(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】反射面の曲率を測定する方法及び関連する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G01B 11/255 20060101AFI20221104BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01B11/255 H
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2019564823
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2018063441
(87)【国際公開番号】W WO2018215507
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルヌー,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】コラン,ジョナタン
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02842591(FR,A1)
【文献】特開2008-177579(JP,A)
【文献】特開昭63-042413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0190139(US,A1)
【文献】実開昭58-086509(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104347356(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/95
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定デバイスを使用して物体の少なくとも1つの反射面(10)の変形を測定するための測定方法であって、前記測定デバイスは、光スポット(22)を含む少なくとも1つの照明パターン(21)、カメラ(30、31)、及び画像分析デバイス(40)を備え、前記表面の前記変形の前記測定位置において、前記照明パターンの仮想画像又は実画像(23)が前記表面を介して前記カメラの検出器に視認可能なように、前記照明パターン及び前記カメラが配置されており、前記画像は、前記照明パターンによって照らされた前記表面の前記領域(11)の前記変形を表わしており、
測定を実行するための前記測定方法が、
1.2つの光スポットの前記画像間の少なくとも1つの距離を測定することと、
2.この測定距離と少なくとも1つの基準距離との間の比率を計算することと、
3.この比率から、定義された方向の前記拡大を計算することと、
4.前記定義された方向の前記反射面の前記変形を計算することと、
を含む、ことを特徴とする、測定方法。
【請求項2】
複数の所与の方向の前記拡大を測定し、前記反射面の前記変形の異方性を計算するために、光スポットの複数の画像に対してステップ1~4が実行される第5のステップを含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記照明パターンは、マトリックスアレイに分布した個別の光スポットのセットを含む、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記照明パターンは、光の少なくとも1つの円又は1つの楕円を含み、前記測定は、光のこの円又はこの楕円に属するスポットの前記画像上で実行される、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項5】
前記方法は、少なくとも1つの第2の測定を実行するステップを含み、前記第2の測定は、第2の照明パターンを放射することを含み、第1の測定に関連付けられた第1の照明パターンが、前記第2の測定に関連付けられた前記第2の照明パターンにより照らされた前記表面の第2の領域とは異なる前記表面の第1の領域を照らすように、前記2つの測定を実行するための手段が配置されており、前記カメラは、前記2つの測定の間、静止したままである、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項6】
物体の少なくとも1つの反射面(10)の変形を測定する測定デバイスであって、前記測定デバイスは、光スポット(22)を含む少なくとも1つの照明パターン(21)、カメラ(30、31)、及び画像分析デバイス(40)を備え、前記表面の前記変形の前記測定位置において、前記照明パターンの仮想画像又は実画像(23)が前記表面を介して前記カメラの検出器に視認可能なように、前記照明パターン及び前記カメラが配置されており、前記画像は、前記照明パターンによって照らされた前記表面の前記領域(11)の前記変形を表わしており、
前記画像分析デバイスが、
-2つの光スポットの前記画像間の少なくとも1つの距離を測定するための手段と、
-この測定距離と少なくとも1つの基準距離との間の比率を計算するための第1の計算手段と、
-この比率から、定義された方向の拡大を計算するための第2の計算手段と、
-前記定義された方向の前記反射面の前記変形を計算するための第3の計算手段と、
を備えることを特徴とする、測定デバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、少なくとも2つの測定を実行するための手段を備え、各測定は、照明パターンを放射することを含み、第1の測定に関連付けられた第1の照明パターンが、前記第2の測定に関連付けられた前記第2の照明パターンにより照らされた前記表面の第2の領域とは異なる前記表面の第1の領域を照らすように、前記2つの測定を実行するための前記手段が配置されており、前記カメラは、前記2つの測定の間、静止したままである、ことを特徴とする、請求項6に記載の測定デバイス。
【請求項8】
前記測定デバイスは、前記照明パターンを移動、変形、又は拡大するための手段を備える、ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の測定デバイス。
【請求項9】
前記測定を実行するための前記手段は、前記2つの測定間で定義された平面内で前記物体を移動させるための手段(50)と、前記移動を測定するための手段とを備える、ことを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項10】
前記平面内で前記物体を移動させる前記手段は、回転手段又は並進手段である、ことを特徴とする、請求項9に記載の測定デバイス。
【請求項11】
前記測定デバイスは、ディスプレイ画面(20)と、前記ディスプレイ画面上に前記照明パターンを生成するためのグラフィカル手段とを備える、ことを特徴とする、請求項6~10のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項12】
前記照明パターンは、個別の光スポットのマトリックスアレイである、ことを特徴とする、請求項11に記載の測定デバイス。
【請求項13】
前記照明パターンは、光の円若しくは光の楕円、又は一連の光の円若しくは光の楕円である、ことを特徴とする、請求項11に記載の測定デバイス。
【請求項14】
前記測定デバイスは、照明パターンを形成するように配置された開口部を含む不透明画面を照らす光源を備える、ことを特徴とする、請求項6~10のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項15】
前記測定デバイスは、前記スポットのパターンの前記画像が、ビームスプリッタによる透過後、前記表面からの反射及び前記ビームスプリッタからの反射を前記カメラの前記検出器上に形成し、又は、前記ビームスプリッタからの反射後、前記表面からの反射及び前記ビームスプリッタによる透過を前記カメラの前記検出器上に形成する、ように配置された半透鏡の平面ビームスプリッタ(60)を備える、ことを特徴とする、請求項6~14のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項16】
前記測定デバイスは、複数の測定を実行して、前記表面の前記変形の完全なマップを作成するための手段を備える、ことを特徴とする、請求項6~15のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項17】
前記変形の局所的な、凹状又は凸状の、曲率半径は、数ミリメートル~数十キロメートルで変化する、ことを特徴とする、請求項6~15のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項18】
前記物体は半導体ウェーハであり、前記反射面は前記ウェーハの側面の1つである、ことを特徴とする、請求項6~17のいずれか一項に記載の測定デバイス。
【請求項19】
前記凹状の反射面によって反射された前記照明パターンの前記画像が前記カメラの前記レンズの近くに位置するように、前記照明パターン及び前記カメラが配置されている、ことを特徴とする、凹状の反射面を測定するための請求項6~18のいずれか一項に記載の測定デバイスの使用。
【請求項20】
前記測定が、前記反射面への少なくとも1つの材料層の堆積中に実行される、ことを特徴とする、成長反応器内の物体の前記反射面の変形につながるプロセスを監視するための請求項6~18のいずれか一項に記載の測定デバイスの使用。
【請求項21】
前記測定が、少なくとも2つの異なる物体上で連続的に実行される、ことを特徴とする、半導体ウェーハを検査するためのデバイスにおける請求項6~18のいずれか一項に記載の測定デバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、反射面の変形を測定するための光学デバイスの分野である。これらの測定デバイスは、特に、半導体ウェーハの変形を測定するために使用できる。本発明に係る測定デバイスは、電子部品の製造に必要な材料の層を堆積する操作中に、ウェーハを検査することを可能にする。測定デバイスはまた、堆積、又はウェーハの変形につながる任意のタイプの材料処理の後に、検査すべき当該ウェーハを、エクスサイチュで監視又は検査することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
例えば分子線エピタキシによって半導体ウェーハ上に材料層を堆積するために真空堆積操作が実行されると、堆積層に応力が発生し、ウェーハ内に機械的応力を誘発する。一般に、ウェーハの厚さは非常に薄く、通常は、100ミクロン~700ミクロンで変化する。厚さは、経験したストレスの影響下で、多かれ少なかれ変形し得る。したがって、これらの変形の知識は、応力のスケール、性質、及び位置に関する情報を与え、実行中の堆積が正しく進行しているか否かを判定し、これらの応力を引き起こす原子メカニズムを判定することを可能にする。
【0003】
ウェーハは一般に、反射性である。変形を測定するために、この特性が用いられ、使用される測定デバイスは光学デバイスである。これらのデバイスは全て、既知のジオメトリの光源、及び受光器を備える。光源及び受光器は、光源から発せられた光を、反射面を介して受光器が観察できるように配置されている。したがって、受光器は、ウェーハの表面を介して光源の画像を視認する。ウェーハが完全な平面鏡である場合、この画像は、測定システムの不確実性の範囲内では変形しない。ウェーハが応力の作用下で変形すると、光源の画像が変形する。この変形の測定により、反射性ウェーハの変形を判定することが可能になる。
【0004】
一般に、使用される光源は単純な幾何学形状のものであるか、既知のジオメトリに配置された光スポットで構成されている。光スポットは、例えば、平面及び平行面を有するプレート内で複数回反射されたレーザビームを使用して生成されてもよい。複数の透過した平行ビームは、照明パターンを形成する。「Measurement of the curvature of a surface using parallel light beams」と題する米国特許第5,912,738号明細書は、そのような測定デバイスを記載している。「Workpiece breakage prevention method and apparatus」と題する米国特許第9,070,590号明細書は、ウェーハの特性測定のアプリケーションとは異なるアプリケーションのための別のタイプの、熱応力を測定する測定デバイスについて記載している。
【0005】
このタイプの測定デバイスの制約の1つは、光学素子を導入することが当然ながら不可能な真空反応器内で、堆積が実行されることである。この場合、光は、必然的に、透明なポートホールを通じて、反応器の外部で放射及び受光される。しかしながら、ウェーハは大きなサイズであり得る。例として、直径が250ミリメートルのウェーハがある。このサイズのウェーハを検査するために、光源及び受光器を移動して様々な測定を実行することができるが、堆積操作があるべきように進行していない場合にアクションを起こすことができるように検査はリアルタイムで実行されなければならないという事実を考慮すると、測定の精度及び品質を維持することがどれほど困難か理解されるであろう。加えて、ほとんどの場合、光源をシフトさせることを目的としたそのような移動は、ポートホールのサイズが小さいために、達成することが困難又は不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,912,738号明細書
【文献】米国特許第9,070,590号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測定方法、及び関連する測定デバイスには、これらの欠点がない。それらは、たとえ反射面のサイズが大きい場合であっても、受光器を移動することなく、反射面の照らされた領域を移動することが可能であるという事実に基づいている。より正確には、本発明の第1の主題は、測定デバイスを使用して物体の少なくとも1つの反射面の変形を測定するための方法であって、当該測定デバイスは、光スポットを含む少なくとも1つの照明パターン、カメラ、及び画像分析デバイスを備え、当該表面の変形の測定位置において、照明パターンの仮想画像又は実画像が表面を介してカメラの検出器に視認可能なように、照明パターン及びカメラが配置されており、当該画像は、照明パターンによって照らされた表面の領域の変形を表わしており、測定を実行するための測定方法が、以下のステップ、すなわち、
ステップ1:2つの光スポットの画像間の少なくとも1つの距離を測定することと、
ステップ2:この測定距離と少なくとも1つの基準距離との間の比率を計算することと、
ステップ3:この比率から、定義された方向の拡大を計算することと、
ステップ4:当該定義された方向の反射面の変形を計算することと、
を含む、ことを特徴とする。
【0008】
有利には、方法は、複数の所与の方向の拡大を測定し、反射面の変形の異方性を計算するために、光スポットの複数の画像に対して、ステップ1から4が実行される第5のステップを含む。
【0009】
有利には、照明パターンは、マトリックスアレイに分布した個別の光スポットのセットを含む。
【0010】
有利には、照明パターンは、光の少なくとも1つの円又は1つの楕円を含み、測定は、光のこの円又はこの楕円に属するスポットの画像上で実行されている。
【0011】
有利には、方法は、少なくとも1つの第2の測定を実行するステップを含み、第2の測定は、第2の照明パターンを放射することを含み、第1の測定に関連付けられた第1の照明パターンが、第2の測定に関連付けられた第2の照明パターンにより照らされた表面の第2の領域とは異なる表面の第1の領域を照らすように、2つの測定を実行するための当該手段が配置されており、カメラは、2つの測定の間、静止したままである。
【0012】
本発明の第2の主題は、物体の少なくとも1つの反射面の変形を測定するためのデバイスであって、当該測定デバイスは、光スポットを含む少なくとも1つの照明パターン、カメラ、及び画像分析デバイスを備え、当該表面の変形の測定位置において、照明パターンの仮想画像又は実画像が表面を介してカメラの検出器に視認可能なように、照明パターン及びカメラが配置されており、当該画像は、照明パターンによって照らされた表面の領域の変形を表わしており、
画像分析デバイスが、
-2つの光スポットの画像間の少なくとも1つの距離を測定するための手段と、
-この測定距離と少なくとも1つの基準距離との間の比率を計算するための第1の計算手段と、
-この比率から、定義された方向の拡大を計算するための第2の計算手段と、
-当該定義された方向の反射面の変形を計算するための第3の計算手段と、
を備える、ことを特徴とする。
【0013】
有利には、デバイスは、少なくとも2つの測定を実行するための手段を備え、各測定は、照明パターンを放射することを含み、第1の測定に関連付けられた第1の照明パターンが、第2の測定に関連付けられた第2の照明パターンにより照らされた表面の第2の領域とは異なる表面の第1の領域を照らすように、2つの測定を実行するための当該手段が配置されており、カメラは、2つの測定の間、静止したままである。
【0014】
有利には、測定デバイスは、照明パターンを移動、変形、又は拡大するための手段を備える。
【0015】
有利には、測定を実行するための手段は、2つの測定間で定義された平面内で物体を移動させるための手段と、当該移動を測定するための手段とを備える。
【0016】
有利には、当該平面内で物体を移動させるための手段は、回転手段又は並進手段である。
【0017】
有利には、測定デバイスは、ディスプレイ画面、及び当該ディスプレイ画面上に当該照明パターンを生成するためのグラフィカル手段を備える。
【0018】
有利には、照明パターンは、個別の光スポットのマトリックスアレイである。
【0019】
有利には、照明パターンは、光の円若しくは光の楕円、又は一連の光の円若しくは光の楕円である。
【0020】
有利には、測定デバイスは、照明パターンを形成するように配置された開口部を含む不透明画面を照らす光源を備える。
【0021】
有利には、測定デバイスは、スポットのパターン画像が、当該ビームスプリッタによる透過後、表面からの反射及び当該ビームスプリッタからの反射をカメラの検出器上に形成し、又は、当該ビームスプリッタからの反射後、表面からの反射及び当該ビームスプリッタによる透過をカメラの検出器上に形成する、ように配置された半透鏡の平面ビームスプリッタを備える。
【0022】
有利には、測定デバイスは、複数の測定を実行して、当該表面の変形の完全なマップを作成するための手段を備える。
【0023】
有利には、変形の、局所的な、凹状又は凸状の曲率半径は、数ミリメートル~数十キロメートルで変化する。
【0024】
有利には、物体は半導体ウェーハであり、反射面は当該ウェーハの側面の1つである。
【0025】
本発明はまた、凹状の反射面を測定するための、上記で定義されたような測定デバイスの使用に関し、凹状の反射面によって反射された照明パターンの画像がカメラのレンズの近くに位置するように、照明パターン及びカメラが配置されることを特徴とする。
【0026】
有利には、デバイスは、成長反応器における物体の反射面の変形につながるプロセスを監視するために使用され、測定が、当該反射面への少なくとも1つの材料層の堆積中に実行されることを特徴とする。
【0027】
有利には、デバイスは、半導体ウェーハを検査するために使用され、測定が、少なくとも2つの異なる物体上で連続的に実行されることを特徴とする。
【0028】
本発明は、非限定的に添付の図面によって与えられる以下の説明を読めば、より良く理解され、他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明に係る測定デバイスの第1の実施形態を示し、デバイスは、ターンテーブルを含む。
【
図2】
図2は、ウェーハの変形の光学測定の原理を示す。
【
図3】
図3は、ウェーハの変形の光学測定の原理を示す。
【
図4】
図4は、本発明に係る測定デバイスの第2の実施形態を示し、デバイスは、照明パターンによるディスプレイ画面を含む。
【
図5】
図5は、本発明に係る測定デバイスのこの第2の実施形態の変形例を示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る測定デバイスの第3の実施形態、及び当該実施形態の変形例を示す。
【
図7】
図7は、本発明に係る測定デバイスの第3の実施形態、及び当該実施形態の変形例を示す。
【
図9】
図9は、凹状の反射面の測定に適した、本発明に係るデバイスの一実施形態を示す。
【
図10】
図10は、反射面の曲率半径の関数としての、拡大における変化を示す。
【
図11】
図11は、同心円を含む照明パターン、及び湾曲した反射面によって形成された画像を示す。
【
図12】
図12は、同心円を含む照明パターン、及び湾曲した反射面によって形成された画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
説明してきたように、測定デバイスは、物体の反射面の変形を測定するために使用できる。半導体ウェーハの変形の測定に、特に良く適している。以下の実施例は全てこの技術分野に関するものであるが、これは、本発明がそれに限定されることを意味するとみなされるべきではない。
【0031】
第1の非限定的な実施例として、
図1は、ウェーハ10の変形を測定するための本発明に係るデバイスの第1の実施形態を示している。この図及び以下の図では、ウェーハは、変形を示すために太い円弧で表されている。更に、照明パターンの特定のスポットから出力される光線の経路は、細かな破線で示されており、カメラの対物レンズでカバーされる視野は、大きな破線で示されている。
【0032】
一般に、ウェーハの厚さは、100ミクロン~700ミクロンである。それらの直径は、通常、25ミリメートル~250ミリメートルである。測定デバイスは、その構成に適切な変更が加えられた場合、局所的な、凹状又は凸状の曲率半径が数ミリメートル~数十キロメートルで変化する変形を測定することができる。これらの基板は、例えば、ガリウムヒ素でできている。
【0033】
測定デバイスは、既知の形式の照明パターン21を作成することを可能にする手段20を備える。不透明な画面に穴を開けた透明なシンボルを照らす光源などの個別のコンポーネントを使用して、このパターンを作成することが可能である。照明パターンが表示されるディスプレイ画面を使用することも可能である。この場合、照明パターンの変更、その複製、ディスプレイ画面上でのその移動、又はその明るさ若しくはその色の変更さえも簡単になる。
【0034】
寄生光を制限するため、単色又はスペクトル的に制限された放射を使用することが有利であり得る。この場合、感光性の受光器には、発せられた放射のみを透過するスペクトルフィルタが備えられている。
【0035】
幾何学的な照明パターンは、一般に、マトリックスアレイの形式で構造化できる光スポットによって形成される。例として、
図3は、3列及び3行を備えるマトリックスアレイに配置された9つの光スポット22を含むこのタイプのアレイを示す。
図3では、光スポットはディスクで表されている。以下で見られるように、光スポットを使用すると、信号処理が容易になる。より多くのスポットを含むマトリックスアレイを使用して、より高い精度を得ることが可能である。光スポットの数を増やすことにより、測定の精度は増大するが、それに応じて画像の処理時間が長くなる。しかしながら、特定のアプリケーションでは、限られた数の光スポットを用いてリアルタイムに作業することが有利である。
【0036】
例として、光スポットの直径は約500ミクロンであり、2つのスポット間の距離は約数ミリメートルである。
【0037】
測定デバイスを真空チャンバで使用する場合、照明パターンはチャンバの外部にある。ウェーハから照明パターンを分離する距離は、約数十センチメートルである。測定デバイスは、照明パターンの中心と照らされた領域の中心とを結ぶ直線と、ウェーハの表面の法線との間の様々な傾斜角θで動作することができる。しかしながら、測定デバイスを、垂直の、又はほぼ垂直な入射角で動作させることが望ましい場合、残りの記載でわかるように、発光チャネルを受光チャネルから分離するように変更する必要がある。
【0038】
本発明に係るデバイスの利点の1つは、どんな傾斜角でも動作し得ることである。デバイスの感度が傾斜角θとともに増大することに注意することが重要である。感度は、曲率が低い場合、一次近似に対して傾斜角の余弦の逆数で変化するため、グレージング入射で最大になる。したがって、大きな傾斜角を使用することが有利である。唯一の制限は、傾斜角が増大すると、反射面への照明パターンの投影が、反射面のますます大きな領域をカバーすることである。典型的には、この利点から利益を得るために、傾斜角は、60度~89度に含まれる角度範囲にあってもよい。
【0039】
ウェーハは、反射により、照明パターン21の画像23を形成し、その画像は、
図1及び以下の図において破線で描かれている。
【0040】
測定デバイスはまた、感光性の受光器30を備える。測定デバイスは、カメラが問題である。測定デバイスは、数センチメートルの焦点距離の対物レンズ31と、(様々な図において示されていない)受光器のマトリックスアレイとを備える。例えば、焦点距離が50ミリメートル又は100ミリメートルの対物レンズを使用することが可能である。この対物レンズの開口部は、従来、被写界深度を定義する。受光器のマトリックスアレイが高解像度を有する必要はない。
図1に見られ得るように、カメラの光軸は、ウェーハによって反射される照明パターンの画像23の最終画像24がカメラの視野のほぼ中心に位置するように配置される。したがって、カメラは、ウェーハの表面の法線に対して、照明パターンの位置と対称的な位置を占める。この対物レンズを備えたカメラの視野は、パターンの画像の全体が視認可能なようにしなければならない。前述のように、カメラのレンズは、寄生光を低減するために、照明パターンの発光スペクトル帯域に適したスペクトルフィルタを備えてもよい。
【0041】
図2に示すような、9つの光スポット22を含む照明パターン21の場合、ウェーハからの反射、及び対物レンズ31による焦点整合後に、最終的に、
図3に示す、9つの光スポット22を含む画像24が得られる。画像は、ディスク26で表される9つの光スポットを備えている。
【0042】
ウェーハが完全に平面である場合、この画像24は、破線で描かれたディスク25から構成され得る。画像は、照明パターンの完全な画像になり得る。
【0043】
ウェーハが変形すると、この画像は変形し、太線で描かれたディスク26から構成される。画像分析手段40を使用して画像を分析することにより、光検出マトリックスアレイの精度よりも高精度に、各光スポット22の各画像26の中心の位置を判定することが可能である。
【0044】
この目的のために、いわゆる「アップスケーリング」技術を使用して、画像の解像度を人為的に増大させることが可能になる。通常、アップスケーリングのスケール因子は、このタイプのアプリケーションでは8である。
【0045】
したがって、
図3に見られ得るように、2次元座標系(X、Y)において、時間t1における光スポット26間の、Xの距離x
1及びYの距離y
1を非常に正確に判定し、それらを、参照面上の時間t0における光スポット25間で得られた距離x
0及び距離y
0と比較することが可能である。これらの距離の平均値間の比率により、定義された方向の拡大にアクセスできる。幾何光学の原理により、これらの拡大の測定から変形を推定することが可能になる。同じ光学原理を使用して、複数方向における拡大の検討により、変形の異方性を推定することが可能になる。入射角で明るさの不変性の特性を追加することにより、照明パターンとウェーハの表面の法線との間のどんな角度にも、これらの原理を適用することが可能である。
【0046】
画像処理には、計算リソースと必要なメモリとの両方の点で、現在のデスクトップコンピュータで達成可能なパフォーマンスと完全に互換性があり、リアルタイム、すなわち2つの測定を分離する時間間隔、つまり数百分の1秒で実行できる、計算コンピューティング手段が必要である。
【0047】
測定された変形は、照明パターンによって照らされたウェーハの領域11の変形である。ウェーハの寸法が大きい場合、このゾーンは、ウェーハ10を部分的にしか覆わない。このように、本発明に係る測定デバイスは、少なくとも2つの測定を実行するための手段を備え、各測定は、照明パターンを放射することを含み、第1の測定に関連付けられた第1の照明パターンが、第2の測定に関連付けられた第2の照明パターンにより照らされたウェーハの第2の領域とは異なるウェーハの第1の領域を照らすように、2つの測定を実行するための当該手段が配置されており、カメラは、2つの測定の間、静止したままである。1つの代替方法は、全ての画面をカバーする固定スポットのアレイと検討対象表面の全エリアをカバーする画像とを使用して、曲率をマッピングすることである。
【0048】
この場合、測定デバイスは、ウェーハ10の下に配置されたターンテーブル50を備える。このターンテーブルの回転軸は、ウェーハ表面の法線に平行である。この配置の利点は、堆積層の均一性の理由から、ほとんどの真空チャンバがこのタイプのターンテーブルを備えることである。したがって、ウェーハの完全なマップを作成するには、ウェーハの様々な回転角度に対応する一連の測定値を記録するだけで十分である。ウェーハの変形が均一で等方性の場合、測定デバイスは、回転にかかわらず、静止したウェーハで取得されるものと同一の感度で、変形を連続的に測定することが可能になる。
【0049】
ウェーハ上に原子薄膜を堆積する典型的な条件下で、それでもなお測定を使用してS/N比を最適化しながら単層のスケールで感度を維持するために、カメラは少なくとも10Hzの取得周波数を有しなければならない。
【0050】
測定時のウェーハの位置は、正確に知る必要がある。この位置を判定するために、様々な技術を使用することができる。1つの可能な技術は、堆積前にウェーハを較正することである。この較正には、システムの欠陥の全てを記録できるという利点がある。したがって、測定中、測定された偏差は、ウェーハ上の堆積によって引き起こされた変形のみに対応する。
【0051】
一例として、ターンテーブルが12回転/mnのスピードで回転し、カメラが1秒あたり30レコードのレートで測定を実行する場合、2.4度だけ離れた領域に対応する一連のレコードが取得される。これらの領域は角度的に近いため、2つの連続する角度間を補間することにより、ターンテーブルの任意の回転角度において曲率を完全に参照することが更に可能である。その後実行される任意の測定は、実行される角度の知識により、補間から推定された、同じ角度における基準値と比較され得る。
【0052】
ウェーハの回転移動は、「インサイチュ」での特性評価、すなわち、ウェーハ上への層の堆積中の特性評価に良く適している。
【0053】
また、ウェーハの完全な特性評価を実行するために、ウェーハ平面内でウェーハの並進移動を実行することも可能である。繰り返しになるが、移動の直接測定又は事前の特性評価のいずれかによって、ウェーハの直線的な移動を完全に知るだけで十分である。直線移動による測定は、堆積前のウェーハの平坦性を判定するためのバージンウェーハ、又は堆積後のウェーハの表面仕上げを検査するために完成ウェーハ、のいずれの特性評価にも良く適している。この技術の主な利点の1つは、真空チャンバよりも制約がずっと少ない環境で、真空チャンバの外部「エクスサイチュ」で測定を実行できることである。
【0054】
連続的に測定を行うことの利点の1つは、たとえウェーハの変形が相当な場合にパターンの画像が非常に変形していても、変形の進捗を追跡することが常に可能であるため、測定ポイントにはいかなるあいまいさもないことである。
【0055】
第2の非限定的な実施例として、
図4は、ウェーハ10の変形を測定するための本発明に係るデバイスの第2の実施形態を示す。
図1で使用されたのと同じ表記が、
図4でも使用されている。使用されるカメラは同じ性質のものである。この第2の実施形態では、ウェーハ10は静止したままである。測定領域の移動を得るために、照明パターンを移動する。このパターンの移動を達成するには、様々な方法がある。最も単純で最も再現性の高い方法は、ディスプレイ画面上でパターンを移動することである。この移動は、
図4の2つの異なる軸に沿って配置された逆V字形によって象徴されている。したがって、この構成では、移動できる機械部品はない。更に、照明パターンを移動することが簡単なだけでなく、照明パターンを複製したり、拡大したり、変更したりすることも可能である。照明パターンが形成される光スポットのディスプレイ画面上の位置を完全に知ることもまた簡単である。昨今のディスプレイ画面の明るさと解像度は、小さなサイズの照明パターンを生成するのに十分である。一例として、スポットの明るさは、200~500cd/m
2であり、画面の平均回転数は、100~500ドット/インチ(DPI)である。
【0056】
繰り返しになるが、一連の測定を実行することにより、ウェーハの変形の完全なマップが判定される。
【0057】
図5に示される一変形例では、例えば、堆積操作の再現性の検査を実行するために、所与の一連の測定において、複数のウェーハ10a、10b、及び10cを測定することが可能である。このタイプの検査は、通常、より好ましい環境条件下で、エクスサイチュで実施される。
【0058】
図1、
図4、
図5に見られ得るように、放射ビームの入射角θが特定の値、例えば数度超を保持する場合、照明パターンを生成する部分は、受信カメラから当然に分離される。この入射角θが小さいかゼロの場合、すなわち、測定がウェーハ上で垂直又はほぼ垂直な入射で実行される場合、同じことは行われない。
【0059】
この問題を解決するために、測定デバイスは、
図6及び
図7でわかり得るように、半透鏡の平面ビームスプリッタを備える。このスプリッタ60は、ビームスプリッタによる透過後、ウェーハからの反射及び当該ビームスプリッタからの反射スポットのパターンの画像がカメラの検出器上に形成されるように配置される。照明パターンとカメラを反転させることも可能である。この場合、当該ビームスプリッタからの反射、ウェーハからの反射、及び当該ビームスプリッタによる透過後のスポットのパターン画像が、カメラの検出器上に形成される。
【0060】
もちろん、このセットアップを用いて、
図7に示すような、ディスプレイ画面上の照明パターンの移動、又はウェーハの移動若しくは回転、のいずれかを介して、測定領域の移動を取得することが可能である。
【0061】
図8に示すように、照明パターンの寸法が大きい、多数の照明スポットを含む照明デバイスを使用して、複数のウェーハを同時に検査すること、及び瞬間的な変形のマップを取得すること、もまた可能である。
【0062】
平面又は弱く湾曲した表面の場合、入射角を増大させることによりデバイスの感度を上げることが可能であり、グレージング入射では感度が悪化することがわかっている。反射面が湾曲している今回は、デバイスの感度を増大する第2の方法がある。本発明に係る測定デバイスは、この表面を介して物体の画像の変形を観察することにより、反射表面の曲率を測定することを可能にする。この目的のため、照明パターンの画像と、照明パターン自体との間の拡大が測定される。反射面の所与の変形に対して、拡大の変化が大きいほど、測定デバイスの感度は高くなる。したがって、拡大に対する最良の感度を得ることを可能にする構成を探すことが有利である。これらの構成は、パターンの画像がカメラのレンズの近くに位置するときに取得される。この条件は、凹状の反射面に対してのみ取得することができる。この場合で、反射面の中心までのパターンの距離がdで示される場合、カメラのレンズから同じ中心までの距離はd’で示され、且つ、表面の曲率半径はRで示され、拡大に対する感度を最大にするには、距離d及びd’が以下の式、
d.d’/(d+d’)=R/2
を順守する必要がある。
【0063】
拡大に対するこの高感度を得ることを可能にする単純な構成では、反射面の曲率中心に照明パターンを配置する。この配置を
図9に示す。この図では、使用されている参照番号は、前の図で使用されている参照番号と同じである。この場合、距離dは反射面10の半径Rに等しく、距離d’も同じ半径Rに等しい。パターンによって放射された光線を、反射面10によって反射された光線から分離するために、
図6、
図7、及び
図8の前述のデバイスにおけるように、半透鏡60が使用される。
【0064】
図10の曲線は、1メートルに等しい距離d及びd’に対する表面の曲率κの関数として、拡大γの変化を示している。
図10では、曲率κは-5~+5で変化し、拡大は-4~+4で変化する。表面の曲率κが1メートルに等しい場合、すなわち、その曲率半径が1メートルに等しい場合、
図10に見られ得るように、前述の方程式が尊重され、拡大γが発散する。次いで、最大感度が取得される。この値についての曲率半径の変動は、拡大における非常に大きな変動につながることになる。
【0065】
この最終配置は、凹状の反射面でのみ動作する。半導体ウェーハの場合、所望の曲率を得るためにプレ応力がかけられる平面ウェーハを使用することが可能である。例えば、ウェーハを湾曲させる裏側に堆積を実行することによって、この応力を簡単に取得することが可能である。曲率半径の小さな変動を導入する前面の堆積は、カメラで見られる拡大における実質的な変動につながることになる。
【0066】
一般に、発光体及びカメラが反射面から遠いほど、測定デバイスの感度は向上する。
【0067】
反射面の曲率は、全ての方向で必ずしも同じではない。これは、特に、半導体ウェーハ上に結晶膜が堆積される場合に当てはまる。例えば、異方性材料の結晶成長中に、1つの方向が別の方向よりも湾曲している、異方性変形が観察される。照明パターンが
図2~
図8に示すような別個の光スポットで構成されている場合、異方性情報は、各分析画像に対して2つの直交方向で同時に取得される。しかしながら、単一の画像では、異方性の軸を判定するには不十分である。異方性の軸を判定するために、その軸を中心にウェーハの完全な回転を実行する必要がある。
【0068】
異方性情報を判定するため、光スポットのマトリックスアレイよりも適切な照明パターンを使用する必要がある。このように、パターンとして、光の円若しくは光の楕円、又は一連の同心円若しくは一連の同心楕円さえも使用される場合、単一の画像を用いて、全てのウェーハ変形情報を判定することが可能である。
図11は、9つの同心円の光で構成されるこのタイプの照明パターン21を示し、
図12は、反射性ウェーハから反射後のこれらの同心円の画像を示している。円の楕円変形、及び楕円の軸の傾きは、反射性ウェーハの異方性を表している。
【0069】
これらの特定の円形又は楕円形の照明パターンの作成には、特に問題はない。