第1ハウジング4と第2ハウジング16の相対的な位置関係がシール部材34によって変化することを前提としていない構成である。そのため、シール部材34には、第1ハウジング4と第2ハウジング16との間に保持する程度の付勢力を作用させればよい。そのため、上記構成によれば、シール部材34からの締結荷重の伝達を軽減し、主に荷重伝達部32によって締結荷重を伝達させ、締結状態を安定化することができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、第1ハウジング4と第2ハウジング16の少なくとも何れか一方には、他方に向かって突出し、少なくとも一部が他方に当接する突出部36が設けられ、荷重伝達部32は、突出部36と他方の当接によって形成される。例えば、図3図6では、第1ハウジング4に突出部36が設けられ、突出部36は第2ハウジング16に当接し、荷重伝達部32を形成している。突出部36は、周方向に沿って連続的に設けられる。
【0068】
なお、突出部36は、第2ハウジング16に設けられ、第1ハウジング4に当接するように構成されてもよい。突出部36は、第1ハウジング4と第2ハウジング16のそれぞれに設けられてもよく、それらが互いに当接するように構成されてもよい。また、突出部36は、周方向に沿って連続的に設けられる構成に限定されず、周方向に沿って断続的に設けられてもよい。
【0069】
かかる構成によれば、突出部36により荷重伝達部32の形成を確実化することができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、第1ハウジング4と第2ハウジング16の何れか一方には、軸方向に対して傾きを有する第1傾斜面42を有し、かつ他方に向かって突出し、少なくとも一部が該他方に当接する突出部36が設けられ、他方は、突出部36が嵌合される第1傾斜面42と平行な第2傾斜面44を有している。例えば、図3及び図4では、第1ハウジング4に第1傾斜面42を有する突出部36が設けられ、第2ハウジング16は突出部36が嵌合される第1傾斜面42と平行な第2傾斜面44を有している。そして、荷重伝達部32は、第1傾斜面42と第2傾斜面44の当接によって形成されている。
【0071】
かかる構成によれば、第1傾斜面42と第2傾斜面44の当接により、荷重伝達部32が形成されるだけでなく、当接部分で径方向に位置決めされるため、ハウジング同士のセンタリング効果も得ることができる。その結果、ハウジング間の締結状態が安定化し、振動や騒音を抑えることができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、第1フランジ部6と第2フランジ部18の少なくとも何れか一方には、他方に向かって突出し、径方向に沿った先端面46の少なくとも一部が他方に当接する突出部36が設けられ、他方は、先端面46が当接する径方向に沿った平面48を有している。荷重伝達部32は、先端面46と平面48の当接によって形成される。例えば、図5及び図6では、第1ハウジング4に径方向に沿った先端面46を有する突出部36が設けられている。また、第2ハウジング16は、先端面46が当接する径方向に沿った平面48を有している。そして、荷重伝達部32は、先端面46と平面48の当接によって形成されている。
【0073】
かかる構成によれば、径方向外側位置にある第1フランジ部6と第2フランジ部18の間に、荷重伝達部32が形成されるため、より効果的に締結荷重を伝達することができる。また、荷重伝達部32では、荷重伝達効果だけでなくハウジング同士の軸方向の位置決め効果も得ることができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化し、振動や騒音を抑えることができる。また、荷重伝達部32は、径方向に沿った先端面46及び平面48の当接によって形成される。このような荷重伝達部32によれば、径方向に沿っていない平面同士の当接とは異なり、分力を生じさせずに締結部材20による軸方向の締結荷重を伝達することができる。そのため、ハウジング間の締結状態が安定化する。
【0074】
幾つかの実施形態では、突出部36は、少なくとも一部にショットピーニング加工面を有し、荷重伝達部32は、ショットピーニング加工面の当接により形成される。例えば、図6に示す例では、突出部36の先端面46がショットピーニング加工されている。
【0075】
なお、ショットピーニング加工面は、一方のハウジングに設けられた突出部36ではなく、突出部36が当接する位置で他方のハウジングに設けられてもよい。例えば、図6に示す例において、突出部36の先端面46ではなく、先端面46が当接する位置で第2ハウジング16に設けられてもよい。また、一方のハウジングに設けられた突出部36と、他方のハウジングにおける突出部36が当接する位置との両方にショットピーニング加工面が設けられてもよい。すなわち、荷重伝達部32の位置で、第1ハウジング4と第2ハウジング16の少なくとも一方にショットピーニング加工面が設けられればよい。
【0076】
かかる構成によれば、ショットピーニング加工面の摩擦力により、ハウジング間の締結状態が安定化し、振動や騒音を抑えることができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、図3図6に示すように、荷重伝達部32は、締結部材20の軸方向幅W1の範囲内の位置に形成される。
【0078】
締結部材20の軸方向幅W1の範囲外の位置に荷重伝達部32が形成される場合、締結荷重が第1ハウジング4又は第2ハウジング16に曲げモーメントとして作用する虞があり、軸方向に締結荷重が効果的に伝達しない虞がある。この点、上記構成によれば、締結部材20の軸方向幅W1の範囲内の位置に荷重伝達部32が形成されるため、軸方向に締結荷重が効果的に伝達することができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、図3図6に示すように、締結部材20は、第1フランジ部6及び第2フランジ部18に沿って径方向に延在する延在部50を有している。荷重伝達部32の少なくとも一部は、延在部50の径方向幅W2の範囲内の位置に形成されている。
【0080】
かかる構成によれば、荷重伝達部32は、締結部材20の延在部50の径方向幅W2の範囲内の位置に位置するため、締結部材20の力点と荷重伝達部32の作用点の作用線のずれが小さくなる。そのため、締結荷重を直接的に伝達することができる。
【0081】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0082】
例えば、図3図6に示す例では、径方向の位置決めするための位置決め部40は、凸部28が凹部26に嵌合される部分であり、凸部28は、突出部36ではない。しかし、突出部36は、位置決め部40を形成する凸部28を兼ねるように構成されてもよい。例えば、図3及び図4に示すように、突出部36の第1傾斜面42と第2傾斜面44との当接のみにより径方向の位置決めを行うことも可能である。この場合、凸部28を兼ねる突出部36の第1傾斜面42と、凹部26を兼ねる第2傾斜面44との当接位置に荷重伝達部32が形成される。すなわち、位置決め部40に荷重伝達部32が形成される。
【0083】
かかる構成であっても、径方向に位置決めする位置よりも径方向内側の位置で締結荷重を伝達する構成に比べて、ケーシング30のハウジング間の締結状態が安定化し、ケーシング30の振動や騒音を抑えることができる。すなわち、第1ハウジング4及び第2ハウジング16は、締結前の状態で軸方向に近づけた場合に位置決め部40又は位置決め部40よりも径方向外側の領域において互いに当接し、該当接の位置で荷重伝達部32を形成すればよい。
【0084】
図6を用いて説明したショットピーニング加工面は、図3図5に示す突出部36の少なくとも一部(例えば、第1傾斜面42や先端面46)に設けられてもよく、そのショットピーニング加工面の当接によって荷重伝達部32が形成されてもよい。また、突出部36が当接する位置にショットピーニング加工面が設けられてもよく、例えば、第2傾斜面44にショットピーニング加工面が設けられてもよい。
【0085】
バックプレート24とシール部材34は、荷重伝達部32よりも径方向内側の位置であれば、図3図6に示す例に限定されず、他の位置に設けられてもよい。また、図3図6に示す構成において、バックプレート24の代わりにシール部材34を備える構成に変形されてもよいし、シール部材34の代わりにバックプレート24を備える構成に変形されてもよい。
【0086】
図3及び図4に示す例では、突出部36の径方向外側の傾斜面が第1傾斜面42をなしている。しかし、突出部36の径方向内側の傾斜面が第1傾斜面42をなすように構成されてもよい。この場合、突出部36を有しない他方のハウジングには、突出部36の径方向内側の傾斜面に平行な傾斜面が第2傾斜面44として設けられる。
【符号の説明】
【0087】
2 タービンロータ
4 第1ハウジング(タービンハウジング)
6 第1フランジ部
8 シャフト
10 インペラ
12 コンプレッサハウジング
14 軸受装置
16 第2ハウジング(軸受ハウジング)
18 第2フランジ部
20 締結部材
22 接触部
24 バックプレート
26 凸部
28 凹部
30 ケーシング
32 荷重伝達部
34 シール部材
36 突出部
40 位置決め部
42 第1傾斜面
44 第2傾斜面
46 先端面
48 平面
50 延在部
52,54 クランプ片
56 リンク
58 ボルト
100 回転機械
O 中心線
g 隙間
W1 軸方向幅
W2 径方向幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6