(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】結合ポリマー生成物、作製方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/04 20060101AFI20221104BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20221104BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20221104BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20221104BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221104BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221104BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C08G77/04
C08F8/42
C08F297/04
C08L53/02
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020532638
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 US2018065362
(87)【国際公開番号】W WO2019118678
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-07-17
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユェンヨン
(72)【発明者】
【氏名】クック リタ イー
(72)【発明者】
【氏名】ラーデマッヘル クリスティーヌ エム
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167207(JP,A)
【文献】特開2005-232364(JP,A)
【文献】特開2006-257262(JP,A)
【文献】特許第6891291(JP,B2)
【文献】特開2013-249418(JP,A)
【文献】特開2003-155302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
297/04
C08G 77/00- 77/62
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合ポリマー生成物であって、
式(III)の官能化化合物に直接結合している最大で合計5個のポリマー鎖を有するポリマーを含み
、
式(III)は、以下のとおりであり:
酸無水物-(Q
3)Si(X
4)(X
5)(X
6) (III)
式中、
酸無水物が、
式(III)の環状酸無水物を形成するために結合した少なくとも2つのメチレン基を含み、Q
3が、二価であり、かつC
1~C
12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xが、独立して、ハロゲン及びOR
7(式中、各R
7が、独立して、C
1~C
12脂肪族ヒドロカルビル(好ましくは、エチル又はメチル)から選択される)のアルコキシから選択される脱離基であり、
前記ポリマー鎖が、(a)少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと任意に組み合わせて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、(b)そのビニル基を介して、前記ポリマー鎖内に結合している式(I)の少なくとも1つのビニル基官能基化シラン化合物と、を含み、式(I)が、以下のとおりであり:
(H
2C=C
H)-(A)-Si(R
1)(R
2)(R
3) (I)
式中、Aが、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC
6~C
20芳香族炭化水素から選択され、R
1、R
2及びR
3の各々が、独立して、線状又は分岐状C
1~C
12ヒドロカルビル及び-N(R
4)(R
5)から選択され、R
1、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つが、-N(R
4)(R
5)から選択され、各R
4及びR
5が、独立して、C
1~C
12の脂肪族ヒドロカルビル又はC
6~C
18の芳香族ヒドロカルビルから選択され、R
4及びR
5が、環に任意で一緒に結合しており、R
1及びR
2が、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合しており、
ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数が、0.1:1~3:1であり、
最大3個のポリマー鎖が、式(III)の各化合物のSiに結合している、結合ポリマー生成物。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が、好ましくは前記ポリマー鎖の尾部から50~90%に位置付けられている、請求項1に記載の結合ポリマー生成物。
【請求項3】
前記共役ジエンモノマーが、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記
ビニル芳香族モノマーが、スチレン、アルファ-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、p-tertブチルスチレン、4-ビニルビフェニル、4-ビニルベンゾシクロブテン、2-ビニルナフタレン、9-ビニルアントラセン、4-ビニルアニソール又はビニルカテコールからなる群から選択される、請求項1に記載の結合ポリマー生成物。
【請求項4】
前記ポリマー鎖が、式(III)の官能化化合物に直接結合している、請求項1~3のいずれか一項に記載の結合ポリマー生成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが
、
式(III)を有する官能化化合物で官能化し、
これにより、最終結合ポリマー生成物を生成することであって、前記最終結合ポリマー生成物が、
i.その酸無水物基を介して式(III)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、
ii.式(III)のSiを介して式(III)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、
iii.(i)からの式(III)の各化合物のSiに結合した最大3個のポリマー鎖と、
iv.0.1:1~3:1のポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数を有する、前記最終結合ポリマー生成物の前記ポリマー鎖と、
v.20~80重量%の、式(III)の各官能化化合物に直接結合した2つ以上のポリマー鎖を有する結合ポリマーを含む、前記最終結合ポリマー
生成物と、を含む、最終結合ポリマー生成物を生成すること
、を含む、プロセス。
【請求項6】
ゴム組成物であって、
a.10~100部の、請求項1~
4のいずれか一項に記載の結合ポリマー生成
物と、
b.0~90部の、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、
c.5~200phrの、カーボンブラック、シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの補強充填材と、を含む、ゴム組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載のゴム組成物を含む、タイヤ構成要素、好ましくは、タイヤトレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、官能化ポリマーを含有する結合ポリマー生成物、結合ポリマー生成物を作製する方法、及び結合ポリマー生成物を含有するゴム組成物に関する。本開示はまた、結合ポリマー生成物又はそのゴム組成物を含有する少なくとも1つの構成要素(例えば、トレッド)を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤ向けのゴム組成物は、官能化ポリマー及び/又は結合ポリマーを含有するゴム組成物を利用することができる。
【発明の概要】
【0003】
官能化ポリマーを含有する結合ポリマー生成物、結合ポリマー生成物を作製する方法、及び結合ポリマー生成物を含有するゴム組成物が、本明細書において開示されている。また、結合ポリマー生成物又はそのゴム組成物を含有する少なくとも1つの構成要素(例えば、トレッド)を有するタイヤが、本明細書において開示されている。
【0004】
第1の実施形態では、結合ポリマー生成物を調製するプロセスが、開示される。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー及び任意に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを、アニオン性開始剤を用いて重合して、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(b)(a)からのリビング末端ポリマー鎖を、式(I):(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)を有するビニル基官能化アミノシラン化合物と反応させて(式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、独立して、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、各R4及びR5は、独立して、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している)、これにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖に結合した、少なくとも1つのビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む、第1の中間生成物を生成することと、(c)少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、存在する場合、(b)からのポリマー鎖上の(a)からの少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの重合を継続することにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合した、少なくとも1つの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む第2の中間生成物を生成することであって、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数が、約0.1:1~約3:1である、第2の中間生成物を生成することと、(d)(c)からの第2の中間生成物を、式(II):NC-(Q1)Si(X1)(X2)(X3)を有する官能化化合物で官能化し(式中、Q1は二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR6(式中、各R6は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基である)、これにより、(i)そのNC-基を介して、式(II)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、(ii)式(II)のSiを介して式(II)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、(iii)(i)からの式(II)の各化合物のSiに結合した最大3個のポリマー鎖と、(iv)約0.1:1~約3:1のポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数を有する、(d)の最終ポリマー生成物のポリマー鎖と、(v)20~90重量%の、式(II)の各官能化化合物に直接結合した2つ以上の鎖を有する結合ポリマーを含むポリマー生成物と、を含む最終ポリマー生成物を生成することと、を含む。
【0005】
第2の実施形態では、結合ポリマー生成物が開示される。結合ポリマー生成物は、式IIの官能化化合物に直接結合している最大で合計5個のポリマー鎖を有するポリマーを含み、式(II)が以下のとおりであり:NC-(Q1)Si(X1)(X2)(X3)、式中、Q1は二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR6(式中、各R6は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基であり、ポリマー鎖が、(a)少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと任意に組み合わせて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、(b)そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合している式(I)の少なくとも1つのビニル基官能化シラン化合物と、を含み、式(I)が、以下のとおりであり:(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)、式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、独立して、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、各R4及びR5は、独立して、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している。結合ポリマー生成物において、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数は、約0.1:1~約3:1であり、最大3個のポリマー鎖が、式(II)の各化合物のSiに結合している。
【0006】
第3の実施形態では、結合ポリマー生成物を調製するプロセスが、開示される。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー及び任意に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを、アニオン性開始剤を用いて重合して、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(b)(a)からのリビング末端ポリマー鎖を、式(I):(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)を有するビニル基官能化アミノシラン化合物と反応させて(式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、独立して、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、各R4及びR5は、独立して、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している)、これにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖に結合した、少なくとも1つのビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む、第1の中間生成物を生成することと、(c)少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、存在する場合、(b)からのポリマー鎖上の(a)からの少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの重合を継続することにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合した、少なくとも1つの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む第2の中間生成物を生成することであって、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数が、約0.1:1~約3:1である、第2の中間生成物を生成することと、(d)(c)からの第2の中間生成物を、式(III):酸無水物-(Q2)(Q3)Si(X4)(X5)(X6)を有する官能化化合物で官能化し(式中、Q2は、一緒に結合し、かつ式(III)の環状酸無水物を形成する少なくとも2つのメチレン基を含み、Q3は、二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR7(式中、各R7は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基である)、これにより、(i)式(III)の化合物で、その酸無水物基を介して官能化されたポリマー鎖末端と、(ii)式(III)のSiを介して式(III)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、(iii)(i)からの式(III)の各化合物のSiに結合した最大3個のポリマー鎖と、(iv)約0.1:1~約3:1のポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数を有する、(d)の最終ポリマー生成物のポリマー鎖と、(v)20~80重量%の、式(III)の各官能化化合物に直接結合した2つ以上のポリマー鎖を有する結合ポリマーを含むポリマー生成物と、を含む最終ポリマー生成物を生成することと、を含む。
【0007】
第4の実施形態では、結合ポリマー生成物が開示される。結合ポリマー生成物は、式(III)の官能化化合物に直接結合している最大で合計5個のポリマー鎖を有するポリマーを含み、式(III)が以下のとおりであり:酸無水物-(Q2)(Q3)Si(X4)(X5)(X6)、式中、Q2は、一緒に結合し、かつ式(III)の環状酸無水物を形成する少なくとも2つのメチレン基を含み、Q3は、二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR7(式中、各R7は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基であり、ポリマー鎖が、(a)少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと任意に組み合わせて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、(b)そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合している式(I)の少なくとも1つのビニル基官能化シラン化合物と、を含み、式(I)が、以下のとおりであり:(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)、式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、独立して、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、R4及びR5はそれぞれ、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから独立して選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している。結合ポリマー生成物において、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数は、約0.1:1~約3:1であり、最大3個のポリマー鎖が、式(III)の各化合物のSiに結合している。
【0008】
第5の実施形態では、第2の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第1の実施形態のプロセスから得られた結合ポリマー生成物を含むゴム組成物が開示される。ゴム組成物は、(a)10~100部の結合ポリマー生成物と、(b)0~90部の、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、(c)5~200phrの、カーボンブラック、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの補強充填材と、を含む。
【0009】
第6の実施形態では、第4の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第3の実施形態のプロセスから得られた結合ポリマー生成物を含むゴム組成物が開示される。ゴム組成物は、(a)10~100部の結合ポリマー生成物と、(b)0~90部の、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、(c)5~200phrの、カーボンブラック、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの補強充填材と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施形態では、結合ポリマー生成物を調製する方法が、開示される。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー及び任意に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを、アニオン性開始剤を用いて重合して、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(b)(a)からのリビング末端ポリマー鎖を、式(I):(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)を有するビニル基官能化アミノシラン化合物と反応させて(式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、各R4及びR5は、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから独立して選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している)、これにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖に結合した、少なくとも1つのビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む、第1の中間生成物を生成することと、(c)少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、存在する場合、(b)からのポリマー鎖上の(a)からの少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの重合を継続することにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合した、少なくとも1つの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む第2の中間生成物を生成することであって、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数が、約0.1:1~約3:1である、第2の中間生成物を生成することと、(d)(c)からの第2の中間生成物を、式(II):NC-(Q1)Si(X1)(X2)(X3)を有する官能化化合物で官能化し(式中、Q1は二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR6(式中、各R6は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基である)、これにより、(i)そのNC-基を介して、式(II)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、(ii)式(II)のSiを介して式(II)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、(iii)(i)からの式(II)の各化合物のSiに結合した最大3個のポリマー鎖と、(iv)約0.1:1~約3:1のポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数を有する、(d)の最終ポリマー生成物のポリマー鎖と、(v)20~90重量%の、式(II)の各官能化化合物に直接結合した2つ以上の鎖を有する結合ポリマーを含むポリマー生成物と、を含む最終ポリマー生成物を生成することと、を含む。
【0011】
第2の実施形態では、結合ポリマー生成物が開示される。結合ポリマー生成物は、式IIの官能化化合物に直接結合している最大で合計5個のポリマー鎖を有するポリマーを含み、式(II)が以下のとおりであり:NC-(Q1)Si(X1)(X2)(X3)、式中、Q1は二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR6(式中、各R6は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基であり、ポリマー鎖が、(a)少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと任意に組み合わせて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、(b)そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合している式(I)の少なくとも1つのビニル基官能基化シラン化合物と、を含み、式(I)が、以下のとおりであり:(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)、式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、各R4及びR5は、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから独立して選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している。結合ポリマー生成物において、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数は、約0.1:1~約3:1であり、最大3個のポリマー鎖が、式(II)の各化合物のSiに結合している。
【0012】
第3の実施形態では、結合ポリマー生成物を調製するプロセスが、開示される。本プロセスは、(a)少なくとも1つの共役ジエンモノマー及び任意に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを、アニオン性開始剤を用いて重合して、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(b)(a)からのリビング末端ポリマー鎖を、式(I):(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)を有するビニル基官能化アミノシラン化合物と反応させて(式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、各R4及びR5は、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから独立して選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している)、これにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖に結合した、少なくとも1つのビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む、第1の中間生成物を生成することと、(c)少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、存在する場合、(b)からのポリマー鎖上の(a)からの少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの重合を継続することにより、そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合した、少なくとも1つの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物を含有するポリマー鎖を含む第2の中間生成物を生成することであって、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数が、約0.1:1~約3:1である、第2の中間生成物を生成することと、(d)(c)からの第2の中間生成物を、式(III):酸無水物-(Q2)(Q3)Si(X4)(X5)(X6)を有する官能化化合物で官能化し(式中、Q2は、一緒に結合し、かつ式(III)の環状酸無水物を形成する少なくとも2つのメチレン基を含み、Q3は、二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR7(式中、各R7は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基である)、これにより、(i)式(III)の化合物で、その酸無水物基を介して官能化されたポリマー鎖末端と、(ii)式(III)のSiを介して式(III)の化合物で官能化されたポリマー鎖末端と、(iii)(i)からの式(III)の各化合物のSiに結合した最大3個のポリマー鎖と、(iv)約0.1:1~約3:1のポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数を有する、(d)の最終ポリマー生成物のポリマー鎖と、(v)20~80重量%の、式(III)の各官能化化合物に直接結合した2つ以上のポリマー鎖を有する結合ポリマーを含むポリマー生成物と、を含む最終ポリマー生成物を生成することと、を含む。
【0013】
第4の実施形態では、結合ポリマー生成物が開示される。結合ポリマー生成物は、式(III)の官能化化合物に直接結合している最大で合計5個のポリマー鎖を有するポリマーを含み、式(III)が以下のとおりであり:酸無水物-(Q2)(Q3)Si(X4)(X5)(X6)、式中、Q2は、一緒に結合し、かつ式(III)の環状酸無水物を形成する少なくとも2つのメチレン基を含み、Q3は、二価であり、かつC1~C12アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、独立して、ハロゲン及びOR7(式中、各R7は、独立して、C1~C12脂肪族ヒドロカルビルから選択される)のアルコキシから選択される脱離基であり、ポリマー鎖が、(a)少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと任意に組み合わせて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、(b)そのビニル基を介して、ポリマー鎖内に結合している式(I)の少なくとも1つのビニル基官能化シラン化合物と、を含み、式(I)が、以下のとおりであり:(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)、式中、Aは、二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分により任意に置換されているC6~C20芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3の各々は、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは-N(R4)(R5)から選択され、R4及びR5はそれぞれ、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから独立して選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している。結合ポリマー生成物において、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の平均数は、約0.1:1~約3:1であり、最大3個のポリマー鎖が、式(III)の各化合物のSiに結合している。
【0014】
第5の実施形態では、第2の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第1の実施形態の方法から得られた結合ポリマー生成物を含むゴム組成物が開示される。ゴム組成物は、(a)10~100部の結合ポリマー生成物と、(b)0~90部の、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、(c)5~200phrの、カーボンブラック、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの補強充填材と、を含む。
【0015】
第6の実施形態では、第4の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第3の実施形態の方法から得られた結合ポリマー生成物を含むゴム組成物が開示される。ゴム組成物は、(a)10~100部の結合ポリマー生成物と、(b)0~90部の、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、(c)5~200phrの、カーボンブラック、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの補強充填材と、を含む。
定義
【0016】
本明細書に記載する用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「アルキレン」とは、二重結合の開口によりアルケンから、又は2個の水素原子を除去することによるアルカンから誘導される二価脂肪族部分を指す。非限定例には、-CH2-(メチレン)及び-CH2-CH2-(エチレン)が含まれる。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語ポリマーの「頭部」は、開始剤残基が存在する鎖端を指すように使用され、一方で用語「末端」又は「尾部」は、最終モノマー単位がポリマーに添加されている位置に最も近い鎖端を指すように使用される。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語のヒドロカルビルとは、炭化水素から誘導される一価のラジカルを指す。
【0020】
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
【0021】
本明細書で使用されるとき、略記Mpは、ピーク分子量に使用される。
【0022】
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
【0023】
本明細書で特に指示がないかぎり、用語「ムーニー粘度」とは、ムーニー粘度、ML1+4を意味する。ゴム組成物のムーニー粘度は、加硫又は硬化に先立って測定されることを、当業者は理解するであろう。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「天然ゴム」は、パラゴムノキ属のゴムの木及びパラゴムノキ属以外の原料(例えば、グアユールの低木及びタンポポ(例えば、TKS)など)の原料から採取することができるものなど、天然由来のゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
【0025】
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部あたりの部を意味する。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
結合ポリマー生成物及びモノマー
結合ポリマー生成物
【0027】
上述のように、本明細書に開示される第1及び第3の実施形態は、結合ポリマー生成物を調製するプロセスを対象とし、第2及び第4の実施形態は、結合ポリマー生成物を対象とする。結合ポリマー生成物という言い回しは、結合ポリマー生成物内のポリマーが、式(II)(第2の実施形態)又は式(III)(第4の実施形態)のいずれかの官能化化合物に結合している異なる数のポリマー鎖を有するポリマーの混合物を表すことを意味する。式(II)又は式(III)の官能化化合物への複数のポリマー鎖のカップリング又は結合は、星形ポリマーと称することができる、多重アームポリマーをもたらす。2つ以上のポリマー鎖が、官能化化合物に結合することができるので、結合は、2つ以上のポリマーがそれに結合するとき、式(II)又は式(III)の官能化化合物に「連結されている」カップリング部及びポリマー鎖と称され得る。より具体的には、第1の実施形態によれば、また第2の実施形態のある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物の20~90重量%(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90重量%)、好ましくは、50~90重量%(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85又は90重量%)が、式(II)の官能化化合物に結合した2つ以上のポリマー鎖を有するポリマーを含み、結合ポリマー生成物の残りの量(すなわち、10~80重量%、好ましくは、10~40重量%)が、連結されていないポリマー生成物に対応する(以下で考察されるように、1つのみの、式(II)の官能化化合物に結合したポリマー鎖を有する)と理解され得る。第3の実施形態及び第4の実施形態のうちのある特定の実施形態によれば、結合ポリマー生成物の20~80重量%(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80重量%)、好ましくは、50~70重量%(例えば、50、55、60、65、又は70重量%)が、式(III)の官能化化合物に結合した2つ以上のポリマー鎖を有するポリマーを含み、結合ポリマー生成物の残りの量(すなわち、20~80重量%、好ましくは、30~50重量%)が、連結されていないポリマー生成物に対応する(以下で考察するように、1つのみの、式(III)の官能化化合物に結合したポリマー鎖を有する)と理解され得る。式(II)又は式(III)のいずれかの官能化化合物に結合している鎖は、非官能化ポリマーと称することができる(しかし、このようなポリマーは、ポリマー鎖内に結合しているビニル基官能化アミノシラン化合物を依然として含有することができる)。式(II)又は式(III)の官能化化合物に結合した1つのポリマー鎖のみを有するポリマーは、連結されていない官能化ポリマーと称することができ(このようなポリマーはまた、ポリマー鎖内に結合したビニル基官能化アミノシラン化合物を含有してもよい)、このような説明におけるカップリングが、少なくとも2つのポリマー鎖の結合を指すために使用されるためである。式(II)又は(III)の官能化化合物に結合している1~2つのポリマー鎖を有するポリマーを含む結合ポリマー生成物の量(重量基準)は、GPCによって測定することができ、これにより、3~4つの鎖を有する生成物の部分は、相対的に小さなピークの前に溶出する相対的に大きなピークにより表されるであろう(小さい方のピークは、式(II)又は(III)の官能化化合物に結合している1又は2つのポリマー鎖のどちらか一方を有するポリマーを表す)。
【0028】
上述のとおりに、第1から第4の実施形態の結合ポリマー生成物中に存在するポリマー鎖は、少なくとも1つの共役ジエン含有モノマーを、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーと任意に組み合わせて構成される。更に、ポリマー鎖はまた、そのビニル鎖を介して、ポリマー鎖内に結合している式(I)である少なくとも1つのビニル基官能化アミノシラン化合物を含む。式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物が、そのビニル基を介してポリマー鎖内で結合していることを意味することにより、化合物がポリマー鎖内で結合する(すなわち、そのビニル基を介してビニル基のアルファ及びベータ炭素がポリマー鎖に組み込まれるようになる)ことを意味する。第1から第4の実施形態によれば、式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物は、ポリマーの頭部に位置していない(なぜなら、この化合物は、官能化開始剤として添加されないからである)が、代わりに、ポリマー鎖の頭部から1merを超えて離れて現れる(例えば、2番目のmer、3番目のmer、...100番目のmer、...1000番目のmer、など)。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物は、ポリマー鎖の頭部から少なくとも1%(例えば、少なくとも1%、1%、少なくとも5%、5%、少なくとも10%、10%、少なくとも20%、20%、少なくとも30%、30%、少なくとも40%、40%、少なくとも50%又は50%)のポリマー及び頭部から最大で99%のポリマー(例えば、最大で51%、最大で55%、最大で60%、最大で70%、最大で80%、最大で90%、最大で95%、最大で99%)の鎖内に位置している。他の実施形態では、式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物は、ポリマー鎖の末端(すなわち、最後のmerとして)に現れる。更に以下で考察されるとおり、第1から第4の実施形態のうちある特定の好ましい実施形態では、式Iのビニル基官能化アミノシラン化合物は、ポリマー鎖の頭部から少なくとも50%のポリマー、及び頭部からポリマーの最大95%のポリマー鎖内に位置する。このような配置は、式Iのビニル基官能化アミノシラン化合物を添加する前に、ある期間(例えば、少なくとも一部が完了に向かって進行するよう)、モノマーが重合して進行に向かうようにし、次いで、式Iのビニル基官能化シラン化合物の添加後に、モノマーの重合を更に進行させることにより実現することができる。第1から第4の実施形態によれば、ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能性アミノシラン化合物の平均数は、約0.1:1~約3:1である。非限定例として、数平均が0.1:1である場合には、10個のポリマー鎖の各々に、式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物が1つ存在する。第1から第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ポリマー鎖あたりの式Iのビニル基官能基化アミノシラン化合物の数平均は、0.1:1~3:1(例えば、0.1:1、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.2:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.8:1、2:1、2.2:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.8:1、3:1)、0.3~2:1、又は0.3~1:1である。ポリマー鎖あたりの式(I)のビニル基官能化アミノシラン化合物の数平均は、NMR(より詳細には、-Si-CH3のH1-NMR)によって測定することができる。
モノマー
【0029】
上述のとおり、第1から第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物のポリマー鎖は、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、任意に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとを構成し、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、任意に少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとを重合することを含む。第1から第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物のポリマー鎖は、少なくとも1つの共役ジエンモノマーのみからなる(すなわち、ただ1種類のモノマーとして)、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーのみを利用する(すなわち、ただ1種のモノマーとして)。第1から第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物のポリマー鎖は、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとを構成し(すなわち、ただ1つのビニルモノマーが存在する)、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとを含む(すなわち、ただ1つのビニルモノマーが存在する)。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物のポリマー鎖は、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとからなる(すなわち、ただ1種類のモノマーとして)、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとからなる(すなわち、ただ1種のビニルモノマーが存在する)。第1から第4の実施形態によれば、1種又は2種以上の共役ジエンモノマーを利用してもよい。同様に、第1から第4の実施形態によれば、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーが存在する場合、1種又は2種以上のビニル芳香族モノマーが利用されてもよい。
【0030】
当業者が理解するとおり、共役ジエンは、単結合(すなわち、-C-C-)によって分離されている、2つの炭素-炭素二重結合(すなわち、2つの-C=C-結合)を有する化合物である。共役ジエンは、少なくとも1つの-C=C-C=C-部分を含有する)。本明細書に開示される第1から第4の実施形態のうちの実施形態のプロセスで使用されるか、又はポリマー鎖中に存在する共役ジエンモノマーの特定の構造は、さまざまとなり得る。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の実施形態における使用に好適な共役ジエンモノマーの非限定例として、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、及び1,3-シクロオクタジエン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうち特定の実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンを含むか、又は1,3-ブタジエンである。本明細書において開示されている第1から第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンからなる。
【0031】
上述のとおり、第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ポリマー鎖(すなわち、結合ポリマー生成物の)は、少なくとも1つの共役ジエンモノマーに加えて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーを含有し、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するために使用されるプロセスは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーに加えて、少なくとも1つの共役ジエンモノマーを利用する。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのそれらの実施形態では、少なくとも1種類のビニル芳香族モノマーは、ポリマー鎖中に存在しており、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスで使用され、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、p-tertブチルスチレン、4-ビニルビフェニル、4-ビニルベンゾシクロブテン、2-ビニルナフタレン、9-ビニルアントラセン、4-ビニルアニソール、又はビニルカテコールのうちの少なくとも1つを含んでもよい。本明細書において開示されている、第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーは、スチレンを含む。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ビニル芳香族モノマーは、スチレンからなる(すなわち、利用される唯一のビニル芳香族モノマーがスチレンである)。ポリマー鎖が、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと組み合わせた、少なくとも1つの共役ジエンモノマーを含む、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスが、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと組み合わせた、少なくとも1つの共役ジエンモノマーを利用する第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、それらは、95:5~65:35を含めた、95:5~50:50の重量比で(例えば、95~50%の共役ジエンモノマー及び5~50%のビニル芳香族モノマー)利用される。ポリマー鎖が、1,3-ブタジエンとスチレンモノマーとの組み合わせを含む(又は代替として、これらからなる)、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスが、1,3-ブタジエンとスチレンモノマーとの組み合わせを利用する、第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ポリマー鎖のスチレン含有量は、全モノマー含有量(すなわち、1,3-ブタジエン+スチレン)の重量の、10~50重量%、約18~約40重量%、及び18~40重量%を含めた、約10~約50%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%)である。ポリマー鎖が、1,3-ブタジエンとスチレンモノマーとの組み合わせを含む(又は代替として、これらからなる)、及び/又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスが、1,3-ブタジエンとスチレンモノマーとの組み合わせを利用する、第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、8~99重量%(例えば、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、99重量%)、約10~約60重量%及び10~60重量%を含めた、ブタジエン部分中に、ビニル結合(1,2-ビニル)を約8~約99質量%有する微細構造を有する。ポリマー鎖又は得られた末端官能基化ポリマーのブタジエン部分中のビニル結合の含有率は、H1-NMR及びC13-NMR(例えば、300MHz Gemini300NMR分光計システム(Varian)を使用することによって決定することができる。
分子量
【0032】
本明細書において開示されている第1~第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物の分子量(Mw)は、さまざまであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、本結合ポリマー生成物は、300,000~600,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、500,000、525,000、550,000、575,000、又は600,000グラム/モル)のMwを有する。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、本結合ポリマー生成物は、350,000~550,000のMwを有する。本明細書において言及されているMw値は、重量平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより決定することができる。
【0033】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物中のポリマー鎖(アーム)の分子量(Mw)は、さまざまであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうち特定の実施形態では、ポリマー鎖は、50,000~200,000グラム/モル(例えば、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、又は200,000グラム/モル)若しくは90,000~150,000グラム/モル(例えば、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000グラム/モル)のMwを有する。
【0034】
本明細書において開示されている第1~第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物の数平均分子量(Mn)は、さまざまであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物は、200,000~400,000グラム/モル(例えば、200,000、225,000、250,000、275,000、300,000、325,000、350,000、375,000、又は400,000グラム/モル)のMnを有する。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、本結合ポリマー生成物は、200,000~300,000のMwを有する。本明細書において言及されているMn値は、数平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより決定することができる。
【0035】
本明細書に開示されている第1~第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物中のポリマー鎖(アーム)の数平均分子量(Mn)は、さまざまであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、本ポリマー鎖は、70,000~200,000グラム/モル(例えば、70,000、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、又は200,000グラム/モル)若しくは80,000~150,000グラム/モル(例えば、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、又は150,000グラム/モル)のMnを有する。
【0036】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物の多分散度(Mw/Mn)は、さまざまであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物は、1.3~2.5(例えば、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5)、好ましくは1.5~2のMw/Mnを有する。
【0037】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態によれば、結合ポリマー生成物のガラス転移温度(Tg)は、さまざまであってもよい。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物は、-25~-50℃(例えば、-25、-30、-35、-40、-45、又は-50℃)のTgを有する。本明細書に開示される第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物は、-30℃~-45℃のTgを有する。本明細書で言及されるTg値は、本明細書の実施例に記載されているとおり、DSC(示差走査熱量測定)によって決定することができる。
式(I)を有するビニル基官能化アミノシラン化合物
【0038】
上述のように、第1及び第3の実施形態のプロセスは、リビング末端ポリマー鎖を、式(I):(H2C=CH2)-(A)-Si(R1)(R2)(R3)を有するビニル基官能化アミノシラン化合物と反応させることを含む。式(I)によれば、Aは二価であり、かつSiが結合している脂肪族アルキレン部分で、任意に置換されたC6~C20の芳香族炭化水素から選択され、R1、R2及びR3はそれぞれ、線状又は分岐状C1~C12ヒドロカルビル及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、-N(R4)(R5)から選択され、R4及びR5はそれぞれ、C1~C12の脂肪族ヒドロカルビル又はC6~C18の芳香族ヒドロカルビルから独立して選択され、R4及びR5は、環に任意で一緒に結合しており、R1及びR2は、2個の窒素原子を含む環に任意で一緒に結合している。式(I)の化合物のH2C=CH2部分は、ビニル基と称することができる。式(I)の化合物のA部が二価であることを述べることは、それが化合物の(H2C=CH2)-及びSi部分の両方に結合していることを示すことを意味する。
【0039】
上記のように、式(I)の化合物のA部は二価であり、かつC6~C20の芳香族炭化水素(すなわち、1つ以上の芳香環中に6~20個の炭素原子を有する炭化水素)から選択される。好ましくは、式(I)の化合物のA部は、1つの芳香環のみを有する。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(I)の化合物のA部は、6~18個の炭素原子(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個の炭素原子)を有する芳香族炭化水素から、若しくは6~12個の炭素原子(例えば、6、7、8、9、10、11又は12個)を有する芳香族炭化水素から選択される。第1~第4の実施形態によれば、ある特定の好ましい実施形態では、式(I)のA部はフェニレンである(すなわち、ベンゼンから誘導され、6個の炭素原子を有する二価芳香族部分)である。A部は、Siが結合している脂肪族ヒドロカルビル/アルキレン基で任意に置換される。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(I)の化合物のA部は、C6~C20芳香族炭化水素から選択される二価であり、かつ脂肪族ヒドロカルビル/アルキレン基で置換されていない。第1~第4の実施形態のうちの他の実施形態では、式(I)の化合物のA部は、C6~C20芳香族炭化水素から選択される二価であり、かつ脂肪族ヒドロカルビル/アルキレン基で置換されている。
【0040】
第1~第4の実施形態のうちのこれらの実施形態では、式(I)の化合物のA部が、脂肪族ヒドロカルビル/アルキレン基で置換され、好ましくは、二価であり、かつその他方の末端若しくは側部で化合物のSi部に結合している、ただ1つのこのような脂肪族ヒドロカルビル/アルキレン基のみが存在する。好ましくは、脂肪族ヒドロカルビル/アルキレン基置換基は、C1~C12基(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する)から、若しくはC1~C6基(すなわち、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する)から選択される。
【0041】
上記のように、第1~第4の実施形態によれば、式(I)の化合物は、Si上にR1、R2、及びR3基を含む。R1、R2、及びR3基の各々は、直鎖状又は分岐状のC1~C12ヒドロカルビル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基)及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つが、-N(R4)(R5)から選択される。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、R1、R2、及びR3基の各々は、直鎖状又は分岐状のC1~C6ヒドロカルビル(例えば、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基)及び-N(R4)(R5)から独立して選択され、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つが、-N(R4)(R5)から選択される。式(II)によれば、式(II)による化合物中にはアミン窒素(すなわち、-NH)は存在しない。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、R1、R2、及びR3基のうちの1つだけが、-N(R4)(R5)から選択される。第1~第4の実施形態のうちの他の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの2つが、-N(R4)(R5)から選択される。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの3つ全てが、-N(R4)(R5)から選択される。第1~第4の実施形態によれば、R1、R2、及びR3基の各々が、好ましくは脂肪族である。しかしながら、第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、R1、R2、及びR3基のうちの1つ以上は、C6~C18の芳香族ヒドロカルビル、又はC6~C12の芳香族ヒドロカルビルから選択することができる。式(I)によれば、R1及びR2が、-N(R4)(R5)から選択されるとき、これらは、任意で、Siと一緒に2つの窒素原子を含む環に一緒に結合し、このような実施形態では、各R4はまた、窒素置換基として残っている各R5を有する環構造の一部であってもよく、又は各R4の一部は、第2の炭素系環構造を追加的に構成してもよい。他の実施形態では、R1、R2、及びR3のうちの1つのみが-N(R4)(R5)であり、窒素は、そのそれぞれのR4及びR5基で環構造に結合する。
【0042】
R4及びR5基の各々は、C6~C12の脂肪族ヒドロカルビル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基)から、若しくはC6~C18の芳香族ヒドロカルビル(すなわち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個の炭素原子を有する芳香族ヒドロカルビル基)から独立して選択され、R4及びR5は、任意で、一緒に環に結合する。R4及びR5は、好ましくは脂肪族であり、より好ましくはC1~C6の脂肪族炭化水素、最も好ましくはエチル又はメチルから選択される。
【0043】
式(I)を有する好適なビニル基官能性アミノシラン化合物の非限定例としては、4-((N,N-ジメチルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジメチルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、4-((N,N-ジエチルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジエチルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、4-((N,N-ジプロピルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジプロピルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、4-((N,N-ジブチルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジブチルアミノ)ジメチルシリル)スチレン、4-((N,N-ジメチルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジメチルアミノ)ジエチルシリル)スチレン4-((N,N-ジエチルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジエチルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、4-((N,N-ジプロピルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジプロピルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、4-((N,N-ジブチルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、3-((N,N-ジブチルアミノ)ジエチルシリル)スチレン、4-((ビス(N,N-ジメチルアミノ))メチルシリル)スチレン、4-(1,2,5-トリメチル1-2,5-ジアザ-1-シリルシクロペンチル)スチレン、4-((ピロリジニル)ジメチルシリル)スチレン、及び4-(2’-オクタヒドロ-1,2,3-トリメチル1-2-シリルベンゾイミダゾリル)スチレンなどのN,N’-ジアルキルアミノジアルキルシリルスチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
式(II)及び(III)の官能化化合物
【0044】
上述のとおり、第2の実施形態の結合ポリマー生成物は、式(II)の官能化化合物に結合した最大5個のポリマー鎖を含み、第4の実施形態の結合ポリマー生成物は、式(III)の官能化化合物に結合した最大5個のポリマー鎖を含む。同様に、本明細書に開示される第1の実施形態のプロセスは、ポリマー鎖を式(II)の官能化化合物と反応させて、式(II)の官能化化合物に結合した最大5個のポリマー鎖を含むポリマー生成物を生成することを含み、本明細書に開示される第3の実施形態のプロセスは、ポリマー鎖を式(III)の官能化化合物と反応させて、式(III)の官能化化合物に結合した最大5個のポリマー鎖を含むポリマー生成物を生成することを含む。
【0045】
式(II)は、以下のとおりであり:
N≡C-(Q1)-Si(X1)(X2)(X3)
式(II)によれば、Q1は、二価であり、かつC1~C12(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、ハロゲン及びOR6のアルコキシから独立して選択され、各R6は、C1~C12(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)脂肪族ヒドロカルビルから独立して選択される。第1及び第2の実施形態のうちのある特定の実施形態では、Q1は、C1~C12(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)の二価の脂肪族アルキレンから選択される。第1及び第2の実施形態のうちの他の実施形態では、Q1は、C6~C18(すなわち、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、又はC18)の二価の芳香族部分から選択される。第1及び第2の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(II)のR6は、C1~C6の脂肪族ヒドロカルビル、好ましくは、メチル又はエチルである。
【0046】
第1及び第2の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(II)の各X(すなわち、X1、X2、及びX3の各々)は、ハロゲンから独立して選択される。各Xのハロゲンは、同一であってもよく、又は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。好ましくは、ハロゲンは、塩素又は臭素であり、最も好ましくは塩素である。Xがそれぞれ塩素である例示的な化合物としては、3-シアノブチル-トリクロロシラン、3-シアノプロピル-トリクロロシラン、1-シアノエチル-トリクロロシラン及び2-シアノエチル-トリクロロシランが挙げられる。
【0047】
上述のとおり、式(II)のQ1は、二価であり、かつC1~C12アルキレン部分及びC6~C18芳香族部分から選択される。二価とは、Q1が、式(II)中のシアノ基の炭素とケイ素の両方に結合していることを意味する。第1及び第2の実施形態のうちのある特定の実施形態では、Q1は、C1~C12脂肪族二価アルキレン部分から選択される。Q1がC1~C12脂肪族二価アルキレン部分から選択されるある特定の実施形態では、脂肪族二価アルキレン部分は、直鎖状である。Q1がC1~C12脂肪族二価アルキレン部分から選択される、第1及び第2の実施形態のうちのある特定の実施形態では、Q1は分岐状である(すなわち、シアノは、アルキレン部分の鎖中の最後のCに結合していない)。Q1がC1~C12脂肪族二価アルキレン部分から選択される、第1及び第2の実施形態のうちのある特定の実施形態では、脂肪族二価歩きkレン部分は、C1~C6又はC2~C4である。
【0048】
当業者に理解されるとおり、上で表されている式(II)は、ポリマー鎖への結合が起こる前の官能化化合物を表す。式(II)を有する官能化化合物は、最大5つのポリマー鎖と結合することができる。より詳細には、このような結合は、X1、X2又はX3のうちのいずれかをポリマー鎖で、並びに式(II)のシアノ末端において交換することにより行うことができる(式(II)の官能化化合物に結合している5つのポリマー鎖の合計まで)。したがって、一旦、式IIの官能化化合物が、1つ以上のポリマー鎖に結合すると、結合された式(II)の構造は、式IIの官能性化合物の「残基」としてより正確に記載することができ、この場合、X1、X2、X3及び/又はシアノ基中の不飽和結合(複数可)(すなわち、N≡C)のうちの少なくとも1つ(及び最大で全て)は、ポリマー鎖により置き換えられる。
式(III)は、以下のとおりであり:
酸無水物-(Q2)(Q3)Si(X4)(X5)(X6)(III)
式(III)によれば、Q2は、一緒に結合し、かつ式(III)の環状酸無水物を形成する少なくとも2つのメチレン基を含み、Q3は、二価であり、かつC1~C12(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)アルキレン部分又は芳香族部分から選択され、各Xは、ハロゲン及びOR7のアルコキシから独立して選択される脱離基であり、各R7は、C1~C12(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)脂肪族ヒドロカルビル又はC1~C6脂肪族ヒドロカルビルから独立して選択される。第3及び第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、Q3は、C1~C12(すなわち、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、又はC12)の二価の脂肪族アルキレン部分から選択される。第3及び第4の実施形態のうちの他の実施形態では、Q3は、C6~C18(すなわち、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、又はC18)又はC6~C12の二価の芳香族部分から選択される。第3及び第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、R7は、好ましくはメチル又はエチルである。
【0049】
第3及び第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(III)の各X(すなわち、X3、X4、及びX5の各々)は、ハロゲンから独立して選択される。各Xのハロゲンは、同一であってもよく、又は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。好ましくは、ハロゲンは、塩素又は臭素であり、最も好ましくは塩素である。
【0050】
上述のように、Q2は、一緒に結合して式(III)の環状酸無水物を形成する、少なくとも2つの(例えば、2、3、4、又はそれ以上の)メチレン基を含む。第3及び第4の実施形態のうちの好ましい実施形態では、Q2は、一緒に結合して環状酸無水物を形成する2つのメチレン基を含有する(式(III)中、Q2及びSiの両方にQ3が結合している)。
【0051】
式(III)の酸無水物のQ2部分に対応する例示的な化合物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
当業者に理解されるとおり、上で表されている式(III)は、ポリマー鎖への結合が起こる前の官能化化合物を表す。式(III)を有する官能化化合物は、最大5つのポリマー鎖と結合することができる。より詳細には、このような結合は、X3、X4、又はX5のうちのいずれかをポリマー鎖で、並びに式(III)の酸無水物末端において(環が開いた状態で)交換することにより行うことができる(式(III)の官能化化合物に結合している5つのポリマー鎖の合計まで)。したがって、一旦、式(III)の官能化化合物が、1つ以上のポリマー鎖に結合すると、式(III)の構造は、式(III)の官能化化合物の「残基」としてより正確に記載することができ、この場合、X3、X4、X5の少なくとも1つ(及び最大で全て)は、ポリマー鎖により置き換えられ、及び/又は酸無水物環が開かれており、最大2個のポリマー鎖の結合が可能になっている。
ポリマー官能化化合物
【0053】
第1及び第3の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスは、式(II)の官能化化合物又は式(III)の官能化化合物のいずれかを使用した後の第2の官能化化合物の使用を含む。それに対応して、第2及び第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、結合ポリマー生成物は、式(II)又は式(III)の化合物のみではなく、第2の官能化化合物にも結合しているポリマー鎖を有する。第2の官能化化合物は、任意に、表示される必要があり、すなわち、第1及び第3の実施形態のプロセスは、必ずしも第2の官能化化合物を使用する必要はなく、第2及び第4の実施形態の結合ポリマー生成物は、必ずしも第2の官能化化合物を含有する必要はない。
【0054】
第2の官能化化合物が利用される第1~第4の実施形態のうちのそれらの実施形態では、第2の官能化化合物の構造はさまざまであってもよい。第2の官能性化合物は、式(IV):[F][CH2]a[Si][R8]b[X7]cの構造を有し、式中、Fは官能基を表し、各R8は、C1~C12(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素)のヒドロカルビルを表し、各X7は、ハロゲン及びOR9のアルコキシから選択される脱離基を表し、各R9は、C1~C12(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素)の脂肪族ヒドロカルビルから独立して選択され、aは1~10の整数であり、b及びcは、0、1、2、3の整数から選択され、合計(すなわち、b+c)は3である。第1~第4の実施形態の内のある特定の実施形態では、式(IV)は、2~6、好ましくは3~4の整数から選択されるaを有する。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(IV)は、3つのハロゲンを有する(すなわち、cは3である)。第1~第4の実施形態のうちの他の実施形態では、式(IV)は、2つのハロゲン(すなわち、cは2である)又は1つのハロゲン(すなわち、cは1である)を有する。第1~第4の実施形態のうちの更に他の実施形態では、式(IV)は、ハロゲンを有さない(すなわち、cは0であり、かつbは3である)。第1~第4の実施形態のうちのある特定の実施形態では、式(IV)は、C1~C6、好ましくはC1~C3、更により好ましくはエチル又はメチルから選択される各R8を有する。各Xのハロゲンは、同一であってもよく、又は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。好ましくは、ハロゲンは、塩素又は臭素であり、最も好ましくは塩素である。X7が存在し(すなわち、cが1、2、又は3の整数である場合)、かつ少なくとも1つのX7がOR9のアルコキシである場合、R9は、好ましくはC1~C6、更により好ましくはエチル又はメチルから選択される。
【0055】
F中に存在する特定の官能基は、広範に変化し得る。例示的な官能基としては、1つ以上の窒素(好ましくは、任意の窒素が水素を含まない)を含有するものが挙げられ、これらには、1つ又は2つのトリアルキルシリル基で置換された窒素、炭素が1つ以上の炭素(これが今度は1つ以上の炭素に結合している)に結合した窒素二重結合、環状窒素(好ましくは、炭素が1つ以上に結合している炭素に二重結合した少なくとも1つの窒素を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的な官能基としては、(1)グリシドキシ、脂環式エポキシド(例えば、1,2-エポキシシクロヘキサン)などの管状エポキシ、直鎖エポキシ、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない1つ以上のエポキシを含有するもの、(2イソシアネート(すなわち、O=C=N-)を含有するもの、又は(3)ポリシロキサン(例えば、環状構造中に3~6個のSiを有する環状ジメチルポリシロキサンなどの1つ又は2つのアルキル基で任意に置換されたSiを有する環状ポリシロキサン)が挙げられる。
重合
【0056】
上記のとおり、第1及び第3の実施形態のプロセスは、アニオン性開始剤を使用して、モノマーを重合し、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することを含む。共役ジエンモノマーのアニオン重合は、モノマー(複数可)と組み合わせたアニオン性開始剤、及び任意選択の溶媒の使用を含み、この一般的プロセス(すなわち、本明細書において開示されている官能化化合物の使用以外)は、当業者に周知である。一般に、モノマー(単数又は複数)は、バッチ、半連続操作又は連続操作などのさまざまな好適な方法に従い重合する。この重合は、以下に限定されないが、バルク重合、蒸気相重合、溶液重合、懸濁重合及びエマルション重合を含めた、いくつかの異なる重合用反応器系中で行うこともできる。溶液重合では、溶液中のモノマーの濃度は、好ましくは、5~50質量%、より好ましくは10~30質量%の範囲内である。重合系は、特に限定されず、バッチ式又は連続式であってもよい。本明細書に開示される第1及び第3の実施形態のうちのある特定の実施形態では、アニオン性反応開始剤は、有機アルカリ金属化合物、好ましくはリチウム含有化合物を含む。アニオン性開始剤として有用なリチウム含有化合物の例としては、以下に限定されないが、ヒドロカルビルリチウム化合物、リチウムアミド化合物、及び類似のナトリウム化合物が挙げられる。本明細書に開示する第1及び第3の実施形態のうちの特定の実施形態では、アニオン性反応開始剤として使用されるリチウム化合物の量は、好ましくは、モノマー100gあたり0.2~20ミリモルの範囲内である。第1及び第3の実施形態のうちのある特定の実施形態では、官能化開始剤を利用する。官能化開始剤の非限定例としては、1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ホウ素、ケイ素、硫黄、スズ及びリン原子)、又は上記の、多くの場合、任意でジイソプロペニルベンゼンなどの化合物によりあらかじめ反応させた1個以上の窒素原子(例えば、置換アルジミン、ケチミン、二級アミンなど)を含有する複素環式基を更に含む、有機アルカリ金属化合物(例えば、有機リチウム化合物)が挙げられる。多数の官能性開始剤は、当分野において公知である。例示的なものは、米国特許第5,153,159号、同第5,332,810号、同第5,329,005号、同第5,578,542号、同第5,393,721号、同第5,698,464号、同第5,491,230号、同第5,521,309号、同第5,496,940号、同第5,567,815号、同第5,574,109号、同第5,786,441号、同第7,153,919号、同第7,868,110号、及び米国特許出願公開第2011-0112263号に開示されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。第1及び第3の実施形態のうちのある特定の実施形態では、官能性窒素含有開始剤が利用され、非限定的な例としては、環状アミン、特にアゼチジンなどの環状二級アミン;ピロリジン;ピペリジン;モルホリン;N-アルキルピペラジン;ヘキサメチレンイミン;ヘプタメチレンイミン、及びドデカメチレンイミンが挙げられる。第1及び第3の実施形態のうちのある特定の実施形態では、アニオン性開始剤は、好ましくは、官能化されていない。第1~第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、使用されるアニオン性開始剤は、いかなる窒素原子も含まない。このような開始剤はまた、いかなる窒素原子も欠如しているとして説明することができる。
【0057】
第1及び第3の実施形態のプロセスでアニオン性開始剤として使用するのに好適なヒドロカルビルリチウム化合物の非限定例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼン及びブチルリチウムの反応生成物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中で、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウムなどのアルキルリチウム化合物が好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。一般に、アニオン重合は、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中でモノマーを使用して行われ、この例としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素又はシクロ脂肪族炭化水素などの炭化水素溶媒が挙げられる。重合反応に不活性な炭化水素溶媒の非限定例としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、trans-2-ブテン、cis-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
第1及び第3の実施形態のプロセスのうちのある特定の実施形態では、アニオン重合方法を、ランダマイザー又は極性剤の存在下で実施する。ランダマイザーは、得られたポリマーのミクロ構造を制御することができ、例えばモノマーとして1,3-ブタジエンを使用して、ポリマーのブタジエン単位(又はブタジエン部分)中の1,2-結合の含有量が制御され、モノマーとして1,3-ブタジエン及びスチレンを使用するコポリマー中のブタジエン単位及びスチレン単位がランダム化されるなどのような作用を有する。ランダマイザー極性剤の非限定例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、線状及び環式オキソラニルアルカンオリゴマー(2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパンなど)、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレートなどが挙げられる。使用されるランダマイザー又は極性剤の量は、重合開始剤としての有機アルカリ金属化合物1モルあたり、好ましくは0.01~100モル濃度の範囲内である。
【0059】
第1及び第3の実施形態のプロセスのアニオン重合における重合温度は変化し得るが、好ましくは0~150℃、より好ましくは20~130℃の範囲内である。重合は、発生圧力下、又は好ましくは、反応モノマーを実質的に液相中に維持するのに十分な圧力において実施され得る。重合反応が発生圧力より高圧下で実施される場合、反応系は、不活性ガスによって好ましくは加圧される。好ましくは、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの任意の反応妨害物質を、重合反応開始前に除去する。
ゴム組成物
結合ポリマー生成物
【0060】
上で議論したとおり、本明細書において開示されている第5及び第6の実施形態は、(a)第2の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第1の実施形態のプロセスから得られた結合ポリマー生成物、あるいは(b)第4の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第3の実施形態のプロセスから得られる結合ポリマー生成物のいずれかを含むゴム組成物である。第1~第4の実施形態のさまざまな実施形態(すなわち、結合ポリマー生成物又は結合ポリマー生成物を調製するためのプロセスに関する)に関して本明細書に含まれる考察は、本明細書に完全に記載されているかのように、第5及び第6の実施形態の考察に完全に適用することが理解されるべきである。本明細書に開示される第5の実施形態によるゴム組成物は、以下:(a)10~100部の第2の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第1の実施形態のプロセスから得られた結合ポリマー生成物、(b)0~90部の少なくとも1種のジエンモノマー含有ポリマー、並びに(c)5~200phrのカーボンブラック、シリカ及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の補強充填材を含む。本明細書に開示される第6の実施形態によるゴム組成物は、以下:(a)10~100部の第4の実施形態の結合ポリマー生成物、又は第3の実施形態のプロセスから得られた結合ポリマー生成物、(b)0~90部の少なくとも1種のジエンモノマー含有ポリマー、並びに(c)5~200phrのカーボンブラック、シリカ及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の補強充填材を含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、以下に一層詳細に考察されている硬化パッケージを更に含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、硬化パッケージ、及び以下に考察されている他の成分のうちの少なくとも1つ(例えば、油、ワックス、加工助剤、抗酸化剤、粘着性樹脂、補強樹脂及びペプタイザ)を更に含む。
【0061】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、構成要素(a)、すなわち結合ポリマー生成物の量は、10~100部(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100部)、20~100部、30~100部、40~100部、50~100部、10~90部、10~80部、10~70部、10~60部、10部、20部、30部、40部、50部、60部、70部、80部、90部又は100部などの量で存在しているなどの、10~100部の範囲内でさまざまとなり得る。1つ又は2つ以上の結合ポリマー生成物は、このようなゴム組成物中の構成要素(a)として利用することができる。
【0062】
第5及び第6の実施形態によれば、構成要素(b)の量、すなわち、ゴム組成物中に存在している、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーの量は、構成要素(a)と組み合わせて、ポリマー(ゴム)の合計100部になるようにさまざまとなり得る。したがって、第3の実施形態によれば、構成要素(b)の量は、0~90部(例えば、0部、10部、20部、30部、40部、50部、60部、70部、80部又は90部)、10~90部、10~80部、10~70部、10~60部、20~90部、20~80部などとすることができる。
充填材
【0063】
第5及び第6の実施形態のゴム組成物中に含まれる補強充填材の5~200phrは、1種超の補強充填材を利用する場合、補強充填材の総量を指すことを理解すべきである。言い換えると、このようなゴム組成物は、カーボンブラック充填材、シリカ充填材、又はカーボンブラック充填材及びシリカ充填材の組み合わせを前述の指定量で含んでもよい。補強充填材はまた、以下により詳細に記載されるように、追加の補強充填材を含んでもよい。更に、各々のうちの1つ又は2つ以上、すなわち、1つのカーボンブラック、2つ以上のカーボンブラック、1つのカーボンブラック及び1つのシリカ、1つのカーボンブラック及び2つ以上のシリカ充填材、2つ以上のカーボンブラック及び1つのシリカ、又は2つ以上のカーボンブラック及び2つ以上のシリカ充填材を、補強充填材として前述の指定量で利用してもよいことを理解すべきである。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、カーボンブラック、シリカ及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の補強充填材を、10~200phr、20~200phr、30~200phr、40~200phr、50~200phr、10~180phr、20~180phr、30~180phr、40~180phr、10~150phr、20~150phr、30~150phr、40~150phr、10~120phr、20~120phr、30~120phr、40~120phr、10~100phr、20~100phr、30~100phr、40~100phr、10phr、20phr、30phr、40phr、50phr、60phr、70phr、80phr、90phr、100phr、110phr、120phr、130phr、140phr、150phr、160phr、170phr、180phr、190phr又は200phr含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも1つの補強シリカ充填材を、10~200phr、20~200phr、30~200phr、40~200phr、50~200phr、10~180phr、20~180phr、30~180phr、40~180phr、10~150phr、20~150phr、30~150phr、40~150phr、10~120phr、20~120phr、30~120phr、40~120phr、10~100phr、20~100phr、30~100phr、40~100phr、10phr、20phr、30phr、40phr、50phr、60phr、70phr、80phr、90phr、100phr、110phr、120phr、130phr、140phr、150phr、160phr、170phr、180phr、190phr又は200phr含み、ある特定のそのような実施形態では、ゴム組成物は、25未満、20未満、10未満、5未満、又は更には0phrのカーボンブラック充填材を含有する。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも1つの補強カーボンブラック充填材を、10~200phr、20~200phr、30~200phr、40~200phr、50~200phr、10~180phr、20~180phr、30~180phr、40~180phr、10~150phr、20~150phr、30~150phr、40~150phr、10~120phr、20~120phr、30~120phr、40~120phr、10~100phr、20~100phr、30~100phr、40~100phr、10phr、20phr、30phr、40phr、50phr、60phr、70phr、80phr、90phr、100phr、110phr、120phr、130phr、140phr、150phr、160phr、170phr、180phr、190phr又は200phr含み、ある特定のそのような実施形態では、ゴム組成物は、25未満、20未満、10未満、5未満、又は更には0phrのシリカ充填材を含有する。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、本ゴム組成物は、カーボンブラック又はシリカ以外の少なくとも1つの追加の補強充填材を含み、その例を以下で考察する。
【0064】
本明細書で使用するとき、「補強カーボンブラック充填材」、「補強シリカ充填材」、及び「補強充填材」について使用される用語「補強」は、一般に、補強として従来説明されている充填材、並びに半補強と従来説明される場合がある充填材の両方の充填材を包含すると理解されたい。従来、用語「補強充填材」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約100m2/g超、場合によっては、100m2/g超、約125m2/g超、125m2/g超、又は更に約150m2/g超、又は150m2/g超である、粒子材料を指すために使用される。あるいは(又は加えて)、用語「補強充填材」を伝統的に用いて、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する微粒子材料を指すためにも使用できる。伝統的に、用語「半補強充填材」は、粒径、表面積(N2SA)のいずれか、又は両方において、非補強充填材(以下で考察するとおり)と補強充填材との中間である充填材を指すために使用される。本明細書において開示されている第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、用語「補強充填材」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約20m2/g以上(20m2/g以上を含む)、約50m2/g超(50m2/g超を含む)、約100m2/g超(100m2/g超を含む)、及び約125m2/g超(125m2/g超を含む)である、粒子材料を指すために本明細書で使用される。本明細書において開示されている第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、用語「補強充填材」は、約10nm~約1000nm(10nm~1000nmを含む)、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する、粒子材料を指すために使用される。
シリカ及びシリカカップリング剤
【0065】
上述のとおり、本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填材は、シリカを含む。1つ又は2つ以上の補強シリカ充填材を利用してもよい。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適な補強シリカ充填材は周知である。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適な補強シリカ充填材の非限定例としては、以下に限定されないが、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適な他の補強シリカ充填材としては、以下に限定されないが、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4など)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4.3SiO4.5H2Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3.CaO2SiO2など)などが挙げられる。列挙された補強シリカ充填材の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填材が好ましい。このような補強シリカ充填材は、水中の化学反応により生成され、そこから一次凝集体へと強力に結合し、順次、二次凝集体へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。表面積は、BET法で測定すると、さまざまな補強シリカ充填材の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第5及び第6のある特定の実施形態では、ゴム組成物は、約32m2/g~約400m2/g(32m2/g~400m2/gを含む)の表面積(BET法で測定)を有する補強シリカ充填材を含み、約100m2/g~約300m2/g(100m2/g~300m2/gを含む)の範囲が好ましく、約150m2/g~約220m2/g(150m2/g~220m2/gを含む)の範囲が含まれる。本明細書に開示される第5及び第6のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、約5.5~約7、又は7を少し超える、好ましくは約5.5~約6.8のpHを有する補強シリカ充填材を含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用することができるいくつかの市販の補強シリカ充填材には、以下に限定されないが、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)製のHi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)215、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243などが挙げられる。同様に、多くの有用な商用グレードの異なる補強シリカ充填材が、Degussa Corporation(例えば、VN2、VN3)、Rhone Poulenc(例えば、Zeosil(商標)1165MP)、及びJ.M.Huber Corporationからも入手できる。
【0066】
本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填材がシリカ充填材を含む場合、1つ以上のシリカカップリング剤も(任意に)利用し得る。シリカカップリング剤は、ゴム組成物中のシリカ充填材の凝集の防止又は低減に有用である。シリカ充填材粒子の凝集は、ゴム組成物の粘度を上昇させると考えられ、したがって、この凝集を防止することにより、粘度が低下し、ゴム組成物の加工性及びブレンドが改善される。
【0067】
概して、シラン及び構成成分、又はポリマー、特に加硫性ポリマーと反応可能な部分を有するものなどの任意の従来のシリカカップリング剤の種類が使用可能である。シリカカップリング剤は、シリカとポリマーとの間の連結架橋として作用する。本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態における使用に好適なシリカカップリング剤としては、アルキルアルコキシ、メルカプト、ブロックされたメルカプト、硫化物含有(例えば、一硫化系アルコキシ含有、二硫化系アルコキシ含有、四硫化系アルコキシ含有)、アミノ、ビニル、エポキシ、及びこれらの組み合わせなどの基を含むものが挙げられる。ある種の実施形態では、シリカカップリング剤は、前処理されたシリカの形態でゴム組成物に添加されてもよい。当該前処理されたシリカは、ゴム組成物に添加される前にシランで前処理されている。前処理されたシリカを使用することにより、1つの成分に2つの成分(すなわち、シリカとシリカカップリング剤)を添加することが可能になり、これによって概してゴムの配合が容易になる傾向がある。
【0068】
アルキルアルコキシシランは、一般式R10
pSi(OR11)4-pを有しており、R11はそれぞれ、独立して、一価の有機基であり、pは整数1~3であるが、ただし、少なくとも1つのR10はアルキル基であることを条件とする。好ましくは、pは1である。概して、R10はそれぞれ、独立して、C1~C20脂肪族、C5~C20脂環式又はC6~C20芳香族を含む。R11はそれぞれ、独立して、C1~C6脂肪族を含む。ある種の例示的な実施形態では、R10はそれぞれ、独立して、C6~C15脂肪族を含み、追加的な実施形態では、R10はそれぞれ、独立して、C8~C14脂肪族を含む。メルカプトシランは、一般式HS-R13-Si(R14)(R15)2を有しており、R13は、二価の有機基であり、R14は、ハロゲン原子又はアルコキシ基であり、R15はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルコキシ基又は一価の有機基である。ハロゲンは塩素、臭素、フッ素又はヨウ素である。アルコキシ基は、好ましくは、1~3個の炭素原子を有する。ブロックされたメルカプトシランは、一般式B-S-R16-Si-X3を有しており、シリル基がシリカ-シラン反応におけるシリカとの反応に利用可能であり、ブロック基Bがメルカプト水素原子を置換して硫黄原子とポリマーとの反応を遮断する。上述の一般式において、Bは、不飽和ヘテロ原子の形態であり得る、又は単結合を介して硫黄に直接結合される炭素であり得るブロック基である。R16はC1~C6直鎖又は分岐アルキリデンであり、各Xは独立してC1~C4アルキル又はC1~C4アルコキシからなる群から選択される。
【0069】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態における使用に好適なアルキルアルコキシシランの非限定例としては、以下に限定されないが、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシ-シラン、エチルトリメトキシシラン、シクロヘキシル-トリブトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルオクチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシル-トリメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0070】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドの非限定例としては、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィド及びビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドが挙げられる。ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ジスルフィドの具体的な非限定例としては、以下に限定されないが、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(エチル-ジ-sec-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド及びそれらの混合物が挙げられる。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適なビス(トリアルコキシシリルオルガノ)テトラスルフィドシリカカップリング剤の非限定例としては、以下に限定されないが、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスフィド(tetrasufide)、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-ベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド及びそれらの混合物が挙げられる。ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドは、Evonik Degussa Corporation製のSi69(登録商標)として市販されている。
【0071】
本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適なメルカプトシランの非限定例としては、以下に限定されないが、1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、18-メルカプトオクタデシルジエトキシシクロロシラン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0072】
本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適なブロックされたメルカプトシランの非限定例としては、米国特許第6,127,468号、同第6,204,339号、同第6,528,673号、同第6,635,700号、同第6,649,684号、及び同第6,683,135号(これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。ブロックされたメルカプトシランの代表例としては、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、トリエトキシシリルメチル-チオアセテート、トリメトキシシリルメチルチオアセテート、トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート、メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート、ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルエトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート、2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジエトキシシリル-1-プロピル-チオアセテート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン、1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン、2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン、2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン、2-(2-トリエトキシ-シリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン、1-(1-オキソ-2-チア-5-トリエトキシシリルフェニル)安息香酸、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート、8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート、8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート、1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート、10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-9-デシルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート、1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート、3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピル-1-プロピルチオパルミテート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート、2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート、1-トリアセトキシシリル-1-エチル-チオアセテート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルジチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルジチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、トリス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)テトラチオホスフェート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)メチルトリチオホスホネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)エチルトリチオホスホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジメチルジチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルジエチルジチオホスフィネート、トリス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)トリチオホスフェート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-メチルジチオホスホネート、ビス-(3-メチルジメトキシシリル-1-プロピル)-エチルジチオホスホネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジメチルチオホスフィネート、3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルジエチルチオホスフィネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメチルチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルメタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルエタンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルベンゼンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルトルエンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルナフタレンチオスルホネート、3-トリエトキシシリル-1-プロピルキシレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルメチルチオサルフェート、トリエトキシシリルメチルメタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルエタンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルベンゼンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルトルエンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルナフタレンチオスルホネート、トリエトキシシリルメチルキシレンチオスルホネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。さまざまなブロックされたメルカプトシランの混合物を使用することができる。ある種の例示的な実施形態において使用するのに好適なブロックされたメルカプトシランの更なる例には、Momentive Performance Materials Inc.(Albany、NY)から市販されている、NXT(商標)シラン(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)である。
【0073】
本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態における使用に好適な前処理されたシリカ(即ち、シランで前処理されたシリカ)の非限定例として、メルカプトシランで前処理されたCiptane(登録商標)255 LD及びCiptane(登録商標)LP(PPG Industries製)シリカ、オルガノシランのビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(Si69)とUltrasil(登録商標)VN3シリカとの間の反応の生成物であるCoupsil(登録商標)8113(Degussa製)が挙げられるが、これらに限定されない。Coupsil 6508、Agilon 400(商標)シリカ(PPG Industries製)、Agilon 454(登録商標)シリカ(PPG Industries製)、及び458(登録商標)シリカ(PPG Industries製)。シリカが前処理されたシリカを含むこれらの実施形態では、前処理されたシリカは、シリカ充填材について既に開示されている量で使用される(すなわち、約5~約200phrなど)。
【0074】
第5及び第6の実施形態のうちの一実施形態においてシリカカップリング剤が利用される場合、使用される量はさまざまとなり得る。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、いかなるシリカカップリング剤も含んでいない。第5及び第6の実施形態のうちの他の実施形態では、シリカカップリング剤は、シリカ充填材に対するシリカカップリング剤の総量の比が、約1:100~約1:5(すなわち、シリカ100部に対して約0.1~約20重量部)(0.1:100~1:5を含む)、約1:100~約1:10(1:100~1:10を含む)、約1:100~約1:20(1:100~1:20を含む)、約1:100~約1:25(1:100~1:25を含む)、並びに約1:100~約0:100(1:100~0:100を含む)となるように、十分な量で存在する。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、約0.1~約10phrのシリカカップリング剤(0.1~10phr、約0.1~約5phr、0.1~5phr、約0.1~約3phr、及び0.1~3phrを含む)を含む。
カーボンブラック
【0075】
上で考察したとおり、第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填材はカーボンブラックを含む。1つ又は2つ以上のカーボンブラック補強充填材が利用され得る。以下に一層詳細に議論するとおり、大部分のカーボンブラックは、補強充填材であると一般に理解されている。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、全補強充填材の0~約50重量%(全補強充填材の0~50重量%、約5重量%~約30重量%、5重量%~30重量%、約5重量%~約20重量%、5重量%~20重量%、約10重量%~約30重量%、10重量%~30重量%、約10重量%~約20重量%及び10重量%~20重量%を含む)の量でカーボンブラックを含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、カーボンブラックは、ゴム組成物中に、全補強充填材の約30重量%以下(30重量%以下を含む)しか含まない。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、1つ以上のカーボンブラックを約5~約100phr(5~100phrを含む)含む。
【0076】
一般に、第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態のゴム組成物中の補強充填材として使用するための好適なカーボンブラックには、少なくとも約20m2/g(少なくとも20m2/gを含む)及び、より好ましくは、少なくとも約35m2/g~約200m2/g又はそれより高い(35m2/g~200m2/gを含む)の表面積を有するものを含めた、一般に入手可能な商用製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、中補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックの2つ以上の混合物を含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用するのに好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって指定されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
他の補強充填材
【0077】
上に議論されているとおり、第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、少なくとも1つの補強充填材は、カーボンブラック又はシリカ以外の補強充填材(すなわち、追加の補強充填材)を含む。1つ又は2つ以上の補強充填材剤を利用してもよい。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも補強カーボンブラック及び少なくとも1つの追加の補強充填材を含むか、少なくとも1つの補強シリカ充填剤と、少なくとも1つの追加の補強充填剤とを含むか、又は、少なくとも1つの補強カーボンブラックと、少なくとも1つの補強シリカ充填剤と、少なくとも1つの追加の補強充填剤とを含む。
【0078】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態のゴム組成物において使用するためのカーボンブラック又はシリカ以外の好適な補強充填材は、周知である。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態のゴム組成物において使用するのに好適な追加の補強充填材の非限定例としては、以下に限定されないが、アルミナ、水酸化アルミニウム、クレイ(補強等級)、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、補強酸化亜鉛及びそれらの組み合わせが挙げられる。
非補強充填材
【0079】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、以下の非補強充填材:クレイ(非補強等級)、グラファイト、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、デンプン、窒化ホウ素(非補強等級)、窒化ケイ素、窒化アルミニウム(非補強等級)、ケイ酸カルシウム及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを更に含む。用語「非補強充填材」は、約20m2/g未満(20m2/g未満を含める)、及びある種の実施形態では、約10m2/g未満(10m2/g未満を含める)となる窒素吸着比表面積(N2SA)を有する微粒子材料を指すために使用される。微粒子材料のN2SA表面積は、ASTM D6556を含めたさまざまな標準的方法に準拠して決定することができる。ある特定の実施形態では、用語「非補強充填材」は、代替として又は更に、約1000nmより大きな(1000nm超を含む)粒径を有する微粒子材料を指す。
硬化パッケージ
【0080】
本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、硬化パッケージを含む(更に含む)。一般的に、硬化パッケージは、少なくとも1種の加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、スコーチ防止剤の内の少なくとも1つを含む。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、硬化パッケージには、少なくとも1つの加硫剤、少なくとも1つの加硫促進剤、少なくとも1つの加硫活性化剤、並びに場合により加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤を含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として働く。さまざまな加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当分野で公知であり、所望の加硫特性に基づいて、当業者により選択され得る。
【0081】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態に使用するのに好適な加硫剤の種類の例としては、以下に限定されないが、硫黄、又は過酸化物をベースとする硬化性構成成分が挙げられる。したがって、ある種のこのような実施形態では、硬化性構成成分としては、硫黄系硬化剤又は過酸化物をベースとする硬化剤が挙げられる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。硬化に用いられる好適な加硫剤及びその他の組成物(例えば、加硫阻害剤、スコーチ防止剤)の一般的な開示として、Kirk-Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」第3版、Wiley Interscience、N.Y.、1982年、Vol.20、pp.365~468、特に「Vulcanization Agents and Auxiliary Materials」、pp.390~402、又はA.Y.Coran、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」第2版(1989年、John Wiley & Sons,Inc.)を参照可能であり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。一般に、加硫剤は、1~7.5phrを含む、1~5phr、好ましくは1~3.5phrを含む、0.1~10phrの範囲の量で使用される。
【0082】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。本明細書に開示される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態で使用に好適な加硫促進剤の実施例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバメート加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、使用される加硫促進剤の分量は、0.1~10phr、好ましくは0.5~5phrの範囲である。
【0083】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機構成成分及び有機構成成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及びこれらのそれぞれの亜鉛塩を含むさまざまな有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般的に、使用される加硫活性化剤の分量は、0.1~6phr、好ましくは0.5~4phrの範囲である。
【0084】
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、以下に限定されないが、Santogard製のPVI(シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。一般的に、加硫阻害剤の分量は、0.1~3phr、好ましくは0.5~2phrである。
他の成分
【0085】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において使用することができる(すなわち、任意選択的な)他の成分は、当業者に公知であり、油(加工用及び伸展用)、ワックス、加工助剤、抗酸化剤、粘着性樹脂、補強樹脂、ペプタイザ、及び硬化パッケージの構成要素が挙げられる。
【0086】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも1つの樹脂を約5~約60phr(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60phr)、5~60phr、5~20phr、約25~約60phr、25~60phr又は30~50phr含む。ある特定のこのような実施形態では、少なくとも1つの樹脂は、可塑性樹脂である。本明細書で使用するとき、可塑性樹脂という用語は、室温(23℃)において固体である化合物を指し、通常、少なくとも5phrとなる使用される量で、ゴム組成物中で混和性である。一般に、可塑性樹脂は希釈剤として作用し、一般に、非混和性である粘着性樹脂と対比的なものとなり得、移動してゴム組成物の表面に粘性をもたらすことができる。可塑性樹脂が利用される第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、可塑性樹脂は、炭化水素樹脂を含み、この中に含まれているモノマーに応じて、脂肪族タイプ、芳香族タイプ、又は脂肪族/芳香族タイプとすることができる。第5及び第6の実施形態のゴム組成物において使用するのに好適な可塑性樹脂の例としては、以下に限定されないが、シクロペンタジエン(CPDと略称)又はジシクロペンタジエン(DCPDとして略称)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びC5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる。このような樹脂は、例えば、個々に、又は組み合わせて使用することができる。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、以下:30℃(好ましくは、40℃超及び/又は120℃以下若しくは100℃以下)のTg、400~2000グラム/モル(好ましくは、500~2000グラム/モル)の数平均分子量(Mn)、及び3未満(好ましくは、2未満)の多分散度指数(PI)(PI=Mw/Mnであり、Mwは、樹脂の重量平均分子量である)のうちの少なくとも1つを満足する可塑性樹脂が使用される。樹脂のTgは、ASTM D3418(1999)に準拠して、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。樹脂のMw、Mn、及びPIは、THF、35℃を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定することができ、濃度1g/1、流速1ミリリットル/分、注入前に0.45μmの気孔率を有するフィルターを通して濾過した溶液、スチレン-ブタジエン標準によるムーア(Moore)較正、一連の3つの「Waters」カラムのセット(「Styragel」HR4E、HR1、及びHR0.5)、示差屈折率計(「Waters 2410」)及びその関連する操作ソフトウェア(「Waters Empower」)による検出。
【0087】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、1~15phr、1~10phr、又は1~5phrの量で、粘着性樹脂を含む。例示的な粘着性樹脂としては、以下に限定されないが、ロジン及びその誘導体、炭化水素樹脂及びフェノール-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。1つ又は2つ以上の種類、並びに1つ又は2つ以上の粘着性樹脂が、第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態において利用することができる。粘着性樹脂は、一般に、室温(23℃)で液体である(油など)のとは対照的に、室温で固体(又は、半固体)であろう。ロジン型樹脂の例示的な種類としては、以下に限定されないが、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ロジンエステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例示的な種類の炭化水素樹脂としては、シクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペン/フェノールホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5又はC9部分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、アルファ-メチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な種類のフェノール-ホルムアルデヒド樹脂としては、以下に限定されないが、アルキルフェノールを含有するものが挙げられる。
【0088】
各種抗酸化剤は当業者には周知であり、第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態のゴム組成物に利用してもよく、この例としては、ある特定のワックス、フェノール系抗酸化剤、アミンフェノール系抗酸化剤、ヒドロキノン抗酸化剤、アルキルジアミン抗酸化剤、及びN-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)又はN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-フェニレンジアミン(6PPD)などのアミン化合物抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。1つ又は2つ以上の種類並びに各種類の1つ又は2つ以上を、第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態に利用してもよい。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、使用される抗酸化剤(複数可)の総量は、1~5phrである。
【0089】
芳香族、ナフテン系、及び低PCA油(石油由来又は植物由来)が挙げられるがこれらに限定されない、さまざまな種類の加工油及び伸展油を利用してもよい。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含有物を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,62nd editionに見出すことができる。好適な石油由来の低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。好適なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。好適なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。好適な重ナフテン系油は、SHELLFELX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。好適な低PCA油としてはまた、野菜、木の実及び種子から採取できるものなど、さまざまな植物起源の油も挙げられる。非限定例としては、以下に限定されないが、ダイズ油、ヒマワリ油(高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられる。前述の加工油を、伸展油として、すなわち、油展ポリマー又はコポリマーの調製のために、又は加工油若しくは遊離油(free oil)として使用することもできる。一般に、タイヤ構成要素におけるゴム組成物の大部分の使用に関すると、本明細書において開示されているゴム組成物中で使用される油(加工油及び任意の伸展油)の総量は、1~70phr(例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70phr)、約2~約60phr、2~60phr、約3~約50phr及び3~50phrを含めた、約1~約70phrの範囲となる。しかし、ある種の用途では、本明細書において開示されているゴム組成物及び方法において使用される油(加工油及び任意の伸展油)の総量は、かなり高く、最大で175phr、最大で約150phr、最大で150phr、最大で約100phr及び最大で100phrを含めて、最大で約175phr(例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170又は175phr)の範囲となる。
ゴム組成物の調製
【0090】
本明細書に開示される第5及び第6の実施形態によるゴム組成物の調製に関与する特定の工程は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ段階及び最終生産用混合段階で成分を混合することを含む従来行われている方法のステップである。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の成分(上で開示のとおり)を、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらの成分をバンバリーミキサー又はロール機で共に混練することなどによって、組み合わせることで調製される。このような方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階とを含む。非生産用マスターバッチ段階という語句は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階(単数又は複数)であると理解されている。用語、最終生産用混合段階も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、1を超える非生産用マスターバッチ混合段階を含むプロセスにより調製される。
【0091】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、マスターバッチ混合段階は、タンデム混合又は相互噛合混合のうちの少なくとも1つを含む。タンデム混合は、2つの混合チャンバを有し、各チャンバが1組の混合用ローターを有する、ミキサーを使用することを含むものとして理解することができ、一般に、2つの混合チャンバは、一次ミキサーである上部混合器と一緒に積層され、下部ミキサーは、上部又は一次ミキサーからバッチを受け入れる。ある特定の実施形態では、一次ミキサーは噛み合うローターを利用し、他の実施形態では、一次ミキサーは接線方向のローターを利用する。好ましくは、下部ミキサーは、噛み合うローターを利用する。噛み合い混合は、噛み合うローターを有するミキサーの使用を含むものとして理解され得る。噛み合うローターとは、ローターが互いに噛み合うように、セット内の1つのローターの大径が、セット内の対向するローターの小径と相互作用する。噛み合うローターは、ローター間の相互作用により、均一の速度で駆動されなければならない。噛み合うローターとは対照的に、接線方向ローターとは、各々のローターが、側面と称され得る空洞内で互いに独立して回転する、1組のローターを指す。一般に、接線方向のローターを有するミキサーは、ラムを含むのに対し、ラムは、噛み合うローターを有するミキサーでは必要ではない。
【0092】
一般に、ゴム(又はポリマー)及び少なくとも1種の補強充填材(及び任意のシランカップリング剤及び油)を非生産用又はマスターバッチ混合段階(単数又は複数)で添加する。一般に、硬化パッケージの少なくとも加硫剤成分及び加硫促進成分を最終又は生産用混合段階で添加する。
【0093】
第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、約130℃~約200℃の温度で実施する少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階を使用して調製される。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の望ましくない事前硬化を回避するために加硫温度を下回る温度で実施する最終生産用混合段階を使用して調製される。したがって、生産用又は最終混合段階の温度は、約120℃を超えるべきではなく、通常、約40℃~約120℃、又は約60℃~約110℃、とりわけ約75℃~約100℃である。第5及び第6の実施形態のうちのある特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも1回の非生産用混合段階と少なくとも1回の生産用混合段階とを含む方法によって調製される。第5又は第6の実施形態のゴム組成物がカーボンブラック以外の(又はそれに加えた)充填材を含む場合、他の充填材の一部又は全ての個々の添加につき別個の再ミル粉砕段階を使用してもよい。この段階は、多くの場合、マスターバッチ段階で採用される温度と同様であるが、多くの場合わずかに低い温度で実施され、すなわち、約90℃から約150℃の落下温度まで上昇させる。
タイヤ及びタイヤトレッド
【0094】
追加の実施形態(すなわち、第7の実施形態及び第8の実施形態)もまた、本明細書に開示されると考えることができる。第7及び第8の実施形態は、第5又は第6の実施形態のゴム組成物を含むタイヤ構成要素に関する。上述のように、第5の実施形態のゴム組成物は、第2の実施形態の結合ポリマー生成物又は第1の実施形態のプロセスから得られる結合ポリマー生成物を利用し、第6の実施形態のゴム組成物は、第4の実施形態の結合ポリマー生成物又は第3の実施形態のプロセスから得られる結合ポリマー生成物を利用する。したがって、本明細書で開示される第7及び第8の実施形態は、あたかもそれらの変形がこの項目において完全に繰り返されているかのごとく、第1~第6の実施形態に関して本明細書に提示されている記載により、さまざまとなる結合ポリマー生成物を含むことが理解されるべきである。第7及び第8の実施形態のうちのある特定の実施形態では、タイヤ構成要素は、タイヤトレッドを含む。
改善された特性
【0095】
第2の実施形態の結合ポリマー生成物、第4の実施形態の結合ポリマー生成物、第1の実施形態のプロセスから得られる結合ポリマー生成物、又は第3の実施形態のプロセスから得られる結合したポリマー生成物の、ゴム組成物(例えば、本明細書に開示される第5又は第6の実施形態による)における使用は、そのゴム組成物において改善された特性をもたらし得る。改善された特性としては、転がり抵抗、雪若しくは氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、又は結合ゴム(bound rubber)のうちの1つ以上を挙げることができる。減少又は増加率は、本開示による結合ポリマー生成物を使用してゴム組成物についての値を、結合ポリマー生成物を非官能化ポリマーで置き換えている(本明細書の実施例セクションでより詳細に記載されるような)が、その点を除けば同じ成分を含有する対照ゴム組成物についての値と比較することによって計算することができる。
【0096】
ある特定の実施形態では、第1~第4の実施形態のいずれかによる結合ポリマー生成物の使用(例えば、第5又は第6の実施形態におけるような)は、少なくとも10%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上)、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、10~50%、10~40%、20~50%、又は20~40%の℃におけるtanδの測定値の低減によって証明されるように、転がり抵抗における改善をもたらす。非限定的な例として、10%の60℃におけるtanδの減少は、(以下に更に記載される指数計算に従って)90の指数値によって証明されるであろう。
【0097】
ある特定の実施形態では、第1~第4の実施形態のいずれかによる結合ポリマー生成物の使用(例えば、第5又は第6の実施形態におけるような)は、少なくとも10%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%以上)、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、10~60%、10~50%、20~50%、又は20~40%の、前に述べたように、雪若しくは氷牽引摩擦における改善(-20℃におけるG*の測定値の低減によって証明されるような)と組み合わされる、転がり抵抗における改善(60℃におけるtanδの測定値の低減によって証明されるような)をもたらす。非限定的な例として、40%の-20℃におけるG*の減少は、60の指数値によって証明されるであろう。
【0098】
ある特定の実施形態では、第1~第4の実施形態のいずれかによる結合ポリマー生成物の使用(例えば、第5又は第6の実施形態におけるような)は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%(例えば、5%、10%、15%以上)、5~20%、又は5~15%の、前に述べたように、湿潤牽引摩擦における改善(0℃におけるtanδの測定値の増加によって証明されるような)と組み合わされる、転がり抵抗における改善(60℃におけるtanδの測定値の低減によって証明されるような)をもたらす。ある特定の実施形態では、湿潤牽引摩擦は改善されない(例えば、0℃におけるtanδは増加しない)が、0℃におけるtanδにおけるいかなる減少も、対照組成物と比較して、5%以下、10%以下、又は15%以下に制限される。非限定的な例として、5%の0℃におけるtanδの減少は、95の指数値によって証明されるであろう。ある特定の実施形態では、前述の0℃におけるtanδの増加又は制限された減少は、前述の転がり抵抗の改善と組み合わされるだけでなく、前述の氷若しくは雪牽引摩擦における改善とも組み合わされる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、本開示の特定の及び代表的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に説明の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特定の実施例に対する多くの変更が可能である。官能化化合物(すなわち、式(II)及び(III)による化合物)が、実施例で利用される量以外でかつ異なる量で利用することができること、ビニル基官能化アミノシラン化合物(すなわち、式Iによる化合物)が、実施例で利用される量以外でかつ異なる量で利用することができること、実施例で使用される特定の結合ポリマー生成物が、異なる量で、及び/又はゴム、充填材、並びに実施例で使用されるものとは異なる量、組成、又はその両方が異なる他の成分と共に利用することができること(すなわち、先行する段落で十分に開示されているとおり)、並びに種類、量、又はその両方が異なる結合ポリマー生成物を、実施例で使用されるゴム、充填材、及び他の成分、並びに実施例で使用されるものとは量、組成、又はその両方が異なるゴム、充填材、及び他の成分と共に利用できること(すなわち、先行する段落で十分に開示されるとおり)を具体的に理解されたい。
【0100】
下記により詳細に説明するように、さまざまなポリマーが調製され、ある特定のポリマーが、式(I)の化合物及び式(II)の化合物を利用し、他のものが式(I)の化合物及び式(III)の化合物を利用する、さまざまなポリマーを調製した。実施例1、5、及び15は、これらの実施例におけるポリマーが、式(I)、(II)、又は(III)に対応する任意の化合物なしに調製されたため、対照と見なすことができる。実施例2、4、11は、式(I)の化合物及び式(III)の化合物を利用する。実施例3、6~10、12~14、及び16~17は、式(I)の化合物及び式(II)の化合物を利用する。
【0101】
実施例1:撹拌器を装備した2ガロンのN
2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。34分後、バッチ温度は、68.6℃でピークに達した。更に60分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表1に列記した特性を有する実施例1のポリマーになった。このポリマーは、20%のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。実施例1のポリマーは、対照ポリマーと見なすことができる。
【表1】
【0102】
実施例2:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。33分後、バッチ温度は、68.5℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.8当量対Li)2.83ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に35分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、1.40ミリリットルの「未希釈の」(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(3.51モル濃度、0.9当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.65ミリリットルの「未希釈の」3-イソシアノプロピルトリメトキシシラン(5.22モル濃度、0.6当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表2に列記した特性を有する実施例2のポリマーになった。このポリマーは、20%のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0103】
実施例3:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。33分後、バッチ温度は、69.3℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.8当量対Li)2.83ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.19ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.15当量対Li)を添加した。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.53ミリリットルの「未希釈の」2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(4.23モル濃度、0.4当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表3に列記した特性を有する3のポリマーになった。このポリマーもまた、21のスチレンモノマー含有量及び37%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有した。
【0104】
実施例4:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。34分後、バッチ温度は、69.6℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.56当量対Li)2.0ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.19ミリリットルの「未希釈の」(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(3.51モル濃度、0.12当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.58ミリリットルの「未希釈の」(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン(3.94モル濃度、0.4当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表4に列記した特性を有する実施例4のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0105】
実施例5:撹拌器を装備した2ガロンのN
2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。34分後、バッチ温度は、68.6℃でピークに達した。更に60分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表5に列記した特性を有する実施例5のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。実施例5のポリマーは、対照ポリマーと見なすことができる。
【表5】
【0106】
実施例6:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。30分後、バッチ温度は、69.1℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.4当量対Li)1.4ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.19ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.15当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.53ミリリットルの「未希釈の」2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(4.32モル濃度、0.4当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表6に列記した特性を有する実施例6のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0107】
実施例7:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。30分後、バッチ温度は、69.1℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.4当量対Li)1.4ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.19ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.15当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、2.27ミリリットルの「未希釈の」3-(N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル)メチルジエトキシシラン(1モル濃度、0.4当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表6に列記した特性を有する実施例7のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0108】
実施例8:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。30分後、バッチ温度は、69.1℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.4当量対Li)1.4ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.19ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.15当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.76ミリリットルの「未希釈の」3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン(3.0モル濃度、0.4当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表6に列記した特性を有する実施例8のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0109】
実施例9:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。30分後、バッチ温度は、69.1℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.4当量対Li)1.4ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に40分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.19ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.15当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、1.54ミリリットルの「未希釈の」ヘキサメチルシクロトリシロキサン(1.48モル濃度、0.4当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表6に列記した特性を有する実施例9のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0110】
実施例10:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。28分後、バッチ温度は、69.1℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.3当量対Li)1.06ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.22ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.18当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.46ミリリットルの「未希釈の」N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(3.66モル濃度、0.3当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表7に列記した特性を有する実施例10のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0111】
実施例11:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。28分後、バッチ温度は、68.4℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.3当量対Li)1.06ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.23ミリリットルの「未希釈の」(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(3.51モル濃度、0.14当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.46ミリリットルの「未希釈の」N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(3.66モル濃度、0.3当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表7に列記した特性を有する実施例11のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0112】
実施例12:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。29分後、バッチ温度は、70.3℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.3当量対Li)1.06ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.18ミリリットルの「未希釈の」3-シアノプロピルトリメトキシシラン(5.24モル濃度、0.18当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.46ミリリットルの「未希釈の」N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(3.66モル濃度、0.3当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表8に列記した特性を有する実施例12のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0113】
実施例13:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。27分後、バッチ温度は、69.0℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.4当量対Li)1.42ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に45分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.22ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.18当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.46ミリリットルの「未希釈の」N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(3.66モル濃度、0.3当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表8に列記した特性を有する実施例13のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0114】
実施例14:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.49キログラムのヘキサン、0.41キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.53キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の3.55ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.45ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。28分後、バッチ温度は、69.4℃でピークに達した。ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.5当量対Li)1.77ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に45分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.22ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.18当量対Li)を添加した。更に30分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.46ミリリットルの「未希釈の」N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(3.66モル濃度、0.3当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、以下の表8に列記した特性を有する実施例14のポリマーになった。このポリマーは、20のスチレンモノマー含有量及び55%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。
【0115】
実施例15:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.43キログラムのヘキサン、0.20キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.79キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。次いで、この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の6.8ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.25ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。バッチ温度をピークに達するようにして、次いで、更に60分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、実施例15のポリマーになった。このポリマーは、10のスチレンモノマー含有量及び40%のブタジエン部分中の1,2-ビニル結合含有量を有することを目標とした。実施例15のポリマーは、対照ポリマーと見なすことができる。
【0116】
実施例16:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.43キログラムのヘキサン、0.20キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)及び2.79キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の6.8ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.25ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。バッチ温度をピークに達するようにして、次いで、ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.5当量対Li)3.4ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に45分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.39ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.16当量対Li)を添加した。更に35分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.88ミリリットルの「未希釈の」2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(4.32モル濃度、0.35当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、実施例16のポリマーになった。実施例16のポリマーについての微細構造データは利用できなかったが、標的スチレンモノマー含有量は10%であって、ブタジエン部分中の標的ビニル結合含有量は40%であって、目的のMwは、62,500グラム/モルであった。
【0117】
実施例17:撹拌器を装備した2ガロンのN2パージした反応器に、1.43キログラムのヘキサン、0.20キログラムのスチレン(ヘキサン中33.0重量%)、及び2.79キログラムの1,3-ブタジエン(ヘキサン中21.9重量%)を添加した。この反応器に、ヘキサン20ミリリットル中の6.8ミリリットルのn-ブチル-リチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)、続いて20ミリリットルのヘキサン中の1.25ミリリットルの2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中1.6モル濃度)を投入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。バッチ温度をピークに達するようにして、次いで、ピーク温度になった直後にヘキサン20ミリリットル中に希釈したMASS(ヘキサン中1.6モル濃度、0.5当量対Li)3.4ミリリットルを添加した(転化率は、添加時に約80%であった)。更に45分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、0.39ミリリットルの「未希釈の」2-シアノエチルトリエトキシシラン(4.5モル濃度、0.16当量対Li)を添加した。更に35分後、20ミリリットルのヘキサン中で希釈した、1.04ミリリットルの「未希釈の」N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(3.66モル濃度、0.35当量対Li)を添加した。更に35分後、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにポリマーセメントを滴下し、ドラムを乾燥すると、実施例17のポリマーになった。実施例17のポリマーについての微細構造データは利用できなかったが、標的スチレンモノマー含有量は10%であって、ブタジエン部分中の標的ビニル結合含有量は40%であって、目的のMwは、62,500グラム/モルであった。
【0118】
ゴム組成物:ゴム組成物は、100部の上記で調製したSBRコポリマー(すなわち、実施例1~17)のうちの1つを使用して調製し、ある特定のゴム組成物は、補強充填材としてカーボンブラックを含有し、他のものは、補強充填材としてシリカを含有した。合計で29個のゴム組成物を調製し、これらを100~128と番号付けした。表9は、配合物がカーボンブラック又はシリカ、並びにゴム組成物の調製に使用される特定のSBRコポリマーを含有するかどうかを特定する。カーボンブラック配合成分及びシリカ配合成分が、表10に示されており、成分の量は、phrで一覧表示されている。これらの組成物を調製するための混合手順は、以下の表11及び表12に示されており、表11は、カーボンブラック含有実施例を対象とし、表12は、シリカ含有実施例を対象としている。実施例101、104、110、115、118、121、125、及び128は、本開示による結合ポリマー生成物を含有しないので、対照となる。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0119】
ゴム組成物のある特定の特性を測定し、以下の表13及び14に報告する。本開示によるゴム組成物(例えば、実施例100)の値を対照ゴム組成物(例えば、実施例101)の値により除算することによって、指数値を算出した。
【0120】
60℃並びに0℃におけるtanδ、-20℃におけるG*、及び30℃におけるG’値を、TA InstrumentsからのAdvanced Rheometric Expansion System(ARES)で実施した温度掃引試験を用いて測定した。試験標本は、47mmの長さ、2mmの厚さ、及び12.7mmの幅を有する矩形形状を有した。試験機上のグリップ間の標本の長さ、すなわち間隙はおよそ27mmであった。試験は、3.14rad/秒の周波数を使用して行った。温度は-115℃で開始し、100℃まで上げた。ひずみは、-115℃~-11℃の温度範囲に対して0.25%、-10℃~100℃の温度範囲に対して2%であった。ゴム組成物の60℃における指標tanδは、タイヤトレッドに組み込まれる場合の、その転がり抵抗の指標である。ゴム組成物の0℃におけるtanδは、タイヤトレッドに組み込まれる場合の、その湿潤牽引摩擦の指標である。ゴム組成物の-20℃におけるG*は、タイヤトレッドに組み込まれる場合の、その氷若しくは雪牽引摩擦の指標である。ゴム組成物の30℃におけるG’は、タイヤトレッドに組み込まれる場合の、その乾式操縦性の指標である。
【0121】
ゴム組成物の本明細書において開示されているムーニー粘度を、大型ローター、1分間の加温時間、及び4分間の稼働時間を伴うAlpha Technologies製ムーニー粘度計を使用して130℃にて決定したため、これらはムーニー1+4又はML1+4と称される。より詳細には、ローターが始動する前に1分間、130℃に各バッチからの試料を予備加熱することにより、ムーニー粘度を測定した。ローターが始動して4分後に、トルクとして、各試料のムーニー粘度を記録した。ポリマーに関して本明細書に開示されているムーニー粘度は、特に上記のとおりの手順を使用して、100℃で決定した。
【0122】
結合ゴムの含量試験を使用して、各ゴム組成物における、充填材粒子に結合したポリマーのパーセントを決定した。大過剰のトルエン中における未硬化素材の小試験片を3日間浸漬させることにより、結合ゴムを測定した。溶媒により、可溶性ゴムを試料から抽出した。3日後、過剰なトルエンを排液して、試料を空気乾燥させ、次にオーブン内で約100℃にて一定の重量へと乾燥させた。残留する試験片は、充填材及び元のゴムのいくらかを含有する弱い凝集性ゲルを形成する。充填材を伴い残留するゴムの量は、結合ゴムである。結合ゴムの含量は、次に以下の式に従って計算される。
【数1】
Wdは乾燥ゲルの重量であり、Fはゲル中の充填材の重量又は溶媒不溶性材料(元の試料中の充填材の重量と同一)であり、またRは元の試料中のポリマーの重量である。ゴム(ポリマー)と充填材との間の、増大し、かつ有益な相互作用を示す比較的高い結合ゴム百分率を伴う結合ゴムの百分率は、ゴム組成物中のゴム(ポリマー)と充填材との間の相互作用の測定手段を提供する。
【0123】
カップリング%及びTgを上記のとおり(すなわち、それぞれGPC及びDSCによる)測定した。
【表13】
【0124】
表13の指数値を計算するとき、組成物105を組成物100の対照として使用し、組成物105を組成物101~104の対照として使用し、組成物108を組成物106及び107の対照として使用した。測定値を対照値で除算し、その結果を100で乗算することによって、指数値を計算した。非限定的な例として、測定値が100であり、対照値が50である場合、指数値は200であろう。したがって、100を超える指数値は、それぞれの対照値と比較して測定値における増加を示す。当業者であれば理解されるように、ある特定の特性は、それらの値が増加すると(すなわち、乾燥処理、湿潤牽引摩擦、及び結合ゴム%)改善されると考えられ、一方、他の特性は、それらの値が減少すると(すなわち、転がり抵抗及び雪若しくは氷牽引摩擦)改善されると考えられる。
【0125】
上記表13のデータから見られるように、本発明のポリマーの使用は、60℃におけるより低いtanδを一貫してもたらすことにより、タイヤトレッドにこれらのゴム組成物を使用することで、対照ゴム組成物の使用よりも低い転がり抵抗を有するタイヤが得られることを示している。更に、本発明のポリマーの使用はまた、-20℃でより低いG*をもたらし、これは、タイヤトレッドにおけるこれらのゴム組成物の使用により、改善された雪若しくは氷牽引摩擦を有するタイヤが得られる。転がり抵抗の改善を達成しつつ、雪若しくは氷牽引摩擦の改善も達成することは予想外であるが、転がり抵抗の改善は、通常、より不良な雪若しくは氷牽引摩擦をもたらすと予想されるためである。更に、本発明のポリマーの使用は、ゴム組成物中のより良好なゴム-充填材相互作用を示す、より高い割合の結合ゴムをもたらす。
【0126】
配合物109~128を有するゴム組成物は、それぞれ80phrのシリカを含有していた。これらのゴム組成物の特性を、以下の表14-A、14-B、及び14-Cに列挙する。
【表14】
【0127】
表14-Aの指数値を計算するとき、組成物110を組成物109の対照として使用し、組成物112を組成物111の対照として使用し、組成物110を組成物113の対照として使用した(組成物110が組成物113と同じ順序で混合されなかったとしても)。測定値を対照値で除算し、その結果を上で説明したように100で乗算することによって、指数値を再度計算した。
【0128】
上記表14-Aのデータから見られるように、本発明のポリマーの使用は、60℃におけるより低いtanδを一貫してもたらすことにより、タイヤトレッドにこれらのゴム組成物を使用することで、対照ゴム組成物の使用よりも低い転がり抵抗を有するタイヤが得られることを示している。更に、本発明のポリマーの使用はまた、-20℃でより低いG
*をもたらし、これは、タイヤトレッドにおけるこれらのゴム組成物の使用により、改善された雪若しくは氷牽引摩擦を有するタイヤが得られる。転がり抵抗の改善を達成しつつ、雪若しくは氷牽引摩擦の改善も達成することは予想外であるが、転がり抵抗の改善は、通常、より不良な雪若しくは氷牽引摩擦をもたらすと予想されるためである。更に、本発明のポリマーの使用は、ゴム組成物中のより良好なゴム-充填材相互作用を示す、より高い割合の結合ゴムをもたらす。
【表15】
【0129】
表14-Bの指数値を計算するとき、組成物118を組成物114~117の対照として使用し、組成物121を組成物119及び120の対照として使用した。測定値を対照値で除算し、その結果を上で説明したように100で乗算することによって、指数値を再度計算した。
【0130】
上記表14-Bのデータから見られるように、本発明のポリマーの使用は、60℃におけるより低いtanδを一貫してもたらすことにより、タイヤトレッドにこれらのゴム組成物を使用することで、対照ゴム組成物の使用よりも低い転がり抵抗を有するタイヤが得られることを示している。更に、本発明のポリマーの使用はまた、-20℃でより低いG
*をもたらし、これは、タイヤトレッドにおけるこれらのゴム組成物の使用により、改善された雪若しくは氷牽引摩擦を有するタイヤが得られる。転がり抵抗の改善を達成しつつ、雪若しくは氷牽引摩擦の改善も達成することは予想外であるが、転がり抵抗の改善は、通常、より不良な雪若しくは氷牽引摩擦をもたらすと予想されるためである。更に、本発明のポリマーの使用は、ゴム組成物中のより良好なゴム-充填材相互作用を示す、より高い割合の結合ゴムをもたらす。
【表16】
【0131】
表14-Cの指数値を計算するとき、組成物125を組成物122~124の対照として使用し、組成物128を組成物126及び127の対照として使用した。測定値を対照値で除算し、その結果を上で説明したように100で乗算することによって、指数値を再度計算した。
【0132】
上記表14-Cのデータから見られるように、本発明のポリマーの使用は、60℃におけるより低いtanδを一貫してもたらすことにより、タイヤトレッドにこれらのゴム組成物を使用することで、対照ゴム組成物の使用よりも低い転がり抵抗を有するタイヤが得られることを示している。更に、本発明のポリマーの使用はまた、-20℃でより低いG*をもたらし、これは、タイヤトレッドにおけるこれらのゴム組成物の使用により、改善された雪若しくは氷牽引摩擦を有するタイヤが得られる。転がり抵抗の改善を達成しつつ、雪若しくは氷牽引摩擦の改善も達成することは予想外であるが、転がり抵抗の改善は、通常、より不良な雪若しくは氷牽引摩擦をもたらすと予想されるためである。更に、本発明のポリマーの使用は、ゴム組成物中のより良好なゴム-充填材相互作用を示す、より高い割合の結合ゴムをもたらす。
【0133】
本出願は、本明細書において開示されている組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。さまざまな単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
【0134】
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」の使用を含む場合がある。しかしながら、かかる語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ又は2つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、かかる記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「2つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、少なくとも記載される番号を意味するものと解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、一般に、このような構成は、当業者がその慣例を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるだろう。
【0135】
特許、特許出願、非特許文献を含むが、これらに限定されない全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
組成物及び方法のさまざまな態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、別の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書に開示されているさまざまな態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲に示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。