(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20221104BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20221104BHJP
F28F 9/24 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F28F1/40 M
F28F3/08 301C
F28F9/24
(21)【出願番号】P 2020145269
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505292111
【氏名又は名称】ジオシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高杉 真司
(72)【発明者】
【氏名】館野 正之
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034662(JP,A)
【文献】特開2017-101906(JP,A)
【文献】特開2006-162157(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138906(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/40
F28F 3/08
F28F 9/24
F28F 19/00
F28D 1/047
F28D 1/06
F28D 7/04
F28D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源水流入部と熱源水流出部とを有し上記熱源水流入部から上記熱源水流出部に向けて熱源水が流される流水槽と、
利用側機器の熱媒体が流され上記流水槽内で上記熱源水に浸漬され
て上記熱源水との間で熱交換が行われる熱交換器とを含み
、上記熱交換器として、熱媒体流入側の第1端管と熱媒体流出側の第2端管との間に可撓性を有する複数本のパイプを並列的に接続してなる樹脂製のシート状熱交換器が用いられるとともに、上記流水槽の上記熱源水流入部と上記熱源水流出部との間に仕切板によって螺旋状の流水路が形成されており、上記シート状熱交換器が上記流水路に沿って螺旋状に配置され、上記シート状熱交換器には上記流水路内の熱源水流水方向とは逆方向に上記熱媒体が流され
る熱交換装置
において、
上記流水槽の外周側でかつ上記流水槽の底部側に上記熱源水流入部が設けられるとともに、上記熱源水流出部として端部に上向きの越流口を有し同越流口が上記流水槽の中央部分で上記仕切板の上端よりも低い位置に配置されるオーバーフロー管が用いられ、上記熱源水が上記流水槽の外周側の底部側から上記流水槽の中央部分に向けて流され、上記シート状熱交換器は、上記第1端管が上記流水槽の中央部側に配置され、上記第2端管が上記流水槽の外周側に配置されるようにして上記流水路内に配置されることを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
上記流水路内に複数枚の上記シート状熱交換器が配置され、上記各シート状熱交換器には上記熱媒体が同じ方向に流されることを特徴とする請求項
1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
上記シート状熱交換器が高密度ポリエレン製であることを特徴とする請求項1
または2に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井水や工場排水、農業用水等の水を熱源水として利用側機器の熱媒体との間で熱交換を行う熱交換装置に関し、さらに詳しく言えば、熱交換効率の高効率化をはかる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
井水(井戸水、地下水)の温度は、年間を通してほぼ一定(地域によって多少異なるがほぼ15~20℃程度)であることから、近年においては、井水や河川水等の自然水を熱源として、エアコン等の利用側機器の熱媒体との間で熱交換を行う熱交換装置が提案されている。
【0003】
この種の熱交換装置は、自然熱を利用側機器の熱源の一部として利用することから、省エネ技術の一つとして注目されており、その一つに例えば特許文献1に記載されているように、河川等の流水中に熱交換器を浸漬した流水利用型熱交換装置がある。
【0004】
これによれば、熱交換器の周囲に水が停滞しないため、高効率で安定した熱交換を行うことができるが、まずは河川がない地域では成り立たない。また、河川に熱交換器を設置するにしても、増水対策や濁流対策等を講じる必要がある。
【0005】
また、井水や河川水の他に、これまでに捨てられていた工場排水、農業用水等の排水も熱源水として利用することができるが、これら再生可能エネルギー熱を効率良く、安価に利用できる熱交換システムにおいて中心技術として重要な役割を果たすのは、耐久性に優れ、かつ、熱交換効率の高い熱交換器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、耐久性に優れ、かつ、熱交換効率の高い熱交換器を備えた流水利用型の熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、熱源水流入部と熱源水流出部とを有し上記熱源水流入部から上記熱源水流出部に向けて熱源水が流される流水槽と、利用側機器の熱媒体が流され上記流水槽内で上記熱源水に浸漬されて上記熱源水との間で熱交換が行われる熱交換器とを含み、上記熱交換器として、熱媒体流入側の第1端管と熱媒体流出側の第2端管との間に可撓性を有する複数本のパイプを並列的に接続してなる樹脂製のシート状熱交換器が用いられるとともに、上記流水槽の上記熱源水流入部と上記熱源水流出部との間に仕切板によって螺旋状の流水路が形成されており、上記シート状熱交換器が上記流水路に沿って螺旋状に配置され、上記シート状熱交換器には上記流水路内の熱源水流水方向とは逆方向に上記熱媒体が流される熱交換装置において、
上記流水槽の外周側でかつ上記流水槽の底部側に上記熱源水流入部が設けられるとともに、上記熱源水流出部として端部に上向きの越流口を有し同越流口が上記流水槽の中央部分で上記仕切板の上端よりも低い位置に配置されるオーバーフロー管が用いられ、上記熱源水が上記流水槽の外周側の底部側から上記流水槽の中央部分に向けて流され、上記シート状熱交換器は、上記第1端管が上記流水槽の中央部側に配置され、上記第2端管が上記流水槽の外周側に配置されるようにして上記流水路内に配置されることを特徴としている。
【0011】
上記流水路内に複数枚の上記シート状熱交換器が配置され、上記各シート状熱交換器には上記熱媒体が同じ方向に流される態様も本発明に含まれる。
【0012】
また、上記シート状熱交換器は高密度ポリエチレン製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流水槽の熱源水流入部と熱源水流出部との間に仕切板によって螺旋状の流水路が形成され、シート状熱交換器がその流水路に沿って螺旋状に配置され、シート状熱交換器には流水路内の熱源水流水方向とは逆方向に熱媒体が流されるようにしたことにより、熱交換効率のよい流水利用型の熱交換装置が提供される。また、この熱交換装置は、プレハブ工法的な組み立てにより簡単に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による熱交換装置の第1実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)そのA-A線に沿った模式的な断面図。
【
図2】上記熱交換装置の第2実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)そのB-B線に沿った模式的な断面図。
【
図3】上記熱交換装置の第3実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)そのC-Cに沿った模式的な断面図。
【
図4】上記各実施形態で用いられているシート状熱交換器を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、
図1ないし
図4により、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
まず、
図1(a)(b)を参照して、第1実施形態に係る熱交換装置1は、水(熱源水)が流される流水槽10を備えている。流水槽10の寸法(容積)は要求される熱交換能力に応じて適宜決められてよい。
【0017】
流水槽10は平面視において円形であることが好ましいが、平面視で矩形状であってもよい。流水槽10は、鋼板パネル等のパネル材により構築することができるが、コンクリート製等の構築物としてもよい。場合によっては、建造物の床下等に配置されてもよい。
【0018】
また、熱源水として使用する水は、井水(井戸水、地下水)、水道水や河川水の他に、工場排水、農業用水、水産施設からの排水等が用いられてもよい。
【0019】
流水槽10は、熱源水流入部11と熱源水流出部12とを有し、熱源水流入部11から熱源水流出部12に向けて熱源水が流される。第1実施形態において、熱源水流入部11は流水槽10の底部側の中央部分に設けられ、熱源水流出部12は流水槽10の外周部側に配置されている。
【0020】
第1実施形態によると、熱源水供給管13の流出側端部を流水槽10に対する熱源水流入部11として、
図1(b)に示すように、熱源水供給管13をL字状に折り曲げ、その折り曲げ部分を流水槽10の上方から流水槽10の中央部分に差し込むことにより、熱源水流入部11を流水槽10の底部側の中央部分に設けるようにしている。なお、図示しないが、流水槽10の底部に孔を開けて熱源水流入部11とし、その熱源水流入部11に熱源水供給管13を流水槽10の外側から接続するようにしてもよい。
【0021】
これに対して、熱源水流出部12は流水槽10の外周部の所定高さ位置に越流(オーバーフロー)口として形成されている。
【0022】
熱源水流入部11と熱源水流出部12との間には、仕切板14によって螺旋状の流水路15が形成されている。第1実施形態において、仕切板14は約2巻き分として螺旋状に巻回され、これにより、流水路15には内周側流水路15aと外周側流水路15bのほぼ2周分が含まれるが、流水路15を何周分とするかは任意に決められてよい。
【0023】
仕切板14は樹脂製、金属製のいずれであってもよいが、耐腐食性の面からすれば樹脂製が好ましい。なお、
図1(b)に示すように、仕切板14は熱源水流出部(越流口)12で規定される水面(溢水面)よりも上方に突出する高さを有している。
【0024】
流水路15に沿って熱交換器20が配置される。本発明において、熱交換器20にはシート状熱交換器21が用いられる。なお、
図1(a)において、作図の都合上、シート状熱交換器21は点線で示されている。
【0025】
図4を参照して、シート状熱交換器21は、熱媒体流入(IN)側の第1端管211と熱媒体流出(OUT)側の第2端管212との間に、可撓性を有する複数本の細いパイプ213を並列的に接続してなる熱交換器であり、その全体が樹脂製である。
【0026】
好ましくは、シート状熱交換器21の中央部分に多列のパイプ213をシート状に束ねておくための梁部214が設けられる。このシート状熱交換器21は面状熱交換器、カーペット状熱交換器等とも呼ばれるが、この種のシート状熱交換器の一例としては、クリモトポリマー社製の商品名「G-カーペット」が好適である。
【0027】
シート状熱交換器20aの多くはポリエチレン製であるが、高密度ポリエチレン製であることが好ましい。ポリエチレン製の場合、耐熱温度が約60℃であるが、高密度ポリエチレン製とすることにより、耐熱温度を約80℃にまで引き上げることができる。
【0028】
なお、説明の便宜上、第1端管211を熱媒体流入(IN)側、第2端管212を熱媒体流出(OUT)側としているが、シート状熱交換器21には熱媒体を流す方向が決められているわけではなく、第1端管211側を熱媒体流出(OUT)側、第2端管212を熱媒体流入(IN)側としてもよい。
【0029】
シート状熱交換器21には、図示しない利用側機器の熱媒体が流されるが、本発明においては、シート状熱交換器21の熱媒体の流れ方向は、流水路15内の熱源水の流れ方向とは逆方向とする。
【0030】
第1実施形態によると、熱源水流入部11は流水槽10の底部側の中央部分に設けられ、熱源水流出部12が流水槽10の外周側に設けられ、
図1(a)において、仕切板14が反時計方向の左螺旋であることから、流水路15には、
図1(a)に黒塗り矢印で示すように、熱源水が反時計方向回りに流れる。
【0031】
そこで、シート状熱交換器21を流水路15内に配置するにあたって、熱媒体流入(IN)側の第1端管211を外周側流水路15bの越流口12付近に配置し、熱媒体流出(OUT)側の第2端管212を内周側流水路15aの流水入口付近に配置する。
【0032】
これにより、シート状熱交換器21には、
図1(a)の白抜き矢印で示すように、利用側機器の熱媒体が熱源水の流れ方向とは逆方向の時計方向回りに流れるため、熱交換効率が高められる。
【0033】
次に、
図2(a)(b)により第2実施形態について説明する。第2実施形態においても、上記第1実施形態と同じく、流水槽10内に仕切板14により螺旋状の流水路15が形成され、また、熱交換器20としてシート状熱交換器21が用いられるが、熱源水流入部11と熱源水流出部12の配置が上記第1実施形態と異なっている。なお、
図2(a)においても、作図の都合上、シート状熱交換器21は点線で示されている。
【0034】
すなわち、第2実施形態によると、流水槽10の外周側に熱源水流入部11が設けられ、流水槽10の中央部分に熱源水流出部12が設けられる。熱源水流入部11は流水槽10の外周の好ましくは流水槽10の底部側寄りの位置に設けられるとよい。熱源水流入部11には、熱源水供給管13が接続される。熱源水流出部12には、端部に上向きの越流口121を有するオーバーフロー管122が用いられる。
【0035】
これによれば、熱源水供給管13から供給される熱源水は熱源水流入部11から流水槽10内に入り、仕切板14により形成された外周側流水路15bから内周側流水路10aを経て流水槽10の中央部分へと流れる。
【0036】
流水槽10内の水位が上昇し、越流口121を超えると、余剰の熱源水がオーバーフロー管122より槽外に排出される。この第2実施形態において、流水槽10内における熱源水の流れ方向は、
図2(a)の黒塗り矢印で示すように時計方向回りである。
【0037】
そこで、シート状熱交換器21を流水路15内に配置するにあたって、熱媒体流入(IN)側の第1端管211を内周側流水路15aの流水出口側付近に配置し、熱媒体流出(OUT)側の第2端管212を外周側流水路15bの流水入口側付近に配置する。
【0038】
これにより、シート状熱交換器21には、
図2(a)の白抜き矢印で示すように、利用側機器の熱媒体が熱源水の流れ方向とは逆方向の反時計方向回りに流れるため、熱交換効率が高められる。
【0039】
次に、
図3(a)(b)により第3実施形態について説明する。第3実施形態では、上記第1実施形態の態様のもとで、用いるシート状熱交換器21を3枚としている。すなわち、仕切板14により形成される螺旋状の流水路15(内周側流水路15a,外周側流水路15b)内に3枚のシート状熱交換器21A,21B,21Cを配置する。
図3(a)においても、作図の都合上、シート状熱交換器21は点線で示されている。
【0040】
第3実施形態において、流水路15(内周側流水路15a,外周側流水路15b)内における熱源水の流れ方向は、上記第1実施形態と同じく反時計方向であるから、各シート状熱交換器21A,21B,21Cの熱媒体流入(IN)側の第1端管211を外周側流水路15bの越流口12付近に配置し、熱媒体流出(OUT)側の第2端管212を内周側流水路15aの流水入口付近に配置する。
【0041】
これにより、各シート状熱交換器21A,21B,21Cには、
図3(a)の白抜き矢印で示すように、利用側機器の熱媒体が熱源水の流れ方向とは逆方向の時計方向回りに流れるため、熱交換効率が高められる。
【0042】
別の例として、シート状熱交換器21を2枚もしくは4枚以上としてもよいが、いずれにしても熱交換効率を高くするうえで、各シート状熱交換器21に流れる熱媒体の流れ方向は流水路内を流れる熱源水の流れ方向とは逆方向にする。
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、流水槽の熱源水流入部と熱源水流出部との間に仕切板によって螺旋状の流水路を形成するとともに、シート状熱交換器をその流水路に沿って螺旋状に配置し、シート状熱交換器には流水路内の熱源水流水方向とは逆方向に熱媒体が流されるようにしたことにより、熱交換効率のよい流水利用型の熱交換装置が提供される。また、この熱交換装置は、プレハブ工法的な組み立てにより簡単に構築することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 熱交換装置
10 流水槽
11 熱源水流入部
12 熱源水流出部
121 越流口
122 オーバーフロー管
13 熱源水供給管
14 仕切板
15 流水路
15a 内周側流水路
15b 外周側流水路
20 熱交換器
21 シート状熱交換器
211 第1端管(IN側)
212 第2端管(OUT側)