(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質およびその製造方法、前記正極活物質を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20221104BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221104BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2020534332
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 KR2018014278
(87)【国際公開番号】W WO2019124767
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0177562
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501265593
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】ファンボ、グン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ド ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヘ ウォン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020845(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021555(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137534(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137391(WO,A1)
【文献】特開2005-005105(JP,A)
【文献】特開2012-004097(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150945(WO,A1)
【文献】特表2014-506220(JP,A)
【文献】特開2016-222483(JP,A)
【文献】特表2015-506075(JP,A)
【文献】特開2015-115105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルト、およびマンガンを含むリチウム複合金属酸化物であり、
方位差(△g)30度以下でのEBSD分析時、ND軸を基準にして[001]方向に対する配向性が29%以上、34%以下であり、
方位差(△g)30度以下でのEBSD分析時、ND軸を基準にして[120]+[210]方向に対する配向性が71%以下であり、
方位差(△g)30度以下でのEBSD分析時、RD軸を基準にして[001]方向に対する配向性が18%以下であり、
方位差(△g)30度以下でのEBSD分析時、RD軸を基準にして[120]+[210]方向に対する配向性が82%以上であり、
球形度(断面長軸直径/短軸直径)が1.02~1.17であり、
25℃においてタップ密度2.1~2.5g/ccであり、
25℃において20
kN/cm
2の圧力で圧延時、密度が3.1~3.5g/ccである、正極活物質。
【請求項2】
方位差(△g)30度以下でのEBSD分析時、ND軸を基準にして[120]+[210]方向に対する配向性が67-71%であり、方位差(△g)30度以下でのEBSD分析時、RD軸を基準にして[001]方向に対する配向性が13~18%であり、RD軸を基準にして[120]+[210]方向に対する配向性が82-87%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
D50粒径が12.6-17.2μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
D50粒径に対するD10粒径の比率(D10/D50)が0.64~0.91である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
D25粒径に対するD10粒径の比率(D10/D25)が0.9~0.75である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
D50粒径に対するD90粒径の比率(D90/D50)が1.65~1.16である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
D75粒径に対するD90粒径の比率(D90/D75)が1.41~1.176である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
請求項1~請求項7のうちのいずれか一項に記載の正極活物質を製造する製造方法であって、
反応器内で、ニッケル塩、マンガン塩、およびコバルト塩を含む金属塩水溶液、アンモニア、および苛性ソーダを攪拌しながら共沈反応を誘導する段階;
前記共沈反応を誘導する段階によって、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含む複合金属水酸化物前駆体を収得する段階;および
前記複合金属水酸化物およびリチウム原料物質を混合後、焼成してリチウム複合酸化物を収得する段階;を含み、
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記金属塩水溶液内金属イオン総モル数に対する、前記アンモニアのモル数は、1:1.1~1:1.5[金属塩水溶液内金属イオンの総モル数:アンモニアのモル数]であり、
前記共沈反応を誘導する段階で、前記金属塩水溶液を連続的に投入し、前記アンモニアを定量注入し、前記反応器内pHが10.5~12が維持されるように前記苛性ソーダを投入するものである、正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記反応器内温度は25~55℃である、請求項8に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記反応器内温度は30~45℃である、請求項8~請求項9に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記反応器内前記金属塩溶液の滞留時間は30分~4時間である、請求項8~請求項10のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記反応器内前記金属塩溶液の滞留時間は30分~1時間である、請求項8~請求項
11のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記反応器内金属塩水溶液、アンモニア、および苛性ソーダの攪拌速度は、線速度で3m/sec~15ms/secである、請求項8~請求項12のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記共沈反応を誘導する段階;で、前記反応器内金属塩水溶液、アンモニア、および苛性ソーダの攪拌速度は、回転速度で80~200rpmである、請求項8~請求項13のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記共沈反応を誘導する段階;で、連続的に投入される金属塩水溶液の金属イオン総モル数:定量注入されるアンモニアのモル数]は1:1.1~1:1.2であり、前記反応器内pHは10.5~12.0の範囲で維持され、前記反応器内温度は30~45℃であり、前記反応器内前記金属塩溶液の滞留時間は30分~1時間であり、前記反応器内金属塩水溶液、アンモニア、および苛性ソーダの攪拌速度(線速度)は3m/sec~15ms/secである、請求項8~請求項14のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記共沈反応を誘導する段階;以前に、前記反応器にアンモニア、および苛性ソーダの混合溶液を投入して、前記反応器内部pHを10.5~12.0に制御する、請求項8~請求項15のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記共沈反応を誘導する段階;以前に、前記反応器にアンモニア、および苛性ソーダの混合溶液を投入して、前記反応器内部pHを10.5~12.0に制御する、請求項8~請求項16のうちのいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項18】
請求項1~請求項7のうちのいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極;負極;および電解質を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質およびその製造方法、前記正極活物質を含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池を構成する要素のうちの一つである正極活物質は、電池のエネルギー密度を発現するのに直接寄与するだけでなく、寿命特性などを決定する要因になる。これに関連して、ニッケル-コバルト-マンガンを基本とする三元系正極活物質に関する研究が最近活発に行われており、共沈法を用いた正極前駆体製造が主に活用されている。
共沈法を用いた三元系正極前駆体製造は、1-3M濃度の硫酸ニッケル、硫酸コバルト、マンガンコバルトを反応器に注入しながら錯化剤(Complexing agent)としてアンモニア溶液、沈殿剤として苛性ソーダを用いて共沈する方法を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般にリチウム二次電池に使用される三元系正極材用前駆体に配向性を付与することは、c軸方向がリチウムの挿入脱離が起こる方向と垂直に配列するようになって、配向性のない正極材に比べて容量、律速、サイクルなどの大部分の電気化学的な特性が優れると知られている。
しかし、配向性が付与された前駆体は前駆体に濃度勾配を与える場合に限って実現が可能であると知られており、これを実現するためには流入タンク内の金属イオンの濃度が変化しなければならないため、バッチ単位の工程運転のみが可能になる。
また、このようなバッチ工程を実現するためには、コアとシェルを構成する流入水タンクが2つ以上必要となる。したがって、従来の技術による配向性付与方式は、一般的な前駆体製造工程に比べて工程費が高いという短所を有している。
【0004】
本発明は、既存のバッチ反応器のみで実現が可能な配向性を連続式反応器でも実現するようにすることによって濃度勾配がない状況でも配向性を有する正極前駆体を製造することができる技術を提示しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
配向性を有する正極材を濃度勾配を通じてのみ可能であるという発見は経験に基盤を置いた配向性実現のための接近方法である。
本発明者は、濃度勾配の効果が前駆体の形成にどんな影響を与えるか分析して、濃度勾配が無い状況で前駆体の配向性を与えることができる効果を導出した。
【0006】
既存の一般的な配向性付与方法が共沈前駆体を製造する時に流入される金属イオンの濃度を変化させて前駆体を形成させる方法である反面、本発明は金属イオンの濃度変化でない工程変数を変化させることによって配向性を付与することができる方法に関するものである。
工程変数を変化させることによって配向性を付与するようになれば、従来の技術で配向性を付与するために使用したバッチ式工程を連続式工程に変更することができて、前駆体生産単価を著しく減少させることができる長所を有している。またバッチ式に適用する場合には、流入水である金属イオンの濃度を制御するために必要な2種以上の流入タンクを1種に減らすことによって製造単価を減少させ、精密な組成制御が不必要になって配向性前駆体を製造することに必要な時間制御およびポンプ制御などを簡略化することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、既存のバッチ反応器でのみ実現可能な配向性を連続式反応器でも実現するようにすることによって濃度勾配がない状況でも配向性を有する正極前駆体を製造することができる技術を提示しようとする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の特許請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。
【0009】
一般に、配向性正極前駆体を製造するためには、内部組成を主になすようになるコア溶液と、外部組成を主になすようになるシェル溶液を用いて前駆体を生成する。
具体的に、コア溶液で前駆体内部を一部生成した後、シェル溶液をコア溶液に投入して金属イオンの濃度を変化させ、変化された濃度の金属イオン溶液を反応器に投入することによって前駆体外部を生成するようになる。
この時、前駆体の内部から外部への濃度勾配が形成され配向性の特徴が示されるようになる。従来の技術は、前駆体に配向性を付与するために、濃度勾配を前駆体内に実現する工程を用いた。このような理由で、配向性ある正極材を実現するためにはバッチ式反応のみが適用可能であるという問題点を有していた。本発明は、濃度勾配でない工程条件を変化させて配向性正極材を製造することができる方法を提示するようにした。
【0010】
本発明の基本的な思想は、配向性の実現メカニズムを濃度勾配でないニッケル、マンガン、およびコバルトを基盤とする溶液内のイオンの溶解現象を過飽和度の概念に単純化し、これを実際工程に適用して配向性正極材を得ることができるのを原理としている。
一般に、三元系正極材に使用されるマンガン、コバルト、ニッケルイオンの場合、錯化剤(Complexing agent)が無い状態での共沈領域を計算してみれば、マンガンイオンの場合、pH7.5で沈殿が起こるようになり、コバルトイオンの場合、pH9.2、ニッケルイオンの場合、pH9.6以上で沈殿が起こるようになる。
【0011】
しかし、実際共沈条件であるアンモニアが存在する状況では、アンモニアと結合できるニッケルやコバルトの場合、pHが先に提示した値に比べてはるかに高いpH領域帯で沈殿が行われるようになる。このような理由は、アンモニアと錯体を成すことができるニッケルとコバルトイオンの場合、錯体の安定性を示す生成定数(Formation constant)が非常に高いためである。
アンモニアと結合された錯化合物は、アンモニアが存在しない時の共沈領域帯に比べて非常に高まるようになるだけでなく、アンモニアと錯体を成すことができるコバルトとニッケルイオンの錯体生成定数(Formation constant)の場合、二つの物質が大きな差を示すが、コバルトイオンの錯体であるCo(NH3)6
2+の場合、5×104の値を示し、ニッケルイオンの錯体であるNi(NH3)6
2+の場合、2×108の値を示すため、ニッケルイオンの錯体がはるかに安定して存在するようになる。
【0012】
このような理由のため、Ni(NH3)6
2+がCo(NH3)6
2+に比べてより一層高いpH領域帯沈殿が行われるようになり、共沈運転時、ニッケルイオンの錯体が反応後上澄み液内に存在する場合が多くなる。
したがって、先に言及された沈殿現象に基づいて金属アンモニア錯化合物の溶解度を逆に推定してみれば、同一な三元系正極前駆体製造工程運転条件でニッケルを基盤としたニッケル錯化合物イオン(Ni(NH3)6
2+)が最も溶解度が高いと見なされ、その次に、コバルト錯化合物イオン(Co(NH3)6
2+)が溶解度が高いと判断できる。
【0013】
マンガンイオンは、錯体を形成できないため、溶解度自体がニッケルおよびコバルトに比べて相対的に非常に低いといえる。即ち、三元系正極前駆体が製造される濃度およびpH、攪拌速度、温度などの同一な工程条件で前駆体流入溶液内のニッケルの組成が高いほど、反応器内の金属イオンの溶解度が高まるようになり、マンガンの組成が高いほど金属イオンの溶解度が低くなると見なすことができる。
このような概念に対する理解を通じて従来の技術を解釈し、新たな配向性を実現する方法を提示することが、本発明の主要思想である。
【0014】
従来の技術の配向性実現方法は、濃度勾配を前駆体に実現することによって、初期に使用されるコア溶液ではニッケルの濃度が高く、シェル溶液が使用される溶液ではマンガンイオンが多く存在するため、金属イオンの溶解度が低いという事実を確認することができる。即ち、既存の配向性ある前駆体実現方法は、前駆体の中心部では金属イオンの溶解度が非常に高いが、外郭部に行くほど金属イオンの溶解度が次第に低まるようになる。
従来の技術はまた、バッチ反応器を用いるため、反応器内に存在する初期溶液のイオン濃度は反応が進行するにつれて徐々に低まるようになるため、結局既存の配向性実現方式は初期から終了時まで溶液内の金属イオンの濃度を過飽和状態が未満で維持させて、急激な沈殿や結晶核が反応中間に生成されないように運転した方式といえる。
【0015】
このような観点を総合して判断すれば、従来の技術の配向性実現メカニズムは、沈殿と核生成を最大限抑制した状態で結晶を成長させて自己集合現象を最大限用いた前駆体を製造する方法であると、本発明概念を通じて解釈することができる。
したがって、本発明は、このようなメカニズムに基づいて連続式反応器でも配向性を実現する方法を提示する。
【0016】
本発明は、このような従来の技術の前駆体製造メカニズムを逆に用いて工程変数によって配向性ある正極材の製造が可能であるのを確認した。即ち、工程変数を制御して核生成を抑制する条件で共沈運転を行うようになると、運転時間による流入水内の濃度勾配がない状況でも配向性を付与することができるようになる。
前駆体共沈工程での工程変数は、大きく、反応器攪拌速度、金属イオンに対するアンモニア流入量、反応器内のpH、反応器内の温度、反応器滞留時間などがあり得る。
攪拌速度の増加は、配向性を付与すると判断された。具体的に、反応器の攪拌速度が3m/sec以上15m/sec以下の線速度で運転時、配向性ある前駆体が得られるのを確認した。このような速度の攪拌速度は、1ルベ級テイラー反応器で一般に80rpm以上で実現できる。
【0017】
金属イオン物質に対して投入する錯化剤であるアンモニアの使用量が増加するほど配向性が示されると確認された。本発明では、アンモニアの投入流量が金属イオンに対するモル比で1:0.95以上から1:1.5で配向性ある前駆体が獲得された。具体的に、1:1.1~1:1.2で最も良い配向性ある前駆体を得ることができる。
反応器の温度は低くなるほど核生成が抑制されて配向性が得られる。配向性は25~55℃で得ることができ、30~45℃で最も良い配向性の前駆体を得ることができた。
反応器滞留時間は最小化することが最も有利である。本反応器では滞留時間が30分~4時間で配向性ある前駆体が得られ、具体的に30分~1時間で最も良い配向性を獲得することができた。
【0018】
このような思想に基づいて反応器の攪拌速度、アンモニア比率、反応温度、滞留時間などを変更して配向性を実現した。このような配向性実現方法は、連続式タンク反応器だけでなく正極前駆体を製造することができるテイラー反応器、バッチ式反応器にも全て適用することができる。
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例、これに対比される比較例、およびこれらの評価例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の例示的な実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0020】
実験例
正極活物質の製造
50リットル級クエットテイラー連続式反応器を適用して正極前駆体を製造した。
初期反応器内の条件は25wt.%苛性ソーダと28wt.%アンモニアが85:15重量比で混合された溶液を用いてpHを10.7に合わせた。その後、反応器運転pHに合わせてNaOHを追加的に投入した。反応物を注入するために、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンが88:9.5:2.5のモル比で混合された2.5M濃度の硫酸金属溶液を連続的に投入した。
反応器内部の温度は次の表のようにそれぞれの条件に合わせて変更し、一定の温度で一定に維持して運転を行った。硫酸金属溶液のモル流量(mol/min)に対するアンモニアモル流量(mol/min)も下記表の基準に合わせて変更した。NaOHを用いてpHも目的とする範囲に調節して共沈運転を行った。
攪拌速度変化以外の実験はテイラー反応器の運転条件を線速度11.0m/secに設定し、滞留時間を1時間に設定した。製造された共沈前駆体を収得してICP分析後、Metalに対する1.03組成のLiOHモル比で750℃で15時間燃焼して最終正極材を収得した。
【0021】
電気化学特性評価方法
CR2032コインセルを用いて電気化学評価を行った。極板製造用スラリーは、正極:導電材(denka black):バインダー(PVDF、KF1100)=96.5:2.0:1.5wt%であり、固形分が約30%になるようにNMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)を添加してスラリー粘度を調整した。
製造されたスラリーは、15μm厚さのアルミニウム箔上にDoctor bladeを用いてコーティング後、乾燥圧延した。電極ローディング量は14.6mg/cm2であり、圧延密度は3.1g/cm3であった。
電解液は1M LiPF6 in EC:DMC:EMC=3:4:3(vol%)に1.5%のVCを添加したものを使用し、PP分離膜とリチウム負極(200μm、Honzo metal)を使用してコインセル製造後、10時間常温でagingし、充放電テストを行った。
【0022】
容量評価は200mAh/gを基準容量とし、充放電条件はCC/CV2.5~4.25V、1/20Ccut-offを適用した。
初期容量は0.1C充電/0.1C放電後、0.2C充電/0.2C放電を行った。
出力特性は0.1C/0.2C/0.5C/1C/1.3C/1.5C/2CにC-rateを増加させて放電容量を測定し、高温サイクル寿命特性は高温(45℃)で0.3C充電/0.3C放電条件で30回を測定した。
【0023】
配向性分析方法
正極材パウダーの配向性を分析するために、数十~数百個の正極材パウダーをポリマーレジンに固定化させてマウンティング作業を行った。マウンティング後、乾燥されたサンプルに対して紙やすりを用いて1次ポリッシング作業を行った後、イオンミリング装備にサンプルを移して2次表面加工を行った。イオンミリング後、パウダー断面イメージ観察をして半球形状の正極材(円形状の断面)が獲得されるのが確認されると、正極材断面加工作業を終了した。断面加工されたサンプルをEBSD装備に移した後、配向性を分析した。配向性は、方位差+/-30度を基準にして[001]、[120]、[210]方向の配向性を分析した。基準構造はhexagonal構造を用い、極点図はND軸およびRD軸基準にして獲得した。
【0024】
評価例1:[金属塩水溶液内金属イオンの総モル数:アンモニアのモル数]変因のみ操作、残り変因は比較例範囲で統制
下記表1-4のように、1つの変数のみを与え、残り変数を統制した。その結果は下記表1-4の通りである。
表1-4から分かるように、正極材の物性は、1:0.95~1:1.5範囲が優れることが分かる。より好ましくは、1:1.1~1:1.2範囲が優れることが分かる。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
評価例2:反応pH変因操作、残り変因は比較例範囲で統制
下記表5-8のように1つの変数のみを与え、残り変数を統制した。その結果は下記表5-8の通りである。
表5-8から分かるように、pH範囲は10.5-12が優れることが分かる。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
評価例3:金属塩溶液の滞留時間変因操作、残り変因は比較例範囲で統制
下記表9-12のように1つの変数のみを与え、残り変数を統制した。その結果は下記表9-12の通りである。
表9-12から分かるように、滞留時間は30分~4時間範囲が優れることが分かる。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
評価例4:攪拌速度変因操作、残り変因は比較例範囲で統制
下記表13-16のように1つの変数のみを与え、残り変数を統制した。その結果は下記表13-16の通りである。
表13-16から分かるように、攪拌速度は80-200rpm範囲が優れることが分かる。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
評価例5:反応温度変因操作、残り変因は比較例範囲で統制
下記表17-20のように1つの変数のみを与え、残り変数を統制した。その結果は下記表17-20の通りである。
表17-20から分かるように、反応温度は30-50℃(より具体的に、30-45℃)範囲が優れることが分かる。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
評価例6:最終製品製造実験(比較と実施例)
実施例は先に最適化領域にある工程変数を適用し、比較例は最適化領域の外にあり配向性が示されない場合に対して実験を行った。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
本発明は、前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に実施できるのを理解することができるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。