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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】構造物、構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 7/20 20060101AFI20221104BHJP
   E04H 7/18 20060101ALI20221104BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
E04H7/20
E04H7/18 B
B65D90/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019026740
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020133196
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】野呂 好幸
(72)【発明者】
【氏名】北田 健介
(72)【発明者】
【氏名】新川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 篤
(72)【発明者】
【氏名】田口 勝則
(72)【発明者】
【氏名】松木 聡
(72)【発明者】
【氏名】南 浩郎
(72)【発明者】
【氏名】山沢 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】矢野 公徳
(72)【発明者】
【氏名】山川 裕嗣
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-219370(JP,A)
【文献】特開2006-299631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/20
E04H 7/18
B65D 90/00
F17C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストセグメントを上下に配置して構築された構造体を有する構造物であって、
前記構造体には、上下のプレキャストセグメントの内部を通る縦方向の緊張材の緊張により縦方向のプレストレスが導入され、
上下のプレキャストセグメントは、鉛直面内において異なる方向に延在し、
のプレキャストセグメントに通された縦方向の第1の緊張材が、方のプレキャストセグメントの貫通部を貫通して前記方のプレキャストセグメントにて定着され、
前記方のプレキャストセグメントに通された縦方向の第2の緊張材が、前記方のプレキャストセグメントの前記方のプレキャストセグメント側の端部で定着され
前記下方のプレキャストセグメントの前記貫通部は、前記鉛直面内において、前記第2の緊張材の外側に位置することを特徴とする構造物。
【請求項2】
前記貫通部は、下方に行くにつれ外側へと向かうように鉛直方向に対して傾斜することを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項3】
前記貫通部は、前記方のプレキャストセグメントの拡幅部に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の構造物。
【請求項4】
前記構造体は、平面において閉領域を形成する側壁であり、
前記上方のプレキャストセグメントは、上方に行くに従って内側に向かうように傾斜し、
前記下方のプレキャストセグメントは、下方に行くに従って内側に向かうように傾斜することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の構造物。
【請求項5】
前記構造物は汚泥の消化槽であり、前記側壁の高さ方向の中間部は、頂端および底端に向けて曲線状に窄まることを特徴とする請求項4に記載の構造物。
【請求項6】
プレキャストセグメントにより構築された構造体を有する構造物の施工方法であって、
プレキャストセグメントを上下に配置して前記構造体を構築する際に、上下のプレキャストセグメントの内部を通る縦方向の緊張材の緊張により前記構造体に縦方向のプレストレスが導入され、
上下のプレキャストセグメントは、鉛直面内において異なる方向に延在し、
のプレキャストセグメントに通された縦方向の第1の緊張材が、方のプレキャストセグメントの貫通部を貫通して前記方のプレキャストセグメントにて定着され、
前記方のプレキャストセグメントに通された縦方向の第2の緊張材が、前記方のプレキャストセグメントの前記方のプレキャストセグメント側の端部で定着され
前記下方のプレキャストセグメントの前記貫通部は、前記鉛直面内において、前記第2の緊張材の外側に位置することを特徴とする構造物の施工方法。
【請求項7】
前記構造体は、平面において閉領域を形成する側壁であり、
前記側壁には周方向の緊張材によるプレストレスが導入され、
前記方のプレキャストセグメントは、前記側壁の上部を構成
前記側壁の上部に周方向の緊張材によるプレストレスを導入する際に、前記第1の緊張材が前記貫通部内で内側に移動することを特徴とする請求項6記載の構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥の嫌気性発酵消化槽として、プレストレストコンクリートによる卵形の側壁の内部に撹拌機を設けた貯槽(以下、PC卵形消化槽という)があり、死水域ができにくく撹拌性が高い点などで優れている。側壁には周方向と縦方向の緊張材によりプレストレスが導入されており、これにより液圧等の内圧に抵抗し、PC卵形消化槽からの液漏れ等を好適に防ぐことができる。
【0003】
従来の現場打ちコンクリートによるPC卵形消化槽の施工時には、コンクリートの打設、断熱材の取付、防食塗装の作業が必要であり、これらの作業ごとに卵形の曲面に沿った複雑な足場を必要としていた。また、PC卵形消化槽は特殊な形状の上に周方向と縦方向のプレストレスを導入する必要があり、施工が難しかった。
【0004】
これに対し、特許文献1にはプレキャストセグメント(以下、セグメントということがある)からなるPC卵形消化槽が記載されており、このようなセグメントを用いることで施工が簡略化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4309835号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、PC卵形消化槽の側壁の高さ方向の中央を境にして、側壁の上部と下部をそれぞれ周方向に分割した複数のセグメントを用いており、上下のセグメントは上方のセグメントを下方のセグメント上に配置して接続される。しかしながら、これらのセグメントの鉛直面内の延在方向は異なっており、上方のセグメントは上方に行くにつれ内側に向かうように傾斜し、下方のセグメントは下方に行くにつれ内側に向かうように傾斜する。そのため上下のセグメントの配置は不安定になりやすく、これらのセグメントの安定性をより高めることが求められる。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、上下のセグメントの安定性を高めることのできる構造物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、プレキャストセグメントを上下に配置して構築された構造体を有する構造物であって、前記構造体には、上下のプレキャストセグメントの内部を通る縦方向の緊張材の緊張により縦方向のプレストレスが導入され、上下のプレキャストセグメントは、鉛直面内において異なる方向に延在し、上のプレキャストセグメントに通された縦方向の第1の緊張材が、方のプレキャストセグメントの貫通部を貫通して前記方のプレキャストセグメントにて定着され、前記方のプレキャストセグメントに通された縦方向の第2の緊張材が、前記方のプレキャストセグメントの前記方のプレキャストセグメント側の端部で定着され、前記下方のプレキャストセグメントの前記貫通部は、前記鉛直面内において、前記第2の緊張材の外側に位置することを特徴とする構造物である。
【0009】
本発明では、セグメントを上下に配置して構造体を構築し、縦方向の緊張材の緊張により構造体に縦方向のプレストレスを導入する場合において、方のセグメントの内部に設けられた第1の緊張材を方のセグメントの内部に通して当該セグメントにて定着し、方のセグメントの内部にある第2の緊張材は、上のセグメント側の端部で定着する。これにより、PC卵形消化槽のように上下のセグメントの延在方向が異なりセグメントの配置が不安定になりやすい場合でも、セグメント同士を容易に固定し安定して配置できる。
【0010】
また本発明では、下方のセグメントにおいて、第1、第2の緊張材の干渉を防ぐことができる。
前記貫通部は、下方に行くにつれ外側へと向かうように鉛直方向に対して傾斜することも望ましい。
【0011】
前記貫通部は、前記方のプレキャストセグメントの拡幅部に設けられることが望ましい。
これにより、方のセグメントにおいて、第1、第2の緊張材を配置するスペースを確保することができる。
【0012】
前記構造体は、例えば平面において閉領域を形成する側壁であり、前記上方のプレキャストセグメントは、上方に行くに従って内側に向かうように傾斜し、前記下方のプレキャストセグメントは、下方に行くに従って内側に向かうように傾斜する。
これにより、中間部が外側に膨らむような形状の側壁を上下のセグメントによって構築する際に、上方のセグメントを下方のセグメント上に安定して配置することができる。
【0013】
前記構造物は汚泥の消化槽であり、前記側壁の高さ方向の中間部は、頂端および底端に向けて曲線状に窄まることが望ましい。
これにより死水域ができにくく撹拌性が高い等の利点を有する略卵形の消化槽を形成できる。
【0014】
第2の発明は、プレキャストセグメントにより構築された構造体を有する構造物の施工方法であって、プレキャストセグメントを上下に配置して前記構造体を構築する際に、上下のプレキャストセグメントの内部を通る縦方向の緊張材の緊張により前記構造体に縦方向のプレストレスが導入され、上下のプレキャストセグメントは、鉛直面内において異なる方向に延在し、上のプレキャストセグメントに通された縦方向の第1の緊張材が、方のプレキャストセグメントの貫通部を貫通して前記方のプレキャストセグメントにて定着され、前記方のプレキャストセグメントに通された縦方向の第2の緊張材が、前記方のプレキャストセグメントの前記方のプレキャストセグメント側の端部で定着され、前記下方のプレキャストセグメントの前記貫通部は、前記鉛直面内において、前記第2の緊張材の外側に位置することを特徴とする構造物の施工方法である。
第2の発明は第1の発明の構造物の施工方法である。
【0015】
前記構造体は、例えば平面において閉領域を形成する側壁であり、前記側壁には周方向の緊張材によるプレストレスが導入され、前記方のプレキャストセグメントは、前記側壁の上部を構成、前記側壁の上部に周方向の緊張材によるプレストレスを導入する際に、前記第1の緊張材が前記貫通部内で内側に移動することが望ましい。
このように、側壁の上部に周方向のプレストレスを導入する場合では、上方のセグメントの第1の緊張材を下方のセグメントの貫通部内で内側に移動可能とすることにより、第1の緊張材によって周方向のプレストレスの導入が妨げられることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、上下のセグメントの安定性を高めることのできる構造物等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】消化槽1を示す図。
図2】側壁3を示す図。
図3】セグメント31、32について示す図。
図4】縦方向PC鋼材15、16の配置を示す図。
図5】周方向PC鋼材17と窪み30を示す図。
図6】周方向PC鋼材18と切欠部35を示す図。
図7】鋼殻60とコンクリート66を示す図。
図8】消化槽1の施工方法を示す図。
図9】消化槽1の施工方法を示す図。
図10】消化槽1の施工方法を示す図。
図11】セグメント32の地組とセグメント31の設置について説明する図。
図12】周方向に隣り合うセグメント32の間の間隙を示す図。
図13】セグメント31、32の延在方向の例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(1.消化槽1)
図1は本発明の実施形態に係る消化槽1を示す図であり、消化槽1の鉛直方向の断面を見たものである。また図2(a)は側壁3を示す斜視図であり、図2(b)は側壁3を上から見た図である。
【0020】
消化槽1は下水処理場等に設けられる構造物であり、内部に下水を貯留する貯槽である。消化槽1では、下水の汚泥を嫌気性消化によって処理する。消化槽1の内部には汚泥の処理を効率的に行うために撹拌機(不図示)が設けられる。
【0021】
消化槽1は全体として略卵形の形状を有するPC卵形消化槽であり、側壁3、台座コンクリート5、底部部材6、蓋体7、鋼製足場8等を備える。消化槽1は半地下式の貯槽であり、側壁3の下部3cの一部や台座コンクリート5などは地表面下に埋設される。
【0022】
側壁3はコンクリート製の構造体であり、頂端と底端に向けて窄まる略卵形の筒状部材である。より詳細には、側壁3の高さ方向の中間部3aが球面状に外側に膨らみ、中間部3aの上方と下方が円錐台状に頂端および底端に向けて窄まる。
【0023】
鉛直面を見た場合、側壁3の中間部3aの内面は、側壁3の高さ方向の中央にある中心Cから所定の曲率半径Rと中心角αで円弧状に膨らんで頂端および底端に向けて曲線状に窄まり、中間部3aの上方および下方の内面はそれぞれ頂端と底端に向けて上記の円弧と滑らかに連続する直線状に窄まる。本実施形態では上記の中心角αを90°、中間部3aの上方および下方の内面の傾斜角βを水平方向に対し45°とし、側壁3の内面が側壁3の高さ方向の中央に関して上下対称となるが、これに限ることはない。
【0024】
側壁3は、側壁3の平面における中心軸Oからの離間距離が最大となる位置、すなわち側壁3の高さ方向の中央で上下に分けられる。側壁3の上部3bと下部3cは、複数のプレキャストセグメント31、32を側壁3の周方向に並べて構成される。セグメント31はセグメント32の上方に配置される。
【0025】
図1に示すように、上下のセグメント31、32は、鉛直面内において異なる方向に延在している。すなわち、上方のセグメント31は上方に行くに従って側壁3の内側に向かうように鉛直方向に対して傾斜し、下方のセグメントは、下方に行くに従って側壁3の内側に向かうように鉛直方向に対して傾斜している。なお、上記鉛直面は、本実施形態ではセグメント31、32の厚さ方向の面でもある。
【0026】
側壁3の下部3cのセグメント32は、さらに小セグメント321、322に分割される。上下の小セグメント321、322の分割位置は、前記の中心Cから延び水平方向に対し傾斜角β/2で下方に傾斜した線分Lと、側壁3との交点に対応する。
【0027】
前記したように側壁3は筒状の部材であり、平面において閉領域を形成する。また側壁3の外周の形状は、セグメント31、32の製作容易性等を考慮し、多角形による疑似円周状(略円周状)となっている(図2(b)参照)。なお、側壁3の内周も、外周の多角形を縮小した多角形による疑似円周状(略円周状)となっている。
【0028】
側壁3の上部3bのセグメント31は、図2(b)に示すように、側壁3の上部3bを、中心軸Oを通る放射状の鉛直面で周方向に等分割した形状を有する。一部のセグメント31(図2(b)のP参照)は他のセグメント31よりも外側に増厚しており、これが周方向PC鋼材17(図1参照)の端部を定着するピラスターとして用いられる。
【0029】
図3(a)の左図はセグメント31(ピラスターP以外のセグメント31)を上記鉛直面に沿って見た図であり、右図は当該セグメント31の立面図である。セグメント31は左右の幅(側壁3の周方向の長さ)より上下の長さの大きい細長形状であり、本体の幅は上端に行くにつれ狭くなる。
【0030】
側壁3の下部3cのセグメント32も、側壁3の下部3cを、中心軸Oを通る放射状の鉛直面で周方向に等分割した形状を有する。また一部のセグメント32(図2(a)のP参照)の上部は他のセグメント32の上部よりも外側に増厚しており、周方向PC鋼材17(図1参照)の端部を定着するピラスターとして用いられる。
【0031】
図3(b)は、セグメント32(ピラスターP以外のセグメント32)を図3(a)と同様に示す図である。セグメント32も、左右の幅より上下の長さの大きい細長形状を有し、本体の幅は下端に行くにつれ狭くなる。
【0032】
小セグメント321の上端には、外側に段状に拡幅する拡幅部321aが形成される。小セグメント322の上端にも、外側に段状に拡幅する拡幅部322aが形成される。小セグメント321の下面は小セグメント322の上面と同じ厚さを有し、両セグメント321、322の内面および外面は滑らかに連続する。
【0033】
セグメント31および小セグメント321、322には、コンクリートを型枠に打設するなどして事前に製作されたプレキャストコンクリート部材が用いられる。小セグメント321、322については、1つの型枠の内部空間を鉄板等の仕切で2分割し、分割された各空間にコンクリートを打設するなどして一度に製作することが可能である。消化槽1を施工する際は、予めこれらのセグメントの内面に防食塗装を施し、またセグメントの外面には断熱材(不図示)を予め取付けておくこともできる。
【0034】
セグメント31、32の内部には、縦方向PC鋼材15、16が通される。縦方向PC鋼材15、16は側壁3の縦方向に配置される緊張材であり、例えばPC鋼棒が用いられる。図4(a)は、セグメント31、32内に通される縦方向PC鋼材15、16の配置を、上下に連続するセグメント31、32の立面において示したものである。
【0035】
縦方向PC鋼材15(第1の緊張材)は、セグメント31内に複数本通される。各縦方向PC鋼材15の下端は、セグメント32の上端の拡幅部321aを貫通し、当該拡幅部321aの下面で定着される。
【0036】
一方、各縦方向PC鋼材15の上端の定着位置は異なっている。すなわち、セグメント31の幅方向の中央部にある縦方向PC鋼材15の上端はセグメント31の上端部で定着され、少なくともこの縦方向PC鋼材15によってセグメント31全体にプレストレスが導入される。これに対し、その両側の縦方向PC鋼材15の上端は、上記中央部から離れるにつれ低い位置でセグメント31内に定着される。これは、セグメント31の上端部における縦方向PC鋼材15の過密配置を防ぐためである。
【0037】
縦方向PC鋼材16(第2の緊張材)は、セグメント32内に複数本通される。各縦方向PC鋼材16の上端はセグメント32の上端部で定着される。
【0038】
一方、各縦方向PC鋼材16の下端の定着位置は異なっている。すなわち、セグメント32の幅方向の中央部にある縦方向PC鋼材16の下端はセグメント32の下端部から突出して当該下端部で定着され、少なくともこの縦方向PC鋼材16によってセグメント32全体にプレストレスが導入される。これに対し、その両側の縦方向PC鋼材16の下端は、上記中央部から離れるにつれ高い位置でセグメント32内に定着される。その目的は、上記と同様、セグメント32の下端部における縦方向PC鋼材16の過密配置を防ぐことである。
【0039】
図4(b)の左図は、セグメント31、32の接続部を拡大して示した鉛直方向の断面であり、右図は左図の線A-Aによる断面である。本実施形態では、セグメント31内に通される縦方向のPC鋼材150の下端に継手151が設けられ、この継手151に取付けられた別のPC鋼材150がセグメント32の拡幅部321aにある貫通孔321b(貫通部)を貫通し、セグメント32の外面で定着される。これらのPC鋼材150が前記の縦方向PC鋼材15を構成し、ここでは縦方向PC鋼材15の下端をセグメント32の拡幅部321aの下面で定着することで、支圧板等を含む定着部10の配置スペースを好適に確保できる。一方、縦方向PC鋼材16は、セグメント32内のシース管323に通され、その上端がセグメント32の上端部すなわちセグメント31側の端部にある定着部20で定着される。
【0040】
セグメント32の拡幅部321aにおいて、貫通孔321bは縦方向PC鋼材16よりも外側に位置し、鉛直面内において貫通孔321bと縦方向PC鋼材16が交差しない配置とされている。これにより、縦方向PC鋼材15、16の干渉が防止される。なお、側壁3の径方向に沿った貫通孔321bの長さWは、縦方向PC鋼材15の径dよりも大きい。
【0041】
側壁3には、さらに周方向PC鋼材17、18も設けられる。周方向PC鋼材17、18は側壁3の周方向に配置される緊張材であり、例えばPC鋼線が用いられる。周方向PC鋼材17は外ケーブルとして側壁3の外部に設けられ、周方向PC鋼材18は内ケーブルとして側壁3の内部に設けられる。
【0042】
図5(a)は側壁3の上部3bに設けられる周方向PC鋼材17を示す図であり、側壁3の上部3bについて水平方向の断面を見たものである。
【0043】
本実施形態では周方向PC鋼材17が側壁3の外周に沿って円弧状に配置される。周方向PC鋼材17の端部は、ピラスターPのセグメント31を一方の側面から貫通し、当該セグメント31の他方の側面にある定着部40で定着される。ピラスターPのセグメント31の上記一方の側面にも、上記周方向PC鋼材17の他の端部あるいは他の周方向PC鋼材17の端部を定着するための定着部40が設けられており、ピラスターPのセグメント31内では周方向PC鋼材17が交差して配置される。
【0044】
ピラスターP以外のセグメント31には、周方向PC鋼材17を収容するための溝状の窪み30がセグメント31の幅方向に沿って設けられる。
【0045】
図5(b)は当該窪み30の高さにおけるセグメント31の平面を示す図である。セグメント31本体の平面は略台形状であり、その外面は基本的に直線状となるが、溝状の窪み30によって周方向PC鋼材17を円弧状に配置するための円弧面(後述する端面301)がセグメント31本体の外面に形成される。本実施形態ではセグメント31の幅方向の両側で2つの窪み30が形成されるが、1つの窪み30がセグメント31の全幅に亘って連続するように形成されてもよい。
【0046】
図5(c)は図5(a)の線B-Bによる鉛直方向の断面を示したものである。窪み30は、セグメント31の外面から内側に向かって凹状に形成され、端面301、上面302および下面303を有する。端面301は窪み30の最内側の略鉛直面であり、平面においては円弧状に形成され、前記の円弧面を構成する(図5(b)参照)。上面302と下面303はそれぞれ窪み30の上下に配置される略水平面である。
【0047】
周方向PC鋼材17を緊張させてプレストレスを導入すると、周方向PC鋼材17は内側に締まるように矢印Dに示す略水平方向へと変位しようとする。セグメント31本体の外面は鉛直方向に対して傾斜し、上方に行くにつれ内側へと向かう傾斜面となっているが、前記の端面301は略鉛直面であり、上記矢印Dに示す方向と直交する。
【0048】
図5(a)~(c)は側壁3の上部3bに設けられる周方向PC鋼材17の例であるが、側壁3の下部3cの地表面上の範囲においても同様に周方向PC鋼材17が外ケーブルとして設けられ、セグメント32には上記と同様の溝状の窪み30が形成される。図5(d)はこの窪み30を図5(c)と同様に示す図であり、前記と同様、端面301、上面302および下面303を有する。ただし、上面302の長さ(側壁3の径方向の長さ)は下面303より大きく、この点では上面302の長さが下面303より小さい図5(c)の窪み30とは異なっている。なお、前記の図2、3ではこれらの窪み30の図示を省略している。
【0049】
図6は、地表面下において側壁3の下部3cに設けられる周方向PC鋼材18を示す図である。周方向PC鋼材18は側壁3の内部のシース管324に通され、その端部がセグメント32本体の一方の側面の定着部50で定着される。さらに、当該セグメント32本体の他方の側面にも定着部50が設けられ、上記周方向PC鋼材18の他の端部または他の周方向PC鋼材18の端部が定着される。当該セグメント32内では周方向PC鋼材18が交差して配置される。
【0050】
当該セグメント32に隣接する両側のセグメント32では、上記定着部50側の内面に定着部50の配置される切欠部35がそれぞれ設けられ、周方向PC鋼材18の緊張作業を行うための空間が確保される。切欠部35は、緊張作業の後コンクリート等の充填材36で充填され、内面が平滑化される。ピラスターのような突出部で周方向PC鋼材18を定着すると、当該突出部が消化槽1における内部の下水の撹拌を阻害する恐れがあるが、本実施形態ではそのような恐れが無い。
【0051】
なお、上記の周方向PC鋼材18は地表面下において内ケーブルとして配置されるものであるが、例外的に、地表面上にあるセグメント32の拡幅部321aにおいても、縦方向PC鋼材15との兼ね合いの点から干渉回避等を目的として同様の内ケーブルが配置される(図4(b)参照)。
【0052】
台座コンクリート5は、側壁3の下部3cの周囲に設けられ、側壁3の下部3cを収容するすり鉢状の凹部を有するように形成される。
【0053】
底部部材6は、側壁3の下部3cのセグメント32の下方に配置されるすり鉢状の部材である。底部部材6は、鋼殻にコンクリートを充填して形成され、側壁3の内部空間の底面を構成する。底部部材6の内面は、側壁3の底端の内面の傾斜と同じ傾斜を有し、当該内面と滑らかに連続する。
【0054】
図7(a)は鋼殻60を示す図であり、図7(b)は鋼殻60にコンクリート66を充填した状態を示す鉛直方向の断面図である。鋼殻60は、底板61と仕切板62、63、64、65を有するすり鉢状の函形部材である。
【0055】
底板61は水平面に対し傾斜して設けられる板材であり、複数の底板61が鋼殻60の周方向に沿ってすり鉢状に並べられる。
【0056】
仕切板62は各底板61の下端に設けられる板材であり、当該下端から上方に延びるように配置される。鋼殻60では、複数の仕切板62が鋼殻60の周方向に沿って筒状に並べられる。
【0057】
仕切板63、64は、それぞれ底板61の上下方向の中間部と上端に設けられる板材であり、鋼殻60の周方向に沿って底板61と直交するように配置される。鋼殻60では、複数の仕切板63、64が鋼殻60の周方向に沿って環状に並べられ、仕切板64には縦方向PC鋼材16の下端を通すための孔641が設けられる。
【0058】
仕切板65は、鋼殻60の上下方向に沿って底板61と直交するように配置される板材である。鋼殻60では、複数の仕切板65が、仕切板62、63、64と交差するように放射状に設けられる。
【0059】
図7(b)に示すように、コンクリート66は、鋼殻60に対し所定の被りが確保されるように充填される。コンクリート66の充填時は、仕切板64の孔641(図7(a)参照)の近傍で箱抜き部661を形成して縦方向PC鋼材16の本緊張に係る作業を行うための空間を確保し、縦方向PC鋼材16の本緊張の後、箱抜き部661をコンクリート等の充填材662で充填する。
【0060】
蓋体7は側壁3の頂端の開口に設けられる。蓋体7には図示しない撹拌機が取付けられる。鋼製足場8は、蓋体7の周囲に設けられる作業用の足場である。
【0061】
(2.消化槽1の施工方法)
次に、図8図10等を参照して消化槽1の施工方法について説明する。消化槽1を施工する際は、まず図8(a)に示すように基礎杭9の打設と地盤2の掘削を行う。そして、地盤2の掘削部の底面に均しコンクリート13を打設する。
【0062】
その後、図8(b)に示すように掘削部の底面の中央部に鋼殻60を配置し、鋼殻60の周囲にセグメント32を据え付けて側壁3の下部3cを組み立てる。セグメント32は、拡幅部322aの下面を支持材14で支持して配置する。当該下面の高さは、セグメント32の重心位置に対応し、消化槽1の施工時に地震等に対する安定性が向上する。消化槽1の完成後においても、当該下面が台座コンクリート5により支持されることで高い安定性が得られる。
【0063】
本実施形態では、上下の小セグメント321、322を現場で地組し一体化してセグメント32とした後、その据え付けを行う。図11(a)に示すように、小セグメント322には予め縦方向のPC鋼材160が仕込まれており、その上端からPC鋼材160が突出している。
【0064】
小セグメント321、322の地組時は、小セグメント321を小セグメント322の上面に接続する。この時、上記したPC鋼材160の突出部分は、小セグメント321のシース管(図4(b)の符号323参照)内に通すPC鋼材160と継手161を用いて接続される。これらのPC鋼材160が前記の縦方向PC鋼材16を構成し、その仮緊張と定着により上下の小セグメント321、322に縦方向のプレストレスを導入して連結する。小セグメント321、322の間では接着材(不図示)による接着も行われる。
【0065】
セグメント32の据え付け時は、セグメント32の下端部から突出する縦方向PC鋼材16(図4(a)参照)の下端を、鋼殻60の仕切板64の孔641に通し、デッドアンカー等で仕切板64に接続する。セグメント32の据え付け後、図8(c)に示すように鋼殻60上にコンクリート66を打設して底部部材6を形成する。鋼殻60は、セグメント32の据え付け時の位置決めを行うとともに、底部部材6の補強材としても機能する。なお、この時点では前記の箱抜き部661を充填せずに残しておく。
【0066】
また、図12(a)に概略図として示すように、側壁3の周方向に隣り合うセグメント32間の隙間では目地材33が内外に設けられ、その間にグラウト34(硬化材)が充填される。目地材33としては、例えば耐硫酸性を有する樹脂等が用いられる。また、セグメント32のシース管324の位置では、シース管324内にグラウト34が流入しないよう、図12(b)に示すように、上記隙間に露出するシース管324の開口を、気体等により膨張させた袋体70により予め塞いでおく。袋体70は、グラウト34の硬化後に収縮させて撤去する。
【0067】
次に、各セグメント32の縦方向PC鋼材16の本緊張を行い、側壁3の下部3cに縦方向のプレストレスを導入する。上記の箱抜き部661は、縦方向PC鋼材16の本緊張後充填する。
【0068】
また、図9(a)に示すように周方向PC鋼材17、18をそれぞれ前記したように配置し、その緊張により側壁3の下部3cに周方向のプレストレスを導入する。セグメント32の切欠部35(図6参照)は、周方向PC鋼材18の緊張作業の終了後、コンクリート等の充填材36で充填する。
【0069】
その後、図9(a)に示すように均しコンクリート13上にコンクリートを打設し、台座コンクリート5を構築する。セグメント32の外面にはジベル等の連結材(不図示)が取付けられ、これにより側壁3の下部3cと台座コンクリート5が一体化(剛結)される。連結材はセグメント32の据え付け後に取付けても良いし、事前にセグメント32に取付けておいても良い。台座コンクリート5の打設は型枠を設置しての逆打ち作業となるので、密実性を高めるためコンクリートに膨張剤等を含有させておくことが望ましい。
【0070】
また必要に応じて、側壁3の内部の底部部材6上にステージ(不図示)を設け、その上で高所作業車を稼働させ、側壁3の下部3cの内面で塗装や目地処理等の作業を行う。
【0071】
そして、図9(b)に示すように側壁3の下部3cの周囲の掘削部を埋戻土21で埋戻し、底部部材6の上に高所作業用のセンタータワー22を設置する。上記のステージや高所作業車は事前に撤去しておく。
【0072】
次に、図10(a)に示すように側壁3の下部3cのセグメント32上に側壁3の上部3bのセグメント31を据え付けて側壁3の上部3bを組み立てる。図11(b)に示すように、セグメント31には予め縦方向のPC鋼材150がアンボンド鋼材として仕込まれており、セグメント31の下面近傍では、PC鋼材150の下端に継手151が設けられる。このセグメント31をセグメント32上に配置した後、セグメント32の拡幅部321aの貫通孔321b(図4(b)参照)に通した縦方向のPC鋼材150を上記継手151に接続する。前記したように、これらのPC鋼材150が本実施形態の縦方向PC鋼材15を構成し、この時の貫通孔321b内における縦方向PC鋼材15の位置が、図4(b)のA-A断面における符号aとして示されている。なお図12(a)の例と同様、隣り合うセグメント31間の隙間には目地材33とグラウト34が設けられる。
【0073】
側壁3の上部3bの組み立てが完了したら、図10(b)に示すように周方向PC鋼材17を配置し、縦方向PC鋼材15と周方向PC鋼材17の緊張により側壁3の上部3bに周方向と縦方向のプレストレスを導入する。
【0074】
周方向のプレストレスの導入時、縦方向PC鋼材15は貫通孔321b内で図4(b)のA-A断面の符号aで示す位置から符号15で示す位置へと若干内側に移動する。側壁3の径方向に沿った貫通孔321bの長さWは縦方向PC鋼材15の径dより十分に大きく、上記の移動を可能としている。
【0075】
必要に応じて、側壁3の上部3bの内面で塗装や目地処理等の作業を行い、センタータワー22を撤去して図1に示すように側壁3の頂端に蓋体7と鋼製足場8を取り付けるとともに、残りの必要な部材を取り付けることで消化槽1が完成する。
【0076】
このように、本実施形態では、消化槽1の側壁3をプレキャストセグメント31、32により構成することで、側壁3の施工時に、現場打ちコンクリートによる従来の消化槽の施工において必要であった足場を最小限に減らすことが可能となり、セグメント31、32の据え付け前に、工場または地上にて断熱材の取付や防食塗装を行うことが可能になる。そのため側壁3の施工が容易になり工期の短縮、コストの削減に寄与する。また経験の少ない作業者でも簡単に施工でき、品質の確保も容易になる。
【0077】
さらに、本実施形態ではセグメント31、32を上下に配置して側壁3を構築し、縦方向PC鋼材15、16の緊張により側壁3に縦方向のプレストレスを導入するが、この際、セグメント31の内部に設けられた縦方向PC鋼材15をセグメント32の貫通孔321bに通して当該セグメント32にて定着し、セグメント32の内部にある縦方向PC鋼材16はセグメント32の上端部で定着する。これにより、本実施形態のように上下のセグメント31、32の延在方向が異なりセグメントの配置が不安定になりやすい場合でも、セグメント31、32同士を容易に固定し安定して配置できる。
【0078】
また、セグメント32の貫通孔321bが、鉛直面内において縦方向PC鋼材16と交差しないように位置することで、セグメント32において、縦方向PC鋼材15、16の干渉を防ぐことができる。特に本実施形態では、貫通孔321bがセグメント32の拡幅部321aに設けられるので、セグメント32において、これら2つの縦方向PC鋼材15、16を配置するスペースを確保することができる。
【0079】
また、本実施形態では側壁3の中間部3aが外側に膨らんでおり、当該側壁3を上下のセグメント31、32によって構築する際に、セグメント31をセグメント32の上に安定して配置することができる。特に、本実施形態の消化槽1は、側壁3の中間部3aが頂端および底端に向けて曲線状に窄まる略卵形であり、死水域ができにくく撹拌性が高い、スカム等の除去が容易であるなどの利点を有する。
【0080】
また本実施形態では、側壁3の上部3bに周方向のプレストレスを導入する際に、当該上部3bのセグメント31の縦方向PC鋼材15をセグメント32の貫通孔321b内で内側に移動可能とすることにより、縦方向PC鋼材15によって周方向のプレストレスの導入が妨げられることがない。
【0081】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えばセグメント31、32の形状は、周方向PC鋼材17、18の最小曲げ半径、PC鋼材の必要被り、セグメントの必要強度、運搬性、施工性等を勘案して定められ、前記の実施形態に限定されることはない。例えばこれらのセグメント31、32を同形状とすることで、1種類の型枠を用いてセグメント31、32を製造でき、セグメント31、32の製造に要する型枠コストを低減できる。
【0082】
また、本実施形態では周方向に隣り合うセグメント間の隙間で樹脂等による目地材33とグラウト34を設け、グラウト34の硬化後に周方向のプレストレスを導入しているが、目地材33として水膨張性の止水ゴムを設け、周方向のプレストレスの導入により隣り合うセグメント間の隙間を狭めて止水ゴムを押し潰した後、グラウト34を充填するような手順とすることも可能である。
【0083】
また本実施形態ではPC鋼材150、160を継手151、161によって接続することで縦方向PC鋼材15、16を構成しているが、1本のPC鋼材により縦方向PC鋼材15、16を構成してもよい。例えば1本のPC鋼材により縦方向PC鋼材15を構成する場合、セグメント31の据え付け時にはセグメント31の下端から突出する縦方向PC鋼材15の突出部分をセグメント32の拡幅部321aの貫通孔321bに通して配置することが可能である。また1本のPC鋼材により縦方向PC鋼材16を構成する場合、小セグメント321、322の地組時に、小セグメント322の上端から突出する縦方向PC鋼材16の突出部分を小セグメント321のシース管323内に通し、その仮緊張と定着により上下の小セグメント321、322を連結することが可能である。
【0084】
また、上下のセグメント31、32の延在方向も前記の実施形態で説明したものに限らず、これらのセグメント31、32が鉛直面内において異なる方向に延在していればよい。例えば図13(a)で模式的に示すように上下のセグメント31、32がそれぞれ直線状に傾斜してもよいし、図13(b)のように上方のセグメント31が鉛直方向に対して傾斜し、下方のセグメント32が鉛直方向に沿って設けられてもよい。あるいは逆に、図13(c)のように上方のセグメント31が鉛直方向に沿って設けられ、下方のセグメント32が鉛直方向に対して傾斜してもよい。これらセグメント31、32の延在方向の組合せに応じて、縦方向PC鋼材15を通すセグメント32の貫通孔bの位置、縦方向PC鋼材15をセグメント32の外面で定着する定着部10の位置などが適切に定められる。
【0085】
また、前記の実施形態では上方のセグメント31の縦方向PC鋼材15の下端を下方のセグメント32の貫通孔bに通して当該セグメント32に定着しているが、図13(d)に模式的に示すように、下方のセグメント32の縦方向PC鋼材16(第1の緊張材)の上端を、上方のセグメント31の貫通孔bに通して当該セグメント31の外面に設けた定着部20に定着してもよい。この場合、上方のセグメント31の縦方向PC鋼材15(第2の緊張材)の下端は、セグメント31の下端部すなわちセグメント32側の端部にある定着部10にて定着する。
【0086】
このようにセグメント31、32は鉛直面内において様々な方向に延在して設けることができる。従って、側壁は略卵形に限らず、様々な形状を取り得る。例えば図13(a)のセグメント31、32を用いる場合、側壁3は錐台をその底面同士で上下に接続した形状とでき、図13(b)~(d)のセグメント31、32を用いる場合、側壁3は筒体の上または下に錐台を設けた形状とできる。その他、側壁3を球形とすることなども可能である。
【0087】
また本実施形態は消化槽1に限らず各種の貯槽に適用可能であり、上下のセグメントにより構築される構造体を有していれば貯槽以外の構造物にも適用可能である。
【0088】
さらに、本実施形態では側壁3の下部3cと台座コンクリート5との間をジベル等で連結して剛結状態としたが、側壁3の下部3cを台座コンクリート5に対し非剛結状態としてもよい。非剛結状態とは、側壁3の下部3cと台座コンクリート5との間でせん断力およびモーメントを実質的に伝達しない状態をいうものとし、「実質的に」とは、摩擦やコンクリートの付着を介した微小な力の伝達を除いて、という意味である。
【0089】
また、本実施形態では側壁3の下部3cのセグメント32を上下の小セグメント321、322に分割しており、大サイズの消化槽1でセグメント32が大きくなり運搬面、設置面の問題がある場合などに有効となる。しかしながら、そのような問題が無ければセグメント32を最初から一体として製作してもよい。一方で、側壁3の上部3bのセグメント31をセグメント32と同様、上下の小セグメントに分割することも可能である。
【0090】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0091】
1:消化槽
2:地盤
3:側壁
5:台座コンクリート
6:底部部材
7:蓋体
8:鋼製足場
9:基礎杭
10、20、40、50:定着部
13:均しコンクリート
15、16:縦方向PC鋼材
17、18:周方向PC鋼材
30:窪み
31、32:プレキャストセグメント
321、322:小セグメント
321a、322a:拡幅部
321b:貫通孔
323、324:シース管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13