(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】免疫シナプスの変異体ライブラリーおよびその合成
(51)【国際特許分類】
C40B 50/06 20060101AFI20221104BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20221104BHJP
C40B 30/06 20060101ALI20221104BHJP
C40B 30/00 20060101ALI20221104BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C40B50/06 ZNA
C40B40/08
C40B30/06
C40B30/00
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2019532096
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066847
(87)【国際公開番号】W WO2018112426
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-14
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516040017
【氏名又は名称】ツイスト バイオサイエンス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】コックス,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,スーユアン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-540838(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C40B 10/00 - 99/00
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸ライブラリーを合成する方法であって、前記方法は、
a.TCR遺伝子または遺伝子断片の少なくとも3000の変異体配列をコードするあらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセットを提供する工程であって、変異体配列がそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む、工程と、
b.あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセットを合成する工程と、
c.ポリヌクレオチド配列の第1のセットによってコードされたタンパク質について結合活性をスクリーニングする工程と、
d.TCR遺伝子または遺伝子断片の少なくとも1つの変異体配列をコードするあらかじめ選択された、
工程a~c.によってスクリーニングして得られたポリヌクレオチド配列の第2のセットを提供する工程であって、変異体配列がそれぞれ、定常ドメインをコードする領域においてTCR遺伝子または遺伝子断片中のアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む、工程と、
e.あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第2のセットを合成する工程と、
f.ポリヌクレオチド配列の第2のセットによってコードされたタンパク質について第2の活性をスクリーニングする工程であって、第2の活性は癌細胞の死滅、タンパク質の発現、またはタンパク質の安定性である、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセット中の少なくとも1つの変異は、TCR遺伝子または遺伝子断片の可変ドメインコード領域にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
可変ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの可変ドメインである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセット中の少なくとも1つの変異は、TCR遺伝子または遺伝子断片の定常ドメインコード領域にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
定常ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの定常ドメインである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗原は癌抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
癌抗原は、MAGE A3、MAGE A12、MAGE A2、MAGE A6、NY-ESO-1、またはCEAである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセット中の変異体配列はそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで最大100の変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセット中の変異体配列はそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで最大30の変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第2のセット中の変異体配列はそれぞれ、定常領域をコードする領域におけるTCR遺伝子または遺伝子断片中のアミノ酸残基のためのあらかじめ定められたコドンで最大100の変異を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年12月16日に出願された米国仮特許出願第62/435,650号の利益を主張するものであり、これは全体として引用によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
合成生物学の基礎は設計、構築、および試験のプロセス--これらの特定用途向けの経路と生命体の迅速かつ手軽な生成と最適化のためにDNAを入手しやすいことを要求する反復するプロセスである。設計段階では、DNAを構成するA、C、T、およびGのヌクレオチドは、各々の配列変異体が試験される特定の仮説を表す、所望の座あるいは経路を含む様々な遺伝子配列へ組み立てられる。こうした変異体遺伝子配列は、進化生物学から始まり、遺伝子、ゲノム、トランスクリプトーム、およびプロテオームを構築する配列の全体性に関係する概念である、配列空間の部分集合を表す。
【0003】
多くの様々な変異体は典型的には、配列空間の適切なサンプリングを可能にし、かつ最適化された設計の可能性を最大化するために、それぞれの設計-構築-試験のサイクルを対象としている。概念上は直接的であるが、従来の合成方法の速度、スループット、および品質に関するプロセスの障害は、このサイクルが進行するペースを低下させ、開発時間を引き延ばす。非常に正確なDNAのコストが高いことと、現在の合成技術のスループットが限定されていることが原因で、配列空間を十分に探索することができないことは、律速段階に留まっている。
【0004】
構築相から始まって、2つのプロセス:核酸合成と遺伝子合成が注目に値する。歴史上、様々な遺伝子変異体の合成は分子クローニングを通じて遂行された。頑丈であるが、この手法はスケーラブルではない。初期の化学的な遺伝子合成の試みは、重複する配列相同性を有する多くの核酸を生成することに重点を置いていた。これらをプールし、複数回のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にさらして、重複する核酸を完全長の二重鎖遺伝子に連結できるようにした。時間がかかる上に多くの人手を要する構造、大量のホスホラミダイトを必要とすること、高価な原料、および下流工程に必要とされるよりも著しく少ない最終生成物のナノモル量の生成を含む、多くの因子がこの方法の妨げとなっており、1つの遺伝子の合成をセットアップするために多くの別々の核酸は1つの96ウェルプレートを必要とした。
【0005】
マイクロアレイ上での核酸の合成は、遺伝子合成のスループットを著しく増大させた。多くの核酸をマイクロアレイ表面上で合成し、その後、切断して、まとめてプールすることができる。特定遺伝子に運命づけられたそれぞれの核酸は、ポリヌクレオチドのその特定の亜集団を取り除いて(depooled)、所望の遺伝子へ組み立てることを可能にした独自のバーコード配列を含んでいる。プロセスのこの段階では、各サブプールを96ウェルプレート中の1つのウェルへ移し、スループットを96の遺伝子に増加させる。これは、古典的方法よりもスループットが2桁高いが、コスト効率に欠け、かつ、所用時間がかかることから、一度に数千もの配列を要求する設計、構築、試験サイクルを適切に支援するものではない。したがって、変異体配列ライブラリーのより効率的な生成に対するニーズがある。
【0006】
免疫系は、有害な細胞を探して破壊する能力を有する。T細胞はそのようなプロセスにおいて重要な役割を果たす。癌細胞に対する監視の文脈において、内因性T細胞レパートリーから誘発されたT細胞免疫応答は、そのような癌細胞の除去には不十分なことがある。免疫シナプスは、T細胞タンパク質、抗原提示タンパク質、および抗原のレパートリーを含む。この免疫系の遺伝子組換えされた構成要素は、T細胞媒介性の免疫応答を増強するための手段を提供する。しかしながら、腫瘍微小環境における免疫抑制因子とともに細胞固有の因子も、そのような遺伝子組換えされたT細胞の機能を制限することがある。したがって、癌に対する改善された組成物と方法、および、T細胞媒介性のシグナル伝達を利用する抗ウイルス治療に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、核酸ライブラリーは少なくとも3000の変異体核酸を含み、変異体核酸はそれぞれ、T細胞受容体(TCR)タンパク質の変異体遺伝子または遺伝子断片をコードし、および、変異のために選択された領域は最大で1000の塩基の長さに及ぶ。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体遺伝子または遺伝子断片は可変ドメインである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、可変ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの可変ドメインである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、可変ドメインは癌抗原に特異的である。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、癌抗原は、MAGE A3、MAGE A12、MAGE A2、MAGE A6、NY-ESO-1、またはCEAである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体遺伝子または遺伝子断片は定常ドメインである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体遺伝子または遺伝子断片は、特異性、アビディティー、親和性、安定性、あるいは発現を増大させたTCRタンパク質の生成を可能にする。
【0008】
ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、ポリヌクレオチドライブラリーは少なくとも3000の変異体核酸を含み、ポリヌクレオチドはそれぞれ、少なくとも15の塩基の長さであり、ポリヌクレオチドはそれぞれ、T細胞受容体(TCR)タンパク質またはその断片の可変ドメイン内の変異体をコードし、可変ドメインは最大で1000の塩基を含み、および、変異体核酸はそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、可変ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの可変ドメインである。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、抗原は癌抗原である。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、癌抗原は、MAGE A3、MAGE A12、MAGE A2、MAGE A6、NY-ESO-1、またはCEAである。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体核酸はそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで複数の変異を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンにおける複数の変異は、最大で100の残基を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンにおける複数の変異は、最大で30の残基を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンにおける複数の変異は、最大で5の残基を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体遺伝子は、特異性、アビディティー、親和性、安定性、あるいは発現を増大させたTCRタンパク質の生成を可能にする。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体核酸はそれぞれ、T細胞受容体(TCR)タンパク質またはその断片の定常領域内のアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む。
【0009】
ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、ポリヌクレオチドライブラリーは少なくとも3000の変異体ポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドはそれぞれ、少なくとも15の塩基の長さであり、ポリヌクレオチドはそれぞれ、T細胞受容体(TCR)タンパク質またはその断片の定常ドメイン内の変異体をコードし、定常ドメインは最大で1000の塩基を含み、および、変異体は、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、定常ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの定常ドメインである。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、抗原は癌抗原である。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、癌抗原は、MAGE A3、MAGE A12、MAGE A2、MAGE A6、NY-ESO-1、またはCEAである。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、ポリヌクレオチドはそれぞれ、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで複数の変異を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンにおける複数の変異は、最大で100の残基を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンにおける複数の変異は、最大で30の残基を含む。さらに、ポリヌクレオチドライブラリーが本明細書で提供され、ここで、アミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンにおける複数の変異は、最大で5の残基を含む。
【0010】
核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、核酸ライブラリーは少なくとも10000の変異体核酸を含み、変異体核酸はそれぞれ、約500~約1000の塩基の長さであり、変異体核酸はそれぞれ、T細胞受容体タンパク質またはその断片のためのエクソン配列をコードする参照配列の変異体をコードし、および、参照配列は癌を抱える被験体からのものである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、ライブラリーは少なくとも約1000000の変異体核酸を含み、変異体核酸はそれぞれ、約500~約1000の塩基の長さであり、変異体核酸はそれぞれ、T細胞受容体タンパク質またはその断片のためのエクソン配列をコードする参照配列の変異体をコードし、T細胞受容体タンパク質またはその断片の参照配列は、被験体中で一般的な核酸配列と、複数の被験体のT細胞受容体遺伝子配列との比較に基づいて選択され、および、被験体の少なくとも一部は癌と診断される。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、癌は固形癌あるいは造血器がんである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、ライブラリーは約10000000の変異体核酸を含む。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体核酸はそれぞれ、約600~約900の塩基の長さである。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体核酸はそれぞれベクター配列中にある。さらに、核酸ライブラリーが本明細書で提供され、ここで、ベクター配列はウイルスベクター配列である。
【0011】
本明細書に記載された核酸ライブラリーによってコードされたタンパク質を含むタンパク質ライブラリーが本明細書で提供される。本明細書に記載された核酸ライブラリーを含む細胞ライブラリーが本明細書で提供される。
【0012】
核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、該方法は、(a)TCR遺伝子または遺伝子断片の少なくとも3000の変異体配列をコードするあらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセットを提供する工程であって、変異体配列がそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む、工程と、(b)あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第1のセットを合成する工程と、および、(c)ポリヌクレオチド配列の第1のセットによってコードされたタンパク質について結合活性をスクリーニングする工程、を含む。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、少なくとも1つの変異は、TCR遺伝子または遺伝子断片の可変ドメインコード領域にある。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、可変ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの可変ドメインである。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、少なくとも1つの変異は、TCR遺伝子または遺伝子断片の定常ドメインコード領域にある。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、定常ドメインは、TCRα、TCRβ、TCRγ、あるいはTCRδの定常ドメインである。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、抗原は癌抗原である。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、癌抗原は、MAGE A3、MAGE A12、MAGE A2、MAGE A6、NY-ESO-1、またはCEAである。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、変異体配列はそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで最大で100の変異を含む。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、変異体配列はそれぞれ、抗原接触界面においてアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで最大で30の変異を含む。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、(a)TCR遺伝子または遺伝子断片の少なくとも1つの変異体配列をコードするあらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第2のセットを提供する工程であって、変異体配列がそれぞれ、定常ドメインをコードする領域においてTCR遺伝子または遺伝子断片中のアミノ酸残基のためのあらかじめ選択されたコドンで少なくとも1つの変異を含む、工程と、(b)あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列の第2のセットを合成する工程と、および、(c)ポリヌクレオチド配列の第2のセットによってコードされたタンパク質について第2の活性をスクリーニングする工程、をさらに含む。さらに、核酸ライブラリーを合成する方法が本明細書で提供され、ここで、第2の活性は癌細胞の死滅、タンパク質の発現、またはタンパク質の安定性である。
【0013】
引用による組み込み
本明細書で言及される公開物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の公開物、特許あるいは特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示されるかのような同じ程度、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】A-Dは、PCR変異原性工程を組み込む変異体生体分子の合成のためのプロセスワークフローを描く。
【
図2】A-Dは、1つのあらかじめ決められたコドン部位の参照核酸配列とは異なる核酸配列を含む核酸の生成のプロセスワークフローを描く。
【
図3A】鋳型核酸からの核酸変異体の1セットの生成の代替的なワークフローを描いており、各変異体は1つのコドン位置で異なる核酸配列を含んでいる。各々の変異体核酸はその単一のコドン位置で異なるアミノ酸をコードし、異なるコドンはX、Y、およびZによって表わされる。
【
図3B】鋳型核酸からの核酸変異体の1セットの生成の代替的なワークフローを描いており、各変異体は1つのコドン位置で異なる核酸配列を含んでいる。各々の変異体核酸はその単一のコドン位置で異なるアミノ酸をコードし、異なるコドンはX、Y、およびZによって表わされる。
【
図3C】鋳型核酸からの核酸変異体の1セットの生成の代替的なワークフローを描いており、各変異体は1つのコドン位置で異なる核酸配列を含んでいる。各々の変異体核酸はその単一のコドン位置で異なるアミノ酸をコードし、異なるコドンはX、Y、およびZによって表わされる。
【
図3D】鋳型核酸からの核酸変異体の1セットの生成の代替的なワークフローを描いており、各変異体は1つのコドン位置で異なる核酸配列を含んでいる。各々の変異体核酸はその単一のコドン位置で異なるアミノ酸をコードし、異なるコドンはX、Y、およびZによって表わされる。
【
図3E】鋳型核酸からの核酸変異体の1セットの生成の代替的なワークフローを描いており、各変異体は1つのコドン位置で異なる核酸配列を含んでいる。各々の変異体核酸はその単一のコドン位置で異なるアミノ酸をコードし、異なるコドンはX、Y、およびZによって表わされる。
【
図3F】鋳型核酸からの核酸変異体の1セットの生成の代替的なワークフローを描いており、各変異体は1つのコドン位置で異なる核酸配列を含んでいる。各々の変異体核酸はその単一のコドン位置で異なるアミノ酸をコードし、異なるコドンはX、Y、およびZによって表わされる。
【
図4】A-Eは、多くのアミノ酸を有する参照アミノ酸配列(A)を描いており、各々の残基は1つの円によって示され、および変異体アミノ酸配列(B、C、D、およびE)は本明細書に記載される方法を用いて生成される。参照アミノ酸配列と変異体配列は、本明細書に記載されたプロセスによって生成された核酸とその変異体によってコードされる。
【
図5】A-Bは、参照アミノ酸配列(A、SEQ ID NO:24)と、変異体アミノ酸配列のライブラリー(B、出現する順でそれぞれSEQ ID NOS 25-31)を描いており、各々の変異体は(「X」によって示される)単一の残基変異体を含んでいる。参照アミノ酸配列と変異体配列は、本明細書に記載されたプロセスによって生成された核酸とその変異体によってコードされる。
【
図6】A-Bは、参照アミノ酸配列(A)と、変異体アミノ酸配列のライブラリー(B)を描いており、各々の変異体は単一位置の変異体の2つの部位を含んでいる。変異体はそれぞれ異なる模様のある円によって示される。参照アミノ酸配列と変異体配列は、本明細書に記載されたプロセスによって生成された核酸とその変異体によってコードされる。
【
図7】A-Bは、参照アミノ酸配列(A)と変異体アミノ酸配列のライブラリー(B)を描いており、各々の変異体は、一続きのアミノ酸を含んでおり(円のまわりのボックスによって示される)、一続きのアミノ酸はそれぞれ、参照アミノ酸配列とは配列が異なる(ヒスチジンをコードする)位置変異体の3つの部位を有する。参照アミノ酸配列と変異体配列は、本明細書に記載されたプロセスによって生成された核酸とその変異体によってコードされる。
【
図8】A-Bは、参照アミノ酸配列(A)と変異体アミノ酸配列のライブラリー(B)を描いており、各々の変異体は、2続きのアミノ酸配列を含んでおり(円のまわりのボックスによって示される)、2続きのアミノ酸配列はそれぞれ、参照アミノ酸配列とは配列が異なる(模様のある円によって例示される)単一位置の変異体の1つの部位を有する。参照アミノ酸配列と変異体配列は、本明細書に記載されたプロセスによって生成された核酸とその変異体によってコードされる。
【
図9】A-Bは、参照アミノ酸配列(A)とアミノ酸配列変異体のライブラリー(B)を描いており、各々の変異体は(模様のある円によって示される)一続きのアミノ酸を含んでおり、一続きのアミノ酸はそれぞれ、参照アミノ酸配列とは配列が異なる複数の位置変異体の1つの部位を有する。この図では、5つの位置が異なり、第1の位置は50/50 K/R比を有し、第2の位置は50/25/25のV/L/S比を有し、第3の位置は50/25/25のY/R/D比を有し、第4の位置はすべてのアミノ酸で等しい比を有し、第5の位置はG/Pで75/25の比を有する。参照アミノ酸配列と変異体配列は、本明細書に記載されたプロセスによって生成された核酸とその変異体によってコードされる。
【
図10A】T細胞受容体(TCR)(
図10A)と、標的のペプチド配列が適切な主要組織適合遺伝子複合体(細胞傷害性T細胞に対してMHC-1)によって提示される際に標的細胞上で抗原ペプチドと相互作用するT細胞に発現されたTCR(
図10B)との構造および機能を示す。TCRは2つの鎖:アルファ(α)とベータ(β)の鎖を有する。両方の鎖は定常領域(c)と可変領域(v)、ヒンジ領域(h)、膜貫通領域(tm)、および細胞質の尾部領域(ct)を有する。TCRはCD3複合体に関連付けられ、これは3つの膜貫通シグナル伝達分子(CD3ζζ、CD3δε、およびCD3γε)を含む。効率的なT細胞活性化はさらに、T細胞共受容体の同時の結合(細胞傷害性T細胞に対してCD8)を必要とする。「ss」とはジスルフィド架橋を指す。
【
図10B】T細胞受容体(TCR)(
図10A)と、標的のペプチド配列が適切な主要組織適合遺伝子複合体(細胞傷害性T細胞に対してMHC-1)によって提示される際に標的細胞上で抗原ペプチドと相互作用するT細胞に発現されたTCR(
図10B)との構造および機能を示す。TCRは2つの鎖:アルファ(α)とベータ(β)の鎖を有する。両方の鎖は定常領域(c)と可変領域(v)、ヒンジ領域(h)、膜貫通領域(tm)、および細胞質の尾部領域(ct)を有する。TCRはCD3複合体に関連付けられ、これは3つの膜貫通シグナル伝達分子(CD3ζζ、CD3δε、およびCD3γε)を含む。効率的なT細胞活性化はさらに、T細胞共受容体の同時の結合(細胞傷害性T細胞に対してCD8)を必要とする。「ss」とはジスルフィド架橋を指す。
【
図10C】被験体のT細胞を操作し、それを被験体に再度投与するための典型的なワークフローを例証する。
【
図11】発現カセットの変異体ライブラリーを生成するために2つの発現カセット(例えば、プロモーター、オープンリーディングフレーム、およびターミネーター)の相互交換部分によって生成された典型的な数の変異体を描く。
【
図12】本明細書で開示されるような遺伝子合成のための典型的なプロセスワークフローを実証する工程の図を提示する。
【
図14】コンピュータシステムの構造を例証するブロック図である。
【
図15】複数のコンピュータシステム、複数の携帯電話および個人用携帯情報端末、ならびにネットワーク接続ストレージ(NAS)を組み込むように構成されたネットワークを実証する図である。
【
図16】共有仮想アドレスメモリ空間を用いる、マルチプロセッサーコンピュータシステムのブロック図である。
【
図17】ゲル電気泳動によって分離したPCR反応生成物のBioAnalyzerプロットを描く。
【
図18】96セットのPCR生成物を示す電気泳動図を描いており、各セットのPCR生成物は、1つのコドン位置の野生型の鋳型核酸とは配列が異なり、各セットの単一のコドン位置は野生型の鋳型核酸配列で異なる部位に位置している。各セットのPCR生成物は19の変異体核酸を含み、各変異体は単一のコドン位置の異なるアミノ酸をコードする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、別段の定めのない限り、当該技術の範囲内である従来の分子生物学的技術を採用する。別段の定めのない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者により共通して理解されるもののと同じ意味を有する。
【0016】
定義
【0017】
本開示全体にわたって、数値的特徴は範囲形式で示される。範囲形式での記載は単に利便性と簡潔さのためのものに過ぎず、任意の実施形態の範囲に対する確固たる限定として解釈されてはならないということを理解されたい。これに応じて、範囲の記載は、文脈で別段の定めのない限り、すべての可能性のある下位範囲と、下限の単位の小数第2位までのその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられなければならない。例えば、1乃至6などの範囲の記載は、1乃至3、1乃至4、1乃至5、2乃至4、2乃至6、3乃至6などの下位範囲と、例えば、1.1、2、2.3、5、および5.9のその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられなければならない。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。これらの介在する範囲の上限および下限は、より小さな範囲内に独立して含まれてもよく、また、定められた範囲内のあらゆる具体的に除外された限界に従って、本発明内に包含される。定められた範囲が上限および下限の1つまたはその両方を含む場合、これらの含まれた上限および下限のいずれかまたは両方を除く範囲も、文脈が明らかに他に指示しない限り、本発明内に包含される。
【0018】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものあり、任意の実施形態を限定することを意図してはいない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明白に示していない限り、同様に複数形を含むように意図される。用語「含む」および/または「含むこと」は、本明細書での使用時に、明示された特徴、整数、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を妨げないことが、さらに理解される。本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、関連する列挙された項目の1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。
【0019】
別段の定めのない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用されるように、数あるいは数の範囲に関連して用語「約」とは、明示された数とその数+/-10%、あるいはある範囲の列挙された値について列挙された下限の10%以下と列挙された10%以上を意味するものと理解されたい。
【0020】
本明細書で使用されているように、用語「あらかじめ選択された配列(preselected sequence)」、「あらかじめ定められた配列(predefined sequence)」または「あらかじめ決められた配列(predetermined sequence)」は、交換可能に使用される。用語は、ポリマー配列が知られており、ポリマーの合成または組立の前に選択されることを意味する。特に、本発明の様々な態様は、主に核酸分子の調製に関して本明細書に記載されており、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列は知られており、核酸分子の合成または組立の前に選択される。
【0021】
合成(すなわち、デノボで合成されるか、化学的に合成する)のポリヌクレオチドの産生のための方法と組成物が本明細書で提供される。オリゴヌクレオチド、オリゴ、およびポリヌクレオチドとの用語は全体で同義であると定義される。本明細書に記載される合成されたポリヌクレオチドのライブラリーは、1つ以上の遺伝子または遺伝子断片をコードする複数のポリヌクレオチドをまとめて含むこともある。いくつかの例では、ポリヌクレオチドライブラリーはコード配列または非コード配列を含む。いくつかの例では、ポリヌクレオチドライブラリーは複数のcDNA配列をコードする。cDNA配列が基づく参照遺伝子配列はイントロンを含むこともあるが、cDNA配列はイントロンを除外する。本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、生物の遺伝子または遺伝子断片をコードすることがある。例示的な生物は、限定されないが、前核生物(例えば細菌)および真核生物(例えばマウス、ウサギ、ヒト、および非ヒト霊長類)を含む。いくつかの例では、ポリヌクレオチドライブラリーは、1つ以上のポリヌクレオチドを含み、1つ以上のポリヌクレオチドの各々は複数のエクソンの配列をコードする。本明細書に記載されるライブラリー内の各ポリヌクレオチドは異なる配列(すなわち同一でない配列)をコードすることもある。いくつかの例では、本明細書に記載されたライブラリー内のそれぞれのポリヌクレオチドは、ライブラリー内の別のポリヌクレオチドの配列に相補的な少なくとも1つの部分を含む。本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列は、別段の定めのない限り、DNAまたはRNAを含む。
【0022】
合成(すなわち、デノボで合成された)遺伝子の産生のための方法と組成物が本明細書で提供される。合成遺伝子を含むライブラリーは、PCA、非PCA遺伝子アセンブリ法、または階層的遺伝子アセンブリなどの、本明細書の他の場所で詳細に記載されるさまざまな方法によって構築され、2つ以上の2本鎖ポリヌクレオチドを組み合わせ(「ステッチング(stitching)てより大きなDNA単位(すなわち、シャーシ)を生成する。大きな構築物のライブラリーは、少なくとも1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、250、300、400、500キロバイトの長さまたはそれ以上であるポリヌクレオチドを含むことがある。大きな構築物は、約5000、10000、20000、または50000の塩基対の独立して選択される上限によって結合可能である。非リボソームペプチド(NRP)をコードする配列、非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)モジュールおよび合成変異体をコードする配列、抗体など他のモジュールタンパク質のポリペプチドセグメント、他のタンパク質ファミリーからのポリペプチドセグメント、調節配列などの非コードのDNAまたはRNA(例えば、プロモータ、転写因子、エンハンサー、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、マイクロRNAに由来する核小体低分子RNA、あるいは対象の任意の機能的または構造的なDNAまたはRNAのユニット)を含む、ヌクレオチド配列をコードするポリペプチド-セグメントの任意の数の合成。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、遺伝子間DNA、連鎖解析から定義された場所(複数の場所)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、核小体低分子RNA、リボザイム、メッセンジャーRNA(mRNA)の逆転写あるいは増幅によって通常得られるmRNAのDNA表現である、相補的DNA(cDNA);合成的にあるいは増幅により生成されるDNA分子、ゲノムDNA、組み換えポリヌクレオチド、分枝鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。本明細書で言及される遺伝子または遺伝子断片をコードするcDNAは、対応するゲノム配列で見られる介在イントロン配列のないエクソン配列をコードする少なくとも1つの領域を含むこともある。代替的に、cDNAに対応するゲノム配列は第1にイントロン配列を欠いていることがある。
【0023】
免疫シナプス中の分散の操作
【0024】
変異体核酸ライブラリーの合成のための方法が本明細書で提供され、ここで、変異体核酸はそれぞれ、参照T細胞受容体(TCR)タンパク質配列と比較して、変異した配列をコードする。変異した配列は、断片あるいはTCRタンパク質配列全体をコードする核酸配列であってもよい。場合によっては、変異した配列は免疫シナプスにおける抗原としての役割を果たすペプチドである。結果としてもたらされる核酸ライブラリーは、オリゴライブラリー、遺伝子断片ライブラリー、または遺伝子ライブラリーであってもよい。いくつかの例では、核酸ライブラリーは変異体タンパク質ライブラリーを生成するために細胞中で発現される。
【0025】
図10A-10Cを参照すると、TCRタンパク質はαとβの鎖を含むヘテロ二量体複合体であり、この各々は細胞外領域、膜貫通領域、および細胞内領域を有する。両方の鎖はジスルフィド結合によって結合し、その各々の受容体は抗原結合部位をもたらす。抗原は典型的には、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子によって提示される。MHCクラスIIに対するCD4およびMHCクラスIに対するCD8などのアクセサリー分子はT細胞によっても発現され、複合体に関与する。加えて、CD3複合体も関与しており、T細胞における情報伝達役割を与える。
【0026】
T細胞を操作することによってT細胞により媒介される腫瘍細胞の死滅を増大させる方法が本明細書で提供される。例えば、組織サンプルは、被験体のT細胞に存在するTCRについての配列決定情報を得るために被験体から入手可能である。組織サンプルは、切除された腫瘍組織から血液、末梢血単核球またはを採取することによって、単離された腫瘍浸潤リンパ球を採取することによって、得られてもよい。被験体は癌を患っていることもあれば、癌がないこともある。
【0027】
複数の被験体からサンプルを得るとき、被験体は一般的なHLAドナープロファイルを有するかについてスクリーニングされる。例えば、HLAはHLA-A、HLA-B、またはHLA-C対立遺伝子であってもよい。典型的な対立遺伝子を、以下の表1に示す。
【0028】
【0029】
様々なプロセスはその領域内であらかじめ選択された多様性をを有する異なるライブラリーの生成の選択のために所望の核酸領域を同定するために本明細書で記載される。例えば、T細胞は複数の被験体から得られてもよい。被験体の少なくとも一部が癌を患っていることもあれば、被験体のいずれも癌を患っていると診断されないこともある。その後、T細胞は配列決定され、共通配列は被験体中のTCRタンパク質をコードする遺伝子配列において同定される。いくつかの例では、1、2、3、4、または5以上の別々の続いている共通配列が、被験体中のTCRをコードする遺伝子において同定される。共通配列は典型的にはTCR遺伝子配列中のエクソン配列である。イントロン配列も被験体中で分析されることもある。代替的に、T細胞は癌と診断される前後に単一の被験体から得られる。T細胞中のTCR遺伝子の遺伝子プロファイルは、変異について共通配列を同定するために同様の様式で比較される。代替的に、T細胞は、癌を患っているか、癌のない状態であると診断された単一の被験体から得られ、および、T細胞中のTCR遺伝子の遺伝子プロファイルは配列データベースで比較される。配列データベースは、同様にHLAをマッピングされた被験体からのTCR遺伝子プロファイルを含むこともある。
【0030】
共通配列は、(i)プライマー核酸の変異体ライブラリーのデノボ合成とその後のPCR突然変異誘発、(ii)共通配列の変異体の全バージョンのデノボ合成、または(iii)ポリメラーゼ鎖アセンブリをアニーリングして組み立てるための共通配列の変異体のバージョンの複数の断片のデノボ合成を含む、本明細書に記載される方法を用いて変異する。
【0031】
本明細書に記載される共通配列は、約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000以上の塩基の長さである。いくつかの例では、共通配列は、少なくとも約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000以上の塩基の長さである。いくつかの例において、共通配列は、約100-約1000、約200ー約2000、または約400-約900の塩基の長さである。いくつかの例では、多くの共通配列が同定される。いくつかの例では、被験体中の約100、250、500、または1000以上の共通のTCRコード遺伝子配列が変異のために選択される。変異は、選択された共通のTCR配列の各々について、少なくとも約500、1000、2000、5000、10000、20000、50000、100000以上の変異体の設計を含む。全変異体ライブラリーは、10^6、10^8、10^10、10^11、10^12、10^13またはそれ以上の異なる核酸をもたらすこともある。
【0032】
本明細書に記載される変異体TCR配列ライブラリーは、遺伝子または遺伝子断片をコードするTCRヌクレオチド配列の任意の領域からの共通配列を含むことがある。遺伝子または遺伝子断片変異に関するTCRヌクレオチド配列の典型的な領域は、限定されないが、以下を含む:α鎖の可変領域、β鎖の可変領域、α鎖の定常領域、β鎖の定常領域、ヒンジ領域、膜貫通領域、または細胞質の尾部領域。いくつかの例では、変異体TCR配列ライブラリーは、変異のための共通配列を含み、ここで、可変ドメインの相補性決定領域の外側の残基をコードする核酸は、変異のために選択される。いくつかの例では、変異体TCR配列ライブラリーは、変異のための共通配列を含み、ここで、可変ドメインの相補性決定領域内の残基をコードする核酸は、変異のために選択される。
【0033】
TCRαおよびβの鎖をコードする配列はそれぞれ、別々の可変(∨)、多様性(D)、接合(J)遺伝子セグメント、および定常(C)遺伝子を含む。TCRα場所(染色体14)は、70-80のVα遺伝子セグメントからなり、その各々の前にリーダー配列(L)をコードするエクソンが先行する。61のJα遺伝子セグメントのクラスタは、Vα遺伝子セグメントから相当な距離を置いている。Jα遺伝子セグメントは、その後に、単一のC遺伝子が来て、これは定常ドメインとヒンジドメインのための別のエクソンと、膜貫通領域および細胞質領域(図示せず)をコードする単一のエクソンとを含む。TCRβ場所(染色体7)は異なる組織を有し、6または7のJ遺伝子セグメントと単一のC遺伝子と共に、52の機能的なVβ遺伝子セグメントのクラスタはそれぞれが単一のD遺伝子セグメントを含む2つの別々のクラスタから離れて位置する。それぞれのTCRβC遺伝子は、定常領域、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞質領域(図示せず)をコードする別のエクソンを有する。TCRα場所は別のT細胞受容体場所-TCRδ場所によってJと∨の遺伝子セグメント間で妨げられる。いくつかの実施形態において、変異のために選択された共通配列は、Vα遺伝子セグメント、Jα遺伝子セグメント、Cα遺伝子セグメント、Vβ遺伝子セグメント、Jβ遺伝子セグメント、またはCβ遺伝子セグメントの1つ以上を含む。
【0034】
TCRα鎖の典型的な可変遺伝子は、限定されないが、TRAV1-1(TRAV11、TCRAV1S1、TCRAV7S1)、TRAV1-2、TRAV2、TRAV3、TRAV4(TCRAV20S1、TCRAV4S1)、TRAV5、TRAV6(TCRAV5S1)、TRAV7、TRAV8-1、TRAV8-2、TRAV8-3、TRAV8-4、TRAV8-5(TRAV85、TCRAV8S5)、TRAV8-6、TRAV8-7、TRAV9-1、TRAV9-2、TRAV10(TCRAV10S1、TCRAV24S1)、TRAV11、TRAV12-1、TRAV12-2、TRAV12-3(TRAV123、TCRAV2S2、TCRAV12S3)、TRAV13-1、TRAV13-2、TRAV14DV4(TRAV14/DV4、TCRAV6S1-hDV104S1、hADV14S1)、TRAV15(TCRAV15S1)、TRAV16(TCRAV16S1、TCRAV9S1)、TRAV17(TCRAV17S1、TCRAV3S1)、TRAV18(TCRAV18S1)、TRAV19(TCRAV12S1、TCRAV19S1)、TRAV20、TRAV21、TRAV22(TCRAV13S1、TCRAV22S1)、TRAV23DV6(TRAV23/DV6、TCRAV17S1)、TRAV24、TRAV25(TCRAV25S1、TCRAV32S1)、TRAV26-1、TRAV26-2(TRAV262、TCRAV4S1、TCRAV26S2)、TRAV27、TRAV28、TRAV29DV5(TRAV29/DV5)、TRAV30、TRAV31(TCRAV31S1)、TRAV32、TRAV33(C14orf12)、TRAV34(TCRAV26S1、TCRAV34S1)、TRAV35(TCRAV25S1、TCRAV35S1)、TRAV36DV7(TRAV36/DV7)、TRAV37、TRAV38-1(TRAV381、TCRAV14S2、TCRAV38S1)、TRAV38-2DV8(TRAV38-2/DV8、TRAV382DV8、TCRAV14S1、hADV38S2)、TRAV39(TCRAV27S1、TCRAV39S1)、TRAV40(TCRAV31S1、TCRAV40S1)、および、TRAV41(TCRAV19S1、TCRAV41S1)を含む。TCRα鎖の可変遺伝子のための例示的な遺伝子配列が、表2に列挙される。
【0035】
TCRβ鎖の典型的な可変遺伝子は、限定されないが、TRBV1(TCRBV27S1P、TCRBV1S1P)、TRBV2(TCRBV22S1A2N1T、TCRBV2S1)、TRBV3-1(TRBV31、TCRBV3S1、TCRBV9S1A1T)、TRBV3-2(TRBV32、TCRBV3S2、TCRBV9S2A2PT)、TRBV4-1(TRBV41、TCRBV4S1、TCRBV7S1A1N2T、BV07S1J2.7)、TRBV4-2(TRBV42、TCRBV4S2、TCRBV7S3A2T)、TRBV4-3(TRBV43、TCRBV4S3、TCRBV7S2A1N4T)、TRBV5-1(TRBV51、TCRBV5S1、TCRBV5S1A1T)、TRBV5-2(TRBV52、TCRBV31S1、TCRBV5S2P)、TRBV5-3(TRBV53、TCRBV5S3、TCRBV5S5P)、TRBV5-4(TRBV54、TCRBV5S4、TCRBV5S6A3N2T)、TRBV5-5(TRBV55、TCRBV5S3A2T、TCRBV5S5)、TRBV5-6(TRBV56、TCRBV5S2、TCRBV5S6)、TRBV5-7(TRBV57、TCRBV5S7、TCRBV5S7P)、TRBV5-8(TRBV58、TCRBV5S4A2T、TCRBV5S8)、TRBV6-1(TRBV61、TCRBV13S3、TCRBV6S1)、TRBV6-2(TRBV62、TCRBV13S2A1T、TCRBV6S2)、TRBV6-3(TRBV63、TCRBV13S9/13S2A1T、TCRBV6S3)、TRBV6-4(TRBV64、TCRBV13S5、TCRBV6S4)、TRBV6-5(TRBV65、TCRBV13S1、TCRBV6S5)、TRBV6-6(TRBV66、TCRBV13S6A2T、TCRBV6S6)、TRBV6-7(TRBV67、TCRBV13S8P、TCRBV6S7)、TRBV6-8(TRBV68、TCRBV13S7P、TCRBV6S8)、TRBV6-9(TRBV69、TCRBV13S4、TCRBV6S9)、TRBV7-1(TRBV71、TCRBV6S7P、TCRBV7S1)、TRBV7-2(TRBV72、TCRBV6S5A1N1、TCRBV7S2)、TRBV7-3(TRBV73、TCRBV6S1A1N1、TCRBV7S3)、TRBV7-4(TRBV74、TCRBV6S8A2T、TCRBV7S4)、TRBV7-5(TRBV75、TCRBV6S9P、TCRBV7S5)、TRBV7-6(TRBV76、TCRBV6S3A1N1T、TCRBV7S6)、TRBV7-7(TRBV77、TCRBV6S6A2T、TCRBV7S7)、TRBV7-8(TRBV78、TCRBV6S2A1N1T、TCRBV7S8)、TRBV7-9(TRBV79、TCRBV6S4A1、TCRBV7S9)、TRBV8-1(TRBV81、TCRBV30S1P、TCRBV8S1P)、TRBV8-2(TRBV82、TCRBV32S1P)、TRBV9(TCRBV1S1A1N1、TCRBV9S1)、TRBV10-1(TRBV101、TCRBV10S1、TCRBV12S2A1T、TCRBV12S2)、TRBV10-2(TRBV102、TCRBV10S2、TCRBV12S3)、TRBV10-3(TRBV103、TCRBV10S3、TCRBV12S1A1N2)、TRBV11-1(TRBV111、TCRBV11S1、TCRBV21S1)、TRBV11-2(TRBV112、TCRBV11S2、TCRBV21S3A2N2T)、TRBV11-3(TRBV113、TCRBV11S3、TCRBV21S2A2)、TRBV12-1(TRBV121、TCRBV12S1、TCRBV8S4P)、TRBV12-2(TRBV122、TCRBV12S2、TCRBV8S5P)、TRBV12-3(TRBV123、TCRBV12S3、TCRBV8S1)、TRBV12-4(TRBV124、TCRBV12S4、TCRBV8S2A1T)、TRBV12-5(TRBV125、TCRBV12S5、TCRBV8S3)、TRBV13(TCRBV13S1、TCRBV23S1A2T)、TRBV14(TCRBV14S1、TCRBV16S1A1N1)、TRBV15(TCRBV15S1、TCRBV24S1A3T)、TRBV16(TCRBV16S1、TCRBV25S1A2PT)、TRBV17(TCRBV17S1、TCRBV26S1P)、TRBV18(TCRBV18S1)、TRBV19(TCRBV17S1A1T、TCRBV19S1)、TRBV20-1(TRBV201、TCRBV20S1、TCRBV2S1)、TRBV21-1(TRBV211、TCRBV10S1P、TCRBV21S1)、TRBV22-1(TCRBV22S1、TCRBV29S1P)、TRBV23-1(TRBV231、TCRBV19S1P、TCRBV23S1)、TRBV24-1(TRBV241、TCRBV15S1、TCRBV24S1)、TRBV25-1(TRBV251、TCRBV11S1A1T、TCRBV25S1)、TRBV26(TCRBV26S1、TCRBV28S1P)、TRBV27(TCRBV14S1、TCRBV27S1)、TRBV28(TCRBV28S1、TCRBV3S1)、TRBV29-1(TRBV291、TCRBV29S1、TCRBV4S1A1T)、および、TRBV30(TCRBV20S1A1N2、TCRBV30S1)を含む。TCRβ鎖の可変遺伝子のための例示的な遺伝子配列が、表2に列挙される。
【0036】
【0037】
【0038】
本明細書に記載されるライブラリーにおける変異のための選択された共通配列は、Jα遺伝子セグメント、Cα遺伝子セグメント、Jβ遺伝子セグメント、またはCβ遺伝子セグメントの1つ以上を含むこともある。典型的なJα遺伝子は限定されないが、TRAJ1、TRAJ2、TRAJ3、TRAJ4、TRAJ5、TRAJ6、TRAJ7、TRAJ8、TRAJ9、TRAJ10、TRAJ11、TRAJ12、TRAJ13、TRAJ14、TRAJ15、TRAJ16、TRAJ17、TRAJ18、TRAJ19、TRAJ20、TRAJ21、TRAJ22、TRAJ23、TRAJ24、TRAJ25、TRAJ26、TRAJ27、TRAJ28、TRAJ29、TRAJ30、TRAJ31、TRAJ32、TRAJ33、TRAJ34、TRAJ35、TRAJ36、TRAJ37、TRAJ38、TRAJ39、TRAJ40、TRAJ41、TRAJ42、TRAJ43、TRAJ44、TRAJ45、TRAJ46、TRAJ47、TRAJ48、TRAJ49、TRAJ50、TRAJ51、TRAJ52、TRAJ53、TRAJ54、TRAJ55、TRAJ56、TRAJ57、TRAJ58、TRAJ59、TRAJ60、および、TRAJ61を含む。いくつかの例では、Cα遺伝子はTRACである。典型的なJβ遺伝子は、限定されないが、TRBJ1-1(TRBJ11、TCRBJ1S1)、TRBJ1-2(TRBJ12、TCRBJ1S2)、TRBJ1-3(TRBJ13、TCRBJ1S3)、TRBJ1-4(TRBJ14、TCRBJ1S4)、TRBJ1-5(TRBJ15、TCRBJ1S5)、TRBJ1-6(TRBJ16、TCRBJ1S6)、TRBJ2-1(TRBJ21、TCRBJ2S1)、TRBJ2-2(TRBJ22、TCRBJ2S2)、TRBJ2-2P(TRBJ22P)、TRBJ2-3(TRBJ23、TCRBJ2S3)、TRBJ2-4(TRBJ24、TCRBJ2S4)、TRBJ2-5(TRBJ25、TCRBJ2S5)、TRBJ2-6(TRBJ26、TCRBJ2S6)、およびTRBJ2-7(TRBJ27、TCRBJ2S7)を含む。いくつかの例では、Cβ遺伝子はTRBC1(TCRBC1、BV05S1J2.2)またはTRBC2である。
【0039】
本明細書に記載される変異体TCRライブラリーは、TCRデルタ(TCRδ)場所の配列のための変異体を含むこともある。TCRδ鎖をコードする配列は、可変(V)、多様性(D)、接合(J)遺伝子のセグメント、または定常(C)遺伝子を含む。典型的な遺伝子は、限定されないが、TRD(TCRDV1)、TRDV1(hDV101S1)、TRDV2(hDV102S1、MGC117421)、TRDV3(hDV103S1)、TRDD1、TRDD2、TRDD3、TRDJ1、TRDJ2、TRDJ3、TRDJ4、およびTRDCを含む。
【0040】
本明細書に記載される変異体TCRライブラリーは、TCRγ(TCRγ)場所の配列のための変異体を含むこともある。TCRγ鎖をコードする配列は、可変(V)、多様性(D)、接合(J)遺伝子のセグメント、または定常(C)遺伝子を含む。典型的な遺伝子は、限定されないが、TRG、TRGV1(V1S1P)、TRGV2(VIS2)、TRGV3(V1S3)、TRGV4(V1S4)、TRGV5(V1S5)、TRGV5P(V1S5P)、TRGV6(V1S5P、TCRGV5P)、TRGV7(V1S7P)、TRGV8(V1S8)、TRGV9(V2)、TRGV10(V3P)、TRGV11(V4P)、TRGVA(V5P)、TRGVB(V6P)、TRGJ1(J1)、TRGJ2(J2)、TRGJP(JP)、TRGJP1(JP1)、TRGJP2(JP2)、TRGC1(C1)、TRGC2(TRGC2(2X)、TRGC2(3X))を含む。
【0041】
変異体TCRをコードする核酸を含むTCRライブラリーが本明細書で提供され、ここで、核酸はそれぞれ、少なくとも1つのあらかじめ決められた参照核酸配列のあらかじめ決められた変異体をコードする。場合によっては、あらかじめ決められた参照配列はタンパク質をコードする核酸配列であり、変異体ライブラリーは、合成された核酸によってコードされたその後のタンパク質中の単一の残基の複数の様々な変異体が標準的な翻訳プロセスによって生成されるように、少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは、複数の位置で変異をまとめてコードする変異した核酸を含む。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRα、TCRβ、TCRδ、あるいはTCRγの鎖の少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRβ鎖の可変ドメインの少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRβ鎖の可変ドメインの少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRαとTCRβの鎖の可変ドメインの少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRα鎖、TCRβ鎖、あるいはその組み合わせの可変ドメインの多くのコドンの変異をコードする配列を含む。変形のためのコドンの典型的な数は含む、限定されないが、少なくともまたは約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、225、250、275、300、または300以上のコドンを含む。
【0042】
いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは、TCRα鎖の可変遺伝子の1つ以上のエクソンにおける変異を含む。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは、TCRベータ鎖の可変遺伝子の1つ以上のエクソンにおける変異を含む。例えば、TCRα鎖の可変遺伝子の1つ以上エクソンの少なくともまたは約10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、あるいは200以上の核酸が変異する。いくつかの例において、TCRβ鎖の可変遺伝子の1つ以上のエクソンの少なくともまたは約10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、あるいは200以上の核酸が変異する。TCRα鎖およびTCRβ鎖の可変遺伝子の例示的なエクソン配列が表3で見られる。
【0043】
【0044】
【0045】
本明細書に記載されるような変異体TCRをコードする核酸を含むライブラリーは、翻訳時、様々な長さのアミノ酸を含む。いくつかの例では、合成されたアミノ酸のアミノ酸断片または平均長の各々の長さは、少なくともまたは約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、または150を超えるアミノ酸を含む。いくつかの例では、アミノ酸の長さは、約15から150、20から145、25から140、30から135、35から130、40から125、45から120、50から115、55から110、60から110、65から105、70から100、または75から95のアミノ酸の範囲である。いくつかの例では、アミノ酸の長さは、約22~約75のアミノ酸の範囲である。
【0046】
変異のためのTCR鎖の少なくとも1つの領域のための多くの変異体配列は、本明細書に記載されるような方法を使用してデノボ合成される。いくつかの例では、多くの変異体配列は、αまたはβのTCR鎖の可変領域のためにデノボ合成される。変異体配列の数は、少なくともまたは約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、あるいは500を超える配列であってもよい。いくつかの例では、変異体配列の数は、約10-500、25-475、50-450、75-425、100-400、125-375、150-350、175-325、200-300、225-375、250-350、または275-325の配列の範囲である。
【0047】
変異体TCRをコードする変異体核酸が本明細書で提供され、ここで、変異体TCRは抗原特異的である。いくつかの例では、抗原は疾患、障害、または疾病に関与するか、関連付けられる。例えば、抗原は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、または宿主対移植片疾患に関連する。いくつかの例では、抗原は腫瘍細胞上で発現された抗原である。いくつかの例では、抗原はウイルスまたは細菌などの病原体に関連する。
【0048】
いくつかの例では、変異体TCRは、組織限定的な抗原を認識する。例えば、変異体TCRは制限された重大でない細胞系統または組織である。いくつかの例では、変異体TCRは、突然変異した遺伝子産物からの抗原を認識する。
【0049】
変異体TCRライブラリーが本明細書で提供され、ここで、変異体TCRは抗原結合性の界面内の変異体をコードする。いくつかの例では、変異のための残基は抗原に接触するあらかじめ選択された残基あるいは予測された残基である。いくつかの例では、変異のための残基は結合ポケットに位置するあらかじめ選択された残基あるいは予測された残基である。
【0050】
本明細書に記載されるような変異体TCRライブラリーは、ライブラリー内に1つ以上の突然変異を含む。いくつかの例では、TCR変異体ライブラリーは、ライブラリーを介して単一の部位に変異体を含む単一の変異体ライブラリーである。いくつかの例では、TCR変異体ライブラリーは、複数の部位に変異体を含む複数の変異体である。いくつかの例において、部位の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超える部位である。
【0051】
TCR遺伝子または遺伝子断片内の1つ以上のあらかじめ選択されたコドンが変異体TCRタンパク質ライブラリーをもたらす変異を生成するために、変異体アミノ酸残基をコードする。いくつかの例では、最大で10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100のアミノ酸残基が変異する。いくつかの例では、最大で30のアミノ酸残基が変異する。いくつかの例では、最大で5つのアミノ酸残基が変異する。いくつかの例では、最大で100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、または1000を超えるアミノ酸残基が変異する。いくつかの例では、少なくともまたは約10、20、30、40、50、60、70、80、90、あるいは100のアミノ酸残基が変異する。いくつかの例では、少なくともまたは約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、または1000を超えるアミノ酸残基が変異する。いくつかの例では、あらかじめ選択された領域中のアミノ酸残基がすべて変異する。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは高度に多様化している。いくつかの例では、ライブラリーは、少なくともまたは約10^6、10^8、10^9、10^10、10^11、10^12、あるいは10^13の変異体を含む。いくつかの例では、ライブラリーは、少なくともまたは約10^9の変異体を含む。
【0052】
可溶性変異体TCRの生成のために変異体TCRをコードする変異体核酸が本明細書で提供される。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは抗原特異的である。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRδ鎖、TCRγ鎖、あるいはこれらの組み合わせの1つ以上の鎖を含む。いくつかの例では、可溶性変異体TCRはTCRα鎖の1つ以上の鎖を含む。いくつかの例では、可溶性変異体TCRはTCRβ鎖の1つ以上の鎖を含む。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは、TCRα鎖の1つ以上の鎖と、TCRβ鎖の1つ以上の鎖を含む。いくつかの例において、多くのTCR鎖は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超えるTCR鎖であり、ここで、TCR鎖は、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRδ鎖、TCRγ鎖、またはこれらの組み合わせである。
【0053】
本明細書に記載された可溶性変異体TCRは、TCRα、TCRβ、TCRδ、TCRγの鎖、あるいはこれらの組み合わせにおける変異体を含んでもよい。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは、TCRα鎖中に変異体を含む。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは、TCRβ鎖中に変異体を含む。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは、TCRαとTCRβ鎖中に変異体を含む。
【0054】
本明細書に記載された可溶性変異体TCRは、TCR鎖の間にリンカーを含むことがある。例えば、リンカーはTCR鎖との間のペプチド配列である。いくつかの例では、可溶性変異体TCRは1つ以上のリンカー配列を有する。いくつかの例において、多くのリンカー配列は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10を超えるリンカー配列である。いくつかの例では、多くのリンカー配列は、1-10、2-8、3-7、あるいは4-6リンカー配列の範囲である。
【0055】
可溶性TCRを得るための様々な方法が本明細書で企図される。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは最初にデノボ合成され、その後、発現ベクター(つまり、細菌または哺乳動物細胞中)へ導入される。いくつかの例では、精製されたTCRは可溶性TCRを生成するために得られる。可溶性TCRは細胞膜における挿入または安定化に必要とされるドメインまたは残基を欠くこともある。可溶性TCRは融合タンパク質の形態となるようにさらに修飾されることもある。融合タンパク質への封入のための典型的な追加の成分は、限定されないが、IgG、IgAおよびIgD、IgM、またはIgEの免疫グロブリン(Ig)ドメインを含む。とりわけ、融合タンパク質は、可溶性TCR、およびIgドメインの定常ドメイン(Fc)またはその断片を含むように設計される。典型的なIgG亜型は、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。例えば、そのような融合タンパク質は、ヒトIgG1重鎖のFc領域に遺伝学的に結合された可溶性の一本鎖T細胞受容体で構成されることもある。融合タンパク質のために選択されたFc領域は、特定のFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb/c、FcγRIIIa、FcγRIIIb、およびFcRn)に対する結合に基づいて選択されてもよい。
【0056】
変異のために選択された共通配列の領域を有する本明細書に記載されたライブラリーは、あらかじめ選択された変異プロフィルを有することがある。例えば、共通配列における少なくとも約1、5、10、15、20、30、40、50以上の核酸が不変性のために選択されることもあれば、制限された変異プロフィルを有するように選択されることもある。いくつかの例では、変異体コドンプロフィールを有する変異体TCRをそれぞれコードする変異体核酸は、発現ベクターに挿入され、スクリーニングのために哺乳動物細胞へ(例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクション、あるいは形質導入によって)導入される。
【0057】
本明細書に記載される変異体核酸ライブラリーは変異体タンパク質ライブラリーを生成するために使用されてもよい。そのようなタンパク質ライブラリーは、TCR活性、例えば、結合親和性、アビディティー、安定性、タンパク質発現、または標的細胞死滅(例えば、癌細胞死滅)、あるいはADCC活性の変化についてスクリーニングされてもよい。スクリーニングは、所望の特定の癌に関連付けられる抗原を用いる結合するアッセイを含んでもよい。癌は固形癌または血液の癌であり得る。いくつかの例では、癌は、膀胱癌、肺癌、脳癌、黒色腫、乳癌、非ホジキンリンパ腫、子宮頚癌、卵巣癌、大腸癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、白血病、甲状腺癌、肝臓癌、または子宮癌である。いくつかの例では、抗原は、MART1、CEA、gp100、NY-ESO-1、WT1、MUC1、HER-2/neu、MAGE-A3、p53、PSMA、GD2、プロテイナーゼ3(PR1)、チロシナーゼ、サバイビン、PSA、hTERT、およびEphA2である。制限するアッセイで使用される例示的な抗原は、限定されないが、表4で提供されるものを含む。
【0058】
【0059】
スクリーニングは、インビボ、インビトロ、あるいはエクスビボのアッセイを含み得る。スクリーニングのための細胞は、生きている被験体または細胞株から得られた主要な細胞を含む。細胞は、原核細胞(例えば、細菌および真菌)および真核細胞(例えば、植物および動物)からのものであってもよい。典型的な動物細胞は、限定されないが、マウス、ウサギ、霊長類、および昆虫からのものを含む。いくつかの例では、スクリーニングのための細胞は、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、ヒト胚腎臓(HEK)細胞株、または赤ん坊のハムスター腎臓(BHK)細胞株を含む、細胞株を含んでいる。いくつかの例では、本明細書に記載される核酸ライブラリーも多細胞生物に送達されることもある。典型的な多細胞生物は、限定されないが、植物、マウス、ウサギ、霊長類、および昆虫を含む。
【0060】
本明細書に記載される方法を使用して生成された変異体TCRライブラリーは、腫瘍抗原のために改善された親和性(エピトープと抗体の抗原結合性の部位との間の相互作用の強度の尺度)を有するタンパク質複合体を提供する修飾されたTCR遺伝子配列を選択するためにスクリーニングされてもよい。変異体遺伝子発現、アビディティー(抗体抗原複合体の全体的な強さの尺度)、安定性、および標的細胞(つまり癌細胞)特異性などのさらなる機能的な考察も評価される。いくつかの例では、TCR複合体の特異性の増加は、参照非変異体TCR複合体と比較して、非癌関連光源に対する交差反応性の減少をもたらす。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは細胞内での局在化についてスクリーニングされる。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは適切に局在化された変異体TCRを同定するためにスクリーニングされる。
【0061】
細胞中で発現される抗原に対する親和性あるいは特異性が改善された変異体TCRライブラリーが本明細書で提供される。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは、抗原に対する特異性を変化させた細胞を生成するために、細胞中で発現される。いくつかの例では、細胞はT細胞である。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRα鎖とTCRβ鎖の可変ドメインの少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。いくつかの例では、変異体ライブラリーはTCRα鎖またはTCRβ鎖の可変ドメインの多くのコドンの変異をコードする配列を含む。例えば、変異体ライブラリーは、表2あるいは表3の配列の変異を含む。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは、TCRα鎖の可変遺伝子の1つ以上のエクソンにおける変異を含む。変異のための例示的なエクソン配列が表2あるいは表3で見られる。いくつかの例では、変異体TCRライブラリーは、TCRベータ鎖の可変遺伝子の1つ以上のエクソンにおける変異を含む。
【0062】
いくつかの例では、細胞中で発現される変異体TCRライブラリーは、改善された変異体遺伝子発現、アビディティー、安定性、親和性、あるいは特異性を有する変異体TCRを同定するために使用される。例えば、腫瘍抗原への改善された特異性を含む第1の変異体TCRライブラリーが生成される。いくつかの例では、改善された遺伝子発現、アビディティー、安定性、親和性、あるいは特異性を有する変異体TCRの特定の後で、こうした変異体TCRは第2の改善を有する変異体TCRの第2のライブラリーを生成するためにさらに変異する。例えば、改善された特異性を有する変異体TCRは、改善された安定性をさらに含む変異体を同定するためにさらに変異する。いくつかの例では、第2のライブラリーは、第1のライブラリーと同じ領域中に変異体を含む。いくつかの例では、第2のライブラリーは、第1のライブラリーの異なる領域中に変異体を含む。例えば、第1のライブラリーは、TCRの可変領域中に変異体を含み、第2のライブラリーは、TCRの定常領域中に変異体を含む。いくつかの例では、多くの変異体TCRライブラリーが生成される。いくつかの例において、変異体TCRライブラリーの数は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または12を超える変異体ライブラリーである。いくつかの例では、変異体ライブラリーの各々は、遺伝子発現、アビディティー、安定性、親和性、あるいは特異性の改善を有する。
【0063】
いくつかの例では、変異体TCRを発現するために操作された細胞は被験体へ導入される。いくつかの例では、細胞は自己由来であり、被験体自体の細胞に由来することを意味している。交互に、変異体TCRを発現する細胞は同種異系であり、同様の組織タイプを有する他の被験体に由来することを意味している。いくつかの例では、細胞は被験体に合わされる。いくつかの例では、細胞は局所的な組織と適合する。
【0064】
本明細書に記載される方法を用いて生成された変異体TCRライブラリーは、細胞中の操作されたTCRタンパク質複合体の増強された発現プロフィールを少なくとも1つの修飾されたTCR遺伝子コード配列を選択するためにスクリーニングされることがある。相対的な遺伝子発現を増強する方策は、コドン最適化、TCR鎖の間での1つ以上のジスルフィド結合の導入、定常領域ドメインへのマウスの残基配列の導入、可変ドメインの非補足コード領域の変異、修飾されたT細胞中の内因性のTCRタンパク質の発現を選択的にノックダウンまたは停止させるためにTALENあるいはCRISPR技術の使用、修飾されたT細胞への免疫刺激サイトカインの送達、あるいはこれらの方策のいずれかあるいはすべての組み合わせを含む。TCRαまたはβのサブユニットをコードする変異した遺伝子配列のジスルフィド結合(例えば、ヒンジ領域中の)は、細胞中での発現時に、操作された変異体の好都合な組み立てをもたらす。本明細書に記載されるTCR遺伝子配列に加えられたジスルフィド結合の数は、少なくとも1、2、3、4、5、またはそれ以上であってもよい。
【0065】
いくつかの例では、本明細書に記載されるデノボ合成方法は、被験体のマッピングされたMHC I分子と同様に本明細書に記載される方法によって生成された変異体TCR複合体の結合に両方とも高効率である、抗原を同定するための複数の抗原の変異体ライブラリーの生成を提供する。このように、TCR複合体と抗原結合性部分の両方は、免疫シナプスにおける相互作用の増強のために最適化可能である。スクリーニング目的のために、変異体抗原ライブラリーをコードする核酸がまずデノボ合成され、その後、TCR複合体とMHCI複合体とを用いる結合アッセイのための精製されたペプチドを得るために、発現(すなわち、細菌中または哺乳動物細胞中で)のための発現ベクターへ導入される。
【0066】
変異体ライブラリー合成
【0067】
本明細書に記載される方法は、少なくとも1つのあらかじめ決められた参照核酸配列のあらかじめ決められた変異体を各々コードする核酸のライブラリーの合成をもたらす。場合によっては、あらかじめ決められた参照配列はタンパク質をコードする核酸配列であり、変異体ライブラリーは、合成された核酸によってコードされたその後のタンパク質中の単一の残基の複数の様々な変異体が標準的な翻訳プロセスによって生成されるように、少なくとも1つのコドンの変異をコードする配列を含む。核酸配列の合成された特異的な変化は、ヌクレオチド変化を、重複または平滑端の核酸プライマーに組み入れることにより導入可能である。代替的に、核酸の集団は、長い核酸(例えば、遺伝子)とその変異体をまとめてコードすることもある。この配置では、長い核酸(例えば遺伝子)とその変異体を形成するために、核酸の集団をハイブリダイズして標準的な分子生物学技術にかけることができる。長い核酸(例えば遺伝子)とその変異体が細胞中で発現される場合、異なるタンパク質ライブラリーが生成される。同様に、RNA配列(例えば、miRNA、shRNA、およびmRNA)あるいはDNA配列(例えば、エンハンサー、プロモーター、UTR、およびターミネーター領域)をコードする変異体ライブラリーの合成のための方法が本明細書で提供される。さらに、本明細書に記載される方法を用いて合成されたライブラリーから選択された変異体の下流の適用が本明細書で提供される。下流の適用は、例えば、生化学的な親和性、酵素活性、細胞活性の変化、および病状の治療または予防のための生物学的に関連する機能を増強させた、変異体核酸あるいはタンパク質配列の同定を含む。
【0068】
合成とその後のPCR突然変異誘発
【0069】
核酸の変異体ライブラリーの合成の第1のプロセスは、PCR突然変異誘発(飽和または非飽和)方法向けである。このワークフローでは、複数の核酸が合成され、各核酸は、参照核酸配列のあらかじめ決められた変異体であるあらかじめ決められた配列をコードする。
図1のA-Dで描かれた典型的なワークフローである図を参照すると、核酸は表面上で生成される。
図1のAは、121の場所を備えた表面の単一のクラスターの拡大図を描く。
図1のBで描かれるそれぞれの核酸は、変異体の長い核酸のライブラリー(
図1のC)を生成するために参照核酸配列からの増幅に使用することができるプライマーである。変異体の長い核酸のライブラリーは、変異体RNAあるいはタンパク質ライブラリー(
図1のD)を生成するために、その後、随意に転写および/または翻訳に晒される。この典型的な図では、実質的に平面の表面を有する装置は、核酸のデノボ合成に使用される(
図1のA)。いくつかの例では、装置は、場所のクラスターを含み、それぞれの場所は核酸伸長のための部位である。いくつかの例では、単一のクラスターは、所望の変異体配列ライブラリーを生成するために必要とされる核酸変異体をすべて含む。代替的な配置では、プレートは、クラスターへ分離されない場所の領域を含む。
【0070】
いくつかの例では、クラスタ(例えば
図1のAで見られるような)内で合成される核酸は、PCRによって増幅される。こうした構成は、クラスター化された構成のないプレート全体での同一でない核酸の増幅と比較して、核酸の提示を改善する。いくつかの例では、クラスタ内の場所の表面上で合成された核酸の増幅は、重いGC含有量を有する核酸を有する多くの核酸集団の反復的な合成によって提示に対する負の効果を克服する。いくつかの例では、本明細書に記載されるクラスタは、約50-1000、75-900、100-800、125-700、150-600、200-500、50-500、または300-400の別々の場所を含む。いくつかの例では、場所は、スポット、ウェル、マイクロウェル、チャネル、あるいはポストである。いくつかの例では、各クラスタは、同一の配列を有する核酸の伸長部を支持する別の特徴の少なくとも1X、2X、3X、4X、5X、6X、7X、8X、9X、10Xまたはそれ以上の冗長性を有する。
【0071】
本明細書に記載されたデノボ合成された核酸ライブラリーは複数の核酸を含んでもよく、各々は第1の位置、位置「X」で少なくとも1つの変異体配列を有し、各変異体核酸は第1の伸長生成物を生成するためにPCRの第一ラウンドでプライマーとして使用される。この例において、第1の核酸(220)中の位置「x」は、変異体コドン配列、つまり、参照配列からの19の可能性のある変異体の1つをコードする。
図2のAを参照する。第1の核酸の配列に重複する配列を含む第2の核酸(225)は、第2の伸長生成物を生成するためにPCRの別のラウンドでプライマーとして使用される。さらに、外部のプライマー(215、230)は、長い核酸配列からの断片の増幅に使用されてもよい。結果として生じた増幅産物は長い核酸配列(235、240)の断片である。
図2のBを参照する。その後、長い核酸配列(235、240)の断片はハイブリダイズされ、長い核酸(245)の変異体を形成するために伸長反応に晒される。
図2のCを参照する。第1と第2の伸長生成物の重複する末端は、PCRの第2のラウンドのプライマーとして役立つこともあり、それによって、変異体を含む第3の伸長生成物(
図2のD)を生成する。収率を増加させるために、長い核酸の変異体は、DNAポリメラーゼ、増幅試薬、外部のプライマー(215、230)を含む反応で増幅される。いくつかの例では、第2の核酸は、限定されないが、変異体部位に隣接する配列を含む。代替的な配置では、第2の核酸と重複する領域を有する第1の核酸が生成される。このシナリオでは、第1の核酸は最大で19の変異体のために単一のコドンで変異により合成される。第2の核酸は変異体配列を含まない。随意に、第1の集団は第1の核酸変異体と、異なるコドン部位の変異体をコードする追加の核酸とを含む。代替的に、第1の核酸と第2の核酸は平滑末端ライゲーションのために設計されてもよい。
【0072】
代替的な突然変異誘発では、PCR方法が
図3A-
図3Fで描かれる。こうしたプロセスでは、第1と第2の鎖(305、310)を含む鋳型核酸分子300は、第1のプライマー(315)と第2のプライマー(320)を含むPCR反応で増幅される(
図3A)。増幅反応はヌクレオチド試薬としてウラシルを含む。ウラシルで標識された伸長生成物(325)(
図3B)が生成され、随意に精製され、および、第1の伸長生成物(340と345)(
図3C-D)を生成するために第1の核酸(335)と複数の第2の核酸(330)を使用するその後のPCR反応のための鋳型として役立つ。このプロセスでは、複数の第2の核酸(330)は、変異体配列(
図3のCではX、Y、およびZとして描かれる)をコードする核酸を含む。ウラシルで標識された鋳型核酸は、ウラシルに特異的な切除試薬(例えば、New England Biolabsから市販されているUSER digest)により消化される。変異体(335)と、変異体X、Y、およびZを備える様々なコドン(330)が加えられ、
図3Dを生成するために限定的なPCR工程が行われる。ウラシルを含有する鋳型が消化された後、伸長生成物の重複する末端はPCR反応を刺激する役目を果たし、第1の伸長生成物(340と345)は第1の外部のプライマー(350)と第2の外部のプライマー(355)と組み合わされてプライマーとして作用し、それによって、
図3Fの変異体部位で複数の変異体X、Y、およびZを含む核酸分子(360)のライブラリーを生成する。
【0073】
長い核酸の変異体と非変異体の部分を備えた集団のデノボ合成
【0074】
変異体ライブラリーの合成のための第2のプロセスにおいて、表面は長い核酸の複数の断片のデノボ合成に使用され、断片の少なくとも1つは複数のバージョンで合成され、それぞれのバージョンは異なる変異体配列である。この配置では、変異体長距離核酸のライブラリーを組み立てるために必要とされる断片のすべてが、デノボ合成される。合成された断片は、合成後、断片ライブラリーはハイブリダイゼーションに晒されるように、重複する配列を有することもある。ハイブリダイゼーション後に、伸長反応はいかなる相補的なギャップも埋めるために行なわれることがある。
【0075】
代替的に、合成された断片はプライマーで増幅され、その後、平滑末端ライゲーションあるいは重複ハイブリダイゼーションのいずれかに晒されることもある。いくつかの例では、装置は、場所のクラスターを含み、それぞれの場所は核酸伸長のための部位である。いくつかの例では、単一のクラスターは、所望の変異体核酸配列ライブラリーを生成するために、あらかじめ決められた長い核酸のすべての核酸変異体と他の断片配列を含む。クラスターは約50~500の場所を含むことがある。いくつかの配置では、クラスターは、500を超える場所を含む。
【0076】
第1の核酸集団中のそれぞれの個々の核酸は、クラスターの別々の個々にアドレス可能な場所の上で生成されることがある。1つの核酸変異体は複数の個々にアドレス可能な場所によって表されることがある。第1の核酸集団中のそれぞれの変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、あるいはそれ以上の回数、表されることもある。いくつかの例では、第1の核酸集団中のそれぞれの変異体は3つ以下の場所で表される。いくつかの例では、第1の核酸集団中のそれぞれの変異体は2つ以下の場所で表される。いくつかの例では、第1の核酸集団中のそれぞれの変異体は1つの場所でのみ表される。
【0077】
方法は、冗長性を減少させた核酸ライブラリーを生成するために本明細書に提供される。いくつかの例では、変異体ポリヌクレオチドは、所望の変異体ポリヌクレオチドを得るために、1回を超える回数、変異体ポリヌクレオチドを合成することなく、生成されることがある。いくつかの例では、本開示は、所望の変異体ポリヌクレオチドを生成するために、1、2、3、4、5回を超える回数、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数、変異体ポリヌクレオチドを合成することなく、変異体ポリヌクレオチドを生成する方法を提供する。
【0078】
変異体ポリヌクレオチドは、所望の変異体ポリヌクレオチドを得るために、1を超える別々の部位で変異体ポリヌクレオチドを合成することなく、生成されることがある。本開示は、所望の変異体ポリヌクレオチドを生成するために、1つの部位、2つの部位、3つの部位、4つの部位、5つの部位、6つの部位、7つの部位、8つの部位、9つの部位、あるいは10の部位を超える部位で変異体ポリヌクレオチドを合成することなく、変異体ポリヌクレオチドを生成する方法を提供する。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、せいぜい6、5、4、3、2、あるいは1つの別々の部位で合成される。同じポリヌクレオチドは、表面上の1、2、あるいは3つの別々の場所で合成されることがある。
【0079】
いくつかの例では、単一の変異体ポリヌクレオチドを表す座の量は、下流の処理(例えば、増幅反応または細胞アッセイ)に必要な核酸材料の量に応じる。いくつかの例では、単一の変異体ポリヌクレオチドを表す座の量は、単一のクラスター中の利用可能な座に応じる。
【0080】
参照核酸中の複数の部位で異なる変異体核酸を含む核酸のライブラリーの生成のための方法が本明細書で提供される。そのような場合、それぞれの変異体ライブラリーは場所のクラスター内の個々にアドレス可能な場所で生成される。核酸ライブラリーによって表される変異体部位の数は、クラスター中の個々にアドレス可能な場所の数と各部位における所望の変異体の数とによって決定されることが理解されよう。いくつかの例では、それぞれのクラスターは約50~500の場所を含む。いくつかの例では、それぞれのクラスターは100~150の場所を含む。
【0081】
典型的な配置では、19の変異体は、19の可能性のある変異体アミノ酸の各々をコードするコドンに対応する変異体部位で表される。別の典型的な場合では、61の変異体は、19の可能性のある変異体アミノ酸の各々をコードするトリプレットに対応する変異体部位で表される。非限定的な例において、クラスターは121の個々にアドレス可能な場所を含む。この例において、核酸集団は、各々が単一部位の変異体である6つの複製物(6つの複製物x1の変異体部位x19の変異体=114座)、各々が二重部位変異体である3つの複製物(3つの複製物x2の変異体部位x19の変異体=114座)、または各々が三重部位変異体である2つの複製物(2つの複製物x3の変異体部位x19の変異体=114座)を含む。いくつかの例では、核酸集団は、4、5、6、あるいは6を超える変異体部位で変異体を含む。
【0082】
コドン変異
【0083】
本明細書に記載される変異体核酸ライブラリーは複数の核酸を含んでもよく、それぞれの核酸は、参照核酸配列と比較して、変異体コドン配列をコードする。いくつかの例では、第1の核酸集団のそれぞれの核酸は単一の変異体部位に変異体を含む。いくつかの例では、第1の核酸集団は、同じ変異体部位に1つを超える変異体を含むように、単一の変異体部位に複数の変異体を含む。第1の核酸集団は、同じ変異体部位に複数のコドン変異体を集団的にコードする核酸を含むことがある。第1の核酸集団は、同じ位置に最大で19以上のコドンを集団的にコードする核酸を含むことがある。第1の核酸集団は、同じ位置に最大で60の変異体トリプレットを集団的にコードする核酸を含むことがあり、あるいは、第1の核酸集団は、同じ位置で最大で61のコドンの異なるトリプレットを集団的にコードする核酸を含むことがある。それぞれの変異体は翻訳中に異なるアミノ酸をもたらすコドンをコードすることがある。表5は、異なる部位について可能性のあるそれぞれのコドン(と代表的なアミノ酸)のリストを提供する。
【0084】
【0085】
【0086】
核酸集団は、複数の位置で最大で20のコドン変異を集団的にコードする変異した核酸を含むことがある。このような場合、集団中のそれぞれの核酸は、同じ核酸中の1つを超える位置でコドンの変異を含む。いくつかの例では、集団中の核酸はそれぞれ、単一の核酸中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のコドンにおいてコドンの変異を含む。いくつかの例では、それぞれの変異体の長い核酸は、単一の長い核酸中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上のコドンにおけるコドンの変異を含む。いくつかの例では、変異体核酸集団は、単一の核酸中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上のコドンにおけるコドンの変異を含む。いくつかの例では、変異体核酸集団は、単一の核酸中の少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上のコドンにおけるコドンの変異を含む。
【0087】
本明細書では、第2の核酸集団が複数の個々にアドレス可能な場所を含む第2のクラスター上で生成されるプロセスが提供される。第2の核酸集団は、各コドン位置について一定である(つまり、各位置で同じアミノ酸をコードする)、複数の第2の核酸を含むことがある。第2の核酸は第1の核酸の少なくとも一部と重複することがある。いくつかの例では、第2の核酸は、第1の核酸上で表される変異体部位を含まない。代替的に、第2の核酸集団は1つ以上のコドン位置について異なる複数の第2の核酸を含むことがある。
【0088】
複数のコドン位置に変異体を含む核酸の単一の集団が生成される核酸のライブラリーを合成するための方法が本明細書で提供される。第1の核酸集団は複数の個々にアドレス可能な場所を含む第1のクラスター上で生成されることがある。そのような場合、第1の核酸集団は異なるコドン位置に変異体を含む。いくつかの例では、様々な部位は連続的である(つまり、連続するアミノ酸をコードする)。第1のポリヌクレオチド酸集団は、同じまたは追加の変異体部位で最大で19のコドン変異体を集団的にコードする変異した核酸を含んでもよい。第1のポリヌクレオチド酸集団は、位置xで最大で19の変異体を、位置yで最大で19の変異体を、および位置zで最大で19の変異体を含む、複数の第1の核酸を含んでもよい。このような配置では、最大で19のアミノ酸変異体が様々な変異体部位の各々でコードされるように、変異体はそれぞれ異なるアミノ酸をコードする。追加の例では、第2の核酸集団は複数の個々にアドレス可能な場所を含む第2のクラスター上で生成される。第2の核酸集団は、各コドン位置について一定である(つまり、各位置で同じアミノ酸をコードする)、複数の第2の核酸を含むことがある。第2の核酸は第1の核酸の少なくとも一部と重複することがある。第2の核酸は、第1の核酸上で表された変異体部位を含まないことがある。
【0089】
本明細書に記載されるプロセスによって生成された変異体核酸ライブラリーは、変異体タンパク質ライブラリーの生成をもたらす。第1の典型的な配置では、鋳型核酸は、転写および翻訳時に、単一の円によって示される多くのコドン位置を有する参照アミノ酸配列(
図4のA)をもたらす配列をコードする。鋳型の核酸変異体は本明細書に記載された方法を用いて生成可能である。いくつかの例では、単一の変異体は核酸中に存在し、単一のアミノ酸配列をもたらす(
図4のB)。いくつかの例では、1つを超える変異体は核酸中に存在し、変異体は1つ以上のコドンによって分離され、変異体残基の間に間隔をおいたタンパク質をもたらす(
図4のC)。いくつかの例では、1つを超える変異体が核酸中に存在し、変異体は逐次的であり、かつ互いに対して隣接するか、連続的であり、間隔をおいた一続きの変異体の複数の残基をもたらす(
図4のD)。いくつかの例では、2続きの変異体は核酸中に存在し、2続きの変異体はそれぞれ、逐次的な、隣接する、または連続的な変異体を含む(
図4のE)。
【0090】
核酸変異体のライブラリーを生成する方法が本明細書で提供され、それぞれの変異体は単一の位置コドン変異体を含む。1つの例では、鋳型核酸は多くのコドン位置を有し、典型的なアミノ酸残基はそれぞれの1文字のコードタンパク質コドンを用いて円によって示されている(
図5のA)。
図5のBは、変異体核酸のライブラリーによってコードされたアミノ酸変異体のライブラリーを描いており、各変異体は、異なる一つの部位に位置し、「X」によって示される、単一位置の変異体を含む。第1の位置変異体は、アラニンに取って代わる任意のコドン、第2の変異体はトリプトファンに取って代わる変異体核酸のライブラリーによってコードされた任意のコドンを有し、第3の変異体はイソロイシンに取って代わる任意のコドンを有し、第4の変異体はリジンに取って代わる任意のコドンを有し、第5の変異体はアルギニンに取って代わる任意のコドンを有し、第6の変異体はグルタミン酸に取って代わる任意のコドンを有し、および第7の変異体はグルタミンに取って代わる任意のコドンを有する。すべての、あるいは、すべてよりも少ないコドン変異体が変異体核酸ライブラリーによってコードされ、結果として生じるアミノ酸配列変異体の対応する集団は、タンパク質発現後(つまり、DNA転写の標準的な細胞的事象と、その後の翻訳と処理の事象)に生成される。
【0091】
いくつかの配置では、ライブラリーは単一位置の変異体の複数の部位で生成される。
図6のAで描かれるように、野生型の鋳型が提供される。
図6のBは、単一位置のコドン変異体の2つの部位を有する結果として生じたアミノ酸配列を描いており、異なるアミノ酸をコードする各コドン変異体は異なる模様のある円によって示されている。
【0092】
一続きの複数部位の単一位置の変異体を有するライブラリーを生成する方法が本明細書で提供される。それぞれの一続きの核酸は1、2、3、4、5、またはそれ以上の変異体を有することがある。それぞれの一続きの核酸は少なくとも1つの変異体を有することがある。それぞれの一続きの核酸は少なくとも2つの変異体を有することがある。それぞれの一続きの核酸は少なくとも3つの変異体を有することがある。例えば、一続きの5つの核酸は1つの変異体を有することがある。一続きの5つの核酸は2つの変異体を有することがある。一続きの5つの核酸は3つの変異体を有することがある。一続きの5つの核酸は4つの変異体を有することがある。例えば、一続きの4つの核酸は1つの変異体を有することがある。一続きの4つの核酸は2つの変異体を有することがある。一続きの4つの核酸は3つの変異体を有することがある。一続きの4つの核酸は4つの変異体を有することがある。
【0093】
いくつかの例では、単一位置の変異体はすべて、同じアミノ酸、例えば、ヒスチジンをコードしてもよい。
図7のAに示されるように、参照アミノ酸配列が提供される。この配置において、一続きの核酸は、単一位置の変異体の複数の部位をコードし、発現時には、ヒスチジンをコードするすべての単一位置の変異体を有するアミノ酸配列を生じさせる(
図7のB)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって合成された変異体ライブラリーは、結果として生じたアミノ酸配列において4つを超えるヒスチジン残基をコードしない。
【0094】
いくつかの例では、本明細書に記載される方法によって生成された核酸の変異体ライブラリーは、別の続いている変異を有するアミノ酸配列の発現をもたらす。鋳型アミノ酸配列は
図8のAに示される。一続きの核酸は、2続きの1つの変異体コドンしか含まないことがあり、発現時には、結果として、
図8のBに示されるアミノ酸配列をもたらす。アミノ酸における変異が一続きでは異なる位置にあることを示すために、変異体は、異なるパターン化された円によって
図8のBで示されている。
【0095】
本明細書には、1、2、3、またはそれ以上のコドン変異体を有する核酸ライブラリーを合成するための方法および装置が提供され、ここで、各部位に対する変異体は選択的に制御される。単一部位の変異体に対する2つのアミノ酸の比率は、約1:100、1:50、1:10、1:5、1:3、1:2、1:1であり得る。単一部位の変異体に対する3つのアミノ酸の比率は、約1:1:100、1:1:50、1:1:20、1:1:10、1:1:5、1:1:3、1:1:2、1:1:1、1:10:10、1:5:5、1:3:3、または1:2:2であり得る。
図9のAは、野生型の核酸配列によってコードされた野生型の参照アミノ酸配列を示す。
図9のBは、アミノ酸変異体のライブラリーを示し、ここで、各変異体は一続きの配列を含み(パターン化された円によって示されている)、各位置は、結果として生じた変異体タンパク質ライブラリーにおいて特定の比率のアミノ酸を有することもある。結果として生じた変異体タンパク質ライブラリーは、本明細書に記載される方法によって生成された変異体核酸ライブラリーによってコードされる。この例証では、5つの位置が変えられる:第1の位置(900)は50/50のK/R比率を有し;第2の位置(910)は50/25/25のV/L/S比率を有し、第3の位置(920)は50/25/25のY/R/D比率を有し、第4の位置(930)は20のアミノ酸すべてに対する等しい比率を有し、および第5の位置(940)はG/Pに対する75/25の比率を有する。本明細書に記載される比率は単なる例である。
【0096】
発現カセットにおける変異
【0097】
いくつかの例において、発現構築物の一部をコードする合成された変異体ライブラリーが生成される。発現構築物の典型的な部分は、プロモーター、オープンリーディングフレーム、および終端領域を含む。いくつかの例では、発現構築物は、1、2、3またはそれ以上の発現カセットをコードする。ポリヌクレオチドライブラリーが生成され、これは、
図11に示されるように、発現構築物カセットの部分を構成する単一の部位または複数の部位の別々の領域においてコドン変異をコードする。2つの構築物発現カセットを生成するために、第1のプロモーター(1110)、第1のオープンリーディングフレーム(1120)、第1のターミネーター(1130)、第2のプロモーター(1140)、第2のオープンリーディングフレーム(1150)、または第2のターミネーター配列(1160)の変異体配列の少なくとも一部をコードする変異体核酸が合成される。増幅のラウンド後に、前の例において記載されるように、1,024の発現構築物のライブラリーが生成された。
図11は一例の配置を提供する。いくつかの例では、非翻訳制御領域(UTR)またはエンハンサー領域などの、追加の制御配列(regulator sequences)も、本明細書で言及される発現カセットに含まれる。発現カセットは、本明細書に記載される方法によって変異体配列が生成される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の構成要素を含んでもよい。いくつかの例では、発現構築物は、マルチシストロン性(multicistronic)ベクター中に1つを超える遺伝子を含む。一例では、合成されたDNA核酸は、ウイルスベクター(例えばレンチウイルス)へ挿入され、その後、細胞への形質導入のためにパッケージ化されるか、または細胞へ導入のために非ウイルスベクターへと挿入され、その後、スクリーニングおよび分析される。
【0098】
本明細書に開示される核酸を挿入するための発現ベクターは哺乳動物細胞、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウサギ、マウスを含む。典型的な発現ベクターは、限定することなく、哺乳動物の発現ベクター:pSF-CMV-NEO-NH2-PPT-3XFLAG、pSF-CMV-NEO-COOH-3XFLAG、pSF-CMV-PURO-NH2-GST-TEV、pSF-OXB20-COOH-TEV-FLAG(R)-6His、pCEP4 pDEST27、pSF-CMV-Ub-KrYFP、pSF-CMV-FMDV-daGFP、pEF1a-mCherry-N1 Vector、pEF1a-tdTomato Vector、pSF-CMV-FMDV-Hygro、pSF-CMV-PGK-Puro、pMCP-tag(m)、および、pSF-CMV-PURO-NH2-CMYCを含む。本明細書に記載される方法によって合成された核酸は、限定されないが、トランスフェクション、形質導入、およびエレクトロポレーションを含む、当該技術分野において知られている様々な方法によって細胞へ導入される。試験される典型的な細胞機能は、限定されないが、細胞増殖、脂肪、遊走/接着、代謝活性、および細胞シグナル伝達活性の変化を含む。
【0099】
高度に並列な核酸合成
【0100】
本明細書には、革新的な合成プラットフォームを作るために、シリコン上のナノウェル内で核酸合成から遺伝子アセンブリまでの末端間のプロセスの小型化、並列化、および垂直統合を利用するプラットフォームアプローチが提供される。本明細書に記載される装置は、96ウェルのプレートと同じフットプリントを提供し、シリコン合成プラットフォームは、従来の合成方法と比較して、最大で1,000倍以上スループットを増加させることができ、1回の高並列化されたラン(run)で、最大でおよそ1,000,000以上の核酸、または10,000以上の遺伝子を産生することができる。
【0101】
次世代配列決定の出現で、高解像度のゲノムデータは、正常な生態および病因の両方において様々な遺伝子の生物学的役割を深く探究する研究の重要な因子となった。この研究の中心となるのは、分子生物学のセントラルドグマと「配列情報の残基ごとの移動」の概念である。DNAにおいてコードされたゲノム情報は、メッセージへと転写され、これはその後、与えられた生物学的経路内の活性産物であるタンパク質へと翻訳される。
【0102】
研究の別の刺激的な領域は、高特異的な細胞標的に焦点を置いた治療用分子の発見、開発、および製造に関するものである。高多様性のDNA配列ライブラリーは、標的とされた治療薬のための開発パイプラインの中心にある。治療標的に対して高い親和性を有するタンパク質の高い発現のために理想的には最適化された遺伝子になる、設計、構造、および試験用のタンパク質工学サイクルにおいてタンパク質を発現するために、遺伝子突然変異体が使用される。一例として、受容体の結合ポケットを考察されたい。結合ポケット内のすべての残基のすべての配列の並べ替えを同時に試験する能力によって、徹底的な診査が可能になり、成功の可能性が増大する。研究者が受容体内の特定部位であらゆる可能な突然変異を発生させる試みを行う、飽和突然変異誘発は、この開発課題に対する1つの手段を表わす。高価であり、時間も手間もかかるが、これによって、各変異体を各位置へと導入することができる。対照的に、少数の選択された位置または短い一続きのDNAが広範囲に修飾され得る組み合わせの突然変異誘発は、偏った提示(biased representation)で変異体の不完全なレパートリーを発生させる。
【0103】
薬物開発のパイプラインを促進するために、試験に利用可能な正しい位置において意図した頻度で利用可能な望ましい変異体を有するライブラリー、言い換えれば、高精度ライブラリー(precision library)は、コストの削減に加えて、スクリーニングの所要時間の短縮も可能にする。本明細書には、望ましい頻度で各々の意図した変異体の正確な導入をもたらす核酸合成変異体ライブラリーを合成する方法が提供される。エンドユーザーにとって、これは、配列空間を徹底的にサンプリングするだけでなく、効率的な方法でこれらの仮説を問うことができる能力に翻訳され、コストおよびスクリーニング時間を削減する。ゲノム全体の編集は、重要な経路、各変異体および配列の並べ替えが最適な機能性に関して試験され得るライブラリーを解明することができ、かつ、創薬のための生物系を再設計するためにすべての経路とゲノムをを再構築するべく、何千もの遺伝子を使用することができる。
【0104】
第1の実施例では、薬物自体は、本明細書に記載される方法を使用して最適化され得る。例えば、抗体の指定された機能を改善するために、抗体の一部をコードする変異体核酸ライブラリーが設計および合成される。その後、抗体に対する変異体核酸ライブラリーが、本明細書に記載されるプロセス(例えば、PCR突然変異誘発に続くベクターへの挿入)によって生成され得る。その後、抗体は、産生細胞株(production cell line)において発現され、活性の増強についてスクリーニングされる。スクリーニングの例は、抗原に対する結合親和性、安定性、またはエフェクター機能(例えば、ADCC、補体、またはアポトーシス)の調節を検査することを含む。抗体を最適化する典型的な領域は、限定されないが、Fc領域、Fab領域、Fab領域の可変領域、Fab領域の定常領域、重鎖または軽鎖の可変ドメイン(VHまたはVL)、およびVHまたはVLの特異的な相補性決定領域(CDR)を含む。
【0105】
本明細書に記載される方法によって合成された核酸ライブラリーは、疾患状態に関連付けられる様々な細胞において発現され得る。疾患状態に関連付けられる細胞は、被験体からの細胞株、組織サンプル、初代細胞、被験体から増殖された培養細胞、またはモデル系における細胞を含む。典型的なモデル系は、限定されないが、疾患状態の植物および動物のモデルを含む。
【0106】
疾患状態の予防、低減、または処置に関連付けられる変異体分子を特定するために、本明細書に記載される変異体核酸ライブラリーが、疾患状態に関連付けられる細胞または疾患状態が誘発され得る細胞において発現される。いくつかの例では、細胞において疾患状態を誘発するために薬剤が使用される。疾患状態の誘発のための典型的なツールは、限定されないが、Cre/Lox組換え系、LPS炎症誘発、および低血糖症を誘発するストレプトゾトシンを含む。疾患状態に関連付けられる細胞は、モデル系からの細胞または培養細胞の他に、特定の病状を有する被験体からの細胞であり得る。典型的な病状は、細菌性、真菌性、ウイルス性、自己免疫性、または、増殖性の障害(例えば癌)を含む。いくつかの例では、変異体核酸ライブラリーは、モデル系、細胞株、または被験体由来の初代細胞において発現され、少なくとも1つの細胞活性における変化についてスクリーニングされる。典型的な細胞活性は、限定されないが、増殖、周期進行、細胞死、接着、遊走、繁殖、細胞シグナル伝達、エネルギー産生、酸素利用、代謝活性、および老化、遊離ラジカル損傷に対する反応、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0107】
基質
【0108】
本明細書には、複数のクラスターを含む基質が提供され、ここでクラスターはそれぞれ、核酸の接着および合成を支持する複数の場所を含む。本明細書で使用されるような用語「場所」は、表面から伸長するために単一のあらかじめ決められた配列をコードするポリヌクレオチドに支持を与える構造上の離散的領域を指す。いくつかの例では、場所は、二次元表面、例えば、実質的に平らな表面上にある。いくつかの例では、場所は、表面上の離散的な隆起したまたは沈降した部位、例えば、ウェル、マイクロウェル、チャネル、またはポストを指す。いくつかの例では、場所の表面は、核酸合成のための少なくとも1つのヌクレオチド、または好ましくは、核酸の集団の合成のための同一のヌクレオチドの集団に結合するために活発に機能化される物質を含む。いくつかの例では、核酸は、同じ核酸配列をコードするする核酸の集団を指す。いくつかの例では、装置の表面は、基質の1つまたは複数の表面を包含する。
【0109】
提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対する平均エラー率は、1000中で1未満、1250中で1未満、1500中で1未満、2000中で1未満で、3000中で1未満であるか、またはそれよりも頻度は低い。いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対する平均エラー率は、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、1/1000、1/1100、1/1200、1/1250、1/1300、1/1400、1/1500、1/1600、1/1700、1/1800、1/1900、1/2000、1/3000未満であるか、またはそれよりも低い。いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対する平均エラー率は、1/1000未満である。
【0110】
いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対する総エラー率は、あらかじめ決められた配列と比較して、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、1/1000、1/1100、1/1200、1/1250、1/1300、1/1400、1/1500、1/1600、1/1700、1/1800、1/1900、1/2000、1/3000未満であるか、またはそれよりも低い。いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対する総エラー率は、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、または1/1000未満である。いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対する総エラー率は、1/1000未満である。
【0111】
いくつかの例では、エラー補正酵素は、使用することができる提供される方法およびシステムを使用してライブラリー内で合成された核酸に使用され得る。いくつかの例では、エラー補正を有する核酸に対する総エラー率は、あらかじめ決められた配列と比較して、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、1/1000、1/1100、1/1200、1/1300、1/1400、1/1500、1/1600、1/1700、1/1800、1/1900、1/2000、1/3000未満、またはそれ以下であり得る。いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対するエラー補正を有する総エラー率は、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、または1/1000未満であり得る。いくつかの例では、提供されるシステムおよび方法を使用してライブラリー内で合成された核酸に対するエラー補正を有する総エラー率は、1/1000未満であり得る。
【0112】
エラー率は、遺伝子変異体のライブラリーの産生のための遺伝子合成の値を制限することがある。1/300のエラー率では、1500の塩基対遺伝子におけるクローンの約0.7%が正しくなる。ポリヌクレオチド合成からのエラーのほとんどが、結果としてフレームシフト突然変異をもたらすため、そのようなライブラリー中のクローンの99%以上が、完全長タンパク質を生成しない。エラー率を75%低下させることによって、正しいクローンの画分は40倍増加する。本開示の方法および組成物は、超並列および時間効率の良い方法で可能になる合成の質の改善とエラー補正方法の適用性の両方のおかげで、一般に観察される遺伝子合成方法よりも低いエラー率での大きなポリヌクレオチドと遺伝子のライブラリーの迅速なデノボ合成を可能にする。したがって、ライブラリーは、ライブラリー全体にわたって、またはライブラリーの80%、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98% 99% 99.5% 99.8% 99.9% 99.95% 99.98% 99.99%、またはそれ以上にわたって、塩基の挿入、欠失、置換、あるいは1/300、1/400、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、1/1000、1/1250、1/1500、1/2000、1/2500、1/3000、1/4000、1/5000、1/6000、1/7000、1/8000、1/9000、1/10000、1/12000、1/15000、1/20000、1/25000、1/30000、1/40000、1/50000、1/60000、1/70000、1/80000、1/90000、1/100000、1/125000、1/150000、1/200000、1/300000、1/400000、1/500000、1/600000、1/700000、1/800000、1/900000、1/1000000未満、またはそれ以下である合計のエラー率で合成され得る。本開示の方法および組成物はさらに、あらかじめ決められた/あらかじめ選択された配列と比較して、エラーのない配列に関連するライブラリーの少なくともサブセットにおいて、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%、99.99%、またはそれ以上に関連付けられる低いエラー率での大規模な合成オリゴヌクレオチドおよび遺伝子のライブラリーに関する。いくつかの例では、ライブラリー内の単離した量でのポリヌクレオチドまたは遺伝子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%、99.99%、またはそれ以上は、同じ配列を有している。いくつかの例では、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれ以上の類似性または同一性に関連する、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%、99.99%、またはそれ以上は、同じ配列を有している。いくつかの例では、ポリヌクレオチドまたは遺伝子上の指定された場所に関連するエラー率は、最適化される。したがって、所定の場所は、または、大規模なライブラリーの一部としての1つ以上のポリヌクレオチドまたは遺伝子の複数の選択された場所はそれぞれ、1/300、1/400、1/500、1/600、1/700、1/800、1/900、1/1000、1/1250、1/1500、1/2000、1/2500、1/3000、1/4000、1/5000、1/6000、1/7000、1/8000、1/9000、1/10000、1/12000、1/15000、1/20000、1/25000、1/30000、1/40000、1/50000、1/60000、1/70000、1/80000、1/90000、1/100000、1/125000、1/150000、1/200000、1/300000、1/400000、1/500000、1/600000、1/700000、1/800000、1/900000、1/1000000未満、またはそれより低いエラー率を有し得る。様々な事例では、そのようなエラーを最適化した場所は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、30000、50000、75000、100000、500000、1000000、2000000、3000000、またはそれ以上の場所を含み得る。エラーを最適化した場所は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、30000、75000、100000、500000、1000000、2000000、3000000、またはそれ以上のポリヌクレオチドまたは遺伝子に分布され得る。
【0113】
エラー率は、エラー補正を用いてまたはそれなしで達成され得る。エラー率は、ライブラリー全体にわたって、またはライブラリーの80%、85%、90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%、99.99%、またはそれ以上にわたって達成され得る。
【0114】
本明細書には、共通の支持体上のアドレス可能な位置で異なるあらかじめ決められた配列を有する複数の核酸の合成を支持する表面を含み得る構造が提供される。いくつかの例では、装置は、2,000;5,000;10,000;20,000;30,000;50,000;75,000;100,000;200,000;300,000;400,000;500,000;600,000;700,000;800,000;900,000;1,000,000;1,200,000;1,400,000;1,600,000;1,800,000;2,000,000;2,500,000;3,000,000;3,500,000;4,000,000;4,500,000;5,000,000;10,000,000、またはそれ以上の同一でない核酸の合成のための支持を提供する。いくつかの例では、装置は、別の配列をコードする、2,000;5,000;10,000;20,000;30,000;50,000;75,000;100,000;200,000;300,000;400,000;500,000;600,000;700,000;800,000;900,000;1,000,000;1,200,000;1,400,000;1,600,000;1,800,000;2,000,000;2,500,000;3,000,000;3,500,000;4,000,000;4,500,000;5,000,000;10,000,000を超える、またはそれ以上の核酸の合成のための支持を与える。いくつかの例では、核酸の少なくとも一部は、同一の配列を有しているか、または同一の配列で合成されるように構成されている。
【0115】
本明細書には、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または2000の塩基の長さである核酸の製造および成長のための方法および装置が提供される。いくつかの例では、形成される核酸の長さは、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、または225の塩基の長さである。核酸は少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100の塩基の長さであり得る。核酸は、10~225の塩基の長さ、12~100の塩基の長さ、20~150の塩基の長さ、20~130の塩基の長さ、または30~100の塩基の長さであり得る。
【0116】
いくつかの例では、核酸は、基質の別々の場所で合成され、ここで、場所はそれぞれ、核酸の集団の合成を支持する。いくつかの例では、場所はそれぞれ、別の場所上で成長した核酸の集団とは異なる配列を有する核酸の集団の合成を支持する。いくつかの例では、装置の場所は複数のクラスター内に位置する。いくつかの例では、装置は、少なくとも10、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、20000、30000、40000、50000またはそれ以上のクラスターを含む。いくつかの例では、装置は、2,000;5,000;10,000;100,000;200,000;300,000;400,000;500,000;600,000;700,000;800,000;900,000;1,000,000;1,100,000;1,200,000;1,300,000;1,400,000;1,500,000;1,600,000;1,700,000;1,800,000;1,900,000;2,000,000;300,000;400,000;500,000;600,000;700,000;800,000;900,000;1,000,000;1,200,000;1,400,000;1,600,000;1,800,000;2,000,000;2,500,000;3,000,000;3,500,000;4,000,000;4,500,000;5,000,000;または10,000,000、あるいはそれ以上の別々の場所を含む。いくつかの例では、装置は、約10,000の別々の場所を含む。単一のクラスター内の場所の量は、異なる例では変動する。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、130、150、200、300、400、500または以上の場所を含む.いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約50-500の場所を含む。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約100-200の場所を含む。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約100-150の場所を含む。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約109、121、130または137の場所を含む。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約19、20、61、64またはそれ以上の場所を含む。
【0117】
装置で合成された別々の核酸の数は、基質で利用可能な別の場所の数に左右され得る。いくつかの例では、装置のクラスター内の場所の密度は、1mm2当たり少なくともまたは約1の場所、1mm2当たり10の場所、1mm2当たり25の場所、1mm2当たり50場所、1mm2当たり65の場所、1mm2当たり75の場所、1mm2当たり100の場所、1mm2当たり130の場所、1mm2当たり150の場所、1mm2当たり175の場所、1mm2当たり200の場所、1mm2当たり300の場所、1mm2当たり400の場所、1mm2当たり500の場所、1mm2当たり1,000の場所、またはそれ以上である。いくつかの例では、装置は、1mm2から約500mm2当たり約10の場所、1mm2から約400mm2当たり約25の場所、1mm2から約500mm2当たり約50の場所、1mm2から約500mm2当たり約100の場所、1mm2から約500mm2当たり約150の場所、1mm2から約250mm2当たり約10の場所、1mm2から約250mm2当たり約50の場所、1mm2から約200mm2当たり約10の場所、1mm2から約200mm2当たり約50の場所を含む。いくつかの例では、クラスター内の2つの隣接した場所の中心からの距離は、約10μmから約500μm、約10μmから約200μm、または約10μmから約100μmである。いくつかの例では、隣接した場所の2つの中心からの距離は、約10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmまたは100μmより長い。いくつかの例では、2つの隣接した場所の中心からの距離は、約200μm、150μm、100μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μmまたは10μm未満である。いくつかの例では、場所それぞれの幅は、約0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmまたは100μmである。いくつかの例では、場所はそれぞれ、約0.5μmから100μm、約0.5μmから50μm、約10μmから75μm、または約0.5μmから50μmの幅を有する。
【0118】
いくつかの例では、装置内のクラスターの密度は、100mm2当たり少なくともまたは約1のクラスター、10mm2当たり1のクラスター、5mm2当たり1のクラスター、4mm2当たり1のクラスター、3mm2当たり1のクラスター、2mm2当たり1のクラスター、1mm2当たり1のクラスター、1mm2当たり2のクラスター、1mm2当たり3のクラスター、1mm2当たり4のクラスター、1mm2当たり5のクラスター、1mm2当たり10のクラスター、1mm2当たり50のクラスター、またはそれ以上である。いくつかの例では、装置は、10mm2当たり約1のクラスターから1mm2当たり約10のクラスターを含む。いくつかの例では、2つの隣接したクラスターの中心からの距離は、約50μm、100μm、200μm、500μm、1000μm、2000μm、または5000μm未満である。いくつかの例では、2つの隣接したクラスターの中心からの距離は、約50μmから約100μm、約50μmから約200μmから、約50μmから約300μm、約50μmから約500μm、および約100μmから約2000μmである。いくつかの例では、2つの隣接したクラスターの中心からの距離は、約0.05mmから約50mm、約0.05mmから約10mm、約0.05mmから約5mm、約0.05mmから約4mm、約0.05mmから約3mm、約0.05mmから約2mm、約0.1mmから10mm、約0.2mmから10mm、約0.3mmから約10mm、約0.4mmから約10mm、約0.5mmから10mm、約0.5mmから約5mm、または約0.5mmから約2mmである。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約0.5~2mm、約0.5~1mm、または約1~2mmの1寸法に沿った直径または幅を有している。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2mmの1寸法に沿った直径または幅を有している。いくつかの例では、クラスターはそれぞれ、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.15、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2mmの1寸法のに沿った内部の直径または幅を有している。
【0119】
装置は、例えば、約100~200mm×約50~150mmの、およそ標準的な96ウェルプレートのサイズであり得る。いくつかの例では、装置は、約1000mm、500mm、450mm、400mm、300mm、250nm、200mm、150mm、100mmまたは50mm以下の直径を有している。いくつかの例では、装置の直径は、約25mmから1000mm、約25mmから約800mm、約25mmから約600mm、約25mmから約500mm、約25mmから約400mm、約25mmから約300mm、または約25mmから約200である。装置サイズの限定しない例は、約300mm、200mm、150mm、130mm、100mm、76mm、51mmおよび25mmを含む。いくつかの例では、装置は、少なくとも約100mm2;200mm2;500mm2;1,000mm2;2,000mm2;5,000mm2;10,000mm2;12,000mm2;15,000mm2;20,000mm2;30,000mm2;40,000mm2;50,000mm2またはそれ以上の平面の表面積を有している。いくつかの例では、装置の厚さは、約50mmから約2000mm、約50mmから約1000mm、約100mmから約1000mm、約200mmから約1000mm、または約250mmから約1000mmである。装置の厚さの非限定的な例は、275mm、375mm、525mm、625mm、675mm、725mm、775mm、および925mmを含む。いくつかの例では、装置の厚さは、直径によって変わり、基質の組成物に左右される。例えば、シリコン以外の物質を含む装置は、同じ直径のシリコン装置とは異なる厚さを有している。装置の厚さは、使用される物質の機械強度によって判定され、取り扱いの間に割れることなく、それ自体の重量を支えるのに十分に厚いものでなければならない。いくつかの例では、構造は、本明細書に記載される複数の装置を含む。
【0120】
表面物質
【0121】
表面を含む装置が本明細書で提供され、ここで、表面は、あらかじめ決められた位置で、および結果として生じる低いエラー率、低いドロップアウト率、高い収率、および高いオリゴ表現でのポリヌクレオチド合成を支持するために修飾される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるポリヌクレオチド合成のための装置の表面は、デノボポリヌクレオチド合成反応を支持するために、修飾可能な様々な物質から作られる。場合によっては、装置は十分に導電性であり、例えば、装置の全てまたは一部にわたって均一な電場を形成することができる。本明細書に記載される装置は可撓性材料を含むこともある。典型的な可撓性材料は、限定されないが、修飾ナイロン、非修飾ナイロン、ニトロセルロース、およびポリプロピレンなどを含む。本明細書に記載される装置は剛性材料を含むこともある。典型的な剛性材料は、限定されないが、ガラス、石英ガラス(fuse silica)、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、プラスチック(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびそれらの混合物など)、ならびに金属(例えば、金、白金など)を含む。本明細書で開示される装置は、シリコン、ポリスチレン、アガロース、デキストラン、セルロース系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ガラス、またはそれらの任意の組み合わせを含む材料から作られることもある。場合によっては、本明細書で開示される装置は、本明細書に列挙された材料または当該技術分野において知られている他の適切な材料の組み合わせで製造される。
【0122】
本明細書に記載される典型的な材料の引っ張り強度のリストは以下の通りである:ナイロン(70MPa)、ニトロセルロース(1.5MPa)、ポリプロピレン(40MPa)、シリコン(268MPa)、ポリスチレン(40MPa)、アガロース(1-10MPa)、ポリアクリルアミド(1-10MPa)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(3.9-10.8MPa)。本明細書に記載される固体の支持体は、1~300、1~40、1~10、1~5、または3~11MPaの引っ張り強度を有することができる。本明細書に記載された固体の支持体は、約1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、20、25、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、270、あるいはそれ以上のMPaの引っ張り強度を有することができる。いくつかの例では、本明細書に記載される装置は、テープまたはフレキシブルシートなどの連続的なループまたはリールに格納可能な可撓性材料の形態を取るポリヌクレオチド合成のための固体の支持体を含む。
【0123】
ヤング率は、荷重下での弾性(復元可能)変形に対する材料の耐性を測定する。本明細書に記載される典型的な材料の剛性のヤング率のリストは以下の通りである:ナイロン(3GPa)、ニトロセルロース(1.5GPa)、ポリプロピレン(2GPa)、シリコン(150GPa)、ポリスチレン(3GPa)m、アガロース(1-10GPa)、ポリアクリルアミド(1-10GPa)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(1-10GPa)。本明細書に記載される固体の支持体は、1~500、1~40、1~10、1~5、または3~11GPaのヤング率を有することができる。本明細書に記載される固体の支持体は、約1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、20、25、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、400、500GPa、あるいはそれ以上のヤング率を有することができる。軟性と剛性の関係は互いに逆であることから、可撓性材料は低ヤング率を有し、荷重下でその形状を大きく変化させる。
【0124】
場合によっては、本明細書で開示される装置は二酸化ケイ素の基部と酸化ケイ素の表層を含む。代替的に、装置は酸化ケイ素の基部を有することもある。ここで提供される装置の表面はテクスチャード加工されることもあり、ポリヌクレオチド合成のための全体的な表面積の増加をもたらす。本明細書で開示される装置は、少なくとも5%、10%、25%、50%、80%、90%、95%、または99%のシリコンを含むこともある。本明細書で開示される装置はシリコン・オン・インシュレーター(SOI)ウェーハから作られてもよい。
【0125】
本明細書で提供される基質、装置、およびリアクターは、本明細書に記載される方法および組成物に適したあらゆる様々な材料から作り上げられる。特定の事例では、低レベルのヌクレオチド結合を示すために、装置用の材料が作り上げられる。いくつかの例では、装置用の材料は、高レベルのヌクレオチド結合を示す別々の表面を生成するために修飾される。いくつかの例では、装置用の材料は、可視光および/またはUV光に対して透過性である。いくつかの例では、装置用の材料は、十分に導電性であり、例えば、基質のすべてまたは一部にわたって均一な電場を形成することができる。いくつかの例では、導電性材料は電気接地(electric ground)に接続される。いくつかの例では、装置は、熱伝導性であるかまたは断熱される。いくつかの例では、材料は、化学的または生化学的な反応、例えば、核酸合成反応プロセスを支持するために耐薬品性かつ耐熱性である。いくつかの例では、装置は可撓性材料を含む。可撓性材料は、限定されないが、修飾ナイロン、非修飾ナイロン、ニトロセルロース、ポリプロピレンなどを含む。いくつかの例では、装置は剛性材料を含む。剛性材料は、限定されないが、ガラス、石英ガラス(fuse silica)、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、プラスチック(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびそれらの混合物など)、および金属(例えば、金、白金など)を含む。いくつかの例では、装置は、シリコン、ポリスチレン、アガロース、デキストラン、セルロース系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ガラス、またはそれらの任意の組み合わせを含む材料から作り上げられる。いくつかの例では、装置は、本明細書にリストされた材料または当該技術分野において既知の他の適切な材料の組み合わせで製造される。
【0126】
表面のアーキテクチャ
【0127】
本明細書には、隆起したおよび/または陥没した特徴を含む装置が提供される。そのような特徴を有することの1つの利点は、核酸合成を支持する表面積の増加である。いくつかの例では、隆起したおよび/または陥没した特徴を有する装置は、三次元基質と呼ばれる。いくつかの例では、三次元装置は1つ以上のチャネルを含む。いくつかの例では、1つ以上の場所はチャネルを含む。いくつかの例では、チャネルは、核酸シンセサイザーなどの堆積装置によって試薬の堆積に利用可能である。いくつかの例では、試薬および/または流体は、1つ以上のチャネルと流体連通してより大きなウェルに集まる。例えば、装置は、クラスターを有する複数の場所に対応する複数のチャネルを含み、複数のチャネルは、クラスターの1つのウェルと流体連通している。いくつかの方法において、核酸のライブラリは、クラスターの複数の場所において合成される。
【0128】
いくつかの例では、その構造は、表面上の核酸合成に関する流れの制御と物質移動経路の制御を可能にするように構成されている。いくつかの例では、装置の構成は、核酸合成の間の物質移動経路、化学暴露時間、および/または洗浄効果の制御と均一な分布可能にする。いくつかの例では、装置の構成は、例えば、成長している核酸によって排除された容積が、核酸の成長に利用可能なまたは適切な最初に利用可能な容積の50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%以上を占めないように核酸の成長に十分な容積を提供することによって、掃攻率の増大を可能にする。いくつかの例では、三次元構造は、化学暴露の急速な交換を可能にするために流体の流れの管理を可能にする。
【0129】
本明細書には、1fM、5fM、10fM、25fM、50fM、75fM、100fM、200fM、300fM、400fM、500fM、600fM、700fM、800fM、900fM、1pM、5pM、10pM、25pM、50pM、75pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、900pM、またはそれ以上の量のDNAを合成する方法が提供される。いくつかの例では、ポリヌクレオチドライブラリーは、遺伝子の約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の長さに及ぶことがある。遺伝子は、約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、または100%まで変異することがある。
【0130】
同一でない核酸はまとめて、遺伝子の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、または100%に対する配列をコードし得る。いくつかの例では、核酸は、遺伝子の50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の配列をコードし得る。いくつかの例では、核酸は、遺伝子の80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の配列をコードし得る。
【0131】
いくつかの例では、物理構造によって分離が達成される。いくつかの例では、核酸合成に対する能動領域および受動領域を発生させる表面の差次的な官能基化によって、分離が達成される。差次的な官能基化は、装置表面の疎水性を交互に替えることによっても達成され、それにより、水接触角の効果を作り出し、これが堆積した試薬を玉のようにつなげたり(beading)濡らしたりする。より大きな構造を利用することで、飛び散り(splashing)や、隣接するスポットの試薬を用いる別の核酸合成位置の相互汚染を減らすことができる。いくつかの例では、核酸シンセサイザーなどの装置は、別々の核酸合成位置に試薬を堆積させるために使用される。三次元の特徴を有する基質は、低いエラー率(例えば、約1:500、1:1000、1:1500、1:2,000、1:3,000、1:5,000、または1:10,000未満)で多くの核酸(例えば、約10,000を超える)の合成を可能にする方法で構成される。いくつかの例では、装置は、1mm2当たり約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400または500、またはそれを超える特徴の密度で特徴を含む。
【0132】
装置のウェルは、基質の別のウェルと同じまたは異なる幅、高さ、および/または量を有し得る。装置のチャネルは、基質の別のチャネルと同じまたは異なる幅、高さ、および/または量を有し得る。いくつかの例では、クラスターの幅は、約0.05mmから約50mm、約0.05mmから約10mm、約0.05mmから約5mm、約0.05mmから約4mm、約0.05mmから約3mm、約0.05mmから約2mm、約0.05mmから約1mm、約0.05mmから約0.5mm、約0.05mmおから0.1mm、約0.1mmから10mm、約0.2mmから10mm、約0.3mmから約10mm、約0.4mmから約10mm、約0.5mmから10mm、約0.5mmから約5mm、または約0.5mmから約2mmである。いくつかの例では、クラスターを含むウェルの幅は、約0.05mmから約50mm、約0.05mmから約10mm、約0.05mmから約5mm、約0.05mmから約4mm、約0.05mmから約3mm、約0.05mmから約2mm、約0.05mmから約1mm、約0.05mmから約0.5mmから、約0.05mmから約0.1mm、約0.1mmから10mm、約0.2mmから10mm、約0.3mmから約10mm、約0.4mmから約10mm、約0.5mmからの10mm、約0.5mmから約5mm、または約0.5mmおよび約2mmである。いくつかの例では、クラスターの幅は、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、0.1mm、0.09mm、0.08mm、0.07mm、0.06mmまたは0.05mm未満である。いくつかの例では、クラスターの幅は、約1.0から1.3mmである。いくつかの例では、クラスターの幅は約1.150mmである。いくつかの例では、ウェルの幅は、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、0.1mm、0.09mm、0.08mm、0.07mm、0.06mmまたは0.05mm未満である。いくつかの例では、ウェルの幅は、約1.0から1.3mmである。いくつかの例では、ウェルの幅は約1.150mmである。いくつかの例では、クラスターの幅は約0.08mmである。いくつかの例では、ウェルの幅は約0.08mmである。クラスターの幅は、二次元または三次元の基質内のクラスターを指すことがある。
【0133】
いくつかの例では、ウェルの高さは、約20μmから約1000μm、約50μmから約1000μm、約100μmから約1000μm、約200μmから約1000μm、約300μmから約1000μm、約400μmから約1000μm、または約500μmから約1000μmである。いくつかの例では、ウェルの高さは、約1000μm未満、約900μm未満、約800μm未満、約700μm未満、または約600μm未満である。
【0134】
いくつかの例では、装置は、クラスター内の複数の場所に対応する複数のチャネルを含み、チャネルの高さまたは深さは、約5μmから約500μm、約5μmから約400μm、約5μmから約300μm、約5μmから約200μm、約5μmから約100μm、約5μmから約50μm、または約10μmから約50μmである。いくつかの例では、チャネルの高さは、100μm未満、80μm未満、60μm未満、40μm未満または20μm未満である。
【0135】
いくつかの例では、チャネル、場所(例えば、実質的に平面の基板における)またはチャネルおよび場所の両方(例えば、場所がチャネルに対応する三次元構造装置における)の直径は、約1μmから約1000μm、約1μmから約500μm、約1μmから約200μm、約1μmから約100μm、約5μmから約100μm、または約10μmから約100μm、例えば、約90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、または10μmである。いくつかの例では、チャネル、場所、またはチャネルと場所の両方の直径は、約100μm、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、または10μm未満である。いくつかの例では、2つの隣接チャネル、場所、またはチャネルと場所の中心からの距離は、約1μmから約500μm、約1μmから約200μm、約1μmから約100μm、約5μmから約200μm、約5μmから約100μm、約5μmから約50μm、または約5μmから約30μm、例えば、約20μmである。
【0136】
表面修飾
【0137】
様々な例において、装置表面あるいは装置表面の選択された部位または領域の1つ以上の化学的および/または物理的な特性を変更するための加算的プロセスまたは減算的プロセスによって、表面の化学的および/または物理的な変さらに、表面修飾が利用される。例えば、表面修飾は、限定されないが、(1)表面の湿潤性を変更すること、(2)表面を官能化すること、つまり、表面官能基を提供する、修飾する、または置換すること、(3)表面を脱官能基化すること、つまり、表面官能基を除去すること、(4)そうでなければ、例えばエッチングによって、表面の化学組成を変更すること、(5)表面粗さを増大または低減すること、(6)表面上にコーティング、例えば、表面の湿潤性とは異なる湿潤性を示すコーティングを提供すること、および/または(7)表面上に粒子を堆積させることを含む。
【0138】
いくつかの例では、表面の上部の化学層(接着促進剤と呼ばれる)の追加は、基質の表面の場所の構造化したパターン化を促進する。接着促進の適用のための典型的な表面は、限定されないが、ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、および窒化ケイ素を含む。いくつかの例では、接着促進剤は、高い表面エネルギーを有する化学物質である。いくつかの例では、基質の表面上に第2の化学層が堆積される。いくつかの例では、第2の化学層は、低い表面エネルギーを有している。いくつかの例では、表面上にコーティングされた化学層の表面エネルギーは、液滴の局在化を支持する。選択されるパターン化の配置によって、場所の接近および/または場所での流体接触の領域は変更可能である。
【0139】
いくつかの例では、例えば、核酸合成のために、核酸または他の部分が堆積する装置表面または分解された場所は、滑らかであるか、実質的に平面であり(例えば、二次元)、あるいは隆起したまたは陥没した特徴(例えば、三次元の特徴)などの不規則性を有している。いくつかの例では、装置表面は、化合物の1つ以上の異なる層で修飾される。対象のそのような修飾層は、限定されないが、金属、金属酸化物、ポリマー、小さな有機分子などの無機層および有機層を含む。非限定的なポリマー層は、ペプチド、タンパク質、核酸またはそれらの模倣物(例えば、ペプチド核酸など)、多糖類、リン脂質、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンアミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアセテート、および本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野に既知の他の適切な化合物を含む。いくつかの例では、ポリマーは ヘテロポリマーである。いくつかの例では、ポリマーはホモポリマーである。いくつかの例では、ポリマーは、官能性部分を含むかまたは結合される。
【0140】
いくつかの例では、装置の分解された場所は、表面エネルギーを増大させるおよび/または低減する1つ以上の部分で官能基化される。いくつかの例では、ある部分は化学的に不活性である。いくつかの例では、ある部分は、望ましい化学反応、例えば、核酸合成反応における1つ以上のプロセスを支持するように構成されている。表面の表面エネルギー、すなわち、疎水性は、表面上へ接着するヌクレオチドの親和性を決定するための因子である。いくつかの例では、装置の官能基化に対する方法は、(a)二酸化ケイ素を含む表面を有する装置を提供する工程;および(b)本明細書に記載されるまたはそうでなければ当該技術分野で既知の適切なシラン化剤、例えば、有機官能性アルコキシシラン分子を使用して、表面をシラン処理する工程を含む。
【0141】
いくつかの例では、有機官能性アルコキシシラン分子は、ジメチルクロロ-オクトデシル-シラン、メチルジクロロ-オクトデシル-シラン、トリクロロ-オクトデシル-シラン、トリメチル-オクトデシル-シラン、トリエチル-オクトデシル-シラン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、装置の表面は、ポリエチレン/ポリプロピレン(ガンマ線照射またはクロム酸酸化、およびヒドロキシアルキル表面への還元によって官能基化された)、高度に架橋されたポリスチレン-ジビニルベンゼン(クロロメチル化によって誘導体化され、ベンジルアミン官能面にアミノ化された)、ナイロン(末端のアミノヘキシル基は直接反応性である)で官能基化されるか、または還元されたポリテトラフルオロエチレンでエッチングされる。他の方法および官能化剤は、米国特許第5,474,796号に記載され、これは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0142】
いくつかの例では、装置の表面は、典型的に装置の表面上に存在する反応性の親水性部分を介して、装置の表面にシランを結合するのに有効な反応条件下で、シランの混合物を含有する誘導体化組成物との接触によって官能基化される。シラン処理は、一般に、自己組織化を介して有機官能性アルコキシシラン分子で表面を覆う。
【0143】
当該技術分野において現在知られているように、例えば、表面エネルギーを低下させるまたは増大させるのための様々なシロキサン官能基化試薬をさらに使用することができる。有機官能性アルコキシシランは、それらの有機官能に従って分類され得る。
【0144】
本明細書には、ヌクレオシドに結合することができる薬剤のパターン化を含み得る装置が提供される。いくつかの例では、装置は、活性薬剤でコーティングされてもよい。いくつかの例では、装置は、受動剤(passive agent)でコーティングされてもよい。本明細書に記載されるコーティング材料への封入のための例示的な活性薬剤は、限定されないが、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシブチルアミド(HAPS)、11-アセトキシウンデシルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GOPS)、3-ヨード-プロピルトリメトキシシラン、ブチル-アルデヒドロ-トリメトキシシラン、二量体の2級アミノアルキルシロキサン、(3-アミノプロピル)-ジエトキシ-メチルシラン、(3-アミノプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、および、(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、グリシドキシ-トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン、3-4エポキシシクロヘキシル-エチルトリメトキシシラン、および、(3-メルカプトプロピル)-メチル-ジメトキシシラン、アリルトリクロロクロロシラン、7-オクタ-1-エニルトリクロロクロロシラン、あるいはビス(3-トリメトキシシリルプロピルアミンを含む。
【0145】
本明細書に記載されるコーティング材料に含まれる典型的な受動剤は、限定されないが、ペルフロオロオクチルトリクロロシラン;トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン;1H,1H,2H,2H-フルオロオクチルトリエトキシシラン(FOS);トリクロロ(1H,1H,2H,2H -ペルフロオロオクチル)シラン;tert-ブチル-[5-フルオロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)インドール-1-イル]-ジメチル-シラン;CYTOP(商標);フロリナート(商標);ペルフロオロオクチルトリクロロシラン(PFOTCS);ペルフロオロオクチルジメチルクロロシラン(PFODCS);ペルフロオロデシルトリエトキシシラン(PFDTES);ペンタフルオロフェニル-ジメチルプロピルクロロ-シラン(PFPTES);ペルフロオロオクチルトリエトキシシラン;ペルフロオロオクチルトリメトキシシラン;オクチルクロロシラン;ジメチルクロロ-オクトデシル-シラン;メチルジクロロ-オクトデシル-シラン;トリクロロ-オクトデシル-シラン;トリメチル-オクトデシル-シラン;トリエチル-オクトデシル-シラン;または、オクタデシルトリクロロシランを含む。
【0146】
いくつかの例では、官能基化剤は、オクタデシルトリクロロシランなどの炭化水素シランを含む。いくつかの例では、官能基化剤は、11-アセトキシウンデシルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピル/トリメトキシシランおよびN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシブチルアミドを含む。
【0147】
ポリヌクレオチド合成
【0148】
核酸合成のための本開示の方法は、ホスホラミダイトの化学作用を含むプロセスを含み得る。いくつかの例では、核酸合成は、塩基をホスホラミダイトと結合することを含む。核酸合成は、結合条件下でホスホラミダイトの堆積によって塩基を結合することを含んでもよく、ここで、同じ塩基が、随意に、1回を超えて、すなわち、二重の結合でホスホラミダイトとともに堆積される。核酸合成は、未反応の部位のキャッピングを含んでもよい。いくつかの例では、キャッピングは随意である。核酸合成はまた、酸化または酸化工程を含んでもよい。核酸合成は、非ブロック化、脱トリチル化、および硫化を含んでもよい。いくつかの例では、核酸合成は、酸化または硫化のいずれかを含む。いくつかの例では、核酸合成反応中の1つまたは各々の工程間で、装置は、例えば、テトラゾールまたはアセトニトリルを使用して洗浄される。ホスホラミダイト合成方法における任意の1工程に対する時間枠は、約2分、1分、50秒、40秒、30秒、20秒および10秒未満であり得る。
【0149】
ホスホラミダイト方法を使用する核酸合成は、亜リン酸塩トリエステル結合の形成のために成長している核酸鎖へのホスホラミダイト建築ブロック(例えば、ヌクレオシドホスホラミダイト)のその後の追加を含んでもよい。ホスホラミダイト核酸合成は、3’方向から5’方向に進む。ホスホラミダイト核酸合成は、1つの合成サイクル当たり、成長している核酸鎖への1つのヌクレオチドの制御された追加を可能にする。いくつかの例では、各合成サイクルは結合工程を含む。ホスホラミダイト結合は、活性化されたヌクレオシドホスホラミダイトと、例えばリンカーを介して基質に結合されたヌクレオシドとの間の亜リン酸塩トリエステル結合の形成を含む。いくつかの例では、ヌクレオシドホスホラミダイトは、起動された装置に提供される。いくつかの例では、ヌクレオシドホスホラミダイトは、アクチベーター(activator)で装置に提供される。いくつかの例では、ヌクレオシドホスホラミダイトは、基質に結合されたヌクレオシドよりも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100倍、またはそれ以上の過剰量で、装置に提供される。いくつかの例では、ヌクレオシドホスホラミダイトの追加は、無水環境において、例えば、無水アセトニトリルにおいて実行される。ヌクレオシドホスホラミダイトの追加に続いて、装置は随意に洗浄される。いくつかの例では、結合工程は、随意に、基質へのヌクレオシドホスホラミダイトの追加間の洗浄工程とともに、追加で1回以上の繰り返される。いくつかの例では、本明細書で使用される核酸合成方法は、1、2、3、またはそれ以上の連続する結合工程を含む。結合前に、多くの場合において、装置に結合されたヌクレオシドは、保護基の除去によって脱保護され、ここで、保護基は重合を防ぐように機能する。一般的な保護基は、4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)である。
【0150】
結合の後、ホスホラミダイト核酸合成方法は、随意にキャッピング工程を含む。キャッピング工程では、成長している核酸は、キャッピング剤で処置される。キャッピング工程は、更なる鎖伸長からの結合後に未反応の基質に結合した5’-OH基をブロックするのに有用であり、これによって、内部塩基欠失(internal base deletions)を伴う核酸の形成を防ぐ。さらに、1H-テトラゾールで活性化されたホスホラミダイトは、小さい程度まで、グアノシンのO6位置と反応し得る。理論に縛られることなく、I2/水での酸化で、この副産物は、恐らくO6-N7遊走を介して、脱プリン化を受けることもある。脱プリン部位は、結局、ポリヌクレオチドの最終的な脱保護の間に切断され、したがって、完全長の産物の収率を低下させる。O6修飾は、I2/水での酸化前にキャッピング試薬による処置によって除去され得る。いくつかの例では、核酸合成の間にキャッピング工程を含めることで、キャッピングなしでの合成と比較して、エラー率は低下する。一例として、キャッピング工程は、無水酢酸と1-メチルイミダゾールとの混合物で、基質に結合した核酸を処置することを含む。キャッピング工程に続いて、装置は随意に洗浄される。
【0151】
いくつかの例では、ヌクレオシドホスホラミダイトの追加後に、および随意にキャッピングおよび1以上の洗浄工程後に、装置に結合した成長している核酸は酸化される。酸化工程は、亜リン酸塩トリエステルが、自然発生のリン酸ジエステルのヌクレオシド間の結合の保護された前駆体である、四配位リン酸塩トリエステルへと酸化される。いくつかの例では、成長している核酸の酸化は、随意に弱塩基(例えば、ピリジン、ルチジン、コリジン)の存在下で、ヨウ素および水による処置によって達成される。酸化は、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシドまたは(1S)-(+)-(10-カンファースルホニル)-オキサジリジン(CSO)を使用して、無水条件下で実行され得る。いくつかの方法では、キャッピング工程は、酸化に続いて実行される。持続し得る酸化からの残留水がその後の結合を阻害することができるため、第2のキャッピング工程は装置の乾燥を可能にする。酸化後に、装置と成長している核酸は、随意に洗浄される。いくつかの例では、酸化の工程は、ポリヌクレオチドホスホロチオエートを得る硫化工程に置き換えられ、ここで、キャッピング工程は硫化後に実行され得る。限定されないが、3-(ジメチルアミノメチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン、DDTT、Beaucage試薬としても知られている3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド、およびN,N,N’N’テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)を含む、多くの試薬が、効率的な硫黄移動を行うことができる。
【0152】
ヌクレオシド取り込みのその後のサイクルが結合を介して生じるようにするために、装置に結合した成長している核酸の保護された5’末端は除去され、その結果、一次ヒドロキシル基が次のヌクレオシドホスホラミダイトと反応する。いくつかの例では、保護基はDMTであり、非ブロック化が、ジクロロメタン中でトリクロロ酢酸とともに生じる。長時間にわたる、または推奨された酸の溶液よりも強力な脱トリチル化を行うことで、固体の支持体に結合したポリヌクレオチドの脱プリン化の増大につながり、ゆえに、望ましい完全長の産物の収率を低下させることがある。本明細書に記載される開示の方法および組成物は、望ましくない脱プリン化反応を制限する制御された非ブロック化条件を提供する。いくつかの例では、装置に結合した核酸は、非ブロック化後に洗浄される。いくつかの例では、非ブロック化後の効率的な洗浄は、低いエラー率を有する合成された核酸に寄与する。
【0153】
核酸の合成のための方法は、典型的には以下の工程の一連の繰り返し(iterating sequence)を含む:活性化された表面、リンカー、または以前に脱保護された単量体と結合するために、保護された単量体の活発に官能化された表面(例えば場所)への適用;後に適用される保護された単量体と反応するような、適用された単量体の脱保護;および結合のための別の保護された単量体の適用。1以上の中間工程は、酸化または硫化を含む。いくつかの例では、1以上の洗浄工程は、工程の1つまたはすべてに先行するかまたはそれらに続く。
【0154】
ホスホラミダイトベースの核酸合成のための方法は、一連の化学的なステップを含む。いくつかの例では、合成方法の1以上の工程は、試薬のサイクリングを含み、ここで、方法の1以上の工程は、工程に有用な試薬の装置への適用を含む。例えば、試薬は、一連の液体堆積および真空乾燥の工程によって循環させられる。ウェル、マイクロウェル、チャネルなどの三次元の特徴を含む基質のために、試薬は、随意にウェルおよび/またはチャネルを介して装置の1つ以上の領域に通される。
【0155】
本明細書に記載される方法およびシステムは、ポリヌクレオチドの合成のためのポリヌクレオチド合成装置に関する。合成は平行して行われ得る。例えば、少なくともまたはおよそ少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、10000、50000、75000、100000、またはそれ以上のポリヌクレオチドが平行して合成可能である。平行して合成され得る核酸の総数は、2-100000、3-50000、4-10000、5-1000、6-900、7-850、8-800、9-750、10-700、11-650、12-600、13-550、14-500、15-450、16-400、17-350、18-300、19-250、20-200、21-150、22-100、23-50、24-45、25-40、30-35の間であり得る。当業者は、平行して合成されたポリヌクレオチドの総数が、これらの値のいずれかによって制約される任意の範囲内(例えば25-100)に含まれ得ることを認識する。平行して合成されたポリヌクレオチドの総数は、範囲のエンドポイントとして機能する値のいずれかによって定義された任意の範囲内に含まれ得る。装置内で合成されたポリヌクレオチドの総モル質量またはポリヌクレオチドの各々のモル質量は、少なくともまたは少なくとも約10、20、30、40、50、100、250、500、750、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、25000、50000、75000、100000ピコモル、またはそれ以上であり得る。装置内のポリヌクレオチドの各々の長さまたはポリヌクレオチドの平均長は、少なくともまたは少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、300、400、500のヌクレオチド、またはそれ以上であり得る。装置内のポリヌクレオチドの各々の長さまたはポリヌクレオチドの平均長は、長くてもまたは長くても約500、400、300、200、150、100、50、45、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10のヌクレオチド、またはそれ以下であり得る。装置内のポリヌクレオチドの各々の長さまたはポリヌクレオチドの平均長は、10-500、9-400、11-300、12-200、13-150、14-100、15-50、16-45、17-40、18-35、19-25の間であり得る。当業者は、装置内のポリヌクレオチドの各々の長さまたはポリヌクレオチドの平均長が、これらの値のいずれかによって制約される任意の範囲内(例えば、100-300)に含まれ得ることを認識する。装置内のポリヌクレオチドの各々の長さまたはポリヌクレオチドの平均長は、範囲のエンドポイントとして機能する値のいずれかによって定義された任意の範囲内に含まれ得る。
【0156】
本明細書で提供される表面上での核酸合成の方法は、高速での合成を可能にする。一例として、1時間につき少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45 50、55、60、70、80、90、100、125、150、175、200のヌクレオチド、またはそれ以上が合成される。ヌクレオチドは、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウリジンの構築ブロック、またはそれらのアナログ/修飾されたバージョンを含む。いくつかの例において、核酸のライブラリーは基質上で平行して合成される。例えば、約または少なくとも約100;1,000;10,000;30,000;75,000;100,000;1,000,000;2,000,000;3,000,000;4,000,000;または5,000,000の分解された場所を含む装置は少なくとも同じ数の別個の核酸の合成を支援することができ、ここで、別個の配列をコードする核酸は分解された場所で合成される。いくつかの例において、核酸のライブラリーは、約3か月、2か月、1か月、3週、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、24時間未満、またはそれ以下で、本明細書に記載される低いエラー率で装置上で合成される。いくつかの例において、本明細書に記載される基質および方法を用いて低いエラー率で合成される核酸ライブラリーから組み立てられる大きな核酸は、約3か月、2か月、1か月、3週、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、24時間未満、またはそれ以下で調製される。
【0157】
いくつかの例において、本明細書に記載される方法は、複数のコドン部位にて異なる変異体核酸を含む、核酸のライブラリーの生成をもたらす。いくつかの例において、核酸は、1つの部位、2つの部位、3つの部位、4つの部位、5つの部位、6つの部位、7つの部位、8つの部位、9つの部位、10の部位、11の部位、12の部位、13の部位、14の部位、15の部位、16の部位、17の部位、18の部位、19の部位、20の部位、30の部位、40の部位、50の部位、またはそれ以上の部位の変異体コドン部位を有し得る。
【0158】
いくつかの例において、変異体コドン部位の1以上の部位は隣接することがある。変異体コドン部位の1以上の部位は隣接しないこともあり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のコドンによって分離されることもある。
【0159】
いくつかの例において、核酸は変異体コドン部位の複数の部位を含むことがあり、ここで、変異体コドン部位は互いに隣接しており、一続きの変異体コドン部位を形成する。いくつかの例において、核酸は変異体コドン部位の複数の部位を含み得、ここで、変異体コドン部位は互いに隣接していない。いくつかの例において、核酸は変異体コドン部位の複数の部位を含み得、ここで、変異体コドン部位は互いに隣接しており、一続きの変異体コドン部位を形成し、変異体コドン部位の一部は互いに隣接していない。
【0160】
図面を参照すると、
図12は、より短い核酸からの核酸(例えば遺伝子)の合成のための例示的なプロセスのワークフローを示す。ワークフローは通常、以下の段階に分けられる:(1)一本鎖核酸ライブラリーのデノボ合成、(2)より大きな断片を形成するための核酸の結合、(3)エラー補正、(4)品質管理、および(5)輸送。デノボ合成の前に、意図した核酸配列、または核酸配列の群が、あらかじめ選択される。例えば、遺伝子の群が生成のためにあらかじめ選択される。
【0161】
いったん、生成のためにより大きな核酸が選択されると、核酸のあらかじめ決められたライブラリーがデノボ合成のために設計される。高密度の核酸を生成するための様々な適切な方法が知られている。ワークフローの例において、装置の表層(1201)が提供される。この例において、表面の化学的性質(chemistry)は、核酸合成プロセスを改善するために変異する。低い表面エネルギーの領域が液体を弾くために生成され、一方で高い表面エネルギーの領域が液体を引き付けるために生成される。表面自体は、平坦な表面の形であり、または、表面積を増大させる突起またはマイクロウェルなどの形状の変形を含み得る。ワークフローの例において、全体において参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO/2015/021080に開示されるように、選択された高い表面エネルギー分子は、DNAの化学的性質を支援する二元機能に役立つ。
【0162】
核酸アレイのインサイツの調製は、固体の支持体上で生成され、平行して複数のオリゴマーを伸長させるために単一のヌクレオチド伸長プロセスを利用する。核酸シンセサイザーなどの材料堆積装置は、段階的な様式で試薬を放出するように設計され、その結果、複数の核酸が平行して、一度に1つの残基を伸長させ、それによりあらかじめ決められた核酸配列(1202)を持つオリゴマーを生成する。いくつかの例において、核酸はこの段階で表面から切断される。切断は、例えばアンモニアまたはメチルアミンによる気相切断(gas cleavage)を含む。
【0163】
生成された核酸ライブラリーは反応チャンバに配される。この例示的なワークフローにおいて、反応チャンバ(「ナノリアクター」とも呼ばれる)は、シリコンでコーティングされたウェルであり、PCR試薬を含み、核酸ライブラリー(1203)へ降りる。核酸の密閉(1204)の前または後に、試薬を加えて、基質から核酸を放出させる。例示的なワークフローにおいて、核酸は、ナノリアクターの密閉後に放出される(1205)。いったん放出されると、一本鎖核酸の断片は、DNAの完全長範囲の配列に広がるためにハイブリダイズする。合成された核酸がそれぞれ、プールにある少なくとも1つの他の核酸と重なる小さな部分を持つように設計されるため、部分的なハイブリダイゼーション(1205)が可能となる。
【0164】
ハイブリダイゼーション後、PCA反応が始まる。ポリメラーゼサイクル中、核酸は相補的断片にアニーリングされ、ギャップはポリメラーゼにより満たされる。各サイクルは、どの核酸が互いに見出されるかに無作為に依存して、様々な断片の長さを増加させる。断片の中での相補性は、二本鎖DNAの完全な大きな全長の形成を可能にする(1206)。
【0165】
PCAが完了した後、ナノリアクターは装置から分離され(1207)、PCRのためのプライマーを持つ装置との相互作用のために位置付けられる(1208)。密閉後、ナノリアクターはPCRにさらされ(1209)、より大きな核酸が増幅される。PCR(1210)の後、ナノチャンバが開放され(1211)、エラー補正試薬が加えられ(1212)、チャンバは密封され(1213)、エラー補正反応が生じて、二本鎖PCR増幅生成物からの相補性が乏しいミスマッチ塩基対および/または鎖を取り除く(1214)。ナノリアクターが開放されて分離される(1215)。エラーを補正した生成物は次に、PCRおよび分子バーコーディングなどの付加的な処理工程にさらされ、その後輸送(1223)のために包装される(1222)。
【0166】
いくつかの例において、品質管理手段が取られる。エラー補正の後、品質管理工程は、例えば、エラーを補正した生成物の増幅のための配列決定プライマーを持つがあるウェーハとの相互作用(1216)、エラーを補正した増幅生成物を含むチャンバにウェーハを密封すること(1217)、および、更なる回数の増幅を行うこと(1218)を含む。ナノリアクターは開放され(1219)、生成物はプールされ(1220)、配列決定される(1221)。許容可能な品質管理の決定が行われた後、包装された生成物(1222)は輸送(1223)を承認される。
【0167】
いくつかの例において、
図12のものようなワークフローによって生成される核酸は、本明細書に開示される重複プライマーを使用した突然変異誘発にさらされる。いくつかの例において、プライマーのライブラリーは、固体の支持体上でインサイツの調製により生成され、平行して複数のオリゴマーを伸長させるための単一のヌクレオチド伸長プロセスを利用する。核酸シンセサイザーなどの堆積装置は、段階的な様式で試薬を放出するように設計され、その結果、複数の核酸が平行して、一度に1つの残基を伸長させ、それによりあらかじめ決められた核酸配列を持つオリゴマーを生成する(1202)。
【0168】
コンピュータシステム
【0169】
本明細書に記載されるシステムのいずれかがコンピュータに操作可能に接続され、局所的にまたは遠隔的にコンピュータを介して自動化され得る。様々な例において、本開示の方法およびシステムはさらに、コンピュータシステム上にソフトウェアプログラム、およびその使用を含み得る。従って、材料堆積装置の動作、分配行為、および減圧の作動を編成および同期するなど、機能の分配/減圧/再充填の同期のためのコンピュータ制御は、本開示の範囲内にある。コンピューターシステムは、ユーザーに指定された塩基配列と材料堆積装置の位置との間に干渉するようにプログラムされ、基質の指定された領域に正確な試薬を送達する。
【0170】
図13で例証されるコンピュータシステム(1300)は、媒体(1311)および/またはネットワークポート(1305)(固定された媒体(1312)を持つサーバー(1309)に随意に接続可能)からの命令を読み出すことが可能な、論理的な装置として理解され得る。
図13に示されるものなどのシステムは、CPU(1301)、ディスクドライブ(1303)、キーボード(1315)および/またはマウス(1316)などの随意の入力装置、および随意のモニター(1307)を含み得る。データ通信は指示された通信媒体を介して局所位置または遠隔位置のサーバーに対して達成され得る。通信媒体は、データを送信および/または受信する任意の手段を含み得る。例えば、通信媒体は、ネットワーク接続、無線接続、またはインターネット接続であり得る。そのような接続は、ワールド・ワイド・ウェブ上での通信を提供することができる。本開示に関するデータは、
図13に示されるようにパーティー(1322)による受理および/または検討のためにそのようなネットワークまたは接続によって伝達され得る。
【0171】
図14は、本開示の例と関連して使用可能なコンピュータシステム(1400)の第1の例のアーキテクチャを示すブロック図である。
図14に表されるように、例のコンピュータシステムは、命令を処理するためのプロセッサ(1402)を含むことができる。プロセッサの非限定的な例は、以下を含む:Intel Xeon(商標)プロセッサ、AMD Opteron(商標)プロセッサ、Samsung 32-bit RISC ARM 1176JZ(F)-S v1.0(商標)プロセッサ、ARM Cortex-A8 Samsung S5PC100(商標)プロセッサ、ARM Cortex-A8 Apple A4(商標)プロセッサ、Marvell PXA 930(商標)プロセッサ、または機能的に同等なプロセッサ。実行の複数のスレッドが並列処理に使用可能である。いくつかの例において、複数のプロセッサ、または複数のコアを持つプロセッサも、単一のコンピュータシステム中であろうと、クラスターの中であろうと、または、複数のコンピュータ、携帯電話、および/または個人用携帯情報端末装置を含むネットワーク上のシステムにわたって分布されても、使用可能である。
【0172】
図14に示されるように、高速キャッシュ(1404)は、プロセッサ(1402)に接続するか、またはその中に組み込まれることで、プロセッサ(1402)により近年使用されてきたまたは頻繁に使用されている命令またはデータのための高速メモリを提供することができる。プロセッサ(1402)は、プロセッサバス(1408)によりノースブリッジ(1406)に接続される。ノースブリッジ(1406)は、メモリバス(1412)によりランダムアクセスメモリ(RAM)(1410)に接続され、プロセッサ(1402)によりRAM(1410)へのアクセスを管理する。ノースブリッジ(1406)も、チップセットバス(1416)によりサウスブリッジ(1414)に接続される。サウスブリッジ(1414)は次に、周辺バス(1418)に接続される。周辺バスは、例えば、PCI、PCI-X、PCI Express、または他の周辺バスであり得る。ノースブリッジとサウスブリッジはしばしばプロセッサチップセットと呼ばれ、周辺バス(1418)上でプロセッサと、RAMと、周辺コンポーネントとの間のデータ転送を管理する。いくつかの代替的なアーキテクチャにおいて、ノースブリッジの機能性は、別個のノースブリッジチップを使用する代わりにプロセッサに組み込まれ得る。いくつかの例においては、システム(1400)は、周辺バス(1418)に取り付けられるアクセラレータカード(1422)を含み得る。アクセラレータは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または特定の処理を促進するための他のハードウェアを含み得る。例えば、アクセラレータは、適応データの再構築のために、または、拡張設定処理に使用される代数式を評価するために使用可能である。
【0173】
ソフトウェアとデータは、外部記憶装置(1424)に記憶され、プロセッサにより使用されるRAM(1410)および/またはキャッシュ(1404)へとロードされ得る。システム(1400)は、システムリソースの管理のためのオペレーティングシステムを含み;オペレーティングシステムの非限定的な例は、以下を含む:Linux(登録商標)、Windows(商標)、MACOS(商標)、BlackBerry OS(商標)、iOS(商標)、および他の機能的に同等なOS、同様に、本開示の例に従ってデータの記憶と最適化を管理するためのオペレーティングシステム上で実行するアプリケーションソフトウェア。この例において、システム(1400)はさらに、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、および分配された並列処理に使用され得る他のコンピュータシステムなどの外部記憶装置にネットワークインターフェースを提供するために、周辺バスに接続されるネットワークインターフェースカード(NIC)(1420)および(1421)を含む。
【0174】
図15は、複数のコンピュータシステム(1502a)および(1502b)、複数の携帯電話および個人用携帯情報端末(1502c)、並びにネットワーク接続ストレージ(NAS)(1504a)および(1504b)を含むネットワーク(1500)を示す略図である。例において、システム(1502a)、(1502b)、および(1502c)は、データ記憶を管理し、ネットワーク接続ストレージ(NAS)(1504a)および(1504b)に記憶されたデータに対するデータアクセスを最適化することができる。数学モデルはこのデータに対して使用され、コンピュータシステム(1502a)および(1502b)、並びに携帯電話および個人用携帯情報端末システム(1502c)にわたって分配された並列処理を使用して評価され得る。コンピュータシステム(1502a)および(1502b)、並びに携帯電話および個人用携帯情報端末システム(1502c)はさらに、ネットワーク接続ストレージ(NAS)(1504a)および(1504b)に記憶されたデータの適応性のあるデータ再構築に対して並列処理を提供することができる。
図15は一例のみを示しており、様々な他のコンピュータのアーキテクチャおよびシステムは、本開示の様々な例と共に使用され得る。例えば、ブレードサーバーは並列処理を提供するために使用され得る。プロセッサブレードは、並列処理を提供するためにバックプレーンを介して接続可能である。ストレージも、バックプレーンに接続され得るか、または別のネットワークインターフェースを介してネットワーク接続ストレージ(NAS)として接続可能である。いくつかの例において、プロセッサは、別個のメモリ空間を維持し、ネットワークインターフェース、バックプレーン、または他のプロセッサによる並列処理のための他のコネクターを通じてデータを伝達することができる。他の例において、プロセッサのいくつかまたは全てが、共有仮想アドレスメモリ空間を使用することができる。
【0175】
図16は、例に従って共有仮想アドレスメモリ空間を使用するマルチプロセッサコンピュータシステム(1600)のブロック図である。システムは、共有メモリサブシステム(1604)にアクセス可能な複数のプロセッサ(1602a-f)を含む。システムは、メモリサブシステム(1604)に複数のプログラマブルハードウェアのメモリアルゴリズムプロセッサ(MAP)(1606a-f)を組み込む。MAP(1606a-f)は各々、メモリ(1608a-f)および1以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)(1610a-f)を含み得る。MAPは設定可能な機能ユニットを提供し、特定のアルゴリズムまたはその一部は、各プロセッサと密接に協働して処理を行うためにFPGA(1610a-f)に提供され得る。例えば、MAPは、データモデルに関する代数式を評価し、かつ例における適応性のあるデータの再構築を行なうために使用され得る。この例において、MAPは各々、このような目的のためのプロセッサ全てにより世界中からアクセス可能である。1つの構成において、MAPは各々、関連するメモリ(1608a-f)にアクセスするためにダイレクトメモリアクセス(DMA)を使用することができ、それにより、各マイクロプロセッサ(1602a-f)とは別個に、かつこれらから非同期的にタスクを実行することが可能となる。この構成において、MAPは、アルゴリズムのパイプライン処理(pipelining)および並列実行のために別のMAPに直接結果を供給することができる。
【0176】
上記のコンピュータのアーキテクチャおよびシステムは単なる例に過ぎず、様々な他のコンピュータ、携帯電話、および、個人用携帯情報端末のアーキテクチャおよびシステムは、一般的なプロセッサ、コプロセッサ、FPGA、および他のプログラム可能論理回路の任意の組み合わせを使用するシステム、システムオンチップ(SOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、および他の処理要素と論理素子を含む例と共に使用可能である。いくつかの例において、コンピュータシステムの全てまたは一部は、ソフトウェアまたはハードウェアに実装され得る。様々なデータ記憶媒体が、例えばランダムアクセスメモリ、ハードドライブ、フラッシュメモリ、テープドライブ、ディスクアレイ、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、および他のローカルまたは分散データ記憶装置およびシステムを含む例と共に使用され得る。
【0177】
例において、コンピュータシステムは、上記のまたは他のコンピュータのアーキテクチャおよびシステムのいずれかで実行されるソフトウェアモジュールを使用して実施可能である。他の例において、システムの機能は、ファームウェア、
図13で言及されるようなフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのプログラム可能論理回路、システムオンチップ(SOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または他の処理要素および論理素子において部分的または完全に実装され得る。例えば、セットプロセッサおよびオプティマイザは、
図13に示されるアクセラレータカード(1322)などのハードウェアアクセラレータカードの使用によるハードウェアアクセラレーションで実施され得る。
【0178】
以下の実施例は、当業者に対し本明細書に開示される実施形態の原理および実践をより明白に示すために説明され、任意の請求された実施形態の範囲を制限するものとして解釈されるものではない。他に明示されない限り、全ての部分およびパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0179】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を示すために与えられるものであり、任意の様式で本開示を制限することを目的としていない。本明細書に記載される方法とともに、本実施例は、好ましい実施形態を示すとともに典型的なものであり、本開示の範囲を限定するものとは意図されない。請求項の範囲によって定義される本開示の精神内に包含される本明細書での変化とその他の使用は当業者に想到される。
【0180】
実施例1:装置表面の機能化
【0181】
核酸のライブラリーの接着と合成を支援するために装置を機能化した。装置表面をまず、20分間、90%のH2SO4と10%のH2O2を含むピラニア溶液を使用して湿式洗浄した。装置を、DI水を含む様々なビーカーの中ですすぎ、5分間DI水のグーズネック形状の蛇口の下で保持して、N2で乾燥させた。装置をその後、5分間、NH4OH(1:100;3mL:300mL)に浸し、ハンドガン(handgun)を使用してDI水ですすぎ、DI水を含む3つの連続するビーカーの中で各々1分間浸し、その後、ハンドガンを使用してDI水で再びすすいだ。その後、装置表面をO2にさらすことにより装置をプラズマ洗浄した。SAMCO PC-300機器を使用して、下流モードで1分間、250ワットでO2をプラズマエッチングした。
【0182】
以下のパラメータでYES-1224P蒸着オーブンシステムを使用して、清潔になった装置表面をN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシブチルアミドを含む溶液で活発に官能化した:0.5から1トル、60分、70℃、135℃の気化器。Brewer Science 200Xスピンコータを使用して、装置表面をレジストコートした(resist coated)。SPR(商標)3612フォトレジストを、40秒間2500rpmで装置上でスピンコートした。装置を、Brewerホットプレート上で90℃で30分間あらかじめ焼いた。Karl Suss MA6マスクアライナー機器を使用して、装置をフォトリソグラフィーにさらした。装置を2.2秒間さらし、MSF 26Aの中で1分間展開させた(developed)。残りの展開剤(developer)をハンドガンですすぎ、装置を5分間水に浸した。装置をオーブン内で100℃で30分間焼き、その後、Nikon L200を使用してリソグラフィーの欠損に対する目視検査を行った。デスカム処理を使用し、SAMCO PC-300機器を用いて残りのレジストを取り除き、1分間250ワットでO2プラズマエッチングした。
【0183】
装置表面を、10μLの軽油と混合した100μLのペルフルオロオクチルトリクロロシラン溶液で受動的に機能化した。装置をチャンバに配し、10分間ポンプでくみ出し、その後、バルブを閉じてポンプを止め、10分間放置した。チャンバを通気した。最大パワー(Crestシステム上で9)での超音波処理によって70℃で500mLのNMPで5分間、2回の浸漬を行うことにより、装置をレジスト剥離した。その後、最大パワーでの超音波処理により室温で500mLのイソプロパノール中に5分間、装置を浸した。装置を、300mLの200プルーフエタノール(200 proof ethanol)に漬けて、N2で送風乾燥した。官能化した表面は活性化されることで、核酸合成のための支持体として役立った。
【0184】
実施例2:ポリヌクレオチド合成装置上での50量体の配列の合成
【0185】
二次元ポリヌクレオチド核酸装置をフローセルに組み入れ、フローセル(Applied Biosystems「ABI394 DNA Synthesizer」)に接続させた。N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシブチルアミド(Gelest)で二次元ポリヌクレオチド合成装置を均一に機能化し、これを使用し、本明細書に記載されるポリヌクレオチド合成方法を用いて50bpの例示的なポリヌクレオチド(「50merのポリヌクレオチド」)を合成した。
【0186】
50merの配列は、SEQ ID NO.:20に記載されている通りであった。5’AGACAATCAACCATTTGGGGTGGACAGCCTTGACCTCTAGACTTCGGCAT##TTTTTTTTTT3’(SEQ ID NO:20)、ここで、#は、チミジン-スクシニルヘキサミドCEDホスホラミダイト(ChemGenesのCLP-2244)を表わし、これは、脱保護中に表面からのオリゴの放出を可能にする切断可能なリンカーである。
【0187】
表6のプロトコルおよびABIシンセサイザーに従って標準的なDNA合成化学(結合、キャッピング、酸化、および非ブロック化)を使用して、合成を行った。
【0188】
【0189】
【0190】
ホスホラミダイト/活性化因子の組み合わせを、フローセルを介したバルク試薬の送達と同様に送達した。環境が試薬によってずっと「湿った」ままであると、乾燥工程を行わなかった。
【0191】
フローリストリクターをABI 394シンセサイザーから取り除き、より速い流れを可能した。フローリストリクターなしで、アミダイト(ACN中で0.1M)、活性化因子(ACN中で0.25Mのベンゾイルチオテトラゾール(「BTT」;GlenResearchの30-3070-xx))、およびOx(20%のピリジン、10%の水、および70%のTHF中の0.02MのI2)の流量は、およそ~100uL/sec、アセトニトリル(「ACN」)およびキャッピング試薬(CapAとCapBの1:1の混合物、ここで、CapAはTHF/ピリジン中の無水酢酸であり、CapBはTHF中の16%の1-メチルイミダゾール(methylimidizole))についてはおよそ~200uL/sec、および、Deblock(トルエン中の3%のジクロロ酢酸)についてはおよそ~300uL/sec(フローリストリクターで全ての試薬に対し~50uL/secと比較して)であった。酸化剤(Oxidizer)を完全に押し出す時間を観察し、化学フロー時間のタイミングを適宜調整し、余分なACN洗浄を異なる化学物質間に導入した。ポリヌクレオチド合成の後、75psiで一晩、ガス状のアンモニア中でチップを脱保護した。表面に水を5滴加えて、核酸を再生した。その後、再生した核酸を、BioAnalyzerの小さなRNAチップ上で分析した(データは示されていない)。
【0192】
実施例3:ポリヌクレオチド合成装置上での100merの配列の合成
【0193】
50merの配列の合成について実施例2に記載されるのと同じプロセスを、2つの異なるシリコンチップ上で100merのポリヌクレオチド(「100merのポリヌクレオチド」;5’CGGGATCCTTATCGTCATCGTCGTACAGATCCCGACCCATTTGCTGTCCACCAGTCATGCTAGCCATACCATGATGATGATGATGATGAGAACCCCGCAT##TTTTTTTTTT3’、ここで、#はチミジン-スクシニルヘキサミドCEDホスホラミダイト(ChemGenesのCLP-2244)を表わす;SEQ ID NO:21)の合成に使用し、一方のシリコンチップはN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシブチルアミドで均一に機能化され、他方のシリコンチップは11-アセトキシウンデシルトリエトキシシランとn-デシルトリエトキシシランの5/95の混合物で機能化されており、表面から抽出された核酸を、BioAnalyzer機器の上で分析した(データは示されていない)。
【0194】
以下の熱サイクルプログラムを使用して、50uLのPCR混合物(25uLのNEB Q5 mastermix、2.5uLの10uMフォワードプライマー、2.5uLの10uMリバースプライマー、表面から抽出した1uLの核酸、および最大50uLの水)の中で、フォワードプライマー(5’ATGCGGGGTTCTCATCATC3’;SEQ ID NO:22)およびリバースプライマー(5’CGGGATCCTTATCGTCATCG3’;SEQ ID NO:23)を使用して、2つのチップからの10のサンプル全てをさらに増幅した:
98C、30秒
98C、10秒;63C、10秒;72C、10秒;12のサイクルを繰り返す
72C、2分
【0195】
PCR生成物をBioAnalyzer上でも実行して(データは示さず)、100merの位置での急なピークを実証した。次に、PCR増幅サンプルをクローン化し、Sanger配列決定を行った(Sanger sequence)。表7は、チップ1からのスポット1-5から得たサンプル、およびチップ2からのスポット6-10から得たサンプルに対するSanger配列決定から生じる結果を要約する。
【0196】
【0197】
故に、高品質および高均一性の合成されたポリヌクレオチドを、異なる界面化学的性質を持つ2つのチップ上で繰り返した。配列決定された100merの262のうち233に対応している全体の89%が、エラーのない完全な配列であった。
【0198】
最後に、表8は、スポット1-10からのポリヌクレオチドサンプルから得た配列に対するエラー特徴を要約する。
【0199】
【0200】
実施例4:単一の部位、単一の位置の突然変異誘発による核酸ライブラリーの生成
【0201】
一連のPCR反応に使用される核酸プライマーをデノボ合成し、鋳型核酸の核酸変異体のライブラリーを生成した(
図2のA-Dを参照)。4つのタイプのプライマーを
図2のAにおいて生成した:外側の5’プライマー(215)、外側の3’プライマー(230)、内側の5’プライマー(225)、および内側の3’プライマー(220)。表6で全体的に概説されるような核酸の合成方法を使用して、内側の5’プライマー/第1の核酸(220)および内側の3’プライマー/第2の核酸(225)を生成した。内側の5’プライマー/第1の核酸(220)は、あらかじめ決められた配列の最大19のプライマーのセットを表し、セット中の各プライマーは、配列の1つの部位における1つのコドンにて互いに異なる。
【0202】
少なくとも2つのクラスターを有する装置上で核酸合成を行い、各クラスターは121の個々にアドレス可能な場所を有する。
【0203】
内側の5’プライマー(225)および内側の3’プライマー(220)を別個のクラスター中で合成した。内側の5’プライマー(225)は121回複製され、単一のクラスター内の121の場所の上に伸長する。内側の3’プライマー(220)について、変異体配列のうち19のプライマーの各々は、6つの異なる場所で伸長し、その結果、114の異なる場所で114の核酸の伸長が生じる。
【0204】
合成された核酸を、装置の表面から切断し、プラスチックバイアルに移した。
図2のBで示されるように、長い核酸配列(235)(240)の断片を使用して第1のPCR反応を行い、鋳型核酸を増幅させた。
図2のC-Dに示されるように、鋳型としてプライマーの組み合わせと第1のPCR反応の生成物とを使用して、第2のPCR反応を行った。
図17の追跡に示されるように、第2のPCR生成物の分析をBioAnalyzer上で行った。
【0205】
実施例5:1つの位置の変異体の96の異なるセットを含む核酸ライブラリーの生成
【0206】
4つのセットのプライマーを、
図2のAで全体的に示され、実施例2で検討されるように、デノボ核酸合成を使用して生成した。内側の5’プライマー(220)について、96の異なるセットのプライマーを生成し、プライマーの各セットは、鋳型核酸核酸の1つの部位内に位置する異なる1つのコドンを標的とする。プライマーの各セットについて、19の異なる変異体を生成し、各変異体は、1つの部位にて異なるアミノ酸をコードするコドンを含む。
図2のA-Dに全体的に示されかつ実施例2に記載されるように、生成されたプライマーを使用して2回のPCRを行った。100%の増幅成功率を算出するために使用されたエレクトロフォレトグラムにおいて、96のセットの増幅産物を視覚化した(
図18)。
【0207】
実施例6:1つの位置の変異体の500の異なるセットを含む、核酸ライブラリーの生成
【0208】
4つのセットのプライマーを、
図2のAで全体的に示され、実施例2で検討されるように、デノボ核酸合成を使用して生成した。内側の5’プライマー(220)について、500の異なるセットのプライマーを生成し、プライマーの各セットは、鋳型核酸核酸の1つの部位内に位置する異なる1つのコドンを標的とする。プライマーの各セットについて、19の異なる変異体を生成し、各変異体は、1つの部位にて異なるアミノ酸をコードするコドンを含む。
図2のAに全体的に示されかつ実施例2に記載されるように、生成されたプライマーを使用して2回のPCRを行った。エレクトロフォレトグラムは、異なる一つの部位に19の変異体を持つ核酸の集まりを有する、PCR生成物の500のセットの各々を表示する(データは示されていない)。ライブラリーの包括的な配列決定の分析は、あらかじめ選択されたコドンの突然変異にわたって99%よりも高い成功率を示した(配列追跡と分析データは示されていない)。
【0209】
実施例7:1つの位置に対する単一部位の突然変異誘発プライマー
【0210】
コドン変異設計の一例を、Yellow Fluorescent Proteinについて表9で提供する。この場合、50merの配列から1つのコドンは、19回変異する。様々な核酸配列を太字で示す。野生型プライマー配列は、ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCAT(SEQ ID、No:1)である。この場合、野生型コドンは、SEQ ID NO:1における下線によって示されるバリンをコードする。それゆえ、以下の19の変異体は、バリンをコードするコドンを除外する。代替的な実施例において、トリプレットが全て考慮される場合、その後、60の変異体は全て、野生型コドンに対する代替的配列を含んで生成されることになる。
【0211】
【0212】
実施例8:単一の部位、二重の位置の核酸変異体
【0213】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。装置上の1つのクラスターを生成し、該クラスターは、1つの部位にある2つの連続するコドンの位置に対して核酸のあらかじめ決められた合成変異体を含有し、各部位はアミノ酸をコードするコドンである。この配置において、1つの位置当たり19の変異体を、各核酸の3つの複製を伴って2つの位置に対して生成し、合成された114の核酸が結果として得られた。
【0214】
実施例9:複数の部位、二重の位置の核酸変異体
【0215】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。装置上の1つのクラスターを生成し、該クラスターは、2つの非連続コドンの位置に対して核酸のあらかじめ決められた合成変異体を含有し、各位置はアミノ酸をコードするコドンである。この配置において、1つの位置につき19の変異体を2つの位置に対して生成した。
【0216】
実施例10:一続きの三重の位置の核酸変異体
【0217】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。装置上の1つのクラスターを生成し、該クラスターは、3つの連続するコドン位置に対して参照核酸のあらかじめ定められた合成変異体を含有していた。3つの連続するコドン位置の配置において、1つの位置当たり19の変異体を、各核酸の2つの複製を伴って3つの位置に対して生成し、合成された114の核酸が結果として得られた。
【0218】
実施例11:複数の部位、三重の位置の核酸変異体
【0219】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。装置上の1つのクラスターを生成し、該クラスターは、少なくとも3つの非連続コドン位置に対して参照核酸のあらかじめ定められた合成変異体を含有している。あらかじめ定められた領域内で、3つのヒスチジン残基をコードするコドンの位置を変更した。
【0220】
実施例12:複数の部位、複数の位置の核酸変異体
【0221】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。装置上の1つのクラスターを生成し、該クラスターは、一続き以上の1以上のコドン位置に対して参照核酸のあらかじめ決められた合成変異体を含有していた。5つの位置をライブラリーにおいて変更した。第1の位置は、発現されたタンパク質において結果として生ずる50/50 K/Rの比率についてコドンをコードし;第2の位置は、発現されたタンパク質において結果として生ずる50/25/25 V/L/Sの比率についてコドンをコードし、第3の位置は、発現されたタンパク質において結果として生ずる50/25/25 Y/R/Dの比率についてコドンをコードし、第4の位置は、発現されたタンパク質における結果として生ずる全てのアミノ酸に対する等しい比率についてコドンをコードし、および第5の位置は、発現されたタンパク質において結果として生ずる75/25 G/Pの比率についてコドンをコードした。
【0222】
実施例13:多様なペプチドを発現するためのモジュラープラスミド構成要素
【0223】
図11に表されるように、ポリヌクレオチドライブラリーは、実施例4-6および8-12のように生成され、発現構築物カセットの一部を構築する別個の領域の各々に対して、1つの部位または複数の部位にてコドン変異をコードする。2つの構築物発現カセットを生成するために、第1のプロモーター(1110)、第1のオープンリーディングフレーム(1120)、第1のターミネーター(1130)、第2のプロモーター(1140)、第2のオープンリーディングフレーム(1150)、または第2のターミネーター配列(1160)の変異体配列の少なくとも一部をコードする変異体核酸が合成された。増幅の繰り返しの後、先の実施例に記載したように、1,024の発現構築物ライブラリーを生成する。
【0224】
実施例14:複数の部位の1つの位置の変異体
【0225】
ポリヌクレオチドライブラリーは、実施例4-6および8-12のように生成され、核酸の少なくとも一部をコードする領域において1つの部位または複数の部位でコドン変異をコードする。核酸変異体のライブラリーを生成し、ライブラリーは複数の部位、1つの位置の変異体からなる。例えば、
図6のBを参照。
【0226】
実施例15:変異体ライブラリーの合成
【0227】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。少なくとも30,000の非同一の核酸をデノボ合成し、ここで、非同一の核酸の各々は、アミノ酸配列の異なるコドン変異をコードする。少なくとも30,000の合成された非同一の核酸は、少なくとも30,000の非同一の核酸の各々に対してあらかじめ決められた配列と比較して、1:000の塩基中に1未満の総エラー率を有している。ライブラリーを長い核酸のPCR突然変異誘発に使用し、少なくとも30,000の非同一の変異体核酸を形成する。
【0228】
実施例16:クラスタベースの変異体ライブラリー合成
【0229】
デノボ核酸合成を、実施例2に記載されるものと同様の条件下で行った。装置上の1つのクラスターを生成し、該クラスターは、2つのコドン位置に対して参照核酸のあらかじめ定められた合成変異体を含有していた。2つの連続するコドン位置の配置において、1つの位置当たり19の変異体を、各核酸の2つの複製を伴って2つの位置に対して生成し、結果として合成された38の核酸が得られた。変異体配列は各々、長さ40の塩基である。同じクラスターにおいて、追加の非変異体核酸配列を生成し、ここで、追加の非変異体核酸と変異体核酸が、遺伝子のコード配列の38の変異体をまとめてコードする。核酸の各々は、別の核酸に対して逆相補性である少なくとも1つの領域を有する。クラスターにおける核酸を、ガス状のアンモニア切断により放出する。水を含むピンはクラスターに接触し、核酸を拾い上げて、核酸を小さなバイアルへと移動させる。バイアルはさらに、ポリメラーゼサイクリングアセンブリ(PCA)反応のためのDNAポリメラーゼ試薬を含む。核酸をアニーリングし、伸長反応によりギャップを満たし、結果として生じる二本鎖DNA分子が形成され、変異体核酸ライブラリーを形成する。変異体核酸ライブラリーは随意に、制限酵素にさらされ、その後、発現ベクターにライゲートされる。
【0230】
実施例17:変異体核酸TCRライブラリーの生成
【0231】
以下の工程は、10^8の多様性を有するTCRライブラリーの生成のために行われる。末梢血単核球は10人の人間のドナー被験体から得られ、T細胞は単離される。10人被験体はすべて一致した対立遺伝子(例えば、HLA-A*2:01)を有するようにHLAマッピングされる。10人の人間のドナー被験体のうち、7人は健康なドナーであり、3人は癌の一種を抱えるドナーである。TCR複合体に関与する遺伝子は、各ドナーのT細胞から配列決定され、1000の最も一般的なTCR配列が同定される。一般的なTCR配列の各々は600-900の塩基対のスパンを有する。
【0232】
1000の最も一般的なTCR配列の各々のための10,000のあらかじめ決められた変異体核酸配列が設計され、少なくとも10^8の総多様性を有するDNAライブラリもたらす。変異体配列はそれぞれ、遺伝子発現用の哺乳動物発現ベクターに挿入される。
【0233】
実施例18:変異体TCRタンパク質複合体ライブラリーの発現およびスクリーニング
【0234】
細胞集団のライブラリーを生成するために、変異体TCR遺伝子のライブラリーは哺乳動物細胞に導入され、各細胞集団は異なるTCR変異体タンパク質を発現する。タンパク質ライブラリーは、MAGE A3またはNY-ESO-1などの腫瘍抗原に対する改善された親和性(エピトープと抗体の抗原結合部位との間の相互作用の強さの尺度)を有するTCR複合体についてスクリーニングされる。変異体遺伝子の発現、アビディティー(抗体抗原複合体の全体的な強さの尺度)、安定性、および標的特異性などのさらなる機能的な考察も評価される。
【0235】
実施例19:操作されたT細胞の製造と送達
【0236】
T細胞は癌と診断された被験体から採取され、実施例18における分析を実施した後に選択された新しいT細胞受容体(TCR)で遺伝子操作される。短時間のインビトロの拡張と生成物に特異的な放出基準の後に、T細胞生成物は同じ被験体に投与される。
図10Cを参照する。
【0237】
実施例20:変異体TCRライブラリー
【0238】
変異体TCRをコードする核酸を生成するために、実施例2に記載されるものと同様の条件下でデノボ核酸合成を行った。変異体TCRは、MAGE A3あるいはNY-ESO-1などのTCRと腫瘍抗原との間の抗原結合界面中の変異体を含む。変異体は、最大で30の残基のための変異体TCRライブラリーで1つの部位で生成され、約10^9の総多様性を有する第1のライブラリーをもたらす。変異の残基は、TCRα鎖とTCRβ鎖の可変ドメインにある。
【0239】
その後、変異体TCRを含む第1のライブラリーがT細胞中で発現される。変異体TCRは、腫瘍抗原に対する変異体TCRの特異性について腫瘍抗原に対してインビトロでスクリーニングされる。第2のライブラリーを生成するために、腫瘍抗原に高特異的な変異体TCRはその後さらに多彩になる。第2のライブラリーは、TCRα鎖とTCRβ鎖の定常ドメインにある残基中の変異を含む。第2のライブラリーはT細胞中で発現され、第2の改善(例えば、アビディティー、安定性、親和性、または発現)についてインビトロでスクリーニングされる。
【0240】
第1および/または第2の変異体ライブラリーからの生成物をスクリーニングした後に、T細胞へタンパク質を固定するための領域を欠いている、随意に溶解可能なTCRタンパク質の形態の、あるいは癌に苦しんでいる被験体の癌細胞を標的とするために(被験体あるいはHAL適合ドナーのいずれかからの)T細胞の再プログラム化を含む免疫療法の一部として操作されたT細胞における発現のための遺伝子の形態の、潜在的な治療薬の開発のために、所望の特徴を有するTCR遺伝子または遺伝子断片変異体が選択される。
【0241】
本開示の好ましい実施形態が本明細書中で示され、記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されているに過ぎないということは、当業者に明らかであろう。多くの変形、変更、および置き換えは、本開示から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される開示の実施形態の様々な代案が、本開示の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本開示の範囲を定義するものであり、これら特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の方法および構造は、それにより包含されることが、意図されている。
【配列表】