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特許7170073はんだ取付を伴う蛍光体要素を用いる高光学パワー光変換デバイス
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  • 特許-はんだ取付を伴う蛍光体要素を用いる高光学パワー光変換デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】はんだ取付を伴う蛍光体要素を用いる高光学パワー光変換デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20221104BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20221104BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20221104BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 Z
H01L33/50
G03B21/14 A
【請求項の数】 39
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021010194
(22)【出願日】2021-01-26
(62)【分割の表示】P 2018515546の分割
【原出願日】2016-09-23
(65)【公開番号】P2021067957
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】62/232,702
(32)【優先日】2015-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/265,117
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508348680
【氏名又は名称】マテリオン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピー. ニューウェル
(72)【発明者】
【氏名】ザン アスレット
(72)【発明者】
【氏名】ロバート クザイアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ピー. ハウデ
(72)【発明者】
【氏名】デリック ブラウン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/140854(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/123145(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/026206(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0077973(US,A1)
【文献】特開2011-077187(JP,A)
【文献】特開2012-098438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0117302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
H01L 33/50
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変換デバイスであって、前記光変換デバイスは、蛍光体ホイールを備え、前記蛍光体ホイールは、
セラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む光学セラミック蛍光体要素と、
金属ディスクである金属ヒートシンクであって、前記金属ディスクは、前記金属ディスクの中心軸まわりに回転可能である、金属ヒートシンクと、
前記金属ヒートシンク上に配置されるはんだ接合部と、
1つより多い金属層を含むはんだ付け可能スタックであって、少なくとも1つの金属層が、前記光学セラミック蛍光体要素と前記はんだ接合部との間で前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に配置されるはんだ付け可能金属層を備える、はんだ付け可能スタックと
を含み、
前記金属ヒートシンクは、前記金属ヒートシンクの外側リム上の前記はんだ接合部によって、前記はんだ付け可能スタックに取り付けられ、
前記はんだ接合部は、はんだ予備成形物と、はんだフラックスとから形成され、前記はんだフラックスは、前記はんだ予備成形物上にコーティングされるかまたは前記はんだ予備成形物中に混合される、光変換デバイス。
【請求項2】
前記はんだ予備成形物は、鉛/インジウム/銀はんだ合金、金/スズはんだ合金、または金-シリコン(AuSi)合金を含む、請求項1に記載の光変換デバイス。
【請求項3】
前記はんだ付け可能金属層は、白金、金、または銀である、請求項1~2のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項4】
前記はんだ付け可能スタックは、
(i)前記光学セラミック蛍光体要素と前記はんだ付け可能金属層との間に配置される拡散障壁層、
(ii)前記光学セラミック蛍光体要素と前記はんだ付け可能金属層との間に配置される接着層、または
(iii)拡散障壁層および接着層
のうちの1つをさらに備え、前記接着層は、前記光学セラミック蛍光体要素に隣接して配置され、前記拡散障壁層は、前記接着層と、前記はんだ付け可能金属層との間に配置され、前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属層に取り付けられる、請求項1に記載の光変換デバイス。
【請求項5】
前記接着層は、クロム、チタン、またはチタン-タングステン(TiW)合金を含む、請求項4に記載の光変換デバイス。
【請求項6】
前記拡散障壁層は、ニッケルを含み、バナジウムをさらに含む、請求項4に記載の光変換デバイス。
【請求項7】
前記はんだ付け可能スタックは、前記はんだ付け可能金属層、前記拡散障壁層、および前記接着層を含み、前記接着層は、前記光学セラミック蛍光体要素に隣接して配置され、前記拡散障壁層は、前記接着層と、前記はんだ付け可能金属層との間に配置され、前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属層に取り付けられる、請求項4に記載の光変換デバイス。
【請求項8】
前記接着層/前記拡散障壁層/前記はんだ付け可能金属層を含む前記はんだ付け可能スタックは、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、クロム/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、チタン/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、クロム/ニッケル/銀層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、チタン/ニッケル/銀層スタックと
のうちの1つを備える、請求項7に記載の光変換デバイス。
【請求項9】
前記光学セラミック蛍光体要素と前記はんだ付け可能スタックとの間で前記光学セラミック蛍光体要素の前記裏側に配置される鏡コーティングをさらに備える、請求項4~8のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項10】
前記鏡コーティングは、背面空気界面と協働するように設計される誘電鏡コーティングを形成するための誘電材料を備える、請求項9に記載の光変換デバイス。
【請求項11】
前記光学セラミック蛍光体要素の正面に反射防止(AR)コーティングをさらに備える、請求項9に記載の光変換デバイス。
【請求項12】
前記金属ヒートシンクは、陥凹を含み、前記陥凹の中に前記はんだ接合部が配置される、請求項4~8のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項13】
前記光学セラミック蛍光体要素の下側部分もまた、前記金属ヒートシンクの前記陥凹内に配置される、請求項12に記載の光変換デバイス。
【請求項14】
前記光学セラミック蛍光体要素は、前記光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーを用いて印加された光ビームに応答して、亀裂を受けない、請求項1~2のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項15】
光発生器であって、
請求項1に記載の光変換デバイスと、
光ビームを前記光変換デバイスに印加するように配列される光源と
を備え、
前記光学セラミック蛍光体要素は、前記光源が前記光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーの光ビームを印加することに応答して、亀裂を受けない、光発生器。
【請求項16】
光変換デバイスであって、前記光変換デバイスは、蛍光体ホイールを備え、前記蛍光体ホイールは、
固体ホスト材料内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む蛍光体要素と、
金属ディスクである金属ヒートシンクであって、前記金属ディスクは、前記金属ディスクの中心軸まわりに回転可能である、金属ヒートシンクと、
前記金属ヒートシンク上に配置されるはんだ接合部と、
1つより多い金属層を含むはんだ付け可能スタックであって、少なくとも1つの金属層が、前記蛍光体要素と前記はんだ接合部との間で前記蛍光体要素の裏側に配置されるはんだ付け可能金属層を備える、はんだ付け可能スタックと
を含み、
前記金属ヒートシンクは、前記金属ヒートシンクの外側リム上の前記はんだ接合部によって、前記はんだ付け可能スタックに取り付けられ、
前記はんだ接合部は、はんだ予備成形物と、はんだフラックスとから形成され、前記はんだフラックスは、前記はんだ予備成形物上にコーティングされるかまたは前記はんだ予備成形物中に混合される、光変換デバイス。
【請求項17】
前記はんだ予備成形物は、鉛/インジウム/銀はんだ合金、金/スズはんだ合金、または金-シリコン(AuSi)合金を含む、請求項16に記載の光変換デバイス。
【請求項18】
前記はんだ付け可能金属層は、白金、金、または銀である、請求項16~17のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項19】
前記金属ディスクは、銅、銅合金、またはアルミニウム合金から作製される、請求項16~17のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項20】
前記はんだ付け可能スタックは、
(i)前記蛍光体要素と前記はんだ付け可能金属層との間に配置される拡散障壁層、
(ii)前記蛍光体要素と前記はんだ付け可能金属層との間に配置される接着層、または
(iii)拡散障壁層および接着層
のうちの1つをさらに備え、前記接着層は、前記蛍光体要素に隣接して配置され、前記拡散障壁層は、前記接着層と、前記はんだ付け可能金属層との間に配置され、前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属層に取り付けられる、請求項16に記載の光変換デバイス。
【請求項21】
前記接着層は、クロム、チタン、またはチタン-タングステン(TiW)合金を含む、請求項20に記載の光変換デバイス。
【請求項22】
前記拡散障壁層は、ニッケルを含み、バナジウムをさらに含む、請求項20に記載の光変換デバイス。
【請求項23】
前記はんだ付け可能スタックは、前記はんだ付け可能金属層、前記拡散障壁層、および前記接着層を含み、前記接着層は、前記蛍光体要素に隣接して配置され、前記拡散障壁層は、前記接着層と、前記はんだ付け可能金属層との間に配置され、前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属層に取り付けられる、請求項20に記載の光変換デバイス。
【請求項24】
前記接着層/前記拡散障壁層/前記はんだ付け可能金属層を含む前記はんだ付け可能スタックは、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、クロム/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、チタン/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、クロム/ニッケル/銀層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、チタン/ニッケル/銀層スタックと
のうちの1つを備える、請求項23に記載の光変換デバイス。
【請求項25】
前記蛍光体要素と前記はんだ付け可能スタックとの間で前記蛍光体要素の前記裏側に配置される鏡コーティングをさらに備える、請求項20~24のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項26】
前記鏡コーティングは、背面空気界面と協働するように設計される誘電鏡コーティングを形成するための誘電材料を備える、請求項25に記載の光変換デバイス。
【請求項27】
前記蛍光体要素の正面に反射防止(AR)コーティングをさらに備える、請求項25に記載の光変換デバイス。
【請求項28】
前記金属ヒートシンクは、陥凹を含み、前記陥凹の中に前記はんだ接合部が配置される、請求項20~24のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項29】
前記蛍光体要素の下側部分もまた、前記金属ヒートシンクの前記陥凹内に配置される、請求項28に記載の光変換デバイス。
【請求項30】
前記蛍光体要素は、固体ガラスホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、請求項16~17のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
【請求項31】
光発生器であって、
請求項16に記載の光変換デバイスと、
光ビームを前記光変換デバイスに印加するように配列される光源と
を備え、
前記蛍光体要素は、前記光源が前記蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーの光ビームを印加することに応答して、亀裂を受けない、光発生器。
【請求項32】
光変換デバイスを加工する方法であって、
1つより多い金属層を含むはんだ付け可能スタックを蛍光体ホイールの光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させることであって、少なくとも1つの金属層が、はんだ付け可能金属層を備え、前記光学セラミック蛍光体要素は、セラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、ことと、
金属ディスクである金属ヒートシンクを提供することであって、前記金属ディスクは、前記金属ディスクの中心軸まわりに回転可能である、ことと、
前記はんだ付け可能スタックを前記金属ディスクの外側リムにはんだ付けすることによって、前記光学セラミック蛍光体要素を前記金属ディスクの前記外側リムに取り付けることと
を含み、
前記取り付けることは、
前記光学セラミック蛍光体要素と前記金属ヒートシンクとの間に介在されるはんだ予備成形物を用いて、前記光学セラミック蛍光体要素を前記金属ヒートシンク上に配置し、アセンブリを作成することであって、はんだフラックスが、前記はんだ予備成形物上にコーティングされるかまたは前記はんだ予備成形物中に混合される、ことと、
前記はんだ予備成形物に、はんだ接合部を前記はんだ付け可能スタックと前記金属ヒートシンクとの間に形成させるために効果的である、はんだ付け温度まで前記アセンブリを加熱することと
を含む、方法。
【請求項33】
前記はんだ付け可能スタックを前記光学セラミック蛍光体要素の前記裏側に堆積させることに先立って、誘電鏡コーティングを前記光学セラミック蛍光体要素の前記裏側に堆積させることであって、これによって、前記はんだ付け可能スタックが、前記誘電鏡コーティング上に堆積される、ことをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記はんだ予備成形物は、鉛/インジウム/銀はんだ合金、金/スズはんだ合金、または金-シリコン(AuSi)合金を含む、請求項32~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記はんだ付け可能スタックを前記光学セラミック蛍光体要素の前記裏側に堆積させることは、
接着層を前記光学セラミック蛍光体要素の前記裏側に堆積させるか、または、前記光学セラミック蛍光体要素の前記裏側に配置される前記誘電鏡コーティング上に堆積させることであって、前記接着層は、クロム、チタン、またはチタン-タングステン(TiW)合金を含む、ことと、
拡散障壁層を前記接着層上に堆積させることであって、前記拡散障壁層は、ニッケルを含む、ことと、
前記はんだ付け可能金属層を前記拡散障壁層上に堆積させることであって、前記はんだ付け可能金属層は、白金、金、または銀を含み、前記はんだ付け可能金属層は、前記金属ヒートシンクにはんだ付けされる、ことと
を含む、請求項32~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
光変換デバイスを加工する方法であって、
1つより多い金属層を含むはんだ付け可能スタックを蛍光体ホイールの蛍光体要素の裏側に堆積させることであって、少なくとも1つの金属層が、はんだ付け可能金属層を備え、前記蛍光体要素は、固体ホスト材料内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、ことと、
金属ディスクである金属ヒートシンクを提供することであって、前記金属ディスクは、前記金属ディスクの中心軸まわりに回転可能である、ことと、
前記はんだ付け可能スタックを前記金属ディスクの外側リムにはんだ付けすることによって、前記蛍光体要素を前記金属ディスクの前記外側リムに取り付けることと
を含み、
前記取り付けることは、
前記蛍光体要素と前記金属ヒートシンクとの間に介在されるはんだ予備成形物を用いて、前記蛍光体要素を前記金属ヒートシンク上に配置し、アセンブリを作成することであって、はんだフラックスが、前記はんだ予備成形物上にコーティングされるかまたは前記はんだ予備成形物中に混合される、ことと、
前記はんだ予備成形物に、はんだ接合部を前記はんだ付け可能スタックと前記金属ヒートシンクとの間に形成させるために効果的である、はんだ付け温度まで前記アセンブリを加熱することと
を含む、方法。
【請求項37】
前記はんだ付け可能スタックを前記蛍光体要素の前記裏側に堆積させることに先立って、誘電鏡コーティングを前記蛍光体要素の前記裏側に堆積させることであって、これによって、前記はんだ付け可能スタックが、前記誘電鏡コーティング上に堆積される、ことをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記はんだ予備成形物は、鉛/インジウム/銀はんだ合金、金/スズはんだ合金、または金-シリコン(AuSi)合金を含む、請求項36~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記はんだ付け可能スタックを前記蛍光体要素の前記裏側に堆積させることは、
接着層を前記蛍光体要素の前記裏側に堆積させるか、または、前記蛍光体要素の前記裏側に配置される前記誘電鏡コーティング上に堆積させることであって、前記接着層は、クロム、チタン、またはチタン-タングステン(TiW)合金を含む、ことと、
拡散障壁層を前記接着層上に堆積させることであって、前記拡散障壁層は、ニッケルを含む、ことと、
前記はんだ付け可能金属層を前記拡散障壁層上に堆積させることであって、前記はんだ付け可能金属層は、白金、金、または銀を含み、前記はんだ付け可能金属層は、前記金属ヒートシンクにはんだ付けされる、ことと
を含む、請求項36~37のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年12月9日に出願され、“HIGH OPTICAL POWER LIGHT CONVERSION DEVICE USING A PHOSPHOR ELEMENT WITH GLASS HOST”と題された米国仮出願第62/265,117号の利益を主張するものである。2015年12月9日に出願された米国仮出願第62/265,117号は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本願は、2015年9月25日に出願され、“HIGH OPTICAL POWER LIGHT CONVERSION DEVICE USING AN OPTOCERAMIC PHOSPHOR ELEMENT WITH SOLDER ATTACHMENT”と題された米国仮出願第62/232,702号の利益を主張するものである。2015年9月25日に出願された米国仮出願第62/232,702号は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
以下は、光学技術、蛍光体技術、波長変換技術、および関連技術、および(限定ではないが)投影ディスプレイ(例えば、デジタル光処理、DLP)、自動車用照明具等、それらを使用する光電子、光子、および同様の用途に関する。
【0004】
蛍光体デバイスは、光波長を変換し、通常、より短い波長から1つまたはそれを上回るより長い波長に下方変換することで知られている。一般的アプローチでは、蛍光体材料は、エポキシ、シリコーン等の透明または半透明結合剤材料中に分散される。蛍光体は、レーザまたは他のポンプ光源によって励起または「ポンプ」され、蛍光を放出する。蛍光体デバイスは、静的であり得るか、または、蛍光体が回転ホイールの外側リムの近傍に配置される蛍光体ホイールとして構成され得る。蛍光体ホイール設計は、有利には、異なる蛍光体を異なる蛍光体アークセグメント内で使用することによって、異なる色(またはより一般的には、異なるスペクトル)の時間系列を提供することができる。ゼロ放出の周期もまた、アーク間隙を蛍光体アークセグメント間に残すことによって提供されることができる。そのようなホイールは、例えば、デジタル光処理(DLP)プロジェクタまたは他のDLPディスプレイデバイスのために、順次、赤色、緑色、および青色光を提供するために使用されることができる。
【0005】
蛍光体中で典型的に使用される結合剤材料は、高パワーポンプレーザによる熱に起因して、熱損傷を被りやすいという点において、高光学パワー用途では、問題が生じる。例えば、青色または紫外線レーザが白色光(または青色ポンプレーザ光と混成し、白色光を形成する、帯黄色光)に変換される、典型的下方変換タスクでは、レーザパワーは、約25ワットまたはより高く、有意な熱につながり得る。
【0006】
本問題に対する解決策は、結合剤材料とセラミック材料を置換する、すなわち、光学セラミック蛍光体を使用することである。典型的セラミック材料は、粉末化された基本材料、結合剤、および安定剤の混合物を、高温で、随意に、高圧下で、焼結させることによって製造される。化学蒸着(CVD)または化学反応等の他の製造プロセスも、セラミック製造プロセスの中に組み込まれてもよい。光学セラミック蛍光体に関して、基本材料は、所望の蛍光体成分を含むように選定され、混合および焼結は、動作スペクトル(ポンプ光および蛍光の両方を含む)にわたって光学的に透過性である、ホスト材料を生産するように設計される。セラミック材料は、エポキシまたはシリコーン等の従来の蛍光体結合剤材料より高密度であって、光学セラミック蛍光体は、典型的には、通常少なくとも摂氏数百度である、少なくとも焼結温度に熱的に耐性があって、焼結プロセスに応じて、1,000℃またはそれを上回る高温であってもよい。その結果、光学セラミック蛍光体は、高パワーレーザによってポンプされるとき、熱的に安定することが期待される。
【0007】
いくつかの市販の光学セラミック蛍光体は、セラミックホスト内に埋設されたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、セリウムドープYAG(YAG:Ce)、ルテチウムYAG(LuYAG)、ケイ酸塩ベースの蛍光体、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlON)蛍光体等を含み、該セラミックホストは、多結晶アルミナ(Al、PCA)、ランタナドープイットリア(Y-La)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAl12)、マグネシウムアルミネートスピネル(MgAl)、ジスプロシア(Dy)、酸窒化アルミニウム(Al2327)、窒化アルミニウム(AlN)等である。例えば、Raukas et al.,“Ceramic Phosphors for Light Conversion in LEDs”,ECS Journal of Solid State Science and Technology, vol. 2 no. 2, pages R3168-76(2013)を参照されたい。
【0008】
いくつかの改良が、本明細書に開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの開示される実施形態によると、光変換デバイスは、セラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、光学セラミック蛍光体要素と、金属ヒートシンクと、光学セラミック蛍光体要素を金属ヒートシンクに取り付けるはんだ接合部とを備える。
【0010】
いくつかの開示される実施形態によると、光変換デバイスは、固体ホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、蛍光体要素と、金属ヒートシンクと、蛍光体要素を金属ヒートシンクに取り付ける、はんだ接合部とを備える。いくつかの実施形態では、蛍光体要素は、固体ガラスホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む。
【0011】
いくつかの開示される側面によると、光発生器は、2つの直前の段落のうちの1つに記載の光変換デバイスと、光ビームを光変換要素に印加するように配列される光源とを備える。光学セラミック蛍光体要素は、光源が光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーの光ビームを印加することに応答して、亀裂を受けない。
【0012】
いくつかの開示される実施形態によると、光変換デバイスを加工する方法は、はんだ付け可能金属スタックをセラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させるステップと、はんだ付け可能金属スタックをヒートシンクにはんだ付けすることによって、光学セラミック蛍光体要素を金属ヒートシンクに取り付けるステップとを含む。
【0013】
いくつかの開示される実施形態によると、光変換デバイスを加工する方法が、開示される。本方法は、はんだ付け可能金属スタックを固体ホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む蛍光体要素の裏側に堆積させるステップと、はんだ付け可能金属スタックをヒートシンクにはんだ付けすることによって、蛍光体要素を金属ヒートシンクに取り付けるステップとを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
光変換デバイスであって、
セラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む光学セラミック蛍光体要素と、
金属ヒートシンクと、
前記光学セラミック蛍光体要素を前記金属ヒートシンクに取り付けるはんだ接合部と
を備える、光変換デバイス。
(項目2)
前記光変換デバイスは、静的光変換デバイスまたは蛍光体ホイールである、項目1に記載の光変換デバイス。
(項目3)
前記光学セラミック蛍光体要素と前記はんだ接合部との間の前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に配置される、鏡コーティングをさらに備える、項目1-2のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目4)
前記鏡は、背面空気界面と協働するように設計される誘電鏡である、項目3に記載の光変換デバイス。
(項目5)
前記鏡コーティングと前記はんだ接合部との間の前記鏡コーティング上に配置される1つまたはそれを上回る金属層を含む、はんだ付け可能金属スタックをさらに備え、
前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属スタックに取り付けられる、項目3-4のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目6)
前記光学セラミック蛍光体要素と前記はんだ接合部との間の前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に配置される1つまたはそれを上回る金属層を含む、はんだ付け可能金属スタックをさらに備え、
前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属スタックに取り付けられる、項目1-2のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目7)
前記はんだ付け可能金属スタックは、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、クロム/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、チタン/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、クロム/ニッケル/銀層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、チタン/ニッケル/銀層スタックと
のうちの1つを備える、項目5-6のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目8)
前記はんだ付け可能金属スタックのニッケル層は、バナジウムを含む、項目7に記載の光変換デバイス。
(項目9)
前記金属ヒートシンクは、その中に前記はんだ接合部が配置される、陥凹を含む、項目1-8のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目10)
前記光学セラミック蛍光体要素の下側部分もまた、前記ヒートシンクの陥凹内に配置される、項目9に記載の光変換デバイス。
(項目11)
前記光学セラミック蛍光体要素は、前記光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーを用いて印加された光ビームに応答して、亀裂を受けない、項目1-10のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目12)
光発生器であって、
項目1-11のうちのいずれか1項に記載の光変換デバイスと、
光ビームを光変換要素に印加するように配列される光源と
を備え、
前記光学セラミック蛍光体要素は、前記光源が前記光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーの光ビームを印加することに応答して、亀裂を受けない、光発生器。
(項目13)
光変換デバイスであって、
固体ホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む蛍光体要素と、
金属ヒートシンクと、
前記蛍光体要素を前記金属ヒートシンクに取り付ける、はんだ接合部と
を備える、光変換デバイス。
(項目14)
前記光変換デバイスは、静的光変換デバイスまたは蛍光体ホイールである、項目13に記載の光変換デバイス。
(項目15)
前記蛍光体要素と前記はんだ接合部との間の前記蛍光体要素の裏側に配置される、鏡コーティングをさらに備える、項目13-14のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目16)
前記鏡は、背面空気界面と協働するように設計される、誘電鏡である、項目15に記載の光変換デバイス。
(項目17)
前記鏡コーティングと前記はんだ接合部との間の前記鏡コーティング上に配置される1つまたはそれを上回る金属層を含む、はんだ付け可能金属スタックをさらに備え、
前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属スタックに取り付けられる、項目15-16のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目18)
前記蛍光体要素と前記はんだ接合部との間の前記蛍光体要素の裏側に配置される1つまたはそれを上回る金属層を含む、はんだ付け可能金属スタックをさらに備え、
前記はんだ接合部は、前記はんだ付け可能金属スタックに取り付けられる、項目13-14のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目19)
前記はんだ付け可能金属スタックは、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、クロム/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が金層に取り付けられる、チタン/ニッケル/金層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、クロム/ニッケル/銀層スタックと、
前記はんだ接合部が銀層に取り付けられる、チタン/ニッケル/銀層スタックと
のうちの1つを備える、項目17-18のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目20)
前記はんだ付け可能金属スタックのニッケル層は、バナジウムを含む、項目19に記載の光変換デバイス。
(項目21)
前記金属ヒートシンクは、その中に前記はんだ接合部が配置される、陥凹を含む、項目13-20のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目22)
前記蛍光体要素の下側部分もまた、前記ヒートシンクの陥凹内に配置される、項目21に記載の光変換デバイス。
(項目23)
前記蛍光体要素は、固体ガラスホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、項目13-22のいずれか1項に記載の光変換デバイス。
(項目24)
前記固体ガラスホスト要素は、B270、BK7、P-SF68、P-SK57Q1、P-SK58A、またはP-BK7を含む、項目23に記載の光変換デバイス。
(項目25)
光発生器であって、
項目13-24のうちのいずれか1項に記載の光変換デバイスと、
光ビームを光変換要素に印加するように配列される光源と
を備え、
前記光学セラミック蛍光体要素は、前記光源が前記光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点まで加熱するために効果的なビームエネルギーの光ビームを印加することに応答して、亀裂を受けない、光発生器。
(項目26)
光変換デバイスを加工する方法であって、
はんだ付け可能金属スタックをセラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させるステップと、
前記はんだ付け可能金属スタックを前記ヒートシンクにはんだ付けすることによって、前記光学セラミック蛍光体要素を金属ヒートシンクに取り付けるステップと
を含む、方法。
(項目27)
前記はんだ付け可能金属スタックを前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させるステップに先立って、誘電鏡コーティングを前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させ、これによって、前記はんだ付け可能金属スタックが、前記誘電鏡コーティング上に堆積される、ステップ
をさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記はんだ付け可能金属スタックを前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させるステップは、
クロムまたはチタン層を前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させるか、または、前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に配置される誘電鏡コーティング上に堆積させるステップと、
ニッケル層を前記クロムまたはチタン層上に堆積させるステップと、
銀、白金、または金層を前記ニッケル層上に堆積させるステップと
を含む、項目26-27のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記ニッケル層は、バナジウムを含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記はんだ付け可能金属スタックを前記光学セラミック蛍光体要素の裏側に堆積させるステップは、
はんだ付け可能銀、白金、または金層を前記ニッケル層上に堆積させるステップを含み、
前記はんだ付けするステップは、前記はんだ付け可能銀、白金、または金層を前記ヒートシンクにはんだ付けするステップを含む、項目26-27のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記取り付けるステップは、
前記光学セラミック蛍光体要素と前記金属ヒートシンクとの間に介在されるはんだ予備成形物を用いて、前記光学セラミック蛍光体要素を前記金属ヒートシンク上に配置し、アセンブリを作成するステップと、
前記はんだ予備成形物に、はんだ接合部を前記はんだ付け可能金属スタックと前記金属ヒートシンクとの間に形成させるために効果的である、はんだ付け温度まで前記アセンブリを加熱するステップと
を含む、項目26-28のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記はんだ予備成形物は、はんだフラックスを含み、前記はんだフラックスは、前記はんだ予備成形物上にコーティングされる、またはその中に混合される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記はんだ予備成形物は、鉛/インジウム/銀はんだ合金または金/スズはんだ合金を含む、項目31-32のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
光変換デバイスを加工する方法であって、
はんだ付け可能金属スタックを固体ホスト要素内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む蛍光体要素の裏側に堆積させるステップと、
前記はんだ付け可能金属スタックを前記ヒートシンクにはんだ付けすることによって、前記蛍光体要素を金属ヒートシンクに取り付けるステップと
を含む、方法。
(項目35)
前記はんだ付け可能金属スタックを前記蛍光体要素の裏側に堆積させるステップに先立って、誘電鏡コーティングを前記蛍光体要素の裏側に堆積させ、これによって、前記はんだ付け可能金属スタックが、前記誘電鏡コーティング上に堆積される、ステップ
をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記はんだ付け可能金属スタックを前記蛍光体要素の裏側に堆積させるステップは、
クロムまたはチタン層を前記蛍光体要素の裏側に堆積させるか、または、前記蛍光体要素の裏側に配置される誘電鏡コーティング上に堆積させるステップと、
ニッケル層を前記クロムまたはチタン層上に堆積させるステップと、
銀、白金、または金層を前記ニッケル層上に堆積させるステップと
を含む、項目34-35のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記はんだ付け可能金属スタックを前記蛍光体要素の裏側に堆積させるステップは、
はんだ付け可能銀、白金、または金層を前記ニッケル層上に堆積させるステップを含み、
前記はんだ付けするステップは、前記はんだ付け可能銀、白金、または金層を前記ヒートシンクにはんだ付けするステップを含む、
項目33-34のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記取り付けるステップは、
前記蛍光体要素と前記金属ヒートシンクとの間に介在されるはんだ予備成形物を用いて、前記蛍光体要素を前記金属ヒートシンク上に配置し、アセンブリを作成するステップと、
前記はんだ予備成形物に、はんだ接合部を前記はんだ付け可能金属スタックと前記金属ヒートシンクとの間に形成させるために効果的である、はんだ付け温度まで前記アセンブリを加熱するステップと
を含む、項目33-34のうちのいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記はんだ予備成形物は、はんだフラックスを含み、前記はんだフラックスは、前記はんだ予備成形物上にコーティングされる、またはその中に混合される、項目38に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、6つの蛍光体アークセグメントを含む、蛍光体ホイールを図示する。図1の区分S-Sは、蛍光体要素のうちの1つの一部の断面と、金属ホイールへのそのはんだ取付とを示す。
図2図2は、図1の区分S-Sの分解図(左側)と、主な製造動作を図式的に示すフローチャート(右側)とを示す。
図3図3は、ヒートシンク(例えば、図1の金属ホイール)が、少なくともはんだ取付、随意に、蛍光体要素の下側部分を受容するように成形および定寸される、陥凹を有する、変形実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用されるように、かつ当技術分野における従来通り、「光学スペクトル」、「光学」、「波長」、「周波数」、「光」、「光ビーム」等の用語は、可視スペクトルに限定されず、むしろ、所与のフィルタに関して、赤外線および/または紫外線スペクトル領域まで拡張する、または全体的にその中にあってもよい。
【0016】
光学セラミック蛍光体が、高パワーレーザによってポンプされるとき、熱的に安定することが期待されるという期待とは対照的に、本発明者らは、高パワーポンプレーザの出力が上昇するにつれて、実際は、光学セラミック蛍光体が、破壊的故障を受けることを見出した。具体的には、接着剤または熱ペーストを使用してヒートシンク上に搭載された静的光学セラミック蛍光体要素は、高パワーポンプレーザ上昇の間、破壊的亀裂を受ける。
【0017】
本明細書に開示されるように、本発明者らは、本壊滅的な亀裂故障モードは、光学セラミック蛍光体のヒートシンク(例えば、AlまたはCu)へのはんだ接続を採用することによって克服されることができることを見出した。はんだ取付を用いることで、ポンプレーザパワーは、光学セラミック蛍光体要素を亀裂させずに、蛍光体消光をもたらすために十分に高いポンプパワーまで上昇され得る。いかなる特定の動作理論にも限定されるわけではないが、壊滅的な故障モードは、取付の熱抵抗の観点または取付の熱リアクタンス(すなわち、熱伝達が上昇する前の遅延)の観点のいずれかにおいて、光学セラミック蛍光体からの不十分な熱伝達に起因し、はんだ取付は、壊滅的な亀裂故障モードを克服するために十分に取付部を通して熱伝達を改良すると考えられる。これを考慮して、はんだ接合部に加え、必須熱伝達性質を提供する、他の取付接合部を採用することも検討される。例えば、はんだ接合部と、銀(Ag)ナノ粒子の粉末またはペーストを有機溶剤(均一分散を提供するため)中で焼結させることによって形成される、接合部を置換することが検討される。焼結は、好適には、銀溶融温度を下回る温度、例えば、約250℃で行われるが、いくつかの実施形態では、最適プロセス温度は、Agナノ粒子サイズ、密度、および平均表面積等の要因に依存する。焼結が生じている間、若干の圧力が、随意に、印加されてもよく、および/または焼結は、随意に、制御された大気中で行われてもよい。焼結後、銀は、焼結温度よりはるかに高い温度まで動作可能となるであろう。任意の特定の動作理論に限定されるわけではないが、本アプローチにおける接合プロセスは、原子拡散機構に帰すると考えられる。
【0018】
より一般的には、本明細書に開示されるように、はんだ接続は、固体蛍光体要素をヒートシンク(例えば、AlまたはCu)に取り付けるために使用される。はんだ取付は、壊滅的な亀裂または他の熱故障モードを克服するために十分に取付部を通して熱伝達を改良することが期待される。これを考慮して、はんだ接合部に加え、必須熱伝達性質を提供する、他の取付接合部を採用することも検討される。
【0019】
本明細書に開示されるはんだ接合部アプローチは、蛍光体が、結晶、ガラス、または他の固体ホスト材料の中に組み込まれる、単結晶または多結晶蛍光体要素、ガラス蛍光体要素等の種々のタイプの高温蛍光体要素のための利点を提供することが期待される。本明細書に開示されるはんだ接合部アプローチは、蛍光体が、結晶成長プロセスの間、高熱安定性を有する結晶の中に組み込まれる、単結晶または多結晶蛍光体要素等の他のタイプの高温蛍光体要素のための類似利点も提供することが期待される。
【0020】
図1は、銅、銅合金、アルミニウム合金等から作製される、金属ディスクまたは「ホイール」12を含む、蛍光体ホイール10を図式的に示す。1つまたはそれを上回る光学セラミック蛍光体要素、例えば、アークセグメント14がホイール12の外周に取り付けられる、すなわち、ホイール12の外側リムまたはその近傍に取り付けられる。金属ディスクまたはホイール12は、したがって、光学セラミック蛍光体アークセグメント14のための搬送構成要素およびヒートシンクの両方としての役割を果たす。例証的光学セラミック蛍光体アークセグメント14は、ホイール円周の全体の蛍光体被覆を可能にしながら、光学セラミック蛍光体材料の量を最小限にする、幾何学的に有利な設計である。例証的蛍光体ホイール10は、等サイズの6つの光学セラミック蛍光体アークセグメント14を含む。しかしながら、より多いまたはより少ない蛍光体アークセグメントも、採用されることができる(完全360円形を形成する、1つだけの光学セラミック蛍光体アークセグメントを含む)。例証的な6つの光学セラミック蛍光体アークセグメント14が、一般的に図示され標識されるが、異なる光学セラミック蛍光体アークセグメントは、異なる蛍光体(例えば、異なる色の蛍光を放出するため)を含むことができる、および/または近隣光学セラミック蛍光体アークセグメント間に間隙があってもよいことを理解されたい。動作時、金属ホイール12は、例えば、モータ(図示せず)のモータシャフトを中心軸16に接続し、モータを動作させ、蛍光体ホイール10を図示される時計回り方向CW(反時計回り回転もまた、検討される)に回転させることによって、中心軸16を中心として回転される。回転と同時に、ポンプ光が、局所領域に印加される。これは、例証的ポンプレーザビームスポットLを印加するレーザ18によって、図1に図式的に示される。金属ホイール12が回転するにつれて、光学セラミック蛍光体アークセグメント14をレーザビームLと接触するように順次搬送し、蛍光を放出させる。種々の光学セラミック蛍光体アークセグメント14の蛍光体の好適な選択によって、DLPディスプレイ用途において適切であり得るように、赤色-緑色-青色-赤色-緑色-青色等、種々の色時間系列が、発生されることができることは、容易に理解されるであろう。
【0021】
図1を継続して参照して、かつ図2をさらに参照すると、区分S-Sは、1つの光学セラミック蛍光体アークセグメント14の一部の断面と、金属ホイール12へのそのはんだ取付とを図式的に図示する。図2は、区分S-Sの分解図(左側)と、主な製造動作を図式的に示すフローチャート(右側)とを示す。層厚は、図1の略図区分S-Sおよび図2に示されるその分解図において正確な縮尺で描かれていないことに留意されたい。光学セラミック蛍光体アークセグメント14は、非限定的例証として、可視スペクトル内で光学的に透過性であるセラミック材料内に埋設されたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、セリウムドープYAG(YAG:Ce)、ルテチウムYAG(LuYAG)、ケイ酸塩ベースの蛍光体、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlON)蛍光体等の蛍光体を含み得る、光学セラミック蛍光体要素20を含み、該セラミック材料は、多結晶アルミナ(Al、PCA)、ランタナドープイットリア(Y-La)、イットリウムアルミニウムガーネット(YAl12)、マグネシウムアルミネートスピネル(MgAl)、ジスプロシア(Dy)、酸窒化アルミニウム(Al2327)、窒化アルミニウム(AlN)等である。例えば、Raukas et al.,“Ceramic Phosphors for Light Conversion in LEDs”, ECS Journal of Solid State Science and Technology, vol. 2 no. 2, pages R3168-76(2013)を参照されたい。他の実施形態では、蛍光体要素アークセグメント14は、非限定的例証として、可視スペクトル内で光学的に透過性である、結晶、ガラス、または他の固体ホスト材料内に埋設されたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、セリウムドープYAG(YAG:Ce)、ルテチウムYAG(LuYAG)、ケイ酸塩ベースの蛍光体、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlON)蛍光体等の蛍光体を含み得る、蛍光体要素20を含む。例えば、ホスト材料は、B270、BK7、P-SF68、P-SK57Q1、P-SK58A、P-BK7等のガラスであることができる。
【0022】
蛍光体または蛍光体ドーパントは、所望の放出光、例えば、緑色、黄色、赤色、または白色蛍光体混成物等の光の組み合わせを放出するように好適に選定されてもよい。光学セラミック蛍光体要素20は、(非限定的例証として)粉末状基本材料、結合剤、および安定剤の混合物を高温で焼結する等、任意の好適なプロセスを使用して製造されてもよい。他の実施形態では、例えば、ガラスホスト材料を使用して、蛍光体要素20は、(非限定的例証として)溶融、成形、焼結等の好適なプロセスを使用して製造されてもよい。
【0023】
例証的実施例では、光学セラミック蛍光体要素が、例証のために仮定される。随意に、1つまたはそれを上回る光学コーティングが、光学セラミック蛍光体要素20の1つまたはそれを上回る表面に塗布されてもよい。例証目的のために、光学セラミック蛍光体アークセグメント14は、正面反射防止(AR)コーティング22と、背面誘電または金属またはハイブリッド誘電/金属鏡コーティング24とを含む。(用語「正面」は、本明細書で使用されるように、ポンプレーザ18または他のポンプ光ビームからのビームが衝突する、光学セラミック蛍光体要素20の側を示す一方、用語「背面」は、本明細書で使用されるように、ヒートシンク12に取り付けられる、光学セラミック蛍光体要素20の側を示す(再び、例証的実施例では、蛍光体ホイール10の金属ホイール12は、光学セラミック蛍光体要素20のためのヒートシンクとしての役割を果たす)。ARコーティング22は、蛍光の放出を妨害せずに、光学セラミック蛍光体要素20に衝突するポンプレーザ光の反射を最小限にするように設計される。誘電鏡コーティング24は、蛍光を反射させるように設計され、随意に、また、ポンプレーザ光を反射させるように設計される。図2に示されるように、これらのコーティングは、スパッタ堆積S1によって塗布されてもよいが、これらのコーティング22、24を作製する材料を堆積させるために好適な任意の他の堆積技法も、堆積S1を行うために使用されることができる。また、光学コーティング22、24の一方または両方のいずれかは、省略されてもよい、および/または波長選択的フィルタコーティング、光散乱コーティング、堆積されたフレネルレンズ等、他の光学コーティングも、提供されることができることを理解されたい。
【0024】
図1および2を継続して参照すると、光学セラミック蛍光体要素20および誘電または金属鏡コーティング24(存在する場合)は、典型的には、はんだ接合に好適な材料ではない。はんだ付けによる光学セラミック蛍光体アークセグメント14と金属ホイール12の取付を促進するために、光学セラミック蛍光体アークセグメント14はさらに、光学セラミック蛍光体要素の裏側20(より具体的には、例証的実施例では、誘電鏡コーティング24の裏側)に堆積される、はんだ付け可能金属スタック30を含む。はんだ付け可能金属スタック30は、1つだけの金属層を含むことができる。例証的実施形態では、はんだ付け可能金属スタック30は、(非限定的例証的実施例として)クロムまたはチタンまたはチタン-タングステン(TiW)合金の要素20に隣接する接着層32と、(非限定的例証的実施例として)ニッケルの拡散障壁層34と、(非限定的例証的実施例として)金のはんだ付け可能金属層36とを含む。これは、単に、例証的実施例であって、非金属要素と金属要素のはんだ付けを促進するための当技術分野において公知の多数のはんだ付け可能はんだスタックが、採用されることができる。いくつかのさらなる非限定的例証的実施例として、はんだ付け可能金属層36は、金ではなく、銀、白金、または別のはんだ適合性金属または金属サブスタックであり得る。ニッケル拡散障壁層は、数パーセント(例えば、5%)のバナジウムを含み、マグネトロンスパッタリングによる堆積を促進するように、その磁気性質を低減させることができる。拡散障壁層34は、全体的に省略されることができる、および/または接着層32は、全体的に省略されることができる等が考えられる。図2に示されるように、はんだ付け可能金属スタック30は、スパッタリング、めっき、真空金属蒸発(例えば、電子ビーム蒸発、熱蒸発を使用して)等によって、金属堆積動作S2において、例えば、光学セラミック蛍光体要素20の裏側(または、より具体的には、例証的実施例では、誘電鏡コーティング24の裏側)に堆積されてもよいが、これらのはんだ付け可能金属スタック30を作製する材料を堆積させるために好適な任意の他の堆積技法も、堆積S1を行うために使用されることができる。
【0025】
図1および2を継続して参照すると、光学セラミック蛍光体要素20と、随意の光学コーティング22、24と、はんだ付け可能金属スタック30とを含む、光学セラミック蛍光体アークセグメント14は、はんだ接合部40を形成するはんだ動作S3によって、金属基板12(図1の例証的実施例では、金属ホイール12)に取り付けられる。図2に図式的に図示される1つの好適なアプローチでは、はんだ動作S3は、光学セラミック蛍光体アークセグメント14と金属ヒートシンク12との間に介在されるはんだフラックス40でコーティングされるはんだ予備成形物40を用いて、光学セラミック蛍光体アークセグメント14を金属ヒートシンク12上に設置することを伴う。別の検討される実施形態では、はんだフラックスは、はんだ予備成形物上にコーティングされるのではなく、はんだ予備成形物の中に混合される。非限定的実施例として、鉛/インジウム/銀はんだ合金、金/スズはんだ合金、金-シリコン(AuSi)合金等、広範囲のはんだ合金が、はんだ予備成形物40のために使用されることができる。本アセンブリは、次いで、はんだ40、40に、はんだ接合部40をはんだ付け可能金属スタック30と金属ヒートシンク12との間に形成させるために効果的である、はんだ付け温度まで加熱される。他のアプローチも、はんだガンを採用し、予混合されたはんだ材料およびフラックスをともにはんだ付けされるべき表面の一方または両方上に配置し、次いで、それらをともに圧接すること等、はんだ動作S3を行うために検討される。商業用製造のために、はんだ接合動作S3は、高スループットを伴う自動化されたプロセスであるべきである。
【0026】
図3を簡単に参照すると、変形実施形態では、はんだ取付が行われるべきヒートシンク基板12は、はんだ動作S3を促進するように、はんだフラックス40でコーティングされるはんだ予備成形物40を受容するように成形され、かつ十分な深度である、陥凹44を含む。結果として生じるデバイスは、次いで、はんだ接合部40を陥凹44内に配置されるであろう。随意に、陥凹44は、結果として生じるデバイスが、はんだ接合部40および光学セラミック蛍光体要素20の下側部分を陥凹44内に配置させるように、光学セラミック蛍光体アークセグメント14の下側部分も同様に受容するために十分な深度であってもよい。
【0027】
例証的実施形態は、図1の蛍光体ホイール10に関する。しかしながら、光学セラミック蛍光体要素20と金属ヒートシンク12のはんだ取付のための開示されるアプローチは、静的蛍光体要素をヒートシンクに取り付けるためにも等しく適用可能であることを理解されたい。例えば、1つの用途では、光学セラミック蛍光体要素20は、黄色または帯黄色蛍光を発生させる、1つまたはそれを上回る蛍光体を含有し、ポンプレーザビームは、青色レーザビームである。光学セラミック蛍光体要素20内の蛍光体濃度および青色ポンプビームパワーの適切な調整によって、青色ポンプ光および黄色または帯黄色蛍光の混合物は、白色光に近似するように発生される。光学セラミック蛍光体要素は、任意の所望の光学システム内で採用されてもよい。1つの非限定的実施例として、本明細書に開示されるようにヒートシンクにはんだ付けされる静的光学セラミック蛍光体要素は、光トンネルと併せて採用されてもよく、光トンネル内の高光学パワーは、本明細書に開示されるようなはんだ接合部を介した光学セラミック蛍光体要素からヒートシンクへの効率的熱伝達によって適応される。
【0028】
実験試験において、銅ヒートシンクにはんだ付けされた光学セラミック蛍光体要素が、比較のための熱ペーストによって銅ヒートシンクに取り付けられた光学セラミック蛍光体要素とともに、試験された。いくつかの試験された光学セラミック蛍光体要素は、正面ARコーティング22および裏側誘電鏡コーティング24を含み、後者は、背面空気界面のために設計された。試験では、はんだ付けによってヒートシンクに固着された光学セラミック蛍光体要素の亀裂は、光学セラミック蛍光体要素を蛍光体消光点までそしてそれを超えて加熱するために効果的なビームエネルギーに関して、観察されなかった。対照的に、熱ペーストによってヒートシンクに固着された光学セラミック蛍光体要素は、ポンプレーザパワーが増加されるにつれて、壊滅的な亀裂を呈し、本亀裂は、デバイスの熱範囲を限定するように、蛍光体消光点に到達するよりもかなり前に生じた。ARコーティング22への損傷もまた、熱ペーストを使用して搭載された光学セラミック蛍光体要素内で観察され、開示されるはんだ接合部を使用して搭載された光学セラミック蛍光体要素と比較して低減されたレーザ誘発損傷(LITD)閾値につながった。また、驚くべきことに、背面界面が、設計ベースの空気(屈折率n=1)に対してではなく、はんだ接合部40に対するものであったという事実にもかかわらず、背面空気界面のために設計された裏側誘電鏡コーティング24は、実質的光出力改良を提供することが観察された。任意の特定の動作理論に限定されるわけではないが、これは、背面鏡/はんだ界面に到達する光の割合が少なくなるように、複数の層のスタックが有意な反射を提供することに起因し得ると考えられる。
【0029】
これらの結果は、開示されるはんだ取付アプローチが、光学セラミック蛍光体要素20が亀裂を受けずに、蛍光体消光点までの任意の値のポンプビームエネルギーと協働することができる、セラミックホスト内に埋設された1つまたはそれを上回る蛍光体を含む、光学セラミック蛍光体要素20と、金属ヒートシンク12と、光学セラミック蛍光体要素20を金属ヒートシンク12に取り付けるはんだ接合部40とを備える、受動的光変換デバイスの構造を可能にすることを実証する。対照的に、従来の熱ペースト取付は、蛍光体消光点を優に下回って、壊滅的な亀裂をもたらし、それによって、デバイス性能を限定した。開示されるはんだ接合部は、多くの実施形態では、電気または電子構成要素を含まない、受動的光学要素のための改良されたデバイス性能を提供することに留意されたい。
【0030】
種々の前述の開示された特徴および機能ならびに他の特徴および機能、または、その代替は、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは用途の中に組み合わせられてもよいことを理解されたい。さらに、その種々の現在予想または予期されていない代替、修正、変形例、または改良も、続いて、当業者によって後に成され得、これもまた、以下の請求項によって包含されることが意図されることを理解されたい。
図1
図2
図3