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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ポリマーの連続製造用集成装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20221104BHJP
   B01J 19/22 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C08F2/01
B01J19/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019506487
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 FI2017050565
(87)【国際公開番号】W WO2018029398
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】20165607
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504186286
【氏名又は名称】ケミラ ユルキネン オサケイティエ
【氏名又は名称原語表記】KEMIRA OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】グルト、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ネイラー、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】タフ、デイブ
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-156102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00~ 2/60
B01J10/00~12/02
14/00~19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
(i)前記トラフ領域が0.5~1.2の範囲の幅対高さの比を有すること、
(ii)前記トラフ領域が凹状基底部分を有し、トラフ領域の高さに対する凹状基底部分の高さの比が0.25~0.6の範囲内であること、
(iii)前記トラフ領域が凹状基底部分と直線状主要部分とを有し、直線状主要部分の高さに対する凹状基底部分の高さの比が0.33~1.23の範囲内であること、
(iv)前記支持構造体が第1のプーリと第2のプーリとの間に配置された複数の支持ロールステーションを含み、該支持ロールステーションが互いに支持距離を置いて配置されていること、
任意に、各支持ロールステーションが、次々と配置された複数の個々の支持ロールを含むこと、
さらに任意に、引続く支持ロールの少なくとも2つが同一であること、
(v)前記トラフ領域の少なくとも一部に、
-第1のエッジ領域と第2のエッジ領域とに接続して配置されたカバー、及び
-カバーしたトラフ領域に窒素雰囲気を付与するための手段
が設けられていること、
(vi)前記集成装置が、少なくとも1種のモノマー及び/又はモノマー混合物を可撓性エンドレスベルトのトラフ領域に前記第1のプーリの近傍において供給するための手段を含むこと、
(vii)前記集成装置が、前記重合反応器の後に配置された収集手段であって、第2のプーリの近傍のエンドレスベルトから、形成されたポリマーを受け取るための収集手段を含むこと、
(viii)前記可撓性エンドレスベルトが、前記長手の第1の方向に、2~22m/hの範 の速度で進むように配置されていること、
(ix)前記第1のプーリ及び/又は前記第2のプーリの位置が、前記第1の方向に調整可能であるように構成されていること、
(x)前記第1及び/又は前記第2のエッジ領域の幅が、平坦な状態の前記ベルトの全幅の50%未満であること
(xi)前記トラフ高さ及びトラフ幅が前記長手の第1の方向に沿って徐々に変化し、それによって最大トラフ高さ及び最小トラフ幅が第1のプーリと第2のプーリとの間に存在すること、
(xii)前記集成装置が、反応混合物を冷却及び/又は加熱するためにトラフ領域の周りに配置した冷却及び/又は加熱手段と、任意で、反応混合物の表面温度を検出するために配置した1つ又は複数の温度センサとを含むこと、
(xiii)前記集成装置が、前記エンドレスベルトをその場で加硫するための加硫ステーションを備えること、又は
(xiv)前記(i)から(xiii)までの組み合わせの何れか1つ、を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の集成装置。
【請求項3】
(i)前記トラフ領域が0.6~1.1の範囲の幅対高さの比を有すること、
(ii)前記トラフ領域が凹状基底部分を有し、トラフ領域の高さに対する凹状基底部分の 高さの比が0.3~0.55の範囲内であること、
(iii)前記トラフ領域が凹状基底部分と直線状主要部分とを有し、直線状主要部分の高 さに対する凹状基底部分の高さの比が0.43~1.23の範囲内であること、
(viii)前記可撓性エンドレスベルトが、前記長手の第1の方向に、4~18m/hの範 囲の速度で進むように配置されていること、
(x)前記第1及び/又は前記第2のエッジ領域の幅が、平坦な状態の前記ベルトの全幅 の40%未満であり、かつ、第1のエッジ領域及び第2のエッジ領域が同じ幅を有するこ と、
を特徴とする請求項2に記載の集成装置。
【請求項4】
(i)前記トラフ領域が0.65~1の範囲の幅対高さの比を有すること、
(ii)前記トラフ領域が凹状基底部分を有し、トラフ領域の高さに対する凹状基底部分の 高さの比が0.33~0.5の範囲内であること、
(iii)前記トラフ領域が凹状基底部分と直線状主要部分とを有し、直線状主要部分の高 さに対する凹状基底部分の高さの比が0.48~1.0の範囲内であること、
(viii)前記可撓性エンドレスベルトが、前記長手の第1の方向に5~15m/hの範囲 の速度で進むように配置されていること、
を特徴とする請求項3に記載の集成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の独立請求項の前文に記載したポリマーの連続製造用集成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アクリル系ポリマーは、連続重合プロセスを使用することによって製造されている。このプロセスでは、移動コンベヤベルトが重合反応器の一部を形成している。移動コンベヤベルト上に溶液形態の出発モノマー(複数を含む)がコンベヤ、すなわち反応器の第1の端で連続的に供給され、コンベヤベルト上で重合プロセスが進行する。その間に、重合塊がコンベヤ、すなわち反応器の第2の端に向かって移動して行く。コンベヤの第2の端では、生成するゲル形態のポリマーがコンベヤベルトから取り出される。
【0003】
移動コンベヤベルトは、重合反応器として機能するものであるが、通常、支持構造体を備えていて、この支持構造体により、可撓性コンベヤベルトのエッジ(縁)領域(edge sections)がコンベヤの第1の端と第2の端との間で上方に持ち上げられるようになっている。したがって、重合反応が進行している間、コンベヤベルトはコンベヤの端と端との間ではトラフ(溝又は細長い箱若しくは舟形の槽:trough)の形態をなしている。このコンベヤベルトのトラフ形態により、モノマー及び不完全重合材料塊がベルト上に保持される。
【0004】
この重合プロセスの重合条件及び製造速度を改善することが常に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、従来技術に存在する欠点を最小限にするか、又はさらには解消することである。
【0006】
本発明の他の目的は、集成装置に必要となるスペースを最小にしつつ、重合容量を増加し、かつ、滞留時間を高めることができる集成装置である。
【0007】
本発明の更なる目的は、メンテナンスが容易かつ簡単な集成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
とりわけ上記に掲げた各目的を達成するために、本発明は、添付の独立請求項の特徴部分に提示した内容を特徴とする。
【0009】
本発明の幾つかの好ましい実施形態を従属請求項に記載する。
【0010】
本書で言及する実施形態は、適用可能な場合、たとえ必ずしも別途言及しなくても、本発明の全ての態様に関する。
【0011】
ポリマーを連続製造するための本発明に係る典型的な集成装置は、重合反応器を含むものであって、該重合反応器が、
-長手の第1の方向を規定する、互いの距離を置いて配置された第1のプーリと第2のプーリと、
-第1のエッジ領域(edge section)と第2のエッジ領域とを有し、第1のプーリと第2のプーリの上を平らなベルトとして走行するように配置された可撓性エンドレスベルトと、
-第1のプーリと第2のプーリとの間で該可撓性エンドレスベルトを支持するように配置され、該可撓性エンドレスベルトの第1のエッジ領域と第2のエッジ領域を前記長手の第1の方向から離すように逸脱させることによって該可撓性エンドレスベルトがトラフ領域(trough section)を形成するように配置された支持構造体と
を含み、
該トラフ領域が、前記長手の第1の方向に対して平行なトラフ長さと、該トラフ長さに対して垂直で、かつ、相互に垂直なトラフ高さとトラフ幅とを有し、かつ、第1のプーリと第2のプーリとの間の距離の少なくとも5%について、1.2未満(<)の、幅対高さの比を有することを特徴とする集成装置である。
【0012】
驚くべきことに、トラフ領域の幅対高さの比が1.2未満(<)であるときには、生産能力を著しく損なうことなく、重合プロセスの滞留時間を増加させることができることが見出された。あるいは、そうではなく、滞留時間を変化させないでおくと、はるかに大量のポリマーを製造することが可能になる。さらに、製造ポリマーの量が同じ場合には、重合プロセス中に周囲雰囲気と接触するポリマーの表面積が減少する。理論に束縛されることは望まないが、この場合には、滞留時間を増加させた場合と同様、製造するポリマーの性質に好ましい影響を及ぼすものと推測される。例えば、製造するポリマーには不溶性材料が低含有量で含まれていることが観察されており、このことは、そのポリマーを例えば汚泥処理及び/又は廃水処理に使用する場合に有益なことである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】可撓性エンドレスベルトの長手方向軸に沿った、前記長手の第1の方向に沿った本発明の実施形態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る集成装置を上から見た図である。
図3】本発明の一実施形態に係る集成装置を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の集成装置は、第1の端と第2の端とを有する細長い重合反応器を備えている。重合反応器は可撓性エンドレスコンベヤベルトを含み、このベルトは、少なくとも、重合反応器の第1の端に配置された第1のプーリと重合反応器の第2の端に配置された第2のプーリとの上を走行するように配置されている。各プーリは回転中心軸線を持ち、その軸線を中心に回転するようになっている。各プーリの回転軸線は水平で、互いに平行で、かつ、ベルトの幅とも平行である。
【0015】
第1のプーリと第2のプーリとは互いに距離を置いて配置されている。この距離が、また、該長手の第1の方向を規定している。また、第1のプーリと第2のプーリとの間の距離も重合反応に利用可能な重合反応器の長さを規定する。第1のプーリと第2のプーリとの間の距離は、10~50m、好ましくは20~40mとすることができる。例えば適切なモータ手段を用いて、少なくとも1つのプーリを駆動するか、又は両方又は全部のプーリを駆動することができる。少なくとも1つのプーリの位置、又は第1のプーリ及び第2のプーリの位置は、第1の方向に調整可能に構成することができる。これは、重合反応器の長さを、必要に応じて調整することができることを意味する。各プーリの回転軸線は、概して、長手の第1の方向に対して垂直である。
【0016】
可撓性エンドレスベルトは、第1及び第2の大きい表面を有し、平ら(フラット)な水平ベルトとして少なくとも第1のプーリ及び第2のプーリの上を移動する。それによって、該ベルトが各プーリの周りを回転するとき、該ベルトの第1の大きい表面が各プーリの表面と実質的に接触する。平らなエンドレスベルトを第1のプーリ及び第2のプーリの上に配置するとき、当該エンドレスベルトは仮想第1平面を規定するとみなすことができる。重合に供するモノマー(一種若しくは複数種)は、ベルトの第2の大きい表面上に重合反応器の第1の端で導入する。反応混合物は、反応器の第1の端から反応器の第2の端に向かって移動しながら、ベルトの第2の表面と直接接触する。可撓性エンドレスベルトは、必要とされる引張強度、可撓性、疲労強度、良好な変形性、及び使用する重合用成分に対する化学的耐性を有する任意の適切な材料から製造することができる。エンドレスベルトは、単一材料から製造することもでき、又は多層状材料であってもよい。適切な材料としては、例えば天然又は合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル又はポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィン、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。ベルトは、また、天然又は合成の織物繊維、ガラス繊維又は金属繊維などの強化繊維材料を含むことができる。この強化繊維材料の繊維配向としては、長手の第1の方向に対して平行又は垂直であってもよい。
【0017】
可撓性エンドレスベルトは、第1のエッジ(縁)と第2のエッジとを有し、各エッジは長手の第1の方向と平行である。ベルトの第1のエッジからベルトの第2のエッジまでのベルト幅(平坦なベルトとして測定)は、0.9~4.5m、好ましくは1.8~3.7mとすることができる。
【0018】
可撓性エンドレスベルトは、また、第1のエッジ領域と第2のエッジ領域とを有する。ここで、エッジ領域とは、ベルトの第1のエッジ及び/又は第2のエッジからベルトの長手方向中心線に向かって延在する領域として理解される。エッジ領域の幅は、平坦な状態のベルトの全幅の50%未満、好ましくは40%未満である。第1のエッジ領域と第2のエッジ領域とは同じ幅であることが好ましい。ベルトの各エッジ領域は、水平方向の仮想第1平面を外れて、すなわち上方に向けて、少なくとも部分的に支持されてトラフ領域を形成する。このトラフ領域については詳細に後述する。
【0019】
本集成装置は、さらに支持構造体を備える。この支持構造体は、可撓性エンドレスベルトが重合反応器の第1の端から重合反応器の第2の端に向かって移動するとき、第1のプーリと第2のプーリとの間で可撓性エンドレスベルトを支持するように配置される。支持構造体は、可撓性エンドレスベルトの第1の大きい表面と接触しており、ベルトの第1のエッジ領域と第2のエッジ領域とを、長手の第1の方向及びベルトの平坦状態によって規定される水平方向の仮想第1平面から逸脱させる。言い換えれば、支持構造体は各エッジ領域を上方に向けるか又は上方に向けて支持し、こうして可撓性ベルトがトラフ様の形状に変形する。
【0020】
したがって、その支持構造体は、可撓性ベルトがトラフ領域を形成するように配置される。トラフ領域はU字型又はV字型であることができる。トラフ領域は、長手の第1の方向と平行なトラフ長さと、トラフ長さに垂直で、かつ、互いに垂直なトラフ高さとトラフ幅とを有する。トラフ長さは、第1のプーリと第2のプーリとの間の距離よりも短い。トラフ高さ及びトラフ幅は長手の第1の方向に沿って徐々に変化し、最大トラフ高及び最小トラフ幅は重合反応器の第1の端と第2の端との間に存在する。トラフ高さは、重合反応器の第1の端(平らなベルトが第1のプーリ上を移動する)から最大トラフ高さまで増加する。それから、トラフ高さは、重合反応器の第2の端(平らなベルトが第2のプーリ上を移動する)に向かって減少する。同様に、トラフ幅は、可撓性ベルトが平坦な形状からトラフ様形状に移行して平坦な形状に戻る間に最小幅まで減少する。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、トラフ領域は、0.5~1.2、好ましくは0.6~1.1、より好ましくは0.65~1の範囲の幅対高さの比を有する。トラフ領域の幅は、水平面から逸脱するベルトの第1のエッジ領域と第2のエッジ領域との間の距離が一定であるトラフ領域の上部で測定される。V字形トラフの場合、トラフ幅はベルトのエッジ領域相互間の距離である。トラフ高さとしては、ベルトの各エッジの高さレベルから、ベルトがエッジの高さレベルから最も離れる位置までを測定する。幅対高さの比が小さいと、深いトラフがもたらされ、これにより、重合中、重合材料を含む反応混合物の表面積が最小化されることになる。
【0022】
さらに、幅対高さの比が小さいと、反応器の全容量を少なくとも従来と同じレベルに保ちつつ、重合反応器中の反応混合物の滞留時間を長くすることが可能となる。重合反応の滞留時間を長くすると、得られるポリマーの溶解性が向上し、すなわち最終水溶性ポリマーへの不溶解性が低下し、加えて、最終ポリマーの粘度が向上することが観察されている。可撓性エンドレスベルトは、2~22m/h、好ましくは4~18m/h、より好ましくは5~15m/hの範囲の速度で長手の第1の方向に前進するように構成することができる。
【0023】
トラフ領域の幅対高さの比は、第1のプーリと第2のプーリとの間の距離の少なくとも10%、好ましくは15%、より好ましくは20%について、1.2未満(<)とすることが好ましい。
【0024】
支持構造体は、トラフ領域を支持するために、水平面から逸脱し、かつ、上方に向かって延在する部品又は部材を含む。一般に、支持構造体はU字形又はV字形、好ましくはU字形を有することができ、支持された可撓性ベルトは、支持構造体の形状に適合する形状のトラフ領域を形成する。一実施形態によれば、トラフ領域は凹状基底部分を有し、トラフ領域の高さに対する凹状基底部分の高さの比は、0.25~0.6、好ましくは0.3~0.55、より好ましくは0.33~0.5の範囲にある。これは、支持構造体が対応するU字形を有することを意味する。凹状基底部分の高さとは、第1のエッジ領域と第2のエッジ領域との間の距離(間隔)が減少し始める高さレベルから凹状基底部分の最も遠い点までを測定したものである。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、トラフ領域は凹状基底部分と直線状主要部分(straight main part)とを有し、直線状主要部分の高さに対する凹状基底部分の高さの比は、0.33~1.23、好ましくは0.43~1.23、より好ましくは0.48~1.0である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、支持構造体は、第1のプーリと第2のプーリとの間に配置された複数の支持ロールステーションを含み、支持ロールステーションは互いに支持距離を置いて配置されている。支持ロールステーションと支持ロールステーションとの間では、可撓性ベルトは本質的に支持されていない。2つの引続く支持ロールステーション間の支持距離は、300~700mm、好ましくは350~550mmの範囲内であることができる。支持ロールステーションと支持ロールステーションとの間の支持距離は、重合材料を含む反応混合物を充填したときでも可撓性ベルトがトラフ形態にしっかりと支持され、かつ、支持ロールステーションと支持ロールステーションとの間でベルトが垂れることを防止するように、慎重に選択される。一実施形態によれば、2つの引続く支持ロールステーション間の支持距離は、支持構造体全体を通じて一定である。あるいは別法として、引続く支持ロールステーション相互間の支持距離は、重合反応器の各端の近傍、例えば第1の端の近傍及びモノマー(1つ若しくは複数種)がトラフ領域に供給される場所の近傍では、より短くすることもできる。
【0027】
一実施形態によれば、各支持ロールステーションは、次々と配置された複数の個々の支持ロールを含む。各支持ロールは第1の端と第2の端とを有する円筒形であり、円筒形ロールの長手方向軸線は両端の間に延びている。支持ロールの半径は、50~200mm、好ましくは100~150mmの範囲内にあることができる。長手方向軸線に沿った支持ロールの長さは、100~600mm、好ましくは200~500mm、より好ましくは250~500mmの範囲内にあることができる。支持ロールステーションでは、各支持ロールが、所望の構成で、例えばU字形又はV字形の形態で、端と端が接するように(end-to-end manner)次々に配置されていて、各支持ロールが可撓性ベルトの第1の大きい表面を支持し、かつ、その大きい表面と接触するように配置されている。各支持ロールがその長手方向軸線を中心に回転するとき、支持ロールは重合反応器の第1の端から第2の端へベルトの移動を容易にする。
【0028】
支持ロールステーション内の各支持ロールは集成装置の各側面からアクセス可能に配置されており、そのことにより、支持ロールステーション内の個々のロールは可撓性ベルトを取り外すことなく、取り外し及び取り換えをすることができることから、メンテナンスが大幅に改善しプロセスの休止時間も大幅に削減される。本発明の好ましい一実施形態によれば、一つの支持ロールステーション内の引続く支持ロールの少なくとも2つは同一である。なお、引続く支持ロールステーション内の支持ロールが各々同一であることがさらにより好ましい。このことは、膨大な種類の多様なサイズのロールを保管しておく必要がないことを意味する。これにより、本集成装置のメンテナンスが技術的に簡単かつ安価なものとなる。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態によれば、トラフ領域の少なくとも一部に、第1のエッジ領域及び第2のエッジ領域に接続して配置するカバーと、カバーしたトラフ領域内に窒素雰囲気を付与する手段とが設けられる。当該カバーは、可撓性ベルトの各エッジ又は各エッジ領域に接続して配置することができる。このカバーは、例えば、案内部材を含むことができ、この案内部材はエッジ/エッジ領域に接触するように配置される。案内部材は溝、通路又はそれらと同様なものを備えることができ、その中にエッジ/エッジ領域を配置することができる。カバーは気密であることが好ましく、トラフ領域内の反応混合物を周囲雰囲気から分離し遮断する。案内部材には、カバーの下に漏れのない環境を実現するためのシール部材を具備することができる。次いで、カバーの下に、窒素に豊富な雰囲気が整えられ、反応混合物と酸素及び/又は空気中に存在する汚染物質との有害な相互作用が阻止される。このようにして、製造ポリマーの品質が保証される。
【0030】
本集成装置は、また、トラフ領域内の反応混合物の表面温度を検出するために配置される1つ又は複数の温度センサを含むことができる。正確かつリアルタイムでの温度モニタリングにより、反応混合物の温度が上昇し過ぎかどうかを早期に検出することが可能となる。その温度が上昇し過ぎると、重合反応が害され、製造するポリマー品質が低下する恐れがある。当該センサは、適切なプロセス制御装置と接触してもよいものである。
【0031】
本集成装置は、溶液形態の少なくとも1つのモノマー及び/又はモノマー混合物を可撓性エンドレスベルトのトラフ領域に重合反応器の第1の端又は第1の端の近傍で供給するための手段を備えることが好ましい。当該供給手段は、モノマー溶液(複数を含む)及び開始剤(複数を含む)の供給及び計量システムを具備することができる。モノマー溶液(複数を含む)は、加工助剤、連鎖移動剤及び安定剤などの任意の添加剤を含むものであってもよい。本集成装置は、また、モノマー溶液をトラフ領域に供給する前にモノマー溶液から酸素を除去するための手段を備えることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、本集成装置は、エンドレスベルトをその場で(in situ)加硫するための加硫ステーションを備えることができる。
【0033】
本集成装置は、また、任意で、照射手段を具備することができる。この照射手段は、重合反応器の第1の端から重合反応器の第2の端への移動中に、重合反応を開始させるため、UV照射などの照射を反応混合物へ向けるように配置される。
【0034】
さらに、本集成装置は、モノマー溶液(複数を含む)をトラフ領域に供給する前に、そのモノマー溶液用に第1の冷却手段及び/又は第1の加熱手段を備えることができる。このようにして、そのモノマー溶液(複数を含む)はすでに重合反応の開始時に最適温度を有しており、重合反応の進行が改善される。本集成装置は、また、重合反応器の第1の端から重合反応器の第2の端への移動中に反応混合物を冷却及び/又は加熱するために、トラフ領域の周りに配置する第2の冷却及び/又は第2の加熱手段を備えることができる。加熱及び/又は冷却手段は、適切なプロセス制御装置に接続してもよく、任意で、温度センサ(複数を含む)から得られる信号に基づいて制御することができる。
【0035】
本集成装置は、重合反応器の後に配置される収集手段であって、第2のプーリ、すなわち重合反応器の第2の端の近くで、エンドレス可撓性ベルトから形成したポリマーを受け取るための収集手段をさらに備えることができる。形成するポリマーは通常ゲルの形態であり、半固体の粘稠性のものである。このポリマーを収集し、場合により、切断、細断及び/又は摩砕により機械粉砕する。
【0036】
本集成装置は乾燥手段も備えることができる。乾燥手段は粉砕したポリマー生成物を乾燥させるように配置する。乾燥手段としては、ベルト乾燥機、赤外線(IR)乾燥機又は回転式チューブ乾燥機などの任意の適切な乾燥手段がある。さらに、集成装置は、粉砕し乾燥したポリマー粉末を分級するためのふるい分け手段をも具備することができる。
【0037】
反応混合物中のモノマーの少なくとも1つはアクリレートであることが好ましい。本発明に係る集成装置は、フリーラジカル重合によって、アクリルアミド、例えばカチオン性アクリルアミド、アニオン性アクリルアミド、又は非イオン性アクリルアミドの乾式コポリマーを製造するのに特に適している。
【実施例
【0038】
本発明について、いくつかの実施形態を以下の非限定的な実施例で説明する。
【0039】
図1には、長手の第1の方向に沿って見た、可撓性エンドレスベルトの長手方向軸線に沿った本発明の実施形態が概略的に示されている。可撓性エンドレスベルト1が支持構造体2によって支持されている。この支持構造体は支持ロールステーションである。支持ロールステーションは、エンドレスベルト1の第1の大きな表面1’を支持するように配置された複数の支持ロール3、3’を具備しており、その結果、エンドレスベルトにトラフ(溝状、又は細長い箱若しくは舟形の槽状の:trough)領域が形成される。支持ロール3、3’は、U字形に次々に配置され、支持ロールの表面はベルト1の第1の大きな表面1’と接触している。支持ロールステーション内の支持ロール3の大部分は互いに同一であり、これにより、別の予備部品の必要数を削減することができる。
【0040】
図1には、また、凹状(concave)基底部分の高さC、反応混合物の充填高さF、トラフ領域の全高さH、及びトラフの幅Wを示す。
【0041】
ベルト1の第1のエッジ(縁)領域及び第2のエッジ領域に接続してカバー4が配置されている。カバー4とエッジ領域に接してガイド部材5(複数)が配置されている。カバー4の下に漏れのない環境を整えるために、ガイド部材5はシール部材6を具備している。
【0042】
図2に、本発明の一実施形態に係る集成装置を上から見た図を示す。集成装置10は可撓性エンドレスベルト1の形態をなす重合反応器を具備しており、この可撓性エンドレスベルトは第1のプーリと第2のプーリ11’の上を平らなベルトとして移動するように配置されている。
【0043】
ポリマー反応器は、第1のプーリと第2のプーリとの間で可撓性エンドレスベルト1を支持するように配置された支持構造体を備える。支持構造体は複数の支持ロールステーション12、12’を含み、これら支持ロールステーションによって、可撓性エンドレスベルト1の第1及び第2のエッジ領域が水平面から外れて上方に逸脱され、これによって可撓性エンドレスベルト1にトラフ領域が形成される。このようにして幅対高さの比が1.2未満(<)のトラフ領域が形成される。支持ロールステーション12、12’は互いに適当な支持間隔を置いて配置されている。
【0044】
図3に、本発明の一実施形態に係る集成装置を側面から見た図を示す。集成装置10は、第1のプーリ11及び第2のプーリ11’の上を移動するように配置されている可撓性エンドレスベルト形態の重合反応器を含む。第1のプーリ11と第2のプーリ11’とは相互にある距離(間隔)を置いて配置されており、この距離が長手の第1の方向とベルト1の走行方向とを規定する。
【0045】
溶液形態のモノマーが、エンドレスベルトの第1の端、すなわち重合反応器の第1の端でエンドレスベルト1に供給される。モノマーの供給位置は図3に矢印Aで示されている。エンドレスベルト1上のモノマーは、反応混合物を形成し、ベルト1と共に重合反応器の第2の端、すなわち第2のプーリ11’に向かって移動する。この間に、重合反応が進行する。エンドレスベルトは、支持ロールステーション12、12’で支持されてトラフ領域を形成する。
【0046】
第2のプーリ11’が位置する重合反応器の第2の端では、半固体ポリマーゲル形態の重合反応混合物が、エンドレスベルトから、重合反応器の後ろに配置されている収集手段13に移送される。
【0047】
集成装置10は、さらに、エンドレスベルト1をその場で加硫するための加硫ステーション31を含む。
【0048】
本発明について、現時点で最も実用的で好適な実施形態であると思われるものについて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではないと解釈すべきであり、また、本発明は、添付した特許請求の範囲に記載した範囲内で各種の変形例及び均等な技術解決手段を包含することを意図している。
図1
図2
図3