(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】歯内治療モータを制御するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61C 1/02 20060101AFI20221104BHJP
A61C 1/06 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61C1/02 E
A61C1/06
(21)【出願番号】P 2020501594
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057405
(87)【国際公開番号】W WO2018172507
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】102017000032045
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519342172
【氏名又は名称】ペデュラ,エウジェニオ
【氏名又は名称原語表記】PEDULLA, EUGENIO
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペデュラ,エウジェニオ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-172840(JP,A)
【文献】特開2015-058274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/02
A61C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯内治療機
器を回転運動させるために電気モータ(9)を制御するための装置であって、前記装置は、意図された通りに使用されるときに、センサから受けた信号の関数と
して回転運動(M1,M2)のシーケンスを
前記歯内治療機器に実行させるように構成され、
前記回転運動(M1,M2)のシーケンスは、
-連続前方回転である
初期回転運動(M1)を含み、前記
初期回転運動において
、前記電気モータ(9)は、通常回転方向に駆動さ
れ、所与のトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、第1の最大しきい値限界(LM1)を上回るまで、
この回転運動を維持し、
-前記装置は、第1の最大しきい値限界(LM1)を上回ると、第1の
交互回転運動(M2)に切り替えるように構成され、前記第1の
交互回転運動において
、前記電気モータ(9)は、交互回転するように駆動され
、前記初期回転運動(M1)よりも低いトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、第1の最小
しきい値限界(Lm1)を下回るまで、
この回転運動を維持し、
-前記装置は、第1の最小
しきい値限界(Lm1)を下回ると
、前記初期回転運動(M1)に戻るように切り替え、さらに
、前記初期回転運動(M1)を維持するためのまたは第1の
交互回転運動(M2)に切り替えるための条件を観察するように、構成される、装置。
【請求項2】
前記装置は、意図された通りに使用されるときに、第2の
交互回転運動(M3)を
前記歯内治療機器に実行させるように構成され、前記第2の
交互回転運動において
、前記電気モータは、交互回転するように駆動され、前記第1の
交互回転運動(M2)よりも低いトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、
-前記第1の
交互回転運動(M2)から前記第2の
交互回転運動(M3)への切り替えは、第1の
交互回転運動(M2)の実行中に第2の最大
しきい値限界(LM2)を上回ったことによって引き起こされ、
-前記装置は、前記第2の
交互回転運動(M3)において、第2の最小
しきい値限界(Lm2)または第3の最小
しきい値限界(Lm3)を下回ったときに、先行する
前記回転運動のうちの1つ(M1またはM2)に戻るように切り替えるように構成さ
れ、
-前記先行
する回転運動(M1,M2)を実行しているとき、前記先行
する回転運動(M1,M2)のうちの1つを維持するため、また
は、後続の回転運動に切り替えるための条件が観察される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、意図された通りに使用されるときに、
最終回転運動(M4)を
前記歯内治療機器に実行させるように構成され、前記
最終回転運動において
、前記電気モータは、連続逆回転を行うように駆動さ
れ、前記先行する回転運動(M1,M2,M3)よりも低いトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、前記第2の
交互回転運動(M3)か
ら前記最終回転運動(M4)への切り替えは、前記第2の
交互回転運動(M3)の実行中に第3の最大
しきい値限界(LM3)を上回ったことによって引き起こされる、請
求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、
最終回転運動M4におい
て、前記電気モータ(9)の予め定めら
れた最大回転角度α
4(α
effective>α
4)に達した後に
、前記初期回転運動(M1)に自動的に切り替わり、さらに
、前記初期回転運動(M1)を維持するためのまた
は前記第1の
交互回転運動M2に切り替えるための条件を観察するように、構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の、歯内治療機器を回転運動させるために電気モータ(9)を制御するための装置であって、前記装置は、
-前記電気モータ(9)から信号(S_mtr)を受けるように、かつ
、前記電気モータ(9)の第1の特性動作パラメータ
(RSX;RDX;CWAX;CCWAX;RPX)を示す信号(S_snr1)を生成するように設計された第1のセンサ(8)と、
-前記電気モータ(9)および前記第1のセンサ(8)とデータ通信する制御部(2)とを備え、前記制御部(2)は、
-電源電圧(S_drv)によっ
て前記電気モータ(9)に電力を供給するように設計された駆動部(4)と、
-前記電気モータ(9)の第2の動作パラメータに比例するフィードバック信号(S_snr2)を生成するように設計された第2のセンサ(6)とを含み、前記第2のセンサ(6)は前記駆動部(4)とデータ通信し、前記制御部はさらに、
-前記駆動部(4)、前記第1のセンサ(8)および前記第2のセンサ(6)とデータ通信する処理部(3)を含み、前記処理部(3)は、前記第1のセンサ(8)から受けた第1の信号(S_snr1)および前記第2のセンサ(6)から受けた第2の信号(S_snr2)の関数として前記電気モータ(9)に対して作用することにより
前方回転運動(M1,M2)のシーケンスを前記歯内治療機器(7)に実行させるように設計され、
回転運動(M1,M2)の
前記シーケンスは、
-連続
前方回転運動(M1)である初期回転運動(M1)を開始することを含み、前記連続
前方回転運動において
、前記電気モータ(9)は、第1の供給電力(PS1)、第1の回転速度(RS1)および第1の回転方向(RD1)に従って回転するように駆動され、
回転運動の前記シーケンスは
、
-第1の最大しきい値限界(LM1)を上回ったときに
前記第1の
交互回転運動(M2)
を開始することを含み、前記第1の
交互回転運動において
、前記電気モータ(9)は、第2の供給電力値(PS2)、第2の回転速度(RS2)、第1の回転時計回り角度(CWA2)、第1の回転反時計回り角度(CCWA2)、および、前記第1の回転時計回り角度(CWA2)と前記第1の回転反時計回り角度(CCWA2)との間の第2の一時停止(RP2)に従って回転するように駆動され
る、装置。
【請求項6】
前記処理部(3)は、
前方回転運動(M1,M2,M3)のシーケンスを前記歯内治療機器(7)に実行させるように設計さ
れ、第2の最大しきい値限界(LM2)を上回ったときに第2の
交互回転運動(M3)が開始され、前記第2の
交互回転運動において
、前記電気モータ(9)は、第3の供給電力値(PS3)、第3の回転速度(RS3)、第3の回転時計回り角度(CWA3)、第3の回転反時計回り角度(CCWA3)、および、前記第3の回転時計回り角度(CWA3)と前記第3の回転反時計回り角度(CCWA3)との間の第3の一時停止(RP3)に従って回転するように駆動される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第2の交互回転運動(M3)において
第3の最大しきい値限界(LM3)を上回ったと
きに最終回転運動(M4)が開始され、
前記最終回転運動(M4)において
、前記電気モータ(9)は根管から前記歯内治療機器(7)を抜き取るように駆動される、請求
項3~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
最終回転運動M4は連続逆回転であり、前記連続逆回転において
、前記電気モータ(9)は、第4の供給電力(PS4)、第4の回転速度(RS4)および第4の回転方向(RD4)に従って駆動される、請求項3~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記前方回転運動(M1,M2,M3)に関連する
、前記電気モータ(9)の前記第1の特性動作パラメータが、以下のルール
a)前記第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA2>CCWA2、
b)前記第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA2<CCWA2、
c)前記第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA3>CCWA3、
d)前記第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA3<CCWA3、
e)RS1>RS2>RS3、
e’’)RS1<RS2>RS3、
f)|CWA2-CCWA2|>|CWA3-CCWA3|、
g)PS1<PS2<=PS3、のうちの1つ以上を満たすように、選択される、請
求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記前方回転運動(M1,M2,M3)に関連する
、前記電気モータ(9)の前記第1の特性動作パラメータは、以下のルール
a)前記第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA2>CCWA2、
b)前記第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA2<CCWA2、
c)前記第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA3>CCWA3、
d)前記第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA3<CCWA3、
e’)RS1<RS2<RS3、
f’)|CWA2-CCWA2|<|CWA3-CCWA3|、
g)PS1<PS2<=PS3、のうちの1つ以上を満たすように、選択される、請
求項5または請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のセンサ(6)は
、前記電気モータ(9)が取り出す電流に比例するフィードバック信号(S_snr2)を生成し前記信号を前記処理部(3)に送るように設計された電流センサである、請
求項5、6、9、10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のセンサ(6)は
、前記電気モータ(9)が吸収する力に比例するフィードバック信号(S_snr2)を生成し前記信号を前記処理部(3)に送るように設計された力センサである、請
求項5、6、9、10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記前方回転運動(M1,M2,M3)のシーケンスにおけ
る各回転運動(Mi)
のための前記電気モータ(9)の前記第1の特性動作パラメータ(RSX;RDX;CWAX;CCWAX;RPX)の基準値(RSi;RDi;CWAi;CCWAi;RPi)は、前記処理部(3)とデータ通信するメモリモジュール(11)に予め設定される、請
求項5、請求項9、請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記前方回転運動(M1,M2,M3)の各最大しきい値限界(
LMi)および各最小しきい値限界(Lmi)の基準値(MDi;MPCi;mPCi;mDi)は、以下の値
a)前
記回転運動(Mi)中の前記電気モータの最大駆動電力消費(MPCi)、
b)前記最大駆動電力消費(MPCi)よりも大きいエネルギを前記電気モータ(9)が取り出すエネルギ取り出し時間(MDi)、
c)前
記回転運動(Mi)における前記電気モータの最小駆動電力消費(mPCi)、
d)前記最小駆動電力消費(mPCi)よりも小さいエネルギを前記電気モータ(9)が取り出すエネルギ取り出し時間(mDi)、のうちの1つ以上を含む、
請求項6に記載の装置。
【請求項15】
前記初期回転運動(M1)から前記第1の交互
回転運動(M2)に切り替えるための
前記第1の最大しきい値限界(LM1)は、以下の条件
a)制御信号(S_drv)の送信と前記第1のセンサ(8)から入力される前記フィードバック信号(S_snr1)の受信との間の経過時間(t1)が、予め定められた値(MD)を超える、または、
b)前記電気モータ(9)が取り出す電力が、前記電気モータ(9)が取り出すエネルギが(MPC1)を上回る最大時間(MDi)よりも長い時間(t2)
、前記電気モータの予め定められた最大駆動電力消費値(MPC1)を超える、のうちの少なくとも1つによって与えられる、請
求項5、請求項11、請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の交互回転運動(M2)中に前記電気モータ(9)が取り出す電力が、前記エネルギ取り出し時間(mD2)よりも長い時間(t3)、前記電気モータ(9)の最小駆動電力消費(mPC2)よりも小さい場合、前記処理部(3)は、前記連続
前方回転運動(M1)を前記歯内治療機器(7)に実行させる、請
求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記第2の交互
回転運動(M3)中に、条件のうちの1つとして、
-前記電気モータ(9)が取り出す電力が、前記エネルギ取り出し時間(mD3)よりも長い時間(t)、前記電気モータ(9)の前記最小駆動電力消費(mPC31)よりも小さい場合、前記処理部(3)は、前記連続
前方回転運動(M1)を前記歯内治療機器(7)に実行させる、または、
-前記電気モータ(9)が取り出す電力が、前記エネルギ取り出し時間(mD3)よりも長い時間(t)、前記電気モータ(9)の前記最小駆動電力消費(mPC32)よりも小さい場合、前記処理部(3)は、前記第1
の交互回転運動(M2)を前記歯内治療機器(7)に実行させる、
請求項14または請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記
第1の交互回転運動M2および第2の交互回転運動M3のうちの少なくとも1つの期間において
、前記電気モータの第1の特性動作パラメータは、
前記電気モータ(9)の回転角度が通常回転段階における初期回転角度αiと最終回転角度αf
との範囲のみに決定されるように、構成される、請
求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項9、請求項10、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16、請求項17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記装置は、
最終回転運動(M4)の開始の予め定められた回数
nIを超えたときに、警告音を自動的に作動させるように構成される、請
求項3、請求項4、請求項7、請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、
最終回転運動M4の開始の予め定められた回数
nSを超えたときに、延長警告音を作動させ
最終回転運動M4を恒久的に維持するように構成される
、請求項3、請求項4、請求項7、請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の制御装置を含む、歯内治療機器(7)を回転させるように設計された電気モータ(9)。
【請求項22】
歯内治療機器(7
)を回転運動させるために電気モータ(9)を制御
するコンピュータの電子プロセッサが実施する方法であって、前記制御する方法は、少なくとも1つのセンサから受けた信号の関数とし
ての回転運動(M1,M2)のシーケンスを含み、
前記回転運動(M1,M2)のシーケンスは、
-連続前方回転
運動である
初期回転運動(M1)を含み、前記
初期回転運動において
、前記電気モータ(9)は、通常回転方向に駆動さ
れ、所定のトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、第1の最大しきい値限界(LM1)を上回るまで、
この回転運動を維持し、
-第1の最大しきい値限界(LM1)を上回ると、前記シーケンスは第1の
交互回転運動(M2)に切り替わり、前記第1の
交互回転運動において
、前記電気モータ(9)は、交互回転するように駆動され、
初期回転運動(M1)よりも低いトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、第1の最小
しきい値限界(Lm1)を下回るまで、
この回転運動を維持し、
-第1の最小
しきい値限界(Lm1)を下回ると、前記シーケンスは
初期回転運動M1に戻るように切り替わり
、前記初期回転運動M1中に、初期回転運動(M1)を維持するためのまたは第1の
交互回転運動(M2)に切り替えるための条件がさらに観察される、方法。
【請求項23】
前記回転運動(M1,M2)のシーケンスは第2の
交互回転運動(M3)を含み、前記第2の
交互回転運動において
、前記電気モータは、交互回転するように駆動され、前記第1の
交互回転運動(M2)よりも低いトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、
-前記第1の
交互回転運動(M2)から前記第2の
交互回転運動(M3)への切り替えは、第1の
交互回転運動(M2)の実行中に第2の最大
しきい値限界(LM2)を上回ったことによって引き起こされ、
-前記第2の
交互回転運動(M3)において、第2の最小
しきい値限界(Lm2)または第3の最小
しきい値限界(Lm3)を下回ったときに、前記シーケンスは先行する
前記回転運動のうちの1つ(M1またはM2)に戻るように切り替わ
り、
-前記先行
する回転運動(M1,M2)を実行しているとき、前記先行
する回転運動(M1,M2)のうちの1つを維持するため、または、先行するもしくは後
続の回転運動に切り替えるための条件が観察される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は
最終回転運動(M4)を含み、前記
最終回転運動において
、前記電気モータは、連続逆回転を行うように駆動され
てトルク強度を
前記歯内治療機器に生じさせ、
第2の
交互回転運動(M3)から
最終回転運動(M4)への切り替えは、前記第2の
交互回転運動(M3)の実行中に第3の最大
しきい値限界(LM3)を上回ったことによって引き起こされる、請
求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記制御する方法は、
-前記電気モータ(9)の第1の特性動作パラメータ(RSx;RDx;RPx;PSx)を示す信号(S_snr1)を前記電気モータ(9)から受ける段階と、
-電源電圧(S_drv)によっ
て前記電気モータ(9)に電力を供給する段階と、
-前記電気モータ(9)の第2の動作パラメータに比例するフィードバック信号(S_snr2)を受ける段階と、
-前記電気モータ(9)に対して作用することに
より回転運動(M1,M2,M3,M4)のシーケンスを前記歯内治療機器(7)に実行させる段階とを含み、
前記回転運動(M1,M2,M3,M4)のシーケンスは、
-連続
前方回転運動(M1)を開始すること(32;34)を含み、前記連続
前方回転運動において
、前記電気モータ(9)は、第1の供給電力(PS1)、第1の回転速度(RS1)および第1の回転方向(RD1)に従って回転するように駆動され、
前記回転運動のシーケンスはさらに、
-第
1の最大しきい値限
界(L1)を上回ったとき(38)に第1の
交互回転運動(M2)を開始すること(40)を含み、前記第1の
交互回転運動において
、前記電気モータ(9)は、第2の供給電力値(PS2)、第2の回転速度(RS2)、第1の回転時計回り角度(CWA2)、第1の回転反時計回り角度(CCWA2)、および、前記第1の回転時計回り角度(CWA2)と前記第1の回転反時計回り角度(CCWA2)との間の第2の一時停止(RP2)に従って回転するように駆動され、
前記回転運動のシーケンスはさらに、
-第
2の最大しきい値限
界(L2)を上回ったとき(44)に第2の
交互回転運動(M3)を開始すること(48)を含み、前記第2の
交互回転運動において
、前記電気モータ(9)は、第3の供給電力値(PS3)、第3の回転速度(RS3)、第3の回転時計回り角度(CWA3)、第3の回転反時計回り角度(CCWA3)、および、前記第3の回転時計回り角度(CWA3)と前記第3の回転反時計回り角度(CCWA3)との間の第3の一時停止(RP3)に従って回転するように駆動され
る、請求項23または請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置および方法に関する。
【0002】
本発明はまた、歯内治療機器を移動させるように設計された電気モータに関する。
【背景技術】
【0003】
市販されている既存の歯内治療装置は、主に、歯の表面に穴を開けるように設計された根管機器、特に、1つ以上の交換可能な歯内治療用やすりと、当該機器を予め定められた作業運転、典型的には単方向回転を行うように駆動するように設計された、対応する電気モータとを含む。
【0004】
特に、歯内治療用の専用マイクロモータはさまざまな種類のものがあるが、これらはすべて、作業中に装置が使用するタイプのやすりに関しては非常に良く似た特性を有する。使用されるモータはすべて、やすりの回転速度が100rpmと1000rpmとの間であり、トルクの最大限度はおよそ8N/cmである。
【0005】
近年、歯内治療処置用にニッケルチタン機器を使用することが広く行われている。
上記機器は根管において使用することができ、歯内治療モータに接続されたハンドピースが与える連続回転移動は、100rpmと1000rpmとの間の回転速度を可能にする。
【0006】
この速度の連続回転は、高性能の高速作業を可能にする。
このような回転速度は、Ni-Ti機器には使用できるが、従来の鋼製機器には使用できない。なぜなら、Ni-Ti合金は超弾性であるので撓みやすく弾力がある(または形状記憶を有する)からである。そのため、機器は回転しながら根管に入り、曲がった経路を辿っているときでも変形することなく象牙質を周方向に切削することができる。
【0007】
機器を往復または交互運転するように駆動し、所定の角度で最初は時計回り、次は反時計回りにまたはその逆の順序で回転方向に回転させる装置は、周知である。治療中、この時計回り/反時計回りの回転サイクルを、非常に素早く繰り返すことができる。さらに、機器は、回転方向が2つあり、潜在的に有効な方向を2つ有し、各方向には特定の機能がある。たとえば、やすりは、2つの機能を有するように設計することができ、その場合、時計回りに回転しているときは切削し、反時計回りに回転しているときは研磨する、またはその逆である。
【0008】
このような周知の装置において、往復動作は、変更できない予め設定された角速度および角度で生じ、この往復動作は移動の開始から移動の終了まで継続される。
【0009】
最近、往復移動を実行することができ、機器のパフォーマンスを最適化し使用中の破損等の欠点を最小にするために、どちらの回転方向においても特定の回転速度および角速度値を必要とする、ニッケルチタン(Ni-Ti)根管機器が開発された。
【0010】
特に、当該機器は、連続運転され、予め定められた設定抵抗トルクに達すると固定角度で往復するようにされる。
【0011】
Moritaによって出願されたUS2015086937A1は、直接および逆回転を切削手段が検出した負荷/トルクの関数として制御する歯内治療機器を駆動するための方法を記載している。特に、モータは最初連続回転運動し、それは特定のトルク値に達するまで続く。予め定められたトルク値のうちの1つに達すると、予め定められた往復動作が開始される。
【0012】
Schlumbohmによって出願されたDE102007011725B4は、予め定められた値を有する往復またはねじり機能を有する歯内治療機器を記載している。連続移動からねじり移動に切り替わるときおよびその逆に切り替わるときに、遅延する瞬間がある。
【0013】
Nakanishiによって出願されたEP2431004は、切削工具に与えられる特定の負荷トルクが予め設定された限界を超えるとモータを流れるモータ電流を制限するように構成された歯科用ハンドピースに対するモータ制御方法を開示している。やすりの回転方向は時折変更されるだけである。
【0014】
Forum Engineeringによって出願されたWO2010/109464は、円弧α(たとえば120度)にわたる特定の周波数のやすりの振動を含み、特定の角度位置から開始される歯内治療用システムを開示している。いくらかの時間が経過すると、振動中心の位置が前進し(たとえば60度)、一方、その他のパラメータは一定に保たれる。振動中心の位置を円弧に沿って前進させることは、円全体が描かれるまで繰り返される。
【0015】
Morita Manufacturingによって出願されたUS2013/0224677は、通常回転と、通常回転と逆の回転と、いわゆるねじり駆動とを実行することができる駆動部を含む歯科治療装置を開示している。この歯科装置は、検出された、切削工具に与えられた負荷を、予め定められた基準負荷と比較する、コントローラを含む。このような基準負荷を超えると、コントローラは、通常回転の回転角速度を逆回転よりも小さくする、または、通常回転の回転角度を逆回転の回転角度よりも小さくする。
【0016】
この先行技術の1つの欠点は、歯内治療機器に使用される材料の種類に依存することである。なぜなら、パラメータが固定であり使用される特定の材料に合わせて予め設定されるからである。周知の歯内治療装置の別の欠点は、根管の内部で移動しているときの機器の詰まりまたは破損のリスクである。実際、移動中に、機器が長すぎて根管の壁に当たった場合、機器に対し、制御されていない前方加速が突然生じる可能性がある。これは、機器の詰まりおよび損傷を引き起こす場合があり、根管内部の破損を引き起こすことさえある。
【0017】
周知の歯内治療装置の別の欠点は、往復移動中に、ハンドピースに対し、したがって歯内治療機器に対し、連続移動中に加えられる圧力よりも大きな圧力を手動で加える必要があることである。これは、歯の損傷を引き起こしその欠損(抽出)を生じさせる可能性がある、歯内治療機器の破損のリスク、破片が先端に向けて突き固められるリスク、および、象牙質の欠陥(微細な亀裂)が生じるリスクを高める。
【0018】
周知の歯内治療装置の別の欠点は、機器が固定された往復動作をしながら前方移動している間に、歯科材料が根管の底に向かって押し出されることである。
【0019】
先行技術のもう1つの欠点は、ねじり駆動とも呼ばれる、歯内治療機器の移動の周期的往復の有益な効果が、測定されたトルクに応答するモータ制御の設計時に常に考慮されてきたわけではないことである。
【0020】
先行技術のもう1つの欠点は、歯内治療用やすりに加えられる負荷を減じるための回転パターンは当該技術において周知であるが、機器が受ける抵抗に応じて切削力を低減または強化することができるパターンは開示されていないことである。しかしながら、歯科医が機器が「停止した」と感じて不必要な力を機器に加えることを防止するために前方回転角度および/または前方回転角速度を高める機能を提供することは重要である。
【0021】
本発明の主な目的は、特に歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置および方法を提供すること、たとえば、すべての移動モードにおいて、どのタイプの歯内治療機器でも、全く中断されない移動を実現することである。
【0022】
本発明の別の局面は、歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置および方法を提供すること、たとえば、歯内治療の成形中に根管に簡単に流体を浸透させ、機器を前方に移動させるのに必要な圧力を結果的に減じることである。
【0023】
本発明の別の局面は、歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置および方法を提供すること、たとえば、パラメータおよび角度が固定され予め定められている固定往復動作と比較して、先端を超えて押し出される破片および微細な亀裂を減じることである。
【0024】
本発明の別の局面は、効率的で安全な歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置および方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の局面は、特に、使用し易い任意のニッケルチタン合金からなる歯内治療機器を移動させるために、電気モータを制御するための装置および方法を提供することである。
【0026】
本願に従うと、特に歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置および方法は、以下の利点を有する。
-従来のNi-Ti機器および熱処理Ni-Ti機器双方に対して最適化された、歯内治療機器に使用される材料の高度の柔軟性を提供し、
-いかなるときも適切な速度およびトルク値での動作を可能にし、
-機器に過剰なトルクおよび圧力が加えられるリスクを低減し、
-歯内治療機器の材料の内部における応力の蓄積を低減し、
-停止のリスクを低減し、
-根管から材料および破片を連続的に除去することを可能にし、
-治療中の根管および使用されている機器のタイプの関数として連続的かつ自動的に移動が調整されるように歯内治療機器を作動させることを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、添付の請求項1に明示されその好ましい実施形態が請求項2~20に記載されている、特に歯内機器を移動させるために電気モータを制御するための装置に関する。
【0028】
本発明はまた、添付の請求項21に明示されているもののような装置を用いて歯内機器を回転させるように設計された電気モータに関する。
【0029】
本発明はまた、添付の請求項22~25に明示されている、特に歯内機器を移動させるために電気モータを制御するための方法、および、請求項26に明示されている、歯内機器を制御するための方法に関する。
【0030】
先行技術に残っている上述の問題は、ツールを移動させるために、特に歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置によって解決される。この装置は、少なくとも1つのセンサから受けた信号の関数として移動(M1,M2)のシーケンスをツールに実行させるように構成されている。移動(M1,M2)のシーケンスは、連続前方回転である初期移動(M1)を含み、初期移動において、モータは、通常回転方向に駆動され、高いトルク強度をツールに生じさせ、第1の最大しきい値限界(LM1)を上回るまで、このような移動を維持する。装置は、上記第1の最大しきい値限界(LM1)を上回ると、第1の交互移動(M2)に切り替えるように構成されている。第1の交互移動において、モータは、交互回転するように駆動され、初期移動(M1)よりも低いトルク強度をツールに生じさせ、第1の最小しきい値(Lm1)を下回るまで、このような移動を維持する。装置は、第1の最小しきい値(Lm1)を下回ると、初期移動(M1)に戻り、(M1)において移動(M1)を維持するまたは移動(M2)に戻るように切り替えるための条件を観察するように、構成されている。
【0031】
電気モータは、たとえば、AC、DCもしくはBL-DC(ブラシレスDC)モータまたは周知のタイプのマイクロモータであってもよい。
【0032】
上記少なくとも1つのセンサは、上記電気モータから信号(S_mtr1)を受け、モータの特性動作パラメータのセットを示す信号(S_snr1)を処理部に転送するように、設計されている。
【0033】
装置は、意図された通りに使用されるときに、移動のシーケンスに従ってツールを移動させるように、構成される。これらの移動は、連続回転移動であってもよく、または、交互移動であってもよい。交互移動においては、通常方向の回転が繰り返され各回転の次が逆方向の回転である。移動は、回転速度に応じて、装置に供給される電力に応じて、通常移動および逆移動それぞれについて選択された回転角度に応じて、ならびに、ドライブシャフトの回転方向が逆にされるときの一時停止に応じて、強度が異なる。
【0034】
通常移動または連続前方移動は、機器の長手方向軸を中心とする回転方向の回転と理解され、好ましくは歯内治療用やすりである機器は、根管に対して相当な切削力を加える。
【0035】
逆移動は、機器の長手方向軸を中心とし通常回転とは反対の回転方向の回転と理解され、好ましくは歯内治療用やすりであるツールは、通常回転中に加えられる切削力よりも小さい切削力を加える。逆移動において、歯内治療用やすりは研磨機能を有するだけであってもよい。
【0036】
ねじり移動または交互移動は、歯内治療機器の長手方向軸を中心とする、通常方向における第1の回転角度の回転に続いて、歯内治療機器の同じ長手方向軸を中心とする、逆方向における第2の回転角度の回転が行われ、通常回転と逆回転とが周期的に繰り返される移動と理解される。交互移動は、連続移動ではないが、前方移動である。これは、規則的なパターンに従い、通常移動よりも低いトルク強度をツールに生じさせる。
【0037】
通常回転/逆回転が時計回り方向または反時計回り方向に従うか否かは、ツールのブレードのそれぞれの表面特性に応じて決まる。特に、これは、時計回りまたは反時計回りに回転するときのブレードの切削能力および/または研磨能力に応じて決まる。
【0038】
予め定められた最大または最小しきい値を超えたときに一方の移動から他方の移動に切り替わる可能性があるので、移動(M1,M2)ごとに選択されたパラメータに応じて、根管ごとに固有の処理シーケンスが生じることは、本発明の利点である。これらのシーケンスは、センサによる測定の結果に基づいて構築され、歯科医は従う予定のステップについて判断する必要はない。
【0039】
ある移動から次の移動への(M1からM2への)切り替え、および、新たな移動から先行する移動のうちの1つへの(M2からM1への)切り替えは、センサが受けるフィードバック値に基づいて自動的に選択される。フィードバック値は、処理部によって、予め定められたしきい値と比較される。センサから受ける値は、予め定められたしきい値と比較する前に処理してもよい。好ましくは、フィードバック値は、ツールが受けるトルク負荷を反映する。
【0040】
シーケンスを、センサから与えられるこのようなフィードバック信号に基づいて選択することは、歯科医がある程度の自由裁量でシーケンスを選択する場合と比較して、より正確で誤差が生じにくいことが判明している。言い換えると、開示される機器によって行われる根管治療は、歯科医の技術に依存しない。歯内治療機器用の従来の駆動手段を用いるとき、停止を回避し根管処理を中断せずに進めつつ、機器に加わるひずみを適宜緩和するために、歯科医は「つつく」移動または「上下」移動を実行しなければならない。本発明に係る装置を使用するとき、そのような上下移動はもはや必要ではない。なぜなら、この装置は、ツールの高トルク負荷回転治療に、または、ツールの低トルク負荷回転治療に切り替えることが可能であるからである。レベルが異なるトルク強度の移動と移動と間で自動的に切り替えることにより、やすりが妨害されることを回避し代わりに前進させることができる。いずれも機器の破損のリスクをともなう、過剰なトルクまたは制御されていないつつきの移動は、減じることができる。移動シーケンスの適応性のおかげで、歯科医は、根管を、先端に向けて連続的に軽い圧力を加えることによって治療することができる。機器が受けるトルク負荷は、モニタリングされ、信頼できる限度内に保たれる。より安全な連続前進が保証される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、装置は、第1の交互移動(M2)よりも低いトルク強度をツールに対して生じさせる第2の交互移動(M3)をさらにツールに実行させるように構成される。第1の交互移動(M2)から第2の交互移動(M3)への切り替えは、第1の交互移動(M2)中に第2の最大しきい値(LM2)を上回ることがきっかけとなって生じる。装置は、第2の交互移動(M3)において、第2の最小しきい値(Lm2)または第3の最小しきい値(Lm3)を下回ったときに、先行する移動のうちの一方(M1またはM2)に戻るように切り替わる。特に、装置は、第3の最小しきい値(Lm3)を下回ったときに初期移動(M1)に戻るように切り替え、第2の最小しきい値(Lm2)を下回ったときに第1の交互移動(M2)に戻るように切り替える。このような先行する移動(M1,M2)を実行するときには、先行する移動(M1,M2)のうちの1つを維持するため、または、隣の移動に切り替えるための条件が、再び観察される。
【0042】
装置が、機器に与えられるより多くのレベルのトルク、したがってより多くの治療強度レベルを提供することは、この好ましい実施形態の利点である。これにより、根管の処理領域の形状および硬度により適応したより正確な治療が可能になる。
【0043】
交互移動のうちの一方(M2またはM3)から開始して、フィードバック値が予め定められた2つのしきい値のうちの少なくとも一方を下回った場合、シーケンスは、先行する移動のうちの一方に飛んで戻ることができる。このようにより高い強度に戻るように切り替えるので、歯科医は、根管の先端に向けて機器を押し出すことによって不必要な力を加える気にはならない。機器が受ける不必要なひずみを避けることができ、破損のリスクを低下させることができる。
【0044】
好ましい実施形態において、装置は、第1の交互移動(M2)または第2の交互移動(M3)において、予め定められた回転角度α2(αeffective>α2)またはα3(αeffective>α3)に達した後に、到達したしきい値とは関係なく、先行する、より高いトルクの移動または次のより低いトルクの移動に自動的に切り替えるように、構成される。したがって、より低いトルク強度の移動に切り替えるまたはより高いトルク強度の移動に切り替えるか否かは、モータから受ける特性パラメータ(S_snr1,S_snr2)が、RSの平均値、モータが取り出す電流、モータが吸収する力よりも、大きいもしくは小さいか否か、または、予め定められたRSエラー値を超えるか否か、に応じて決まる。ユーザが停滞を経験しないことはこの実施形態の利点である。このような停滞の感覚は、機器がかなりの時間交互移動に留まっていることが原因となり得る。最大回転角度α2およびα3はしたがって、装置の制御された取り扱いを改善することができる。
【0045】
シーケンスが次の移動に飛ぶことは予測されない。たとえば、第2の交互移動(M3)が移動M1の直後に実行されることは予測されない。連続して進むことで、妨害されることなく(M1)から(M2)へと、さらに(M3)へと進み、治療の強度を指示および制御の下で減じることができる。しかしながら、ある強度低減レベルを飛ばすことは、好ましくはないものの、本発明の範囲に含まれる。
【0046】
言うまでもなく、さらに低いトルク強度をツールに生じさせる、より多くの交互移動M3’、M3’’、M3’’’などを、交互移動M3の後に行うことができる。この場合、第2の交互移動(M3)から次の交互移動(M3’)への切り替えは、第2の交互移動(M3)中に第3の最大しきい値(LM3)を上回ったことがきっかけとなって生じる。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態において、装置は、最終移動(M4)をツールにさらに実行させるように構成される。この最終移動において、モータは、連続逆回転を行うように駆動されて低いトルク強度をツールに生じさせる。第2の交互移動(M3)から最終移動(M4)への切り替えは、第2の交互移動(M3)の実行中に第3の最大しきい値(LM3)を上回ったことがきっかけとなって生じる。
【0048】
最終移動(M4)が実行されるときに、装置を根管から特に上手く取り出すことができる。最終移動は、破片を根管から取り除くことにも役立つ。最終移動(M4)は、1つの治療サイクルを終了させる移動を意味する。この最終移動は、1つの治療サイクル内において先行する移動よりも小さいトルクを機器に生じさせる。
【0049】
好ましい実施形態において、装置は、移動M4において、予め定められた回転角度α4(αeffective>α4)に達した後に、到達したしきい値とは関係なく、初期移動(M1)に自動的に切り替えるように、構成される。装置はこのように構成されてもよく、このような構成は、好ましくはM4の発生後に治療サイクルを繰り返す。治療サイクルを繰り返すことの利点は、ユーザが圧力を先端に向けて加えなくても、確実に治療を連続して進められることである。このようなサイクルの繰り返しについては以下でより詳細に説明する。
【0050】
好ましい実施形態において、ツールを移動させるため、特に歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための装置は、上記電気モータから信号(S_mtr1)を受け、当該モータの第1の特性動作パラメータ(RS;RD;RP;PS)を示す信号(S_snr1)を生成するように設計された第1のセンサを含む。
【0051】
装置は、上記モータおよび上記第1のセンサとデータ通信する制御部をさらに含み、この制御部は、
-電源電圧(S_drv)を用いてモータに電力を供給するように設計された駆動部と、
-モータから受けた第2の動作パラメータに比例するフィードバック信号(S_snr2)を生成するように設計された第2のセンサとを含み、第2のセンサは駆動部とデータ通信し、さらに、
-上記駆動部、第1のセンサおよび第2のセンタとデータ通信する処理部を含む。
【0052】
上記処理部は、第1のセンサから受けた第1の信号(S_snr1)および第2のセンサから受けた第2の信号(S_snr2)の関数として上記電気モータに対して作用することによって前方移動(M1,M2)のシーケンスを歯内治療機器に実行させるように、設計される。上記移動(M1,M2)のシーケンスは、連続前方移動(M1)で開始することを含み、この移動において、モータは、第1の供給電力(PS1)、第1の回転速度(RS1)および第1の回転方向(RD1)で駆動される。第1のしきい値限界(LM1)を上回ると、第1の交互移動(M2)が開始される。第1の交互移動において、モータは、第2の供給電力値(PS2)、第2の回転速度(RS2)、第1の回転時計回り角度(CWA2)、第1の回転反時計回り角度(CCWA2)、および第1の回転時計回り角度(CWA2)と第1の回転反時計回り角度(CCWA2)との間の第2の一時停止(RP2)に従って回転するように、駆動される。
【0053】
好ましくは、装置は、第1の交互移動(M2)において初期移動M1よりも低いトルク強度がツールに与えられるように、構成される。第1の最小しきい値(Lm1)を下回るまで、移動(M2)は維持される。Lm1を下回った場合、装置は、初期移動(M1)に戻るように切り替え、初期移動(M1)を維持するための、または第1の交互移動(M2)に戻るように切り替えるための条件を観察するように、構成される。
【0054】
この発明のために、モータの特性パラメータ「RSX」はドライブシャフトの回転速度と理解され、モータの特性パラメータ「RDX」はドライブシャフトの回転方向と理解され、モータの特性パラメータ「CWAX」はドライブシャフトの回転時計回り角度と理解され、モータの特性パラメータ「CCWAX」はドライブシャフトの回転反時計回り角度と理解され、モータの特性パラメータ「RPX」はドライブシャフトの回転方向が逆にされるときの交互移動のうちの一方(M2またはM3)における一時停止時間と理解される。
【0055】
好ましい実施形態において、装置は、電気モータから信号(S_mtr1)を受けるように設計された第1のセンサを含む。このセンサは、信号(S_snr1)を制御部内の処理部に転送する。この信号は、モータの第1の特性動作パラメータのセットを示す。特性パラメータは特に、RSX、RDX、CWAX、CCWAXおよびRPXを含む。
【0056】
好ましい実施形態において、第1のセンサは、より好ましくはモータの前方移動の異なる6つの段階を識別することを可能にする3つのホール効果センサのセットからなる、ホール効果センサである。好ましくは、第1のセンサは、ドライブシャフトの角度位置をデジタル値に変換するエンコーダ位置センサであってもよい。1つまたは複数のホール効果センサにより、設定速度からのずれである測定誤差を検出することができる。速度誤差は、適切に較正された比例誘導コントローラによって計算することができる。3つのホール効果センサを用いることで、モータの関連特性パラメータを検出できる。さらに他の任意センサからのフィードバックを、計算した値の精度を検証するための指標として用いることができる。
【0057】
好ましい実施形態において、制御部は、モータおよび第1のセンサとデータ通信する。制御部は駆動部を含み、これは第2のセンサを含み、これは処理部を含む。
【0058】
駆動部は、電源電圧(S_drv)を用いてモータに電力を供給するように設計される。好ましくは、駆動部はパワーレギュレータから信号(S_drv)を受けて、モータに送られる電力を調整し、さらに、処理部から信号を受ける。特に、制御部は、ドライバに送られるPWM信号の周期を調整し、一方、パワーレギュレータは、ドライバに送られるPWM信号のデューティサイクルを調整する。
【0059】
第2のセンサは、モータの第2の動作パラメータを受けるように設計される。好ましくは、第2のセンサは、モータが取り出す電流を測定する。しかしながら、第2のセンサは、モータが吸収する力に比例するフィードバック信号(S_snr2)を転送するように設計された力センサであってもよい。第2のセンサは、移動の切り替えを判断するためにモータに加えられる負荷の指標の役割を果たす。
【0060】
制御システムが、1つ、好ましくは2つのセンサユニットのフィードバックに基づいて、機器に与えられるトルクを評価できることは、本発明の利点である。
【0061】
第1および第2のセンサ、制御部、駆動部、処理部、ならびに各部間のデータ通信のさらなる詳細は、実施例および図面について述べるセクションにおいて提供される。
【0062】
処理部は、第1および第2のセンサから信号(S_snr1,S_snr2)を受け、先に述べた移動(M1,M2)のシーケンスをツールに実行させるように設計される。処理部は、特に、センサから受けたデータを、メモリ部に格納されている予め定められた値と比較する。センサから受けた信号に基づいて、処理部は、予め定められたしきい値LM1,LM2,Lm1,Lm2,Lm3のうちの少なくとも1つと比較することができる値を計算することができる。しきい値LM1,LM2,Lm1,Lm2,Lm3は、歯内治療機器が受けるトルクを反映する。
【0063】
好ましい実施形態において、処理部は、前方移動(M1,M2,M3)のシーケンスを歯内治療機器に実行させるように設計される。第2のしきい値限界(LM2)を上回ると、第2の交互移動(M3)が開始される。第2の交互移動において、モータは、第3の供給電力値(PS3)、第3の回転速度(RS3)、第3の回転時計回り角度(CWA3)、第3の回転反時計回り角度(CCWA3)、および、上記第3の回転時計回り角度(CWA3)と上記第3の回転反時計回り角度(CCWA3)との間の第3の一時停止(RP3)に従って回転するように、駆動される。
【0064】
第2のしきい値限界LM2は最大値であり、開始された第2の交互移動(M3)により、第1の交互移動(M2)よりも低いトルク強度がツールに生じる。装置はさらに、第2の交互移動(M3)において、第2の最小しきい値(Lm2)または第3の最小しきい値(Lm3)を下回ったときに先行する移動のうちの1つ(M1またはM2)に戻るように切り替えるように構成される。特に、装置は、第3の最小しきい値(Lm3)を下回ったときは初期移動(M1)に戻るように切り替え、第2の最小しきい値(Lm2)を下回ったときは第1の交互移動(M2)に戻るように切り替える。先行する移動(M1,M2)を実行するときに、先行する移動(M1,M2)のうちの1つを維持するための、または、隣の移動に切り替えるための条件が、観察される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、装置は、第3のしきい値限界(LM3)を上回ったときに、歯内治療機器を根管から抜き取るようにモータが駆動される第4の逆移動(M4)を開始するように、構成される。たとえば、やすりのブレードは、逆移動(M4)を実行しているときにはツールが研磨機能のみを有するように、構成することができる。第4の移動により、ひずみを緩和し機器を安全に取り出すことができる。好ましくは、最終移動(M4)は連続逆回転であり、この回転において、モータは典型的に、第4の供給電力(PS4)、第4の回転速度(RS4)、および第4の回転方向(RD4)で駆動される。
【0066】
いくつかの交互移動および逆移動を有する利点は、根管の処理領域の形状および硬度に対するシーケンス(M1,M2,M3,M4)の適応性が改善されることにある。トルク強度が低い移動からトルク強度が高い移動に戻るように切り替える利点は、先に述べた通りである。
【0067】
一実施形態において、前方移動(M1,M2,M3)に関連するモータ(9)の特性動作パラメータは、以下のルール
a)第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA2>CCWA2、
b)第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA2<CCWA2、
c)第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA3>CCWA3、
d)第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA3<CCWA3、
e)RS1>RS2>RS3、
f)|CWA2-CCWA2|>|CWA3-CCWA3|、
g)PS1<PS2<=PS3、
のうちの1つ以上を満たすように、選択される。
【0068】
ルールaおよびbの利点は、やすりの切削ブレードの特性とは関係なく、第1の交互移動において、通常または前方移動の回転角度が逆移動の回転角度よりも大きい点である。実際の切削作業を保証することができる。
【0069】
ルールcおよびdの利点は、やすりの切削ブレードの特性とは関係なく、第2の交互移動において、通常または前方移動の回転角度が逆移動の回転角度よりも大きい点である。実際の切削作業を保証することができる。
【0070】
ルールeの利点は、回転速度RSが、初期移動(M1)から第1の交互移動(M2)および第2の交互移動M3にかけて、連続的に低減される点である。減少するパラメータを選択することで、過剰な力または負荷が機器に加えられないことを保証し、破損のリスクが低減される。加えて、速度を下げることで、Ni-Ti歯内治療用やすりの手術中の破損の主な原因の1つである周期的な疲労の蓄積を減じることができる。回転速度を低減することは、周期疲労抵抗が低い根管治療の成形段階で通常使用される寸法が大きな機器にとっての利点である。周期疲労抵抗が低い機器は通常、ねじり抵抗が大きいので、ねじり応力が非常に高い可能性がある狭く圧迫された根管内でNi-Ti歯内治療機器を使用するときは、ルールeを示すことができる。
【0071】
ルールfの効果は、定められた通りに交互移動のパラメータを設定することで、機器に加わる過剰な力または負荷を回避できる点である。ルールfに従うと、通常回転の回転角度から逆回転の回転角度を減算したデルタは、第1の交互移動(M2)中において、第2の交互移動M3中よりも大きい。したがって、切削力が大きいやすりの指向面(directional surface)が第1の交互移動(M2)において根管を処理する量は、第2の交互移動(M3)において根管を処理する量よりも、多い。このルールはとりわけ、滑走経路の作成後に使用される成形機器、すなわち成形段階に、適用される。こうした機器は、使用開始時から切削するはずである。しかしながら、第1の交互移動(M2)から第2の交互移動(M3)へと、通常角度と逆角度との間のデルタが減じることで、根管を徐々に成形することができ、かつ破片の発生を減じることができる。発生する破片の量が減じられるので、破片は簡単に除去することができる。
【0072】
ルールeもルールfも、根管の成形段階に対して機器が使用されるときに特に適している。ルールeは、根管治療の成形段階に熱処理Ni-Ti機器が使用されるときに特に適している。ルールeは、根管治療の成形段階に従来のNi-Ti機器が使用されるときは、ルールe’に変更してもよい。代替ルールe’’に従い、回転速度を、移動(M1)から移動(M2)にかけて増加させ、移動(M2)から移動(M3)にかけて再び低減してもよい(RS1<RS2>RS3)。
【0073】
このシーケンスが(M2またはM3のような)切削力が小さい移動に切り替わるとき、モータに供給される電力は、好ましくは増大される、または、少なくとも一定に保たれる。機器の摩擦が増大すると供給電力が増加されることはこのルール(g)の利点である。このような増大した電力を供給することで、やすりに対する妨害を減じることができる。
【0074】
任意で、ひずみを緩和するために、交互移動中の通常回転と逆回転との間の一時停止の長さを、第1の交互移動(M2)から第2の交互移動(M3)にかけて増大することもできる。
【0075】
代替の実施形態において、前方移動(M1,M2,M3)に関連するモータの特性動作パラメータは、ルールa、b、c、dおよびgのうちの1つ以上を満たすように、選択される。しかしながら、この実施形態において、特性パラメータは、以下の代替ルールe’およびf’
e’)RS1<RS2<RS3、
f’)|CWA2-CCWA2|<|CWA3-CCWA3|、
のうちの1つ以上を満たすように、選択される。
【0076】
代替ルールe’およびf’は、根管の滑走経路段階に機器が使用されるときに、特に適している。ルールe’は、根管治療の滑走経路段階に熱処理Ni-Ti機器が使用されるときに、特に適している。さらに別の代替ルールe’’は、根管治療の滑走経路段階に従来のNi-Ti機器が使用されるときに、適している。代替ルールe’’に従い、回転速度を移動(M1)から移動(M2)にかけて増大させ、移動(M2)から移動(M3)にかけて再び低減することができる(RS1<RS2>RS3)。
【0077】
代替ルールe’は、機器に対してより大きな遠心力を加えることでトルク負荷を低下させることができるときに、好適となり得る。機器に与えられるトルクを減じることで、Ni-Ti歯内治療機器の手術中の破損の主な原因の1つであるねじり応力の蓄積が減じられる。回転速度が増加することは、ねじり抵抗が小さい根管治療の滑走経路段階で通常使用される寸法が小さな機器にとっての利点である。ねじり抵抗が小さい機器は通常周期的疲労抵抗が大きい。したがって、周期的な疲労応力が非常に高い可能性がある湾曲した根管でNi-Ti歯内治療機器が使用されるときに、代替ルールe’を示すことができる。
【0078】
同様に、代替ルールf’は、M2よりもM3の方が切削力が大きいやすりを提供することでトルク負荷を低下させることができるときに、好適となり得る。これは、根管にアクセスした直後の、すなわち平滑な滑走経路を形成するために滑走経路機器を適用するときの、高性能の前進にとって好都合である。第1の交互移動(M2)から第2の交互移動(M3)にかけて通常角度と逆角度との間のデルタが増すことで、根管内部でやすりを容易に前進させることができる。
【0079】
一般的に言えば、M2とM3との間における回転速度および/または回転角度のデルタの増大または低減は、使用される材料(鋼鉄、従来のNi-Ti、熱処理Ni-Ti)および関連するそれらの特性(可撓性、降伏強度、硬度、トルク抵抗、周期的疲労抵抗)、機器のサイズ、ならびに、治療対象の根管のタイプ(湾曲形状、狭窄形状)に応じて決まる。また、これは、実施する根管治療のタイプおよび段階に応じて決まる。
【0080】
本発明は、一方の移動から他方の移動への移行に対して異なる動作モードおよび異なる特性パラメータを与えることにより、適応性が極めて高いツールであることが、判明している。
【0081】
好ましくは、装置の第2のセンサは、モータが取り出す電流に比例するフィードバック信号(S_snr2)を生成しこの信号を処理部に送るように設計された電流センサである。しかしながら、代替実施形態において、装置の第2のセンサは、モータが吸収する力に比例するフィードバック信号(S_snr2)を生成しこの信号を処理部に送るように設計された力センサである。
【0082】
好ましい実施形態において、装置は、処理部とデータ通信するメモリモジュールに予め設定された、前方移動(M1,M2,M3)のシーケンスのうちの各移動(Mi)の第1の特性パラメータ(RSX;RDX;CWAX;CCWAX;RPX)の基準値(RSi;RDi;CWAi;CCWAi;RPi)を格納するように構成されている。これらの値を格納することにより、処理部は、基準値を有効値と比較し、起こり得るずれおよび不一致をモニタリングすることができる。
【0083】
好ましい実施形態において、装置は、各最大しきい値限界(LMi)および各最小しきい値(Lmi)の基準値(MDi;MPCi;mPCi;mDi)を格納するように構成される。各最大しきい値限界(LMi)および各最小しきい値限界(Lmi)は、以下の値のうちの1つ以上を含む。
a)前方移動(Mi)中の電気モータの最大駆動電力消費(MPCi)、
b)最大駆動電力消費(MPCi)よりも大きいエネルギを電気モータが取り出すエネルギ取り出し時間(MDi)、
c)前方移動(Mi)における電気モータの最小駆動電力消費(mPCi)、
d)最小駆動電力消費(mPCi)よりも小さいエネルギを電気モータが取り出すエネルギ取り出し時間(mDi)。
【0084】
動作中、処理部は、取り出した値RSX;RDX;CWAX;CCWAX;RPX;PSXを連続的に処理することができる。処理部は次に、時間の経過にともなって蓄積されたこのような処理結果を基準値MDi;MPCi;mPCi;mDiと比較することができる。
【0085】
この発明のために、LMiは最大しきい値を意味するものとし、Lmiは最小しきい値を意味するものとし、これらのパラメータはいずれも、ツールが受けるトルクまたは負荷を反映する。本発明の一実施形態に従うと、制御信号(S_drv)の送信と処理部による第1のセンサからのフィードバック信号(S_snr1)の受信との間において経過する時間Tiが予め定められた値(MDi)を上回ったとき、
Ti>MDi、
または、電気モータが取り出す電力(S_snr2)が、予め定められた最大時間(MDi)よりも長い時間(Ti)、電気モータの予め定められた最大駆動電力消費値(MPCi)を上回ったとき、
(Ti>MDi)において(消費>MPCi)、
最大しきい値限界LMiを上回る。
【0086】
制御信号の送信とフィードバック信号の入力との間の時間差に基づくこの方法の利点は、モータが取り出す力または電流を検出する第2のセンサが冗長にされることである。
【0087】
時間の経過にともなって消費される電力に基づくこの方法の利点は、予め定められた最小値mPCiを下回る値を検出できることである。
【0088】
本発明に従うと、予め定められた最大時間(mDi)よりも長い時間(Ti)、電気モータが取り出す電力(S_snr2)が当該モータの予め定められた最小駆動電力消費値(mPCi)を下回るとき、
(Ti>mDi)において(消費<mPCi)、
最小しきい値限界Lmiを下回る。
【0089】
指数の昇順M1、M2、M3、M4で移動シーケンスを進めることにより、機器に与えられるトルクは減じられる。
【0090】
しきい値トルクRS、CWA、CCWAのさらなる詳細および典型的な値は、実施例および図面について述べるセクションにおいて提供される。
【0091】
好ましい実施形態において、装置は、交互移動(M2およびM3)中に、モータの特性パラメータが、通常回転段階内においてのみ決定されるように、構成される。なぜなら、摩擦、したがってトルクは、送りを生み出す角度が描かれたときに最大になるからである。
【0092】
さらに好ましい実施形態において、モータの特性パラメータは、通常回転の初期角度αiと通常回転の最終角度αfとの間に位置する回転の内角αを回転が描く、通常回転段階中においてのみ、決定される。通常回転段階の初期角度αi、好ましくはαi=0度~10度において測定された特性パラメータは無視するのが好都合であることが判明している。より好ましくは、無視すべきパラメータは、通常回転段階のαi=0度~6度という角度において測定されたパラメータである。通常回転段階の最終角度αf、好ましくはαf=(角度α-20度)~(角度α-0度)、たとえば通常回転角度が180度の場合は162度~180度において測定された特性パラメータも無視することが好都合であることが判明している。
【0093】
この通常回転段階は、機器が受けるトルクを最も良く反映する値を提供するのに適している。通常、初期段階は、電流消費が多いおよび/または機器のレスポンスが遅い。なぜなら、回転方向を逆にするには一定量のエネルギが使用されるからである。一方、最終段階は、電流消費が少ないおよび/または機器のレスポンス遅延がほとんどない。特に、特性パラメータが決定される前に、定められた最小角度αiを強要すると、値の安定度および信頼度が高くなる。
【0094】
好ましい実施形態において、装置は、逆移動M4の開始の予め定められた回数nI、好ましくは5と15との間の予め定められた数、を超えたときに、警告音を自動的に作動させるように構成される。逆移動の開始の回数は、M4の開始の回数nRを数えるカウンタによって評価できる。警告音を発することに加え、移動(M4)の期間を定める角度α4を大きくする、たとえば2倍または3倍にすることによって、歯科医が治療を中断するおよび/または歯に注水することができるようにしてもよい。オペレータがペダルを解放することによって治療を中断することを選択した場合、カウンタnRはリセットされる。そうでなければカウンタはさらに増分され、次回逆移動(M4)に入ったときに同じ挙動を繰り返す。最も好ましくは、サイクル数nIは10である。
【0095】
この特徴により、機器から破片を定期的に除去することを歯科医に思い出させる。しかるべきときに破片が除去されない場合は、ブレードの切削力が損なわれるだけでなく、歯科医が破片を先端に向けて押し出して象牙質の破片が詰まることにより治療の進行が妨げられるリスクも生じる。この特徴は患者の安全に役立つ。しかしながら、歯科医には、歯科医が適当とみなした場合、別の治療サイクル数nIに対してエンジンを再始動させるという選択肢がある。
【0096】
別の実施形態において、装置は、逆移動(M4)の開始の予め定められた回数nSを超えると、延長警告音を自動的に作動させ逆移動(M4)を恒久的に維持するように、構成される。逆移動M4を終えるために、ユーザは、ペダルを解放することでエンジンを停止させなければならない。この特徴は、機器は何度も相当なトルクを受け破損のリスクを下げるためには交換すべきであることを示すために、提供される。
【0097】
nI回の治療サイクルの完了後にもnS回の治療サイクルの完了後にも警告音を発することには、歯科医に状況の再評価を促すという利点がある。これらの警告音は、いつ注水しようと考えるか、およびいつ機器を交換するかについて、指標を提供する。
【0098】
さらに、このシステムは、治療する根管のタイプおよび形状に、より良く適応することができる。たとえば、治療対象の根管が狭すぎない場合は、機器にはほとんどトルクが生じず、逆移動(M4)を生じさせる値に到達することおよび治療サイクルの終了に到達することは難しいであろう。警告音は、機器が相当進んだ後に発せられる。逆に、治療対象の根管が非常に狭い場合は、機器には大きなトルクが発生し警告音の発生を生じさせる値に容易に到達するであろう。狭い根管の中にある機器は大きなひずみを受けるので、停止および狭い根管の注水を歯科医に思い出させる回数が多いことは適切である。機器に対する妨害および先端を詰まらせる破片の形成は、根管の注水を定期的に促す自動信号のおかげで、防止される。
【0099】
本発明はまた、ツール、特に歯内治療機器を移動させるために電気モータを制御するための方法に関し、この制御方法は、センサから受けた信号の関数としての移動(M1,M2)のシーケンスを含む。この方法はさらに、第2の交互移動(M3)および/または最終移動(M4)を含み得る。
【0100】
上記各移動の特性および一方から他方に切り替える条件は、先に述べた通りであり、実施例および図面を説明するセクションにおいて示されるであろう。
【0101】
本発明はまた、特に歯内治療機器を移動させるために、電気モータを制御するための方法に関し、これは、モータの第1の特性動作パラメータ(RSX;RDX;RPX;PSX)を示す信号(S_snr1)を受ける段階と、モータに電源電圧(S_drv)で電力を供給する段階と、モータの第2の動作パラメータに比例するフィードバック信号(S_snr2)を受ける段階と、上記電気モータに対して作用することによって移動(M1,M2,M3,M4)のシーケンスを歯内治療機器に実行させる段階とを含む。
【0102】
各移動の上記特性および一方から他方に切り替える条件は先に述べた通りである。
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら非限定的な例として示す非排他的な好ましい実施形態およびその変形の説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯内治療装置の概略機能ブロック図である。
【
図2A】本発明の第1の実施形態に係る、電気モータを制御するための、特に歯内治療機器を移動させるための方法の概略フローチャートである。
【
図2B】本発明の第1の実施形態に係る、電気モータを制御するための、特に歯内治療機器を移動させるための方法の概略フローチャートである。
【
図3】
図1の装置を含む歯内治療システムの概略図である。
【
図4】逆移動M4の実施中に実行可能な、電気モータを制御するための方法の概略フローチャートである。
【
図5】逆移動M4の実施中に実行可能な、電気モータを制御するための代替方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る歯内治療装置が全体として参照符号1で示されている。
【0105】
装置1は主に、歯内治療機器7に一連の移動を実施させるように設計された制御部2と、歯内治療機器7を回転駆動するように設計されたモータ9をと含む。
【0106】
減速ギア10は、好ましくはモータ9と歯内治療機器7との間に配置される。
モータ9は、好ましくは電気モータであり、たとえば、AC、DCもしくはBL-DC(ブラシレスDC)モータまたは周知のタイプのマイクロモータを含み得る。
【0107】
好ましくは、電気モータ9は(
図3に示されるように)筒状シート内に配置された円筒形の本体を有する。
【0108】
電気モータ9は、ハンドピースを介して歯内治療機器7に接続されたドライブシャフトを動かすことができる。
【0109】
電気モータ9は第1のセンサ8に関連付けられる。第1のセンサ8は、モータ9から信号S_mtr1を受けるように、かつ、モータ9の第1の特性動作パラメータRS、RD、RP、PSを示す信号S_snr1をリアルタイムで生成するように設計される。
【0110】
モータ9の第1の特性パラメータは、以下のうちの1つ以上を含み得る。それらは、ドライブシャフトの回転速度RSi、ドライブシャフトの回転方向RDi、ドライブシャフトの回転の時計回り角度CWAi、ドライブシャフトの回転の反時計回り角度CCWAi、ドライブシャフト9の回転方向が逆にされたときの一時停止時間RPiである(iは1~4の範囲に含まれ、たとえば、RS1,RD1,RP1,RS2;RD2,RP2,CWA2,CCWA2などである)。
【0111】
第1のセンサ8は、好ましくは、ドライブシャフトに結合されこのシャフトの角度位置を検出するように、かつこのドライブシャフトに強固に接続された要素の位置のフィードバック制御を可能にするように設計された、誘導ブラシレスセンサである。第1の位置センサ8は、好ましくは、モータの前方移動の異なる6つの段階の識別を可能にする、3つのホール効果センサのセットである。
【0112】
第1のセンサ8は、ドライブシャフトに強固に接続されたロータと、電気モータ9の筐体上にあり使用時にロータに対面するように配置されたステータとを含む。
【0113】
第1のセンサ8は、好ましくはエンコーダ位置センサであってもよい。このようなセンサまたはエンコーダは、ドライブシャフトの角度位置を(適切にスケーリングされた)デジタル値に変換する。
【0114】
使用されるエンコーダは、抵抗、光、または磁気センサであってもよい。
制御装置はまた、電気モータ9および第1のセンサ8とデータ通信する制御部2を含む。
【0115】
制御部2は、モータ9に電源電圧S_drvを与えるように設計された駆動部4と、モータ9の第2の動作パラメータに比例するフィードバック信号S_snr2を生成するように設計された第2のセンサ6とを含む。第2のセンサ6は駆動部4とデータ通信する。
【0116】
第2のセンサ6は、モータ9が取り出す電流に比例するフィードバック信号S_snr2を生成するように、かつこの信号を処理部3に送信するように設計された、電流センサであってもよい。
【0117】
フィードバック信号S_snr2は、好ましくは電気モータ9の電源範囲に含まれるアナログ電圧値である。
【0118】
これに代えて、第2のセンサ6は、モータ9によって吸収される力に比例するフィードバック信号S_snr2を生成するように、かつこの信号を処理部3に送信するように設計された、力センサであってもよい。
【0119】
また、制御部2は、駆動部4、第1のセンサ8および第2のセンサ6とデータ通信する処理部3を含む。
【0120】
好ましくは、制御部2はまた、信号S_pwrlを駆動部4に送信するように設計されたパワーレギュレータ5に接続される。信号S_pwrlは、信号S_drvを送信することによってドライバ4がモータ9に送る電力を調整するために使用される。特に、制御部3は、ドライバ4に送信されるPWM信号の周期を調整し、パワーレギュレータ5は、ドライバ4に送信されるPWM信号のデューティサイクルを調整する。なお、一般的に、この文脈および後述のクレームにおいて、制御部2を異なる機能モジュール(メモリモジュールまたは演算モジュール)に分割されるものとして説明しているが、それは専らその機能を明らかにかつ十分に説明するためにすぎない。
【0121】
実際、上記制御部2は、説明した機能を実行するよう適切にプログラムされた1つの電子デバイスであればよく、上記異なるモジュールは、ハードウェアユニットおよび/またはプログラムされたデバイスに含まれるソフトウェアルーチンであってもよい。これに代えてまたはこれに加えて、このような機能は、上記機能モジュールを組み込んだ複数の電子デバイスによって実行されてもよい。
【0122】
また、制御部2は、メモリモジュールに含まれる命令を実行するための1つ以上のプロセッサを有し得る。
【0123】
上記機能モジュールも、これを組み込んだネットワークのアーキテクチャの機能として、異なるローカルまたはリモートプロセッサ間で分割されてもよい。
【0124】
このシステムはまた、説明したそれぞれの方法における説明した機能を実現するのに必要な手段および/またはメモリモジュールおよび/または演算モジュールすべてを含む。
【0125】
処理部3は、第1のセンサ8から入力された第1の信号S_snr1と第2のセンサ6から受けた第2の信号S_snr2との関数として電気モータ9に対し作用することにより、歯内治療機器7に移動(M1,M2,M3,M4)のシーケンスを実行させるように構成される。
【0126】
移動(M1,M2,M3,M4)のシーケンスは、連続前方移動(移動「M1」)で開始することを含む。この移動では、電気モータ9が、第1の供給電力PS1、第1の回転速度RS1および第1の回転方向RD1に従って回転するように駆動される。
【0127】
第1のしきい値限界L1を上回ると、処理部3は、モータに、第1の往復または交互移動(「M2」)を開始させる。この移動では、モータ9が、第2の供給電力値PS2、第2の回転速度RS2、第1の回転時計回り角度CWA2、第1の回転反時計回り角度CCWA2、および第1の回転時計回り角度CWA2と第1の回転反時計回り角度CCWA2との間の第2の一時停止RP2に従って回転するように駆動される。
【0128】
第2のしきい値限界L2を上回ると、処理部3は、好ましくはM2と異なる第2の交互移動(「M3」)をドライブシャフトに実行させる。第2の交互移動では、モータ(9)が、第3の供給電力値PS3、第3の回転速度RS3、第3の回転時計回り角度CWA3、第3の回転反時計回り角度CCWA3、および第3の回転時計回り角度CWA3と第3の回転反時計回り角度CCWA3との間の第3の一時停止RP3に従って回転するように駆動される。
【0129】
好ましくは、第3のしきい値限界L3を上回ると、処理部3は、モータに、第4の逆移動M4を実行させる。この移動では、モータ9が、歯内治療機器7を根管から抜き取るために駆動される。続いて、好ましくは数ミリ秒と数秒との間である、一定の時間(または遅延)後、モータは移動M1を維持することができる。
【0130】
移動M1,M2,M3,M4のシーケンスのうちの各移動Miの第1の特性パラメータの基準値RSi、RDi、CWAi、CCWAi、RPiは、上記処理部3とデータ通信するメモリモジュール11に予め設定される。たとえば、このメモリはまた、第1の交互移動M2の基準値RS2、RD2、CWA2、CCW2、RP2を含む。
【0131】
以下の2つの表は、非限定的な例として、しきい値トルク、ドライブシャフトの回転、ならびに時計回りおよび反時計回り角度回転(交互移動M2およびM3の場合)の値を示す。第1の表は従来のNi-Ti歯内治療機器に関連し、第2の表は熱処理Ni-Ti歯内治療機器に関連している。これらの表はいずれも、根管治療の成形段階に適したシーケンスに関連する。
【0132】
【0133】
連続前方移動M1は、好ましくは、使用される特定の歯内治療機器に応じて時計回りまたは反時計回りの、360度全体にわたる回転として発生する。歯内治療機器が連続前方移動M1中に根管内で大きな抵抗を受けると、360度の回転が終了する前に移動M2のトルクを超過し、結果として直ちに移動の切り替えが発生する。たとえば、トルクが突然増加すると、移動M1は、150度、200度、300度等の後、直ちに移動M2に切り替えることができる。たとえば、トルクが突然増加した場合、移動M1を、150度、200度、300度などの後に、直ちに移動M2に切り替えることができる。
【0134】
連続移動M1は、使用される歯内治療機器に応じて時計回りまたは反時計回り(適切な押しボタンを用いて前もって設定)とすることができる。実際、移動Miはすべて、方向を変えることができる。たとえば、機器が時計回りに切削するように設計されている場合、移動M1~M2およびM3すべての有力な角度は時計回り(CW)、M4は逆の反時計回り(CCW)である。一方、使用される機器が、前に装置内で設定されて反時計回り回転用に設計されている場合、パラメータM1、M2およびM3はすべて同一であるが逆方向である、すなわち、反時計回り(CCW)である有力な前方移動成分であり、移動M4は逆の時計回りである。
【0135】
一実施形態において、従来のNi-Ti歯内治療機器の場合、ドライブシャフトの回転速度の値は、M1=270rpm、M2=300rpm、M3=220rpmであることが好都合である。
【0136】
好ましくは、逆移動M4の回転速度は、移動M1の回転速度と同一であるが逆方向である。
【0137】
上記実施形態において、熱処理Ni-Ti歯内治療機器の場合、ドライブシャフトの回転速度の値は、M1=370rpm、M2=320rpm、M3=270rpmであることが好都合である。
【0138】
以下の2つの表は、しきい値トルク、ドライブシャフトの回転、ならびに時計回りおよび反時計回り角度回転(交互移動M2およびM3の場合)の値を示す。上述の例とは異なり、これらの表は、根管治療の滑走経路段階に適したシーケンスに関連する。第1の表は、従来のNi-Ti歯内治療機器に関連し、第2の表は熱処理Ni-Ti歯内治療機器に関連している。
【0139】
【0140】
ルールe’’に従うと、ドライブシャフトの回転速度RSは、M1で250rpm、M2で320rpm、M3で200rpmであることが好都合であることがわかっている。さらに好ましくは、M2の通常角度が102度(CWA)であるのに対しM2の逆の角度は60度(CCWA)である。好ましくは、M3の通常の角度が84度(CWA)であり、M3の逆の角度が24度(CCWA)である。
【0141】
熱処理Ni-Ti歯内治療機器の駆動の代替例において、しきい値トルク、ドライブシャフトの回転、ならびに時計回りおよび反時計回り角度回転(交互移動M2およびM3の場合)の値は、以下の表に示されるように選択されている。
【0142】
【0143】
ルールe’に従うと、ドライブシャフトの回転速度RSは、M1で480rpm、M2で580rpm、M3で750rpm、M4で300rpmであることが好都合であることがわかっている。
【0144】
これに代えて、ルールeに従うと、ドライブシャフトの回転速度RSは、M1で600rpm、M2で580rpm、M3で500rpmを選択することができる。
【0145】
さらに好ましくは、M2の通常の角度は90度(CWA)であり、M2の逆の角度は60度(CCWA)である。好ましくは、M3の通常の角度は72度(CWA)であり、逆の角度は30度(CCWA)である。
【0146】
好ましくは、メモリモジュール11はまた、各しきい値限界Liの基準値を含む。
各しきい値限界Li(i=1、2、3、4)の基準値MDi、MPCi、mPCi、mDiは、以下の値のうちの1つ以上を含む。
a)前方移動Mi中の電気モータの最大駆動電力消費MPCi、
b)電気モータ9が取り出すエネルギが最大駆動電力消費MPCiよりも大きい最大時間MDi、
c)前方移動Miにおける電気モータの最小駆動電力消費mPCi、
d)電気モータ9が取り出すエネルギが最小駆動電力消費mPCiよりも小さい最小時間MDi。
【0147】
好ましくは、各しきい値限界Liの基準値MDi、MPCi、mPCi、mDi、および、前方移動のシーケンスにおける各移動Miの第1の特性パラメータの基準値RSi、RDi、CWAi、CCWAi、RPiは、少なくとも従来のNi-Ti機器および/または成形機器ならびに熱処理Ni-Ti機器および/または滑走経路機器の場合、メモリ11に格納される。オペレータが、使用されているNi-Ti機器のタイプを適切な押しボタンを用いて設定すると、プリセット値がメモリ11から処理部3にロードされる。
【0148】
好ましくは、処理部にロードされるプリセット値のうちのいくつかは、オペレータが、ディスプレイ23を含む制御パネル22上の適切な押しボタン25を用いて変更することができる。ディスプレイ23はユーザインターフェイスモジュールとデータ通信し、ユーザインターフェイスモジュールは処理部3に接続される。特に、オペレータが変更できるプリセットパラメータは、回転角度CWおよびCCWならびに回転速度を含む。
【0149】
したがって、歯内治療機器の移動は、自動であり、やすりのタイプ(従来のNi-Tまたは熱処理Ni-Ti)のおよび/または治療段階(成形段階、滑走経路段階)の関数として予め設定されるが、その速度および角度のしきい値は自由に変更可能である。
【0150】
患者に対する歯内治療の開始前、オペレータは、使用される歯内治療機器に応じて決まり以下の選択を含む2つのオプションを設定するだけでよい。
1.回転方向(切削CWまたはCCW用のブレードで行う場合は機器の関数としてCWまたはCCW方向のうち有力なもの)、
2.使用されている機器(従来のNi-Tiまたは熱処理Ni-Ti)および/または実行する治療の段階(成形段階/滑走経路段階)の関数としての移動のタイプ。歯内治療装置1のオペレータは、制御パネル13を用い、たとえば押しボタン12を押すことにより、所定の歯内治療に対して特定の歯内治療機器またはやすりを選択する。特定の歯内治療機器が選択されると、処理部3は上記機器および歯内治療について最適化されたパラメータをメモリ11からロードする。したがって、特定の予めプログラムされた作業方法が選択されると、処理部3は自動的に、回転の一方の方向または双方の方向について交互運動動作値を自動的にロードする。
【0151】
処理部3はまた、モータ9の第1の特性動作パラメータについての、先に概略を述べた代替ルールe’、e’’およびf’を含む1つ以上の動作ルールを実行することができる。各前方移動M1、M2、M3に関連するモータ9の第1の特性動作パラメータは、好ましくは、以下のルール
a)第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA2>CCWA2、
b)第1の回転方向(RD1)が反時計回りの場合、CWA2<CCWA2、
c)第1の回転方向(RD1)が時計回りの場合、CWA3>CCWA3、
d)第1の回転方向RD1が反時計回りの場合、CWA3<CCWA3、
e)RS1>RS2>RS3、
f)|CWA2-CCWA2|>|CWA3-CCWA3|、
g)PS1<PS2<=PS3、
のうちの1つ以上を満たすように、選択される。
【0152】
本発明はまた、
図2Aおよび
図2Bのフローチャートに示されるように、特に歯内治療機器7を移動させるために電気モータ9を制御する方法に関する。歯内治療機器のオペレータが従来のNi-Ti機器を使用するかまたは熱処理Ni-Ti機器を使用するかを判断すると、オペレータは、この情報を制御コンソール22の押しボタン25を用いてシステムに入力する。先に述べたように、オペレータはまた、使用されている歯内治療機器が時計回り(CW)に切削するためのブレードで構成されているのかまたは反時計回り(CCW)に切削するためのブレードで構成されているのかを入力する。制御装置は、使用されている歯内治療機器に特徴的なしきい値を自動的に処理部3にロードする。
【0153】
特に、この制御方法は、
-第1の特性動作パラメータRSi、RDi、RPi、PSxを示す信号S_snr1を、電気モータ9から、好ましくはモータ9に接続された第1のセンサ8を介して受ける段階と、
-電源電圧S_drvによってモータ9に電力を供給する段階と、
-モータ9の第2の動作パラメータに比例するフィードバック信号S_snr2を、好ましくは第2のセンサ6から受ける段階と、
-好ましくはドライバ4によって生成された信号S_drvを用いて、電気モータ9に対して作用することにより、移動M1、M2,M3、M4のシーケンスを歯内治療機器7に実行させる段階とを、含む。
【0154】
移動M1、M2、M3、M4のシーケンスは以下を含む。
-連続前方移動M1で開始すること32;34。この移動において、モータ9は、第1の供給電力PS1、第1の回転速度RS1、および第1の回転方向RD1に従って回転するように駆動される。
-第1のしきい値限界L1を上回る38と、第1の交互移動M2が開始される40。この移動において、モータ9は、第2の供給電力値PS2、第2の回転速度RS2、第1の回転時計回り角度CWA2、第1の回転反時計回り角度CCWA2、および第1の回転時計回り角度CWA2と第1の回転反時計回り角度CCWA2との間の第2の一時停止RP2に従って回転するように駆動される。
-第2のしきい値限界L2を上回る44と、第2の交互移動M3が開始される48。この移動において、モータ9は、第3の供給電力値PS3、第3の回転速度RS3、第3の回転時計回り角度CWA3、第3の回転反時計回り角度CCWA3、および第3の回転時計回り角度CWA3と第3の回転反時計回り角度CCWA3との間の第3の一時停止RP3に従って回転するように駆動される。
【0155】
連続前方移動M1を第1の交互前方移動M2に切り替えるための第1のしきい値限界L1は、以下の条件のうちの少なくとも1つによって与えられる(
図3の段階38)。
a)制御信号S_drvの送信と第1のセンサ8から入力されるフィードバック信号S_snr1の受信との間の経過時間t1が、予め定められた値MDを上回る、または、
b)電気モータ9が取り出す電力が、電気モータ9が取り出すエネルギがMPC1を上回る最大時間MDiよりも長い時間t2、モータの予め定められた最大駆動電力消費値MPC1を上回る。(a)および(b)の2つの条件が満たされない場合、連続前方移動M1が維持される(
図3の段階36)、
第1の交互前方移動M1から第2の交互前方移動M3に切り替えるための第2のしきい値限界L2は、以下の条件のうちの少なくとも1つによって与えられる(
図3の段階44)。
a)制御信号S_drvの送信と第2のセンサ8から入力されるフィードバック信号S_snr1の受信との間の経過時間t1が、予め定められた値MDを上回る、または、
b)電気モータ9が取り出す電力が、電気モータ9が取り出すエネルギがMPC2を上回る最大時間MD2よりも長い時間t3、モータの予め定められた最大駆動電力消費MPC2を上回る。
【0156】
(a)および(b)の2つの条件が満たされない場合、この方法は
図3の段階46に飛ぶ。
図3の段階46において、第1の交互移動M2中に、電気モータ9が取り出す電力が、エネルギ取り出し時間mD2よりも長い時間t3、電気モータ9の最小駆動電力消費mPC2よりも小さい場合、処理部3は、歯内治療機器7に連続前方移動M1を行わせる。そうでなければ、移動M2が維持される(段階42)。
【0157】
図3は、
図1の装置1を含む歯内治療システム20の実施形態を示す。特に、システム20は、ハンドル21に作動的に結合されたコンソール22を含む。一実施形態において、ハンドル21は、電気モータ9と、任意で減速ギア10と、ハンドピース27とを含む。ハンドピースのヘッドは歯内治療機器7に結合することができる。先に示したように、システム20は、機器7を時計回りまたは反時計回りに回転させるように設計される。本明細書では時計回りの回転を機器の前方移動方向と説明し、反時計回りの回転を反対方向と説明しているが、この説明は非限定的な例として提供しているのであって、本発明の実施形態は、前方移動または逆移動の方向と、時計回りまたは反時計回りとの間の、特定の関係に限定されない。
図3に示される実施形態において、コンソール22は、たとえば、システムのオンオフのため、または、患者の治療に使用されているタイプの歯内治療機器を構成するための、ディスプレイ23と、複数の押しボタン25とを含み得る。システム20は、好ましくは、歯内治療機器の移動Miを停止または再開させるために医師が作動させることができるペダル24を含む。
【0158】
図4は、逆移動M4中に動作するメカニズムの実施形態を示す。M3において最大しきい値限界を上回ると(R)、逆移動M4のパラメータが設定される。M4に入るときに、カウンタがnRからnR+1に増大される。nR値が依然として予め定められた基準値nIを下回っている一方で、逆移動M4は、特定の回転角度α
4の間維持される。予め定められた基準値nRは、好ましくは5と15との間にあり、最も好ましくは10である。回転角度α
4の終了後、装置は通常の前方移動M1に戻るように切り替わる。カウントされたnR値が予め定められた基準値nIを上回ると直ちに、警告音が作動する。逆移動M4は、装置が通常の前方移動M1に戻るように切り替わるまで、特定の回転角度α
4の間維持される。逆移動M4は延長されてもよい。
【0159】
図5は、逆移動M4の間動作するメカニズムの別の実施形態を示す。M3において最大しきい値限界を上回ると(R)、逆移動M4のパラメータが設定される。M4に入るときに、カウンタがnRからnR+1に増大される。nR値が依然として予め定められた基準値nIを下回っている一方で、逆移動M4は、特定の回転角度α
4の間維持される。これは
図4を参照しながら説明した通りである。しかしながら、カウントされたnR値が予め定められた基準値nIを上回ると直ちに、別の評価が実行される。カウントされた値nRは、nIよりも大きい別の基準値nSと比較される。nRが依然として基準値nSを下回っている一方で、警告音が作動し、逆移動M4が、装置が通常の前方移動M1に戻るように切り替わるまで、特定の回転角度α
4の間維持される。これは
図4を参照しながら説明した通りである。しかしながら、Sn値を上回ると、装置は、長くされた警告音を発し、恒久的に逆移動4を実行する。このループという側面は、何度も相当なひずみを受けてきたやすりを交換するようユーザを促すために提供される。好ましくは、nS値は50と90との間になるように選択される。最も好ましい値は70である。