(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】コンベヤベルト、及び、傾斜搬送コンベヤ
(51)【国際特許分類】
B65G 15/42 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
B65G15/42 Z
(21)【出願番号】P 2019036031
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018047110
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 高広
(72)【発明者】
【氏名】石井 信彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 邦王
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-012409(JP,U)
【文献】実開昭60-064915(JP,U)
【文献】実開平04-005409(JP,U)
【文献】実開昭58-191108(JP,U)
【文献】米国特許第06571935(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0173521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/30-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜搬送コンベヤに使用されるコンベヤベルトであって、
ベルト基材と、
前記ベルト基材のベルト幅方向の両側縁部においてそれぞれベルト長手方向に延び、ベルト幅方向の外側に突出する山部とベルト幅方向の内側にへこむ谷部とが前記ベルト長手方向に交互に配された、2つの波形桟と、
前記2つの波形桟の間に設けられて前記ベルト幅方向に延び、前記ベルト長手方向に互いに距離をおいて前記ベルト基材に配設された複数の横桟とを有し、
前記横桟の前記ベルト幅方向における端部のそれぞれは、前記波形桟の前記ベルト長手方向に並ぶ2つの前記谷部の谷底部の間を通り抜けて、前記谷底部よりも前記ベルト幅方向の外側の位置まで延び、
前記端部は、前記ベルト幅方向において、前記波形桟の、前記山部の山頂部と前記谷部の谷底部との間の中間部分
においてのみ隣接
し、
前記波形桟の前記山部の波高さと前記谷部の波高さを、それぞれHとしたときに、
前記中間部分は、前記波形桟の前記山部と前記谷部の境界点から、前記横桟の端までの、前記ベルト幅方向における距離が、2H/3の範囲であることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記ベルト幅方向において、前記横桟の端の位置が、前記波形桟の前記境界点と一致することを特徴とする
請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記ベルト基材が屈曲していない状態において、前記横桟の端と前記波形桟の隙間が3mm以下であることを特徴とする
請求項1又は2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記ベルト基材が屈曲していない状態において、前記横桟の前記端が前記波形桟と接触していることを特徴とする
請求項3に記載のコンベヤベルト。
【請求項5】
前記波形桟と前記横桟の、前記ベルト基材の表面に対する立設角度が一致していることを特徴とする請求項
1乃至4の何れか1項に記載のコンベヤベルト。
【請求項6】
前記横桟は、前記ベルト基材に固定される足部と、前記足部から立ち上がる桟部を有し、
前記足部は、前記ベルト長手方向の寸法が前記桟部よりも大きく、
前記ベルト幅方向において、前記足部の端部は前記波形桟よりも内側に配置されていることを特徴とする請求項
1乃至5の何れか1項に記載のコンベヤベルト。
【請求項7】
複数のプーリと、
前記複数のプーリに巻き掛けられた、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のコンベヤベルトを備え、
前記コンベヤベルトは、水平面に対して所定角度傾斜した姿勢で配置された傾斜搬送部を有することを特徴とする傾斜搬送コンベヤ。
【請求項8】
前記所定角度は、45度~70度であることを特徴とする
請求項7に記載の傾斜搬送コンベヤ。
【請求項9】
前記コンベヤベルトの、搬送面の反対側の面に、押し当てられるローラを有し、
前記コンベヤベルトは、前記ローラとの接触部分において正曲げ状態で屈曲していることを特徴とする
請求項7又は8に記載の傾斜搬送コンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜搬送用のコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤは、コンベヤベルト、従動プーリ、駆動プーリ、ベルトを屈曲させる場合はローラを、備え、固形物、粉体、液体などさまざまな形状の物体を搬送するのに用いられる。コンベヤは搬送物を連続的に効率よく搬送できることから、鉱業、運送業、自動車産業、食品業界を始めとしてあらゆる分野で利用されている。しかし、一般的なコンベヤを急傾斜での搬送に用いると、以下のようなことが起こる。搬送物がベルト幅方向の端から滑って落ちたり、こぼれ落ちたり、ベルト長手方向の下方に滑って落ちたり、はね落ちたり、搬送物が堆積する物だと上の方の搬送物が下方にこぼれ落ちたりして搬送効率が低くなる。このように、一般的なコンベヤは、急傾斜での搬送を苦手としており、傾斜角度の上限は20度程度とされている。
【0003】
これ以上の傾斜角度での搬送を可能としたコンベヤベルトとして、特許文献1に記載のコンベヤベルトが挙げられる。特許文献1のコンベヤベルトは、ベルト基材の表面に2つの波形桟と複数の横桟を有している。2つの波形桟(S型フランジ)は、どちらも、ベルト幅方向の外側に突出する山部とベルト幅方向の内側にへこむ谷部とがベルト長手方向に交互に配されて形成されていて、ベルト基材のベルト幅方向の両側縁部においてそれぞれベルト長手方向に延びている。複数の横桟は、それぞれ、両波形桟の間に設けられてベルト幅方向に延び、ベルト長手方向において互いの間に距離が存在するように、配設されている。また、横桟は、両側の波形桟の谷部のうちの特に頂点の間に配置されている。つまり、横桟の端部は波形桟の谷部の頂点と隣接している。このように波形桟と横桟をベルト基材に配設することにより、搬送経路に急な傾斜が含まれていても、搬送物がベルト幅方向の端から落下したり、ベルト長手方向の下方に落下したりすることによって、搬送効率が低下するのが防止される。
【0004】
ところで、特許文献1のコンベヤベルトにおいては、屈曲時の波形桟の変形が問題となる。まず、
図4(b)に示すように、コンベヤベルトが逆曲げされると、
図4(a)に示すように、コンベヤベルトが屈曲していないときよりも、波形桟の谷部がベルト幅方向の内側に倒れ込むため、横桟と干渉しやすい。このような波形桟と横桟の干渉を避けるために、特許文献1の
図2または本願の
図5に示すように、波形桟と横桟の間に隙間が設けられている。その一方で、
図4(c)に示すように、コンベヤベルトが正曲げされると、コンベヤベルトが屈曲していないときよりも、波形桟の谷部がベルト幅方向の外側に倒れ込むため、波形桟と横桟の隙間が広がる。つまり、ベルト屈曲時に波形桟が変形することにより、横桟と波形桟の谷部との間に隙間が必要になり、また、波形桟の変形によって隙間自体の大きさも変動することになる。しかし、搬送する物体によっては搬送中に上記隙間を搬送物がすり抜けてしまうことがあり、すり抜けるとすり抜けた分だけ搬送効率は低下してしまう。
【0005】
傾斜のきついコンベヤに使用されるコンベヤベルトにおいて、搬送物が波形桟と横桟の隙間をすり抜けることによる搬送効率の低下を防止する観点から、これまでにさまざまな工夫が提案されている。特許文献2においては、波形桟と横桟との隙間を塞ぐ工夫がなされている。具体的には、横桟の側面に接合用ゴム板が固定されている。この接合用ゴム板の端部は、横桟の端部よりもベルト幅方向に突出し、接合用ゴム板の端部は波形桟に固定されている。つまり、波形桟と横桟の隙間が接合用ゴム板の端部によって塞がれる形となる。これにより、たとえ波形桟と横桟の隙間を搬送物がすり抜けても、搬送物は接合用ゴム板に受け止められ、接合用ゴム板の前に滞留する。
【0006】
一方、特許文献3においては、波形桟と横桟の隙間の変動を抑える工夫がなされている。具体的には、波形桟に内装されている補強布の厚みや枚数を調節することにより、波形桟の谷部において桟の厚さを厚く、波形桟の山部において桟の厚さを薄くして調整している。つまり、谷部を山部に対して変形しにくくすることで、波形桟の谷部と横桟との隙間の変動が抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭64-53910号公報
【文献】実開平6-3924号公報
【文献】特開平9-20413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に開示されているコンベヤベルトでは、接合用ゴム板を、横桟や波形桟にボルトとナットで固定する必要がある。従って、接合用ゴム板はもちろん、ボルトやナットも必要となり、その分、製造コストは高くなる。また、接合用ゴム板と横桟の接続工程、及び接合用ゴム板と波形桟の接続工程の増加により生産性は低下する。
【0009】
また、特許文献3に開示されているコンベヤベルトでは、谷部を山部に対して変形しにくくするために、波形桟の補強布の厚みや枚数を調節する必要があり、生産性の面で問題がある。また、谷部は山部と比べれば変形しにくいとはいっても、ある程度の変形は生じてしまう。そのため、横桟と波形桟の谷部との間の隙間は多少なりとも変動することになり、搬送物の落下を防止できるほど隙間を十分小さくできるとは言い難い。
【0010】
本発明は、コスト増大や生産性低下につながる特別な構成の追加を行うことなく、急傾斜搬送における搬送効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコンベヤベルトは、傾斜搬送コンベヤに使用されるコンベヤベルトであって、ベルト基材と、前記ベルト基材のベルト幅方向の両側縁部においてそれぞれベルト長手方向に延び、ベルト幅方向の外側に突出する山部とベルト幅方向の内側にへこむ谷部とが前記ベルト長手方向に交互に配された、2つの波形桟と、前記2つの波形桟の間に設けられて前記ベルト幅方向に延び、前記ベルト長手方向に互いに距離をおいて前記ベルト基材に配設された複数の横桟とを有し、前記横桟の前記ベルト幅方向における端部のそれぞれは、前記波形桟の前記ベルト長手方向に並ぶ2つの前記谷部の谷底部の間を通り抜けて、前記谷底部よりも前記ベルト幅方向の外側の位置まで延び、前記端部は、前記ベルト幅方向において、前記波形桟の、前記山部の山頂部と前記谷部の谷底部との間の中間部分と隣接する。
【0012】
上記構成によれば、横桟の端部が、ベルト長手方向に隣り合う谷部の間に入り込んでいるため、搬送物が波形桟と横桟の隙間をすり抜けにくい。また、搬送物が波形桟と横桟の隙間をすり抜けた場合でも、横桟のすぐ下にある波形桟の側面で受け止められるため、ベルト長手方向の下方に落下しにくい。
【0013】
また、波形桟においては、山頂部及び谷底部と比べて山頂部と谷底部の中間に位置する中間部分は変形しにくい。そのため、本発明のように横桟の端部を波形桟の中間部分に隣接させておくことで、ベルトが屈曲した場合でも横桟と波形桟の隙間の大きさは変動しにくい。したがって、製造時に横桟の端部を波形桟に対してより近づけてベルト基材に配設することができ、横桟と波形桟の隙間を小さくすることができる。
【0014】
以上、本発明では、従来の横桟の端部位置を工夫するだけで、特別な構成を追加することなく、搬送効率を向上させることができる。
【0015】
本発明のコンベヤベルトは、前記波形桟の前記山部の波高さと前記谷部の波高さを、それぞれHとしたときに、前記中間部分は前記波形桟の前記山部と前記谷部の境界点から、前記横桟の端までの、前記ベルト幅方向における距離が、2H/3の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明のコンベヤベルトは、前記ベルト幅方向において、前記横桟の端の位置が、前記波形桟の前記境界点と一致することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、波形桟の山部と谷部の境界点は、波形桟の中で節に当たる部分となり、ベルトに屈曲が生じたときでもほとんど変形しない。よって、搬送効率を向上させるという観点から最も適している。
【0018】
本発明のコンベヤベルトは、前記ベルト基材が屈曲していない状態において、前記横桟の端と前記波形桟の隙間が3mm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のコンベヤベルトは、前記ベルト基材が屈曲していない状態において、前記横桟の前記端が前記波形桟と接触していることがより好ましい。
【0020】
上記構成によれば、波形桟と横桟との間にほとんど隙間が生じないため、搬送効率の向上が大いに期待できる。
【0021】
本発明のコンベヤベルトは、前記波形桟と前記横桟の、前記ベルト基材の表面に対する立設角度が一致していることが好ましい。
【0022】
波形桟と横桟との間で立設角度が異なっていると、その角度の違いによって、ベルト表面に沿った二次元的な隙間に加えて、三次元的な隙間が余計に発生してしまう。この観点から、波形桟と横桟の立設角度は一致しているのがよい。
【0023】
本発明のコンベヤベルトは、前記横桟は、前記ベルト基材に固定される足部と、前記足部から立ち上がる桟部を有し、前記足部は、前記ベルト長手方向の寸法が前記桟部よりも大きく、前記ベルト幅方向において、前記足部の端部は前記波形桟よりも内側に配置されていることが好ましい。
【0024】
足部は、桟部と比べて、ベルト長さ方向の寸法が大きいため、桟部と同様にベルト幅方向に長く延ばしてしまうと、足部が波形桟と干渉しやすくなる。そこで、本発明では、ベルト長さ方向の寸法が小さい桟部のみ端部を長くのばし、ベルト長さ方向の寸法が大きい足部については、端部は延ばさず短くする。
【0025】
本発明のコンベヤベルトは、傾斜搬送コンベヤに使用されるコンベヤベルトであって、ベルト基材と、前記ベルト基材のベルト幅方向の両側縁部においてそれぞれベルト長手方向に延び、ベルト幅方向の外側に突出する山部とベルト幅方向の内側にへこむ谷部とが前記ベルト長手方向に交互に配された、2つの波形桟と、前記2つの波形桟の間に設けられて前記ベルト幅方向に延び、前記ベルト長手方向に互いに距離をおいて前記ベルト基材に配設された複数の横桟とを有し、前記横桟の前記ベルト幅方向における端部のそれぞれは、前記波形桟の前記ベルト長手方向に並ぶ2つの前記谷部の間を通り抜けて、前記谷部よりも前記ベルト幅方向の外側の位置まで延び、前記端部が、前記ベルト幅方向において、前記波形桟の前記山部の山頂部と隣接していてもよい。
【0026】
上記構成によれば、横桟の端部が、それぞれ、ベルト長手方向に隣り合う谷部の間の奥まで入り込んでいるため、搬送物が波形桟と横桟の隙間をすり抜けにくい。また、搬送物が波形桟と横桟の隙間をすり抜けた場合でも、横桟のすぐ下にある波形桟の側面で受け止められるため、ベルト長手方向の下方に落下しにくい。以上、本発明では、従来の横桟の端部位置を工夫するだけで、搬送物が波形桟と横桟の隙間をすり抜けにくくなる。したがって、特別な構成を追加することなく、搬送効率を向上させることができる。
【0027】
本発明の傾斜搬送コンベヤは、複数のプーリと、前記複数のプーリに巻き掛けられた、上述したコンベヤベルトを備え、前記コンベヤベルトは、水平面に対して所定角度傾斜した姿勢で配置された傾斜搬送部を有する。
【0028】
上記構成によれば、特別な構成を追加することなく、急傾斜においても搬送効率の高いコンベヤが実現される。
【0029】
本発明の傾斜搬送コンベヤは、前記所定角度は、45度~70度であってもよい。
【0030】
上記のように傾斜角度が大きいコンベヤにおいては、横桟と波形桟との隙間からの搬送物の落下が生じやすいが、本発明では、上述した構成のコンベヤベルトを採用することにより、搬送物の落下を効果的に抑えることができる。
【0031】
本発明の傾斜搬送コンベヤは、前記コンベヤベルトの、搬送面の反対側の面に、押し当てられるローラを有し、前記コンベヤベルトは、前記ローラとの接触部分において正曲げ状態で屈曲していてもよい。
【0032】
従来のように、横桟の端部が谷底部に隣接しているベルトでは、特に正曲げが作用したときに、波形桟と横桟の隙間が広がって搬送物が落下しやすくなる。これに対して、上述した構成のコンベヤベルトでは、横桟の端部が、波形桟のうちの特に変形が小さい中間部分と隣接しているため、横桟と波形桟の隙間が広がりにくい。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本願の発明では、コンベヤベルトについて、コスト増大や生産性低下につながる特別な構成の追加を行うことなく、急傾斜搬送における搬送効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】
図1のコンベヤのプーリ、ローラ、ベルトのレイアウトを概略的に示す図である。
【
図3】(a)はコンベヤベルトの一部拡大平面図、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は(a)のB-B線断面図である。
【
図4】屈曲時の波形桟倒れ込みを説明するための従来のコンベヤベルトの平面図及び断面図であり、(a)は屈曲していない状態、(b)は逆曲げ状態、(c)は正曲げ状態をそれぞれ示す。
【
図7】本実施例及び比較例のコンベヤの概略図である。
【
図8】(a)は本実施例のコンベヤベルトの一部拡大平面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図9】(a)は比較例のコンベヤベルトの一部拡大平面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図11】(a)本実施形態の別の例のコンベヤベルトの一部拡大平面図である。(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図12】(a)、(b)、(c)変形例のコンベヤの概略図である。
【
図13】変形例のコンベヤベルトの、横桟の形状を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、
図1~
図13を参照しつつ、本発明の実施形態のコンベヤ1及びコンベヤベルト2について説明する。
【0036】
(傾斜搬送コンベヤ1)
本実施形態の傾斜搬送コンベヤ1は、急傾斜においても搬送物を連続的に効率よく搬送できることから、鉱業、運送業、自動車産業、食品業界を始めとしてあらゆる分野で利用されている。
図1に、本実施形態のコンベヤ1の斜視図を示した。
図2に示すように、コンベヤ1は、フレーム6、フレーム6に取り付けられた駆動プーリ3および従動プーリ4、駆動プーリ3と従動プーリ4に巻き掛けられたコンベヤベルト2、コンベヤベルト2のキャリア側に、搬送面21である表面あるいは裏面に押し当てられる8つのローラ5、コンベヤベルト2のリターン側に、押し当てられる8つのローラ5を備えている。なお、
図2においては、キャリア側についてもリターン側についても、ローラ5がベルト幅方向に重なって見えるため、4つしかないように見えている。ベルト2の進行方向を後方、ベルト2の進行方向の逆を前方とした。
【0037】
駆動プーリ3と従動プーリ4の上下の位置は異なっていて、駆動プーリ3は上方に、従動プーリ4は下方に位置している。キャリア側において、従動プーリ4の直後では、コンベヤベルト2の表面(搬送面21)に4つのローラ5が押し付けられることによって、コンベヤベルト2が逆曲げされている。逆曲げのためのローラ5の4つのうち2つがペアになってベルト幅方向に並び、逆曲げのためのローラ5の4つのうちもう2つがペアになってベルト幅方向に並んでいる。前者と後者のペアはベルト長手方向において並んでいる。逆曲げのための前方のローラ51のペアと従動プーリ4との間に下の水平部11が形成されている。
【0038】
また、キャリア側において、駆動プーリ3の直前においては、コンベヤベルト2の裏面に4つのローラが押し付けられることによって、コンベヤベルト2は正曲げされている。正曲げのためのローラ5の4つのうち2つがペアになってベルト幅方向に並び、正曲げのためのローラ5の4つのうちもう2つがペアになってベルト幅方向に並んでいる。前者と後者のペアはベルト長手方向において並んでいる。これにより、正曲げのための後方のローラ54と駆動プーリ3との間にも上の水平部12が形成されている。
【0039】
コンベヤベルト2は、キャリア側に、逆曲げのための後方のローラ52と正曲げのための前方のローラ53の間に、水平面に所定角度傾斜した傾斜搬送部13を有する。所定角度は、例えば、45度~70度である。以上より、下方の従動プーリ4近辺のAの位置においてコンベヤベルト2の搬送面21上に供給された搬送物は、下の水平部11、傾斜搬送部13、上の水平部12を経て、上方の駆動プーリ3周辺のBの位置まで搬送される。
【0040】
(コンベヤベルト2)
図2に示すように、コンベヤベルト2は、コンベヤ1において駆動プーリ3と従動プーリ4に巻き掛けられる無端状のベルトである。
図3(a)~(c)に示すように、このコンベヤベルト2は、帯状のベルト基材7と、このベルト基材7の搬送面21である表面に配設された2つの波形桟8、及び、複数の横桟9を有する。
【0041】
(ベルト基材7)
ベルト基材7は、芯体の表面をカバー層で覆った帯状の形状をしている。ベルト基材7は、芯体と2つの接着層と2つのカバー層を有している。芯体は帆布であり、帆布は、例えばポリエステルや綿で形成されている。なお、帆布は、1枚でなくてもよく、2、3枚等の複数枚であってもよい。帆布を複数枚用いて芯体とする場合は、接着性や耐久性の点から帆布の間に中間層を設けるのが好ましい。カバー層は、弾性体で形成され、ベルト基材7の剛性を高め、芯体を衝撃から守っている。接着層は帆布とカバー層を接着している。カバー層及び接着層及び中間層は、例えば熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されている。更に具体的には、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーで形成されていてもよい。なお、カバー層は、耐水性、耐熱性、耐薬品性などを有していてもよい。また、カバー層と接着層と中間層は、互いに組成が異なっていてもよい。ベルト基材7のベルト厚みは、例えば1~5mm程度で、ベルト基材7のベルト幅は、例えば300~1500mm程度である。なお、芯体は帆布で形成されていなくてもよい。
【0042】
(波形桟8)
図3(a)及び
図6に示すように、2つの波形桟8は、それぞれ、ベルト基材7の表面の、ベルト幅方向の両側縁部に溶着等により固定されている。各波形桟8は、ベルト長手方向に、ベルト全周に亘り延びている。各波形桟8は、平面視でいわゆる波状の形状をした部材である。具体的には、ベルト幅方向の外側に突出する山部81とベルト幅方向の内側にへこむ谷部82とがベルト長手方向に交互に配されて形成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、山部81及び谷部82を次のように定義する。各波形桟8のベルト幅方向における中心を通り、ベルト長手方向に延びる中心線Lに対し、ベルト幅方向の外側の部分を山部81、中心線Lに対してベルト幅方向の内側の部分を谷部82と定義する。隣接する山部81と谷部82の形状及び大きさはほぼ等しい。また、中心線Lと波形桟8が交わる部分であり、山部81と谷部82の接続部分を、境界点83とする。
【0044】
波形桟8は、例えば、芯体なしで、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂のみで形成されていてもよく、帆布等から形成される芯体の周囲を熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で覆った構造であってもよい。可撓性を高める点から、波形桟8は、芯体なしで、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂のみで形成されているのが好ましい。波形桟8の厚みは、例えば、2~8mm程度であり、これくらいの厚みであれば強度と可撓性を両立できる。また、波形桟8の波のピッチP(ベルト長手方向に隣り合う山部81の頂点の間のベルト長手方向の距離)、及び山部81の波高さHと谷部82の波高さHの合計である2Hは、例えば、30~60mm程度である。波形桟8は、ベルト基材7の表面に対して直角に立設されていて、波形桟8のベルト基材7の表面に対する立設高さは、ベルト長手方向における全周に亘り均一である。波形桟8のベルト基材7の表面に対する立設高さは、搬送物の大きさや容量に応じて適宜選択し、例えば、30~100mm程度である。
【0045】
(横桟9)
図3(a)に示すように、横桟9は、2つの波形桟8の間にベルト幅方向に平行に延びている。複数の横桟9が、ベルト長手方向に互いに距離をおいてベルト基材7に配設されている。なお、波形桟8の山部81と谷部82の組み合わせで1つの波を構成するとしたときに、ベルト長手方向に隣り合う2本の横桟9は、上記の波二つ分空けて配置されている。
【0046】
図3(a)~(c)に示すように、横桟9は、ベルト基材7に固定される足部91と足部91から立ち上がる桟部92を有する。足部91は、ベルト基材7の表面に溶着等で固定される部分であり、ベルト長手方向の寸法が桟部92よりも大きい。足部91により横桟9はベルト基材7に固定され、足部91によりベルト基材7と横桟9の接合強度が高められている。横桟9の桟部92は、ベルト基材7の表面と直角を成している。つまり、波形桟8と横桟9の、ベルト基材7の表面に対する立設角度が一致している。なお、明細書中で、横桟9の桟部92のベルト幅方向における端部を横桟9のベルト幅方向における端部93と呼ぶ。
【0047】
横桟9の桟部92は、例えば、芯体なしで、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂のみで形成されていてもよく、帆布等から形成される芯体の周囲を熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で覆った構造であってもよい。強度を高める点から、桟部92は、帆布等から形成される芯体の周囲を熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で覆った構造であることが好ましい。横桟9の足部91の素材は、横桟9の桟部92の素材と同一であることが好ましい。横桟9の桟部92の厚みは、例えば、2~12mm程度である。また、横桟9のベルト基材7の表面に対する立設高さは、例えば、20~90mm程度である。
【0048】
ところで、従来のコンベヤベルトにおいては、一般に、2つの波形桟の谷部の頂点間に横桟が配置されている(例えば、先の特許文献1参照)。つまり、横桟のベルト幅方向における端が谷部の頂点と隣接している。また、ベルトが屈曲したときには、山部や谷部はその頂点付近で変形が最も大きくなる。従って、谷部が内側または外側に倒れ込むことによって横桟と波形桟との隙間が変動してしまう。
【0049】
図4を参照してより具体的に説明する。ローラが表面に押し当てられてベルトが逆曲げされる箇所では、
図4(b)に示すように、ベルト102が屈曲していない状態(
図4(a))よりも、谷部182がベルト幅方向の内側に倒れ込み、山部181がベルト幅方向の外側に倒れ込む。一方、ローラが裏面に押し当てられてベルト102が正曲げされる箇所では、
図4(c)に示すように、ベルト102が屈曲していない状態(
図4(a))よりも、谷部182がベルト幅方向の外側に倒れ込み、山部181がベルト幅方向の内側に倒れ込む。
【0050】
特許文献1に記載のコンベヤベルトのように、波形桟の谷部の頂点に、横桟のベルト幅方向における端部が隣接していると、
図4(b)に示すように、ベルト102が逆曲げされると波形桟108の谷底部186がベルト幅方向の内側に倒れ込んで横桟109のベルト幅方向における端部193に干渉しやすい。このため、
図5に示すように、波形桟108と横桟109の端部193の間に隙間110を設けていた。この隙間110のおかげで、ベルト102が逆曲げされても、波形桟108は横桟109の端部193に干渉しなくなったものの、ベルト102が正曲げされると、ベルト102が屈曲していない状態よりも隙間110が広がる。このように、波形桟108の変形によって隙間110の大きさも変動する。急傾斜で搬送物を搬送しても搬送物が波形桟と横桟の隙間をすりぬけないようにするため、なるべく波形桟と横桟の隙間を小さくすることが望ましい。
【0051】
そこで、本実施形態のコンベヤベルト2では、隙間10からの落下を防止するとともに、隙間10そのものも小さく抑えることができる工夫がなされている。まず、
図3(a)、(b)に示すように、横桟9のベルト幅方向における端部93のそれぞれは、波形桟8のベルト長手方向に並ぶ2つの谷底部86の間を通り抜けて、谷底部86よりもベルト幅方向の外側の位置まで延びている。横桟9の端部93が、ベルト長手方向に隣り合う谷部82の間に入り込んでいるため、搬送物が波形桟8と横桟9の隙間10をすり抜けにくい。また、搬送物が波形桟8と横桟9の隙間10をすり抜けた場合でも、横桟9のすぐ下にある波形桟8の側面で受け止められるため、ベルト長手方向の下方に落下しにくい。
【0052】
さらに、隙間10の変動を小さく抑える工夫として、
図3(a)に示すように、横桟9の端部93を、波形桟8の変形が小さい部分に隣接させるようにしている。具体的には、横桟9のベルト幅方向における端部93のそれぞれは、ベルト幅方向において、波形桟8の山部81の山頂部85と谷部82の谷底部86との間の中間部分84に隣接している。ここで、波形桟8の「中間部分84」とは、波形桟8における山部81と谷部82の境界点83の周辺部分のことを指す。より具体的に、
図6に示すように、本実施形態では中間部分84を、波形桟8の山部81と谷部82の境界点83から、横桟9のベルト幅方向における端94までの、ベルト幅方向における距離が、2H/3以下である範囲とする。波形桟8において、中間部分84よりベルト幅方向の外側部分を山頂部85、中間部分84よりベルト幅方向の内側部分を谷底部86とする。中間部分84は、ベルト2が屈曲した場合でも山頂部85や谷底部86と比べて変形しにくいため、波形桟8と横桟9の隙間10の大きさは変動しにくい。そのため製造時に横桟9の端部93を波形桟8に対してより近づけてベルト基材7に配設することができ、波形桟8と横桟9の隙間10を小さくすることができる。例えば、
図6の9aのように、横桟9のベルト幅方向における端94が、ベルト幅方向において中間部分84に含まれるように横桟9を配設した場合、波形桟8と横桟9の隙間10を小さくすることができる。
図6の9cのように、横桟9のベルト幅方向における端94が、ベルト幅方向において谷底部86に接触するように横桟9を配設した場合、谷底部86は中間部分84より波形桟8と横桟9の隙間10の大きさが変動しやすく、そのため製造時に横桟9の端部93を波形桟8に対してより近づけてベルト基材7に配設するのは難しい。
【0053】
図6に示すように、横桟9のベルト幅方向における端94は、それぞれ、ベルト基材7が屈曲していない状態において、9bのように、中間部分84のうちの山部81と谷部82の境界点83に一致していることが好ましい。中間部分84の中でも特に、山部81と谷部82の境界点83は、波形桟8の中で節に当たる部分となり、ベルト2に屈曲が生じたときでもほとんど変形しない。従って、波形桟8と横桟9の隙間10の大きさが最も変動しにくい形態となる。このため、製造時に横桟9の端部93を波形桟8に対してより近づけて、横桟9をベルト基材7に配設することができ、波形桟8と横桟9の隙間10をより小さくすることができる。
【0054】
ベルト基材7が屈曲していない状態において、波形桟8と横桟9の端94の隙間10は3mm以下であることが好ましい。
図3(a)に示すように、本実施形態においては、波形桟8と横桟9の端94は接触している。これにより、ベルト2が屈曲しても波形桟8と横桟9との間にほとんど隙間10が生じない。特許文献1に記載の従来の横桟9の端部位置を工夫するだけで、特別な構成を追加することなく、搬送効率が大いに向上する。
【0055】
なお、波形桟8と横桟9との間で立設角度が異なっていると、その角度の違いによってベルト表面と平行な二次元的な隙間に加えて、三次元的な隙間が余計に発生してしまう。この点、本実施形態では、波形桟8と横桟9の、ベルト基材7の表面に対する立設角度が一致しているため、二次元的な隙間10のみとなり、波形桟8と横桟9の隙間10は小さく抑えられている。
【0056】
また、前述したように、横桟9は足部91と桟部92とで構成されているが、
図3(a)~(c)に示すように、横桟9の端部93を波形桟8の谷部82の間に入り込ませる際には、桟部92の端部93のみを谷部82の間に配置させるのがよい。即ち、ベルト長手方向における寸法が桟部92よりも大きい足部91は、波形桟8よりも内側に配置されていることが好ましい。ベルト長手方向の寸法が小さい桟部92のみ端部93を長く延ばし、ベルト長手方向の寸法が大きい足部91については、端部は延ばさず短くすることで、足部91は波形桟8と干渉しにくくなっている。
【0057】
次に、上述したコンベヤベルト2について、実際に実施例1、2と比較例のベルトを使用してその効果を検証した。
【0058】
まず、この検証で使用したコンベヤについて、
図7を参照して説明する。実施形態で説明したコンベヤ1を用いて、Aの位置で搬送物を載せ、Bの位置まで搬送した場合の搬送量の評価を行った。搬送物は、小麦粉、水または鉄球とし、コンベヤベルトのベルト速度を20m/minとした。
【0059】
下の水平部の、水平面における距離は100mmで、上の水平部の水平面における距離も100mmである。逆曲げのためのローラの前方のペアから正曲げのためのローラの後方のペアまでの、水平面における距離は350mmである。Aの位置からBの位置までの水平面に対する高さの差は500mmである。傾斜搬送部の水平面に対する傾斜角度は、70度である。
【0060】
次に、実施例1、2と比較例のコンベヤベルトの具体的な仕様について説明する。
【0061】
図7に示すように、本実施例1、2のコンベヤベルト2のベルトサイズは幅360mm×長さ1900mmである。
本実施例1のベルト2のベルト基材7は、内側から順にポリエステル帆布、熱可塑性ポリウレタン(0.2mm厚)、ポリエステル帆布、熱可塑性ポリウレタン(0.5mm厚)を積層して成り、ベルト基材7全体の厚みは1.7mmである。本実施例1のベルト2の波形桟8は熱可塑性ポリウレタンのみで形成され、波形桟8の厚みは2.5mmである。
図8(a)、(b)に示すように、波形桟8の波のピッチPは50mmであり、山部81の波高さHと谷部82の波高さHの合計である2Hは45mmであり、波形桟8のベルト基材7の表面に対する立設高さは40mmである。本実施例1のベルト2の横桟9の足部91及び桟部92は、ポリエステル帆布の周囲を熱可塑性ポリウレタンで被覆した複合体である。横桟9の端94は、ベルト長手方向において波形桟8の谷底部86から12mm離れた位置にあり、横桟9の足部91と波形桟8の隙間10の、ベルト幅方向の距離は5mmである。横桟9の足部91のベルト幅方向の長さは、180mmであり、横桟9の桟部92のベルト幅方向の長さは、240mmである。横桟9の高さは、波形桟8の高さと同じで40mmである。
【0062】
本実施例2は、本実施例1から寸法などの変更はなく、ベルト材質を変更したものである。すなわち、ベルト基材7のカバー層、波形桟8、横桟9の材質を熱可塑性ポリウレタンから熱可塑性ポリ塩化ビニルに変更したものである。ただし、ベルト基材7の中間層の材質は熱可塑性ポリウレタンのまま変更はなく、厚みを0.1mm増やした。
より具体的には、本実施例2のベルト2のベルト基材7は、内側から順にポリエステル帆布、熱可塑性ポリウレタン(0.3mm厚)、ポリエステル帆布、熱可塑性ポリ塩化ビニル(0.5mm厚)を積層して成り、ベルト基材7全体の厚みは1.8mmである。本実施例2のベルト2の波形桟8は熱可塑性ポリ塩化ビニルのみで形成され、波形桟8の厚みは2.5mmである。
図8(a)、(b)に示すように、波形桟8の波のピッチPは50mmであり、山部81の波高さHと谷部82の波高さHの合計である2Hは45mmであり、波形桟8のベルト基材7の表面に対する立設高さは40mmである。本実施例2のベルト2の横桟9の足部91及び桟部92は、ポリエステル帆布の周囲を熱可塑性ポリ塩化ビニルで被覆した複合体である。横桟9の端94は、ベルト長手方向において波形桟8の谷底部86から12mm離れた位置にあり、横桟9の足部91と波形桟8の隙間10の、ベルト幅方向の距離は5mmである。横桟9の足部91のベルト幅方向の長さは、180mmであり、横桟9の桟部92のベルト幅方向の長さは、240mmである。横桟9の高さは、波形桟8の高さと同じで40mmである。
【0063】
実施例1、2に対する比較として、従来のように横桟のベルト幅方向の端部が波形桟の谷部の頂点に隣接するように配設したコンベヤベルトを用いたコンベヤで、搬送量の評価を行った。比較例の寸法等を
図9(a)、(b)に示す。この比較例のコンベヤは、横桟の足部のベルト幅方向の長さと横桟の桟部のベルト幅方向の長さが同じであり、共に180mmであることと、ベルト基材が屈曲していない状態において、ベルトが波形桟と横桟は接触しておらず、波形桟と横桟との間にベルト幅方向において5mmの隙間が存在すること以外の、寸法や素材等の構成は実施例1と同一である。
【0064】
(効果検証)
実施例1、2のコンベヤ1と比較例のコンベヤそれぞれについて、Aの位置からBの位置まで小麦粉(100g、300g、500g)または水(100ml、300ml、500ml)または直径3mmの鉄球(100個、300個、500個)を搬送した場合の搬送量の評価を行った。
これらの結果を
図10に示した。比較例と比べて、実施例1、2では搬送量が増加し、搬送効率が向上していることが分かる。実施例2は実施例1と搬送効率に大きな差はなく、どちらのベルト材質も適用可能であることが判る。特に、比較例ではほとんど搬送できていなかった水についても、実施例1、2ではある程度の量を搬送することができた。水の搬送において、A地点で積載する水の量を300ml、500mlと多くしてもB地点まで搬送される水の量があまり増加していないが、これは傾斜搬送部において横桟9を乗り越えて落下する水の量が増加してしまうことに起因し、波形桟8と横桟9の間からはほとんど落下していない様子が観察された。実施例1、2の鉄球の搬送において、本願では波形桟8と横桟9の隙間を小さくできることから、粒径が比較的大きい搬送物であれば、100%の搬送効率を実現できることが判る。以上より、本実施形態の傾斜搬送コンベヤ1を用いると、急傾斜搬送において搬送効率が向上することが裏付けられた。
【0065】
(変形例)
以上に、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下の様に変更して実施することができる。
【0066】
(1)本実施形態では、隣り合う2本の横桟9の間隔が波形桟8の波二つ分である形態を例示するが、隣り合う2本の横桟9の間隔は波形桟8の波二つ分には限らない。波一つ分であってもよく、波三つ分以上であってもよい。さらに、複数の横桟9は、ベルト長手方向に一定間隔で配設されていなくてもよい。
【0067】
(2) 横桟の形状は、実施形態の形状に限られない。例えば、
図13(a)のように桟部31が足部32に対して、直角ではなく傾斜している構成でもよい。また、横桟33は
図13(b)のような形状をしていてもよい。
【0068】
(3)前記実施形態では、横桟9の端94が波形桟8と接触して隙間10がない状態となっているが、わずかに隙間10が存在してもよい。この隙間10は、例えば3mm以下である。
【0069】
(4) 複数の山部と複数の谷部は互いに、形が異なっていてもよく、大きさが異なっていてもよい。
【0070】
(5) 波形桟はベルト基材7の表面(搬送面21)に対して直角ではなく傾斜して立設されていてもよい。
【0071】
(6) 本実施形態のコンベヤベルト2を、
図12(a)~(c)に適用してもよい。すなわち、下の水平部11、および/または上の水平部12を備えない傾斜搬送コンベヤに適用してもよい。
【0072】
(7)2つの波形桟の山部と谷部の位置が少しずれていてもよい。この場合、2つの波形桟の間で、横桟の端と隣接する位置がずれることになる。例えば、横桟の一方の端の位置が波形桟の境界点に一致していても、他方の端の位置は境界点から少しずれることになる。
【0073】
(8)本実施形態では、ベルトは常に低所から高所に搬送する方向に動いているが、ベルトの進行方向は実施形態での説明とは逆方向であってもよい。すなわち、傾斜搬送コンベヤを高所から低所への搬送に用いてもよい。
【0074】
前記実施形態とその変更形態においては、(1)横桟9の端部93が谷部82の間に入り込むとともに、(2)横桟9のベルト幅方向における端94が波形桟8の中間部分84と隣接する点がポイントであった。これに対して、上記(1)の構成のみを備えたコンベヤベルト202であっても、従来構成に対して搬送物の落下を防止できると言える。即ち、
図11(a)、(b)のコンベヤベルト202では、横桟209のベルト幅方向における端部293のそれぞれが、波形桟208のベルト長手方向に並ぶ2つの谷部282の間を通り抜けて、谷部282よりもベルト幅方向の外側の位置まで延びている。この構成は前記実施形態と同様であるが、
図11(a)、(b)では、横桟209の端が波形桟208の山頂部285に隣接している。
【0075】
この構成でも、横桟209の端部293が、ベルト長手方向に隣り合う谷部282の間の奥まで入り込むことによって、搬送物が波形桟208と横桟209の隙間210をすり抜けにくい。また、搬送物が波形桟208と横桟209の隙間210をすり抜けた場合でも、横桟209のすぐ下にある波形桟208の側面で受け止められるため、ベルト長手方向の下方に落下しにくい。従って、前記実施形態と同様、特別な構成を追加することなく、搬送効率を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 傾斜搬送コンベヤ
2 コンベヤベルト
3 駆動プーリ
4 従動プーリ
5 ローラ
6 フレーム
7 ベルト基材
8 波形桟
81 山部
82 谷部
83 境界点
84 中間部分
85 山頂部
86 谷底部
9 横桟
91 足部
92 桟部