(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】バイオセンサおよびバイオ検出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20221104BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221104BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20221104BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20221104BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20221104BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
G02B5/30
G02B5/28
C12M1/34 Z
G01N21/64 A
G01N21/64 F
G01N37/00 102
(21)【出願番号】P 2020211504
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507296388
【氏名又は名称】采▲ぎょく▼科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】VisEra Technologies Company Limited
【住所又は居所原語表記】No.12,Dusing Rd.1, Hsinchu Science Park,Hsin-Chu City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】謝 馨儀
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008682(JP,A)
【文献】特表2010-522322(JP,A)
【文献】特開2005-249635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G02B 5/30
G02B 5/28
C12M 1/34
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
前記基板に埋め込まれた複数のフォトダイオード、
前記基板上に配置された偏光素子、
前記偏光素子上に配置された複数の反応部位、および
前記基板と前記偏光素子の間に配置されたフィルター層を含み、
前記フィルター層は2つのサブフィルター層を含み、
前記複数の反応部位のそれぞれは、前記複数のフォトダイオードのうちの2つに対応するバイオセンサ。
【請求項2】
基板、
前記基板に埋め込まれた複数のフォトダイオード、
前記基板上に配置された偏光素子、
前記偏光素子上に配置された複数の反応部位、および
前記基板と前記偏光素子の間に配置されたフィルター層を含み、
前記フィルター層は4つのサブフィルター層を含み、
前記複数の反応部位のそれぞれは、前記複数のフォトダイオードのうちの4つに対応するバイオセンサ。
【請求項3】
基板、
前記基板に埋め込まれた複数のフォトダイオード、
前記基板上に配置された偏光素子、
前記偏光素子上に配置された複数の反応部位、および
前記基板と前記偏光素子の間に配置されたフィルター層を含み、
前記フィルター層は2つのサブフィルター層を含み、
前記偏光素子は2つのサブ偏光層を含み、
前記複数の反応部位のそれぞれは、前記複数のフォトダイオードのうちの2つに対応するバイオセンサ。
【請求項4】
基板、
前記基板に埋め込まれた複数のフォトダイオード、
前記基板上に配置された偏光素子、
前記偏光素子上に配置された複数の反応部位、および
前記基板と前記偏光素子の間に配置されたフィルター層を含み、
前記フィルター層は4つのサブフィルター層を含み、
前記偏光素子は2つのサブ偏光層を含み、
前記複数の反応部位のそれぞれは、前記複数のフォトダイオードのうちの4つに対応するバイオセンサ。
【請求項5】
基板、
前記基板に埋め込まれた複数のフォトダイオード、
前記基板上に配置された偏光素子、
前記偏光素子上に配置された複数の反応部位、および
前記基板と前記偏光素子の間に配置されたフィルター層を含み、
前記フィルター層は4つのサブフィルター層を含み、
前記偏光素子は4つのサブ偏光層を含み、
前記複数の反応部位のそれぞれは、前記複数のフォトダイオードのうちの4つに対応するバイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサとバイオ検出システムに関するものであり、特に、偏光素子を有するバイオセンサおよび偏光素子を有するバイオ検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
集積化センシングデバイス(integrated sensing device)が、生物学的分析用に最近用いられている。このようなアプリケーションを用いるとき、生物学的サンプルまたは生化学的サンプルをフォトダイオード上に配置することができる。DNA配列決定、免疫蛍光検出などのバイオ反応または相互作用は、励起または発光スペクトルおよび/または蛍光分子の強度を通じて報告することができる。蛍光は、より短い励起波長によって励起され、フォトダイオードに向けてより長い出射光を生成することができる。蛍光のスペクトル分布および強度は、フォトダイオードによって検出および判定することができる。
【0003】
多くの集積化バイオセンシングデバイスは、干渉フィルター、吸収フィルター、またはプラズモンフィルターなどの光学フィルターを埋め込むように設計されてきた。これらのフィルターは通常、励起光をブロックして、出射光を通過させるが、透過率スペクトルは固定されており、それらの設計に基づいている。これは、フィルターの膜厚とスタック、顔料、またはナノ構造の形状によって影響を受けることがある。多くの蛍光分子を検出する必要があるとき、異なる波長の全てにおいて、異なる励起光が必要となる。しかしながら、集積デバイス内に埋め込まれたフィルターの透過波長を調整することは難しく、用途が制限されることになる。
【0004】
従って、より柔軟な励起光の遮光性を有する新規のバイオセンサおよび新規のバイオ検出システムが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より柔軟な励起光の遮光性を有する新規のバイオセンサおよび新規のバイオ検出システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバイオセンサおよびバイオ検出システムは、偏光素子を用いることにより、フォトダイオードが励起光を受光するのを防止することができる。上部偏光素子は励起光を通過させ、他方の偏光素子はフォトダイオード上に配置される。上部偏光素子の偏光角は、他方の偏光素子の偏光角と異なる。励起光が上部偏光素子を通過した後、励起光は、上部偏光素子の偏光角と同じ偏光角で偏光するように変換される。励起光はフォトダイオード上の偏光素子と異なる偏光角で偏光するため、励起光は偏光素子を通過することができない。従って、フォトダイオードが励起光を受光するのを防止することができる。また、さまざまな励起光を対象とするさまざまなバイオセンサまたはバイオ検出システムを設計せずとも、本発明の1つのバイオセンサまたは1つのバイオ検出システムは、さまざまな励起光をブロックするのに十分である。
【0007】
バイオセンサは、本発明のいくつかの実施形態に従って提供される。バイオセンサは、基板、複数のフォトダイオード、偏光素子、および複数の反応部位を含む。複数のフォトダイオードは、基板に埋め込まれる。偏光素子は基板上に配置される。反応部位は偏光素子上に配置される。
【0008】
バイオ検出システムは、本発明のいくつかの実施形態に従って提供される。バイオ検出システムは、基板、複数のフォトダイオード、偏光素子、複数の反応部位、上部偏光素子、および励起光源を含む。複数のフォトダイオードは、基板に埋め込まれる。偏光素子は基板上に配置される。反応部位は偏光素子上に配置される。上部偏光素子は反応部位上に配置される。励起光源は、上部偏光素子上に配置され、上部偏光素子を通過する励起光を出射する。
【0009】
詳細な説明は、添付の図面と併せて以下の実施形態に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明および例を読むことで、より完全に理解することができる。
【
図1A】
図1Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの断面図を示している。
【
図1B】
図1Bは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの断面図を示している。
【
図1C】
図1Cは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの断面図を示している。
【
図2A】
図2Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの適用を示している。
【
図2B】
図2Bは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの適用を示している。
【
図2C】
図2Cは、Alexa 405、Alexa 488、Alexa 555、およびAlexa 647の励起スペクトルと発光スペクトルを示している。
【
図2D】
図2Dは、複数の蛍光マーカーの励起スペクトルを示している。
【
図3A】
図3Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの適用を示している。
【
図3B】
図3Bは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの適用を示している。
【
図4A】
図4Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの上面図を示している。
【
図4C】
図4Cは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。
【
図4D】
図4Dは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの上面図を示している。
【
図5A】
図5Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの上面図を示している。
【
図5C】
図5Cは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。
【
図6A】
図6Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの上面図を示している。
【
図6C】
図6Cは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。
【
図6D】
図6Dは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの上面図を示している。
【
図6F】
図6Fは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。
【
図6G】
図6Gは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のバイオセンサおよびバイオ検出システムは、以下の説明で詳細に説明される。以下の詳細な説明では、説明のために、多数の特定の詳細および実施形態が本開示の完全な理解を提供するために明記されている。以下の発明を実施するための形態で説明された特定の構成要素および構造は、本開示を明瞭に説明するために記述されている。しかしながら、本明細書で記述される例示的な実施形態は、単に説明のために用いられることは明らかであり、発明の概念は、これらの例示的な実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。また、異なる実施形態の図面では、本開示を明瞭に説明するために、類似の番号および/または対応の番号を用いて、類似の構成要素および/または対応の構成要素を示すことがある。しかしながら、異なる実施形態の図面での、類似の番号および/または対応の番号の使用は、異なる実施形態間の相関関係を示唆するものではない。また、この明細書では、例えば、「第2の材料層上/第2の材料層の上方に配置された第1の材料層」などの表現は、第1の材料層および第2の材料層の直接接触、または第1の材料層と第2の材料層との間の1つ以上の中間層との非接触状態を指している。上述の状況では、第1の材料層は、第2の材料層に直接接触しなくてもよい。
【0012】
また、この明細書では、関連する表現が用いられる。例えば、「下方」、「底部」、「上方」、または「上部」は、ある構成要素の別の構成要素に対する位置を説明するのに用いられる。仮に装置が上下反転された場合、「下方」側の構成要素は、「上方」側の構成要素となる。
【0013】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0014】
明細書において、相対的な用語、例えば“下方”“上方”“水平”“垂直”“上の”“下の”“上”“下”“上部”“底部”などと、その派生語(例えば“水平に”“下方に”“上方に”など)は、説明されている、または、説明において図面に示されるように、方向を示すものとして解釈される。これらの関連用語は、説明の便宜上のためのものであり、装置が特定の方向で構成される、または動作されることを必要とするものではない。「接合された」または「相互接続された」などの接合、結合などに関連する用語は、特に記述されない限り、構造が、中間構造を介して直接または間接的に、互いに固定または接合された関係を示し、2つの構造が可動、または強固に接合された関係を示してもよい。
【0015】
第1、第2、第3などの用語は、ここでは各種の素子、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するのに用いられることができ、これらの素子、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって制限されてはならない。これらの用語は単に一素子、構成要素、領域、層、および/または部分を識別するのに用いられる。従って、第1の素子、構成要素、領域、層、および/または部分は、例示的な実施形態の技術から逸脱しない限りにおいては、第2の素子、構成要素、領域、層、および/または部分と呼ばれてもよい。
【0016】
本開示では、「約」、「およそ」、および「実質的に」という用語は、一般的に、所定値または範囲の+/-20%を意味し、一般的に、所定値または範囲の+/-10%を意味し、一般的に、所定値または範囲の+/-5%を意味し、一般的に、所定値または範囲の+/-3%を意味し、一般的に、所定値または範囲の+/-2%を意味し、一般的に、所定値または範囲の+/-1%を意味し、且つ一般的に、所定値または範囲の+/-0.5%を意味する。本開示の所定値は、近似値である。即ち、「約」、「およそ」、および「実質的に」という用語の具体的な説明がないとき、所定値は、「約」、「およそ」、および「実質的に」の意味を含む。
【0017】
図1Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの断面図を示している。
図1Aに示されるように、バイオ検出システム10Aは、バイオセンサ100A、上部偏光素子108U、および励起光源118を含む。バイオセンサ100Aは、実質的に、基板102、フォトダイオード104、偏光素子108、平坦化層110およびサンプル分離層112を含む。サンプル分離層112は、バイオサンプルの固定化のための反応部位114としての複数の開口部を有する。
【0018】
基板102には、フォトダイオード104が埋め込まれている。本発明のいくつかの実施形態では、基板102は、半導体ウェーハなどのバルク半導体基板である。例えば、基板102はシリコンウェーハである。基板102は、シリコンまたはゲルマニウムなどのもう1つの元素半導体材料を含むことができる。いくつかの他の実施形態では、基板102は化合物半導体を含む。化合物半導体は、ヒ化ガリウム、炭化ケイ素、ヒ化インジウム、リン化インジウム、その他の適切な材料、またはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態では、基板102は、半導体オンインシュレータ(SOI)基板を含む。SOI基板は、酸素注入(separation by implantation of oxygen; SIMOX)プロセス、ウェーハ結合プロセス、その他の適用可能な方法、またはそれらの組み合わせを用いて製造することができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基板102は、ドープされていない基板である。
【0020】
偏光素子108は基板102上に配置され、反応部位114は偏光素子108上に配置される。偏光素子108は、偏光角を有し、これは、偏光素子108の偏光角に対して90度の位相シフトで偏光した光、または垂直に偏光した光は、偏光素子108を通過することができないことを意味する。偏光素子108は、約100~300nmの膜厚、約20~400nmの周期、および約0.2~0.8の充填率(またはデューティサイクル)を有する金属線グレーティング(metal wire grating)の層を含む。グレーティングリッジ(grating ridge)の方向は、主に偏光の透過率に影響する。例えば、偏光が偏光素子108の方向に対して平行、45度位相シフト、または90度位相シフトされたとき、偏光素子を通過した後の透過光の強度は、それぞれ、最大、約50%、最小である。従って、励起光が偏光素子108に対して90度位相シフトした偏光であるとき、反応部位の下の偏光素子108は、偏光素子108を通過する偏光をブロックする。一方、反応部位のバイオ反応レポーター(蛍光色素など)は励起され、フォトダイオード検出用に偏光素子を一部通過することができる蛍光信号を出射することができる。ブロック効率の消光比は、金属線の膜厚、グレーティング周期、および充填率によってさらに影響を受ける。消光比は、160nmの厚さ、0.5の充填率、および150nmの周期のアルミニウム線を用いて、104(光学密度(OD)の4に相当)に達することができることが、Peng Li et al. “Investigation of achromatic micro polarizer array for polarization imaging in visibe-infrared band.” Optik, vol 158, April 2018, pp. 1427-1435tで示されている。彼らの研究では、100から108の範囲の消光比に対応するさまざまなパラメータもシミュレートされた。励起光をブロックするための光学密度が3を超える光照明システムは、バイオセンシングアプリケーションで用いられるのに十分である。いくつかの実施形態では、偏光素子108は、異なる偏光角を有する1つ、2つ、3つ、または4つのサブ偏光層(sub-polarizing)を含む。偏光素子108の材料は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、またはそれらの組み合わせなどの不透明な材料であってもよい。偏光素子108が1つのサブ偏光層のみであるとき、それは、偏光素子108が実質的にサブ偏光層であることを意味する。
【0021】
平坦化層110は、偏光素子108上に配置される。平坦化層110は、スパッタリング、スピンコーティング、化学蒸着(CVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、低温化学蒸着(LTCVD)、急速熱化学蒸着(RTCVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、原子層蒸着(ALD)、物理蒸着プロセス、分子ビーム蒸着プロセス、その他の任意の適切なプロセス、またはそれらの組み合わせを用いて形成されることができるが、これらに限定されない。平坦化層110は、フォトダイオード104を層間剥離、腐食、または損傷から保護することができる。具体的には、平坦化層110は、サンプルの溶液がフォトダイオード104に接触するのを防ぐことができる。平坦化層110の材料は、金属酸化物、金属窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、金属酸化物、または金属窒化物、酸化ケイ素、または窒化ケイ素、具体的には、酸化ケイ素(例えば、SiO2)、酸化チタン(例えば、TiO2)、酸化タンタル(例えば、Ta2O5)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、酸化ニオブ(例えば、Nb2O5)、窒化ケイ素(例えば、Si3N4)、窒化チタン、窒化タンタル、またはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。また、平坦化層110は、バイオサンプルの固定化のために、自己組織化単分子膜(SAM膜)、機能性ポリマー、またはヒドロゲルでコーティングまたは処理されることができる。いくつかの実施形態によれば、平坦化層110の材料は、透明または半透明であることができる。
【0022】
サンプル分離層112は、平坦化層110上に配置される。サンプル分離層112は、スパッタリング、スピンコーティング、化学蒸着(CVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、低温化学蒸着(LTCVD)、急速熱化学蒸着(RTCVD)、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、原子層蒸着(ALD)、物理蒸着プロセス、分子ビーム蒸着プロセス、その他の任意の適切なプロセス、またはそれらの組み合わせを用いて形成されることができるが、これらに限定されない。また、サンプル分離層112は、自己組織化単分子膜(SAM膜)、機能性ポリマー、またはヒドロゲルでコーティングまたは処理されて、バイオサンプルの排除(rejection)をすることができる。いくつかの実施形態によれば、サンプル分離層112の材料は、透明または半透明であることができる。
【0023】
サンプル分離層112の材料は、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、具体的には、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、タングステン(W)、それらの合金、ケイ素(例えば、Si:H)、酸化ケイ素(例えば、SiO
2)、酸化チタン(例えば、TiO
2)、酸化タンタル(例えば、Ta
2O
5)、アルミニウム酸化物(例えば、Al
2O
3)、酸化ニオブ(例えば、Nb
2O
5)、窒化ケイ素(例えば、Si
3N
4)、窒化チタン、窒化タンタル、またはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。サンプル分離層112は、複数の反応部位114を含む。いくつかの実施形態では、各反応部位114は、
図1に示されるように、サンプル分離層112の開口部であることができる。従って、反応部位114の底面は、平坦化層110の上面であることができる。サンプル分離層112の材料が平坦化層110の材料と異なるとき、選択的に表面コーティングを行って、バイオサンプルを捕捉することができる官能基で平坦化層110を修飾し、且つバイオサンプルを捕捉することができないその他の官能基でサンプル分離層112を修飾することができる。従って、バイオサンプルは、反応部位114に局在させることができる。
【0024】
もう1つの実施形態では、サンプル分離層112は、反応部位114としての開口部を有していなくてもよい。反応部位114は、特定の領域のみが所望のバイオサンプルを捕捉できるように、サンプル分離層112の表面の一部を修飾することによって形成され得る。例えば、サンプル分離層112の表面上の官能基のいくつかは、所望のバイオサンプルを捕捉できるように修飾されることができる。いくつかの実施形態では、反応部位114は、1つ、2つ、または4つのフォトダイオード104に対応することができる。
【0025】
バイオ検出システム10Aは、上部偏光素子108Uおよび励起光源118も含む。上部偏光素子108Uは、反応部位114上に配置される。上部偏光素子108Uは、偏光素子108の偏光角と異なる偏光角を有する。例えば、上部偏光素子108Uの偏光角は、偏光素子108の偏光角に垂直である。いくつかの実施形態では、偏光素子108の偏光角は0度であり、上部偏光素子108Uの偏光角は90度である。いくつかの実施形態では、上部偏光素子108Uは、1つ、2つ、3つ、または4つのサブ上部偏光素子を含む。上部偏光素子108Uが1つのサブ上部偏光素子のみであるとき、それは、上部偏光素子108Uが実質的にサブ上部偏光素子であることを意味する。
【0026】
励起光源118は、上部偏光素子108U上に配置される。励起光源118は、励起光を出射することができる。 いくつかの実施形態では、励起光源は、1つ、2つ、3つ、または4つのサブ励起光源を含む。励起光源118が1つのサブ励起光源のみであるとき、それは、励起光源118が実質的にサブ励起光源であることを意味する。いくつかの実施形態では、サブ励起光源は同時に発光しない。例えば、サブ励起光源は、光を順次に出射することができる。あるいは、サブ励起光源は、光をグループで出射することができる。いくつかの実施形態では、励起光源118は、短波長から長波長へ(または長波長から短波長へ)光を連続的に出射するモノクロメータである。例えば、モノクロメータは100nmから1000nmの範囲の波長の光を出射する。
【0027】
本発明によるバイオセンサ100Aおよびバイオ検出システム10Aは、偏光素子を用いることにより、フォトダイオードが励起光を受光するのを防止することができる。上部偏光素子は励起光を通過させ、他方の偏光素子はフォトダイオード上に配置される。上部偏光素子の偏光角は、他方の偏光素子の偏光角と異なる。励起光が上部偏光素子を通過した後、上部偏光素子と同じ偏光角の励起光のみが残る。励起光はフォトダイオード上の偏光素子と異なる偏光角で偏光するため、励起光は偏光素子を通過することができない。従って、フォトダイオードが励起光を受光するのを防止することができる。また、さまざまな励起光を対象とするさまざまなバイオセンサまたはバイオ検出システムをそれぞれ設計せずとも、本発明の1つのバイオセンサまたは1つのバイオ検出システムは、さまざまな励起光をブロックするのに十分である。
【0028】
図1Bは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Bの断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同様の参照番号で示される。いくつかの実施形態では、同様の参照番号によって示される同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有し、且つ簡潔に説明するために繰り返さない。
【0029】
バイオ検出システム10Bとバイオ検出システム10A間の違いの1つは、バイオセンサ100Bがフィルター層106をさらに含むことである。フィルター層106は、基板102上に配置される。具体的には、フィルター層106は、偏光素子108と基板102との間に配置されている。いくつかの実施形態では、フィルター層106は、1つ、2つ、3つ、または4つのサブフィルター層を含む。フィルター層106が1つのサブフィルター層のみであるとき、それは、フィルター層106が実質的にサブフィルター層であることを意味する。
【0030】
図1Cは、いくつかの実施形態によるバイオ検出用のバイオ検出システムの断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同様の参照番号で示される。いくつかの実施形態では、同様の参照番号によって示される同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有し、且つ簡潔に説明するために繰り返さない。
【0031】
バイオ検出システム10Cとバイオ検出システム10Bとの間の違いの1つは、バイオセンサ100Cの偏光素子108がフィルター層106に埋め込まれていることである。
【0032】
様々なバイオ検出システムの適用を以下に説明する。
【0033】
図2Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Aの適用を示す。バイオサンプル116A、バイオサンプル116B、およびバイオサンプル116Cは、
図2Aに示されるように、反応部位114にそれぞれ配置される。いくつかの実施形態では、バイオサンプル116A、バイオサンプル116B、およびバイオサンプル116Cは、DNA分子、ペプチド、タンパク質など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本実施形態では、1つの反応部位114は、1つのフォトダイオード104に対応する。
【0034】
DNA配列決定の用途を例にとる。バイオサンプル116A、バイオサンプル116B、およびバイオサンプル116Cは、異なるDNA配列を有するDNA分子であり、異なる反応部位に固定化される。例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)などのデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は、Alexa 488などの同じ蛍光マーカーで標識され、これは、dNTP-Alexa 488、dATP-Alexa 488、dTTP-Alexa 488、dGTP-Alexa 488、およびdCTP-Alexa 488と呼ばれる。Alexa 488は、波長488nmの光で励起されることができる。dNTPs-Alexa 488の1つだけが各フローサイクルで用いられる。第1のサイクルでは、dATP-Alexa 488とポリメラーゼの溶液がバイオ検出システム10Aに流れる。ポリメラーゼは、A-TまたはG-Cペアリングに基づいて1つのヌクレオチドをテンプレートDNAに結合させることができる。従って、反応部位にあるDNAテンプレートの新たに合成された塩基がTであるとき、dATP-Alexa 488は相補的DNAプライマーに添加され、相補的DNAプライマーが伸張される。さらに、3’-キャップを用いて連続的なDNA合成をブロックすることにより、各フローサイクルに最多1つの塩基を添加することができる。励起光源118は、488nmの波長を有する光でバイオサンプル116A、116B、および116Cを励起する。バイオサンプル116Aの下のフォトダイオード104がAlexa 488の出射光を受光した場合、フォトダイオード104の上の反応部位114内のバイオサンプル116Aは、1つのdATP-Alexa 488によって結合されていることがわかる。次に、蛍光マーカーAlexa 488とdATP上の3’-キャップが新しいフローサイクル用に除去される。第2のサイクルでは、dGTP-Alexa 488とポリメラーゼの溶液がバイオ検出システム10Aに流れる。次に、励起光源118は、バイオサンプル116A、116B、および116Cを励起する。バイオサンプル116Aの下のフォトダイオード104がAlexa 488の出射光を受光した場合、フォトダイオード104の上の反応部位114内のバイオサンプル116Aは、1つのdGTP-Alexa 488によって結合されていることがわかる。次に、蛍光マーカーAlexa 488とdGTP上の3’-キャップが除去される。次に、dCTP-Alexa 488とポリメラーゼの溶液を用いた第3のサイクル、およびdTTP-Alexa 488とポリメラーゼの溶液を用いた第4のサイクルが実行される。約100~1200サイクルが繰り返された後、バイオサンプル116A、116B、および116CのDNA配列が決定される。
【0035】
図2Bは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システムの適用を示している。同じまたは類似の要素または層は、同様の参照番号で示される。いくつかの実施形態では、同様の参照番号によって示される同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有し、且つ簡潔に説明するために繰り返さない。
【0036】
図2Bと
図2A間の違いの1つは、
図2Bの励起光源118は、4つのサブ励起光源118A、118B、118C、および118Dを含むことである。サブ励起光源118A、118B、118C、および118Dは、互いに異なる光を出射する。DNA配列決定の用途を例にとる。dATP、dTTP、dGTP、およびdCTPは、4つの異なる蛍光マーカーでそれぞれ標識され、4つの異なる蛍光マーカーは、各々の励起光によってのみ励起されることができる。例えば、dATPはAlexa 405(dATP-Alexa 405と呼ばれる)で標識され、dTTPはAlexa 488(dTTP-Alexa 488と呼ばれる)で標識され、dGTPはAlexa 555(dGTP-Alexa 555と呼ばれる)で標識され、dCTPはAlexa 647(dCTP-Alexa 647と呼ばれる)で標識される。
【0037】
図2Cは、Alexa 405、Alexa 488、Alexa 555、およびAlexa 647の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示している。励起はexで表される。出射はemで表される。
図2Cに示されるように、Alexa 405は、405nmの波長の光で励起されることができる。Alexa 488は、488nmの波長の光で励起されることができる。Alexa 555は、555nmの波長の光で励起されることができる。Alexa 647は、647nmの波長の光で励起されることができる。各サイクルでは、dATP-Alexa 405、dTTP-Alexa 488、dGTP-Alexa 555、およびdCTP-Alexa 647の2つ、3つ、または4つとポリメラーゼがバイオ検出システム10Aを通過する。次に、サブ励起光源118A、118B、118C、および118Dは、バイオサンプル116A、116B、および116Cを順次に励起する。1つのフォトダイオード104がAlexa 405の出射光を受光した場合、フォトダイオード104の上の反応部位114内のバイオサンプルは、1つのdATP-Alexa 405によって結合されていることがわかる。1つのフォトダイオード104がAlexa 488の出射光を受光した場合、フォトダイオード104の上の反応部位114内のバイオサンプルは、1つのdTTP-Alexa 488によって結合されていることがわかる。1つのフォトダイオード104がAlexa 555の出射光を受光した場合、フォトダイオード104の上の反応部位114内のバイオサンプルは、1つのdGTP-Alexa 555によって結合されていることがわかる。1つのフォトダイオード104がAlexa 647の出射光を受光した場合、フォトダイオード104の上の反応部位114内のバイオサンプルは、1つのdTTP-Alexa 647によって結合されていることがわかる。次に、蛍光マーカーと3’-キャップが除去される。約50~600サイクルが繰り返された後、バイオサンプル116A、116B、および116CのDNA配列が決定される。
【0038】
本実施形態では、サイクルが同じ長さのDNA分子を決定するのに必要なサイクルは少なくなる。
図2Dは、複数の蛍光マーカーの励起スペクトルを示している。これらの実施形態では、
図2Bのバイオ検出システム10Aに示すように、励起光源118はモノクロメータである。モノクロメータは、時間の経過とともに短波長から長波長(または長波長から短波長)の光を出射することができる。いくつかの実施形態では、モノクロメータは、例えば1nm、2nm、5nm、または10nmなどの間隔で、250nmから900nmの範囲の波長の光を出射することができる。蛍光マーカーの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16であることができるが、これらに限定されない。
【0039】
図2Dに示されるように、 蛍光マーカーは、Alexa 350、Alexa 405、Alexa 430、Alexa 488、Alexa 514、Alexa 532、Alexa 555、Alexa 568、Alexa 594、Alexa 610、Alexa 633、Alexa 647、Alexa 660、Alexa 700、Alexa 750、およびAlexa790である。例えば、励起光源118は、時間の経過とともに250nmから900nmの範囲の波長の光を出射する。1つのフォトダイオード104が、
図2Dの矢印が指す点線に示される信号の強度対励起光の波長のプロファイルを得たとき、反応部位の蛍光マーカーはAlexa 555であることがわかる。従って、本実施形態では、より多くの蛍光マーカーを区別することができる。
【0040】
図3Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Bの適用を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。バイオ検出システム10Bの適用および説明は、
図2Aに関連する段落に記載されたものと同様であり、ここでは繰り返さない。
【0041】
図3Aと
図2A間の違いの1つは、バイオセンサ100Bが、基板102上に配置されたフィルター層106をさらに含むことである。具体的には、フィルター層106は、基板102と偏光素子108の間に配置される。フィルター層106は、940nmのショートパスフィルタまたは700nmのショートパスフィルタなどのIRカットフィルタであることができる。従って、この実施形態では、フォトダイオード104は、標的蛍光色素の発光波長外の長波長の光(例えば、環境からのIR光)からの信号を受信するのをさらに防ぐことができる。
【0042】
図3Bは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Bの適用を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。バイオ検出システム10Bの適用および説明は、
図2B、
図2C、および
図2Dに関連する段落に記載されたものと同様であり、ここでは繰り返さない。
【0043】
図3Bと
図2B、
図2Cと
図2D間の違いの1つは、バイオセンサ100Bが、基板102上に配置されたフィルター層106をさらに含むことである。具体的には、フィルター層106は、基板102と偏光素子108の間に配置される。従って、この実施形態では、フォトダイオード104は、標的蛍光色素の発光波長外の長波長の光(例えば、環境からのIR光)からの信号を受信するのをさらに防ぐことができる。
【0044】
図4Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Dの上面図を示している。簡潔にするために、上面図では一部の層または要素が省略される場合がある。
図4Bは、
図4Aの線I-I’に沿った断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。
【0045】
図4Bと
図3A間の違いの1つは、バイオ検出システム10Dがバイオセンサ100Dを含むことである。バイオセンサ100Dの1つの反応部位114は、2つのフォトダイオード104に対応する。バイオセンサ100Dは、基板102と偏光素子108の間にフィルター層106を含む。本実施形態では、バイオセンサ100Dのフィルター層106は、サブフィルター層1061およびサブフィルター層1062を含む。サブフィルター層1061およびサブフィルター層1062は、フォトダイオード104Aおよびフォトダイオード104Bにそれぞれ対応する。1つの反応部位114は、フォトダイオード104Aおよびフォトダイオード104Bに対応する。
【0046】
図4Cは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。励起はexで表される。出射はemで表される。いくつかの実施形態では、サブフィルター層1061およびサブフィルター層1062は、バイオサンプル116Aおよび116B上の蛍光マーカーの出射光を通過させるフィルターである。従って、本実施形態では、出射光は、サブフィルター層1061および1062と、フォトダイオード104(例えば、フォトダイオード104Aまたはフォトダイオード104B)によって得られた信号強度とによって区別される。例えば、Alexa532やAlexa568などの2つのカラー蛍光色素がDNAシーケンサーで用いられて、4つのヌクレオチドを識別することができ、dCTPは、4つの異なる蛍光マーカーでそれぞれ標識され、4つの異なる蛍光マーカーは、各々の励起光によってのみ励起されることができる。例えば、dATPはAlexa 532(dATP-Alexa 532と呼ばれる)で標識され、dTTPはAlexa 568(dTTP-Alexa 568と呼ばれる)で標識され、dGTPはAlexa 532(dGTP-Alexa 532と呼ばれる)で標識され、且つdCTPはAlexa 568(dCTP-Alexa 568と呼ばれる)で標識される。dNTPsの2つだけが各フローサイクルで用いられる。Alexa532とAlexa568の両方とも、532nmの波長の光で励起することができる。第1のサイクルでは、dATP-Alexa 532、dTTP-Alexa 568、およびポリメラーゼの溶液がバイオ検出システム10Dに流れる。励起光源118は、532nmの波長を有する光でバイオサンプル116Aおよび116Bを励起する。フォトダイオード104Aが出射光を受光した場合、フォトダイオード104Aおよび104Bの上の反応部位114内のバイオサンプル116Aは、1つのdATP-Alexa 532によって結合されていることがわかる。フォトダイオード104Bが出射光を受光した場合、フォトダイオード104Aおよび104Bの上の反応部位114内のバイオサンプル116Aは、1つのdTTP-Alexa 568によって結合されていることがわかる。
【0047】
第2のサイクルでは、dGTP-Alexa 532、dCTP-Alexa 568、およびポリメラーゼの溶液がバイオ検出システム10Dに流れる。励起光源118は、532nmの波長を有する光でバイオサンプル116Aおよび116Bを励起する。フォトダイオード104Aが出射光を受光した場合、フォトダイオード104Aおよび104Bの上の反応部位114内のバイオサンプル116Aは、1つのdGTP-Alexa 532によって結合されていることがわかる。フォトダイオード104Bが出射光を受光した場合、フォトダイオード104Aおよび104Bの上の反応部位114内のバイオサンプル116Aは、1つのdCTP-Alexa 568によって結合されていることがわかる。約100~600サイクルが繰り返された後、バイオサンプル116Aおよび116BのDNA配列が決定される。
【0048】
本実施形態では、
図2Aに比べて、サイクルが同じ長さのDNA分子を決定するのに必要なサイクルは少なくなり、
図2B、
図2C、および
図2Dに比べて、必要とされる励起光はより少ない。
【0049】
図4Dは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Eの上面図を示している。簡潔にするために、上面図では一部の層または要素が省略される場合がある。
図4Eは、
図4Dの線II-II’に沿った断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。
【0050】
図4Eと
図4B間の違いの1つは、バイオ検出システム10Eがバイオセンサ100Eを含むことである。バイオセンサ100Eの1つの反応部位114は、4つのフォトダイオード104に対応する。本実施形態では、バイオセンサ100Eのフィルター層106は、サブフィルター層1061、サブフィルター層1062、サブフィルター層1063、およびサブフィルター層1064を含む。サブフィルター層1061、サブフィルター層1062、サブフィルター層1063、およびサブフィルター層1064は、フォトダイオード104A、フォトダイオード104B、フォトダイオード104C、およびフォトダイオード104Dにそれぞれ対応する。バイオ検出システム10Eの適用および説明は、
図4Aおよび
図4Bに関連する段落に記載されたものと同様であり、ここでは繰り返さない。
【0051】
図5Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Fの上面図を示している。簡潔にするために、上面図では一部の層または要素が省略される場合がある。
図5Bは、
図5Aの線III-III’に沿った断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。
【0052】
図5Bと
図4B間の違いの1つは、バイオ検出システム10Fの上部偏光素子108Uが、サブ上部偏光素子108U1およびサブ上部偏光素子108U2を含むことである。いくつかの実施形態では、サブ上部偏光素子108U1は、サブ上部偏光素子108U2に隣接して配置される。サブ上部偏光素子108U1およびサブ上部偏光素子108U2は、異なる偏光角を有することができる。例えば、サブ上部偏光素子108U1の偏光角は90度であり、サブ上部偏光素子108U2の偏光角は0度である。
【0053】
バイオ検出システム10Fの励起光源118は、サブ励起光源118Aおよびサブ励起光源118Bを含む。サブ励起光源118Aは、サブ励起光源118Bと異なる光を出射する。サブ励起光源118Aより出射された光は、サブ上部偏光素子108U1を通過し、サブ励起光源118Bより出射された光は、サブ上部偏光素子108U2を通過する。サブ励起光源118Aおよびサブ励起光源118Bは、順次または同時に光を出射することができる。
【0054】
バイオセンサ100Fの偏光素子108は、サブ偏光層1081およびサブ偏光層1082を含む。サブ偏光層1081およびサブ偏光層1082は、フォトダイオード104Bおよびフォトダイオード104Aにそれぞれ対応する。サブ偏光層1081は、サブ偏光層1082に隣接して配置される。サブ偏光層1081およびサブ偏光層1082は、異なる偏光角を有することができる。例えば、サブ偏光層1081の偏光角は90度であり、サブ偏光層1082の偏光角は0度である。
【0055】
バイオセンサ100Fのフィルター層106は、サブフィルター層1061およびサブフィルター層1062を含む。サブフィルター層1061は、フォトダイオードがサブ励起光源118Aより出射された光を受光するのを防止する。サブフィルター層1062は、フォトダイオードがサブ励起光源118Bより出射された光を受光するのを防止する。サブフィルター層は、実質的に偏光素子および上部偏光素子に応じて設計される。
【0056】
図5Cは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。励起はexで表される。出射はemで表される。本実施形態では、蛍光マーカーAlexa 532およびAlexa 633が用いられる。サブ励起光源118Aは532nmの波長の光を出射し、サブ励起光源118Bは633nmの波長の光を出射する。バイオサンプル116Aを例にとる。フォトダイオード104Aおよび104Bの両方が信号を得たとき、バイオサンプル116AがAlexa 532で標識されていることがわかる。フォトダイオード104Bのみが信号を得たとき、バイオサンプル116AがAlexa633で標識されていることがわかる。バイオサンプル116Bも同様の概念に従って分析することができる。
【0057】
通常、デュアルまたはマルチノッチフィルタなど、複数の励起光をブロックすることができる単一のフィルターを設計することは非常に困難であり、そのようなフィルターは常に非常に厚く、受信信号を弱くし、クロストークを強くする。本実施形態では、複数の励起光は、偏光素子によってブロックされることができる。従って、フィルターは設計が容易なエッジパスフィルターにすることができる。さらに、誘電体干渉フィルター、吸収カラーフィルター、またはそれらの組み合わせと、フィルターを組み合わせることができ、これによりプロセスをより容易にする。
【0058】
図6Aは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Gの上面図を示している。簡潔にするために、上面図では一部の層または要素が省略される場合がある。
図6Bは、
図6Aの線IV-IV’に沿った断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。
【0059】
図6Bと
図4E間の違いの1つは、バイオセンサ100Gの偏光素子108が、サブ偏光層1081およびサブ偏光層1082を含むことである。バイオセンサ100Gのフィルター層106は、サブフィルター層1061、サブフィルター層1062、サブフィルター層1063、およびサブフィルター層1064を含む。サブフィルター層1061および1063は、フォトダイオードがサブ励起光源118Aより出射された光を受光するのを防止する。サブフィルター層1062および1064は、フォトダイオードがサブ励起光源118Bより出射された光を受光するのを防止する。サブフィルター層は、実質的に偏光素子および上部偏光素子に応じて設計される。
【0060】
図6Cは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。励起はexで表される。出射はemで表される。本実施形態では、蛍光マーカーAlexa 532、Alexa 568、Alexa 633、およびAlexa 680が用いられる。サブ励起光源118Aは532nmの波長の光を出射し、サブ励起光源118Bは633nmの波長の光を出射する。バイオ検出システム10Gの適用および説明は、
図5A~
図5Cに関連する段落に記載されたものと同様であり、ここでは繰り返さない。
【0061】
図6Dは、いくつかの実施形態によるバイオ検出システム10Hの上面図を示している。簡潔にするために、上面図では一部の層または要素が省略される場合がある。
図6Eは、
図6Dの線V-V’に沿った断面図を示している。同じまたは類似の要素または層は、同じ符号で示される。いくつかの実施形態では、同じ符号で示された同じまたは類似の要素または層は、同じ意味を有しており、簡潔に説明するために繰り返さない。
【0062】
図6Eと
図6B間の違いの1つは、バイオ検出システム10Hの上部偏光素子108Uが、サブ上部偏光素子108U1、サブ上部偏光素子108U2、サブ上部偏光素子108U3、およびサブ上部偏光素子108U4を含むことである。サブ上部偏光素子108U1、108U2、108U3、および108U4は、互いに異なる偏光角を有することができる。例えば、サブ上部偏光素子108U1の偏光角は90度であり、サブ上部偏光素子108U2の偏光角は0度であり、サブ上部偏光素子108U3の偏光角は45度であり、且つサブ上部偏光素子108U4の偏光角は135度である。
【0063】
バイオ検出システム10Hの励起光源118は、サブ励起光源118A、サブ励起光源118B、サブ励起光源118C、およびサブ励起光源118Dを含む。サブ励起光源118A、118B、118C、および118Dは、互いに異なる光を出射する。サブ励起光源118A、より出射された光は、サブ上部偏光素子108U1を通過し、サブ励起光源118Bより出射された光は、サブ上部偏光素子108U2を通過し、サブ励起光源118Cより出射された光は、サブ上部偏光素子108U3を通過し、且つサブ励起光源118Dより出射された光は、サブ上部偏光素子108U4を通過する。サブ励起光源118Aおよび118Bがまず用いられ、次いで、サブ励起光源118Cおよび118Dが用いられる。
【0064】
バイオセンサ100Hの偏光素子108は、サブ偏光層1081、サブ偏光層1082、サブ偏光層1083、およびサブ偏光層1084を含む。サブ偏光層1081、1082、1083、および1084は、互いに異なる偏光角を有することができる。例えば、サブ偏光層1081の偏光角は90度であり、サブ偏光層1082の偏光角は0度であり、サブ偏光層1083の偏光角は45度であり、且つサブ偏光層1084の偏光角は135度である。
【0065】
図6Fおよび
図6Gは、いくつかの実施形態による励起、出射、および透過のスペクトルを示している。励起はexで表される。出射はemで表される。本実施形態では、蛍光マーカーAlexa 488、Alexa 568、Alexa 532、およびAlexa 647が用いられる。サブ励起光源118Aは488nmの波長の光を出射し、サブ励起光源118Bは561nmの波長の光を出射し、サブ励起光源118Cは532nmの波長の光を出射し、且つサブ励起光源118Dは633nmの波長の光を出射する。バイオ検出システム10Hの適用および説明は、
図5A~
図5Cに関連する段落に記載されたものと同様であり、ここでは繰り返さない。
【0066】
サブ励起光源118Aおよび118Bが用いられるとき、フォトダイオード104Aおよび104Bのみがオンにされる。サブ励起光源118Cおよび118Dが用いられるとき、フォトダイオード104Cおよび104Dのみがオンにされる。フォトダイオード104Aが信号を得た場合、バイオサンプル116AがAlexa 568で標識されていることがわかる。フォトダイオード104Bが信号を得た場合、バイオサンプル116AがAlexa 488で標識されていることがわかる。フォトダイオード104Cが信号を得た場合、バイオサンプル116AがAlexa 647で標識されていることがわかる。フォトダイオード104Dが信号を得た場合、バイオサンプル116AがAlexa 532で標識されていることがわかる。本実施形態では、得られた信号の強度は実質的に同じであり、信号の分析を容易にする。
【0067】
従来技術と比較して、本発明の実施形態によって提供されるバイオセンサおよびバイオ検出システムは、以下の利点のうちの1つ以上を有する:
(1)上部偏光素子および他の偏光素子を用いることにより、フォトダイオードが励起光を受光するのを防止することができる。
(2)さまざまな励起光を対象とするさまざまなバイオセンサまたはバイオ検出システムを設計せずとも、本発明の1つのバイオセンサまたは1つのバイオ検出システムは、さまざまな励起光をブロックするのに十分である。
(3)1つのバイオセンサまたは1つのバイオ検出システムでさまざまな励起光を十分にブロックするため、様々な波長の励起光を用いることができる。蛍光マーカーは、それぞれの最適な励起光によって励起されることができる。従って、得られた信号の強度は実質的に同じであり、信号の分析を容易にする。
【0068】
本開示およびそれらの利点の一部の実施形態が詳細に説明されてきたが、添付の請求の範囲によって定義されるように、本開示の精神および範囲を逸脱せずに、本明細書において種々の変更、置換、および代替をすることができる。例えば、本明細書で述べられる特徴、機能、プロセス、および材料の多くが本開示の範囲を逸脱することなく変更できることが当業者にとっては容易に理解される。また、本出願の範囲は、本明細書中に述べられたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、および動作の特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者が本開示の開示から容易に理解するように、本明細書で述べられた対応する実施形態と、実質的に同様の機能を実行するか、または実質的に同様の結果を達成する、現存の、または後に開発される、開示、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または動作が本開示に従って利用され得る。よって、添付の特許請求の範囲は、上述のプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または動作を含むように意図される。
【符号の説明】
【0069】
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H バイオ検出システム
100A、100B、100C、100D、100E、100F、10G バイオセンサ
102 基板
104、104A、104B、104C、104D フォトダイオード106 フィルター層
1061、1062、1063、1064 サブフィルター層
108 偏光素子
1081、1082、1083、1084 サブ偏光層
108U 上部偏光素子
108U1、108U2、108U3、108U4 サブ上部偏光素子
110 平坦化層
112 サンプル分離層
114 反応部位
116A、116B、116C バイオサンプル
118 励起光源
118A、118B、118C、118D サブ励起光源
I-I’、II-II’、III-III’、IV-IV’、V-V’ 線