(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20221104BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20221104BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
H05K5/02 V
H04M1/02 C
(21)【出願番号】P 2021072471
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】渡村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-243588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0378397(US,A1)
【文献】特開2021-033192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0324964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16-1/18
H04M 1/02-1/23
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体と、
前記第1筐体と隣接する第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、
前記第1筐体の内面側に設けられ、その表面に前記ディスプレイの裏面における前記折曲領域よりも前記第1筐体側の領域が固定された第1プレートと、
前記第2筐体の内面側に設けられ、その表面に前記ディスプレイの裏面における前記折曲領域よりも前記第2筐体側の領域が固定された第2プレートと、
を備え、
前記第1姿勢において、前記ディスプレイの折曲領域は、互いに重なるように配置された前記第1プレート及び前記第2プレートの端面から突き出した状態で、断面が袋状の折曲形状を形成するものであり、
当該電子機器は、さらに、
前記第1プレートの前記端面から突き出すように設けられ、その突出方向に向かって次第に前記第1プレートの表面から下る方向に傾斜した第1傾斜面と、
前記第2プレートの前記端面から突き出すように設けられ、その突出方向に向かって次第に前記第2プレートの表面から下る方向に傾斜した第2傾斜面と、
を備え、
前記第1プレートの前記端面から突き出すように設けられた第1突出片と、
前記第2プレートの前記端面から突き出すように設けられた第2突出片と、
をさらに備え、
前記第1傾斜面は、前記第1突出片に設けられ、
前記第2傾斜面は、前記第2突出片に設けられており、
前記第1突出片は、前記第1プレートの前記端面の長手方向に沿って並ぶように複数設けられ、
前記第2突出片は、前記第2プレートの前記端面の長手方向に沿って並ぶように複数設けられており、
前記ヒンジ装置は、
前記第1筐体及び前記第2筐体の隣接端部に沿って延在すると共に、前記隣接端部を跨ぐように配置され、前記ディスプレイの裏面を支持するヒンジ本体と、
前記第1筐体の内面側で前記隣接端部に沿って延在すると共に、前記ヒンジ本体と相対回転可能に連結され、前記ヒンジ本体と前記第1プレートとの間で前記ディスプレイの裏面を支持する第1サポートプレートと、
前記第2筐体の内面側で前記隣接端部に沿って延在すると共に、前記ヒンジ本体と相対回転可能に連結され、前記ヒンジ本体と前記第2プレートとの間で前記ディスプレイの裏面を支持する第2サポートプレートと、
を有し、
前記第1サポートプレートは、前記第2姿勢時に前記ヒンジ本体側とは反対側にある外側端面が前記第1プレートの前記端面と当接又は近接し、
前記第2サポートプレートは、前記第2姿勢時に前記ヒンジ本体側とは反対側にある外側端面が前記第2プレートの前記端面と当接又は近接し、
前記第1サポートプレートの前記外側端面には、前記第1突出片との干渉を回避するための切欠状の凹部が設けられ、
前記第2サポートプレートの前記外側端面には、前記第2突出片との干渉を回避するための切欠状の凹部が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体を相対的に回動可能に連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、OLED(Organic Light Emitting Diode)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り畳み可能に構成した電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルディスプレイは、緩く折り曲げた際は略U字型の折曲形状となるが、この状態からさらに薄くなるように折り曲げると袋状に膨らんだ折曲形状となる。この折曲形状は、ベル状、涙状、或いはΩ状と言い換えてもよい。この折曲形状は、ディスプレイの折曲領域の曲げ方向が固定端付近で反転したものである。この場合、ディスプレイは、先端側が略C字状の内曲げを生じ、根本側がこれとは逆の外曲げを生じている。
【0005】
ところで、このような袋状に折り曲げられたディスプレイは、外曲げ部での曲率半径が小さ過ぎた場合に層間剥離を生じる可能性があることが確認された。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、折曲動作によるディスプレイの不具合の発生を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1筐体と、前記第1筐体と隣接する第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられ、前記第1筐体と前記第2筐体とが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、前記第1筐体の内面側に設けられ、その表面に前記ディスプレイの裏面における前記折曲領域よりも前記第1筐体側の領域が固定された第1プレートと、前記第2筐体の内面側に設けられ、その表面に前記ディスプレイの裏面における前記折曲領域よりも前記第2筐体側の領域が固定された第2プレートと、を備え、前記第1姿勢において、前記ディスプレイの折曲領域は、互いに重なるように配置された前記第1プレート及び前記第2プレートの端面から突き出した状態で、断面が袋状の折曲形状を形成するものであり、当該電子機器は、さらに、前記第1プレートの前記端面から突き出すように設けられ、その突出方向に向かって次第に前記第1プレートの表面から下る方向に傾斜した第1傾斜面と、前記第2プレートの前記端面から突き出すように設けられ、その突出方向に向かって次第に前記第2プレートの表面から下る方向に傾斜した第2傾斜面と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、折曲動作によるディスプレイの不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図4A】
図4Aは、180度姿勢での電子機器の模式的な側面断面図である。
【
図4B】
図4Bは、60度姿勢での電子機器の模式的な側面断面図である。
【
図4C】
図4Cは、0度姿勢での電子機器の模式的な側面断面図である。
【
図5】
図5は、
図3中のV-V線に沿う模式的な斜視断面図である。
【
図6】
図6は、第1プレートの端面及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る電子機器を0度姿勢とした場合の折曲領域の状態を模式的に示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係る電子機器を0度姿勢とした場合の折曲領域の状態を模式的に示す側面断面図である。
【
図9A】
図9Aは、変形例に係る突出片を備えた電子機器を180度姿勢とした状態を模式的に示す要部拡大平面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係る取付構造で突出片を設置した電子機器の模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0012】
図1~
図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、携帯電話、スマートフォン、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0013】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、例えば、それぞれヒンジ装置14で連結される辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。ヒンジ装置14は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す背表紙部材としても機能する。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0014】
図3に示すように、第1筐体12Aは、マザーボード17等の電子部品を搭載している。マザーボード17は、電子機器10のメインボードであり、例えばCPU、通信モジュール、SSD等の電子部品が実装されている。
【0015】
第2筐体12Bは、例えばバッテリ装置18、サブカード19等の電子部品を搭載している。バッテリ装置18は、電子機器10の電源となる二次電池である。サブカード19は、例えば電源ボタンやUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。
【0016】
筐体12A,12B間は、例えば3本のフレキシブル基板20によって電気的に接続されている。各フレキシブル基板20は、例えばマザーボード17と、ディスプレイ16、バッテリ装置18、又はサブカード19との間を接続する。
【0017】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。X方向については、第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向をX1方向、その逆の第1筐体12Aから第2筐体12Bに向かう方向をX2方向と呼ぶこともある。また、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(
図1及び
図4C参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(
図2及び
図4A参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼び、例えば
図4Bに示す姿勢を60度姿勢と呼ぶ。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じるものであり、これらのずれた角度位置も含めて、本実施形態では0度姿勢等と呼んで説明している。
【0018】
図4A、
図4B、
図4Cは、それぞれ180度姿勢、60度姿勢、0度姿勢での電子機器10の模式的な側面断面図である。
図5は、
図3中のV-V線に沿う模式的な斜視断面図である。
【0019】
図4A~
図5に示すように、筐体12A,12B間は、ヒンジ装置14により、0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結されている。
図4Cに示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに面方向で重なるように積層される。
図4Aに示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んで配置される。
【0020】
図4A~
図4Cに示すように、ディスプレイ16は、筐体12A,12Bに亘って延在したフレキシブルディスプレイである。ディスプレイ16は、裏面16aが筐体12A,12B及びヒンジ装置14で支持され、表面16bが映像表示面となる。ディスプレイ16は、Z方向で筐体12A,12Bの最上部に位置している。ディスプレイ16は、例えば上から下に向かって順に、表面フィルム、タッチパネル、OLED等のディスプレイパネル、及び裏面シートを積層し、各層間を光学粘着シート(OCA:Optical Clear Adhesive)で固定した積層体である。
【0021】
図4Cに示す0度姿勢時、ディスプレイ16は、第1筐体12A側の領域RAと、第2筐体12B側の領域RBとが対向するように配置され、領域RA,RB間の境界領域である折曲領域R1が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図4Aに示す180度姿勢時、ディスプレイ16は、領域RA,RB及び折曲領域R1がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す(
図2も参照)。
【0022】
ディスプレイ16は、領域RAが第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域RBが第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、領域RAの裏面16aは、第1プレート24Aで支持され、第1プレート24Aを介して第1筐体12Aと固定される。領域RBの裏面16aは、第2プレート24Bで支持され、第2プレート24Bを介して第2筐体12Bと固定される。折曲領域R1は、筐体12A,12Bに対して相対的に移動可能な状態とされている。
【0023】
プレート24A,24Bは、例えば炭素繊維強化樹脂で形成されたプレートである。プレート24A,24Bは、ヒンジ装置14を間に挟むように左右に配置され、それぞれの表面24Aa,24Baにディスプレイ16の裏面16aの領域RA,RBが両面テープ等で固定される。
【0024】
プレート24A,24Bは、炭素繊維強化樹脂で形成されているため、高い平面度の確保と、薄型化及び軽量化とが可能である。但し、炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維が外周端面(エッジ)から粉吹き状に脱落する懸念があり、また、形状加工やねじ加工等も難しい。そこで、第1プレート24Aは、裏面24Abの外縁部及び外周端面を囲むように第1金属フレーム25Aが取り付けられている(
図3及び
図5参照)。同様に、第2プレート24Bも裏面24Bbの外縁部及び外周端面に第2金属フレーム25Bが取り付けられている。
【0025】
金属フレーム25A,25Bは、例えばマグネシウム等の金属材料で形成された薄い枠体である。プレート24A,24Bは、金属フレーム25A,25Bに形成されたねじ穴等を利用して筐体12A,12Bに固定される。
図4A~
図4Cは、金属フレーム25A,25Bの図示を書略しており、
図7以降の各図も同様である。プレート24A,24Bは、金属材料や樹脂材料で形成してもよく、この場合は金属フレーム25A,25Bを省略してもよい。
【0026】
図4A~
図5に示すように、本実施形態のヒンジ機構14は、ヒンジ本体26と、第1サポートプレート27Aと、第2サポートプレート27Bと、を有する。
【0027】
ヒンジ本体26は、筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ(
図4A参照)、隣接端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している(
図3参照)。ヒンジ本体26は、アルミニウム等の金属製のブロック状部品である。
【0028】
ヒンジ本体26は、第1筐体12Aに固定されたブラケットに対して第1回転リンク28A(
図3参照)を介して相対移動可能に連結されている。さらにヒンジ本体26は、第2筐体12Bに固定されたブラケットに対して第2回転リンク28B(
図3参照)を介して相対移動可能に連結されている。これによりヒンジ本体26は、筐体11,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ本体26内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。ヒンジ本体26の外面は、化粧用のカバー材26aで覆われている。
【0029】
サポートプレート27A,27Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。第1サポートプレート27Aは、第1筐体12Aの内面12Ab側に設けられ、隣接端部12Aaに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。第1サポートプレート27Aは、X2側端部が回転軸27Aaを用いてヒンジ本体26と相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート27Aは、X1側端部(外側端面27Ab)が第1筐体12Aに対して相対移動可能に設けられ、第1プレート24AのX2側の端面24Acと隣接する。180度姿勢時、第1サポートプレート27Aは、ヒンジ本体26と第1プレート24Aとの間に配置される。
【0030】
第2サポートプレート27Bは、第2筐体12Bの内面12Bb側に設けられ、隣接端部12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。第2サポートプレート27Bは、X1側端部が回転軸27Baを用いてヒンジ本体26と相対回転可能に連結されている。第2サポートプレート27Bは、X2側端部(外側端面27Bb)が第2プレート24BのX1側の端面24Bcと隣接する。180度姿勢字、第2サポートプレート27Bは、ヒンジ本体26と第2プレート24Bとの間に配置される。
【0031】
サポートプレート27A,27Bは、筐体12A,12B間の回動動作に応じて筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに対してX方向及びZ方向に相対移動する。180度姿勢時、サポートプレート27A,27Bは、その表面によって折曲領域R1の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート27A,27Bは、裏面16aとの間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力で裏面16aに接触する。サポートプレート27A,27Bは、180度以外の角度姿勢でもディスプレイ16の折曲領域R1を支持し、その形状を矯正する構成としてもよい。このように、サポートプレート27A,27Bは、180度姿勢時にはディスプレイ16の折曲領域R1を平面で安定して支持する一方、折曲領域R1の折曲動作を阻害することはない。
【0032】
図4Aに示す180度姿勢時、プレート24A,24B、ヒンジ本体26、及びサポートプレート27A,27BはX方向に並ぶ。各部材の表面24Aa,24Ba,26b,27Ac,27Bcは同一のXY平面内に配置され、全体として平面を形成する。このため、ディスプレイ16は、この平面上で裏面16aが支持され、1枚の平板状の大画面を形成する。
図2中の参照符号30は、ベゼル部材であり、ディスプレイ16の表面16bの周縁部にある非アクティブ領域を枠状にカバー部材である。
【0033】
図4Cに示す0度姿勢時、筐体12A,12Bは互いの面方向が略平行して積層された意匠性の高い折り畳み状態となる。ディスプレイ16は、折曲領域R1が所定の曲率で湾曲し、側面視で断面が袋状に膨らんだ折曲形状を成す。この折曲形状は、袋形状の他、ベル形状、涙形状(teardrop shape)とも呼ばれる。このようにディスプレイ16は、所定の隙間を介して平行に積層されたプレート24A,24Bによって折曲領域R1が所望の曲率に折り曲げられる。その結果、電子機器10は、筐体12A,12Bが可能な限り薄型化され、且つディスプレイ16の折曲時の破損も抑制される。なお、
図4Cに示す折曲領域R1は、少なくともプレート24A,24Bの表面24Aa,24Ba間のZ方向距離よりも、袋状の折曲形状のZ方向の幅(膨らみの外径)が大きい。これにより電子機器10は、ディスプレイ16の折曲部(内曲げ部B)の曲率半径を確保しつつ、プレート24A,24B間の積層間隔を最小限まで抑え、筐体全体の厚みを抑制している。
【0034】
図4A~
図4Cに示す側面視において、ディスプレイ16の折曲領域R1は、X1側の第1固定点P1と、X2側の第2固定点P2との間にある移動自由な領域である。第1固定点P1は、例えば第1プレート24Aの表面24Aaと端面24Acとのエッジである。第2固定点P2は、例えば第2プレート24Bの表面24Baと端面24Bcとのエッジである。つまり折曲領域R1は、裏面16aの全面が支持される180度姿勢以外では実質的にフリーな状態にある。その結果、
図4C示す0度姿勢時、ディスプレイ16は、第1固定点P1から第2固定点P2に向かう方向で順に、第1外曲げ部B1、内曲げ部B、第2外曲げ部B2が形成されて袋状或いはベル状を成す。ところが、これら外曲げ部B1,B2の曲率半径が小さ過ぎると、この部分にせん断応力が集中し、ディスプレイ16が層間剥離を引き起こす懸念があることが実験によって確認された。
【0035】
そこで、次に、外曲げ部B1,B2の曲率半径を増大させるための構成を説明する。
図6は、第1プレート24Aの端面24Ac及びその周辺部を拡大した斜視図である。第2プレート24Bの端面24Bc及びその周辺部の構成は、
図6に示す第1プレート24Aのものと左右対称である以外は同一構造であるため、
図6中にかっこ書きで符号を付して詳細な図示を省略している。
【0036】
図5及び
図6に示すように、電子機器10は、第1突出片32Aと、第2突出片32Bと、を備える。
【0037】
第1突出片32Aは、第1プレート24Aの端面24AcからX2方向へと突き出すように設けられた爪状の板片である。第1突出片32Aは、Y方向に沿って複数(
図3では6個)が並ぶように設けられている。第1突出片32Aは、例えば金属フレーム25Aに設けられることで、第1プレート24と一体的に固定されている。第1突出片32Aの突出長は、例えば第1サポートプレート27AのX方向幅の略半分である(
図3及び
図5参照)。
【0038】
第1突出片32Aの上面には、第1傾斜面34が設けられている。第1傾斜面34は、第1突出片32Aの突出方向(X2方向)に向かって次第に下に傾斜している。第1傾斜面34は、基端側は第1プレート24Aの表面24Aaと面一又は略面一であり、先端側に向かって次第に表面24Aaから下るように傾斜している。これにより第1傾斜面34は、先端に向かって次第に第1プレート24の表面24Aaから下る方向に傾斜している(
図4C参照)。つまり第1傾斜面34は、先端に向かって次第に表面24Aaから裏面24Abに向かう方向に傾斜する前下がりの面である。
【0039】
第2突出片32Bは、第1突出片32Aと左右対称である以外は同一構造である。第2突出片32Bは、第2プレート24Bの端面24BcからX1方向へと突出している。第2突出片32BもY方向に沿って複数(
図3では6個)が並ぶように設けられおり、その突出長は第2サポートプレート27BのX方向幅の略半分である。第2突出片32Bも例えば金属フレーム25Bに設けられ、第2プレート25と一体的に固定されている。第2突出片32Bの上面には、第2突出片32Bの突出方向(X1方向)に向かって次第に第2プレート25の表面25Aaから下る方向に傾斜する第2傾斜面35が設けられている。つまり第2傾斜面35は、先端に向かって次第に表面25Aaから裏面25Abに向かう方向に傾斜する前下がりの面である。このため、
図4Cに示す0度姿勢時、傾斜面34,35間の距離は、先端に向かってラッパ状に広がる態様となる。
【0040】
図4Aに示す180度姿勢時、第1プレート24Aの端面24Acは、第1サポートプレート27Aの外側端面27Abに当接又は近接する。同様に、第2プレート24Bの端面24Bcは、第2サポートプレート27Bの外側端面27Bbに当接又は近接する。サポートプレート27A,27Bの外側端面27Ab,27Bbには、それぞれ切欠状の凹部27Ad,27Bdが形成されている。凹部27Ad,27Bdは、突出片32A,32Bとの干渉を避けるための逃げ部であり、各突出片32A,32Bと対応する位置にそれぞれ設けられている(
図3及び
図5参照)。
【0041】
ディスプレイ16は、傾斜面34,35には折曲領域R1が重なる。このためディスプレイ16の裏面16aは傾斜面34,35に対しては固定されず、相対移動可能な状態にある。突出片32A,32Bの先端はR形状とし、ディスプレイ16に引っかかることを防止している。
【0042】
図7は、本実施形態に係る電子機器10を0度姿勢とした場合の折曲領域R1の状態を模式的に示す側面断面図である。
図8は、比較例に係る電子機器100を0度姿勢とした場合の折曲領域R1の状態を模式的に示す側面断面図である。
図8は、
図7に示す構成から突出片32A(32B)を除いた構成を例示している。なお、第1プレート24A及びその周辺部の構成は、
図7及び
図8に示す第2プレート24B及びその周辺部の構成と上下対称である以外は同一又は略同一の構造である。そこで、図面の見易さを確保するため、
図7及び
図8は、第2プレート24Bのみを図示し、第1プレート24Aの図示を省略している。
【0043】
先ず、
図8に示す比較例に係る電子機器100でのディスプレイ16の折曲状態を説明する。この場合、ディスプレイ16は、第2固定点P2から内曲げ部Bに向かう部分が端面24Bcのみで支持されている。このため、ディスプレイ16は、端面24Bcから内曲げ部Bに向かって突き出した部分が下(外側)へと沈み込む。つまり、この部分に形成される第2外曲げ部B2は、端面24Bcのエッジで押されてやや屈曲した曲げ形状を描く。その結果、第2外曲げ部B2の曲率半径r0は、例えば7mm程度になる。第1外曲げ部B1は、第2外曲げ部B2と略上下対称形状を描くため、その曲率半径はr0と同一又は略同一である。
【0044】
次に、
図7に示す本実施形態に係る電子機器10でのディスプレイ16の折曲状態を説明する。この場合、ディスプレイ16は、第2固定点P2から内曲げ部Bに向かう部分が端面24Bc及び第2傾斜面35で支持されている。このため、ディスプレイ16は、端面24Bcから内曲げ部Bに向かって突き出した部分が第2傾斜面35に支持され、緩やかに下(外側)へと膨らむ。これにより、この部分に形成される第2外曲げ部B2は、第2傾斜面35に沿った緩やかな曲げ形状を描く。その結果、第2外曲げ部B2の曲率半径rは、例えば20mm程度となり、
図8の曲率半径rに比べて増大する。第1外曲げ部B1は、第2外曲げ部B2と略上下対称形状を描くため、その曲率半径はrと同一又は略同一である。なお、第2外曲げ部B2の曲率半径rが増大すると内曲げ部Bの曲率半径が連動して小さくなり、第1外曲げ部B1と内曲げ部Bとの関係も同じである。そこで、予め固定点P1,P2間の距離を
図8に示す構成例よりも多少大きくし、これと共に又はこれと代えて固定点P1,P2のX方向位置を内曲げ部Bから離間する方向に多少変更することで、内曲げ部Bの曲率半径を所定値(例えば3mm)以上に維持することができる。但し、
図7は、単純化及び
図8の構成との外曲げ部B1,B2の対比を明示するため、内曲げ部Bへの影響を図示していない。
【0045】
図7に示すように、第2傾斜面35は、第2プレート24Bの端面24Bcからの突出方向で基端が表面24Baと略面一であり、先端はここから高さhだけ低い。本実施形態の電子機器10は、例えば13~14インチのディスプレイ16を有するタブレット型PC或いはノート型PCである。この仕様において、高さhは、例えば0.2~0.8mm程度が好ましく、本実施形態では0.6mmとしている。なお、曲率半径rは、20mm以上に設定されることが好ましく、第2傾斜面35の傾斜角度や高さhはこれを達成できる値に設定するとよい。第1傾斜面34は、第2傾斜面35と
図7中で略上下対称形状とすればよい。傾斜面34,35は、平面でなくてもよく、例えば曲率半径rと同等の曲率半径からなる曲面で形成されてもよい。
【0046】
以上より、本実施形態に係る電子機器10は、傾斜面34,35を持たない比較例に係る電子機器100と比べて、外曲げ部B1,B2の曲率半径rが大幅に増大する。これにより、電子機器10は、折曲動作時にディスプレイ16が層間剥離を生じることを抑制することができ、不具合の発生を抑制できる。
【0047】
図9Aは、突出片32A,32Bとは構成が異なる突出片38A,38Bを備えた電子機器10を180度姿勢とした状態を模式的に示す要部拡大平面図である。
図9Bは、
図9A中のIX-IX線に沿う模式的な側面断面図である。
【0048】
図9A及び
図9Bに示すように、突出片38A、38Bは、上記した突出片32A,32Bに代えて用いられている。第1突出片38Aは、実質的に第1突出片32Aを第1プレート24Aの端面24AcのY方向全長に伸長させた構造である。つまり第1突出片38Aは、上面に第1傾斜面34を有し、端面24Acに沿って延びた帯状のプレートである。第1突出片38Aは、端面24Acと第1サポートプレート27Aの外側端面27Abとの間に配置される。180度姿勢時、第1突出片38Aの先端面は第1サポートプレート27Aの外側端面27Abと当接又は近接する。つまり第1突出片38Aは、端面24Acと外側端面27Abとの間に配置されるため、第1サポートプレート27Aの凹部27Adは不要である。
【0049】
第2突出片38B及びその周辺部の構成は、
図9Bに示す第1突出片38A及びその周辺部の構成と左右対称である以外は同一構造でよい。つまり第2突出片38Bも第2プレート24Bの端面24BcのY方向全長に沿って延在し、その上面に第2傾斜面35が形成されている。
【0050】
図9Bに示すように、突出片38A,38Bを備える電子機器10においても、突出片32A,32Bを備える構成と同様、傾斜面34,35による外曲げ部B1,B2の曲率半径rの増大効果が得られる。
【0051】
但し、突出片38A,38Bは、Y方向に沿って延在している。このため、180度姿勢時、表面24Aa,24Baと表面27Ac,27Bcとの間には、傾斜面34,35による段差が形成される。この段差は、Y方向略全長に延びているため、ユーザがディスプレイ16をタッチ操作した際に違和感を受ける可能性がある。この点、上記した突出片32A,32Bは、Y方向で一部のみに傾斜面34,35による段差が形成されるため、タッチ操作時の違和感が一層小さいという利点がある。
【0052】
他方、突出片38A,38Bの傾斜面34,35は、ディスプレイ16の外曲げ部B1,B2をY方向で略全長に亘って支持する。このため、この構成は、突出片32A,32Bを用いた構成と比べて、外曲げ部B1,B2の形状形成が一層安定するという利点がある。
【0053】
図10は、変形例に係る取付構造で突出片32A,32Bを設置した電子機器10の模式的な側面断面図である。
図10は、第1突出片32A及びその周辺部の構成のみを図示しているが、第2突出片32B及びその周辺部の構成は
図10に示すものと左右対称である以外は同一又は同様でよい。
【0054】
図10に示すように、突出片32A,32Bは、プレート24A,24Bではなく、筐体12A,12Bに直接的に取り付けてもよい。本実施形態の筐体12A(12B)は、内面12Ab(12Bb)から突出した起立片40を有する。突出片32A(32B)には、例えば下面から下方へと突出した支持片41を形成しておく。そこで、突出片32A(32B)は、支持片41をねじ42等で起立片40に固定することで、筐体12A(12B)に固定してもよい。なお、
図9A及び
図9Bに示す突出片38A,38Bも
図10に示す構成と同様な取付構造で筐体12A,12Bに固定してもよい。
【0055】
但し、
図10に示す構成は、プレート24A,24Bと突出片32A,32Bとが別体である。このため、この構成は、表面24Aa,24Baと傾斜面34,35とのZ方向及びX方向での位置関係がずれる可能性がある。一方、
図4A等に示す構成は、突出片32A,32Bがプレート24A,24Bに一体的に固定されている。このため、この構成は、表面24Aa,24Baと傾斜面34,35とのZ方向及びX方方向の位置決めが容易且つ高精度であり、外曲げ部B1,B2の曲率半径rのコントロールがし易いという利点がある。
【0056】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0057】
上記では、突出片32A,32B,38A,38Bは、プレート24A,24Bに固定し又は筐体12A,12Bに固定する部品として説明した。しかしながら、突出片32A,32B,38A,38Bは、例えばプレート24A,24B又は金属フレーム25A,25Bに一体成形してもよい。
【0058】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10,100 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
16 ディスプレイ
24A 第1プレート
24Ac,24Bc 端面
24B 第2プレート
26 ヒンジ本体
27A 第1サポートプレート
27B 第2サポートプレート
32A,38A 第1突出片
32B,38B 第2突出片
34 第1傾斜面
35 第2傾斜面