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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】流体試料を収容するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20221104BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020534374
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018085726
(87)【国際公開番号】W WO2019121841
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】PA201700739
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】トーゴー,ミケール
(72)【発明者】
【氏名】フリシャウフ,ピーダ
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-302399(JP,A)
【文献】特表2010-522337(JP,A)
【文献】特表2010-525338(JP,A)
【文献】特開2006-242607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0286774(US,A1)
【文献】特開昭60-201254(JP,A)
【文献】特表2007-517221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数回使用デバイス(1)であって、
流体試料(4)を収容するための測定チャンバ(3)の外側境界を画定する内壁面(9)を備え、前記内壁面(9)は、
前記流体試料(4)が入口(16)を通って前記測定チャンバ(3)内に入る間、前記流体試料(4)が前記測定チャンバ(3)を通過する間、及び前記流体試料(4)が出口(17)を通って前記測定チャンバ(3)から出る間、前記流体試料(4)の流頭(6)の方向(x)における伝播を制御するように適合された表面構造(13)を含み、
前記表面構造(13)は、前記流体試料(4)の前記流頭(6)の流速に応じて選択され、前記流速は、前記測定チャンバ(3)の前記入口(16)と前記出口(17)との間の圧力差によって印加され、前記表面構造(13)は、前記流体試料(4)の前記表面構造(13)に沿った毛管力を増加させるように適合されており、したがって、前記流体試料(4)は、前記表面構造(13)の領域において、流体伝播の前記方向(x)に段階的に小刻みに進行し、
前記表面構造(13)は、交互の隆起部(14)及び縮小部(15)を含む、
複数回使用デバイス(1)。
【請求項2】
前記表面構造(13)は、前記表面構造(13)に沿った前記流体試料(4)中の毛管力を弱める又は増大するように適合された少なくとも1つの表面構造要素を含む、請求項1に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの表面構造要素は、半円形、半楕円形、三角形、台形、平行四辺形、矩形、正方形、これらの任意の融合、及びこれらの任意の組み合わせから選択される形状を有する、請求項に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項4】
前記内壁面(9)は、第1の壁部(11)及び第2の壁部(12)を含み、
前記少なくとも1つの表面構造要素は、前記第1の壁部及び/若しくは前記第2の壁部において同じである、又は前記第1の壁部及び/若しくは前記第2の壁部において異なる、請求項2又は3に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項5】
前記第1の壁部(11)の前記表面構造(13)と第2の壁部(12)の前記表面構造(13)とは、位相が一致している又は位相が不一致である、請求項に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項6】
前記表面構造(13)を形成する前記デバイス(1)の部分(2)は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、若しくはスチレンジメチルメタクリレートコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせから選択される材料で作製されている、請求項1~のいずれかに記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項7】
前記第2の壁部(12)の前記表面構造(13)は、前記第1の壁部(11)の前記表面構造(13)に対して前記測定チャンバ(3)の長手方向軸(L)の回りに軸対称である、請求項4又は5に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項8】
前記第1の壁部(11)は、前記第2の壁部(12)に対して平行に走り、
前記測定チャンバ(3)は、前記第1の壁部(11)と前記第2の壁部(12)との間に延び、
前記流体伝播の前記方向(x)は、前記第1の壁部(11)及び前記第2の壁部(12)に対して平行に走る、
請求項4、5又は7のいずれかに記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項9】
前記測定チャンバ(3)は、10mm~60mm以下の長さを有する、請求項1~のいずれかに記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項10】
前記測定チャンバ(3)は、端点を含め、1~5mm、1~4mm、1~3mm、2~5mm、3~5mm、2~4mm、2~3mmの幅を有する、請求項1~のいずれかに記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項11】
前記測定チャンバ(3)は、0.2mm~0.6mm以下の深さを有する、請求項1~10のいずれかに記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項12】
前記表面構造(13)は、前記流体試料(4)の前記方向(x)における前記伝播を制御するように適合されており、したがって、前記流体試料(4)は、前記第1の壁部(11)の領域における第1のステップを伝播し、続いて、前記第2の壁部(12)の領域における第2のステップを伝播する、請求項4、5又は7に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項13】
前記第1の壁部(11)の前記領域における前記第1のステップは、前記第1の壁部(11)の第1の隆起部(14.1)で始まって前記第1の壁部(11)の第2の隆起部(14.2)で終わり、前記第2の隆起部(14.2)は、前記第1の隆起部(14.1)に隣接しており、
前記第2の壁部(12)の前記領域における前記第2のステップは、前記第2の壁部(12)の第1の隆起部(14.3)で始まって前記第2の壁部(12)の第2の隆起部(14.4)で終わり、前記第2の隆起部(14.4)は、前記第1の隆起部(14.3)に隣接している、
請求項12に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項14】
請求項1~13のうちの一項に記載の複数回使用デバイス(1)を備える分析装置(8)。
【請求項15】
前記分析装置(8)は、流体試料(4)を収容するための前記デバイス(1)内に収容されている血液試料(4)を分析するように適合されている、請求項14に記載の分析装置(8)。
【請求項16】
前記分析装置(8)は、血液ガス分析を行うように適合されている、請求項15に記載の分析装置(8)。
【請求項17】
流体試料(4)を収容するためのデバイス(1)内に収容されている流体試料(4)を分析する方法であって、
請求項1~13のうちの一項に記載の複数回使用デバイス(1)を備える分析装置(8)を提供することと、
流体試料(4)を前記複数回使用デバイス(1)の前記測定チャンバ(3)に充填することと、
前記分析装置(8)によって、前記デバイス(1)の前記測定チャンバ(3)内に収容されている前記流体試料(4)を分析することと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記流体試料(4)は血液試料(4)であり、前記分析することは血液ガス分析を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記測定チャンバ(3)は、10、15、20、25、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、又は60mmの長さを有する、請求項9に記載の複数回使用デバイス(1)
【請求項20】
前記測定チャンバ(3)は、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0mmの幅を有する、請求項10に記載の複数回使用デバイス(1)。
【請求項21】
前記測定チャンバ(3)は、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、又は0.60mmの深さを有する、請求項11に記載の複数回使用デバイス(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体試料、特に血液試料などの体液試料を収容するためのデバイスに関する。更に、本発明は、流体試料を収容するためのデバイスを備える分析装置に関し、分析装置は、血液ガス分析を行うように適合され得る。更に、本発明は、流体試料を収容するためのデバイス内に格納されている流体試料を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体試料を収容するためのデバイスの測定チャンバは、血液試料で充填されることが知られている。デバイスは、センサカセット又はその一部であってもよく、カセットは分析装置内に収容されており、分析装置は、血液試料を分析する、特に血液ガス分析を行うように適合されている。
【0003】
測定チャンバが最適な方法で充填され、かつ、空にされる場合、流体は、対称形の伝播形状又は経路を辿らなければならない。しかしながら、場合によっては、測定チャンバ内の表面張力と流体との間の特定の比に起因して流体の伝播形状が非対称形となる。これにより、試料中に閉じ込められた空気及び測定チャンバを空にした後の残留試料のリスクが増加する。これは、小寸法の流体経路及びマイクロチャネルを有する分析器について周知の問題である。測定チャンバ(シリコーン)内の表面張力を変化させることは、閉じ込められた空気及び測定チャンバを空にした後の残留試料の問題を悪化させる。この種の問題は、シリコーンを回避すること、流体の表面張力を変化させること、又は測定チャンバ内の表面張力を変化させることによって、少なくとも部分的に解決され得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、測定チャンバ内の閉じ込められた空気及び測定チャンバを空にした後の残留試料のリスクを減少させることが可能な、流体試料を収容するための、代替デバイスを提供することである。
【0005】
この課題は、独立請求項による主題によって解決される。従属請求項、以下の説明及び図面は、本発明の実施形態を示している。
【0006】
本出願は、流体伝播を制限する技術を使用することによって、十分に制御された、測定チャンバの流体試料での充填及び測定チャンバからの排出を確実にすることを提案する。特に、測定チャンバの壁部における流体の伝播を、流体前面の中心と比較して制限することができる。一実施形態では、これは、毛管力の範囲を限定されたサイズのセグメントにおいて作用するように限定することによって達成される。流体伝播の制限は、流体の流頭が過度に非対称な形状となるリスクを減少させることができる。特に、流頭の中心と比較して、流頭が表面構造の領域において進み過ぎて又は遅れ過ぎて伝播しないようにすることが可能になる。これにより、試料中に空気が閉じ込められるリスク、及び測定チャンバを空にした後の残留試料のリスクを低減することができる。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、デバイスが提供される。デバイスは、複数回使用デバイスであってもよい。この文脈において、「複数回使用」とは、特に、デバイスを数回使用することができることを意味する。例えば、デバイスの測定チャンバを流体試料で充填し、次いで好適なセンサによって流体試料を分析することができる。続いて、好適なすすぎ液を使用して、測定チャンバをすすぐことができる。更に、品質管理工程が実行され、センサが、次の流体試料を分析する準備及び用意ができていることを確実にすることができる。例えば、測定チャンバは、(前述のすすぎ工程後に)品質管理液で充填されてもよい。これらの液体による読み取り値が一定の範囲内にある場合、これは、センサが意図されるように機能しており、デバイスが次の流体試料を収容し分析する準備ができていることを示し得る。
【0008】
デバイスは、一般に、流体試料を収容するように適合されてもよい。特に、デバイスは、入口及び出口を備えてもよく、流体試料は、入口を介してデバイスの測定チャンバに入ることができ、測定チャンバを通って流れることができ、出口を介して測定チャンバを出ることができる。特に、デバイスは、流体試料の流路が、複数回使用デバイスを通って単一方向に、すなわち、一方向にのみに走ることを可能とするように適合されてもよい。デバイスは単一方向の流れを意図しているが、すすぎ手順又は洗浄手続に関連して、流れを短時間逆転させることが必要であり得る。流体試料は、生物学的試料、例えば、希釈若しくは非希釈の全血、血清、血漿、唾液、尿、糞便、胸水、脳脊髄液、滑液、乳、腹水、透析液、腹腔液、又は羊水などの生理液であってもよい。他の生物学的試料の例としては、発酵ブロス、微生物培養物、廃水、食品製品などが挙げられる。流体はまた、別の液体であってもよい。液体は、品質管理材料、すすぎ溶液、緩衝液、較正溶液などから選択され得る。
【0009】
デバイスは、センサカセット又はその一部であってもよい。センサカセットは、分析装置、特に血液ガス分析を行うための分析装置において使用することができる。例えば、本出願人の欧州特許第2147307B1号は、本出願によって教示されるデバイスを有利に実装することができるセンサカセット/センサアセンブリを開示している。当該センサカセット/センサアセンブリは、1つの基板上(シス配置)及び対向する基板上(トランス配置)に並んで配置された個別の検体センサを含む。デバイスは、流体試料を収容するための測定チャンバの外側境界を画定する内壁面を備えてもよい。内壁面は、デバイスの本体部によって形成することができる。いくつかの実施形態では、測定チャンバは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、又は30個のセンサを含む。いくつかの実施形態では、測定チャンバは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、又は少なくとも20個のセンサを含む。センサは、第1の基板上及び/又は第2の基板上に配置することができ、本発明によるデバイスは、第1の基板と第2の基板との間に挟むことができる。更に、測定チャンバは、流体試料を、特に血液試料を測定チャンバの外側に位置する好適なセンサによって分析することができるように、透明であってもよい。センサはまた、例えば国際公開第2016/106320号及び国際公開第2013/163120号に記載されているように、折り畳まれるか又は巻かれている基板上に配置され、それによりセンサが互いに対向していてもよい。
【0010】
測定チャンバが流体試料で充填されるとき又は測定チャンバが空にされるとき、液体試料が測定チャンバ内で過度に非対称的に伝播することを回避するために内壁面は表面構造を含んでもよい。表面構造は、流体試料が入口を介して測定チャンバに入る間、流体試料が測定チャンバを通って流れる間、及び、流体試料が出口を介して測定チャンバを出る間、流体試料の流頭の一方向における伝播を制御するように適合されてもよい。同様に、表面構造は、特に流体試料が測定チャンバを通って流れる間、及び流体試料が出口を介して測定チャンバを出る間、流体試料の(流頭とは反対側に走る)最後尾の端面の当該方向における伝播を制御するように適合されてもよい。当該端面は、気体前面、特に、測定チャンバを通って伝播する空気前面、特に流体試料の流頭が測定チャンバを通って伝播するのと同じ方向に伝播する空気前面であってもよい。
【0011】
表面構造は、流体と接触する測定チャンバの全ての壁又は表面上に存在してもよく、あるいは当該壁又は表面の一部分に又は部分上に存在してもよい。一実施形態では、表面構造(13)は、流体試料(4)を収容するための測定チャンバ(3)の外側境界を画定する内壁面(9)上に存在する。一実施形態では、表面構造は、流体試料(4)を収容するための測定チャンバ(3)の外側境界を画定する内壁面(9)の部分上に存在する。一実施形態では、表面構造は、測定チャンバの入口から出口まで延びる内壁面の1つ以上の部分上に存在する。一実施形態では、表面構造は、測定チャンバの入口から出口まで部分的に延びる内壁面の1つ以上の部分上に存在する。一実施形態では、表面構造は、1つ以上のセンサと同じ内壁面上に、例えばセンサ基板上に存在する。一実施形態では、表面構造は、1つ以上のセンサとは異なる内壁面上に、例えば、スペーサ、ガスケット、又は内壁面を提供する別の構成要素上に存在する。流体の流れは、好ましくは内壁面上に均一に分布している表面構造を有することによって制御される。一実施形態では、表面構造は、入口から出口まで延びる内壁面の2つ以上の部分上に存在し、これらの部分は、互いに反対側に位置する、又は流れ方向Xに垂直な測定チャンバの断面の周縁部に均一に若しくはほぼ均一に分布している。一実施形態では、内壁面の2つ以上の部分上に存在する表面構造は、部分的に入口から出口まで延びる。一実施形態では、1つ以上の部分は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、又は30個の部分であってもよい。一実施形態では、1つ以上の部分は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、又は少なくとも30個の部分であってもよい。
【0012】
表面構造は、流体試料の流頭の流速に応じて選択されてもよく、流速は、測定チャンバの入口と出口との間の圧力差によって印加されてもよい。例えば、流体試料が入口を介して測定チャンバ内に吸い込まれるように、測定チャンバの出口に真空を適用することができる。あるいは、大気圧よりも高い値を有する過圧力を測定チャンバの入口に印加して、流体試料が測定チャンバ内に押し込まれるようにしてもよい。入口と出口との間の圧力差は、大気圧(atm)の0~0.40以下、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40であり得る。このような圧力差は、0~100mm/秒以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mm/秒の流体試料の流速をもたらすことができる。
【0013】
表面構造は、流体試料が毛管力によって測定チャンバに入ることを防止することができる。その代わり、流体試料を強制的に測定チャンバに入れるために、入口と出口との間に圧力差(上記のように出口における真空又は入口における過圧力)が適用されなければならない。また、特に測定が行われた後に、圧力差により測定チャンバを再び空にすることもできる。理想的には、測定後、測定チャンバに入った流体試料全てが圧力差により強制的に測定チャンバから再び出される。流頭の速度は、表面構造の形状によって調整されてもよい。
【0014】
表面構造は、交互の隆起部及び縮小部又は陥没部を含んでもよい。表面構造は、表面構造に沿った流体試料中の毛管力を弱める又は増大するように適合された少なくとも1つの表面構造要素を含んでもよい。
【0015】
特に、表面構造要素(複数)又は少なくとも1つの表面構造要素は、半円形、半楕円形、三角形、台形、平行四辺形、矩形、正方形、これらの任意の融合、及びこれらの任意の組み合わせから選択される形状を有してもよい。また、表面構造は、位相が一致していても、又は不一致であってもよい。
【0016】
表面構造要素の寸法は変動してもよい。表面構造要素の基部における幅(w)は、1mm以下、例えば1.00、0.90、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0.04、0.03、0.02、又は0.01mm未満であってもよい。表面構造要素の高さ(h)は、1mm以下、例えば、1.00、0.90、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0、04、0、03、0.02、又は0.01mm未満であってもよい。
【0017】
測定チャンバは、マイクロチャネルの形状を有してもよい。測定チャンバ、特にマイクロチャネルは、非常に小さい寸法を備えることができる。例えば、測定チャンバ、特にマイクロチャネルは、約10mm~60mm以下、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60mm、特に30、31、32、33、34、又は35mmの長さを有することができる。測定チャンバ、特にマイクロチャネルの幅は、端点を含め、例えば、1~5mm、1~4mm、1~3mm、2~5mm、3~5mm、2~4mm、2~3mm、特に2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0mmであってもよい。更に、測定チャンバ、特にマイクロチャネルの深さは、0.2~0.6mm以下、例えば0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、又は6.00mmとすることができる。このような寸法を有する測定チャンバ、特にマイクロチャネル内の表面構造に起因して、測定チャンバ、特にマイクロチャネルが、希釈又若しくは非希釈の全血、血清、血漿、唾液、尿、糞便、胸水、脳脊髄液、滑液、乳、腹水、腹腔液、若しくは羊水などの生物学的試料、又は透析液試料、品質管理材料などの流体試料で充填されるとき、毛管作用は発生しづらい。その代わり、入口と出口との間に圧力差、例えば真空を適用することによって測定チャンバが充填される。
【0018】
流体試料が測定チャンバを通って流れる間、流体試料の伝播方向は、測定チャンバ、特にマイクロチャネルの長手方向軸に平行する、又はその長手方向軸の方向であり得る。表面構造は、段階的に進行するように流体伝播を制限することを可能にし得る。表面構造は、壁部の一方又は両方のいずれかにおける流体前面が測定チャンバの中央に位置する流体前面と比較して速く進み過ぎないこと、又は測定チャンバの中央に位置する流体前面が壁部における流体前面と比較して速く進み過ぎないことを確実にする。これにより、過度に非対称的な流体形状となるリスクを減少させることができ、結果として、流体試料中に空気が閉じ込められるリスク、及び測定チャンバを空にした後の測定チャンバ内の残留試料のリスクを低減することができる。加えて、湿潤性が乏しいことに関連するエラーの数、例えば、廃棄される試料、不均質な液体、又は他の液体搬送関連エラーに関連するエラーの数を減少させることができる。本発明の一実施形態では、表面構造は、入口から出口まで流れ方向(x)に延びる少なくとも1つの表面壁又は表面壁の部分上に存在する。したがって、表面構造が存在しない場合、入口から出口まで流れ方向(x)に延びる壁部の1つ以上の部分が存在し得る。更なる実施形態では、表面構造は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の表面壁又は表面壁の一部に存在する。更なる実施形態では、表面構造は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は少なくとも20個の表面壁又は表面壁の一部に存在する。一実施形態では、表面構造は、互いに反対側に位置する少なくとも2つの表面壁又は表面壁の一部に存在する。表面構造が、少なくとも2つ以上の表面壁又は表面壁の一部に存在する場合、入口から出口まで方向(x)に延びる当該壁部又は壁部の一部は、好ましくは、測定チャンバの周縁部周りに均一に又はほとんど均一に分布していることが好ましい。
【0019】
拡がり角αは、流体試料が流れる方向(すなわち、流体試料の伝播方向であり、この方向は、流体試料の流頭に対して垂直であってもよい)と、表面構造要素の縁部の接線との間の角度を定義してもよい。測定チャンバの断面が拡大すると正の値が生じることがあり、測定チャンバの断面が収縮すると負の値が生じ得る。拡がり角αは、-90°~最大+90°の範囲内で変化してもよい。しかしながら、他の値も好適であり得る。
【0020】
内壁面の表面構造を形成するデバイスの本体部又は別の部分は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、若しくはスチレンジメチルメタクリレートコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせから選択される材料で作製されていてもよい。
【0021】
一実施形態では、表面構造は、流体試料の表面構造に沿った毛管力を増加させるように適合されてもよく、したがって、流体試料は、表面構造の領域において、流体伝播の方向に段階的に又は段階的に小刻みに進行する。
【0022】
別の実施形態では、内壁面は、第1の壁部及び第2の壁部を備えてもよい。第1の壁部は、第2の壁部に対して実質的に平行に走ってもよく、測定チャンバは、第1の壁部と第2の壁部との間に延びてもよい。加えて、流体伝播の方向は、第1の壁部及び/又は第2の壁部に対して実質的に平行に走ってもよい。
【0023】
一実施形態では、第1の壁部及び第2の壁部は、同じ表面構造を含んでもよい。更に、第2の壁部の表面構造は、第1の壁部の表面構造に対して軸対称であってもよい。
【0024】
一実施形態では、表面構造は表面構造要素によって作製されている。一実施形態では、表面構造は、第1の壁部及び/又は第2の壁部において同じであってもよい。例えば、表面構造要素は、第1の壁部及び/又は第2の壁部の表面構造全体に沿って又は表面構造全体にわたって、均一に分布していてもよい。あるいは、表面構造は、第1の壁部及び/又は第2の壁部の表面構造に沿って又は表面構造にわたって、2つ以上の異なる表面構造要素を含んでもよい。したがって、表面構造の形状もまた、第1の壁部及び/又は第2の壁部において異なっていてもよい。
【0025】
一実施形態では、表面構造は、流体試料の当該方向における伝播を制御するように適合されてもよく、したがって、流体試料は第1の壁部の領域における第1のステップを伝播し、続いて、第2の壁部の領域における第2のステップを伝播する。
【0026】
特に、第1の壁部の領域における第1のステップは、第1の壁部の第1の隆起部で始まって第1の壁部の第2の隆起部で終ってもよく、第2の隆起部は第1の隆起部に隣接している。また、第2の壁部の領域における第2のステップは、第2の壁部の第1の隆起部で始まって第2の壁部の第2の隆起部で終ってもよく、第2の隆起部は第1の隆起部に隣接している。記載された第1のステップ及び第2のステップは、上記の段階的に「小刻み」の例であってもよい。
【0027】
更に、流頭全体の一方の側(例えば、第1の壁部が位置する側)が、例えば、小さい距離だけ他方の側(例えば、第2の壁部が位置する側)よりも前方に移動するように、流体試料の当該方向における伝播を制御するように表面構造が適合されてもよい。したがって、完全な直線として走る流頭の代わりに、流頭の一方の側が常に他の側を先導又は先行することができる。この「小さい距離」(例えば、最大1mm又は数ミリメートルの範囲)は、気泡が流体試料内に閉じ込められることを防ぐために、及び測定チャンバを空にした後の測定チャンバ内の流体試料の残留体積を回避するために、表面構造の形状によって十分に小さく保つことができる。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る複数回使用デバイスを備える分析装置が提供される。一実施形態では、分析装置は、複数回使用デバイス内に収容されている血液試料を分析するように適合されている。特に、分析装置は、血液ガス分析を行うように適合され得る。更に、分析装置は、試料中に存在する他の成分を測定するように適合されてもよい。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、流体試料を分析する方法が提供され、流体試料は、本発明の第1の態様による複数回使用デバイス内に収容されている。方法は、本発明の第2の態様による分析装置を提供する工程100を含んでもよい。分析装置は、本発明の第1の態様による複数回使用デバイスを備えてもよい。工程200では、流体試料を複数回使用デバイスの測定チャンバに充填することができる。更に、工程300では、複数回使用デバイスの測定チャンバ内に収容されている流体試料を、分析装置によって分析することができる。流体試料の分析が完了した後、工程400において、特に出口を介して、測定チャンバを空にすることができる。これは、測定チャンバの充填と関連して上述したように、出口に真空を適用すること、又は入口に過圧力を印加することによって行われてもよい。
【0030】
続いて、工程500では、好適なすすぎ液を使用して、測定チャンバをすすぐことができる。更に、工程600では、較正工程を実行して、センサが準備され次の流体試料を分析する用意ができていることを確実にすることができる。例えば、測定チャンバは、(前述のすすぎ工程後に)品質管理液で充填されてもよい。これらの液体による読み取り値が一定の範囲内にある場合、これは、センサが意図されるように機能しており、デバイスが次の流体試料を収容し分析する準備ができていることを示し得る。次に、前述の工程200~500又は200~600を、特に異なる流体試料について、繰り返すことができる。一実施形態では、流体試料は血液試料であり、分析することは血液ガス分析を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下の説明では、本発明の例示的な実施形態は、添付の概略図を参照して説明され、同じ又は類似の要素には同じ符号が提供される。
図1】対称形の流頭を有する流体試料で充填されているマイクロチャネルの長手方向断面図を示す。
図2】非対称形の流頭を有する流体試料で充填されているマイクロチャネルの長手方向断面図を示す。
図3】本出願人の欧州特許第2147307B1号に開示されているセンサカセット/システムの分解斜視図を示す。
図4】本発明の例示的な実施形態による複数回使用デバイスを有するセンサカセットを備える分析装置の長手方向断面図を示し、デバイスのマイクロチャネル内の流体試料は、対称形の流頭を有する。
図5】センサシステムが異なる位置に配置されている、図4に示す分析装置の長手方向断面図を示す。
図6a図4に示すデバイスの長手方向断面図を示し、流頭が内壁面の第1の壁部において1ステップ前方に移動しており、したがって、流頭はわずかに非対称形である。
図6b図6aに示すデバイスの長手方向断面図を示し、流頭が内壁面の第2の壁部において1ステップ前方に移動しており、したがって、流頭は再び対称形である。
図6c図6bに示すデバイスの長手方向断面図を示し、流頭が内壁面の第2の壁部において1ステップ前方に移動しており、したがって、流頭は再びわずかに非対称形である。
図7】流体試料を収容するためのデバイス内に収容されている流体試料が分析される、本発明による方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
図8】測定チャンバが空にされている、図4に示す複数回使用デバイスの長手方向断面図を示す。
図9】表面構造の代替的な形状を有する、本発明の一実施形態に係る別の複数回使用デバイスの一部の斜視図を示す。
図10】表面構造の代替的な形状を有する、本発明の一実施形態に係る別の複数回使用デバイスの一部の斜視図を示す。
図11】表面構造の代替的な形状を有する、本発明の一実施形態に係る別の複数回使用デバイスの一部を示す。
図12】(a)壁部における表面構造を有さない、流体を収容している測定チャンバ、及び(b)壁部における表面構造を有する、流体を収容している測定チャンバを示す。
【0032】
図1は、測定チャンバを形成する本体部2を有するデバイス1を示し、測定チャンバは、図示の例では、マイクロチャネル3の形態である。マイクロチャネル3は流体試料4で充填され、流体試料4は、流体伝播の方向xに伝播する。図示の例では、この方向xは、マイクロチャネル3の長手方向と実質的に同一である。図1に示すように、マイクロチャネル3の第1の体積(図1の右側部分に示す)が流体試料4で充填され、マイクロチャネル3の第2の体積(図1の左側部分に示す)は、流体試料4でなく空気5で充填されている。流体試料4の流頭6は、マイクロチャネル3内で、左側の空気5と右側の流体試料4との間の境によって画定される。
【0033】
図1は、測定チャンバ3の理想的かつ所望の最適な充填プロセスを示し、流体試料4は、対称形の伝播経路に従い、(マイクロチャネル3の長手方向軸に対して対称形である)凸状又は凹状であり得る対称形の流頭6を含む。
【0034】
図2は、図1に示すものと同様のデバイス1を示す。しかしながら、図2に示す例では、測定チャンバ3内の表面張力と流体試料4との間の特定の比に起因して、流体試料4の伝播が非対称形となり、したがって、流体試料4が非対称形の流頭6を含む。これにより、測定チャンバ3内に空気が閉じ込められるリスクが増加する。非対称形状は、凹状又は凸状であり得る。更に、流頭6が対称形であっても、流頭6の中心が壁部における流頭6の過度に前方、又は過度に後方にあることは望ましくない。
【0035】
図3は、第1の基板2’と、第2の基板3’と、スペーサ4’とを含む既知のセンサアセンブリ1’の分解図である。第1の基板2’は、第1の基板の第1の表面上に配置され、図3において下方に向いて配置された複数の検体センサ(図3では見えない)を備える。第1の基板2’は更に、図3において上方に向いた第2の表面上に配置された複数の電気接点5cを更に備える。電気接点5cは、センサ基板内のワイヤ5b及び小さい穴5aを介して検体センサに接続されている。穴5aは、導電性材料、例えば白金で充填されており、導電性材料は、第1の表面上の検体センサ及び第2の表面上のワイヤ5bに接続されている。
【0036】
第2の基板3’はまた、複数の検体センサ6’及び複数の電気接点5cを備える。検体センサ6’及び電気接点5cは、第2の基板3’の第1の表面上に配置され、図3において上方に向いている。検体センサ6’と第2の基板3’上の電気接点5cとの間の配線は、第1の表面上の検体センサから基板3’の第2の表面に導かれ、基板の穴を通って第1の表面上の接点5cに戻る。図3に示されるセンサアセンブリ1’は、複数の検体センサを備える基板2’及び3’を開示している。スペーサ4’は、スペーサ4’の大部分にかけて延びる細長い穴の形態の凹部7’を備える。
【0037】
センサアセンブリ1’が組み立てられると、第1の基板2’の第1の表面及び第2の基板3’の第1の表面は互いに対向し、スペーサ部分4’は、第1の基板2’と第2の基板3’との間に配置され、凹部7’は、基板2’及び基板3’の第1の表面と共に、測定チャンバ7aを形成する。測定チャンバ7aは、第1の基板2’の検体センサ、及び第2の基板3’の検体センサ6’が測定セル7aと流体接触するように配置される。したがって、凹部7’は、基板2’、3’との組み合わせによって流体試料を収容することができる測定チャンバ7aを画定する。
【0038】
流体試料が測定セル7a内に配置されると、検体センサ6’のそれぞれが試料と接触することになり、したがって検体センサ6’のそれぞれが試料の適切なパラメータを測定可能である。流体試料は、入口52を通って測定セル7aに入り、出口53を通って出る。
【0039】
測定セルは、約25~45μL、例えば約25、30、35、40、45μLの体積を提供することができる。凹部7’の寸法は、以下の範囲内であってもよい。長さ10~60mm、例えば10、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60mm。幅1~5mm、例えば1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0mm。厚さ0.2~0.6mm、例えば0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、又は、0.60mm。
【0040】
図3に示すスペーサ4’は、本出願によって教示されるような表面構造要素を含むように修正することができ、以下の図に示すような複数回使用デバイス1を提供することができる。複数回使用デバイス1の測定チャンバ3は、図3に示すようなセンサアセンブリと同様の又は同じ寸法及び容量を有することができる。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態に係る複数回使用デバイス1を示し、流体試料4は、入口16を介してデバイス1の測定チャンバ3に入り、測定チャンバ3を通って流れ、出口17を介して測定チャンバ3を出ることができる。特に、デバイス1は、流体試料4の流路が、複数回の使用を通じて、単一方向に、すなわち、1つの方向(入口16から測定チャンバ3を通って出口17まで)にのみ走ることを可能にするように適合されてもよい。図示の例では、流体試料は血液試料であってもよい。しかしながら、流体試料は、また、例えば、すすぎ溶液、胸水、透析液試料、又は品質管理材料などの別の液体であってもよい。デバイス1は、流体試料を分析するための分析装置8に組み込まれるセンサカセット7の一部であってもよい。図4において、センサカセット7及び分析装置8の両方ともに、更なる詳細は示されていない。出願人の欧州特許第2147307B1号に示されるセンサアセンブリは、本出願の表面構造要素を組み込むことによって修正されてもよく、それによって本発明による複数回使用デバイスを提供することができる。分析装置8は、血液試料がデバイス1の測定チャンバ3内に収容されたときに、血液試料4の血液ガス分析を行うように適合されてもよい。
【0042】
図4に示すような実施形態では、デバイス1は、内壁面9を形成する本体部2を備える。本体部2は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、若しくはスチレンジメチルメタクリレートコポリマー、又はこれらの任意の組み合わせから選択される材料で作製されていてもよい。内壁面9は、デバイス1内に流体試料4を収容するための測定チャンバ3の外側境界を画定する。
【0043】
図4に示すように、センサシステム10は、測定チャンバの内部に配置されてもよい。このセンサシステム10は、図3に関連して説明されるように、複数の検体センサを含んでもよい。あるいは、図5に示すように、流体試料4を、特に血液試料を、測定チャンバ3の外側に位置する好適なセンサシステム10によって分析することができるように、測定チャンバ3は透明であってもよい。
【0044】
図4に示すような実施形態では、測定チャンバ3はマイクロチャネル3の形状を備える。マイクロチャネル3は、約10mm~60mm以下、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60mm、特に30、31、32、33、34、又は35mmの長さを有することができる。マイクロチャネル3の幅は、端点を含め、例えば、1~5mm、1~4mm、1~3mm、2~5mm、3~5mm、2~4mm、2~3mm、特に2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0mmであってもよい。更に、マイクロチャネル3の深さは、0.2~0.6mm以下、例えば0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、又は0.60mmとすることができる。流体試料4が入口16を介してマイクロチャネル3内に吸い込まれるように、マイクロチャネル3の出口17に真空を適用することができる。あるいは、大気圧よりも高い値を有する過圧力をマイクロチャネル3の入口16に印加して、流体試料4がマイクロチャネル3内に押し込まれるようにしてもよい。入口と出口との間の圧力差は、大気圧(atm)の0~0.40以下、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40であり得る。このような圧力差は、0~100mm/秒以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mm/秒の流体試料の流速をもたらすことができる。
【0045】
本体部2の内壁面9は、第1の壁部11及び第2の壁部12を備えてもよい。第1の壁部11は、第2の壁部12に対して実質的に平行に走ってもよく、測定チャンバ3は、第1の壁部11と第2の壁部12との間に延びる。したがって、第1の壁部11は、マイクロチャネル3の下部境界を構築してもよく、第2の壁部は、マイクロチャネル3の上部境界を構築してもよい。流体伝播の方向xは、第1の壁部11及び第2の壁部12に対して実質的に平行に走ってもよい。第1の壁部11及び第2の壁部12は、横方向要素(図3図6には示されていない)によって、両側面で閉じるように接続されてもよい。これによって、マイクロチャネル3の側部境界が構築される。壁部11、12と側部との間の接続はまた、封止された様式で実現されてもよい。
【0046】
図4に示すように、内壁面9の表面は均一ではなく、表面構造13又は溝を含む。この表面構造13は、測定チャンバ3が流体試料4で充填されるときに、液体試料4が測定チャンバ3内で非対称に伝播することを回避するのに役立つ設計を有する。図示の例では、第1の壁部11及び第2の壁部12の両方は、波状又は起伏形態の同じ表面構造13を備える。横方向要素もまた、壁部11及び12のような表面構造を含んでもよい。しかしながら、これは必須ではなく、横方向要素はまた、均一な表面を有してもよい。
【0047】
図4に示すように、第2の壁部11の表面構造13の起伏形態は、第1の壁部11の表面構造13に対して軸対称(特に、マイクロチャネル3の長手方向軸Lに対して軸対称)であってもよい。表面構造11は、交互の隆起部14を含んでもよい。隆起部14は、縮小部15又は陥没部よりも、マイクロチャネル3内の半径内向き方向に突出しており、縮小部15又は陥没部は、マイクロチャネル3内の半径内向き方向にあまり突出していない。
【0048】
表面構造13は、流体試料4が入口16を介して測定チャンバ3に入る間、流体試料4が測定チャンバ3を通って流れる間、及び流体試料4が出口17を介して測定チャンバ3を出る間、流体試料4の流頭6の方向xにおける伝播を制御するように適合されてもよい。表面構造13の形状は、流体試料4の流頭6の流速に応じて選択されてもよく、流速は、測定チャンバ3の入口16と出口17との間の圧力差によって印加されてもよい。特に、表面構造要素(図示の例では、隆起部14及び縮小部15)は、(図4に示すような)起伏形状、又は、例えば、半円形、半楕円形、三角形、台形、平行四辺形、矩形、正方形、これらの任意の融合、及びこれらの任意の組み合わせから選択される形状を有してもよい。また、表面構造13は、位相が一致していても、又は不一致であってもよい。
【0049】
表面構造13は、流体試料4が測定チャンバ3内に充填されるとき及び測定チャンバ3が再び空にされるとき(図8を比較)、表面構造13の領域において流体伝播の方向xにおける流体試料4の伝播を制限することを可能にし得る。特に、表面構造13の設計は、流体伝播が段階的に(図4図6に例示的に示される)進行するよう制限することを可能にするようなものであってもよい。図示された例では、これは、記載された表面構造13の設計により、毛管作用の発生を回避できるため、特に、流体試料4が表面構造13の領域において、流体伝播の方向xに段階的に小刻みに進行するように、流体試料4の毛管力の発生を制御できるため達成される。
【0050】
表面構造13は、内壁面9における流体試料が、測定チャンバ3の中央に位置して前方に移動する流体試料に比較して、先行して進まないようにすることを可能にする。これにより、非対称の流体形状又は流頭6となるリスクを低減することができる。その結果、試料流体中に空気が閉じ込められるリスク及び測定チャンバ3を空にした後の残留試料のリスクを低減することができる。加えて、湿潤性が乏しいことに関連するエラーの数、例えば、廃棄される試料、不均質な液体、又は他の液体搬送関連エラーに関連するエラーの数を減少させることができる。
【0051】
図6a~図6cは、どのようにして表面構造13が、表面構造13の領域内において、流体試料4の流体伝播の方向xへの伝播を段階的に小刻みな伝播に制限するように適合され得るかを示す。明確さのために、センサシステム10は、図6a~図6cには示されていない。図4に示す充填状態から開始して、流体試料4、特に流頭6は、第1の壁部11の領域において方向xにおける第1のステップを伝播し、したがって流頭6は図6aに示す位置にある。この第1のステップは、段階的に「小刻み」の例である。続いて、図6aに示す充填状態から開始して、流体試料4、特に流頭6は、第2の壁部12の領域において方向xにおける第2のステップを伝播し又は辿り、したがって流頭6は図6bに示す位置にある。その後、図6bに示す充填状態から開始して、流体試料4、特に流頭6は、第2の壁部12の領域において方向xにおける第3のステップを伝播し、したがって流頭6は図6cに示す位置にある。あるいは、やはり図6bに示す充填状態から開始して、流体試料4、特に流頭6は、第1の壁部11の領域において方向xにおける第3のステップを伝播してもよい(図6cに示されていない)。
【0052】
流体試料のこの交互で段階的な伝播がマイクロチャネル3の長手方向軸Lに沿って繰り返される。特に、第1の壁部11の領域におけるステップは、第1の壁部11の第1の隆起部14.1で始まって第1の壁部11の第2の隆起部14.2で終ってもよく、第2の隆起部14.2は第1の隆起部14.1に隣接している。また、第2の壁部12の領域における第2のステップは、第2の壁部12の第1の隆起部14.3で始まって第2の壁部12の第2の隆起部14.4で終ってもよく、第2の隆起部14.4は第1の隆起部14.3に隣接している。
【0053】
図7は、図3に示すような複数回使用デバイス1内に収容されている流体4を分析する例示的な方法のフローチャートを示す。第1の工程100では、図3に示す分析装置8が提供される。分析装置8は、図3に示すようなセンサカセット7及び複数回使用デバイス1を備える。第2の工程200では、図4図6に関して上述したように、流体試料4をデバイス1の測定チャンバ3内に充填することができる。第3の工程300では、デバイス1の測定チャンバ3内に収容されている流体試料4を、分析装置1によって、特にセンサシステム10によって分析することができる。特に、流体試料は血液試料であってもよく、分析工程300は、血液ガス分析を含む。流体試料の分析が完了した後、工程400において、測定チャンバを空にすることができる。これは、測定チャンバの充填と関連して上述したように、出口に真空を適用すること、又は入口に過圧力を印加することによって行われてもよい。
【0054】
続いて、工程500では、好適なすすぎ液を使用して、測定チャンバをすすぐことができる。更に、工程600では、較正工程を実行して、センサが準備され次の流体試料を分析する用意ができていることを確実にすることができる。例えば、測定チャンバは、(前述のすすぎ工程後に)較正液で充填されてもよい。これらの液体による読み取り値が一定の範囲内にある場合、これは、センサが意図されるように機能しており、デバイスが次の流体試料を収容し分析する準備ができていることを示し得る。次に、前述の工程200~500又は200~600を、特に異なる流体試料について、繰り返すことができる。
【0055】
図8は、空にされている間の測定チャンバ3を示す。表面構造13は、特に、流体試料4が測定チャンバ3を通って流れる間、及び流体試料4が出口17を介して測定チャンバ3を出る間、流体試料4の最後尾(図3図7と比較して、流頭6とは反対側に走る)の端面18のx方向における伝播を制御するように適合されてもよい。当該端面18は、気体前面、特に、測定チャンバ3を通って伝播する空気前面、特に流体試料4の流頭6と同じ方向xに伝播する空気前面であってもよい。
【0056】
図9は、三角形の形状を有する表面構造13を含む複数回使用デバイス1の一部を示す。表面構造13は、第1の壁部12内、及び第2の壁部(図示せず、図3図7と比較)内の表面構造13全体に沿って、又は全体にわたって均一に分布し得るパターンを含む。長手方向断面において、パターンは、三角形の第1の辺19と三角形の第2の辺20の列を含んでもよく、第1の辺19は第2の辺20と接続されている。第1の辺19と第2の辺20との間の角度βは、鈍角、例えば160°の範囲、特に157.38°であってもよい。第1の辺19及び第2の辺20は、同じ長さを有してもよい。第1の辺19及び/又は第2の辺20の長さは、1mm以下、例えば、0.5mmの寸法であってもよい。
【0057】
図10は、台形形状を有する表面構造13を備える複数回使用デバイス1の一部を示す。表面構造13は、第1の壁部12内、及び第2の壁部(図示せず、図3図7と比較)内の表面構造13全体に沿って、又は全体にわたって均一に分布し得るパターンを含む。長手方向断面において、パターンは、隆起部14(流体試料4の伝播方向xに平行に走ってもよい)と、縮小部15との列を含んでもよく、隆起部14は辺21を介して縮小部15と接続されている。辺21と、縮小部15の垂線との間の角度γは、30°の範囲であってもよい。
【0058】
図11は、表面構造の代替的な形状を有する、本発明の一実施形態に係る複数回使用デバイスの一部を示す。拡大図は、表面構造13の構造の形状において、隆起部14は頂部、すなわち、試料に対向する部分が平面(平坦)であり、縮小部15は、図10における平面(平坦)な縮小部15とは対照的な歯先切り込み又は歯先円錐角の形状を有することを示す。図10の21に対応する表面構造の側面は、ほぼ丸みを帯びる又は真っ直ぐであることができる。したがって、互いに隣接して配置された個々の表面構造要素は、平面(平坦)な頂部を有する、台形から半円形又は半楕円体に及ぶ形状を有し得る。
【0059】
図12は、右から左への流れ方向Xに走る暗色の試料で部分的に充填された測定チャンバを示し、壁部における表面構造を有する測定チャンバ(図12b)と、壁部における表面構造を有さない測定チャンバ(図12a)とが比較されている。表面構造が存在しない測定チャンバ(a)内では、非常に不均一な流頭及び試料堆積物を壁部に沿って観察することができる。測定チャンバ内の表面構造の存在(b)は、測定チャンバ内により均一な流頭をもたらし、試料堆積物が生じない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b