(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】膣用薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A61M31/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021000137
(22)【出願日】2021-01-04
(62)【分割の表示】P 2017539587の分割
【原出願日】2016-01-28
【審査請求日】2021-02-01
(32)【優先日】2015-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515245343
【氏名又は名称】リ・ガリ・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】LI GALLI B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・ラート,ウィルヘルムス・ニコラース・ジェラルドゥス・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ファールト,カール・ハウベルト
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/135521(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0084848(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102641547(CN,A)
【文献】特表2003-527404(JP,A)
【文献】特表2012-533621(JP,A)
【文献】特開2014-208708(JP,A)
【文献】特表2014-520111(JP,A)
【文献】特表2008-505977(JP,A)
【文献】特表2013-520285(JP,A)
【文献】特表2013-523745(JP,A)
【文献】特表2007-525461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0220337(US,A1)
【文献】特表2013-505804(JP,A)
【文献】特表2010-530408(JP,A)
【文献】特表2005-511184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、通常は膣を通して投与されない生物活性化合物を含む少なくとも1つのリザーバーと、
該リザーバーから
前記生物活性化合物を膣内に制御放出する手段とを含む、膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイスであって、前記リザーバーから前記化合物を前記膣内に制御放出する前記手段が、
a)自身の膣に前記デバイスを有する人の生理学データに応答して作用するように構成される、または
b)特に自身の膣に前記デバイスを有する人、看護師、または医師によって遠隔操作される、または
c)
設定された放出パターンで予めプログラムされ
、
前記設定された放出パターンが、持続的放出、パルス状放出、スパイク状放出、遅延放出、間欠的放出、またはそれらの組み合わせを含み、
前記放出が、前記放出パターンと必要に応じて組み合わせて、オンデマンドである、膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイス。
【請求項2】
自身の膣にデバイスを有する人の診断データを収集する手段をさらに備える、請求項1に記載の膣用デバイス。
【請求項3】
ハウジングと、自身の膣
にデバイスを有する人の生理学データを収集する手段と
、通常は膣を通して投与されない生物活性化合物を含む少なくとも1つのリザーバーと、リザーバーから化合物を膣内に制御放出する手段とを含み、
設定された放出パターンが、持続的放出、パルス状放出、スパイク状放出、遅延放出、間欠的放出、またはそれらの組み合わせを含み、前記放出が、前記放出パターンと必要に応じて組み合わせて、オンデマンドである、膣内に留置するように構成された膣用薬物送達デバイス。
【請求項4】
自身の膣にデバイスを有する人の診断データを収集する前記手段が、温度、グルコースレベル、子宮頚管粘液の透明度、水分および粘度のような物理化学特性を測定する手段、薬剤レベルをモニターする手段、ホルモンレベル、特にホルモンFSH
(卵胞刺激ホルモン)、LH
(黄体形成ホルモン)、17-β-エストラジオールおよびプロゲステロン、またはその組み合わせを測定する手段、タンパク質またはDNA
(デオキシリボ核酸)などの核酸を分析する手段、分子、特にサイトカイン等のシグナル伝達分子を検出する手段、(無)排卵周期をモニターする手段、ヒアルロン酸を測定する手段、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の膣用デバイス。
【請求項5】
前記測定が前記膣粘膜滲出液および/または前記子宮頚管粘液において行われる、請求項
4に記載の膣用デバイス。
【請求項6】
前記生物活性化合物が充填される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の膣用デバイス。
【請求項7】
前記化合物が
、経口生物学的利用率
、半減期(t1/2)
、初回通過効果、胃腸管で
の副作用
、治療範囲、および/また
は時間的投与スケジュールに依存する効能を有する化合物である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の膣用デバイス。
【請求項8】
前記化合物が、精神科および神経科の薬物(例えば、エスシタロプラム、ハロペリドール、プラミペキソール)、薬物依存の処置のための化合物(例えば、ニコチン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン)、鎮痛剤(例えば、モルヒネ、ブプレノルフィン)、ホルモン(例えば、ゴナドレリン、インスリン、エストロゲン、プロゲストゲン)、心血管薬(例えば、クロニジン)および抗コリン作動薬(例えば、オキシブチニン、ソリフェナシン)からなる群より選択される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の膣用デバイス。
【請求項9】
前記化合物が、オキシブチニン、エスシタロプラム、プラミペキソール、ブプレノルフィン、クロニジン、ゴナドレリン、インスリン、ニコチン、プロゲストゲン、SPRM
(選択的プロゲステロン受容体モジュレータ)、またはそのアナログ、ホモログ、もしくはアゴニス
トからなる群より選択される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の膣用デバイス。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、尿および膀胱の問題、特に切迫尿失禁の処置に使用するためのオキシブチニン。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって投与される、うつ病の処置に使用するためのエスシタロプラム。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、パーキンソン病の処置に使用するためのプラミペキソール。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、オピオイド中毒または慢性疼痛の処置に使用するためのブプレノルフィン。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される
、高血圧症の処置に使用するためのクロニジン。
【請求項15】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、カルマン症候群の処置に使用するためのゴナドレリン。
【請求項16】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、糖尿病の処置に使用するためのインスリン。
【請求項17】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、サポートまたは処置を必要とする人に投与される、禁煙サポートまたは軽度の認知障害の処置に使用するためのニコチン。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、避妊に使用するためのプロゲストゲン。
【請求項19】
請求項1~
9のいずれか1項に記載される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、避妊に使用するためのSPRM
(選択的プロゲステロン受容体モジュレータ)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、女性における様々な医学的状態の処置に使用するための膣用薬物送達デバイスに関する。デバイスは、「個別化医療」または「テーラーメイド医療」を可能にする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
膣用リングシステムは通常、避妊およびホルモン補充療法のために使用される。これらの応用に関して異なるリングシステムが先行技術分野で公知である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
本発明に従って、現在、ホルモン薬以外の薬剤も同様に膣を通して投与および吸収され得ることが見出されている。膣を通しての投与は、例えば不十分な吸収、胃腸(GI)管での分解(例えば、ペプチドおよびタンパク質)、もしくは他の要因により、経口生物学的利用率が比較的低いもしくはわずかである化合物、望ましくないGI副作用を有する化合物、治療範囲が狭い化合物、頻回投与もしくは高用量を必要とする半減期(t1/2)が短い化合物、適切な効能を得るために複雑な時間的および/または投与スケジュールを必要とする化合物等にとって特に有用である。そのような化合物は、処方箋なしの(OTC)化合物ならびに処方薬であり得る。
【0004】
このため、本発明は、ハウジングと、通常は膣を通して投与されない生物活性化合物を含む少なくとも1つのリザーバーと、リザーバーから化合物を膣内に制御放出する手段とを備える、膣内に留置されるように構成された膣用薬物送達デバイスに関する。
【0005】
もう1つの実施形態において、本発明は、ハウジングと、自身の膣にデバイスを有する人の診断データを収集する手段とを備える、膣内に留置されるように構成された膣用薬物送達デバイスに関する。この実施形態において、デバイスは厳密に診断的である。
【0006】
さらなる実施形態において、薬物放出および診断のための手段は、リングにおいて組み合わされる。リングからの化合物の放出は、好ましくはリングに存在するまたはリングに接続される測定手段によって収集されたリングユーザーの診断データに応じて制御される。このため、デバイスはさらに、自身の膣にデバイスを有する人のデータを収集する手段を備える。次に、リザーバーから化合物を制御放出する手段を、自身の膣にデバイスを有する人の生理学データに応じて、携帯型デバイス/モバイルデバイスを通してまたはリング自体によって独立して/双方向に作用するように構成する。
【0007】
本発明の膣用デバイスにおけるリザーバーから化合物を制御放出する手段はまた、例えば分配される化合物に依存する、定義された放出パターンで予めプログラムすることができる。定義された放出パターンは、例えば持続的放出、パルス状放出、スパイク状放出、遅延放出、間欠的放出、もしくはその組み合わせ、または他の任意の所望の放出パターンを含む。さらなる実施形態において、薬剤の放出は、「オンデマンド」であり得る。このことは、患者が、例えば自身の愁訴に基づいてまたは自身の診断センサーの結果に応じて、薬剤量を増加できることを意味する。この「オンデマンド」実現性を、上記のいかなる放出パターンとも組み合わせることができる。
【0008】
自身の膣にデバイスを有する人の生理学データを収集する手段は、温度、膣粘膜滲出液中のグルコースレベル、子宮頚管粘液の物理化学特性(粘度、透明度、量、および水分など)を測定する手段、子宮頚管粘液もしくは膣粘膜滲出液のいずれかにおけるホルモンレベル、特にホルモンFSH、LH、17-β-エストラジオールおよびプロゲステロンもしくはその組み合わせのレベルをモニターする手段、タンパク質もしくはDNAなどの核酸を分析する手段、分子、特にサイトカインなどのシグナル伝達分子を検出する手段、(無)排卵周期をモニターする手段、ヒアルロン酸を測定する手段、またはその組み合わせを含み得るがこれらに限定されるわけではない。
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、生物活性化合物を充填した膣用デバイスに関する。このため化合物は、デバイスの一体型部分であると考えられる。
【0010】
本発明に従う膣用デバイスを通しての投与は、比較的低いまたはわずかな経口生物学的利用率、胃腸管での望ましくない副作用、狭い治療範囲、および/または複雑な時間的投与スケジュールもしくは短い半減期に依存する効能を有する化合物にとって特に適している。そのような化合物は、精神科および神経科の薬物(例えば、エスシタロプラム、ハロペリドール、プラミペキソール)、薬物依存症を処置するための化合物(例えば、ニコチン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン)、鎮痛剤(例えば、モルヒネ、ブプレノルフィン)、ホルモン(例えば、ゴナドレリン、インスリン、エストロゲン、プロゲストゲン)、心血管薬(例えば、クロニジン)、および抗コリン作動薬(例えば、オキシブチニン、ソリフェナシン)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない様々な治療薬のクラスの化合物であり得る。膣に放出され、標的臓器(膣、膀胱、子宮、および卵巣など)に近い化合物は、単純な拡散によって「局所」効果を発揮して、このため、低用量であっても高濃度を得ることができる。このため、本発明の投与アプローチは、そのような化合物にとって特に適している。
【0011】
本発明は、オキシブチニン、エスシタロプラム、プラミペキソール、ブプレノルフィン、クロニジン、ゴナドレリン、インスリン、ニコチン、プロゲストゲン、SPRMにとって特に有用である。これらの化合物に加えて、そのアナログ、ホモログ、もしくはアゴニスト、または同じ化学クラスに由来して同じ薬学的作用を有する関連化合物を、膣用リングを通して投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って使用される、展開状態(左)および折りたたまれた状態(右)のデバイスの形状を例証する図である。
【
図2】デバイスのいくつかの成分の例示的な配置を示す
図1のデバイスを例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
このように、本発明は、膣に留置されて、化合物が制御された方法で放出されるデバイスを通して、特定の生物活性化合物、特に薬物を投与する新規手段に関する。化合物は、通常は膣を通して投与されない薬物および他の化合物である。
【0014】
デバイスは、所望の機能にとって必要な様々な成分がその中に存在するハウジングを含む。ハウジングは同時に、膣に留置されるビヒクルでもあり得る。デバイスは、様々な機能を有し得るが、いずれの場合においても生物活性化合物のリザーバー、および化合物を膣内に分配する手段、およびそれを制御された方法で行う手段を備える。追加の機能は、例えば膣における特定のパラメータ、例えば温度、グルコース、薬剤レベル、ホルモンレベル、子宮頚管粘液の物理化学パラメータなどを測定する手段を含む。
【0015】
デバイスは、膣内に快適に挿入されて保持され得るリングまたは他の任意の形状であり得る。このため、デバイスは、膣内での持続的存在を保証するビヒクルとして役立つこと
に加えて、異なる形状および機能を有し得る。デバイスは、例えば、好ましくはリングの上部に可撓性部分と剛性部分とを有するリングであり得る。デバイスは、より厚みのある剛性部分を圧縮することができ、これを最初に挿入して、次にリングが挿入後に展開して剛性部分が膣の最も深い部分(後円蓋)でなめらかに定着して、排出を防止して吸収を増強するためにリングの外側部分が膣壁に柔軟に接触するように構成される。
【0016】
1つの実施形態において、リングは、膣内に留置されるように構成される配置部材と、薬物リザーバー、診断手段、および同様にリザーバーから薬物を膣内に分配する手段から選択される1つまたは複数の成分を含むデバイスとを備え、本発明に従って、薬物リザーバーは、生物活性化合物、特に上記のタイプの化合物を充填される。化合物、特に薬剤は、好ましくは、保存およびリングが留置されている間、十分に安定であるように処方され、必要であれば吸収増強剤と共に処方することができる。
【0017】
本発明の重要な特徴は、デバイスが膣に存在する間でも、デバイスからの生物活性化合物の放出を制御できる、すなわち遠隔操作で制御できることである。これを達成するために、本発明の膣用リングは、任意の薬剤放出スケジュールをプログラムするために電子機器を有する。これによって、「個別化医療」または「テーラーメイド医療」が可能となる。周期的、毎日、毎夜、毎時間、持続的、またはパルス/スパイク状、オンデマンド等のスケジュールを、ユーザーの必要に合わせてプログラムすることができる。
【0018】
スケジュールは、予めプログラムされるか、および/またはユーザーの希望(例えば、疼痛軽減)に基づいて、またはデバイスによって外界に送信された診断試験の結果に基づいて患者、医師、もしくは看護師によって遠隔操作で、またはデバイスによって行われる診断測定に基づいてデバイス自体による放出パターンの直接適合によって調節することができる。デバイスは、好ましくは、特定の測定結果が起こると、それに対応して化合物の放出パターンが自動的に適合されるようにプログラムされる。これを達成するために、デバイスは、センサー、プローブなどの測定手段を備える。適したセンサーは、温度センサー、pHセンサー、グルコースセンサー、または子宮頚管粘液の物理化学特性(粘度、量、水分、透明度)を測定することができるセンサー、またはホルモンもしくは薬剤などの生体化合物を測定するバイオセンサーである。加えて、測定されたパラメータに応答して放出を適合させる方法をデバイスに指示する情報を、デバイス内に保存する、またはデバイスに送信することができる。
【0019】
本発明は、任意の形状のリングについて使用することができるが、特に、PCT/EP2014/054148明細書および同時係属出願EP第15188465号明細書(未公開)に記述される実施形態で使用することができる。もう1つの実施形態において、リングは、リングの断面積がリングの周囲に沿って可変であるリング形状を有し得る。1つの実施形態において、リングは、国際公開第2011/039680号パンフレットに記述されるIntellicap(商標)技術と組み合わせて使用することができる。Intellicap(商標)は、好ましくは、膣用デバイスの放出、制御、および診断機能を維持するために使用することができる。
【0020】
本発明の膣用デバイスは、吸収増強剤の存在下もしくは非存在下で、生物活性レベルで膣に吸収されるか、またはプログラム可能な(予めプログラム可能なまたは遠隔操作による)放出を通しての膣用局所薬物送達によって投与される薬剤を充填することができるリザーバーまたはカートリッジを含有する。
【0021】
本発明は、ホルモン以外の他の化合物を、膣用デバイスを通して投与することができるという認識に基づく。本発明はこのため、薬物などの生物活性化合物が通常使用される障害および状態の処置において、通常は膣投与されないこれらの化合物を投与するためのデ
バイスの使用に関する。違いは投与経路である。
【0022】
膣を通しての全身性薬物送達は、経口投与と比較して多くの一般的利点、例えば悪心がない(例えば細胞増殖抑制剤などのように、投与される薬物が全身投与されると悪心を引き起こす場合を除く)、胃腸管の刺激がない、肝臓の薬物初回通過代謝を受けない、胃腸管での薬物の酵素的分解が防止される、という利点を有する。非経口投与と比較すると、リングは非侵襲性である。これはまた、長期の薬物療法にとって優れたシステムであり、生物学的利用率が高いという利点を有し、それによって、現在経口投与されている薬物のより低用量、高い生物学的利用率を可能にして、このように、注射、注入、または皮下送達などの非経口送達を行う必要がなく、自己投与、挿入および除去の自己管理を可能にすることによって自己に権限が与えられるというさらなる利点を有し、それによって非常に高い利便性および高いコンプライアンスが得られる。明らかに、ユーザーは、歩行可能な外来患者である。
【0023】
本発明は、個別の1回経口投与または個別の1回注射と比較して、より頻繁なおよび/またはより早期のおよび/または複雑な薬物送達スケジュールを必要とする疾患および/または状況の処置において独自の利点を提供する。
【0024】
本発明は、デバイスからの放出を、特定の時点でのユーザーの必要に合わせることができることから、適切な疾患制御(例えば、高血圧症、うつ病、精神病、および糖尿病)のために安定な薬物血清中レベルを必要とする疾患の特に優れた薬剤調節を提供する。
【0025】
本発明はまた、化合物のパルス状送達を可能にする。女性の生体系の多くの生理学的状態では、いくつかの物質(下垂体ホルモンおよびその薬理学的(アンタ)アゴニスト、しかし同様にTSHなど)はパルス状に放出されており、したがって特定の疾患、例えばカルマン症候群における排卵誘発は、パルス状に薬剤を投与する場合に限って処置することができる。膣用デバイスをパルス状に放出するようプログラムできることは、非常に有用である。
【0026】
本発明はまた、高い服薬コンプライアンス率を必要とする疾患の処置において特に利点を示す。挿入されて活性化されたリングは、1~4週間であり得る膣内留置期間の間、100%のコンプライアンス率を有する。
【0027】
本発明は、毎日の注射または静脈内投与を必要とするために特定の適応に関して現在使用されていない薬物、例えば避妊の適応としての選択的プロゲステロン受容体モジュレータ(SPRM)の薬物送達を可能にする。
【0028】
本発明は、子供を望む患者における、カルマン症候群などの低ゴナドトロピン性-低エストロゲン性無月経による無排卵のパルス状GnRHによる処置、およびOABの処置などの、都合の悪い時間(夜間など)での薬物送達、パルス状薬物送達にとって完全に適している。
【0029】
様々な薬物送達レジメンを同様に組み合わせることができる。デバイスは、例えば異なる薬剤のための多数のリザーバーを含有し得る。併用送達のもう1つの例は、オンデマンドの、または一定のもしくは徐々に減少するベースラインレベルに加えて例えば、疼痛の軽減および治療、ニコチン中毒およびOABのために予めプログラムされるパルス状薬物送達である。
【0030】
好ましい実施形態において、デバイスは、禁煙サポートにおいて使用するためであり、プログラムされた送達プロファイルを有するニコチンを含む。軽度の認知障害の処置に使
用する場合、デバイスはニコチンを含み、例えば、持続的に放出されるようにプログラムされる。服薬を順守しない患者における高血圧症の処置に使用する場合、デバイスにクロニジンを充填する。糖尿病性ニューロパシー性疼痛の処置に使用する場合も、デバイスは、クロニジンを含み、持続的に放出されるようにプログラムされる。
【0031】
本発明はまた、子宮、膣、および膀胱などの解剖学的に隣接する臓器の近くへの薬物送達を可能にする。1例は、公知の子宮用デバイスであるMirena(登録商標)の代替としての、避妊および/または機能性子宮出血のためにプロゲストゲンを有するリングなどの膣用デバイスである。そのようなリングは、Mirena(登録商標)とは異なり、一定期間、プロゲストゲンの持続的に適切な血清中レベルを可能にして、必要に応じて用量の調節をプログラムすることができる。もう1つの例は、必要に応じて、特定の対象において抗HIVの薬物治療と併用される、OABもしくは子宮内膜症のための薬物治療、または避妊のための薬物治療である。
【0032】
特に好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、オキシブチニンまたはもう1つの抗コリン作動性化合物によって、過活動膀胱(OAB)または切迫尿失禁を処置するために使用される。経口抗コリン作動薬は、短いt1/2および強い初回通過効果を有する。それらは、頻回投与および/または高用量を投与しなければならず、オキシブチニンの一次代謝物であるN-デスエチルオキシブチニン(DEO)は、経口投与後に強い副作用、特に口の渇きを引き起こす。オキシブチニン(またはもう1つの類似の化合物)を、本発明に従う膣用薬物送達デバイスによって投与すると、効能/副作用比を改善することにより、初回通過効果を受けないことによる代謝レベルの低下により副作用が減少することにより、より高用量を使用できることで効能が改善することにより、膀胱に近い「局所」拡散効果から恩典を得ることにより、および抗コリン作動薬、特にオキシブチニンをパルス状に送達するようデバイスをプログラムできることで恩典を得ることにより、オキシブチニンの治療ウィンドウは広くなる。アンタゴニストを持続的に投与すると、G-タンパク質共役受容体のアップレギュレーションが起こり、このため効能が減少する。アップレギュレーションは、パルス状投与によって回避される。
【0033】
このように、本発明は、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスを通して、処置を必要とする人に投与される、尿および膀胱の問題、特に切迫尿失禁の処置に使用するためのオキシブチニンに関する。本発明はまた、薬剤がオキシブチニンまたは関連化合物を含む膣用デバイスとして処方される、尿および膀胱の問題、特に切迫尿失禁を処置する薬剤を調製するためのオキシブチニンの使用にも関する。本発明はまた、オキシブチニンまたは関連化合物が、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、尿および膀胱の問題、特に切迫尿失禁を処置する方法にも関する。特に、オキシブチニンまたは関連化合物は、パルス状放出パターンでデバイスから放出される。
【0034】
オキシブチニン、またはソルフェナシンなどの他の任意の抗コリン作動薬は、好ましくは膣用薬物送達システムから薬物を膣腔に分配することができる液体の形態である。このために、活性成分(オキシブチニン)は、局所で溶液であるべきで、または懸濁液として投与される場合には溶解することができなければならない。膜に浸透することによってデバイスからの放出を促進するために、pHの調節を行ってもよく、またはシクロデキストリン誘導体などの溶解剤を添加することができる。1つの実施形態において、オキシブチニン含有液体は、オキシブチニン塩基、塩酸塩、もしくは他の任意の生物学的適合性の塩、結晶、共結晶、もしくは複合体、またはその混合物、例えば硫酸塩、リン酸塩、シクロデキストリンの複合体、例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含有する。
【0035】
オキシブチニン含有液体は、真の溶液、コロイド状溶液、乳液、マイクロ乳液、ナノ乳液、懸濁液、マイクロ懸濁液、またはナノ懸濁液であり得る。オキシブチニン含有液体は、低から中等度/高粘度のニュートンまたは非ニュートン液体であり得る。デバイスの特徴により、膣用薬物送達システムからポンプで押し出すことができる最大粘度が決定される。
【0036】
オキシブチニン含有液体は、好ましくは水性または非水性の生物学的適合性の溶媒またはその混合物を含む。好ましくは、オキシブチニン含有液体は、膣腔からの最適な薬物吸収を可能にする活性物質の高濃度、例えば80mg/ml超を含む。
【0037】
オキシブチニン含有液体は、膣の環境で薬物の沈殿が起こらないように処方される。これは、例えばpHを調節することによっておよび/または少量のプロピレングリコールのポリエチレングリコールを添加することによって防止することができる。
【0038】
オキシブチニン含有液体は、好ましくは、製剤の保存条件で少なくとも12か月安定であり、体温で少なくとも1か月安定である。
【0039】
オキシブチニンの文脈において、デバイスは、膀胱の筋電図(EMG)シグナルを測定する機能を含み得る。これらのシグナルは、初期膀胱収縮を予測することができ、デバイスはその後「オンデマンド」でオキシブチニンを放出することができる。
【0040】
本発明はまた、膣用デバイスによって投与される、うつ病の処置に使用するためのエスシタロプラムにも関する。
【0041】
さらなる実施形態において、本発明は、膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、パーキンソン病の処置に使用するためのプラミペキソールに関する。
【0042】
もう1つの実施形態は、膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、オピオイド中毒または慢性疼痛の処置に使用するためのブプレノルフィンに関する。
【0043】
本発明はまた、膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、ニューロパシー性疼痛または高血圧症の処置に使用するためのクロニジンに関する。
【0044】
本発明はまた、化合物が、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、そのそれぞれの適応に対するエスシタロプラム、プラミペキソール、ブプレノルフィン、およびクロニジンの使用にも関する。本発明はさらに、化合物が、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、これらの適応を処置する方法を提供する。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、妊娠願望がある場合に、卵巣に女性ホルモンの産生を開始させて排卵状態を誘発させるためにGnRHのパルス状投与(90分毎に1パルス)が必要である、女性における低ゴナドトロピン-低エストロゲン状態(カルマン症候群、同様に食欲不振など)に対処するために使用される。それらの女性は、子供を望まない期間にも、GnRHリングによって生物学的に正常な排卵状態を達成することができる。現在、それらの患者は、妊娠願望がない期間には、その低-低ホルモン状態が避妊の代替となる。この期間、現在の実践では、経口避妊ホルモンによる補充を行うが、これは愁訴および疾患(骨粗鬆症など)を予防するために十分ではない。それらの女性は、子供を望まない期間にもGnRHリングによって生物学的に正常な排卵状態を達成
し、このようにして愁訴および問題を回避し得る。
【0046】
このように、本発明は、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、カルマン症候群の処置に使用するためのゴナドレリンに関する。本発明はまた、薬剤がゴナドレリンまたは関連化合物を含む膣用デバイスとして処方される、カルマン症候群を処置する薬剤を調製するためのゴナドレリンの使用にも関する。本発明はまた、ゴナドレリンまたは関連化合物が、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、カルマン症候群を処置する方法にも関する。特に、ゴナドレリンまたは関連化合物は、パルス状放出パターンでデバイスから放出される。
【0047】
もう1つの好ましい実施形態において、デバイスは、インスリンまたはインスリンアゴニストによって糖尿病を処置するために使用される。インスリンは、予めプログラムされた用量/量/時間スケジュールで投与することができる。高血糖の主観的医学症状および/または診断的グルコース感知結果に基づいて、インスリン投与に、インスリンの特定の用量を「オンデマンド」で重複投与することができる。コンピューター/携帯型モバイルデバイスで、またはデバイス自体のアルゴリズムを通して独立しておよび双方向に結果を読み取った後、インスリンを、吸収増強剤の存在下または非存在下で、溶液中で投与することができる。
【0048】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、禁煙のためのニコチン置換療法(NRT)のために使用される。喫煙の中毒における重要な生物学的要因は、ニコチン中毒である。現在の薬物療法(パッチ、ガム、スプレーなどの)の成功率は非常に低く、およそ10%(6か月後)またはそれより低い。現在のパッチを通しての一定のニコチン投与は、ニコチン受容体を絶えず占有して、それによってそれらの受容体の脱感作を引き起こすが、スプレーおよびガムならびに現行のパッチもまた、喫煙そのものにおいて起こる、ニコチンのスパイクレベルを引き起こすことができない。本発明のデバイスでは、ニコチン放出が、それが用量、間隔、および「速度」に関して、すなわち投与後の脳にニコチンが出現するために要する時間に関して、喫煙によって誘発されるニコチンの放出を可能な限り模倣するようにプログラムすることができる。ニコチンの放出は、その後、漸減させるべきである(より長い間隔およびより低い用量)。これによって、喫煙そのものと同様に、血清中ニコチンレベルの繰り返しの急速なスパイクが起こり、より長い期間で用量を徐々に減少させる。専門家は、そのような喫煙模倣放出パターンは、禁煙をサポートするために理想であると同意しており、その間にニコチンの「報酬系」は、時間間隔として絶対用量に関して徐々に減少し、ニコチン中毒状態の段階的治癒をサポートする。
【0049】
この応用に関して、本発明のリングは、現行のパッチとはいくつかの方法で異なる方法で膣にニコチンを送達するようにプログラムされ、すなわち喫煙者のニコチンレベルを模倣するようにニコチンの絶対レベルを調節して、喫煙回数を模倣するようにニコチンスケジュールをプログラムする。次に、ニコチンレベルを例として3か月のサイクルで徐々に減少(「漸減」)させて、同時にそれらのサイクルの間でのニコチンの間隔を徐々に長くする。パルス/間隔を、特定の時間で特定の時間間隔(午前4時から午前8時)の基本の低ニコチンレベルの特定の概日リズムと組み合わせて、喫煙およびニコチンスプレーまたはガムの使用が困難である期間の多くの中毒者における低レベルと組み合わせる。スケジュールはユーザー管理であっても、またはユーザー管理でなくてもよい。予めプログラムされる場合、本発明のリングは、この一貫して徐々に減少して低下するパターン(「漸減」)を送達するが、これは忘れることがなくおよび/または変更されることもない(パッチ、ガム、およびスプレーとの場合と同様に)。本発明のデバイスは、ユーザーからいかなる作用も要求されなければ、3週間機能することができる。
【0050】
本発明はこのように、膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、サポートまたは処置を必要とする人に投与される、禁煙サポート、または軽度の認知障害の処置に使用するためのニコチンに関する。本発明はまた、薬剤が、ニコチンまたは関連化合物を含む膣用デバイスとして処方される、禁煙をサポートする薬剤を調製するためのニコチンの使用にも関する。本発明はまた、ニコチンまたは関連化合物が、膣を通して、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって、処置を必要とする人に投与される、禁煙をサポートする方法にも関する。ニコチンは好ましくは、上記で定義した漸減する放出パターンでデバイスから膣に放出される。
【0051】
もう1つの実施形態において、本発明のリングは、必ずしも入眠の問題ではないが睡眠を継続する際の問題である、不眠などの睡眠の問題を有する人を処置するために使用することができる。それらの人は、睡眠を継続するために、睡眠薬の持続的な低用量または睡眠後1時間の間に繰り返し投与を必要とするが、本発明の膣用デバイスでは、薬剤を服用するために女性が起きる必要なく、睡眠を継続することができる。睡眠薬は、薬剤が、膣に、特に膣用デバイスによって、さらに特に本明細書に開示される膣用デバイスによって投与される、睡眠障害を処置するために使用される。
【0052】
さらなる実施形態において、デバイスは、薬物がオンデマンドで送達される、疼痛軽減を提供するために使用される。非経口の疼痛を軽減する薬剤を必要とする患者は、用量を調節するためにポンプおよび構造を有する。ポンプは患者を非歩行にする。本明細書に開示される膣用デバイスは、この問題を解決して、より良好な効能および患者のクオリティオブライフの有意な改善をもたらす。
【0053】
上記に加えて、デバイスは、局所薬物送達のために使用することができる。膣用デバイスを通しての局所薬物送達は、多くの一般的利点を有し、特に全身の曝露の低減または消失および作用部位への送達による用量の低減によって副作用の低減を有する。
【0054】
膣用デバイスに含有される活性成分は、好ましくは膣用薬物送達システムから薬物を膣腔に分配することができる液体の形態である。このために、活性成分は、局所で溶液であるべきで、または懸濁液として投与される場合には溶解することができなければならない。膜に浸透することによってデバイスからの放出を促進するために、pHの調節を行ってもよく、またはシクロデキストリン誘導体などの溶解剤を添加することができる。1つの実施形態において、液体は、活性成分、塩酸塩、または他の任意の生物学的適合性の塩、結晶、共結晶、もしくは複合体、またはその混合物、例えば硫酸塩、リン酸塩、シクロデキストリンの複合体、例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含有する。
【0055】
活性成分を含有する液体は、真の溶液、コロイド状溶液、乳液、マイクロ乳液、ナノ乳液、懸濁液、マイクロ懸濁液、またはナノ懸濁液であり得る。前記液体は、低から中等度/高粘度のニュートンまたは非ニュートン液体であり得る。デバイスの特徴により、膣用薬物送達システムからポンプで押し出すことができる最大粘度が決定される。
【0056】
活性成分を含有する液体は、好ましくは水性または非水性の生物学的適合性の溶媒またはその混合物を含む。好ましくは、液体は、膣腔からの最適な薬物吸収を可能にする活性物質の高濃度、例えば80mg/ml超を含む。
【0057】
活性成分を含有する液体は、膣の環境で薬物の沈殿が起こらないように処方される。これは、例えばpHを調節することによっておよび/または少量のプロピレングリコールのポリエチレングリコールを添加することによって防止することができる。
【0058】
活性成分を含有する液体は、好ましくは、製剤の保存条件で少なくとも12か月安定であり、体温で少なくとも1か月安定である。
【0059】
本発明に従って使用されるデバイスはまた、診断目的のために使用することができる。第1の実施形態において、診断データを使用して、化合物または複数の化合物のデバイスからの放出を適合する。しかし、診断機能がデバイスの唯一の機能であることも同様に可能である。この場合、デバイスは薬物リザーバーを必ずしも含まない。
【0060】
本発明の膣用リングの診断部分の好ましい特徴は、女性の(無)排卵周期のモニタリングである。女性の通常の排卵周期では、一対の女性(プレ)ホルモンが変化し、このことは、排卵事象(が近づきつつあること)を示している。体温は実際には過去の排卵のシグナルに過ぎず、そのためそれほど重要ではないが、例えば予測および/またはモニタリングを改善するために化学的モニタリングと併用して使用され得る。排卵の検出/周期のモニタリングは、自身の排卵時期を知りたいと思っている不妊症の問題を有する全ての女性において、人工授精、IVF等のようなARTサイクル(生殖補助技術)における周期および/または刺激のモニタリングのために、または「自然な」避妊を実行したいと考えており、リスクのない/性交安全期間を知る必要がある女性において、有用であり得る。
【0061】
本発明のリングの診断特徴の例は、特に温度のモニタリング、グルコースレベルのモニタリング、様々なステロイドホルモン(17-β-エストラジオール、プロゲステロン)および放出ホルモン(FSH、LH、TSH等)のモニタリング、薬剤レベルの測定、子宮頚管粘液のpHまたは物理化学特性の測定、タンパク質分析、DNA化合物分析、シグナル伝達分子(例えば、サイトカインおよびその他)の検出である。リングは、膣粘膜に接触して、センサーによる測定を、膣壁滲出液および/または子宮頚管粘膜のいずれかにおいて行う。
【0062】
膣において測定した特定のパラメータを使用して、血清中のパラメータレベルを計算することができる。この場合、変換を行う必要がある。当業者は、これを行う方法を周知している。
【0063】
デバイスに含めることができるもう1つの機能は、女性の周期の間に変化する子宮頚管粘液の物理化学特性(量、水分、透明度、および粘度など)の測定である。排卵時には、粘液は最も透明である。このため、この機能を使用して、排卵が近づいていることを予測することができる。
【0064】
女性がデバイスの装着を順守しているか否かを決定するために、温度センサーを含めることができる。デバイスが膣内に存在する場合、温度は約38℃を記録し、これらの結果を記録して外部コンピューターまたは携帯型デバイスのいずれかに送信することができる。加えて、デバイスはまた、必要であれば、放出される化合物の量を記録することもできる。
【0065】
本発明は、任意の膣用デバイスによって行うことができる。原則的に、デバイスは任意の形状を有し得る。しかし好ましい実施形態において、デバイスはリング、特に可撓性部分と剛性部分とを含有するリングである。この実施形態において、リングの可撓性部分はいくつかの提唱される形状を有し、例えばプログラミングに関連してリングと通信するための、またはリングの診断システムによって生成されたデータを外部に送信するための、および/または体外からのコマンドを受信するための、アンテナを含有し得る。電子機器は好ましくは、国際公開第2011/039680号に記述されるIntellicap(商標)技術に基づく。さらに、リングは、特殊なポンプおよび容器/カートリッジ、な
らびに通信およびデータ転送手段を含有する。
【0066】
本発明のリングは、安全で、デバイスの挿入、除去、または使用の際に膣上皮および子宮頚管に病変を引き起こさないように設計され、承認された医療用材料で作製され、非刺激性、非アレルギー性であり、破断のリスクがなく、電子部品の膣への分解のリスクがなく、内蔵の用量誤送達予防を含む。
【0067】
リングの外部表面は好ましくは、膣壁の刺激を回避するためになめらかである。リングの内表面は好ましくは、快適な性交を可能にするためになめらかである。リングの弾性特性により、リングの膣内での安定な配置がもたらされる。好ましくは、アクチュエータを有する電子部品は、薬剤リザーバーに接続されて、リングの円形または卵形の構造を損ねることなく、リング内に共に収容される。リングの構成は、正確な挿入が明白となる構造である。
【0068】
本発明において使用されるリングは、個別化医療のために予めプログラムすることができ、または近距離無線通信(NFC)技術、Bluetooth(登録商標)、もしくは他のシステムを使用して個人の外部送信デバイスからプログラムすることができ、およびプログラムを調節することができる。加えて、リングは、リングの診断手段によって収集されたデータが、放出パラメータの適合へと直接変換されるように構成することができる。
【0069】
リングは、医師が評価するために、投与された薬剤に関するデータを収集することができる。同様に、リングにセンサーが使用されている場合には、診断データを送信して保存することができる。電子工学および機械学により、好ましくは、挿入後に膣のより深部(後円蓋)に滑らかに定着するリングの剛性でより厚みのある部分が形成される。
【0070】
診断結果を、コンピューター、スマートフォン、もしくはネットワークなどの外部送信デバイスによって通信することができ、または薬剤リザーバーからの放出を誘発するために自律的フィードバックモードで使用することができる。
【0071】
本発明のリングの他の好ましい特徴は、排卵予測/モニタリングに関連し、4つのホルモン、すなわちFSH、LH、17-β-エストラジオールおよびプロゲステロンまたはそれらの組み合わせのアッセイ、ヒアルロン酸の測定を含む。
【0072】
本明細書において言及した薬剤、同様に抗うつ剤、抗血栓剤(等)、ならびにグルコースセンサーの最適な血清中レベルを確立するために薬物アッセイを含む「ラボオンチップ」の実現性により、薬剤の遠隔操作による調節、またはリングの診断部分と薬物送達部分の相互作用が可能となる。
【0073】
したがって、好ましい実施形態において、薬物送達部分と診断部分の全ての機能を組み合わせて、診断の結果に基づいて薬物送達用量を調節することができる、独立した双方向システムを提供する。
【0074】
1つの実施形態において、リングは、糖尿病の女性におけるグルコースレベルを双方向におよび連続的にモニターすることができ、それに従ってインスリン送達を調節することができる。加えて、モニタリングの結果を外界に、例えばスマートフォンまたはタブレットなどの携帯型デバイスに送信することができる。次に、ユーザーは、自身のグルコースレベルをモニターすることができる。膣におけるグルコースモニタリングにとって適したセンサーは、CGS(持続的グルコース感知)センサーである。
【0075】
もう1つの好ましい実施形態において、診断部分は、来るてんかん発作を予測することができ、この来るてんかん発作を予防するために表記の薬剤の適切な用量を送達することができる。
【0076】
薬物送達に関して、リングは、薬物保存スペース(リザーバー)、薬物放出調節手段、薬物放出部位への輸送システム、薬物送達部位での膜または微孔性表面、可変の、連続的、間欠的、または1回の薬物送達手段、膣の生態(例えばpH)等を回復または保護するために、流体溶液中、(粘着性)ゲル組成物中、フォーム組成物中、流体組成物中の薬物送達手段から選択される1つまたは複数の成分を含む。
【0077】
機能的成分は好ましくは、電子工学カプセルに一体形成することができる。そのような電子工学カプセルは、例えば以下の要素の1つまたは複数を含み得る:診断センサーとの内部接続電子工学システム、薬物放出部分(保存、輸送、接触表面)への内部接続、診断パラメータの分析手段、診断データの保存手段、外部データ機器へのデータ送信手段、好ましくは保護されたハウジングに埋めこまれた外部制御機能の受信機、故障の際の警告シグナル、故障の際の自動的スイッチオフ等。
【0078】
使用条件を最適にするために、リングは、膣内に1~4週間留置されるように構成され、使用時も性交が可能であり、性交時にパートナーに病変が起こらず、パートナー上のデバイスによって送達される薬物の有害な効果が存在しない、装置の排出がなく、誘導によるまたは活性化合物の意図されない放出がなく、膣内のデバイスの位置によって正しいモニタリングが可能となるなどのように構成される。
【0079】
リングは、使用の自己権限が与えられたために、明白な説明書により、自身が挿入して自身が除去することにより、1~4週間の使用の快適さにより(疼痛または刺激がない)、性交時のパートナーの許容および非干渉により、および明快な(予めプログラムされた)使用またはテレコマンドによる容易な調節により、特に女性に認容される。
【0080】
本発明はまた、膣内に留置されるように構成された配置部材と、薬物リザーバー、診断システムおよびリザーバーから薬物を膣内に分配するためのシステムから選択される1つまたは複数の成分を含む電子工学デバイスとを備える膣用リングにも関し、薬物リザーバーは、薬剤を充填され、薬剤は好ましくは、保存およびリングが留置される期間、十分に安定であるように処方され、および任意選択で吸収増強剤と共に処方される。化合物は、例えば不十分な吸収、胃腸(GI)管での分解のために(例えば、ペプチドおよびタンパク質)、または他の要因もしくは望ましくないGI副作用のために、狭い治療範囲のために、比較的低いまたはわずかな経口生物学的利用率を有し、効能を得るために複雑な時間的投与スケジュールを必要とする。
【0081】
本発明に従う膣用デバイスを通しての生物活性化合物の投与は、任意の投与スケジュールが可能である。ホルモンの投与のために使用される公知の膣用リングは、化合物がポリマーマトリクスの中に含有されて、化合物およびポリマーの位置および濃度に依存してそこから放出されるが、これとは対照的に、リングデバイスではリザーバーが存在することにより、任意の用量の投与が可能である。その上、膣内にデバイスが存在する間でも、例えばデバイスの診断手段によって行われた膣での測定に応じて、用量および放出パターンを適合することができる。
【0082】
本出願において、用語「デバイス」および「リング」は、互換的に使用される。
本発明を、さらに以下の実施例において例証する。実施例は、単なる例証目的のために示され、本発明をいかなるようにも制限しないと意図される。実施例に記述した実験は、
図1および2に示されるデバイスによって実施した。
【0083】
図1は、本発明に従って使用される、展開状態(左)および折りたたまれた状態(右)のデバイスの形状を例証する。この形状は、第1の剛性部材101、第2の剛性部材102、第1の可撓性部材111、および可撓性部分110で構成される。ここで、第1の可撓性部材111は、弾性材料で作製され、デバイス100が折りたたまれた状態に縮小される際に、第1および第2の剛性部材101、102が互いに向かって移動することができるように凹部105を有する。
【0084】
薬物送達および/または診断構造の機能的部分は、剛性部材101、102の中にあり、(電気)接続部を、可撓性部材111または可撓性部分110の中に収容することができる。
【0085】
図2は、デバイスのいくつかの成分の例示的な配置を示す
図1のデバイスの例証である。ここで、薬物送達構造の機能的部分、すなわち、バッテリー7、コントローラ6、ポンプ3、リザーバー2、およびセンサー5は、第1の剛性部材101および第2の剛性部材102の中に入っていることが見出され得る。その上、リザーバー2に保持される薬剤がポンプ3によって押し出される開口部120を確認することができる。この開口部は、膣粘膜との最適な接触を保証するためにリングの外部周囲のそのような場所に配置される。さらに、様々な成分を互いにおよびバッテリー7と接続する電気接続部121が認められ得る。
【0086】
図2において、トランシーバーをコントローラ6に組み込んでもよく、または代替的に第1の剛性部材101の個別の成分として配置してもよい。このトランシーバーは、遠隔制御のために、または測定データなどのデータを交換するために、コントローラ6と外部システムまたはデバイスとの間のデータ通信を可能にする。
【0087】
第1の剛性部材101は、センサー5が予め定義された測定を行うことができるように、開口部または膜を備える。第1の剛性部材101に配置されてもよく、または配置されなくてもよい追加のセンサーを使用する場合には、類似の開口部または膜を備えることができる。これらの開口部は、膣粘膜または子宮頚管粘液との最適な接触を保証するためにリングの外部または内部周囲上のそのような位置に配置される。