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特許7170042生体試料から粒子を単離するための方法、システムおよび濾過ユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】生体試料から粒子を単離するための方法、システムおよび濾過ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20221104BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20221104BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20221104BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221104BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20221104BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N1/04 H
G01N33/48 S
G01N1/10 B
G01N1/10 H
C12M1/00 A
C12M1/26
C12N5/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020529511
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2017113930
(87)【国際公開番号】W WO2019104637
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】516036456
【氏名又は名称】ヤンタイ・アウスビオ・ラボラトリーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヂャオチアン
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-517310(JP,A)
【文献】特開2013-009674(JP,A)
【文献】特開2016-153124(JP,A)
【文献】特開2013-019904(JP,A)
【文献】特表2003-512594(JP,A)
【文献】特表2013-514874(JP,A)
【文献】特開昭54-122713(JP,A)
【文献】特表2012-513596(JP,A)
【文献】特表2002-530648(JP,A)
【文献】特開2006-226798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 15/00-15/14
G01N 33/48-33/98
G01N 37/00
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料から粒子を単離するための方法であって、
- 上側開口部および下側開口部を有するカラムを提供するステップを備え、前記カラムは、第1の直径の第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズを備える少なくとも第1のセクションを備え、前記第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズは、前記第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズが前記下側開口部を通過しないように前記カラム内に保持され、前記第1のセクションは、前記生体試料のフィルタとして作用する隣接した実質的に非多孔性であるマイクロビーズ同士の間の隙間を提供し、前記方法はさらに、
- 前記生体試料を、前記カラムの前記上側開口部を通して前記第1のセクションの上に適用するステップと、
- 前記生体試料の粒子の第1の部分を前記生体試料の粒子の第2の部分から分離するステップとを備え、前記生体試料の粒子の前記第1の部分は前記第1のセクションを通過し、前記第1のセクションは前記生体試料の粒子の前記第2の部分を保持し、保持された前記粒子の前記第2の部分は前記隙間の内部に捕捉され、前記方法はさらに、
- 保持された前記生体試料の粒子の前記第2の部分と前記第1のセクションとを緩衝液に懸濁させて懸濁液を形成するステップと、
- 懸濁した前記生体試料の粒子の前記第2の部分を懸濁した前記第1のセクションから分離するステップとを備える、方法。
【請求項2】
前記生体試料の粒子の前記第1の部分は、重力によってまたは遠心力の印加によって、前記生体試料の粒子の前記第2の部分から分離し、分離した前記生体試料の粒子の前記第1の部分は第1の容器に収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
懸濁した粒子の前記第2の部分は、重力によってまたは遠心力の印加によって、懸濁した前記第1のセクションから分離する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法はさらに、
- 分離した前記生体試料の粒子の前記第1の部分または前記第2の部分を濃縮するステップを備え、分離した前記生体試料の粒子の前記第1の部分または前記第2の部分を濃縮するために遠心力が印加される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロビーズは実質的に非圧縮性であり、および実質的に非多孔性である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の直径は、20~700μmの範囲であるか、または10nm~1μmの範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のセクションは懸濁可能である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記上側開口部および下側開口部を有するカラムを提供するステップにおいて、前記第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズは、前記下側開口部に位置付けられる収縮手段によって前記カラム内に保持される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記収縮手段は、第2の直径の第2の複数のマイクロビーズを備える第2のセクションを備え、前記第1の直径は前記第2の直径よりも小さい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記収縮手段は取り外し可能なプラグを備え、および/または前記収縮手段は前記カラムの下に位置付けられる容器によって設けられ、前記収縮手段は前記容器の中心突出部であり、前記カラムの前記下側開口部に位置付けられ、前記突出部の少なくとも一部は前記カラムの内部に収まる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記中心突出部は少なくとも上部および下部を備え、前記上部は前記カラムの内部に収まり、前記下部は前記カラムの前記下側開口部の外側壁を支持し、および/または、
細長いチャネルの外側壁と前記容器の前記中心突出部の外側壁との間に通路が形成され、これにより、液体が前記通路を通って容器チャンバに流れ込むことができ、前記通路は、10~40μmの幅を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
- 前記懸濁液を吸引して前記懸濁液を第2の容器に移すことによって前記懸濁液を前記第2の容器に収集するステップをさらに備え、または、
- 重力によってまたは遠心力の印加によって前記懸濁液を第2の容器に収集するステップをさらに備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のセクションおよび前記第2のセクションは積層された層として設けられ、前記第1のセクションは最上層であり、
記カラムは複数のセクションを備え、前記複数のセクションのうちの2つは前記第1のセクションおよび前記第2のセクションであり、各セクションは特定の直径の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズを備え、前記複数のセクション同士は少なくとも前記マイクロビーズの前記特定の直径が異なり、前記第1のセクションの前記第1の直径は最小直径を備え、
記複数のセクションは積層された層として設けられ、前記第1のセクションは最上層であり、前記複数のセクションの前記マイクロビーズの前記特定の直径は最上層から最下層に向かって徐々に増加する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のセクションは3~7個のセクションを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は循環腫瘍細胞を単離するために使用され、前記第1の直径は80~200μmの範囲であり、または、
前記方法は循環微小塞栓を単離するために使用され、前記第1の直径は200~600μmの範囲であり、または、
前記方法は細胞外小胞を単離するために使用され、前記第1の直径は50nm~500nmである、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
生体試料から粒子を単離するための自動液体ハンドリングシステムであって、
- 上側開口部および下側開口部を有するカラムを提供するための手段を備え、前記カラムは、第1の直径の第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズを備える少なくとも第1のセクションを備え、前記第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズは、前記第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズが前記下側開口部を通過しないように前記カラム内に保持され、前記第1のセクションは、前記生体試料のフィルタとして作用する隣接した実質的に非多孔性であるマイクロビーズ同士の間の隙間を提供し、前記システムはさらに、
- 前記生体試料を、前記カラムの前記上側開口部を通して前記第1のセクションの上に適用するための手段と、
- 前記生体試料の粒子の第1の部分を前記生体試料の粒子の第2の部分から分離するための手段とを備え、前記生体試料の粒子の前記第1の部分は前記第1のセクションを通過し、前記第1のセクションは前記生体試料の粒子の前記第2の部分を保持し、保持された粒子の前記第2の部分は前記隙間の内部に捕捉され、前記システムはさらに、
- 保持された前記生体試料の粒子の前記第2の部分と前記第1のセクションとを緩衝液に懸濁させて懸濁液を形成するための手段と、
- 懸濁した前記生体試料の粒子の前記第2の部分を懸濁した前記第1のセクションから分離するための手段とを備える、システム。
【請求項17】
カラム(2)を備え、容器(3)をさらに備える濾過ユニット(1)であって、
前記カラム(2)は生体試料から粒子を単離するための方法で使用されるように適合され、前記カラム(2)は、
- 前記生体試料を受けるための上側チャンバ(21)を備え、前記上側チャンバはその外側面が1つ以上の外側カラム壁(22)によって規定され、前記外側カラム壁はその下端においてテーパ部(29)内に延び、前記カラムはさらに、
- 前記テーパ部(29)から下側開口部(27)まで下方に延びる細長いチャネル(26)を備え、
- 前記細長いチャネル(26)は、第1の直径の第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズを備える少なくとも第1のセクションで少なくとも部分的に充填され、前記第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズは、第1の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズが前記下側開口部を通過しないように前記カラム内に保持され、前記第1のセクションは、前記生体試料のフィルタとして作用する隣接した実質的に非多孔性であるマイクロビーズ同士の間の隙間を提供し、これによって粒子が前記隙間の内部に捕捉され、
前記容器(3)は、前記生体試料の一部またはすべてを受けるための容器チャンバ(31)を備え、前記容器チャンバはその外側面が1つ以上の外側容器壁(32)によって規定され、前記容器は、前記カラム(2)が前記容器の上に載置されると、前記カラム(2)の前記細長いチャネル(26)が前記容器チャンバ(31)の内部に突き出るように配置される、濾過ユニット。
【請求項18】
前記カラムは前記上側チャンバ(21)を封止するために蓋部(210)をさらに備え、前記蓋部は上側開口部(24)を備え、前記上側開口部を通して前記生体試料が受けられる、請求項17に記載の濾過ユニット。
【請求項19】
前記第1の複数のマイクロビーズを前記カラム内に保持するために、前記細長いチャネル(26)の前記下側開口部(27)に収縮手段が位置付けられ、前記収縮手段は、第2の直径の第2の複数の実質的に非多孔性であるマイクロビーズを備える第2のセクションを備え、前記第1の直径は前記第2の直径よりも小さい、請求項17または18に記載の濾過ユニット。
【請求項20】
前記収縮手段は、前記第2のセクションを保持する前記下側開口部の十字形の端部をさらに備え、または、前記収縮手段は多孔性フィルタを備える、請求項19に記載の濾過ユニット。
【請求項21】
前記容器は、前記カラム(2)の前記細長いチャネル(26)の前記下側開口部(27)に位置付けられる収縮手段として中心突出部(39)を備え、前記突出部の少なくとも一部は前記カラム(2)の前記細長いチャネル(26)の内部に収まる、請求項17から19のいずれか1項に記載の濾過ユニット。
【請求項22】
前記中心突出部は少なくとも上部(391)および下部(392)を備え、前記上部(391)は前記カラム(2)の前記細長いチャネル(26)の内部に収まり、前記下部(392)は前記細長いチャネル(26)の前記下側開口部の外側壁を支持し、および/または、
前記細長いチャネルの外側壁と前記容器の前記中心突出部の外側壁との間に通路が形成され、これにより、液体が前記通路を通って前記容器チャンバに流れ込むことができ、前記通路は、10~40μmの幅を有する、請求項21に記載の濾過ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、診断目的の高スループット試料処理の分野に関する。特に、本発明は、生体試料から粒子を単離するための、好ましくは(限定されないが)循環腫瘍細胞(CTC)または循環腫瘍微小塞栓(CTM)などの循環微小塞栓を含む循環希少細胞(CRC)といった希少粒子を血液試料から単離するための、方法、自動液体ハンドリングシステム、カラム、容器および濾過ユニットに向けられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腫瘍の多くは転移可能であり、それによって原発腫瘍の治療後のがん再発のリスクを増大させるため、がん検出の時点は、がん患者の治療における主要な予後因子の一つを示す。腫瘍細胞によって血液循環に播種された転移細胞は、非常に初期に生じる可能性があり、重要なことには原発腫瘍が通常のスクリーニングまたは診断で検出される前であっても生じる可能性がある。
【0003】
がんの診断および予後のために、組織生検などの侵襲的処置を行なって腫瘍組織の存在および進行に対する見通しを得ることが一般的である。しかしながら、そのような侵襲的処置は高額であり、さらに患者の罹患率および心理的ストレスのリスクを増大させる。
【0004】
その一方で、たとえば末梢血の液体生検は最小侵襲性であり、寛解中の経過観察検査を含む、さまざまな疾患およびそれらの治療処置のためのいくつかの予測因子およびバイオマーカの初期の経時的判定に適用され得る。たとえば、循環腫瘍細胞(CTC)およびCTCを含む細胞の塊である循環腫瘍微小塞栓(CTM)などの循環希少細胞(CRC)は、末梢血流中の有用なバイオマーカとして確立されている。CTCおよび/またはCTMの検出によって、腫瘍の組成、侵襲性、薬剤感受性および治療耐性を評価することができる。CTMの細胞クラスターは、個々のCTCよりも転移能がはるかに高いと思われる(Fabisiewicz et al., Med Oncol. 2017; 34 (1))ため、CTMの検出は特に重要である。
【0005】
希少粒子単離技術の目的は、これらの粒子をその後の下流解析に好適であるように採取することである。希少粒子単離に基づいてシステムを評価するための3つの主な基準は、高捕獲効率、高単離純度および高スループットである。
【0006】
高捕獲効率は、試料中に存在するすべての標的粒子を単離する能力によって規定される。高単離純度は、他の(非所望の)粒子を含まない標的粒子のみを選別する効率を指す。高スループットは、システムを臨床用途で使用できるようにするために短時間で大量の試料を処理することを指す。
【0007】
CTCおよびCTMの検出における主な技術的課題は、それらの数が血流中の他の細胞に対して極めて少ないことによって生じる。CTCは通常、5Mioの他の単核細胞、特に白血球に対して1つのCTCの割合で、かつ10億個を超える赤血球に対して1つのCTCの割合で含まれている。これらの細胞または微小塞栓の希少さに次いで、それらの形態に関する不均質性のために、いずれの検出方法もさらに困難になる。
【0008】
CTCなどの循環希少細胞を単離するためのいくつかの方法が先行技術から知られており、それらは、特異的なCTC表面マーカーの検出に関するか、またはサイズ、密度、変形性、もしくは電気的性質などのCTCと他の血液細胞との間の物理的差異に関する。さらに、希少細胞を単離するためのマイクロ流体デバイスが開発されている。
【0009】
細胞表面マーカープロファイルの検出という文脈で、CellSearch(登録商標)によって提供されるような免疫親和性に基づく富化システムは、CTCの上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的とするモノクローナル抗体に基づいている。当該抗体は、血液試料から磁気的に分離可能な強磁性流体ナノ粒子に結合される。
【0010】
物理的な分離技術に関して、ISET(上皮腫瘍細胞のサイズによる単離)およびScreenCell(商標)などの濾過方法は、赤血球および白血球からCTCをサイズによって分離する多孔性フィルタを提供する。循環腫瘍細胞は12~25μmの範囲の直径を有しており、したがってほとんどが、8~14μmの直径を有する白血球および約7μmのサイズの赤血球よりも大きい(Ferreira et al., Mol Onc. 2016; 10)。適切な孔径のフィルタを選択することによって、より大きい循環腫瘍細胞をこうしてフィルタによって保持することができる。
【0011】
OncoQuick(登録商標)は多孔性バリアを含む装置であり、赤血球および白血球は当該バリアを通過するが、CTCは保持される。当該装置は、CTCのより効果的な富化を達成する、密度に基づいた遠心分離ステップをさらに含む。
【0012】
さらに、細胞をサイズの違いに基づいて分離するマイクロ流体デバイスが開発されている。たとえば、Zhengら(Biomed Microdevices 2011; 13)は、血液から実行可能なCTC富化のための3Dマイクロフィルタ装置を開発しており、2つの多孔性PDMS層がマイクロ流体デバイス内に積層されている。マイクロ流体デバイス内のこれら2層の構成は、試料の濾過中に細胞膜にかかる応力を低減させる。
【0013】
さらなる分離技術が以下の先行技術文献に記載されている。
EP 0485228 A1は、リガンドの結合を検出する方法であって、実質的に非圧縮性の微粒子のマトリックスの上のまたは内部の凝集塊の有無を検出することを含む方法に関する。
【0014】
EP 0536658 A1は、全血の試料中の赤血球のサブセットの密度の集団内頻度分布解析を行なう方法に関する。
【0015】
US 4,234,317は、とりわけ、実質的に乾燥した試薬アリコートでコーティングされた大きい表面積を有する複数の不活性部材を含む血漿または血清試料を分別する方法に関する。
【0016】
US 7,214,348は、流れ制限粒子を含むマイクロ流体デバイスに関する。流れ制限粒子はゲル濾過材料を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、先行技術に記載の各方法にはある一定の欠点がある。免疫親和性に基づくシステムは、がん細胞の特異的な細胞表面発現プロファイルに依存するが、これは大幅に変化し得る。特に、標的抗原EpCAMは、上皮間葉転換(EMT)を経る腫瘍細胞に発現されなくなる。さらに、細胞表面上の標的抗原が細胞の単離後にブロックされ続けるため、たとえば細胞表面発現プロファイルのさらなる解析が困難になる。
【0018】
その一方で、物理的な分離技術にも欠点がある。たとえば、多孔性フィルタを用いて白血球からCTCを分離する場合、サイズが部分的に重複するために結果に誤差が生じる。さらに、物理的な分離技術には、分離中に細胞が損傷し得るというリスクがある。細胞損傷は、たとえば、細胞が多孔性フィルタと非特異的に相互作用すると起こり得る。さらに、細胞間の相互作用または細胞とフィルタとの相互作用に起因して、フィルタの孔が目詰まりする場合がある。そのような目詰まりは濾過プロセスを妨げるだけでなく、濾過孔を通過するまたは濾過孔の内部に閉じ込められている細胞に対するせん断応力の増加にもつながり得る。また、高いせん断応力および圧力は、細胞の変形性と関連しており、最終的には濾過技術の性能に影響を及ぼす。たとえば、最大20個の細胞を含むCTCクラスターは全血中でも5~10μmの収縮部を横切ることが知られている(Au et al., PNAS 2016; 113(18))。したがって、そのようなクラスターは変形することによってさらに小径の濾過孔をバイパスすることができるので、検出されない。
【0019】
マイクロ流体デバイスには、非常に複雑な設計、長い処理時間、および低スループットという問題がある。さらに、捕獲した生細胞をマイクロ流体デバイスから抽出することは極めて困難である。しかしながら、マイクロ流体フローチャンバの外部でさらなる下流アプリケーションを実行しなければならない場合は、抽出が必要である。さらに、そのようなデバイスの体積は通常、わずか数ナノリットルから、さらには数フェムトリットルである。しかしながら、循環希少細胞は非常に低濃度で血液に含まれている(たとえば、全血1ml当たりのCTCの濃度は約1~10細胞に過ぎない:Millner et al., Ann Clin Lab Sci, 2013)ため、処理時間が極端に長くなってしまう。流量を増大させてこの時間制約を克服することは実行可能な選択肢ではない場合が多い。というのも、同時にせん断力が増大して最終的に細胞膜を損傷するからである。最後に、マイクロ流体デバイスは、実用的な理由でPDMSから構築されることが多い。しかしながら、PDMSはガスおよび疎水性化合物を溶解させるので、気泡が形成されて細胞がPDMS表面に非特異的に付着し、これは細胞にとって最終的に有害であり得る。
【0020】
したがって、希少な腫瘍細胞を単離するための公知のシステムの上述の不利点に鑑みて、生体試料中に存在するすべての標的粒子を捕獲し、標的粒子のみを効率的に単離し、短時間で大量の試料を処理する方法が依然として必要とされている。また、そのような単離法を実行するように適合されたカラムおよび濾過マトリックスが、より正確には、好ましくは(限定されないが)血液試料を濾過し、循環腫瘍細胞(CTC)または循環腫瘍微小塞栓(CTM)を含む循環希少細胞(CRC)といった希少粒子を単離するためのカラムとして使用される、生体試料中の選択された生体物質を単離して回収するためのカラムが必要とされている。そのようなカラムおよび/または濾過ユニットは好ましくは、短時間で大量の試料を処理する場合に使用されるようにさらに適合されるべきであり、たとえばカラム/濾過ユニットは、自動化および高スループット処理に好適なシステムに統合されるように適合されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本発明は、生体試料から粒子を単離するための方法を提供することによって現行技術の短所を解決するものであり、上記方法は、
- 上側開口部および下側開口部を有するカラムを提供するステップを含み、カラムは少なくとも第1のセクションを含み、第1のセクションは第1の直径の第1の複数のマイクロビーズを含み、第1の複数のマイクロビーズは、第1の複数のマイクロビーズが下側開口部を通過しないようにカラム内に保持され、上記方法はさらに、
- 生体試料を、カラムの上側開口部を通して濾過マトリックスの上に適用するステップと、
- 生体試料の粒子の第1の部分を生体試料の粒子の第2の部分から分離するステップとを含み、生体試料の粒子の第1の部分は第1のセクションを通過し、第1のセクションは生体試料の粒子の第2の部分を保持し、上記方法はさらに、
- 保持された生体試料の粒子の第2の部分と第1のセクションとを緩衝液に懸濁させて懸濁液を形成するステップと、
- 懸濁した生体試料の粒子の第2の部分を懸濁した第1のセクションから分離するステップとを含む。
【0022】
生体試料からたとえば希少細胞などの粒子を単離するためのこの提案される方法は、サイズによる粒子の分離に基づいている。濾過マトリックスとして作用する第1のセクションは、特定の直径のマイクロビーズを含み、それによって、隣接したマイクロビーズ同士の間の明確に規定された隙間を提供する。これらの隙間は生体試料のフィルタとして作用し、すなわち、形成された隙間よりもサイズが大きい粒子はマイクロビーズによって捕捉される。選択されるマイクロビーズの直径が小さいほど、隙間が小さくなり、したがって有効フィルタサイズが小さくなる。こうして、マイクロビーズを含む第1のセクションは、マイクロビーズによって形成される隙間よりも直径が大きい粒子(「粒子の第2の部分」)を捕捉することができるが、残りの部分はこれらの隙間を通過する(「粒子の第1の部分」)。
【0023】
一般的に3次元トンネル構造として成形される、マイクロビーズ同士の間の隙間体積は、標的粒子が隙間の内部に捕捉されるときに最小限の接触面積を提供する。同時に、捕捉された粒子に占有されていない隙間の残留体積は、捕捉された粒子が受けるせん断応力を低減させ、臨界隙間直径未満の粒子を通過させることによって濾過マトリックスの目詰まりを防ぐ。40μmのマイクロビーズサイズを仮定すると、これは1平方ミリメートル当たり576個の隙間に相当する。これは、他のサイズに基づく単離技術、すなわち多孔性の孔、収縮部/ポストを介するよりもはるかに高密度で安定している。その結果、以前より公知の方法のいくつかにおいて経験するような目詰まりに関連する性能問題が回避される。
【0024】
マイクロビーズの少なくとも第1のセクションの別の有利な特徴は、高度な変形性を示す粒子を捕獲する能力である。特に、細胞のクラスターは、十分な圧力および応力が加えられるという条件で、従来の多孔性の濾過システムをくぐり抜けることができる。そのようなセクションに、濾過マトリックスとして作用する複数のマイクロビーズと、したがって流路に沿った複数の濾過隙間とを設けることによって、変形しやすい粒子でも捕獲される可能性が高くなる。さらに、濾過時に、マイクロビーズの湾曲は細胞損傷を軽減するのを助けるため、分離後に無傷の生細胞を単離することができる。
【0025】
濾過されて捕捉された粒子の第2の部分を緩衝液に懸濁させることによって、第1のセクションの秩序配列が失われる。それによって、第1のセクションのマイクロビーズは、第1のセクションのマイクロビーズの直径に基づいて効果的なフィルタを形成しなくなる。その結果、粒子の第2の部分が緩衝液中に放出されて第1のセクションから分離することができる。
【0026】
さらなる実施形態では、生体試料の粒子の第1の部分は、重力によってまたは遠心力の印加によって、生体試料の粒子の第2の部分から分離し、好ましくは、分離した生体試料の粒子の第1の部分は第1の容器に収集される。
【0027】
特に、遠心力の印加により、粒子の第1の部分と第2の部分とを迅速に分離することができる。遠心力は、生体試料を損傷しないように、または生体試料の粒子を変形させないように、生体試料に適合されてもよい。
【0028】
さらなる実施形態では、懸濁した粒子の第2の部分は、重力によってまたは遠心力の印加によって、懸濁した第1のセクションから分離する。マイクロビーズの密度およびサイズは粒子とは異なるため、遠心力により、特に残りのマイクロビーズから粒子を分離することができる。
【0029】
懸濁した粒子の第2の部分は、これに代えてまたはこれに加えて、免疫親和性に基づく富化または密度に基づく富化など、他の手段によって単離されてもよい。
【0030】
上記方法は、分離した粒子の第2の部分を濃縮するステップをさらに含んでもよい。
分離した粒子の第2の部分は、遠心力の印加によって濃縮されてもよい。たとえば、粒子の第2の部分を、遠心分離リザーバまたは第3の容器内で1000~2000gで10~15分間遠心分離して、遠心分離リザーバまたは第3の容器の底の粒子の第2の部分を収集してもよい。
【0031】
上記方法は、分離した粒子の第2の部分を下流解析に移すステップをさらに含んでもよい。下流解析は、顕微鏡解析またはバルク生化学解析を含んでもよい。移すステップは、懸濁した生体試料の粒子の第2の部分を懸濁した第1のセクションから分離した後に、および/または分離した粒子の第2の部分を濃縮するステップの後に行なわれてもよい。
【0032】
マイクロビーズは実質的に非圧縮性であってもよい。これにより、マイクロビーズの隙間のサイズ、すなわち有効フィルタまたは孔径を、遠心力が加えられても明確に規定し続けることができる。
【0033】
マイクロビーズは実質的に非多孔性であってもよい。これにより、生体試料の粒子、すなわち粒子の第1の部分および第2の部分がマイクロビーズに浸透せず、したがってマイクロビーズの内部に捕捉されないようにすることができる。それによって、粒子の第1の部分からの粒子の第2の部分の分離時のフィルタサイズを決定するのは、マイクロビーズ同士の間に形成される隙間のみである。単離すべき粒子のサイズに応じて、上記方法を実行する前に隙間サイズをこうして計算することができる。それによって、従来のゲル濾過技術とは対照的に、濾過マトリックスの較正を行なう必要がない。
【0034】
マイクロビーズは、ガラス;セラミック;ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、セファロース、アガロース、セルロース、セルロース誘導体、およびデキストランからなる群から選択される1つ以上のポリマー;ならびに/または金属で構成されてもよい。セファロース、アガロース、セルロース、セルロース誘導体、およびデキストランは任意に架橋されてもよい。これらの材料は生体試料と適合性があることが実証された。
【0035】
マイクロビーズは磁性であってもよい。特に、1つ以上のセクションのマイクロビーズなど、マイクロビーズの一部のみが磁性であってもよい。たとえば、第2のセクションは磁気マイクロビーズを含んでもよい。粒子の第2の部分を分離するステップの間、次いで磁力を加えて粒子の第2の部分から第2のセクションを分離してもよい。
【0036】
マイクロビーズは、血液流体などの生体試料に対して不溶性および/または不混和性であってもよい。それによって、マイクロビーズは粒子の単離時に安定し、再利用され得る。
【0037】
マイクロビーズは生体試料に対して非反応性であってもよい。それによって、生体試料の粒子の分離および単離を決定するのは隙間サイズのみである。
【0038】
あるいは、第1のセクションは、生体試料の粒子の少なくとも一部に対して反応性であるマイクロビーズを含んでもよい。特に、生体試料に含まれる抗原、好ましくは生体細胞の表面上に含まれる抗原に対するマイクロビーズに、抗原が結合されてもよい。
【0039】
第1のセクションは懸濁可能であってもよい。したがって、第1のセクションは、濾過マトリックスの上下の固定フィルタなど、いずれの取り外し不可能な物理的な境界またはコンファインメントによっても閉じ込められないように設けられてもよい。その結果、粒子の第2の部分、第1のセクションのマイクロビーズ、および緩衝液は、懸濁液を形成することができ、この懸濁液から、粒子の第2の部分をたとえば遠心分離によって直接的な方法で分離することができる。
【0040】
マイクロビーズの第1の直径は、20~700μm、好ましくは50~600μmの範囲であってもよい。この直径により、3~110μmの濾過隙間を形成することができる。そのような隙間サイズにより、たとえば細胞クラスターまたは大きいCTCなど、さまざまな生体粒子を分離することができる。
【0041】
マイクロビーズの第1の直径は、あるいは、10~1000nm、好ましくは50nm~500nm、より好ましくは100nm~300nmの範囲であってもよい。これらのマイクロビーズサイズにより、サイズが20~50nm(エキソソーム)の細胞外小胞、またはサイズが50~1000nmの微小胞など、ナノメートル領域内の生体粒子を分離することができる。
【0042】
さらに、マイクロビーズの第1の直径は、あるいは、1μm~20μmの範囲であってもよい。この直径により、たとえばアポトーシス小体を分離することができる。
【0043】
上述のマイクロビーズの特徴は、上述のおよび以下の実施形態の各々に適用され得る。
さらなる実施形態では、上側開口部および下側開口部を有するカラムを提供するステップにおいて、濾過マトリックスの第1のセクションは、下側開口部に位置付けられる収縮手段によってカラム内に保持される。それによって、第1のセクションはカラム内に安定して位置付けられて下側開口部を流れない。収縮手段は、カラム内の第1のセクションのマイクロビーズの安定化を可能にするが、緩衝液、およびたとえば粒子の第1の部分などのより小さいサイズの粒子が、カラムを流れて下側開口部から出ることも可能にする。したがって、収縮手段は下側開口部を完全には閉塞せず、下側開口部を収縮させるに過ぎない。
【0044】
収縮手段は、カラムの下側開口部に一時的に位置付けられてもよく、および/または取り外し可能であってもよい。したがって、収縮手段は、粒子の第1の部分を粒子の第2の部分から分離するステップの間はカラムの下側開口部に位置付けられてもよく、粒子の第1の部分を粒子の第2の部分から分離するステップの後に、および/または粒子の第2の部分と濾過マトリックスとの懸濁液を形成するステップの間に、および/または粒子の第2の部分と濾過マトリックスとの懸濁液を形成するステップの後に、除去されてもよい。
【0045】
一実施形態では、収縮手段は、第2の直径の第2の複数のマイクロビーズを含む第2のセクションを含み、第1の直径は第2の直径よりも小さい。第2のセクションは、カラムの下側開口部を効果的に塞ぐことよって第1のセクションを支持することができる。
【0046】
さらなる実施形態では、収縮手段は、第2のセクション、および/またはカラムの下側開口部に位置付けられる機械的バリアを含む。機械的バリアは、フィルタであってもよいし、第2のセクションのマイクロビーズを支持するカラムの下側開口部の部分であってもよい。下側開口部は、たとえば第2のセクションを支持する十字としてまたはフィルタとして形成されてもよい。
【0047】
代替の実施形態では、収縮手段はプラグであり、好ましくは取り外し可能なプラグである。たとえばプラグなどの収縮手段は、カラムの下に位置付けられる容器によって設けられてもよい。特に、収縮手段は、カラムの下側開口部に位置付けられる中心突出部であってよく、突出部の少なくとも一部はカラムの内部に収まる。中心突出部は少なくとも上部および下部を含んでもよく、上部はカラムの内部に収まり、下部はカラムの下側開口部の外側壁を支持する。あるいは、プラグは、カラムの下側開口部に位置付けられる多孔性の取り外し可能な蓋であってもよい。
【0048】
さらなる実施形態では、第1のセクションおよび第2のセクションは積層された層として設けられ、第1のセクションは最上層である。
【0049】
層状の幾何学的形状において直径の異なるマイクロビーズを含むセクションを適用することによって、カラムは、第1のセクションのマイクロビーズを保持する付加的な手段が不要である。むしろ、より大きいマイクロビーズを有する第2のセクションが、カラムの下側開口部を効果的に閉塞することができる。保持された粒子の第2の部分を緩衝液に懸濁させることによって、濾過マトリックスの第1および第2の両方のセクションの秩序配列が失われ、粒子の第2の部分が緩衝液中に放出され、同時にカラムの下側開口部の閉塞も減少するかまた取り除かれる。それによって、懸濁した粒子の第2の部分は、たとえば、より小さいサイズのマイクロビーズととともに下側開口部からカラムを出て、より大きいサイズのマイクロビーズをカラム内に残すことができる。
【0050】
さらなる実施形態では、カラムは複数のセクションを含み、セクションのうちの2つは第1のセクションおよび第2のセクションであり、各セクションは特定の直径の複数のマイクロビーズを含み、複数のセクション同士は少なくともマイクロビーズの特定の直径が異なり、第1のセクションの第1の直径は最小直径を含む。
【0051】
さらなる実施形態では、複数のセクションは積層された層として設けられ、第1のセクションは最上層であり、複数のセクションのマイクロビーズの特定の直径は最上層から最下層に向かって徐々に増加する。この幾何学的形状は、最下層に向かう各セクションが有する隙間が大きくなっていくので、流れ圧力の低下を促す。それによって、スループットが向上する。
【0052】
さらなる実施形態では、複数のセクションは3~7個のセクションを含む。この範囲は、最適な流れ圧力プロファイル、ならびに、CTCまたは微小塞栓の分離および単離などの粒子の最適な分離を反映している。
【0053】
さらなる実施形態では、生体試料の粒子は、第1のセクションの上に適用される前に密度勾配遠心分離ステップによって富化される。そのような富化ステップは特に、第1のセクションの上に適用される生体試料の体積を減少させるために有利であり得る。
【0054】
さらなる実施形態では、上記方法は循環腫瘍細胞を単離するために適用され、第1の直径は80~200μmの範囲である。
【0055】
さらなる実施形態では、上記方法は循環微小塞栓を単離するために適用され、第1の直径は200~600μmの範囲である。
【0056】
さらなる実施形態では、上記方法は細胞外小胞を単離するために適用され、第1の直径は10~1000nm、好ましくは50~500nm、より好ましくは100~300nmの範囲である。
【0057】
さらなる実施形態では、上記方法は自動液体ハンドリングプラットフォームにおいて実現される。
【0058】
別の局面において、本発明はまた、生体試料から粒子を単離するための自動液体ハンドリングシステムに関し、上記システムは、
- 上側開口部および下側開口部を含むカラムを第1の容器の上に位置付けるための手段を含み、カラムには第1の直径の第1の複数のマイクロビーズを含む少なくとも第1のセクションが設けられ、生体試料の粒子の第1の部分を生体試料の粒子の第2の部分から分離するために、第1の複数のマイクロビーズは、第1の複数のマイクロビーズが下側開口部を通過しないようにカラム内に保持され、上記システムはさらに、
- 溶液をカラム、第1の容器および/または第2の容器に移すための手段と、
- 溶液をカラム、第1のリザーバ容器および/または第2の容器から吸引するための手段と、
- カラム、第1のリザーバ容器および/または第2の容器を遠心分離するための手段とを含む。
【0059】
液体試料の体積は少なくとも0.1mlであってもよい。液体試料の体積は最大でも500mlであってもよい。そのような体積により、生体試料を効率的に処理することができる。たとえば、CTCの検出には、典型的に少なくとも2mlの血液試料が必要である。CTCの希少さを考慮して、10mlの全血試料などのより大きい体積を採取して希少細胞を検出する可能性を高めることが好ましい。
【0060】
別の局面において、本発明はまた、生体試料から粒子を単離するための方法で使用されるように適合されたカラムに関し、上記カラムは、
- 生体試料を受けるための上側チャンバを含み、上側チャンバはその外側面が1つ以上の外側カラム壁によって規定され、外側カラム壁はその下端においてテーパ部内に延び、上記カラムはさらに、
- テーパ部から下側開口部まで下方に延びる細長いチャネルを含み、
- 細長いチャネルは、第1の直径の第1の複数のマイクロビーズを含む少なくとも第1のセクションで少なくとも部分的に充填され、第1の複数のマイクロビーズは、第1の複数のマイクロビーズが下側開口部を通過しないようにカラム内に保持される。
【0061】
さらなる実施形態では、カラムは上側チャンバを封止するために蓋部をさらに含んでもよく、蓋部は上側開口部を含み、上側開口部を通して生体試料が受けられる。
【0062】
さらなる実施形態では、第1の複数のマイクロビーズをカラム内に保持するために、細長いチャネルの下側開口部に収縮手段が位置付けられる。
【0063】
収縮手段は、第2の直径の第2の複数のマイクロビーズを含む第2のセクションを含んでもよく、第1の直径は第2の直径よりも小さい。
【0064】
収縮手段は、第2のセクションを保持する下側開口部の十字形の端部を含んでもよい。この寸法は、収縮手段の上方に位置付けられるマイクロビーズが当該手段の十字形状によって保持されるように選択される。十字形の端部の寸法は、マイクロビーズの少なくとも1つのセクション、特に第1の複数のマイクロビーズが収縮手段を通り抜けるように選択されることが考えられる。
【0065】
収縮手段は多孔性フィルタを含んでもよい。
少なくとも第1のセクションおよび第2のセクションは、本発明に係る方法について上記に定義したマイクロビーズを含んでもよい。特に、マイクロビーズは実質的に非圧縮性であってもよい。さらに、マイクロビーズは非多孔性であってもよい。特に、マイクロビーズは、ガラス;セラミック;ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、セファロース、アガロース、セルロース、セルロース誘導体、およびデキストランからなる群から選択される1つ以上のポリマー;ならびに/または金属で構成されてもよい。マイクロビーズは磁性であってもよい。マイクロビーズは、血液流体などの生体試料に対して不溶性および/または不混和性であってもよい。マイクロビーズは生体試料に対して非反応性であってもよい。あるいは、カラムは、生体試料の粒子の少なくとも一部に対して反応性であるマイクロビーズを含んでもよい。第1のセクションおよび/または第2のセクションは懸濁可能であってもよい。マイクロビーズの第1の直径は、20~700μm、好ましくは50~600μmの範囲、または10nm~1μm、好ましくは50nm~500nm、より好ましくは100~300nmの範囲、または1μm~20μmの範囲であってもよい。さらなる実施形態では、第1のセクションおよび第2のセクションは積層された層として設けられ、第1のセクションは最上層である。さらなる実施形態では、カラムは複数のセクションを含み、セクションのうちの2つは第1のセクションおよび第2のセクションであり、各セクションは特定の直径の複数のマイクロビーズを含み、複数のセクション同士は少なくともマイクロビーズの特定の直径が異なり、第1のセクションの第1の直径は最小直径を含む。さらなる実施形態では、複数のセクションは積層された層として設けられ、第1のセクションは最上層であり、複数のセクションのマイクロビーズの特定の直径は最上層から最下層に向かって徐々に増加する。さらなる実施形態では、複数のセクションは3~7個のセクションを含む。
【0066】
さらに別の局面では、本発明はまた、容器に関し、上記容器は、生体試料の一部またはすべてを受けるための容器チャンバを含み、容器チャンバはその外側面が1つ以上の外側容器壁によって規定され、容器は、カラムが容器の上に載置されると、カラムの細長いチャネルが容器チャンバの内部に突き出るように配置される。
【0067】
容器の底部は、捕捉部(36)を構築するテーパ状の底壁を含んでもよい。
容器は、カラムの細長いチャネルの下側開口部に位置付けられる収縮手段として中心突出部(39)を含んでもよく、突出部はカラムの細長いチャネルの内部に収まる。
【0068】
中心突出部は少なくとも上部および下部を含んでもよく、上部はカラムの細長いチャネルの内部に収まり、下部は細長いチャネルの下側開口部の外側壁を支持する。下部は、たとえば、上部よりも大きい直径を有してもよい。直径の変化は連続的(たとえば、切頭円錐の形態)であってもよいし、直径の変化は不連続であってもよい。好ましくは、細長いチャネルの外側壁と突出部の外側壁との間に通路が形成され、これにより、液体が当該通路を通って容器チャンバに流れ込むことができる。そのような通路は、たとえば、10~40μm、好ましくは約20μmの幅を有してもよい。こうして、液体、およびより小さい粒子は、通路を通ってカラムから容器チャンバに流れ込むことができるが、より大きい粒子、特にこのサイズを超えるマイクロビーズは、カラム内に安定して位置付けられる。
【0069】
本発明はまた、上述のカラムを含み、上述の容器をさらに含む、濾過ユニットに関する。
【0070】
本明細書において使用する「粒子」という用語は、細胞、血液細胞、臍帯血液細胞、骨髄細胞、赤血球、白血球、リンパ球、上皮細胞、幹細胞、がん細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞、細胞前駆体、造血幹細胞、間葉細胞、間質細胞、血小板、精子、卵子、卵母細胞、病原菌、微生物、細菌、真菌、酵母菌、原生動物、ウイルス、細胞小器官、核、核酸、ミトコンドリア、ミセル、脂質、細胞外小胞、タンパク質、タンパク質複合体、細胞残屑、寄生生物、脂肪小滴、多細胞生物、胞子、藻類、上記のクラスターまたは凝集体を含むが、これらに限定されない。粒子は剛性または変形可能でもよく、さまざまなサイズおよび形状を有することができる。粒子はサイズが異なってもよく、たとえば約20nm~約1mmの最大直径を有してもよい。
【0071】
生体試料は、生体元素を含有する任意の流体、ゲル、または溶液であり得る。たとえば、希少細胞が抽出される生体試料は、ヒトもしくは動物由来の任意の体液、または細胞組織の分散物であり得る。その例は、血液、特に末梢血、たとえば、静脈血または動脈血、リンパ液、尿、滲出液、浸出液、髄液、精液、唾液、天然または非天然の体腔液、骨髄および分散身体組織である。最も好ましい体液は末梢血である。
【0072】
本発明の文脈における「実質的に非圧縮性」は、遠心力、磁力、電気力、静水圧、および負圧もしくは正圧による力などの、マイクロビーズへの力の印加によって、または通常の引力での長期間の保管によって生じ得る形状またはサイズの変化に対するマイクロビーズの抵抗に関連する。実質的に非圧縮性のマイクロビーズは、最大でも1.5、好ましくは最大でも1.2、より好ましくは最大でも1.1の圧縮率を示し、圧縮率(CF)はCF=重力沈降体積/充填層体積と定義される。マイクロビーズによるカラム内のパッキングは、2~100gでの遠心分離によって、または充填層体積が一定であり続けるまでカラムを真空ポンプに適切な時間にわたって接続することによって行なうことができる。
【0073】
本発明の文脈における「実質的に非多孔性」は、生体試料の対象粒子、すなわち分離および単離すべき粒子の第1の部分および第2の部分に対するマイクロビーズの多孔性を指す。これらの粒子は、実質的に非多孔性のマイクロビーズに浸透することができない。しかしながら、これは、マイクロビーズが粒子のサイズ未満のサイズ範囲の孔を含むことを排除するものではなく、すなわち、マイクロビーズは粒子のサイズ未満のカットオフ値(または排除限界)を有し得る。したがって、実質的に非多孔性のマイクロビーズは、一般に、マイクロビーズのサイズ排除限界未満であるオリゴヌクレオチドまたはペプチドなどの小分子によって浸透され得る。
【0074】
第1の複数のマイクロビーズ、第2の複数のマイクロビーズ、およびさらなる複数のマイクロビーズのいずれか、のマイクロビーズの直径は、実際には、正確に均一のサイズではない。たとえば、市販のマイクロビーズは厳密には均質ではなく、直径の分布を含む。たとえば、Sigma-Aldrich(登録商標)の製品番号G9143の未洗浄ガラスビーズはメッシュサイズを含み、マイクロビーズの90%が212~300μmの範囲内にあることが示されている。1つのセクション内にこれらの未洗浄ガラスビーズを使用することは、「第1の直径」、「第2の直径」、および/または「特定の直径」のマイクロビーズと理解されるべきである。本発明の目的のために、マイクロビーズの直径の厳密な分布は所望の用途に応じて異なり得る。しかしながら、マイクロビーズのさまざまなセクションによって上述のような濾過効果が達成されることが必須である。好ましくは、ある用途では、マイクロビーズのマイクロビーズの少なくとも50%が実質的に同じ直径または狭い分布を有する。他の用途では、マイクロビーズのマイクロビーズの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が実質的に同じ直径または狭い分布を有する。また、マイクロビーズのマイクロビーズの100%が実質的に同じ直径または狭い分布を有することも可能である。
【0075】
本発明の現在の好ましい実施形態を以下の図面を参照して以下の詳細な説明において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1a】本発明に係るフィルタとして使用可能な、隣接した3つのマイクロビーズによって形成される隙間の概略図である。
図1b】本発明に係るフィルタとして使用可能な、隣接した3つのマイクロビーズによって形成される隙間の概略図である。
図1c】本発明に係るフィルタとして使用可能な、隣接した3つのマイクロビーズによって形成される隙間の概略図である。
図2a】本発明に係る容器の概略図である。
図2b】本発明に係る容器の概略図である。
図2c】本発明に係る容器の概略図である。
図3a】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図3b】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図3c】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図4a】本発明に係る容器の概略図である。
図4b】本発明に係る容器の概略図である。
図4c】本発明に係る容器の概略図である。
図4d】本発明に係る容器の概略図である。
図4e】本発明に係る容器の概略図である。
図5a】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図5b】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図5c】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図6】本発明に係る方法のワークフローの図である。
図7】本発明に係る方法、システム、カラムおよび容器を利用可能な健康診断の図である。
図8a】平均直径20μmのシリカビーズの顕微鏡画像(倍率760倍)を示す図である。
図8b】平均直径30μmのシリカビーズの顕微鏡画像(倍率760倍)を示す図である。
図9a】バフィーコート試料の顕微鏡画像(倍率350倍)を示す図である。
図9b】20μmのマイクロビーズマトリックス上への適用後のフロースルー(倍率350倍)を示す図である。
図9c】20μmのマイクロビーズマトリックスの懸濁後の分離した粒子(倍率350倍)を示す図である。
図9d】50μmのマイクロビーズマトリックス上への適用後のフロースルー(倍率350倍)を示す図である。
図9e】50μmのマイクロビーズマトリックスの懸濁後の分離した粒子(倍率350倍)を示す図である。
図9f】50μmのマイクロビーズマトリックス上への適用後のフロースルー(倍率760倍)を示す図である。
図9g】50μmのマイクロビーズマトリックスの懸濁後の分離した粒子(倍率760倍)を示す図である。
図10a】平均サイズ30μmのマイクロビーズの隙間に捕捉された凝集赤血球の顕微鏡画像(倍率350倍)を示す図である。
図10b】平均サイズ30μmのマイクロビーズの隙間に捕捉された凝集赤血球の顕微鏡画像(倍率350倍)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
実施形態の詳細な説明
本発明の好ましい実施形態および実施例を以下の詳細な説明において説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを強調しておく。
【0078】
本発明は、先行技術から知られている上述の制限および課題を克服する、生体試料から粒子を単離するための方法、システム、カラム、容器および濾過ユニットに関する。有利なことに、当該方法、システム、カラム、容器および濾過ユニットは、細胞の生存能力を保ち、高収率および高純度を提供しつつ、大量の試料の高スループット濾過を提供し得る。
【0079】
生体単離を目的とするこの提案される方法ならびにシステム、カラムおよび濾過ユニットは、特定の直径のマイクロビーズを含む第1のセクションに基いているか、または当該第1のセクションを含む。これらのマイクロビーズは、生体粒子のフィルタとして働く隙間を形成し、隙間のサイズを超える直径またはサイズの生体粒子はセクション内に捕捉される。有利なことに、3次元トンネル構造として成形される、マイクロビーズ同士の間の隙間体積は、標的粒子が隙間の内部に捕捉されるときに最小限の接触面積を提供する。同時に、捕捉された粒子に占有されていない隙間の残留体積は、捕捉された粒子が受けるせん断応力を低減させ、臨界隙間直径未満の粒子を通過させることによって濾過マトリックスの目詰まりを防ぐ。濾過隙間の3次元マトリックスである第1のセクションは、さらに、通常は収縮部で変形する粒子を分離して捕捉することによって、捕捉されることを避けることができる。
【0080】
捕捉された粒子は、直接的な方法で第1のセクションから回収することができる。重要なことに、この提案される方法によれば、粒子は緩衝溶液中に残ることによって、生きている未損傷の生体粒子を単離する可能性を高める。
【0081】
図1aは、丸い粒子102を捕捉する隙間の形成を示す。隙間は、隣り合う少なくとも3つのマイクロビーズ101によって形成される。隣り合う3つのマイクロビーズによって形成される隙間直径は、以下の式に従って算出することができる。
【0082】
【数1】
【0083】
ここで、dは3つのマイクロビーズによって形成される隙間の直径であり、Dは各マイクロビーズの直径である。図1bおよび表1は、均質なサイズの例示的なマイクロビーズについて計算された隙間を含む。
【0084】
第1のセクションのマイクロビーズマトリックスの分布は、比較的一貫性がある。たとえば、500μmの特定の直径を有するマイクロビーズは、直径80μm以上の粒子を捕捉する一定かつ正確な隙間を提供する。明らかに、実際には、正確な隙間は計算値からわずかに逸脱する場合がある。しかしながら、一般的に言えば、たとえばマイクロビーズが非圧縮性である場合は、計算された隙間直径に対応するかまたは非常に近い値が達成される。
【0085】
【表1】
【0086】
異なるサイズのマイクロビーズの混合物を用いることによって、隙間直径は変化し、これを測定または計算することができる(図1c、表2)。
【0087】
【表2】
【0088】
図2aは、カラム2および容器3を有する濾過ユニット1の形態の本発明の実施形態に係る装置を示す。異なる実施形態では、濾過ユニット1は(ならびにそのカラムおよび容器2および3はそれぞれ)実質的に円筒形状または長方形状を有し得る。異なる実施形態では、当該装置はカラム2のみを含むことができ、その場合、それはラックまたはリザーバに結合されるように適合されてもよい。1つの濾過ユニット1のカラム2および容器3は、それらがともに、または同じタイプの別の濾過ユニット1からのその他の相当物とともに組み立てられ得るように設計され、たとえば、カラム2は異なる容器3に連続して組み立てられ得る。
【0089】
濾過ユニット1に好適な材料は、とりわけ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラスを含む。一実施形態では、濾過ユニット1は射出成形によって形成される。いくつかの実施形態では、濾過ユニット1のさまざまな部分は同じ材料からなる必要はないことに留意されたい。
【0090】
濾過ユニットのカラム2は、1つ以上の生体試料を収容するための上側チャンバ21を有する。この上側チャンバ21は、カラム2の1つ以上の外側壁22の中央のキャビティによって形成される。一実施形態では、上側チャンバ21は実質的に円筒形状であるため、管を形成し得る。カラム2はその上端(その上側チャンバ21の上方)に、1つ以上の生体試料を上側チャンバ21に導入して1つ以上の生体試料を上側チャンバ21から流出させるための上側開口部24を有する。上側開口部24はその近傍に、(実験室自動化システムのピペットチャネルに接続するための)ピペットチャネル結合部25、および/または上側開口部を閉じることによって上側チャンバ21の上端を封止するためのカバー(図2aには図示せず)が設けられ得る。一実施形態では、このカバーはエラストマーフラップである。ピペットチャネル結合部25の存在によって、特異的なロボットアームの代わりにピペットチャネルで試料を直接移すことが促進されて容易になる。いずれの場合も、それは、直接静脈穿刺された場合であっても、送達試料の手段と一致するように特異的に設計されるべきである。
【0091】
上側チャンバ21の下部はテーパ部29を形成し、テーパ部29の外側壁はテーパ状であり、すなわち、対向壁間の距離(または1つ以上の連続的な外側壁の対向側面間の距離)は、下方向に(すなわち上側セクションの頂部から下側セクションの底部に)進むにつれて小さくなる。テーパ部29は、下方向に向けられた、かつテーパ部29に繋がる細長いチャネル26に向かって開口している、開口部で終端する。いくつかの実施形態では、細長いチャネル26はカラム2のテーパ部29から下方に突き出る。好ましい実施形態では、細長いチャネル26は、本明細書において詳細は後述するフィルタ要素4(図2b参照)を含む。容器3を有する実施形態では、細長いチャネル26は容器3の容器チャンバ31の内部に突き出てもよい。細長いチャネル26の長さおよび直径は、所与の生体試料のサンプリングの種類および方法に、すなわち、たとえば濾過結果を最適化するために、適合されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、細長いチャネル26は、カラムフィルタ要素の形態のフィルタ要素4を収容するのに十分な長さであってもよい。細長いチャネル26は、その下側において下側開口部27で終端して、上側チャンバ21に含まれている生体試料の一部またはいくつかの部分の排出を可能にする。この下側開口部27は、濾過されていない生体試料の流れを可能にするのに十分に大きい予め規定された間隔を有する収縮手段271で構成されてもよい。収縮手段271は、細長いチャネル26内に延びるテーパ状の傾斜したスロープを含んでもよい。あるいは、収縮手段271は多孔性フィルタであってもよい。
【0092】
好ましくは、濾過ユニット1のカラム2は、たとえば射出成形によって一体品として作られる。しかしながら、いくつかの実施形態では、カラム2は本体および蓋部210を含んでもよい。蓋部210は、カラム2の残りの部分(「本体」とも称される)とは別個に作製されてもよく、各部分は射出成形によって作製された後に組み立てられてもよい。この実施形態は、製造が容易であり、費用効率が高いことが実証されている。
【0093】
蓋部210はカラム2の上端に位置付けられてもよい。それは、カラム2の外側壁22に実質的に平行な外側壁211を含んでもよい。外側壁211は、好ましくは上側セクションの外側壁22を取囲んでおり、摩擦力によってそれらに接続されてもよい。一実施形態では、カラム2の本体を蓋部210に接続するための接続ノッチ212が設けられる。この接続ノッチ212は、蓋部210の外側壁211に、またはカラム2の外側壁22に載置されてもよい。この接続ノッチ212は、外側壁22と211との間に載置されて、蓋部210をカラム2の本体に接続させ続ける摩擦力を置換または補足してもよい。蓋部210は内壁213をさらに含んでもよく、内壁213は、外側壁211と実質的に平行であり、カラム2の本体の上端に位置付けられているため、蓋部210がカラム2の本体に接続されると、内壁213および外側壁211がスロット214を形成し、このスロット内にカラム2の本体の外側壁22の上部がクランプされることにより、カラム2の本体と蓋部210との間のさらに安定した接続が確保され、上側チャンバ21のより良好な封止が確保され得る。
【0094】
矩形形状の濾過ユニット1については、カラム2の外面は、好ましくは2個、4個、8個などの対になったアンカー突出部23を含んでもよい。当該突出部により、カラム2を濾過ユニット1の容器3の上にまたは適合したラックの上に確実に位置付けることができる。
【0095】
濾過ユニット1の容器3は開口上端を含んでもよく、この開口上端を通って上側セクションの下部を入れることができる。容器3は、たとえば分離した試料流体を収集するための容器チャンバ31を含んでもよい。容器チャンバ31は、容器の開口した上側の1つ以上の外側壁32と、底端34との間に形成された空間よって規定される。下側チャンバ31も円筒形であってもよいし長方形であってもよい。最も好ましくは、下側チャンバは、下側チャンバが取り付けられるように設計されるカラム2と同じ形状を有する。
【0096】
容器3はその上側開口端に、カラム2の1つ以上の突出部23を受けるための、かつ濾過ユニット1のカラムと容器との間の接続を確保するためのフランジ33をその開口部の周りに(外側壁32の頂端に)有してもよい。そのようなフランジ33はまた、遠心分離機および/または自動ハンドリングシステム上への着脱および/もしくは位置付けのための、ならびに/または適合したラック上に位置付けられるためのハンドリングを容易にするという利点を有する。
【0097】
下側チャンバ31の底端34には、テーパ部を形成する1つ以上の底壁35が設けられてもよい(すなわち、対向壁間の距離、または1つ以上の連続的な外側壁の対向側面間の距離は、下方向に進むにつれて小さくなる)。底端34には、縮小した捕捉部36が底壁35の下端にさらに設けられてもよい。例示的な実施形態では、容器はまた、容器3およびカラム2から受けたその内容物をさらなる処理のために安全に搬送できるようにするための、かつ容器3内の内容物を失うおよび/または汚染するリスクを低下させるための蓋を含んでもよい。
【0098】
容器3には、容器3の1つ以上の外側壁31を実質的に下方向に延長する1つ以上の壁延長部37がさらに設けられてもよい。これら1つ以上の壁延長部37は、容器がカラム2に取り付けられて存在するか、カラム2から分離して存在するかに関わらず、平面上の容器の安定したフッティングを可能にするように構成されることが好ましい。たとえば、これらの壁延長部37は、少なくとも容器3の1つ以上の底壁35または捕捉部26と同じくらい下方に延びてもよい。これらの壁延長部34は実質的に水平な端面を有し、当該端面は壁延長部34を支持するように、かつ容器2がその上に載置され得る外面との安定した接触を確保するように適合されてもよい。
【0099】
好ましい実施形態では、カラムおよび容器は着脱可能に設計され、たとえば、カラムと容器が互いに取り付けられると摩擦力が加わるように、カラム2の縮小した外面は容器3の内面よりも小さい。上側セクション3が容器3に取り付けられると、カラム2の縮小した外面と、上側チャンバ21のテーパ部29と、カラム2の細長いチャネル26とが容器チャンバ31内に収容される。
【0100】
図2bおよび図2cを参照して、細長いチャネル26に含まれているフィルタ要素4は、マイクロビーズ411および412、413のマトリックス41で形成されてもよい。この場合、1つのセクションは複数のマイクロビーズ411(上側セクション、すなわち「第1のセクション」)を含み、別のセクションは複数のマイクロビーズ412(中間セクション)を含む。さらに、1つのセクションは複数のマイクロビーズ413(下側セクション、すなわち「第2のセクション」)を含み、マイクロビーズ413はマイクロビーズ411および412をカラム内に保持するように構成されるが、より小さい粒子(すなわち「粒子の第1の部分」)および緩衝液は通過することができる。したがって、マイクロビーズマトリックス41のマイクロビーズ(413)を含む下側または「第2の」セクションは、上記セクション411および412をカラム内に保持する収縮手段の一部である。いくつかの実施形態では、カラム2の細長いチャネル26は、マイクロビーズマトリックス41で充填される実質的に円筒形の内面を有する。
【0101】
本発明に係るマイクロビーズマトリックス41は、実質的に非圧縮性のマイクロビーズ101のサイズが連続的なまたはサイズが不連続のマトリックスを指す。「サイズが連続的なマトリックス」という文言は、マイクロビーズ101のサイズが徐々に増加することを意味することを意図している。「サイズが不連続の」という文言は、マトリックスがサイズ依存性のマイクロビーズセクションを含み、各セクション内のマイクロビーズが特定の直径を有し、細長いチャネル構造のコンファインメントの内部にランダムに拡散していることを意味することを意図している。
【0102】
マイクロビーズ101に使用される非限定的で好適な非圧縮性材料は、ステンレス鋼、磁性、シリカを含み、すなわち、血液に対して不溶性および不混和性であり、血液に対して非反応性である。そのようなマイクロビーズ101はまた、ガラスもしくはセラミックス、および/または1つ以上のポリマー、たとえば、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、セファロース、アガロース、セルロース、セルロース誘導体、もしくはデキストランからなることができ、および/または金属を含むことができる。マイクロビーズ101の例としては、磁気単離、磁性粒子、プラスチック粒子、セラミック粒子、カーボン粒子、ガラス単離、金属粒子、複合組成の粒子、微細加工された自立微細構造などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
図2bでは、濾過ユニット1のカラム2は、マイクロビーズ411、412および413の3つのセクションを有するマイクロビーズのマトリックス41で充填される。複数のマイクロビーズ411を含むセクションはフィルタとして作用するが、セクション413は収縮手段の一部である。上記に説明したように、マイクロビーズ411、412および413の各セクション内のマイクロビーズは、好ましくは実質的に均一のサイズであってもよく、すなわち、市販のマイクロビーズについて通常通りの直径分布(上記参照)を含んでもよい。マイクロビーズのマトリックス41は、この説明例に開示される3つのセクションよりも少ないセクション(すなわち、2つもしくは1つ)または多いセクションを有してもよいことに留意されたい。セクションは層状に配置され、最上層のマイクロビーズは最小直径(たとえば80μm)を有し、最下層のマイクロビーズは最大直径(たとえば300μm)を有する。中間層は、直径がたとえば200μmのマイクロビーズを含む。最下層は、マイクロビーズがアパーチャを目詰まりさせるまたは収縮させるように、カラムの下側開口部に配置される。最上層の80μmのサイズのマイクロビーズは、約10μmの有効隙間を形成し、CTC、CICおよびCTMを分離するために適用され得る。
【0104】
循環希少細胞を単離するための方法の実現態様を図3a~図3cに示す。生体試料8は、たとえばバフィーコートまたは全血試料であってもよい。マイクロビーズマトリックスの上に試料を適用する前に、いずれかの方法で全血試料が希釈されてもよいし、対象の生体粒子が富化されてもよい。たとえば、本出願人に代わって出願されたPCT/CN2017/072654に記載されている密度勾配遠心分離法を適用して、濾過マトリックスの上に適用する前に試料中の生体粒子を富化することができる。
【0105】
以下に説明する方法のステップはすべて、手動でまたは自動液体ハンドリングシステムにおいて実行可能である。
【0106】
図3a~図3cの例示的な方法では、循環腫瘍細胞、循環免疫細胞(CIC)および/または微小塞栓を検出するための試料流体として2mlの全血を使用する。まず、試料を密度勾配遠心分離によって分離して、2つの画分、すなわち、約1mlの血漿および単核細胞(MNC)と、1mlのRBCおよび重細胞、ならびに/またはRBCで捕らえたCTC/CIC/微小塞栓とが得られる。次いで、RBCおよび重細胞を含む画分を、カラム2に含まれる濾過マトリックス41の上に適用する。濾過マトリックスは、均一サイズのマイクロビーズ411、412および413の3つのセクションを含む。セクションは層状に配置され、好ましい実施形態によれば、最上層のマイクロビーズは最小直径(50μm)を有し、最下層のマイクロビーズは最大直径(300~500μm)を有する。中間層は、60μmよりも大きい、好ましくは100~220μmの直径を有するマイクロビーズを含む。最上層の50μmのサイズのマイクロビーズは、約7.7μmの有効隙間を形成し、したがってCTC、CICおよびCTMを分離するために適用され得る。マイクロビーズの最下層は、カラムの下側開口部を目詰まりさせる。それによって、マイクロビーズの上層がマイクロビーズ最下層の上方のカラム内に安定して位置付けられる。
【0107】
マイクロビーズマトリックスによるカラム内の充填は、マイクロビーズ懸濁液(たとえば、水中または20%エタノール中のマイクロビーズ)を上側開口部24からカラム2内に連続的にピペッティングすることによって行なうことができ、各懸濁液は特定のサイズのマイクロビーズを含む。最小のマイクロビーズ(「第1のセクション」)を有する懸濁液を最後にカラム内にピペッティングする。次いで、生体試料を適用する前に、マイクロビーズマトリックスを遠心分離によって乾燥させ、たとえばPBSなどの緩衝液で洗浄することができる。
【0108】
図3aのステップaにおいて、密度勾配遠心分離後に任意に富化されて潜在的にCTC、CICおよび/またはCTMを含む生体試料8を、上側開口部24からマイクロビーズマトリックス41の上に適用する。生体試料8はそれによってゆっくりと第1のセクションに入り、第1のセクション、すなわち最上マイクロビーズ層の隙間直径よりも大きい生体粒子は保持される。図3aのステップbにおいて、濾過ユニット1の一部であり得、さらに容器3の上に位置付けられ得るカラム2を、たとえば5~20gで2~5分間、好ましくは2~3分間遠心分離する。遠心分離パラメータは、試料と、どの生体粒子を抽出すべきとかに応じて異なり得る。遠心分離によって、生体試料の粒子の第1の部分は、第1のセクションと、カラムの下側開口部における第2のセクションを含む他のセクションのマイクロビーズとを通り抜けて、下側開口部からカラムを出ることができる。原則として、粒子の第1の部分がマイクロビーズマトリックスを通過できるようにするには重力で十分であろうが、遠心分離によって、この通過時間を大幅に短縮することができる。そのような時間の短縮は、所要時間、および生体試料の粒子が処理中に損傷する可能性を減少させるので、有利である。遠心分離後、生体試料の流体812、たとえば生体粒子の富化時に使用される血漿または緩衝液と、10μmの臨界サイズ(すなわち、最小サイズのマイクロビーズを有するマイクロビーズ層の隙間のサイズ)未満の直径またはサイズを有する粒子の第1の部分811とが、セクション411、412、413を有するマイクロビーズマトリックス41を通過して容器3に収集されるが、臨界値を超える粒子の第2の部分813は、もし存在する場合は、マイクロビーズの有効隙間の上方にまたは内部に保持される。第2の部分のこれらの粒子は10μmを超えるサイズまたは直径を有しているため、最小サイズのマイクロビーズ、すなわち第1のセクションのマイクロビーズの隙間に捕捉される。
【0109】
図3aのステップcにおいて、容器3とカラム2とを分離する。臨界値未満の粒子の第1の部分811を含む容器3は、特に本発明に係る方法によって排出またはさらに処理することができる。したがって、図3aのステップa″おいて、粒子811を、セクション411内のビーズよりも直径が小さい複数のマイクロビーズを含むさらなるカラムの上に適用することができる。たとえば、カラムは、第1のセクションを形成する直径40μmのマイクロビーズを含むことよって、約6μmの濾過隙間を提供することができる。そのようなカラムに粒子の第1の部分を適用することによって、6μmを超えるサイズまたは直径を有する粒子の画分と、6μm未満のサイズを有する粒子の画分とへのさらなる分離を達成することができる。
【0110】
マイクロビーズのマトリックス41の隙間に捕捉された粒子の第2の部分は、本発明の方法に従ってさらに処理することができる。図3bのステップdにおいて、マイクロビーズのマトリックス41および粒子の第2の部分を緩衝液に懸濁させる。たとえば、2mlのPBSが、粒子とマイクロビーズとの懸濁液を形成するのに十分であり得る。粒子およびマイクロビーズを懸濁させることによって、セクション411、412および413の規定された構造が失われ、粒子が第1のセクション411から緩衝液中に放出される。この手順によって、捕捉されているすべての粒子を、生理学的な水性環境にある間に懸濁液から確実に単離することができるようになる。
【0111】
本発明に係る好ましい実施形態の一つによれば、マイクロビーズのマトリックス41および捕捉した生体粒子を含む濾過ユニット1のカラム2を、たとえば2mlのPBSなどの緩衝液9で満たされている容器3′の上に移す。この場合、濾過ユニット1のカラム2の下側開口部27は容器3′内の緩衝液に浸漬する。下側開口部27を介して緩衝液をカラム2内に吸引し、ピペットチャネルを用いて分注を繰り返すことによって、マイクロビーズのマトリックス41は少なくとも大きく破壊される。特に、最初に下側開口部を収縮させる、すなわち収縮手段として作用する大きいマイクロビーズを含むマイクロビーズマトリックスの最下層が破壊されて、他のマイクロビーズ層のより小さいマイクロビーズと混合される。こうして、下側開口部は、より大きいマイクロビーズによって目詰まりしなくなり、生体粒子およびより小さいマイクロビーズは、カラム2の下側開口部27から容器3′の容器チャンバ31に入ることができる。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、第2のセクションのマイクロビーズ、すなわち、下側開口部を目詰まりさせて収縮手段として作用するより大きい直径のマイクロビーズは、磁性である。それによって、濾過ユニット1のカラム2を磁気要素を介してまたは磁気要素の横に配置することによって、磁気マイクロビーズが下側開口部27から引き離され、粒子の第2の部分の生体粒子と第1のセクションのより小さい(非磁性の)マイクロビーズとの通過を容易にする。粒子の第2の部分と第1のセクションのマイクロビーズとをこうして第2の容器3′に収集する(図3bのステップe)。
【0113】
あるいは、カラム2の下側開口部27は、たとえば下側開口部の上に取り付けられる蓋で封止されてもよい。この場合、濾過ユニット1のカラム2の上側開口部24を通って緩衝液9が適用され、分注と吸引を繰り返すことによってマトリックス41が緩衝液に懸濁する。これによってマトリックス41が少なくとも部分的に破壊される。捕捉された生体粒子はこうして緩衝液中に放出され、マイクロビーズ、粒子および緩衝液がカラム内に懸濁液を形成する。次いで、懸濁液を吸引して第2の容器3′に移す(図3bのステップe)。
【0114】
原則として、懸濁および吸引のプロセスは、すべての標的粒子が濾過マトリックスから抽出されるように繰り返すことができる。
【0115】
図3bのステップfにおいて、第2の容器3′を遠心分離して、粒子の第2の部分を含む懸濁液814からマイクロビーズ421を分離できるようにする。たとえば、容器を200gで5秒間遠心分離することができ、これにより、密度および/またはサイズの違いによってマイクロビーズおよび粒子を完全に分離することができる。あるいは、粒子およびマイクロビーズの分離は重力によって達成することもできる。密度および/またはサイズの違いのために、マイクロビーズは最終的に容器の底に沈澱するが、粒子は溶液中に残る。さらに、容器を、溶液のマイクロビーズ部分よりも密度が軽い分離ゲルまたは鉱油で予め充填することができる。これにより、粒子がマイクロビーズペレット内に捕捉されないことが確実になるため、全体的な捕獲効率が改善する。さらに、分離ゲルまたは鉱油を使用すると、明確な分離線が形成されるので、粒子を容易に吸引することができる。これは、たとえば下流アプリケーションの純度を確保する上で重要である。
【0116】
懸濁液からマイクロビーズを分離した後、粒子の第2の部分を含む懸濁液814をさらなる容器3″に移すことができる(図3bのステップg)。この移すステップは、手動でまたは自動液体ハンドリングシステムによって実行可能である。図3bの次のステップhにおいて、懸濁液を少なくとも100gで1分間遠心分離して標的粒子815をペレット化してもよい。たとえば、容器は縮小した捕捉部36を含んでもよく、ここで粒子のペレットが形成される。そのような捕捉部は、たとえばデカンテーションのピペッティング(図3bのステップi)によって、溶液の完全な除去を容易にすることができる。溶液の除去後、粒子をさらなる緩衝液に懸濁させることができる(図3bのステップj)。粒子を、たとえば染色または免疫親和性アッセイ用の適切な緩衝液に懸濁させることができる。こうして、図3bの遠心分離ステップhにより、効果的な緩衝液交換が可能になり、さらなる下流アッセイはいずれも合理化される。あるいは、ステップfの後、粒子の第2の部分を、新しい容器に移すことなく、濃縮することなく、かつ緩衝液交換することなく、顕微鏡解析などの下流アッセイに直接移してもよい。
【0117】
図3cはさまざまな下流プロセスを例示する。粒子の第2の部分を、たとえば、染色し(図3cのステップk)、洗浄し(図3cのステップl)、懸濁させ(図3cのステップm)、その後、形態画像化または他の検証アッセイによって解析することができる。これらのアッセイにより、試料中のたとえばCTCまたはCICなどの粒子を定量化することができる。
【0118】
有利なことに、多数のカラム2および容器3を並列処理して、自動液体ハンドリングプラットフォームに容易に統合することができる。それによって、スループットが飛躍的に向上し得る。さらに、本発明に係る方法の間に試料を分割することができる。上記に説明したように、粒子の第1の部分を含む第1の濾液は、たとえばさらなる分離法によって、または検証アッセイによって直接、さらに処理することができる。その一方で、たとえば懸濁液814に含まれる粒子の第2の部分は、たとえば、マイクロビーズマトリックス41の第1のセクション411の隙間よりも大きい隙間を有する第1のセクションまたはマイクロビーズマトリックスを含む別のカラムに懸濁液を適用することによって、さらに処理することができる。たとえば、18μmの臨界サイズで効果的に濾過する第1のセクションを用いて、このサイズ未満のおよびこのサイズを超える粒子を分離することができる。
【0119】
図4aは、カラム2および容器3を有する濾過ユニット1の形態の本発明の好ましい実施形態に係るさらなる装置を示す。図2aについて上述したように、濾過ユニット1は(ならびにそのカラムおよび容器2および3はそれぞれ)実質的に円筒形状または長方形状を有し得る。当該装置はカラム2のみを含むことができ、その場合、それはラックまたはリザーバに結合されるように適合されてもよい。1つの濾過ユニット1のカラム2および容器3は、それらがともに、または同じタイプの別の濾過ユニット1からのその他の相当物とともに組み立てられ得るように設計され、たとえば、カラム2は異なる容器3に連続して組み立てられ得る。濾過ユニット1に好適な材料は、とりわけ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラスを含む。濾過ユニット1は射出成形によって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、濾過ユニット1のさまざまな部分は同じ材料からなる必要はないことに留意されたい。
【0120】
この実施形態によれば、濾過ユニットのカラム2、上側チャンバ21、1つ以上の外側壁22、アンカー突出部23、上側開口部24、ピペットチャネル結合部25、テーパ部29、テーパ部29に繋がる細長いチャネル26、下側開口部27は、図2aについて説明したように形成される。細長いチャネル26は、図2bおよび図2cについて上述したように、フィルタ要素4を含んでもよい(図4b参照)。
【0121】
図2aについて説明したように、濾過ユニット1のカラム2は、たとえば射出成形によって一体品として作ることができ、またはカラム2は本体および蓋部210を含んでもよい。
【0122】
蓋部210、その外側壁211、接続ノッチ212、内壁213およびスロット214は、図2aについて説明したように設けられてもよい。
【0123】
濾過ユニット1の容器3は開口上端を含んでもよく、この開口上端を通って上側セクションの下部を入れることができる。容器3は、図2aについて説明したように、容器チャンバ31と、容器の1つ以上の外側壁32と、フランジ33と、底壁35と、1つ以上の壁延長部37とを含んでもよい。
【0124】
下側チャンバ31の底端34には、上部391および下部392を有する中心突出部39が設けられてもよい。中心突出部39は、カラム2の下側開口部27を通って細長いチャネル26の内部に収まることによって、細長いチャネル26内に局在する濾過マトリックスが容器チャンバ31に入らないように設けられる。好ましくは、細長いチャネルの外側壁と突出部の外側壁との間に通路が形成され、これにより、液体が当該通路を通って容器チャンバに流れ込むことができる。そのような通路は、たとえば、10~40μm、好ましくは約20μmの幅を有してもよい。こうして、液体、およびより小さい粒子は、通路を通ってカラムから容器チャンバに流れ込むことができるが、より大きい粒子、特にこのサイズを超えるマイクロビーズは、カラム内に安定して位置付けられる。
【0125】
容器はまた、容器3およびカラム2から受けたその内容物をさらなる処理のために安全に搬送できるようにするための、かつ容器3内の内容物を失うおよび/または汚染するリスクを低下させるための蓋を含んでもよい。
【0126】
好ましい実施形態では、カラムおよび容器は着脱可能に設計され、たとえば、カラムと容器が互いに取り付けられると摩擦力が加わるように、カラム2の縮小した外面は容器3の内面よりも小さい。上側セクション3が容器3に取り付けられると、カラム2の縮小した外面と、上側チャンバ21のテーパ部29と、カラム2の細長いチャネル26とが容器チャンバ31内に収容される。次いで、中心突出部39が細長いチャネル26の内部に収まり得る。
【0127】
図4bは、上部391および下部392を有する中心突出部を含む容器3を示す。この実施形態では、上部は、細長いチャネル26の下側開口部27(図示せず)の内部に収まる直径を有するが、下部392の直径は、細長いチャネルの下側開口部の内部に収まらず、下側開口部の外側壁を支持する。下部392はそれによって、突出部39が細長いチャネル26を完全には充填しないことを確実にする保持装置として作用する。
【0128】
図4cはカラム2および容器3を示しており、カラム2の細長いチャネル26はマイクロビーズのマトリックス41で充填されている。マイクロビーズマトリックス41は、フィルタとして作用するマイクロビーズ411の1つのセクションを含む。容器3の中心突出部39は、第1のセクションのマイクロビーズが細長いチャネル26の下側開口部27を通過しないようにする収縮手段として働く。
【0129】
図4dは本発明に係るカラム2および容器3を示す。カラム2は図4aについて説明したように提供され、上側チャンバ21と、1つ以上の外側壁22と、アンカー突出部23と、上側開口部24と、ピペットチャネル結合部25と、テーパ部29と、細長いチャネル26と、下側開口部27および蓋部210と、外側壁211と、接続ノッチ212と、内壁213およびスロット214とを含んでおり、図4aについて説明したように、容器3は開口上端を含み、この開口上端を通って上側セクションの下部を入れることができ、容器3はさらに、容器チャンバ31と、容器の1つ以上の外側壁32と、フランジ33と、底壁35と、1つ以上の壁延長部37とを含むが、中心突出部がない。そのような容器は、収縮手段を必要としない処理ステップに、または、狭窄手段が代替的な形態で、たとえばカラム2の下側開口部に位置付けられたマイクロビーズの第2のセクション、プラグ、もしくは多孔性フィルタとして設けられる処理ステップに、使用できる。容器3は図2に記載されるように設けられてもよい。特に、下側チャンバ31の底端34には、テーパ部を形成する1つ以上の底壁35が設けられてもよい(すなわち、対向壁間の距離、または1つ以上の連続的な外側壁の対向側面間の距離は、下方向に進むにつれて小さくなる)。底端34には、縮小した捕捉部36が底壁35の下端にさらに設けられてもよい(図示せず)。
【0130】
図4eは、図4dに係るカラム2および容器を含む濾過ユニット1を示しており、カラム2が容器3の上に位置付けられている。容器が突出部を含んでいないので、カラム2の下側開口部は容器によって閉塞されず、むしろ容器3の壁に接触しない。
【0131】
図5aおよび図5bの例示的な方法では、図4a~図4eに係る濾過ユニットが適用される。図3a~図3cについて説明したように、循環腫瘍細胞、循環免疫細胞(CIC)および/または微小塞栓を検出するための試料流体として2mlの全血を使用できる。密度勾配遠心分離の後、次いでRBCおよび重細胞を含む画分を、カラム2に含まれるマイクロビーズマトリックス41の上に適用する。マイクロビーズマトリックスは、均一サイズのマイクロビーズの1つのセクションを含む。このセクションはフィルタとして作用する。マイクロビーズは約50μmの直径を有することによって約7.7μmの有効隙間を形成することが好ましい。収縮手段として作用する容器3の突出部は、カラムの下側開口部を閉塞し、それによってマイクロビーズのセクションをカラム内に保持する。好ましくは、細長いチャネルの外側壁と突出部の外側壁との間に通路が形成され、これにより、液体が当該通路を通って容器チャンバに流れ込むことができる。そのような通路は、たとえば、10~40μm、好ましくは約20μmの幅を有してもよい。こうして、液体、およびより小さい粒子は、通路を通ってカラムから容器チャンバに流れ込むことができるが、より大きい粒子、特にこのサイズを超えるマイクロビーズは、カラム内に安定して位置付けられる。また、特に容器の突出部によってカラムの下側開口部が効果的に封止されるため、(粒子の第1の部分の分離後に)粒子の第2の部分と第1のセクションのマイクロビーズとを緩衝液に懸濁させる懸濁ステップが容易になる。
【0132】
マイクロビーズのセクションによるカラム内の充填は、マイクロビーズ懸濁液(たとえば、水中または20%エタノール中のマイクロビーズ)を上側開口部24からカラム2内に連続的にピペッティングすることによって行なうことができる。次いで、気泡の形成を防ぐために、生体試料を適用する前に、セクションを遠心分離によって乾燥させ、たとえばPBSなどの緩衝液で洗浄することができる。さらに、遠心分離によって高密度でコンパクトなマトリックスが得られる。充填は、同じ自動液体ハンドリングシステムによって行なうことができる。
【0133】
図5aのステップa′において、密度勾配遠心分離後に任意に富化されて潜在的にCTC、CICおよび/またはCTMを含む生体試料8を、上側開口部24からマイクロビーズマトリックス41の上に、すなわち複数のマイクロビーズを含む第1のセクションの上に適用する。生体試料8はそれによってゆっくりとマイクロビーズマトリックスに入り、マイクロビーズの隙間直径よりも大きい生体粒子はマイクロビーズマトリックスの頂部に保持される。図5aのステップb′において、濾過ユニット1の一部であり得、さらに容器3の上に位置付けられ得るカラム2を、試料に応じて5~20gで2~5分間、好ましくは2~3分間遠心分離する。それによって、生体試料の粒子の第1の部分はマイクロビーズマトリックスを通り抜けて、下側開口部からカラムを出て、カラムの細長いチャネルの外側壁と容器の突出部との間に形成された通路を通り抜けることができる。原則として、粒子の第1の部分がセクションのマイクロビーズを通過できるようにするには重力で十分であろうが、遠心分離によって、この通過時間を大幅に短縮することができる。遠心分離後、生体試料の流体812、たとえば非標的粒子または生体粒子の富化時に使用される緩衝液と、10μmの臨界サイズ(すなわち、マイクロビーズセクションの隙間のサイズ)未満の直径またはサイズを有する粒子の第1の部分811とが、マイクロビーズマトリックス41を通過して容器3に収集されるが、臨界値を超える粒子の第2の部分813は、マイクロビーズの有効隙間の上方にまたは内部に保持される。第2の部分のこれらの粒子は10μmを超えるサイズまたは直径を有しているため、マイクロビーズの隙間に捕捉される。
【0134】
図5aのステップc′において、容器3とカラム2とを分離する。臨界値未満の粒子の第1の部分811を含む容器3は、図3a、ステップa″について説明したように、特に本発明に係る方法によって排出またはさらに処理することができる。
【0135】
マイクロビーズマトリックス41の隙間に捕捉された粒子の第2の部分は、本発明の方法に従ってさらに処理することができる。図5aのステップd′において、マイクロビーズマトリックス41と捕捉された生体粒子とを含む濾過ユニット1のカラム2を、たとえば2mlのPBSなどの緩衝液9で満たされている容器3′の上に移す。この場合、容器3′は、中心突出部を含んでいないが、カラムの細長いチャネルを収容するように形成されているため、カラム2が容器3′の上に位置付けられても細長いチャネルの下側開口部は容器3′のいずれの壁によっても閉塞されない。移すことは、特に、マイクロビーズマトリックスが実質的に乾燥しているときに行なうことができる。濾過ユニット1のカラム2の下側開口部27は容器3′内の緩衝液に浸漬する(図5b、ステップe′)。
【0136】
図5b、ステップf′に示すように、濾過マトリックスおよび捕捉された粒子は容器3′の容器チャンバに入ることができる。緩衝液をさらに、下側開口部27を介してカラム2内に吸引し、ピペットチャネルで繰り返し分注することによって、マイクロビーズマトリックス41が破壊されて下側開口部からカラムを出ることを確実にしてもよい。それによって、生体粒子および第1のセクションのマイクロビーズは、カラム2の下側開口部27から容器3′の容器チャンバ31に入って懸濁液を形成することができる。
【0137】
次いで、空のカラムを容器から取り出す(ステップg′)。
試料からマイクロビーズを分離するステップh′における試料のさらなる処理は、図3b、ステップfについて上述したように行なうことができる。分離した粒子の第2の部分をマイクロビーズから新しい容器に移すステップiにおける試料の処理は、図3b、ステップgについて上述したように行なうことができる。ステップj′においてたとえば遠心分離によって容器の底の粒子の第2の部分を濃縮することは、図3b、ステップhについて上述したように行なうことができる。ステップk′において上澄みを除去して粒子の第2の部分を適切な緩衝液に再懸濁させることは、図3b、ステップiおよびjについて上述したように行なうことができる。最後に、図3cについて上述したようなプロセスステップk~mを行なうことができる。あるいは、図3bについて上記に説明したように、ステップfの後、分離した粒子の第2の部分を、たとえば顕微鏡解析などの下流解析に直接移してもよい。
【0138】
図6は、本発明の方法のための一般的なワークフローを示す。まず、マイクロビーズの少なくとも第1のセクションを含むカラムを提供する。次いで、生体試料を第1のセクションに適用し、試料中の粒子を互いに分離する。粒子の第1の部分は濾過マトリックスを通過してフロースルーで収集される。粒子の第2の部分は第1のセクションの隙間に残る。分離は重力または遠心力によって達成することができる。粒子の第1の部分は廃棄または回収することができる。収集した粒子の第1の部分をさらなるカラムの上に適用することができる。粒子の第2の部分を緩衝液に懸濁させる。懸濁液は、たとえば重力または遠心力によって収集することができる。以下では、粒子の第2の部分を、たとえば重力または遠心力によって第1のセクションのマイクロビーズから分離する。分離後、粒子を濃縮して解析してもよい。
【0139】
本発明によれば、自動液体ハンドリングシステムは図6に示すようなワークフローを実行可能であってもよい。現代の検査機器は、たとえば、マトリックスを形成するマイクロビーズでカラムを充填し、生体試料でカラムを充填し、カラムをラックまたは遠心分離機内に位置付ける手段、液体試料を吸引するための手段、遠心分離のための手段などを含む。したがって、本発明によれば、非一時的なコンピュータ可読媒体上に記憶され、自動液体ハンドリングシステムの1つ以上のプロセッサによって実行されると本明細書に記載の実施形態のいずれかに係る方法を実行する命令を含む、コンピュータプログラムも提供され得る。たとえば、当該命令は図6に示すようなワークフローに従ってもよい。
【0140】
図7は、本発明に係る方法を利用可能な健康診断手順を示す。第1のステップとして、がん患者から全血試料を採取し、本発明の方法に従って粒子を単離する。単離した粒子の細胞形態を画像化によって解析する。微小塞栓が検出された場合、NAAT(核酸増幅技術)またはCLIA(化学発光イムノアッセイ)などのさらなるアッセイを行なって、検出された微小塞栓の転移能を検証する。
【0141】
実施例
マイクロビーズのサイズ分布
市販のマイクロビーズのサイズ分布を定量化するために、平均直径20μmおよび30μmのシリカビーズを光学顕微鏡法により解析した。図8aおよび図8bに示すように、画像化したいくつかのマイクロビーズ(完全に円形のマイクロビーズを仮定している)に対して画像解析を行ない、平均直径20μmのビーズについては直径約1μm~2.4μmの偏差を示し、平均直径30μmのビーズについては最大4μmの偏差を示した。
【0142】
バフィーコートに対するフィルタ性能
マイクロビーズを支持する十字として形成された下側開口部を有する細長いチャネルを各々が含む4本のカラムを、3層からなるマイクロビーズマトリックスで各カラムを充填することによって準備した。すべてのカラムについて、最下層は500μmのサイズのマイクロビーズから形成し、中間層は220μmのサイズのマイクロビーズから形成した。最上層のマイクロビーズのサイズは、4本のカラムについてそれぞれ20μm(カラムID W1031-20)、30μm(カラムID W1031-30)、40μm(カラムID W1031-40)および50μm(カラムID W1031-50)であり、それによって3.1μm、4.6μm、6.2μmおよび7.7μmの隙間サイズが提供された。
【0143】
バフィーコートは、たとえばEDTAなどの抗凝固剤を用いて収集され、かつ4本の遠心分離管に分けられた、合計8mlの全血の遠心分離(約300gで15分間)によって従来通りに調製した。これら4本の管から合計840μlのバフィーコート層を吸引してプールした。20μlの試料を採取し、細胞含有量(白血球(WBC)、赤血球(RBC)、血小板(PTL))をSysmex XS-500iシステムで解析した。残りの単離したバフィーコート層試料を4つの200μlのアリコートに分割し、各アリコートを上記に言及した4本のマイクロビーズマトリックスカラムの1本の上にピペッティングした。これら4本のカラムを20g未満で2分間遠心分離し、各フロースルーを収集してSysmex XS-500iシステムで解析した。これらのフロースルー試料は、バフィーコート層試料の粒子の第1の部分を含んでいた。遠心分離後、200μlの緩衝液(PBS)を各マイクロビーズマトリックスの上にピペッティングし、分注および吸引を数回行なって、緩衝液中のマイクロビーズと粒子の第2の部分との懸濁液を形成した。懸濁液を4つの新しい容器に移し、マイクロビーズから粒子の第2の部分を分離するためにこれらの容器を50gで3分間遠心分離した。粒子の第2の部分を含む上澄みから試料を採取し、続いてSysmex XS-500iシステムで解析した。
【0144】
Sysmex XS-500i解析から得られた細胞濃度を表3にまとめる。
【0145】
【表3】
【0146】
得られた処理前後の細胞濃度から導き出せるように、最上層に20μmのサイズのマイクロビーズを含むカラム(カラムID W1031-20)は白血球および赤血球を首尾よく保持したが、より小さいサイズの血小板は有意な程度まで濾過して除去した。赤血球は、4.6μm、6.2μmおよび7.7μmの有効隙間を有するより大きいマイクロビーズを含むカラム(カラムID W1031-30、W1031-40、W1031-50)によって保持されなかった。その一方で、白血球は、30μmおよび40μmのサイズのマイクロビーズを有するカラムによって一部が保持された。解析した細胞集団の平均サイズを考慮すると、これらの結果は、最上層内のマイクロビーズの平均直径が濾過プロセスのカットオフ値を決定することを示している。さらに、データは、変形して直径わずか3μmの毛細管をくぐり抜けることができるRBC(たとえば、Jones et al., Measurement science in the circulatory system, Cell Mol Bioeng. 2014;7(1):1-14))は20μmのサイズのマイクロビーズを有するマイクロビーズマトリックス内に依然として保持されて3.1μmの隙間を提供することを示している。したがって、この方法は、一般に変形しやすい細胞を富化するのにも適している。
【0147】
細胞サイズに関して細胞分布をさらに調べるために、Sysmex XS-500i解析ツールにおいて、白血球群を好中球、リンパ球、単球および好塩基球に分解した。その結果を表4にまとめる。
【0148】
【表4】
【0149】
表4の結果は、細胞集団に対するマイクロビーズマトリックスの濾過効率について、より差別化された考察を提供する。濾過効率は、WBC群内のすべての細胞型について等しいわけではなく、むしろ、30および40μmのサイズのマイクロビーズを有するカラムについて大きく変化する。好中球は83%が、単球はさらに96%が、30μmのサイズのマイクロビーズによって保持されるが、リンパ球および好塩基球はそれぞれ66%および57%しか保持されない。直径40μmのマイクロビーズを使用すると、これら4つの細胞型の濾過効率は28%~62%の範囲である。したがって、特定の直径のマイクロビーズを選択することによって、不均質な試料から一定の細胞集団を特異的に富化することができる。
【0150】
表3および表4に記載されるような、バフィーコートおよび分離した血球の試料を、光学顕微鏡法によりさらに解析した。このプロセスのために、試料を新しい容器に移し、80gで5分間遠心分離して上澄みを廃棄した。ペレット化した細胞を50μlの緩衝液(PBS)に再懸濁させ、ロマノフスキー染色剤で染色し、2μlの各試料を従来の顕微鏡カバースリップの上にピペッティングした。図9aは、遠心分離によって全血試料から単離したバフィーコート試料の顕微鏡画像を示す。この試料は、サイズが不均質な細胞の分布を含む。図9bは、カラムW1031-20の上にバフィコート試料を適用して遠心分離した後にフロースルーとして得られた試料の顕微鏡画像を示す。図9cは、カラムW1031-20の捕捉された細胞とマイクロビーズマトリックスとを懸濁させて遠心分離した後に得られた試料の顕微鏡画像を示す。図9bと比較して、図9cでは有意量のより大きいサイズの細胞が観察され、それによって表3の結果を定性的に確認する。図9dは、カラムW1031-50の上にバフィーコート試料を適用して遠心分離した後にフロースルーとして得られた試料の顕微鏡画像を示す。図9eは、カラムW1031-50の捕捉された細胞とマイクロビーズマトリックスとを懸濁させて遠心分離した後に得られた試料の顕微鏡画像を示す。図9dと図9eを比較すると、50μmのサイズのマイクロビーズを有するカラムは小さな画分の細胞しか保持していないのに対して、大部分の細胞はフロースルー中に見出されることが明らかである。50μmのサイズのマイクロビーズを含むマトリックスによって保持された細胞を、それらのサイズに関してさらに解析した。図9fおよび図9gは、倍率を増大させたことを除いて、それぞれ図9dおよび図9eに従った顕微鏡画像を示す。丸で囲んだ細胞の直径を解析し(完全に円形の細胞を仮定している)、その結果を以下の表5に要約する。
【0151】
【表5】
【0152】
これらのデータに基づいて、少なくとも、保持された部分におけるより大きい細胞に向かう傾向を導き出すことができる。
【0153】
赤血球懸濁液に対するフィルタ性能
3層を有するマイクロビーズマトリックスを有するカラムを準備した。最上層は直径30μmのマイクロビーズからなり、中間層は直径220μmのマイクロビーズズからなり、最下層は500μmのサイズのマイクロビーズから形成した。最上層の有効隙間直径は4.6μmであった。
【0154】
0.8%赤血球(RBC)懸濁液をマイクロビーズマトリックスの上に添加し、カラムを20g未満で2分間遠心分離した。遠心分離後、カラムを光学顕微鏡下に置いて最上層を視覚化した(図10a、図10b)。凝集したRBC(3~10細胞)が最上層の隙間(矢印でラベル付けされた例示的なスポット)の内部に捕捉されることが観察された。
【0155】
重要なことに、サイズが比較的一定であるRBCおよび凝集したRBCは、マイクロビーズマトリックスを循環腫瘍細胞などの他の標的細胞に最適化するための基準ラダーとして用いることができる。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図9g
図10a
図10b