(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20221104BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F02M51/06 H
F02M51/06 M
F02M61/16 Y
F02M61/16 X
F02M61/16 J
(21)【出願番号】P 2019050746
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久芳 茂生
(72)【発明者】
【氏名】長岡 正樹
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-057430(JP,A)
【文献】特開平06-074127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0056570(US,A1)
【文献】特開平08-189439(JP,A)
【文献】特開平09-291866(JP,A)
【文献】特開2018-098354(JP,A)
【文献】特開平08-100731(JP,A)
【文献】特開2016-070188(JP,A)
【文献】特表2005-520989(JP,A)
【文献】特開平07-103098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/00,61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動するための電磁コイルを有する電磁駆動部と、
前記電磁コイルの外周を覆う樹脂カバーと、
前記樹脂カバーに一体成型され前記電磁コイルに通電するためのターミナルが設けられたコネクタと、
前記樹脂カバーの胴部から燃料噴射弁の中心軸線に垂直な方向に突き出して、前記コネクタを支持する支持部と、
を備え、
前記コネクタは、前記ターミナル
が設けられる空間を囲
み前記ターミナルの先端側に開口を有する周壁と、前記コネクタの
前記開口
の側とは反対側に設けられた底面と、を有し、
前記底面は
、前記中心軸線に垂直な平面として構成される第1底面部と
、前記中心軸線に平行な平面として構成される第2底面部と
、を含んで構成され、
前記コネクタは、前記第2底面部が前記樹脂カバーの前記胴部の側面から前記中心軸線に垂直な方向に離れた位置に配置されて、前記第2底面部と前記胴部との間に介在する前記支持部を介して前記胴部に支持され、
前記支持部は、前記胴部から離れるに従って前記第1底面部に近づくように前記中心軸線に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記コネクタの前記周壁における前記第2底面部の側の端部よりも前記開口の側で、前記周壁に接続されている燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記第1底面部及び前記第2底面部は、相互に交わる位置まで延設されている燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第1底面部と前記第2底面部とが交わる部分に面取り部が形成されている燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記樹脂カバーは、前記支持部に対して基端側に、燃料配管への接続用具が嵌められる環状溝を
有する燃料噴射弁。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料噴射弁において、
前記傾斜面は、前記胴部の側の端部が、前記中心軸線に沿う方向において、樹脂注入を行うゲートの上端と同じ位置にある燃料噴射弁。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記コネクタの前記周壁は、前記コネクタにおける前記胴部からの突き出し方向を向く前面の高さ寸法が、前記第1底面部の前記胴部からの突き出し寸法よりも小さい燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2010-190224号公報(特許文献1)に記載された燃料噴射弁が知られている。特許文献1に記載された燃料噴射弁は、一端面に燃料供給口が設けられ他端面に燃料噴射孔が形成された噴孔プレートが固着されたノズル体が設けられたケーシングと、ケーシングの外側に設けられ電磁コイルを包囲するヨークと、ケーシング及びヨークを覆い電磁コイルに電力を供給するコネクタが設けられた樹脂カバーと、を備えている(段落0021,0023参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料噴射弁では、特許文献1のように、コネクタは樹脂カバーの本体部から径方向外側に張り出すように設けられる。このような燃料噴射弁では、開閉弁時の振動がコネクタに伝搬し、コネクタが振動することで弁体の作動音が外部に放射される可能性がある。コネクタは樹脂カバーの本体部から径方向外側に張り出すように設けられ、コネクタ支持部の剛性が低く、振動し易い。そのため、弁体の作動音が大きな騒音となって外部に放射される可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、コネクタの振動を抑制することができる燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の燃料噴射弁は、
弁体を駆動するための電磁コイルを有する電磁駆動部と、
前記電磁コイルの外周を覆う樹脂カバーと、
前記樹脂カバーに一体成型され前記電磁コイルに通電するためのターミナルが設けられたコネクタと、
前記樹脂カバーの胴部から燃料噴射弁の中心軸線に垂直な方向に突き出して、前記コネクタを支持する支持部と、
を備え、
前記コネクタは、前記ターミナルが設けられる空間を囲み前記ターミナルの先端側に開口を有する周壁と、前記コネクタの前記開口の側とは反対側に設けられた底面と、を有し、
前記底面は、前記中心軸線に垂直な平面として構成される第1底面部と、前記中心軸線に平行な平面として構成される第2底面部と、を含んで構成され、
前記コネクタは、前記第2底面部が前記樹脂カバーの前記胴部の側面から前記中心軸線に垂直な方向に離れた位置に配置されて、前記第2底面部と前記胴部との間に介在する前記支持部を介して前記胴部に支持され、
前記支持部は、前記胴部から離れるに従って前記第1底面部に近づくように前記中心軸線に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記コネクタの前記周壁における前記第2底面部の側の端部よりも前記開口の側で、前記周壁に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コネクタの振動を抑制することができ、燃料噴射弁から放射される騒音を低減した燃料噴射弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る燃料噴射弁1の一実施例について、弁軸心(中心軸線)に沿う断面を示す断面図である。
【
図3】
図2の燃料噴射弁1の樹脂カバー47を矢印III方向から見た平面図である。
【
図4】
図2の燃料噴射弁1の樹脂カバー47を矢印IV方向から見た平面図である。
【
図5】樹脂カバー47におけるヒケ発生率及びボイド発生率を説明する図である。
【
図6】本発明に係る燃料噴射弁が搭載された内燃機関の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施例について、
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0010】
図1を参照して、燃料噴射弁1の全体構成について説明する。
図1は、本発明に係る燃料噴射弁の一実施例について、弁軸心(中心軸線)に沿う断面を示す断面図である。なお、中心軸線1aは、後述する弁体17が一体に設けられた可動子27の中心軸心(弁軸心)に一致し、後述する筒状体5の中心軸線に一致している。また、中心軸線1aは、後述する弁座15bの中心軸線とも一致している。
【0011】
燃料噴射弁1には、金属材製の筒状体(ケーシング)5によって、その内側に燃料流路3がほぼ中心軸線1aに沿う方向に構成されている。筒状体5は、磁性を有するステンレス等の金属素材を用い、深絞り加工等のプレス加工により中心軸線1aに沿う方向に段付きの形状に形成されている。これにより、筒状体5は、一端側5aの径が他端側5bの径に対して大きくなっている。
図1においては、一端側に形成された大径部5aが、他端側に形成された小径部5bの上側になるように描いてある。
【0012】
図1において、上端部(上端側)を基端部(基端側)と呼び、下端部(下端側)を先端部(先端側)と呼ぶことにする。基端部(基端側)及び先端部(先端側)という呼び方は、燃料の流れ方向に基づいている。また、本明細書において説明される上下関係は
図1を基準とするもので、燃料噴射弁1の内燃機関への搭載時における上下方向とは必ずしも一致しない。
【0013】
筒状体5の基端部には燃料供給口2が設けられ、この燃料供給口2に、燃料に混入した異物を取り除くための燃料フィルタ13が取り付けられている。
【0014】
筒状体5の基端部には、径方向外側に向けて拡径するように曲げられた鍔部(拡径部)5dが形成され、鍔部5dと樹脂カバー47の基端側端部47aとで形成される環状凹部(環状溝部)4にOリング11が配設されている。
【0015】
筒状体5の先端部には、弁体17と弁座部材15とからなる弁部7が構成されている。弁座部材15には、中心軸線1aに沿う方向に貫通する貫通孔15aが形成されている。貫通孔15aの途中には下流側に向かって縮径する円錐面が形成され、貫通孔15aはこの円錐面によって段付き状に形成されている。そして円錐面上には弁座15bが構成され、弁体17が弁座15bに離接することにより、燃料通路の開閉が行われる。なお、弁座15bが形成された円錐面全体を弁座15bと呼ぶ場合もある。貫通孔15aの内周面に、弁体17を中心軸線1aに沿う方向に案内するガイド面15cが形成されている。貫通孔15aの下端部は弁座部材15の先端面に開口し、この開口は燃料通路を構成する。
【0016】
弁座部材15は、筒状体5の先端側内側に挿入され、レーザ溶接等により筒状体5に固定され、弁座部材15の先端面にはノズルプレート(噴孔プレート)21nが取り付けられている。ノズルプレート21nは弁座部材15に対してレーザ溶接等により固定されている。ノズルプレート21nは板厚が均一な板状部材(平板)で構成されており、複数の燃料噴射孔110が形成されている。
【0017】
ノズルプレート21nによって、燃料噴霧の形態を決定するノズル部(燃料噴射部)が構成される。本実施例では、ノズルプレート21nに燃料噴射孔110のみを設けているが、燃料噴射孔110の上流側に燃料を旋回させる旋回室を設けてもよい。
【0018】
本実施例では、弁体17としてボール弁を用いているが、ボール弁以外で弁体17を構成することも可能である。例えば、ニードル弁を用いてもよい。
【0019】
筒状体5の中間部には弁体17を駆動するための駆動部9が配置されている。駆動部9は電磁アクチュエータ(電磁駆動部)で構成されている。具体的には、駆動部9は、筒状体5の内部(内周側)に固定された固定鉄心25と、筒状体5の内部において固定鉄心25に対して先端側に配置され、中心軸線1aに沿う方向に移動可能な可動子(可動部材)27と、固定鉄心25と可動子27に構成された可動鉄心27aとが微小ギャップδを介して対向する位置で筒状体5の外周側に外挿された電磁コイル29と、電磁コイル29の外周側で電磁コイル29を覆うヨーク33とによって構成されている。
【0020】
可動鉄心27aと固定鉄心25とヨーク33とは、電磁コイル29に通電することにより生じた磁束が流れる磁路を構成する。磁束は微小ギャップδを通過するが、微小ギャップδの部分で筒状体5を流れる漏れ磁束を低減するため、筒状体5の微小ギャップδに対応する位置に、磁気絞り5cが設けられている。この磁気絞り5cは、筒状体5に対する非磁性化処理、或いは筒状体5の外周面に形成した環状凹部等によって構成することができる。
【0021】
電磁コイル29は、樹脂材料で筒状に形成されたボビン31に巻回され、筒状体5の外周側に外挿されている。電磁コイル29はコネクタ41に設けられたターミナル43に電気的に接続されている。コネクタ41には図示しない駆動回路が接続され、ターミナル43を介して、電磁コイル29に駆動電流が通電される。
【0022】
固定鉄心25は、磁性金属材料からなる。固定鉄心25は筒状に形成され、中心部を中心軸線1aに沿う方向に貫通する貫通孔25aを有する。固定鉄心25は、筒状体5の小径部5bの基端側に圧入固定され、筒状体5の中間部に位置している。固定鉄心25は溶接により筒状体5に固定してもよいし、溶接と圧入を併用して筒状体5に固定してもよい。
【0023】
可動子27は、基端側に大径部27aが形成されており、この大径部27aが固定鉄心25と対向する可動鉄心27aを構成する。可動鉄心27aの先端側には小径部(ロッド部)27bが形成されており、この小径部27bの先端に弁体17が溶接により固定されている。この小径部27bは可動鉄心27aと弁体17とを接続する接続部を構成する。本実施例では、可動鉄心27aと接続部27bとを同一材料からなる一部材で形成しているが、二つの部材を接合して構成してもよい。
【0024】
本実施例では、弁体17を可動子27と別の構成要素として説明しているが、弁体17を可動子27の一部に含めてもよい。また、可動鉄心27aの外周面が筒状体5の内周面に接触することにより、可動子27は中心軸線1aに沿う方向(開閉弁方向)における移動を案内される。
【0025】
可動鉄心27aには、中心軸線1aに沿って貫通孔が形成され、この貫通孔により可動子27の内部に燃料流路3が構成される。可動子27内部の燃料流路3を流れた燃料は、小径部27b側面の開口部27dを通じて可動子27外部に流れ出る。
【0026】
固定鉄心25の貫通孔25aの内側にはアジャスタ(調整子)35が配設されており、アジャスタ35と可動鉄心27aとの間にコイルばね39が配設されている。コイルばね39の基端側端部はアジャスタ35の先端側端面に当接し、コイルばね39の先端側端部は可動鉄心27aに当接している。コイルばね39は、可動子27を、弁体17が弁座15bに当接する方向(閉弁方向)に付勢する付勢部材として機能する。
【0027】
ヨーク33は、磁性を有する金属材料でできており、燃料噴射弁1のハウジングを兼ねている。ヨーク33は大径部33aと小径部33bとを有する段付きの筒状に形成されている。大径部33aは電磁コイル29の外周を覆って円筒形状を成しており、大径部33aの先端側に大径部33aよりも小径の小径部33bが形成されている。小径部33bは筒状体5の小径部5bの外周に圧入されている。これにより、小径部33bの内周面は筒状体5の外周面に緊密に接触している。このとき、小径部33bの内周面の少なくとも一部は、可動鉄心27aの外周面と筒状体5を介して対向しており、この対向部分における磁路の磁気抵抗を小さくしている。
【0028】
ヨーク33の先端側端部の外周面には周方向に沿って環状凹部33cが形成されている。環状凹部33cの底面に形成された薄肉部において、ヨーク33と筒状体5とがレーザ溶接24により全周に亘って接合されている。
【0029】
筒状体5の先端部にはフランジ部49aを有する円筒状のプロテクタ49が外挿され、筒状体5の先端部がプロテクタ49によって保護されている。プロテクタ49はヨーク33のレーザ溶接部24の上を覆っている。
【0030】
プロテクタ49のフランジ部49aと、ヨーク33の小径部33bと、ヨーク33の大径部33aと小径部33bとの段差面とによって環状溝34が形成され、環状溝34にOリング46が外挿されている。Oリング46は、燃料噴射弁1が内燃機関に取り付けられる際に、内燃機関側に形成された挿入口109a(
図6参照)の内周面とヨーク33における小径部33bの外周面との間で液密及び気密を確保するシールとして機能する。
【0031】
燃料噴射弁1の中間部から基端側端部の近傍までの範囲に、樹脂カバー47がモールドされている。樹脂カバー47の先端側端部はヨーク33の大径部33aの基端側の一部を被覆している。また、樹脂カバー47は配線部材45を被覆し、樹脂カバー47によりコネクタ(受電用カプラ)41が一体的に形成されている。
【0032】
次に、燃料噴射弁1の動作について説明する。
【0033】
電磁コイル29が非通電状態にあり電磁コイル29に駆動電流が流れていない場合、可動子27はコイルばね39により閉弁方向に付勢され、弁体17が弁座15bに当接(着座)した状態(閉弁状態)にある。この場合、固定鉄心25の先端側端面と可動鉄心27aの基端側端面との間には、ギャップδが存在する。なお、本実施例では、このギャップδは可動子27(すなわち弁体17)のストロークに等しい。
【0034】
電磁コイル29が通電状態に切り替わり電磁コイル29に駆動電流が流れると、可動鉄心27aと固定鉄心25とヨーク33とによって構成される磁路に磁束が発生する。この磁束により、ギャップδを挟んで対向する固定鉄心25と可動鉄心27aとの間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が、コイルばね39による付勢力や、可動子27に対して閉弁方向に作用する燃料圧力などの合力に打ち勝つと、可動子27が開弁方向に移動し始める。可動子27が開弁方向にギャップδに等しい距離だけ移動して固定鉄心25に当接すると、可動鉄心27aは開弁方向への移動を止められ、開弁して静止した状態(開弁静止状態)に至る。
【0035】
可動子27が開弁方向に移動して弁体17が弁座15bから離れると、弁体17と弁座15bとの間に隙間(燃料通路)が形成され、この隙間から燃料噴射孔110に供給された燃料は燃料噴射孔110から燃料噴射弁1の外部に噴射される。
【0036】
電磁コイル29の通電を打ち切ると、磁気吸引力が減少し、やがて消失する。この段階で、磁気吸引力がコイルばね39の付勢力よりも小さくなると、可動子27が閉弁方向へ移動を開始する。弁体17が弁座15bに当接すると、弁体17は弁部7を閉弁して静止した状態(閉弁状態)に至る。
【0037】
なお、可動鉄心27aと固定鉄心25との間に作用するスクイズ力を低減するために、可動鉄心27aの固定鉄心25と対向する端面に突起を設ける場合がある。このような場合は、弁体17の移動距離(ストローク)はギャップδから突起高さを差し引いた大きさになる。また、可動鉄心27aと固定鉄心25とが接触する前に、可動子27の開弁方向への移動を制限するストッパを設ける場合もある。
【0038】
次に、
図2,3,4を用いて、本発明に係るコネクタ41について、詳細に説明する。
図2は、燃料噴射弁1の外観を示す斜視図である。
図3は、
図2の燃料噴射弁1の樹脂カバー47を矢印III方向から見た平面図である。
図4は、
図2の燃料噴射弁1の樹脂カバー47を矢印IV方向から見た平面図である。なお
図3に示す二点鎖線LH1は、中心軸線1aに直交する仮想線である。また
図4に示す二点鎖線LH2は、中心軸線1a及び二点鎖線LH1に垂直な仮想線である。
【0039】
コネクタ(受電用カプラ)41は、樹脂カバー47に一体的に形成されており、支持部(リブ)41sにより支持されている。支持部41sは樹脂カバー47の胴部47dから中心軸線1aに垂直な方向(二点鎖線LH1に沿う方向)に突出するように設けられている。コネクタ41は、ターミナル43の並び方向(二点鎖線LH2に沿う方向)における幅寸法W1が、ターミナル43の並び方向における胴部47dの幅寸法W2よりも大きく、胴部47dの周面(側面)に対してターミナル43の並び方向の両側にl1だけ張り出している。
【0040】
コネクタ41は、支持部41sの突出方向(
図3における左方向)を向く前面41a、その反対側(
図3における右方向)を向く後面41b、及びターミナル43の並び方向を向く側面41cで周囲を囲まれた凹状の空間41eを有し、空間41eにターミナル43が二点鎖線LH2に沿う方向に並設されている。前面41a、後面41b及び側面41cは、ターミナル43を囲む周壁を構成する。
【0041】
またコネクタ41は、空間41eの開口側とは反対側(コネクタ41の下部)に底面41d1,41d2を有する。本実施例では、コネクタ41の底面は第1底面部41d1と第2底面部41d2とを含んで構成される。第1底面部41d1は、二点鎖線LH1に沿う方向において前面41aの下端部から支持部41sに向かって、中心軸線1aに垂直な平面として構成される。また第1底面部41d1は、支持部41sの下面41hの連続面として、中心軸線1aに沿う方向において、下面41hと同じ位置で、下面41hに接続される。第2底面部41d2は、二点鎖線LH1に垂直な面として、中心軸線1aに平行な平面として構成される。第2底面部41d2は第1底面部41d1と交わる位置まで延設される。すなわち、第1底面部41d1及び第2底面部41d2は、相互に交わる位置まで延設され、第1底面部41d1と第2底面部41d2とが交わる部分に面取り部(丸み部)41fが形成されている。
【0042】
図1に示すように、配線部材45は樹脂カバー47に覆われてコネクタ41の凹状空間41e内に露出するように配設される。この場合、
図3からわかるように、第1底面部41d1と第2底面部41d2との交点(交線)、或いは交点に形成される面取り部(丸み部)41fは、コネクタ41を形成する樹脂内で、配線部材45よりも第1底面部41d1側(先端側)に配設される。また、第2底面部41d2は、配線部材45を凹状空間41e内に露出するための配線部材45の曲げ部45aに対して、樹脂カバー47の胴部47d側(中心軸線1a側)に位置する。
【0043】
上述した第1底面部41d1及び第2底面部41d2により、コネクタ41の支持剛性を高めることができ、コネクタ41の振動の発生を抑制することができる。その結果、燃料噴射弁1が発生する騒音の発生を抑制することができる。
【0044】
また本実施例では、前面41aの高さ寸法H1は第1底面部41d1の胴部47dからの突き出し寸法L1よりも小さい。これにより、支持部41sのコネクタ41の支持剛性が向上し、コネクタ41の振動発生の抑制効果が高まる。
【0045】
一方、第1底面部41d1及び第2底面部41d2を形成するために、コネクタ41の肉厚が厚くなり、モールド時の樹脂注入量が増加することになる。そのため、樹脂の収縮によるヒケやボイドの発生に対する対策を行うことが好ましい。
【0046】
本実施例の樹脂カバー47は、支持部41sに対して基端側に、環状溝47fが形成されている。環状溝47fは、燃料噴射弁1を図示しない燃料配管に取り付ける際に図示しない接続用具(接続用クリップ)が嵌められる溝であり、接続用具が環状溝47fに嵌められることにより、燃料噴射弁1の燃料配管からの抜け止めが行われる。
【0047】
支持部41sの上面(基端側面)は、環状溝47fの側面47faから中心軸線1aに対して傾斜して下方(先端側)に延設された傾斜面47gにより構成される。環状溝47fの側面47faは、環状溝47fを形成する2つの側面のうち先端側(
図3の紙面上で下側)に形成される側面である。すなわち傾斜面47gの胴部47d側の端部は、中心軸線1aに沿う方向において、樹脂カバー47を成型する際の型に対する樹脂の注入部(ゲート)Gの上端位置(ゲート開口縁の基端側部分)と同じ位置にある。これにより傾斜面47gは、ゲートGと中心軸線1aを介して対向する部位に、コネクタ41部に向かって樹脂が流入する開口を形成する。すなわち支持部(リブ)41sは、傾斜面47gを有することで、ゲートGと中心軸線1aを介して対向する型内の部位に、コネクタ41部に向かって樹脂が流入する開口を形成する。
【0048】
本実施例では、支持部(リブ)41sは、ゲートGに対して、中心軸線1aを中心とする周方向において、反対側に配置されている。この場合、傾斜面47gが設けられた構成では、
図3の点線L1で示すように傾斜面47gが設けられない構成に対して、コネクタ41部への樹脂流れを良好にすることができ、注入される樹脂の圧力を高め、ヒケやボイドの発生を抑制することができる。
【0049】
図5を用いて、傾斜面47gによるヒケ及びボイドの発生抑制効果について説明する。
図5は、樹脂カバー47におけるヒケ発生率及びボイド発生率を説明する図である。
図5では、傾斜面47gのない構成と傾斜面47gを設けた構成とについて、ヒケ及びボイドの発生状況を樹脂の体積収縮率で示している。
【0050】
ヒケについて見てみると、傾斜面47gのない構成の場合のA部における体積収縮率が14.50%、B部における体積収縮率が15.28%であるのに対して、傾斜面47gを設けた構成のA部における体積収縮率は13.96%、B部における体積収縮率は14.55%であり、傾斜面47gのない構成に対して傾斜面47gを設けた構成の場合の体積収縮率が改善していることがわかる。
【0051】
ボイドについて見てみると、傾斜面47gのない構成の場合のC部における体積収縮率が17.34%であるのに対して、傾斜面47gを設けた構成のC部における体積収縮率は15.82%であり、傾斜面47gのない構成に対して傾斜面47gを設けた構成の場合の体積収縮率が改善していることがわかる。
【0052】
図5から、傾斜面47gを設けることにより、樹脂流れを改善し、引け及びボイドの発生を抑制できることが分かる。
【0053】
次に、
図6を参照して、本発明に係る燃料噴射弁を搭載した内燃機関について説明する。
図6は、燃料噴射弁1が搭載された内燃機関の断面図である。本実施例では、複数の燃料噴射孔110を2つのグループに分けて、各グループの燃料噴射孔110が異なる二方向に燃料を噴射する燃料噴射弁1を対象として説明する。
【0054】
内燃機関1000のエンジンブロック1010にはシリンダ1020が形成されおり、シリンダ1020の頂部に吸気口1030と排気口1040とが設けられている。吸気口1030には、吸気口1030を開閉する吸気弁1050が、また排気口1040には排気口1040を開閉する排気弁1060が設けられている。エンジンブロック1010に形成され、吸気口1030に連通する吸気流路1070の入口側端部1070aには吸気管1080が接続されている。
【0055】
燃料噴射弁1の燃料供給口2(
図1参照)には燃料配管1100が接続される。
【0056】
吸気管1080には燃料噴射弁1の取付け部1090が形成されており、取付け部1090に燃料噴射弁1を挿入する挿入口1090aが形成されている。挿入口1090aは吸気管1080の内壁面(吸気流路)まで貫通しており、挿入口1090aに挿入された燃料噴射弁1から噴射された燃料は吸気流路内に噴射される。二方向噴霧の場合、エンジンブロック1010に吸気口1030が二つ設けられた形態の内燃機関を対象として、それぞれの燃料噴霧が各吸気口1030(吸気弁1050)を指向して噴射される。
【0057】
また、燃料噴射孔110の配置、個数及び角度や燃料噴霧の噴射方向および個数については、内燃機関の形態に合わせて適宜変更することができる。
【0058】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、一部の構成の削除や、記載されていない他の構成の追加が可能である。また、実施例と変更例とを適宜組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…燃料噴射弁、1a…燃料噴射弁1の中心軸線、9…電磁駆動部、17…弁体、29…電磁コイル、41…コネクタ、41a,41b,41c…ターミナル43を囲むコネクタ41の周壁(前面、側面、後面)、41d1…コネクタ41の第1底面部、41d2…コネクタ41の第2底面部、41f…面取り部、41s…支持部、43…ターミナル、47…樹脂カバー、47d…樹脂カバー47の胴部、47f…環状溝、47g…傾斜面、G…ゲート。