(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】電極製造装置及び電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20221104BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20221104BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20221104BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20221104BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20221104BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20221104BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01G13/00 381
H01G11/50
H01G11/86
H01G11/06
(21)【出願番号】P 2020552963
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035896
(87)【国際公開番号】W WO2020084949
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018200085
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友哉
(72)【発明者】
【氏名】南坂 健二
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 一英
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】相田 一成
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-077963(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088311(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047030(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/146223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/39
H01G 13/00-13/06
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体における前記活物質にアルカリ金属をドープして帯状のドープ電極を製造する電極製造装置であって、
前記電極前駆体が有するマークを検出するように構成されたセンサと、
アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するように構成された少なくとも1つのドーピング槽と、
前記電極前駆体を、前記ドーピング槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、
前記ドーピング槽に収容されるように構成された対極ユニットと、
前記電極前駆体と前記対極ユニットとを電気的に接続するように構成された接続ユニットと、
前記接続ユニットを介して、前記対極ユニットに電流を流すように構成された電源と、
前記センサの検出結果に基づき、前記電源を制御するように構成された電源制御ユニットと、
を備える電極製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造装置であって、
前記ドーピング槽、前記対極ユニット、前記接続ユニット、及び前記電源を含む単位を複数備え、
前記電源制御ユニットは、複数の前記単位のそれぞれについて、前記電源を制御するように構成された電極製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極製造装置であって、
前記マークは、前記電極前駆体のうち、前記活物質を含む層が形成されていない部分の、長手方向における開始位置と、長手方向における終了位置とを示す位置に設けられている電極製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電極製造装置であって、
前記開始位置を示す位置に設けられたマークと、前記終了位置を示す位置に設けられたマークとが、前記電極前駆体の幅方向において異なる位置に設けられている電極製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の電極製造装置であって、
前記マークは、前記電極前駆体のうち、前記活物質を含む層が形成されていない部分に対応して設けられている電極製造装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の電極製造装置であって、
前記搬送ユニットが導電性の搬送ローラを含み、
前記導電性の搬送ローラは前記接続ユニットの一部である電極製造装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の電極製造装置であって、
前記電源制御ユニットは、前記センサの検出結果と、前記電極前駆体の搬送速度とに基づき、前記電源における電流値を制御するように構成された電極製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電極製造装置であって、
前記電源制御ユニットは、前記センサの検出結果と、前記電極前駆体の搬送速度とに基づき、前記電源のオン/オフを切り替えるタイミングを制御するように構成された電極製造装置。
【請求項9】
活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体における前記活物質にアルカリ金属をドープして帯状のドープ電極を製造する電極製造方法であって、
アルカリ金属イオンを含む溶液及び対極ユニットを収容する少なくとも1つのドーピング槽内を通過する経路に沿って前記電極前駆体を搬送し、
前記電極前駆体と前記対極ユニットとを
、接続ユニットにより電気的に接続し、
電源を用い、前記接続ユニットを介して、前記対極ユニットに電流を流し、
センサを用いて前記電極前駆体が有するマークを検出し、
前記センサの検出結果に基づき、前記電源を制御する電極製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電極製造方法であって、
複数の前記ドーピング槽内を順次通過する経路に沿って前記電極前駆体を搬送し、
複数の前記ドーピング槽のそれぞれについて、前記電源を制御する電極製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電極製造方法であって、
前記マークは、前記電極前駆体のうち、前記活物質を含む層が形成されていない部分の、長手方向における開始位置と、長手方向における終了位置とを示す位置に設けられている電極製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電極製造方法であって、
前記開始位置を示す位置に設けられたマークと、前記終了位置を示す位置に設けられたマークとが、前記電極前駆体の幅方向において異なる位置に設けられている電極製造方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれかに記載の電極製造方法であって、
前記マークは、前記電極前駆体のうち、前記活物質を含む層が形成されていない部分に対応して設けられている電極製造方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれかに記載の電極製造方法であって、
導電性の搬送ローラを用いて前記電極前駆体を搬送する電極製造方法。
【請求項15】
請求項9~14のいずれかに記載の電極製造方法であって、
前記センサの検出結果と、前記電極前駆体の搬送速度とに基づき、前記電源における電流値を制御する電極製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電極製造方法であって、
前記センサの検出結果と、前記電極前駆体の搬送速度とに基づき、前記電源のオン/オフを切り替えるタイミングを制御する電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2018年10月24日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-200085号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-200085号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は電極製造装置及び電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。更に、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。アルカリ金属を電極にプレドープする方法として、例えば、連続式の方法がある。連続式の方法では、帯状の電極板を電解液中で移送させながらプレドープを行う。連続式の方法は、特許文献1~4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-308212号公報
【文献】特開2008-77963号公報
【文献】特開2012-49543号公報
【文献】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
帯状の電極板には、活物質層が形成されず、基材がむき出しになった部分(以下では基材露出部とする)が存在することがある。基材露出部に対しプレドープを行うと、基材上にアルカリ金属が析出する。基材上に析出したアルカリ金属は様々な問題を生じさせる。
【0008】
また、帯状の電極板同士を繋ぎ合わせてから、プレドープを行うことがある。帯状の電極板同士を繋ぎ合わせた部分(以下では繋ぎ合わせ部とする)は抵抗が高い。繋ぎ合わせ部に対しプレドープを行うと、抵抗発熱が大きくなる。抵抗発熱が大きいと、電解液の温度が上昇し、プレドープの結果にばらつきが生じてしまう。
【0009】
本開示の1つの局面では、電極の一部においてプレドープを抑制できる電極製造装置及び電極製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の1つの局面は、活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体における前記活物質にアルカリ金属をドープして帯状のドープ電極を製造する電極製造装置であって、前記電極前駆体が有するマークを検出するように構成されたセンサと、アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するように構成された少なくとも1つのドーピング槽と、前記電極前駆体を、前記ドーピング槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、前記ドーピング槽に収容されるように構成された対極ユニットと、前記電極前駆体と前記対極ユニットとを電気的に接続するように構成された接続ユニットと、前記接続ユニットを介して、前記対極ユニットに電流を流すように構成された電源と、前記センサの検出結果に基づき、前記電源を制御するように構成された電源制御ユニットと、を備える電極製造装置である。
【0011】
本開示の1つの局面である電極製造装置は、センサを用いて、電極前駆体が有するマークを検出する。本開示の1つの局面である電極製造装置は、マークの検出結果に基づき、電源を制御する。そのことにより、本開示の1つの局面である電極製造装置は、電極前駆体のうち、マークと所定の位置関係にある一部においてプレドープを抑制できる。
【0012】
本開示の別の局面は、活物質を含む層を有する帯状の電極前駆体における前記活物質にアルカリ金属をドープして帯状のドープ電極を製造する電極製造方法であって、アルカリ金属イオンを含む溶液及び対極ユニットを収容する少なくとも1つのドーピング槽内を通過する経路に沿って前記電極前駆体を搬送し、前記電極前駆体と前記対極ユニットとを電気的に接続し、電源を用い、前記接続ユニットを介して、前記対極ユニットに電流を流し、センサを用いて前記電極前駆体が有するマークを検出し、前記センサの検出結果に基づき、前記電源を制御する電極製造方法である。
【0013】
本開示の別の局面である電極製造方法では、センサを用いて、電極前駆体が有するマークを検出する。本開示の別の局面である電極製造方法では、マークの検出結果に基づき、電源を制御する。そのことにより、本開示の別の局面である電極製造方法によれば、電極前駆体のうち、マークと所定の位置関係にある一部においてプレドープを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】電解液槽を下方に移動させた状態を表す説明図である。
【
図3】電極製造装置の電気的構成を表す説明図である。
【
図4】対極ユニット及び多孔質絶縁部材の構成を表す側断面図である。
【
図6】
図5及び
図8におけるVI-VI断面での断面図である。
【
図7】電源制御ユニットが実行する処理を表すフローチャートである。
【
図8】別形態の電極前駆体の構成を表す平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1…電極製造装置、7、203、205、207…電解液槽、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、305、307、109、311、313、315、317、119、321、323、33、35、37、39、41、43、45…搬送ローラ、47…供給ロール、49…巻取ロール、51、52、54…対極ユニット、53…多孔質絶縁部材、55…支持台、57…循環濾過ユニット、61、62、64…直流電源、63…ブロア、65…センサ、66…電源制御ユニット、67、68、70…支持棒、69…仕切り板、71…空間、73…電極前駆体、75…電極、77…導電性基材、79…アルカリ金属含有板、81…フィルタ、83…ポンプ、85…配管、87、89、91、93、97、99…ケーブル、93…集電体、95…活物質層、101…CPU、103…洗浄槽、105…メモリ、107…マーク、107A…先頭マーク、107B…後方マーク、111…マーク対象部
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.電極製造装置1の構成
電極製造装置1の構成を、
図1~
図4に基づき説明する。
図1に示すように、電極製造装置1は、電解液槽203、205、7、207と、洗浄槽103と、搬送ローラ9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、305、307、109、311、313、315、317、119、321、323、33、35、37、39、41、43、45(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51、52、54と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、3つの直流電源61、62、64と、ブロア63と、センサ65と、電源制御ユニット66と、を備える。電解液槽205、7、207はドーピング槽に対応する。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。
【0017】
電解液槽205は、
図1及び
図2に示すように、上方が開口した角型の槽である。電解液槽205の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液槽205内には、仕切り板69と、4個の対極ユニット51と、4個の多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ27とが存在する。
図2に示すように、4個の多孔質絶縁部材53には、53a、53b、53c、53dが含まれる。
【0018】
仕切り板69は、その上端を貫く支持棒67により支持されている。支持棒67は図示しない壁等に固定されている。仕切り板69のうち、上端を除く部分は、電解液槽205内にある。仕切り板69は上下方向に延び、電解液槽205の内部を2つの空間に分割している。仕切り板69の下端に、搬送ローラ27が取り付けられている。仕切り板69と搬送ローラ27とは、それらを貫く支持棒68により支持されている。なお、仕切り板69の下端付近は、搬送ローラ27と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ27と、電解液槽205の底面との間には空間が存在する。
【0019】
4個の対極ユニット51は、それぞれ、それらの上端を貫く支持棒70により支持され、上下方向に延びている。支持棒70は図示しない壁等に固定されている。対極ユニット51のうち、上端を除く部分は、電解液槽205内にある。4個の対極ユニット51のうち、2個は、仕切り板69を両側から挟むように配置されている。残りの2個の対極ユニット51は、電解液槽205の内側面に沿って配置されている。
【0020】
図1に示すように、仕切り板69側に配置された対極ユニット51と、電解液槽205の内側面に沿って配置された対極ユニット51との間には空間71が存在する。対極ユニット51は、直流電源61のプラス極に接続される。対極ユニット51の詳しい構成は後述する。
【0021】
それぞれの対極ユニット51における空間71側の表面に、多孔質絶縁部材53が取り付けられている。多孔質絶縁部材53の詳しい構成は後述する。
【0022】
電解液槽203は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽203は、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53を備えない。また、電解液槽203は、搬送ローラ27に代えて、搬送ローラ17を備える。搬送ローラ17は、搬送ローラ27と同様のものである。
【0023】
電解液槽7は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽7は、4個の対極ユニット51及び搬送ローラ27に代えて、4個の対極ユニット54及び搬送ローラ109を備える。4個の対極ユニット54は、4個の対極ユニット51と同様のものである。搬送ローラ109は、搬送ローラ27と同様のものである。対極ユニット54は、直流電源62のプラス極に接続される。
【0024】
電解液槽207は、電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽207は、4個の対極ユニット51及び搬送ローラ27に代えて、4個の対極ユニット52及び搬送ローラ119を備える。4個の対極ユニット52は、4個の対極ユニット51と同様のものである。搬送ローラ119は、搬送ローラ27と同様のものである。対極ユニット52は、直流電源64のプラス極に接続される。
【0025】
洗浄槽103は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽103は、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53を備えない。また、洗浄槽103は、搬送ローラ27に代えて、搬送ローラ37を備える。搬送ローラ37は、搬送ローラ27と同様のものである。
【0026】
搬送ローラ25、29、307、311、317、321は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、後述する電極前駆体73を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極前駆体73を搬送する経路は、供給ロール47から、電解液槽203の中、電解液槽205の中、電解液槽7の中、電解液槽207の中、及び洗浄槽103の中を順次通り、巻取ロール49に至る経路である。
【0027】
その経路のうち、電解液槽203の中を通る部分は、まず、電解液槽203の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ17により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽203の内側面と、それに対向する仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0028】
また、上記の経路のうち、電解液槽205の中を通る部分は、まず、電解液槽205の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ27により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽205の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0029】
また、上記の経路のうち、電解液槽7の中を通る部分は、まず、電解液槽7の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ109により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽7の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0030】
また、上記の経路のうち、電解液槽207の中を通る部分は、まず、電解液槽207の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ119により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽207の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0031】
また、上記の経路のうち、洗浄槽103の中を通る部分は、まず、洗浄槽103の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ37により移動方向を上向きに変えられ、最後に、洗浄槽103の内側面と、仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0032】
供給ロール47は、その外周に電極前駆体73を巻き回している。すなわち、供給ロール47は、巻き取られた状態の電極前駆体73を保持している。搬送ローラ群は、供給ロール47に保持された電極前駆体73を引き出し、搬送する。
【0033】
巻取ロール49は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極75を巻き取り、保管する。なお、電極75は、電極前駆体73に対し、電解液槽205、7、207においてアルカリ金属のプレドープを行うことで製造されたものである。電極75はドープ電極に対応する。
【0034】
対極ユニット51、52、54は、板状の形状を有する。
図4に示すように、対極ユニット51、52、54は、導電性基材77と、アルカリ金属含有板79とを積層した構成を有する。導電性基材77の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の厚さは、例えば、0.03~3mmとすることができる。
【0035】
多孔質絶縁部材53は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材53は、
図4に示すように、アルカリ金属含有板79の上に積層され、対極ユニット51、52、54の表面に取り付けられている。多孔質絶縁部材53が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材53が対極ユニット51、52、54の表面に取り付けられている際の形状である。多孔質絶縁部材53は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0036】
図4に示すように、多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ群により搬送される電極前駆体73とは非接触である。多孔質絶縁部材53の表面から、電極前駆体73までの最短距離dは、0.5~100mmの範囲内であることが好ましく、1~10mmの範囲内であることが特に好ましい。最短距離dとは、多孔質絶縁部材53の表面のうち、電極前駆体73に最も近い点と、電極前駆体73との距離である。
【0037】
多孔質絶縁部材53は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材53を通過することができる。そのことにより、対極ユニット51、52、54は、ドープ溶液に接触することができる。
【0038】
多孔質絶縁部材53としては、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定でき、例えば、0.1μm~10mmとすることができるが、0.1~5mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定でき、例えば、1μm~10mmとすることができるが、30μm~1mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定でき、例えば、5~98%とすることができるが、5~95%であることが好ましく、50~95%の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0039】
多孔質絶縁部材53は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0040】
支持台55は、電解液槽203、205、7、207及び洗浄槽103を下方から支持する。支持台55は、その高さを変えることができる。仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53の上下方向における位置を維持したまま、電解液槽205を支持する支持台55を低くすると、
図2に示すように、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽205を相対的に下方に移動させることができる。また、支持台55高くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽205を相対的に上方に移動させることができる。電解液槽203、7、207及び洗浄槽103を支持する支持台55も同様の機能を有する。
【0041】
循環濾過ユニット57は、電解液槽203、205、7、207にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット57は、フィルタ81と、ポンプ83と、配管85と、を備える。
【0042】
電解液槽203に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽203から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽203に戻る循環配管である。電解液槽203内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽203に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ81により濾過される。異物としては、ドープ溶液から析出した異物や、電極前駆体73から発生する異物等が挙げられる。フィルタ81の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂とすることができる。フィルタ81の孔径は適宜設定でき、例えば、30~50μmとすることができる。
【0043】
電解液槽205、7、207に設けられた循環濾過ユニット57も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。なお、
図1、
図2において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0044】
図3に示すように、直流電源61におけるマイナス端子は、ケーブル87を介して、搬送ローラ25、29とそれぞれ接続する。また、直流電源61のプラス端子は、ケーブル89を介して、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ25、29と接触する。電極前駆体73と対極ユニット51とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット51とは電気的に接続する。
【0045】
ケーブル87、89、及び搬送ローラ25、29は接続ユニットに対応する。直流電源61は、ケーブル87、89、及び搬送ローラ25、29を介して対極ユニット51に電流を流す。
【0046】
図3に示すように、直流電源62におけるマイナス端子は、ケーブル91を介して、搬送ローラ307、311とそれぞれ接続する。また、直流電源62のプラス端子は、ケーブル93を介して、合計4個の対極ユニット54にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ307、311と接触する。電極前駆体73と対極ユニット54とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット54とは電気的に接続する。
【0047】
ケーブル91、93、及び搬送ローラ307、311は接続ユニットに対応する。直流電源62は、ケーブル91、93、及び搬送ローラ307、311を介して対極ユニット54に電流を流す。
【0048】
図3に示すように、直流電源64におけるマイナス端子は、ケーブル97を介して、搬送ローラ317、321とそれぞれ接続する。また、直流電源64のプラス端子は、ケーブル99を介して、合計4個の対極ユニット52にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ317、321と接触する。電極前駆体73と対極ユニット52とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット52とは電気的に接続する。
【0049】
ケーブル97、99、及び搬送ローラ317、321は接続ユニットに対応する。直流電源64は、ケーブル97、99、及び搬送ローラ317、321を介して対極ユニット52に電流を流す。
【0050】
ブロア63は、洗浄槽103から出てきた電極75にガスを吹きつけて洗浄液を気化させ、電極75を乾燥させる。使用するガスは、アルカリ金属がプレドープされた活物質に対して不活性なガスであることが好ましい。そのようなガスとして、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水分が除去された除湿空気等が挙げられる。
【0051】
センサ65は、電極前駆体73の搬送経路のうち、電解液槽203よりも上流側の位置に固定されている。センサ65は、電極前駆体73のマークを検出することができる。マークについては後述する。センサ65は、例えば、画像センサ、赤外線センサ等である。
【0052】
図3に示すように、電源制御ユニット66は、直流電源61、62、64と、センサ65と電気的に接続している。電源制御ユニット66は、CPU101と、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ(以下、メモリ105とする)と、を有するマイクロコンピュータである。
【0053】
2.電極前駆体73の構成
電極前駆体73の構成を
図5及び
図6に基づき説明する。電極前駆体73は、
図5に示すように、帯状の形状を有する。電極前駆体73は、
図6に示すように、帯状の集電体93と、その両側に形成された活物質層95とを備える。
【0054】
集電体93としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体93は、上記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体93の厚みは、例えば、5~50μmとすることができる。
【0055】
活物質層95は、例えば、アルカリ金属をドープする前の活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、このスラリーを集電体93上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
【0056】
上記バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0057】
上記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤が挙げられる。
【0058】
活物質層95の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。
【0059】
活物質層95に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されるものではなく、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0060】
負極活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料の具体例としては、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例としては、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0061】
正極活物質としては、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。
【0062】
正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。本開示の電極製造装置1は、負極活物質にアルカリ金属をプレドープする場合に適しており、特に、負極活物質が炭素材料又はSi若しくはその酸化物を含む材料であることが好ましい。
【0063】
活物質にプレドープするアルカリ金属としては、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。電極前駆体73を、リチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層95の密度は、好ましくは1.50~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60~1.90g/ccである。
【0064】
図5に示すように、電極前駆体73は、マーク107を有することがある。マーク107は、電極前駆体73における欠陥部や繋ぎ合わせ部等(以下ではマーク対象部111とする)の近傍に設けられる印である。マーク対象部111は、プレドープを抑制すべき部分である。
マーク107は、例えば、作業者が付けることができる。マーク107は、例えば、電極前駆体73に貼り付けられたテープ、電極前駆体73に形成された孔等である。
【0065】
欠陥部は、例えば、活物質層95が形成されていない基材露出部である。繋ぎ合わせ部とは、2つの集電体93を、それらの端部同士で繋ぎ合わせた部分である。
【0066】
マーク107は、例えば、先頭マーク107Aと、後方マーク107Bとから構成される。先頭マーク107Aは、マーク対象部111の長手方向における開始位置を示す位置に設けられる。後方マーク107Bは、マーク対象部111の長手方向における終了位置を示す位置に設けられる。なお、長手方向における開始位置とは、電極前駆体73の搬送方向Fにおける先頭側であり、長手方向における終了位置とは、電極前駆体73の搬送方向Fにおける後方側である。
【0067】
先頭マーク107Aと後方マーク107Bとは、電極前駆体73の幅方向において異なる位置に設けられている。先頭マーク107Aと後方マーク107Bとを、電極前駆体73の幅方向において異なる位置に設けることで、先頭マーク107A及び後方マーク107Bが、それぞれ、開始位置又は終了位置のいずれを示すのかを容易に判断することができる。
【0068】
電極前駆体73の搬送経路における1点に着目したとき、最初に、先頭マーク107Aがその点を通過し、次に、マーク対象部111がその点を通過し、最後に、後方マーク107Bがその点を通過する。
【0069】
3.ドープ溶液の組成
電極製造装置1を使用するとき、電解液槽203、205、7、207に、アルカリ金属イオンを含む溶液(以下ではドープ溶液とする)を収容する。
【0070】
ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0071】
また、上記有機溶媒として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。上記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0072】
上記ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部としては、例えば、PF6
-、PF3(C2F5)3
-、PF3(CF3)3
-等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF4
-、BF2(CF)2
-、BF3(CF3)-、B(CN)4
-等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO2)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CF3SO3
-等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0073】
上記ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。この範囲内である場合、アルカリ金属のプレドープが効率よく進行する。
【0074】
上記ドープ溶液は、更に、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0075】
上記ドープ溶液は、ホスファゼン化合物等の難燃剤をさらに含有することができる。難燃剤の添加量の下限としては、アルカリ金属をドープする際の熱暴走反応を効果的に制御する観点から、ドープ溶液100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、難燃剤の添加量の上限としては、高品質のドープ電極を得る観点から、ドープ溶液100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0076】
4.電極製造装置1を用いた電極75の製造方法
まず、電極75を製造するための準備として、以下のことを行う。電極前駆体73を供給ロール47に巻き回す。次に、搬送ローラ群により、電極前駆体73を供給ロール47から引き出し、上述した経路に沿って巻取ロール49まで通紙する。そして、電解液槽203、205、7、207、及び洗浄槽103を上昇させ、
図1に示す定位置へセットする。電解液槽203、205、7、207にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、上記「3.ドープ溶液の組成」で述べたものである。洗浄槽103に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。その結果、電解液槽203、205、7、207の空間71は電解液で満たされる。洗浄槽103の空間71は洗浄液で満たされる。
【0077】
次に、搬送ローラ群により、供給ロール47から巻取ロール49まで通紙された電極前駆体73を供給ロール47から巻取ロール49に向かって、引き出し、上述した経路に沿って搬送する。電極前駆体73が電解液槽205、7、207内を通過するとき、活物質層95に含まれる活物質にアルカリ金属がプレドープされる。ただし、後述するように、電極製造装置1が、直流電源61、62、64のいずれかをオフにしたときは、対応する電解液槽においてプレドープは行われない。
【0078】
活物質にアルカリ金属がプレドープされることにより、電極前駆体73が電極75となる。電極75は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽103で洗浄される。最後に、電極75は、巻取ロール49に巻き取られる。
【0079】
電極製造装置1を用いて製造する電極75は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、電極製造装置1は、正極活物質にアルカリ金属をドープし、負極を製造する場合、電極製造装置1は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。
【0080】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%であり、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。
【0081】
5.電源制御ユニット66が実行する処理
電極製造装置1を用いて電極75を製造しているとき、電源制御ユニット66が所定時間ごとに繰り返し実行する処理を、
図7に基づき説明する。
【0082】
ステップ1では、センサ65を用いて先頭マーク107A、及び後方マーク107Bを検出できたか否かを電源制御ユニット66が判断する。先頭マーク107A、及び後方マーク107Bを検出できたと判断した場合、本処理はステップ2に進む。先頭マーク107A、及び後方マーク107Bを検出できなかったと判断した場合、本処理はステップ10進む。
【0083】
ステップ2では、電源制御ユニット66が以下のタイミングT1~T6を算出する。
【0084】
T1:先頭マーク107Aが電解液槽205に入るタイミング。
【0085】
T2:後方マーク107Bが電解液槽205から出るタイミング。
【0086】
T3:先頭マーク107Aが電解液槽7に入るタイミング。
【0087】
T4:後方マーク107Bが電解液槽7から出るタイミング。
【0088】
T5:先頭マーク107Aが電解液槽207に入るタイミング。
【0089】
T6:後方マーク107Bが電解液槽207から出るタイミング。
【0090】
電源制御ユニット66は、センサ65が先頭マーク107A及び後方マーク107Bを検出したタイミングと、電極前駆体73の搬送速度とに基づき、タイミングT1~T6を算出する。電極前駆体73の搬送速度は、例えば、作業者が電源制御ユニット66に入力することができる。また、電源制御ユニット66が、速度センサ等を用いて搬送速度を取得してもよい。なお、搬送経路上で、センサ65から電解液槽205、7、207の入口までの距離、センサ65から電解液槽205、7、207の出口までの距離は既知の値であり、予めメモリ105に記憶されている。
【0091】
電源制御ユニット66は、算出したタイミングT1~T6をメモリ105に記憶する。なお、電源制御ユニット66は、タイミングT6が経過したとき、メモリ105からタイミングT1~T6を消去する。
【0092】
ステップ3では、現時点がタイミングT1とタイミングT2との間であるか否かを電源制御ユニット66が判断する。現時点がタイミングT1とタイミングT2との間であると判断した場合、本処理はステップ4に進む。現時点がタイミングT1とタイミングT2との間ではないと判断した場合、本処理はステップ5に進む。
【0093】
ステップ4では、電源制御ユニット66が、直流電源61をオフにする。なお、電源制御ユニット66は、直流電源62、64はオンにする。
【0094】
ステップ5では、現時点がタイミングT3とタイミングT4との間であるか否かを電源制御ユニット66が判断する。現時点がタイミングT3とタイミングT4との間であると判断した場合、本処理はステップ6に進む。現時点がタイミングT3とタイミングT4との間ではないと判断した場合、本処理はステップ7に進む。
【0095】
ステップ6では、電源制御ユニット66が、直流電源62をオフにする。なお、電源制御ユニット66は、直流電源61、64はオンにする。
【0096】
ステップ7では、現時点がタイミングT5とタイミングT6との間であるか否かを電源制御ユニット66が判断する。現時点がタイミングT5とタイミングT6との間であると判断した場合、本処理はステップ8に進む。現時点がタイミングT5とタイミングT6との間ではないと判断した場合、本処理はステップ9に進む。
【0097】
ステップ8では、電源制御ユニット66が、直流電源64をオフにする。なお、電源制御ユニット66は、直流電源61、62はオンにする。
【0098】
ステップ9では、電源制御ユニット66が、直流電源61、62、64の全てをオンにする。
【0099】
ステップ10では、過去のステップ1において算出されたタイミングT1~T6がメモリ105に記憶されているか否かを電源制御ユニット66が判断する。タイミングT1~T6がメモリ105に記憶されている場合はステップ3に進む。タイミングT1~T6がメモリ105に記憶されていない場合はステップ9に進む。
【0100】
6.電極製造装置1が奏する効果
(1A)電極製造装置1は、センサ65による先頭マーク107A及び後方マーク107Bの検出結果に基づき、直流電源61、62、64を制御する。具体的には、電極製造装置1は、マーク対象部111が電解液槽205の中にあるとき、直流電源61をオフにし、マーク対象部111が電解液槽7の中にあるとき、直流電源62をオフにし、マーク対象部111が電解液槽207の中にあるとき、直流電源64をオフにする。そのことにより、電極製造装置1は、マーク対象部111に対するプレドープを抑制できる。
【0101】
(1B)ドーピング槽、対極ユニット、接続ユニット、及び電源を含む構成を以下では単位と呼ぶ。電極製造装置1は、以下の3個の単位を備える。
【0102】
第1単位:電解液槽205と、対極ユニット51と、ケーブル87、89と、搬送ローラ25、29と、直流電源61とを含む単位。
【0103】
第2単位:電解液槽7と、対極ユニット54と、ケーブル91、93と、搬送ローラ307、311と、直流電源62とを含む単位。
【0104】
第3単位:電解液槽207と、対極ユニット52と、ケーブル97、99と、搬送ローラ317、321と、直流電源64とを含む単位。
【0105】
電極製造装置1は、複数の単位のそれぞれについて、直流電源を制御することができる。例えば、電極製造装置1は、直流電源61、62、64のうちの1つをオフにし、他の2つをオンにすることができる。そのことにより、直流電源61、62、64を同時にオン又はオフする場合に比べて、電極前駆体73のうち、マーク対象部111以外の部分であって、アルカリ金属をプレドープできない部分の発生を抑制できる。
【0106】
(1C)電極製造装置1は、センサ65の検出結果と、電極前駆体73の搬送速度とに基づき、直流電源61、62、64における電流値を制御する。そのことにより、マーク対象部111におけるリチウムの析出を一層確実に抑制できる。
【0107】
(1D)電極製造装置1は、センサ65の検出結果と、電極前駆体73の搬送速度とに基づき、直流電源61、62、64のオン/オフを切り替えるタイミングを制御する。そのことにより、マーク対象部111におけるリチウムの析出を一層確実に抑制できる。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0108】
(1)マーク107は単一のものであってもよい。この場合、タイミングT1~T6を以下のようにすることができる。
【0109】
T1:単一のマーク107が電解液槽205よりも所定距離だけ上流側の位置に到達するタイミング。
【0110】
T2:単一のマーク107が電解液槽205よりも所定距離だけ下流側の位置に到達するタイミング。
【0111】
T3:単一のマーク107が電解液槽7よりも所定距離だけ上流側の位置に到達するタイミング。
【0112】
T4:単一のマーク107が電解液槽7よりも所定距離だけ下流側の位置に到達するタイミング。
【0113】
T5:単一のマーク107が電解液槽207よりも所定距離だけ上流側の位置に到達す
るタイミング。
【0114】
T6:単一のマーク107が電解液槽207よりも所定距離だけ下流側の位置に到達するタイミング。
【0115】
(2)電極前駆体73の搬送経路のうち、電解液槽205よりも上流側の位置、電解液槽205と電解液槽7との間の位置、電解液槽7と電解液槽207との間の位置、及び電解液槽207よりも下流側の位置に、それぞれ、センサ65を設けてもよい。
【0116】
その場合、電解液槽205よりも上流側の位置に設けたセンサ65がマーク107を検出するタイミングから、電解液槽205と電解液槽7との間の位置に設けたセンサ65がマーク107を検出するタイミングまで、直流電源61をオフにすることができる。
【0117】
また、電解液槽205と電解液槽7との間の位置に設けたセンサ65がマーク107を検出するタイミングから、電解液槽7と電解液槽207との間の位置に設けたセンサ65がマーク107を検出するタイミングまで、直流電源62をオフにすることができる。
【0118】
また、電解液槽7と電解液槽207との間の位置に設けたセンサ65がマーク107を検出するタイミングから、電解液槽207よりも下流側の位置に設けたセンサ65がマーク107を検出するタイミングまで、直流電源64をオフにすることができる。
【0119】
(3)マーク107が電解液槽の中を通過しているとき、その電解液槽において、対極ユニットに流す電流を、部分ごとに変更してもよい。例えば、電解液槽205が備える4個の対極ユニット51のうち、マーク107と対向する2個の対極ユニット51には電流を供給せず、残りの2個の対極ユニット51には電流を供給することができる。4個の対極ユニット51に供給する総電流量は、マーク107が電解液槽205の中にない場合の半分である。
【0120】
この場合、電極前駆体73のうち、マーク対象部111以外の部分であって、アルカリ金属をドープできない部分の発生を一層抑制できる。
【0121】
(4)タイミングT1~T6は適宜選択できる。例えば、T1は、先頭マーク107Aが、搬送経路のうち、電解液槽205よりも所定の距離だけ上流側の位置に到達したタイミングとすることができる。T2~T6についても同様である。
【0122】
(5)
図8に示すように、電極前駆体73のうち、マーク対象部111に対応する位置に、マーク107(以下では対応マーク107Cとする)を設けてもよい。マーク対象部111は、例えば、活物質を含む層が形成されていない部分である。マーク対象部111に対応する位置とは、例えば、電極前駆体73の長手方向において、マーク対象部111の少なくとも一部と重複する位置である。電極製造装置1は、電極前駆体73のうち、対応マーク107Cを中心とする所定の範囲に対するプレドープを抑制できる。
【0123】
電極前駆体73に、先頭マーク107Aと、後方マーク107Bと、対応マーク107Cとを設けてもよい。例えば、電極前駆体73の幅方向において、先頭マーク107Aの位置と、後方マーク107Bの位置と、対応マーク107Cの位置とはそれぞれ異なる。こうすることにより、先頭マーク107、後方マーク107B、及び対応マーク107Cを容易に識別することができる。
【0124】
(6)上記各実施形態において、活物質層が形成された部分にマークを設けた例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、電極前駆体の幅方向における少なくとも片側に、集電体上に活物質層が形成されず、集電体が露出している部分(以下では、活物質未形成タブ部とする)を設け、当該活物質未形成タブ部にマークを設けることもできる。
【0125】
(7)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0126】
(8)上述した電極製造装置の他、当該電極製造装置を構成要素とするシステム、電源制御ユニットとしてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、電極製造装置における電流値の制御方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。