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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20221104BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20221104BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28D7/16 A
F01N5/02 B
F01N5/02 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019061721
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159652
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】麓 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】木村 大輔
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-066140(JP,A)
【文献】実公昭56-032792(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0030652(US,A1)
【文献】特開2004-060932(JP,A)
【文献】特開2002-130060(JP,A)
【文献】特開2018-080900(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0114611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 1/00 - 99/00
F01N 3/00 - 5/04
B01D 46/42
F02M 26/22 - 26/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流通可能であり、熱回収部材を収容するための内筒と、
前記内筒の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記内筒との間を第2流体が流通可能な外筒と
前記内筒と前記外筒との間に配置され、前記第2流体の流路を仕切る中筒と
を備え、
前記外筒及び/又は前記内筒の少なくとも1つの軸方向端部側に、連続した凹凸構造が形成されており、
前記中筒は、前記中筒の軸方向両端部に設けられたスペーサーによって前記内筒に保持されている熱交換器。
【請求項2】
前記スペーサーは、前記第2流体が通過可能な三次元構造を有する、請求項に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記中筒の軸方向一端に設けられたスペーサーは、前記中筒及び前記内筒の両方に固定され、前記中筒の軸方向他端に設けられたスペーサーは、前記内筒に対して固定され且つ前記中筒に対して可動可能に構成されている、請求項又はに記載の熱交換器。
【請求項4】
第1流体が流通可能であり、熱回収部材を収容するための内筒と、
前記内筒の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記内筒との間を第2流体が流通可能な外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に配置され、前記第2流体の流路を仕切る中筒と
を備え、
前記外筒及び/又は前記内筒の少なくとも1つの軸方向端部側に、連続した凹凸構造が形成されており、
前記中筒の軸方向両端部が、拡径された前記内筒に接続されており、
前記中筒が、前記第2流体が移動可能な貫通孔を有する熱交換器。
【請求項5】
前記中筒の軸方向一端部は、拡径された前記内筒に固定され、前記中筒の軸方向他端部は、拡径された前記内筒に対して可動可能に設けられている、請求項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記連続した凹凸構造が蛇腹構造である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱交換器が、熱回収部材を更に備え、
前記熱回収部材が、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム構造体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水、エンジンオイル、オートマチックトランスミッションフルード(ATF:Automatic Transmission Fluid)などを早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
このようなシステムとして、例えば、熱交換器がある。熱交換器は、内部に第1流体を流通させるとともに外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う装置である。このような熱交換器では、高温の流体(例えば、排ガスなど)から低温の流体(例えば、冷却水など)へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。
【0004】
特許文献1には、第1流体(例えば、排ガス)が流通可能な複数のセルを有するハニカム構造体として形成された集熱部と、集熱部の外周面を覆うように配置され、集熱部との間に第2流体(例えば、冷却水)が流通可能なケーシングとを有する熱交換器が提案されている。
しかしながら、特許文献1の熱交換器は、第1流体から第2流体に排熱を常時回収する構造となっているため、排熱を回収する必要がない場合にも排熱を回収してしまうことがあった。そのため、排熱を回収する必要がない場合に回収された排熱を放出するためのラジエータの容量を大きくする必要があった。
【0005】
そこで、特許文献2には、ハニカム構造体の外周面を覆うように配置されたケーシングを、ハニカム構造体の外周面に嵌合するように配置された内筒と、内筒を覆うように配置された中筒と、中筒を覆うように配置された外筒とから構成し、内筒と中筒との間に内側外周流路、中筒と外筒との間に外側外周流路が形成された熱交換器が提案されている。この熱交換器によれば、内筒の温度が冷媒(第2流体)の沸点未満である場合(排熱を回収する必要がある場合)には、内側外周流路及び外側外周流路が液体状態の冷媒で満たされているため、熱交換を促進することができる。また、内筒の温度が冷媒の沸点以上である場合(排熱を回収する必要がない場合)には、内側外周流路に、沸騰気化により生じた気体状態の冷媒が存在するようになるため、熱交換を抑制することができる。したがって、この熱交換器は、2種類の流体間における熱交換器の促進と抑制との切替えを行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-037165号公報
【文献】国際公開第2016/185963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、特許文献2に記載の熱交換器を検討したところ、第1流体と第2流体との熱交換を行う場合、第1流体と接する部分と第2流体と接する部分との間の温度差が大きくなり、熱応力によって部材が塑性変形する場合があることが分かった。このように部材が変形してしまうと、排熱の回収性能が低下する要因になる。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、第1流体と第2流体との熱交換の際に温度差による部材の塑性変形を抑制することが可能な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の部材に、連続した凹凸構造を形成するか、又は特定の箇所に、連続した凹凸構造を有する部材を設けることで、温度差による部材の塑性変形を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、第1流体が流通可能であり、熱回収部材を収容するための内筒と、
前記内筒の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記内筒との間を第2流体が流通可能な外筒と
前記内筒と前記外筒との間に配置され、前記第2流体の流路を仕切る中筒と
を備え、
前記外筒及び/又は前記内筒の少なくとも1つの軸方向端部側に、連続した凹凸構造が形成されており、
前記中筒は、前記中筒の軸方向両端部に設けられたスペーサーによって前記内筒に保持されている熱交換器である。
また、本発明は、第1流体が流通可能であり、熱回収部材を収容するための内筒と、
前記内筒の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記内筒との間を第2流体が流通可能な外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に配置され、前記第2流体の流路を仕切る中筒と
を備え、
前記外筒及び/又は前記内筒の少なくとも1つの軸方向端部側に、連続した凹凸構造が形成されており、
前記中筒の軸方向両端部が、拡径された前記内筒に接続されており、
前記中筒が、前記第2流体が移動可能な貫通孔を有する熱交換器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1流体と第2流体との熱交換の際に温度差による部材の塑性変形を抑制することが可能な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る熱交換器の断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る別の熱交換器の断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る熱交換器の側面図である。
図4】本発明の実施形態2に係る熱交換器の断面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る別の熱交換器の断面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る別の熱交換器の断面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る熱交換器の断面図である。
図8】本発明の実施形態3に係る別の熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
(実施形態1)
図1及び2は、本発明の実施形態1に係る熱交換器の断面図(第1流体の流通方向に平行な断面図)である。
図1及び2に示されるように、本発明の実施形態1に係る熱交換器100は、内筒10と、内筒10の径方向外側に間隔をおいて配置された外筒20とを備えている。また、外筒20の軸方向両端部の内周面は、溶接などによって内筒10の外周面に固定されている。そのため、内筒10内には第1流体が流通可能であり、内筒10と外筒20との間には第2流体が流通可能である。
また、熱交換器100は、内筒10内に収容される熱回収部材30を更に備えていてもよい。
【0015】
第1流体及び第2流体としては、種々の液体及び気体を利用することができる。例えば、熱交換器100が自動車に搭載される場合、第1流体として排ガスを用いることができ、第2流体として水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)を用いることができる。また、第1流体は、第2流体よりも高温の流体とすることができる。
【0016】
第1流体と第2流体との熱交換を行う場合、内筒10の内部には温度が高い第1流体が流れる一方、内筒10の外部には温度が低い第2流体が流れるため、内筒10には温度差が生じ、熱膨張挙動に違いが生じる。すなわち、内筒10は、温度が高い第1流体と接する部分が膨張する傾向にあるのに対し、温度が低い第2流体と接する部分が収縮する傾向にある。このような熱膨張挙動の違いにより、内筒10には大きな熱応力が発生する。そして、内筒10は、この熱応力に耐えられなくなると塑性変形し、内筒10と熱回収部材30との間に隙間が生じる。このような隙間が生じると、熱回収部材30で回収された熱を、内筒10を介して第2流体に効率良く伝達することができなくなるため、排熱の回収性能が低下してしまう。
【0017】
そこで、本発明の実施形態1に係る熱交換器100では、外筒20及び/又は内筒10の少なくとも一部に、連続した凹凸構造40が形成されている。
図1は、外筒20の一部に、連続した凹凸構造40が形成されている熱交換器100を示し、図2は、内筒10の一部に連続した凹凸構造40が形成されている熱交換器100を示す。
図1に示される熱交換器100では、外筒20に形成された連続した凹凸構造40が、外筒20を様々な方向に弾性変形させる機能を有する。そのため、連続した凹凸構造40は、内筒10の熱応力にあわせて、外筒20が伸縮するように弾性変形する。この外筒20に形成された連続した凹凸構造40の弾性変形により、内筒10の熱応力が緩和され、内筒10の塑性変形を抑制することが可能になる。
図2に示される熱交換器100では、内筒10に形成された連続した凹凸構造40が、内筒10を様々な方向に弾性変形させる機能を有する。そのため、連続した凹凸構造40は、内筒10の熱応力にあわせて、内筒10が伸縮するように弾性変形する。この内筒10に形成された連続した凹凸構造40の弾性変形により、内筒10の熱応力が緩和され、内筒10の塑性変形を抑制することが可能になる。
【0018】
外筒20又は内筒10に形成される連続した凹凸構造40の位置は、特に限定されないが、熱交換を阻害しないようにする観点から、外筒20又は内筒10の軸方向端部に形成されることが好ましい。
また、外筒20又は内筒10に形成される連続した凹凸構造40の数は、特に限定されないが、好ましくは1つ、より好ましくは2つである。
なお、図示していないが、外筒20及び内筒10の両方の少なくとも一部に、連続した凹凸構造40が形成されていてもよい。このような構成としても、上記の効果を得ることができる。
【0019】
連続した凹凸構造40としては、外筒20又は内筒10を各種方向に凹凸が連続している構造であれば特に限定されず、公知の様々な構造を用いることができる。その中でも、連続した凹凸構造40は、蛇腹構造であることが好ましい。
ここで、本明細書において「蛇腹構造」とは、対象となる構造体(例えば、外筒20、内筒10)の表面において山折り部及び谷折り部の繰返し構造を1つ以上有する構造を意味する。
蛇腹構造の繰返し構造の数は、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは5つ以上である。これは、繰返し構造の数が多いほど、伸縮能力が高くなり、熱応力を緩和する能力が向上するためである。
【0020】
以下、熱交換器100の各構成部材について、更に、構成部材ごとに詳細に説明する。
<内筒10について>
内筒10は、熱回収部材30の軸方向(第1流体の流通方向)外周面に配置された筒状の部材である。
内筒10の内周面は、熱回収部材30の軸方向外周面と直接的に接していても間接的に接していてもよいが、熱伝導性の観点から、熱回収部材30の軸方向外周面と直接的に接していることが好ましい。この場合、内筒10の内周面の断面形状は、熱回収部材30の外周面の断面形状と一致する。また、内筒10の軸方向は、熱回収部材30の軸方向と一致し、内筒10の中心軸は熱回収部材30の中心軸と一致することが好ましい。
内筒10の軸方向長さは、熱回収部材30の軸方向長さよりも長く設定されていることが好ましい。また、内筒10の軸方向において、内筒10の中央位置は、熱回収部材30の中央位置と一致することが好ましい。
内筒10の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。
【0021】
熱回収部材30を通り抜ける第1流体の熱は、熱回収部材30を介して内筒10に伝達されるため、内筒10は、熱伝導性に優れた材料から形成されていることが好ましい。内筒10に用いられる材料としては、例えば、金属、セラミックスなどを用いることができる。金属としては、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などが挙げられる。耐久信頼性が高いという理由により、内筒10の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0022】
<外筒20について>
外筒20は、内筒10の径方向外側に間隔をおいて配置された筒状の部材である。
外筒20の軸方向は、熱回収部材30及び内筒10の軸方向と一致し、外筒20の中心軸は熱回収部材30及び内筒10の中心軸と一致することが好ましい。
外筒20の軸方向長さは、熱回収部材30の軸方向長さよりも長く設定されていることが好ましい。また、外筒20の軸方向において、外筒20の中央位置は、熱回収部材30及び内筒10の中央位置と一致することが好ましい。
【0023】
外筒20は、第2流体を外筒20と内筒10との間の領域に供給するための供給管21、及び第2流体を外筒20と内筒10との間の領域から排出するための排出管22に接続されている。供給管21及び排出管22は、熱回収部材30の軸方向両端部に対応する位置に設けられていることが好ましい。
また、供給管21及び排出管22は、図1に示されるように同じ方向に向けて延出されていても、図2に示されるように異なる方向に向けて延出されていてもよい。
【0024】
外筒20の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向中央部、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。例えば、図2に示されるように外筒20の軸方向中央部を縮径させて絞り部23を形成することにより、供給管21及び排出管22側の外筒20内で第2流体を内筒10の外周方向全体に行き渡らせることができる。また、外筒20の絞り部23では、流路断面積が小さくなるため、第2流体の流速が増加して熱伝達が促進される。そのため、熱交換効率を向上させることができる。
【0025】
また、絞り部23は、外筒20の軸方向沿って螺旋状に形成されていてもよい。ここで、図3に熱交換器100の側面図を示す。図3(a)は、図2の熱交換器100の側面図であり、絞り部23が外筒20の軸方向中央部に形成されている。これに対して、図3(b)に示されるように、絞り部23を外筒20の軸方向沿って螺旋状に形成することにより、絞り部23による上記効果に加えて、外筒20の軸方向長さを短くすることができるため、熱交換器100を小型化することができる。
【0026】
外筒20に用いられる材料としては、例えば、金属、セラミックスなどを用いることができる。金属としては、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などが挙げられる。耐久信頼性が高いという理由により、外筒20の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0027】
<熱回収部材30について>
熱回収部材30としては、熱を回収できるものであれば特に限定されない。例えば、熱回収部材30としてハニカム構造体を用いることができる
ハニカム構造体は、一般的に柱状の構造体である。ハニカム構造体の軸方向に垂直な断面形状は、特に限定されず、円、楕円又は四角若しくはその他の多角形とすることができる。
【0028】
ハニカム構造体は、セラミックスを主成分とする隔壁及び外周壁により互いに区画された複数のセルを有する。各セルは、ハニカム構造体の第1端面から第2端面までハニカム構造体の内部を貫通している。第1端面及び第2端面は、ハニカム構造体の軸方向(セルが延びる方向)の両側の端面である。
各セルの断面形状(セルが延びる方向に垂直な断面の形状)は、特に限定されず、円形、楕円形、扇形、三角形、四角形、五角角形以上の多角形等の任意の形状とすることができる。
また、各セルは、ハニカム構造体の軸方向に垂直な断面において放射状に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、セルを流通する第1流体の熱をハニカム構造体の径方向外側に向けて効率良く伝達させることができる。
【0029】
ハニカム構造体の外周壁は、隔壁よりも厚いことが好ましい。このような構成とするにより、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い外周壁の強度を高めることができる。
【0030】
隔壁の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、隔壁の厚みは、0.1~1mmとすることが好ましく、0.2~0.6mmとすることが更に好ましい。隔壁の厚みを0.1mm以上とすることにより、ハニカム構造体の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁の厚さを1mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりする問題を改善することができる。
【0031】
次に、熱交換器100の製造方法について説明する。
熱交換器100の製造方法としては、当該技術分野において公知の方法に準じて行うことができる。例えば、熱回収部材30としてハニカム構造体を用いる場合、熱交換器100は、以下のようにして製造することができる。
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体の材料としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁によって第1流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体を得ることができる。
【0032】
次に、ハニカム構造体を内筒10に挿入して、焼き嵌めにより、ハニカム構造体に嵌合するように内筒10を配置する。なお、ハニカム構造体と内筒10との嵌合は、焼き嵌め以外に、圧入やろう付け、拡散接合などを用いてもよい。また、内筒10の一部を縮径又は拡径する場合、内筒10を配置した後に行っても、内筒10を配置する前に行ってもよい。
次に、第2流体の供給管21及び排出管22を設けた外筒20の内部に、上記で作製した構造体を配置し、溶接などによって固定する。
内筒10及び/又は外筒20に、連続した凹凸構造40を形成する方法としては、特に限定されず、機械的手段や液圧による手段などの各種加工方法を用いることができる。また、連続した凹凸構造40は、内筒10及び/又は外筒20に予め形成してもよいし、所定の位置に配置した後に形成してもよい。
【0033】
本発明の実施形態1に係る熱交換器100によれば、外筒20及び/又は内筒10の少なくとも一部に、連続した凹凸構造40が形成されているため、内筒10に生じた熱応力を連続した凹凸構造40が弾性変形によって緩和し、内筒10の塑性変形を抑制することができる。
【0034】
(実施形態2)
図4~6は、本発明の実施形態2に係る熱交換器の断面図(第1流体の流通方向に平行な断面図)である。なお、本発明の実施形態1に係る熱交換器100の説明の中で登場した符号と同一の符号を有する構成要素は、本発明の実施形態2に係る熱交換器200の構成要素と同一であるので、その説明を省略する。
本発明の実施形態1に係る熱交換器100は、外筒20及び/又は内筒10の少なくとも一部に、連続した凹凸構造40が形成されているが、本発明の実施形態2に係る熱交換器200は、外筒20及び内筒10とは別に設けられた緩衝部材50に、連続した凹凸構造40が形成されている点で異なる。
【0035】
図4は、2つ以上に分割された外筒20の間に、連続した凹凸構造40を有する緩衝部材50が配置されている熱交換器200を示す。この熱交換器200は、本発明の実施形態1に係る熱交換器100と同様に、2つ以上に分割された外筒20の間に配置された緩衝部材50の連続した凹凸構造40が弾性変形し、内筒10に生じた熱応力を緩和するため、内筒10の塑性変形を抑制することができる。なお、2つ以上に分割された外筒20とは、外筒20の長手方向において、2つ以上に分割されていることを意味する。
【0036】
また、図4に示される熱交換器200は、外筒20が径方向に延びた壁部24を有し、外筒20の壁部24が内筒10と接続されている。また、この熱交換器200は、壁部24を有する外筒20の一端に溶接などによって固定されたコーン70を更に備える。
このような構造を有する熱交換器200は、内筒10が膨張した際に外筒20の壁部24が弾性変形するため、内筒10の変形をより一層抑制することができる。
コーン70は、筒状の部材である。コーン70の軸方向は、外筒20などの軸方向と一致し、コーン70の中心軸は外筒20の中心軸と一致することが好ましい。また、外筒20に固定されるコーン70の一端の径は、外筒20の径と同じであることが好ましい。
コーン70に用いられる材料としては、例えば、金属、セラミックスなどを用いることができる。金属としては、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などが挙げられる。耐久信頼性が高いという理由により、コーン70の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0037】
図5は、2つ以上に分割された内筒10の間に、連続した凹凸構造40を有する緩衝部材50が配置されている熱交換器200を示す。この熱交換器200も、本発明の実施形態1に係る熱交換器100と同様に、2つ以上に分割された内筒10の間に配置された緩衝部材50の連続した凹凸構造40が弾性変形し、内筒10に生じた熱応力を緩和するため、内筒10の塑性変形を抑制することができる。なお、2つ以上に分割された内筒10とは、内筒10の長手方向において、2つ以上に分割されていることを意味する。
【0038】
図6は、外筒20と内筒10との間に、連続した凹凸構造40を有する緩衝部材50が配置されている熱交換器200を示す。この熱交換器200も、本発明の実施形態1に係る熱交換器100と同様に、外筒20と内筒10の間に配置された緩衝部材50の連続した凹凸構造40が弾性変形し、内筒10に生じた熱応力を緩和するため、内筒10の塑性変形を抑制することができる。
【0039】
なお、図4~6では、2つ以上に分割された外筒20の間、2つ以上に分割された内筒10の間、又は外筒20と内筒10との間に、緩衝部材50が配置されている例を示しているが、これらの2つ以上の箇所に緩衝部材50が配置されていてもよい。
【0040】
緩衝部材50は、いずれも筒状部材であり、その一部に、連続した凹凸構造40が形成されている。
2つ以上に分割された外筒20の間又は2つ以上に分割された内筒10の間に、緩衝部材50が配置される場合、図4及び5に示されるように、緩衝部材50の軸方向両端部が外筒20又は内筒10と溶接などによって固定される。また、緩衝部材50と外筒20又は内筒10との間は直接的に固定してもよいが、他の部材を介して間接的に固定してもよい。
外筒20と内筒10との間に緩衝部材50が配置される場合、図6に示されるように、緩衝部材50の軸方向一端が外筒20と溶接などによって固定され、緩衝部材50の軸方向他端が内筒10と溶接などによって固定される。緩衝部材50と外筒20又は内筒10との間は直接的に固定してもよいが、他の部材を介して間接的に固定してもよい。
【0041】
緩衝部材50に用いられる材料としては、例えば、金属、セラミックスなどを用いることができる。金属としては、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などが挙げられる。耐久信頼性が高いという理由により、部材50の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0042】
上記のような構造を有する熱交換器200は、熱交換器100と同様に、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。また、緩衝部材50は、設置される位置に応じて、適切な段階で各部材に配置すればよい。連続した凹凸構造40を有する緩衝部材50の形成方法としては、特に限定されず、機械的手段や液圧による手段などの各種加工方法を用いることができる。
【0043】
所定の位置に緩衝部材50を有する本発明の実施形態2に係る熱交換器200は、本発明の実施形態1に係る熱交換器100と同様に、緩衝部材50の連続した凹凸構造40が弾性変形し、内筒10に生じた熱応力を緩和するため、内筒10の塑性変形を抑制することができる。
【0044】
(実施形態3)
図7及び8は、本発明の実施形態3に係る熱交換器の断面図(第1流体の流通方向に平行な断面図)である。なお、本発明の実施形態1に係る熱交換器100の説明の中で登場した符号と同一の符号を有する構成要素は、本発明の実施形態3に係る熱交換器300の構成要素と同一であるので、その説明を省略する。
本発明の実施形態3に係る熱交換器300は、内筒10と外筒20との間に配置され、第2流体の流路を仕切る中筒60を更に備える点で、本発明の実施形態1に係る熱交換器100と異なる。
【0045】
中筒60は、筒状部材である。中筒60の軸方向は、熱回収部材30の軸方向と一致し、中筒60の中心軸は熱回収部材30の中心軸と一致することが好ましい。
中筒60の軸方向長さは、熱回収部材30の軸方向長さよりも長く設定されていることが好ましい。また、中筒60の軸方向において、中筒60の中央位置は、熱回収部材30、内筒10及び外筒20の中央位置と一致することが好ましい。
【0046】
内筒10と外筒20との間に第2流体の流路を仕切る中筒60を設けることにより、外筒20と中筒60との間に形成される第2流体の第1流路61aと、内筒10と中筒60との間に形成される第2流体の第2流路61bが形成される。
第2流路61bが液体の第2流体で満たされているとき、熱回収部材30から内筒10に伝えられた第1流体の熱が、第2流路61bの第2流体を介して第1流路61aの第2流体に伝えられる。一方、内筒10の温度が高く、第2流路61b内で第2流体の蒸気(気泡)が発生したとき、第2流路61bの第2流体を介する第1流路61aの第2流体への熱伝導が抑制される。これは、液体の流体に比べて気体の流体の熱伝導率が低いためである。すなわち、第2流路61b内で第2流体の蒸気が発生するか否かにより、熱交換を効率的に行う状態と熱交換を抑制する状態とを切り替えることができる。この熱交換の状態は、外部からの制御を必要としない。したがって、中筒60を設けることにより、外部から制御することなく、第1流体と第2流体との間の熱交換の促進と抑制との切り替えを容易に行うことが可能になる。
なお、第2流体は、熱交換を抑制したい温度域に沸点を有する流体を使用すればよい。
【0047】
中筒60の設置方法としては、特に限定されないが、例えば、図7に示されるように、中筒60の軸方向両端部に設けられたスペーサー62によって内筒10に中筒60を保持することができる。あるいは、図8に示されるように、中筒60の軸方向両端部を、拡径された内筒10に接続してもよい。
【0048】
スペーサー62は、中筒60と内筒10との間の空間を確保しつつ保持するための部材であり、中筒60と内筒10との間に設けられる。
スペーサー62は、内筒10の周方向全体にわたって延在していることが好ましい。スペーサー62は、内筒10の周方向全体にわたって連続的に延在する1つの部材により構成されていてもよいし、内筒10の周方向に互いに隣接又は離間して配置された複数の部材によって構成されていてもよい。
【0049】
スペーサー62は、熱回収部材30の軸方向の2つの端面側の位置にそれぞれ配置されていることが好ましく、熱回収部材30の軸方向の2つの端面の外側の位置にそれぞれ配置されていることがより好ましい。このような位置にスペーサー62を配置することにより、熱回収部材30の熱がスペーサー62を介して中筒60に伝わり難くすることができる。スペーサー62を介して熱回収部材30の熱が中筒60に伝わると、気体の第2流体による熱交換の抑制の効果が減じられてしまう。
【0050】
スペーサー62は、第2流体が通過可能な三次元構造を有することが好ましい。その中でもスペーサー62は、液体の第2流体の通過を許容しつつ、第2流体の気泡の通過を阻害する三次元構造を有することが特に好ましい。このような三次元構造としては、メッシュ構造(網目構造)又はスポンジ状構造(多孔質構造)を挙げることができる。スペーサー62が液体の第2流体の通過を許容するとは、第2流体がスペーサー62を通過できることを意味し、スペーサー62が第2流体の通過の抵抗となっていてもよい。スペーサー62が第2流体の気泡の通過を阻害するとは、第2流体の気泡がスペーサー62に付着すること、及び第2流体の気泡の移動にスペーサー62が抵抗となることが含まれる。液体の第2流体の通過許容性と第2流体の気泡の通過阻害性とを両立しやすいとの理由により、スペーサー62がメッシュ構造を有していることが好ましい。
【0051】
第2流路61b内の大部分が気体の第2流体で満たされているとき、大量の第2流体が第2流路61b内に一時に流れ込むと、第2流体の沸騰気化が急激に発生する。このような急激な第2流体の沸騰気化は、振動及び騒音の原因となる。液体の第2流体の通過に対してスペーサー62が抵抗となることで、第2流路61b内への第2流体の流入が穏やかとなり、振動及び騒音の発生を抑制できる。
【0052】
スペーサー62が第2流体の気泡の通過を阻害することにより、気体の第2流体が第2流路61bに溜まり、気体の第2流体による熱交換の抑制がより確実に発揮される。この熱交換の抑制をより確実に発揮させるため、スペーサー62の空隙率は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。また、スペーサー62の空隙率は、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらに好ましい。本発明において、スペーサー62の空隙率は以下の手順により測定する。
(1)スペーサー62を構成する材料の親密度をアルキメデス法により求める。
(2)スペーサー62の外形寸法(厚み及び縦横の長さ)から計算したスペーサー62のみかけ体積と、スペーサー62の重量から嵩密度とを求める。
(3)空隙率=(1-嵩密度/真密度)×100%との関係式を用いて空隙率を算出する。
【0053】
スペーサー62は、中筒60の軸方向一端に設けられたスペーサー62が、中筒60及び内筒10の両方に固定され、中筒60の軸方向他端に設けられたスペーサー62が、内筒10に対して固定され且つ中筒60に対して可動可能に構成されていることが好ましい。なお、固定方法としては、特に限定されないが、溶接などを用いることができる。
【0054】
軸方向両端のスペーサー62が中筒60及び内筒10の両方にそれぞれ固定されていると、以下の事象が生じる虞がある。すなわち、第2流路61b内で第2流体の蒸気(気泡)が発生し、第2流路61bの第2流体と第1流路61aの第2流体との熱交換が抑制されているとき、内筒10と中筒60との間に温度差が生じる。このとき、第1流体の熱により内筒10が加熱される一方で、第1流路61aの第2流体により中筒60が冷却されるため、中筒60よりも内筒10が膨張する。軸方向両端のスペーサー62が中筒60及び内筒10の両方にそれぞれ固定されている場合、中筒60と内筒10との間の膨張差による応力により軸方向両端の固定箇所が破損して、中筒60と内筒10との位置関係にずれが生じて第2流路61bが失われてしまう。
上記のように、中筒60の軸方向一端に設けられたスペーサー62が中筒60及び内筒10の両方に固定される一方で、中筒60の軸方向他端に設けられたスペーサー62が内筒10に固定され且つ中筒60に可動可能(非固定)とすることにより、内筒10が膨張した際に、非固定の位置でスペーサー62上を中筒60がスライドする。そのため、中筒60と内筒10との間の膨張差による応力によりスペーサー62の固定箇所が破損して、中筒60と内筒10との位置関係にずれが生じて第2流路61bが失われてしまうことを回避できる。
【0055】
図8に示されるように、中筒60の軸方向両端部を、拡径された内筒10に接続する場合、中筒60は、第2流体が移動可能な貫通孔63を有する。
貫通孔63は、第2流体の流れ方向に関する第2流路61bの入側と出側との両方に設けられていてもよいが、入側と出側とのいずれか一方のみに設けられていてもよい。
貫通孔63は、中筒60の周方向に間隔をおいて複数設けられていることが好ましい。貫通孔63の数は、特に限定されない。また、貫通孔63の間の間隔は同一でも異なっていてもよい。
【0056】
また、中筒60の軸方向両端部を、拡径された内筒10に接続する場合、中筒60の軸方向一端部が、拡径された内筒10に固定され、中筒60の軸方向他端部が、拡径された内筒10に対して可動可能に設けられていることが好ましい。
上記のような構成とすることにより、内筒10が膨張した際に、非固定の位置で内筒10上を中筒60がスライドする。そのため、中筒60と内筒10との間の膨張差による応力により内筒10が変形し、中筒60と内筒10との位置関係にずれが生じて第2流路61bが失われてしまうことを回避できる。
【0057】
上記のような構造を有する熱交換器300は、熱交換器100と同様に、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。中筒60は、熱回収部材30を内筒10に配置した後、内筒10上にスペーサー62を介して配置するか、又は軸方向両端部が拡径された内筒10上に直接配置すればよい。
【0058】
なお、本発明の実施形態3に係る熱交換器300の特徴(中筒60)の構成は、本発明の実施形態2に係る熱交換器200にも適用することができることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0059】
10 内筒
20 外筒
21 供給管
22 排出管
23 絞り部
24 壁部
30 熱回収部材
40 連続した凹凸構造
50 緩衝部材
60 中筒
61a 第1流路
61b 第2流路
62 スペーサー
63 貫通孔
70 コーン
100、200、300 熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8