(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】反応性有機ケイ素揺変剤、有機ケイ素パッケージ接着剤及びLED素子
(51)【国際特許分類】
C09J 11/06 20060101AFI20221104BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20221104BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221104BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20221104BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20221104BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20221104BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20221104BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221104BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20221104BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20221104BHJP
C09J 183/12 20060101ALI20221104BHJP
C09K 3/00 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
C09J11/06
C08K3/20
C08K3/36
C08K5/5419
C08L83/05
C08L83/07
C08L83/12
C09J11/04
C09J183/05
C09J183/07
C09J183/12
C09K3/00 103N
(21)【出願番号】P 2021133588
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】202011611398.4
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518302966
【氏名又は名称】ベイジン ケーエムティー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ドン, ズォジュ
(72)【発明者】
【氏名】マー, ジン
(72)【発明者】
【氏名】リゥ, フイジュェン
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-136307(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103937257(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103923464(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103897404(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111718486(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08L 83/00- 83/16
C08G 77/00- 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも二つのSiVi結合を有しかつフェニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)一分子中に少なくとも二つのSiH結合を有しかつフェニル基を含有する水素含有ポリシロキサンと、
(C)ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)フィラーと、
(E)下記式(1)で表される環状水素含有ポリシロキサン又は下記式(2)で表される分岐水素含有ポリシロキサンと下記式(3)で表される不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行うことにより調製されることを特徴とする反応性有機ケイ素揺変剤
を含むことを特徴とする有機ケイ素パッケージ接着剤。
【化1】
(式(1)において、R
1a、R
1b、R
1cはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
1a、R
1b、R
1cのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n1は0~10の整数であり、n2は2~10の整数である。)
【化2】
(式(2)において、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
2e、R
2f、R
2g、R
2hはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
2e、R
2f、R
2g、R
2hのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n3は0~10の整数であり、n4は2~10の整数であり、n5は0~10の整数であり、n6は0~10の整数であり、n7は0~10の整数であり、かつ、n6+n7≧1である。)
【化3】
(式(3)において、Aはビニル基、プロペニル基、アリル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの一種であり、Bはそれぞれ独立してC1~C10のアルキレン基のうちの一種であり、mは1~50の整数である。)
【請求項2】
前記環状水素含有ポリシロキサンは下記式(1-1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の
有機ケイ素パッケージ接着剤。
【化4】
(式(1-1)において、R
1cはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、少なくとも一つのR1cはフェニル基であり、n2は3~10の整数である。)
【請求項3】
前記分岐水素含有ポリシロキサンは下記式(2-1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の
有機ケイ素パッケージ接着剤。
【化5】
(式(2-1)において、R
2d、R
2e、R
2hはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
2d、R
2e、R
2hのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n4は2~10の整数であり、n6は1~10の整数である。)
【請求項4】
式(3)において、Aはアリル基であり、かつ、BはC1~C4のアルキレン基のうちの一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の
有機ケイ素パッケージ接着剤。
【請求項5】
前記フィラー(D)はシリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンのうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項
1~4のいずれか一項に記載の有機ケイ素パッケージ接着剤。
【請求項6】
前記フィラー(D)の粒径は1nm~500nmであることを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載の有機ケイ素パッケージ接着剤。
【請求項7】
前記フィラー(D)のBET比表面積は100m
2/g~800m
2/gであることを特徴とする請求項
1~
6のいずれか一項に記載の有機ケイ素パッケージ接着剤。
【請求項8】
50重量%~90重量%の前記オルガノポリシロキサン(A)と、
1重量%~40重量%の前記水素含有ポリシロキサン(B)と、
0.1ppm~500ppmの前記ヒドロシリル化反応触媒(C)と、
0.5重量%~20重量%の前記フィラー(D)と、
0.05重量%~10重量%の前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)と、
0重量%~10重量%の増粘剤(F)と、
0重量%~5重量%のヒドロシリル化反応抑制剤(G)と、
を含むことを特徴とする請求項
1~
7のいずれか一項に記載の有機ケイ素パッケージ接着剤。
【請求項9】
請求項
1~
8のいずれか一項に記載の有機ケイ素パッケージ接着剤を用いてパッケージすることにより製造されるLED素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2020年12月30日に提出された発明の名称が「反応性有機ケイ素揺変剤、有機ケイ素パッケージ接着剤及びLED素子」であり、出願番号が202011611398.4である特許出願の優先権を享受することを請求し、その全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本発明は有機ケイ素揺変剤に関し、特に反応性有機ケイ素揺変剤に関し、さらに前記反応性有機ケイ素揺変剤を含む有機ケイ素パッケージ接着剤、及び前記有機ケイ素パッケージ接着剤を用いてパッケージされたLED素子に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、超高精度テレビ、高次ディスプレイ等の市場需要の急速な増加に伴い、例えばmini LED、micro LED等の新規なLED表示技術が急速な発展を遂げた。このようなLED素子をパッケージする時、加工しやすくするために、一般的に揺変性を有する有機ケイ素パッケージ接着剤を使用して、有機ケイ素パッケージ接着剤が直接成形できることを保証すると共に、パッケージ硬化の前後に形状が基本的に変化しないように保持する必要がある。
【0004】
一般的に、有機ケイ素パッケージ接着剤にシリカ、カーボンブラック、有機ベントナイト等のフィラーを添加することにより、適当な揺変性を得ることができる。しかし、これらのフィラーは有機ケイ素パッケージ接着剤に均一に分散しにくく、長期保存した後に非常に沈降しやすく、それにより有機ケイ素パッケージ接着剤の揺変性能が安定せず、かつパッケージ接着剤の透明性を損なう。
【0005】
特許文献1、特許文献2などには、水素含有ポリシロキサンとアリルグリシジルエーテル、ブチルアクリレート、アリルポリオキシエチレンエーテルなどのエチレン結合を有する改質剤を用いてヒドロシリル化反応を行って有機ケイ素揺変剤を調製することが開示されている。これらの有機ケイ素揺変剤はフィラーと配合した後に有機ケイ素パッケージ接着剤の揺変安定性を改善することができるが、有機ケイ素パッケージ接着剤のマトリックス(特にフェニル基を含有するマトリックス)との相溶性が低い傾向があり、パッケージ製品が濁りやすく、理想的な高い透明度を得ることが困難であり、また、その添加は一般的に有機ケイ素パッケージ接着剤の力学的性能及び接着性能を改善することに不利である。
【0006】
そのため、有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができる有機ケイ素揺変剤を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第103937257号明細書
【文献】中国特許出願公開第111718486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができる反応性有機ケイ素揺変剤を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、前記反応性有機ケイ素揺変剤を含む有機ケイ素パッケージ接着剤を提供することである。
【0010】
本発明の第三の目的は、前記有機ケイ素パッケージ接着剤を用いてパッケージすることにより製造されるLED素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一方では、本発明は、下記式(1)で表される環状水素含有ポリシロキサン又は下記式(2)で表される分岐水素含有ポリシロキサンと下記式(3)で表される不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行うことにより調製される反応性有機ケイ素揺変剤を提供する。
【化1】
式(1)において、R
1a、R
1b、R
1cはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
1a、R
1b、R
1cのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n1は0~10の整数であり、n2は2~10の整数である。
【化2】
式(2)において、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
2e、R
2f、R
2g、R
2hはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
2e、R
2f、R
2g、R
2hのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n3は0~10の整数であり、n4は2~10の整数であり、n5は0~10の整数であり、n6は0~10の整数であり、n7は0~10の整数であり、かつ、n6+n7≧1である。
【化3】
式(3)において、Aはビニル基、プロペニル基、アリル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの一種であり、Bはそれぞれ独立してC1~C10のアルキレン基のうちの一種であり、mは1~50の整数である。
【0012】
本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤において、好ましくは、前記環状水素含有ポリシロキサンは下記式(1-1)で表される構造を有する。
【化4】
式(1-1)において、R
1cはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、少なくとも一つのR
1cはフェニル基であり、n2は3~10の整数である。
【0013】
本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤において、好ましくは、前記分岐水素含有ポリシロキサンは下記式(2-1)で表される構造を有する。
【化5】
式(2-1)において、R
2d、R
2e、R
2hはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
2d、R
2e、R
2hのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n4は2~10の整数であり、n6は1~10の整数である。
【0014】
本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤において、好ましくは、式(3)において、Aはアリル基であり、かつ、BはC1~C4のアルキレン基のうちの一種である。
【0015】
他方では、本発明は、
(A)一分子中に少なくとも二つのSiVi結合を有しかつフェニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)一分子中に少なくとも二つのSiH結合を有しかつフェニル基を含有する水素含有ポリシロキサンと、
(C)ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)フィラーと、
(E)本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤と、
を含む有機ケイ素パッケージ接着剤をさらに提供する。
【0016】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、好ましくは、前記フィラー(D)はシリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンのうちの一種又は複数種である。
【0017】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、好ましくは、前記フィラー(D)の粒径は1nm~500nmである。
【0018】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、好ましくは、前記フィラー(D)のBET比表面積は100m2/g~800m2/gである。
【0019】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、好ましくは、
50重量%~90重量%の前記オルガノポリシロキサン(A)と、
1重量%~40重量%の前記水素含有ポリシロキサン(B)と、
0.1ppm~500ppmの前記ヒドロシリル化反応触媒(C)と、
0.5重量%~20重量%の前記フィラー(D)と、
0.05重量%~10重量%の前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)と、
0重量%~10重量%の増粘剤(F)と、
0重量%~5重量%のヒドロシリル化反応抑制剤(G)と、
を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤を用いてパッケージすることにより製造されるLED素子をさらに提供する。
【0021】
本発明は、意外にも、フェニル基含有の環状水素含有ポリシロキサン又は分岐水素含有ポリシロキサンと不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行って反応性有機ケイ素揺変剤を調製すると、それは有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができ、これによりパッケージ性能に優れたLED素子を製造することができることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な実施の形態を参照しながら本発明をさらに説明するが、本発明の保護範囲はこれに限定されない。
【0023】
<用語の解釈>
本発明でいう「反応性有機ケイ素揺変剤」における「反応性」とは、ヒドロシリル化反応に関与し得る活性を意味する。特に説明しない限り、本発明でいう「反応性」はいずれも前記反応性有機ケイ素揺変剤の分子構造中に存在するSiH結合に由来する。本発明において、環状水素含有ポリシロキサン又は分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証することにより、調製された反応性有機ケイ素揺変剤の分子構造において一部のSiH結合を保留する。
【0024】
本発明において有機ケイ素パッケージ接着剤を説明する時に言及された「硬化」又は「硬化反応」は、特に説明しない限り、ヒドロシリル化反応と実質的に同じ意味を有する。
【0025】
本発明において有機ケイ素パッケージ接着剤を説明する時に言及された各性能は、特に説明しない限り、いずれも前記有機ケイ素パッケージ接着剤を硬化させた後にその硬化物を測定して取得される。当然のことながら、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤の調製過程又は硬化前の有益な性能をよりよく説明するために、硬化前に前記有機ケイ素パッケージ接着剤の性能を測定する場合もある。
【0026】
本発明において前記有機ケイ素パッケージ接着剤の各成分の含有量を説明する時に言及された重量百分率、すなわち「重量%」は、特に説明しない限り、いずれも本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤の各成分の含有量の合計を100重量%として計算する。
【0027】
本発明でいう「ppm」とは重量百万分率含有量(又は濃度)を意味し、特に説明しない限り、それは本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤の各成分の含有量の合計を100重量%として計算する。本発明において、「ppm」を採用してヒドロシリル化反応触媒の含有量を示す場合、特に説明しない限り、いずれも前記ヒドロシリル化反応触媒における活性金属原子の質量が有機ケイ素パッケージ接着剤の各成分の質量の合計を占める割合で計算する。例えば、白金系触媒を使用する場合、白金原子の質量が有機ケイ素パッケージ接着剤の各成分の質量の合計を占める割合で白金系触媒の含有量を算出する。
【0028】
本発明でいう「BET比表面積」は本分野で知られているBET法により測定された単位質量の粒子が占める総比表面積を意味し、単位はm2/gである。
【0029】
本発明でいう「Me」はメチル基を表し、「Vi」はビニル基を表し、「Ph」はフェニル基を表し、「SiH結合」は水素原子がケイ素原子に直接結合して形成された共有結合を表し、「SiVi結合」はビニル基がケイ素原子に直接結合して形成された共有結合を表す。
【0030】
<反応性有機ケイ素揺変剤>
本発明は、下記式(1)で表される環状水素含有ポリシロキサン又は下記式(2)で表される分岐水素含有ポリシロキサンと下記式(3)で表される不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行うことにより調製される反応性有機ケイ素揺変剤を提供する。
【化6】
式(1)において、R
1はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、かつ、少なくとも一つのR
1はフェニル基であり、n1は0~10の整数を表し、n2は2~10の整数を表す。
【化7】
式(2)において、R
2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、かつ、少なくとも一つのR
2はフェニル基であり、n3は0~10の整数を表し、n4は2~10の整数を表し、n5は0~10の整数を表し、n6は0~10の整数を表し、n7は0~10の整数を表し、かつ、n6+n7≧1である。
【化8】
式(3)において、Aはビニル基、プロペニル基、アリル基又は(メタ)アクリロイル基を表し、Bはそれぞれ独立してC1~C10のアルキレン基を表し、mは1~50の整数を表す。
【0031】
本発明は、フェニル基含有の環状水素含有ポリシロキサン又は分岐水素含有ポリシロキサンと不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行って反応性有機ケイ素揺変剤を調製すると、それは有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができることを発見した。
【0032】
環状水素含有ポリシロキサン
本発明において、前記環状水素含有ポリシロキサンは環状構造、フェニル基及び十分な数のヒドロシリル化反応に関与可能なSiH結合を有することにより、前記不飽和ポリエーテルとのヒドロシリル化反応によって、それにより調製される本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤にその分子構造において環状構造、フェニル基及び前記ヒドロシリル化反応に関与せずに残ったSiH結合を導入する。前記反応性有機ケイ素揺変剤を含む本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に関して、フェニル基の導入により、前記反応性有機ケイ素揺変剤と前記有機ケイ素パッケージ接着剤のマトリックスとの良好な相溶性、及び前記有機ケイ素パッケージ接着剤中のフィラーの屈折率に相応する高屈折率を付与することができ、それにより本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に優れた透明度を提供する。SiH結合の導入により、本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤は前記有機ケイ素パッケージ接着剤の硬化反応に関与することができ、非反応性有機ケイ素揺変剤に比べて、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤により優れた力学的性能及び接着性能を提供することができる。環状構造の導入により、線形構造の有機ケイ素揺変剤に比べて、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤により優れた揺変性能を提供することができ、その力学的性能及び接着性能をさらに改善する。
【0033】
以上の考慮に基づいて、本発明において、前記環状水素含有ポリシロキサンは下記式(1)で表される構造を有する。
【化9】
式(1)において、R
1a、R
1b、R
1cはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
1a、R
1b、R
1cのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n1は0~10の整数であり、好ましくは0~6の整数であり、n2は2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。
【0034】
好ましくは、前記環状水素含有ポリシロキサンは下記式(1-1)で表される構造を有する。
【化10】
式(1-1)において、R
1cはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、少なくとも一つのR
1cはフェニル基であり、n2は3~10の整数であり、好ましくは3~6の整数である。
【0035】
より好ましくは、前記環状水素含有ポリシロキサンは下記式(1-1a)、(1-1b)又は(1-1c)で表される構造を有する。
【化11】
【0036】
分岐水素含有ポリシロキサン
本発明において、前記分岐水素含有ポリシロキサンは分岐構造、フェニル基及び十分な数のヒドロシリル化反応に関与可能なSiH結合を有することにより、前記不飽和ポリエーテルとのヒドロシリル化反応によって、それにより調製される本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤にその分子構造において分岐構造、フェニル基及び前記ヒドロシリル化反応に関与せずに残ったSiH結合を導入する。前記反応性有機ケイ素揺変剤を含む本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に関して、フェニル基の導入により、前記反応性有機ケイ素揺変剤と前記有機ケイ素パッケージ接着剤のマトリックスとの良好な相溶性、及び前記有機ケイ素パッケージ接着剤中のフィラーの屈折率に相応する高屈折率を付与することができ、それにより本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に優れた透明度を提供する。SiH結合の導入により、本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤は前記有機ケイ素パッケージ接着剤の硬化反応に関与することができ、非反応性有機ケイ素揺変剤に比べて、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤により優れた力学的性能及び接着性能を提供することができる。分岐構造の導入により、線形構造の有機ケイ素揺変剤に比べて、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤により優れた揺変性能を提供することができ、その力学的性能及び接着性能をさらに改善する。
【0037】
以上の考慮に基づいて、本発明において、前記分岐水素含有ポリシロキサンは下記式(2)で表される構造を有する。
【化12】
式(2)において、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
2e、R
2f、R
2g、R
2hはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
2e、R
2f、R
2g、R
2hのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n3は0~10の整数であり、好ましくは0~6の整数であり、n4は2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数であり、n5は0~10の整数であり、好ましくは0~6の整数であり、n6は0~10の整数であり、好ましくは0~6の整数であり、n7は0~10の整数であり、好ましくは0~6の整数であり、かつ、n6+n7≧1である。
【0038】
好ましくは、前記分岐水素含有ポリシロキサンは下記式(2-1)で表される構造を有する。
【化13】
式(2-1)において、R
2d、R
2e、R
2hはそれぞれ独立して水素原子、メチル基及びフェニル基のうちの一種であり、かつ、R
2d、R
2e、R
2hのうちの少なくとも一つはフェニル基であり、n4は2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数であり、n6は1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数である。
【0039】
より好ましくは、前記分岐水素含有ポリシロキサンは下記式(2-1a)、(2-1b)又は(2-1c)で表される構造を有する。
【化14】
式(2-1a)において、n4は2~10の整数を表し、好ましくは2~6の整数であり、n6は1~10の整数を表し、好ましくは1~6の整数である。
【化15】
式(2-1b)において、n4は2~10の整数を表し、好ましくは2~6の整数であり、n6は1~10の整数を表し、好ましくは1~6の整数である。
【化16】
式(2-1c)において、n4は2~10の整数を表し、好ましくは2~6の整数であり、n6は1~10の整数を表し、好ましくは1~6の整数である。
【0040】
不飽和ポリエーテル
本発明において、前記不飽和ポリエーテルはポリエーテル構造及びエチレン結合を有することにより、前記環状水素含有ポリシロキサン又は分岐水素含有ポリシロキサンとのヒドロシリル化反応によって、それにより調製される本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤にその分子構造においてポリエーテル構造を導入する。前記反応性有機ケイ素揺変剤を含む本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に関して、ポリエーテル構造の導入により、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に優れた揺変性能を提供することができる。
【0041】
本発明において、前記不飽和ポリエーテルは下記式(3)で表される構造を有する。
【化17】
式(3)において、Aはビニル基、プロペニル基、アリル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの一種であり、好ましくはビニル基又はアリル基であり、より好ましくはアリル基であり、Bはそれぞれ独立してC1~C10のアルキレン基のうちの一種であり、好ましくはC1~C4のアルキレン基のうちの一種であり、より好ましくはエチレン基又はプロピレン基のうちの一種であり、mは1~50の整数を表し、好ましくは1~30の整数であり、より好ましくは1~20の整数である。
【0042】
好ましくは、前記不飽和ポリエーテルは下記式(3a)、(3b)、(3c)、(3d)又は(3e)で表される構造を有する。
【化18】
式(3a)において、m1は1~50の整数であり、好ましくは1~30の整数であり、より好ましくは1~20の整数である。
【化19】
式(3b)において、m2は1~50の整数であり、好ましくは1~30の整数であり、より好ましくは1~20の整数である。
【化20】
式(3c)において、m3は1~25の整数であり、好ましくは1~15の整数であり、より好ましくは1~10の整数であり、m4は1~25の整数であり、好ましくは1~15の整数であり、より好ましくは1~10の整数である。
【化21】
式(3d)において、m5は1~25の整数であり、好ましくは1~15の整数であり、より好ましくは1~10の整数であり、m6は1~25の整数であり、好ましくは1~15の整数であり、より好ましくは1~10の整数である。
【化22】
式(3e)において、m7は1~15の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、m8は1~15の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、m9は1~15の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数である。
【0043】
<反応性有機ケイ素揺変剤の調製方法>
本発明は、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンと前記不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行うことを含む前記反応性有機ケイ素揺変剤の調製方法をさらに提供する。
【0044】
反応を円滑に行うことを促進するために、本発明において、前記ヒドロシリル化反応は好ましくはヒドロシリル化反応触媒の存在下で行われる。本発明において、ヒドロシリル化反応触媒の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を採用することができる。前記ヒドロシリル化反応触媒の実例としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールとの反応生成物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシラン錯体、白金-ケトン錯体、白金-ホスフィン錯体といった白金含有化合物、ロジウム-ホスフィン錯体、ロジウム-硫黄化合物錯体といったロジウム含有化合物、パラジウム-ホスフィン錯体といったパラジウム含有化合物が含まれるが、これらに限定されない。触媒活性を向上させるために、前記ヒドロシリル化反応触媒を担体に担持させることができる。前記担体の実例としては、シリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラックなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明において、ヒドロシリル化反応触媒の使用量も特に制限されず、前記ヒドロシリル化反応を円滑に行うように促進することができればよい。
【0045】
本発明において、前記ヒドロシリル化反応は有機溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒の非存在下で行ってもよい。しかし、反応原料の十分な溶解及び均一な反応を促進するために、本発明において、前記ヒドロシリル化反応は好ましくは有機溶媒の存在下で行われる。本発明において、有機溶剤の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を採用することができる。前記有機溶媒の実例としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、前記有機溶剤はメタノール、エタノール、トルエン、キシレン又はシクロヘキサンである。
【0046】
本発明において、前記ヒドロシリル化反応の反応温度及び反応時間は特に限定されず、本分野の公知の反応条件を採用することができる。
【0047】
<有機ケイ素パッケージ接着剤>
本発明は、
(A)一分子中に少なくとも二つのSiVi結合を有しかつフェニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)一分子中に少なくとも二つのSiH結合を有しかつフェニル基を含有する水素含有ポリシロキサンと、
(C)ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)フィラーと、
(E)本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤と、
を含む有機ケイ素パッケージ接着剤をさらに提供する。
【0048】
本発明において、前記反応性有機ケイ素揺変剤は、有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができ、これによりパッケージ性能に優れたLED素子を製造することができる。
【0049】
好ましくは、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤は、
50重量%~90重量%の前記オルガノポリシロキサン(A)と、
1重量%~40重量%の前記水素含有ポリシロキサン(B)と、
0.1ppm~500ppmの前記ヒドロシリル化反応触媒(C)と、
0.5重量%~20重量%の前記フィラー(D)と、
0.05重量%~10重量%の前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)と、
0重量%~10重量%の増粘剤(F)と、
0重量%~5重量%のヒドロシリル化反応抑制剤(G)と、
を含む。
【0050】
より好ましくは、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤は、
60重量%~80重量%の前記オルガノポリシロキサン(A)と、
10重量%~35重量%の前記水素含有ポリシロキサン(B)と、
0.5ppm~200ppmの前記ヒドロシリル化反応触媒(C)と、
1重量%~10重量%の前記フィラー(D)と、
0.1重量%~5重量%の前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)と、
0.1重量%~5重量%の増粘剤(F)と、
0.001重量%~1重量%のヒドロシリル化反応抑制剤(G)と、
を含む。
【0051】
オルガノポリシロキサン(A)
オルガノポリシロキサンは、有機ケイ素パッケージ接着剤において一般的に樹脂マトリックスとして使用され、その分子構造中のSiVi結合と、架橋剤としての水素含有ポリシロキサン分子構造中のSiH結合とがヒドロシリル化反応が発生することにより、有機ケイ素パッケージ接着剤はLEDをパッケージする過程において硬化する。
【0052】
このために、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤は、一分子中に少なくとも二つのSiVi結合を有しかつフェニル基を含有するオルガノポリシロキサン(A)を含む。
【0053】
本発明において、前記オルガノポリシロキサン(A)中のフェニル基の含有量は好ましくは1重量%~50重量%であり、より好ましくは5重量%~40重量%である。
【0054】
本発明において、前記オルガノポリシロキサン(A)中のSiVi結合の含有量は好ましくは0.01~10mmol/gであり、より好ましくは0.5mmol/g~5mmol/gである。
【0055】
本発明において、前記オルガノポリシロキサン(A)の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を使用することができる。前記オルガノポリシロキサン(A)の実例としては、直鎖型オルガノポリシロキサン、分岐型オルガノポリシロキサン又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
好ましくは、前記オルガノポリシロキサン(A)は下記式(4)で表される構造を有する。
【化23】
式(4)において、R
i1、R
i2、R
i3、R
i4、R
i5、R
i6、R
i7、R
i8はそれぞれ独立してメチル基又はフェニル基であり、a1は0≦a1<0.3を満たす数であり、好ましくは0≦a1<0.1を満たす数であり、b1は0.1<b1<0.95を満たす数であり、好ましくは0.3<b1<0.9を満たす数であり、c1は0≦c1<1.2を満たす数であり、好ましくは0.3<c1<1.0を満たす数であり、d1は0.1<d1<1.5を満たす数であり、好ましくは0.4<d1<1.2を満たす数であり、e1は0≦e1<0.3を満たす数であり、好ましくは0≦e1<0.1を満たす数である。
【0057】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、前記オルガノポリシロキサン(A)の含有量は好ましくは50重量%~90重量%であり、より好ましくは60重量%~90重量%である。
【0058】
水素含有ポリシロキサン(B)
水素含有ポリシロキサンは有機ケイ素パッケージ接着剤において一般的に架橋剤として使用され、その分子構造におけるSiH結合と樹脂マトリックスとしてのオルガノポリシロキサンの分子構造におけるSiVi結合とがヒドロシリル化反応が発生することにより、有機ケイ素パッケージ接着剤はLEDをパッケージする過程において硬化する。
【0059】
このために、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤は、一分子中に、ケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも二つ有する水素含有ポリシロキサン(B)をさらに含む。
【0060】
本発明において、前記水素含有ポリシロキサン(B)中のフェニル基の含有量は好ましくは5重量%~60重量%であり、より好ましくは15重量%~55重量%である。
【0061】
本発明において、前記水素含有ポリシロキサン(B)中のSiH結合の含有量は好ましくは0.01~10mmol/gであり、より好ましくは3mmol/g~8mmol/gである。
【0062】
本発明において、前記水素含有ポリシロキサン(B)の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を使用することができる。前記水素含有ポリシロキサン(B)の実例としては、直鎖型水素含有ポリシロキサン、分岐型水素含有ポリシロキサン、又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
好ましくは、前記水素含有ポリシロキサン(B)は下記式(5)で表される構造を有する。
【化24】
式(5)において、R
j1、R
j2、R
j3、R
j4、R
j5、R
j6、R
j7、R
j8はそれぞれ独立してメチル基又はフェニル基を表し、a2は0≦a2<0.3を満たす数であり、好ましくは0≦a2<0.1を満たす数であり、b2は0.1<b2<1を満たす数であり、好ましくは0.3<b2<1を満たす数であり、c2は0≦c2<1.2を満たす数であり、好ましくは0.3<c2<1.0を満たす数であり、d2は0≦d2<1.5を満たす数であり、好ましくは0≦d2<1を満たす数であり、e2は0≦e2<0.3を満たす数であり、好ましくは0≦e2<0.1を満たす数である。
【0064】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、前記水素含有ポリシロキサン(B)の含有量は好ましくは1重量%~40重量%であり、より好ましくは10重量%~35重量%である。
【0065】
ヒドロシリル化反応触媒(C)
ヒドロシリル化反応触媒は、有機ケイ素パッケージ接着剤において、一般的に、樹脂マトリックスであるオルガノポリシロキサン分子構造中のSiVi結合と、架橋剤である水素含有ポリシロキサン分子構造中のSiHとのヒドロシリル化反応が円滑に行われるように触媒するために用いられる。
【0066】
このために、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤はさらにヒドロシリル化反応触媒(C)を含む。
【0067】
本発明において、ヒドロシリル化反応触媒(C)の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を採用することができる。前記ヒドロシリル化反応触媒(C)の実例としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールとの反応生成物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシラン錯体、白金-ケトン錯体、白金-ホスフィン錯体といった白金含有化合物、ロジウム-ホスフィン錯体、ロジウム-硫黄化合物錯体といったロジウム含有化合物、パラジウム-ホスフィン錯体といったパラジウム含有化合物が含まれるが、これらに限定されない。触媒活性を向上させるために、前記ヒドロシリル化反応触媒(C)を担体に担持させることができる。前記担体の実例としては、シリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラックなどが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ヒドロシリル化反応触媒(C)は白金とビニルシロキサンとの錯体であり、より好ましくは白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体である。
【0068】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、前記ヒドロシリル化反応触媒(C)の含有量は特に限定されないが、有機ケイ素パッケージ接着剤の硬化を促進することに有利である観点から、前記ヒドロシリル化反応触媒(C)の含有量は好ましくは0.1ppm~500ppmであり、より好ましくは0.5ppm~200ppmである。
【0069】
フィラー(D)
フィラーは有機ケイ素パッケージ接着剤において一般的に基礎的な揺変性能及び適当な力学的性能を提供するために用いられる。本発明において、フィラーは前記反応性有機ケイ素揺変剤と配合して使用され、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤に優れた揺変性能を付与することができる。
【0070】
このために、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤はさらにフィラー(D)を含む。
【0071】
本発明において、前記フィラー(D)の種類は特に限定されないが、原料が入手しやすいという観点から、前記フィラー(D)は好ましくはシリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンのうちの一種又は複数種であり、より好ましくは気相法シリカである。
【0072】
本発明において、前記フィラー(D)の粒径は特に限定されないが、有機ケイ素パッケージ接着剤の光学性能を改善することに有利であるという観点から、前記フィラー(D)の粒径は好ましくは1nm~500nmであり、より好ましくは1~200nmである。
【0073】
本発明において、前記フィラー(D)のBET比表面積は特に限定されないが、有機ケイ素パッケージ接着剤の揺変性能を改善することに有利であるという観点から、前記フィラー(D)のBET比表面積は好ましくは100m2/g~800m2/gであり、より好ましくは150m2/g~600m2/gである。
【0074】
本発明において、前記フィラー(D)の前記有機ケイ素パッケージ接着剤における含有量は特に限定されないが、有機ケイ素パッケージ接着剤の揺変性能を改善することに有利であるという観点から、前記フィラー(D)の前記有機ケイ素パッケージ接着剤における含有量は好ましくは0.5重量%~20重量%であり、より好ましくは1重量%~10重量%である。
【0075】
反応性有機ケイ素揺変剤(E)
本発明において、前記有機ケイ素パッケージ接着剤に本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤を添加すると、有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができる。
【0076】
このために、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤はさらに前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)を含む。
【0077】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)の含有量は好ましくは0.05重量%~10重量%であり、より好ましくは0.1重量%~5重量%である。
【0078】
増粘剤(F)
増粘剤は有機ケイ素パッケージ接着剤において一般的に接着性能を改善するために用いられる。
【0079】
このために、任意選択的に、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤はさらに増粘剤(F)を含むことができる。
【0080】
前記増粘剤(F)の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を選択することができる。前記増粘剤(F)の実例としては、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤が含まれるが、これらに限定されない。前記シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシランのうちの一種又は複数種であってもよい。
【0081】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、前記増粘剤(F)の含有量は特に限定されないが、有機ケイ素パッケージ接着剤の接着性能を改善することに有利であるという観点から、前記増粘剤(F)の含有量は好ましくは0重量%~10重量%であり、より好ましくは0.1重量%~5重量%である。
【0082】
ヒドロシリル化反応抑制剤(G)
ヒドロシリル化反応抑制剤は有機ケイ素パッケージ接着剤において一般的にヒドロシリル化反応の速度を調整するために用いられ、それにより有機ケイ素パッケージ接着剤の硬化速度が制御される。
【0083】
このために、任意選択的に、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤は、ヒドロシリル化反応抑制剤(G)をさらに含むことができる。
【0084】
本発明において、前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)の種類は特に限定されず、本分野の公知の種類を使用することができる。前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)の実例としては、トリフェニルホスフィンといったリン含有化合物、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等といった窒素含有化合物、マレイン酸ジメチル等といったマレイン酸誘導体、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチルブチノール等といったアセチレンアルコール、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等といったビニルシランが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)は、1-エチニルシクロヘキサノール又は1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンである。
【0085】
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤において、前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)の含有量は特に限定されないが、有機ケイ素パッケージ接着剤の硬化速度を調整することに有利であるという観点から、前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)の含有量は好ましくは0重量%~5重量%であり、より好ましくは0.001重量%~1重量%である。
【0086】
有機ケイ素パッケージ接着剤の調製
本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤の調製プロセスは特に限定されず、本分野の公知の調製プロセスを採用することができる。例えば、一成分形式で調製してもよく、すなわち前記オルガノポリシロキサン(A)、前記水素含有ポリシロキサン(B)、前記ヒドロシリル化反応触媒(C)、前記フィラー(D)、前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)、任意選択的な前記増粘剤(F)、任意選択的な前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)及び任意選択的な他の成分を混合装置で直接混合することにより、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤を一成分形式に調製する。二成分形式で調製してもよく、すなわち前記オルガノポリシロキサン(A)、前記水素含有ポリシロキサン(B)、前記ヒドロシリル化反応触媒(C)の三者を同時に同一成分になるように分割しないという条件を満たす条件下で、前記オルガノポリシロキサン(A)、前記水素含有ポリシロキサン(B)、前記ヒドロシリル化反応触媒(C)、前記フィラー(D)、前記反応性有機ケイ素揺変剤(E)、任意選択的な前記増粘剤(F)、任意選択的な前記ヒドロシリル化反応抑制剤(G)及び任意選択的な他の成分を二つの成分に分割してそれぞれ混合装置で混合することにより、本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤を二成分形式に調製する。LEDをパッケージする時、さらにこの二つの成分を合わせて硬化を実現する。
【0087】
前記混合装置の種類は特に限定されず、本分野の公知の装置を採用することができる。前記混合装置の実例としては、スパチュラ、ドラムロール、メカニカルスターラー、三本ロール、Σパドルミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、スクリュー、ディゾルバー、ディッシュミキサー、スクイズミキサー、真空ミキサーなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明において、前記有機ケイ素パッケージ接着剤の硬化温度及び硬化時間は特に限定されず、本分野の公知の硬化温度及び硬化時間を採用することができる。
【0089】
<LED素子>
本発明は、前記有機ケイ素パッケージ接着剤を用いてパッケージすることにより製造されるLED素子をさらに提供する。本発明に係る有機ケイ素パッケージ接着剤は安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を有するため、これによりパッケージ性能に優れたLED素子を製造することができ、特にパッケージ性能に優れたmini LED素子又はmicro LED素子を製造することができる。
【0090】
本発明において、前記LED素子はmini LED素子又はmicro LED素子であることが好ましい。本発明でいう「mini LED素子」とはLEDチップサイズが50~150ミクロンのLED素子を意味し、「micro LED素子」とはLEDチップサイズが50ミクロンより小さいLED素子を意味する。
【0091】
本発明において、前記有機ケイ素パッケージ接着剤を利用してLED素子をパッケージするプロセスは特に限定されず、本分野の公知のパッケージプロセスを採用することができ、例えば、ディスペンス、スクリーン印刷、プレス成形又は塗布を採用してLED素子のパッケージを行うことができる。
【0092】
本発明において、前記有機ケイ素パッケージ接着剤のLED素子のパッケージにおける適用形態は特に限定されず、本分野の公知の適用形態を採用することができ、例えば、LED素子の保護接着剤、ダム接着剤又はレンズ接着剤として使用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、本発明の保護範囲はこれらの具体的な実施例に制限されない。
【0094】
<測定方法>
チクソトロピー指数の測定方法:MCR型レオメーターを用いてそれぞれ有機ケイ素パッケージ接着剤の25℃の剪断速度1/sでの剪断粘度(SV1と記す)と25℃の剪断速度10/sでの剪断粘度(SV2と記す)を測定する。SV1とSV2との比はチクソトロピー指数である。ここで、有機ケイ素パッケージ接着剤の調製が完了する時に測定されたチクソトロピー指数をTI0と記し、有機ケイ素パッケージ接着剤の調製が完了してから3ヶ月保存した後に測定されたチクソトロピー指数をチクソトロピー指数TI3と記す。両者の数値の大きさを比較することにより、チクソトロピー指数の安定性を特定する。
【0095】
透明度測定方法:有機ケイ素パッケージ接着剤を150℃で厚さが1mmのサンプルに硬化させ、UV-3100PC型紫外可視分光光度計により該サンプルの450nmでの光透過率を測定する。光透過率により有機ケイ素パッケージ接着剤の透明度を特定する。
【0096】
硬度測定方法:有機ケイ素パッケージ接着剤を150℃で1時間硬化させ、標準GBT2411-2008を参照し、EHS5D型硬度計により有機ケイ素パッケージ接着剤硬化物の硬度を測定する。このようにして測定された硬度はショアD硬度(Shore D)である。
【0097】
引張強度及び伸び率の測定方法:有機ケイ素パッケージ接着剤を150℃で1時間硬化させ、標準GBT1701-2001を参照し、有機ケイ素パッケージ接着剤硬化物を標準寸法に切断し、Instron 2367型万能材料試験機により引張強度及び伸び率を測定する。引張強度、伸び率により有機ケイ素パッケージ接着剤の力学的性能を特定する。
【0098】
剪断強度の測定方法:標準GBT13936-92を参照し、有機ケイ素パッケージ接着剤を採用してアルミニウムシートの単一の剪断サンプルを作製し、Instron 2367型万能材料試験機により剪断強度を測定する。剪断強度により有機ケイ素パッケージ接着剤の接着性能を特定する。
【0099】
<合成例1 反応性有機ケイ素揺変剤E1の調製>
1000mlの三つ口フラスコに、順に300mlのトルエン、244g(0.5mol)の下記式(1-1-1)で表される環状水素含有ポリシロキサン、278g(1mol)の下記式(1-1-2)で表される不飽和ポリエーテル(ここで、前記環状水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が2:1である)及び2gの炭素担持白金触媒(白金原子で計算すると、20ppmである)を添加し、均一に混合した後に80℃で6時間撹拌して反応させ、濾過して炭素担持白金触媒を除去し、回転蒸発してトルエンを除去すると、本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤E1が得られ、それは無色透明液体であり、25℃で測定された動粘度は1570cpsである。
【化25】
【0100】
<合成例2 反応性有機ケイ素揺変剤E2の調製>
1000mlの三つ口フラスコに、順に300mlのトルエン、297g(0.9mol)の下記式(2-1-1)で表される分岐水素含有ポリシロキサン、250.2g(1.5mol)の下記式(2-1-2)で表される不飽和ポリエーテル(ここで、前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が2:1である)及び1.79gの炭素担持白金触媒(白金原子で計算すると、20ppmである)を添加し、均一に混合した後に80℃で6時間撹拌して反応させ、濾過して炭素担持白金触媒を除去し、回転蒸発してトルエンを除去すると、本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤E2が得られ、それは無色透明液体であり、25℃で測定された動粘度は486cpsである。
【化26】
【0101】
<合成例3 反応性有機ケイ素揺変剤E3の調製>
1000mlの三つ口フラスコに、順に300mlのトルエン、210.4g(0.4mol)の下記式(3-1-1)で表される分岐水素含有ポリシロキサン、222.4g(0.8mol)の下記式(3-1-2)で表される不飽和ポリエーテル(ここで、前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が2:1である)及び1.73gの炭素担持白金触媒(白金原子で計算すると、20ppmである)を添加し、均一に混合した後に80℃で6時間撹拌して反応させ、濾過して炭素担持白金触媒を除去し、回転蒸発してトルエンを除去すると、本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤E3が得られ、それは無色透明液体であり、25℃で測定された動粘度は1087cpsである。
【化27】
【0102】
<比較合成例1 反応性有機ケイ素揺変剤CE1の調製>
1000mlの三つ口フラスコに、順に300mlのトルエン、201g(0.5mol)の下記式(4-1-1)で表される分岐水素含有ポリシロキサン、278g(1mol)の下記式(4-1-2)で表される不飽和ポリエーテル(ここで、前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が2:1である)及び1.92gの炭素担持白金触媒(白金原子で計算すると、20ppmである)を添加し、均一に混合した後に80℃で6時間撹拌して反応させ、濾過して炭素担持白金触媒を除去し、回転蒸発してトルエンを除去すると、本発明に係る反応性有機ケイ素揺変剤CE1が得られ、それは無色透明液体であり、25℃で測定された動粘度は325cpsである。
【化28】
【0103】
<比較合成例2 非反応性有機ケイ素揺変剤CE2の調製>
1000mlの三つ口フラスコに、順に300mlのトルエン、157.8g(0.3mol)の下記式(5-1-1)で表される分岐水素含有ポリシロキサン、333.6g(1.2mol)の下記式(5-1-2)で表される不飽和ポリエーテル(ここで、前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1:1である)及び1.97gの炭素担持白金触媒(白金原子で計算すると、20ppmである)を添加し、均一に混合した後に80℃で6時間撹拌して反応させ、濾過して炭素担持白金触媒を除去し、回転蒸発してトルエンを除去すると、非反応性有機ケイ素揺変剤CE2が得られ、それは無色透明液体であり、25℃で測定された動粘度は4860cpsである。
【化29】
【0104】
<実施例1~3及び比較例1~2>
本発明の実施例1~3及び比較例1~2に使用される原料は以下のとおりである。
オルガノポリシロキサン(A):下記式(4-1)で表される構造を有するオルガノポリシロキサンであって、そのフェニル基の含有量が20.9重量%であり、ビニル基の含有量が1.92mmol/gである。
【化30】
水素含有ポリシロキサン(B):下記式(5-1)で表される構造を有する水素含有ポリシロキサン。
【化31】
ヒドロシリル化反応触媒(C):白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(白金含有量が0.5wt%である)。
フィラー(D):気相法シリカ、粒径が14nm、BET比表面積が230m
2/gである。
反応性有機ケイ素揺変剤(E1):合成例1で調製された。
反応性有機ケイ素揺変剤(E2):合成例2で調製された。
反応性有機ケイ素揺変剤(E3):合成例3で調製された。
反応性有機ケイ素揺変剤(CE1):比較合成例1で調製された。
非反応性有機ケイ素揺変剤(CE2):比較合成例2で調製された。
増粘剤(F):3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン。
ヒドロシリル化反応抑制剤(G):1-エチニルシクロヘキサノール。
【0105】
表1における有機ケイ素パッケージ接着剤の組成及び配合比率で、以下の方法で実施例1~3及び比較例1~2の有機ケイ素パッケージ接着剤を調製する。室温で順にオルガノポリシロキサン、水素含有ポリシロキサン、ヒドロシリル化反応触媒、フィラー、反応性有機ケイ素揺変剤、増粘剤、ヒドロシリル化反応抑制剤(G)を均一に混合し、プラネタリーミキサーで30min分散させることにより有機ケイ素パッケージ接着剤を得る。関連する評価結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
本発明の実施例1~3で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤はそれぞれ反応性有機ケイ素揺変剤E1、E2、E3が採用されており、前記反応性有機ケイ素揺変剤はそれぞれフェニル基を含有する環状水素含有ポリシロキサン又は分岐水素含有ポリシロキサンと不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行うことにより調製される。表1から分かるように、本発明の実施例1~3で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤は、その光透過率がいずれも95%以上であり、良好な透明度が示されている。ショアD硬度がいずれも45以上であり、伸び率がいずれも30%以上であり、引張強度がいずれも4.5MPa以上であり、良好な力学的性能が示されている。剪断強度がいずれも4.5MPa以上であり、良好な接着性能が示されている。特に重要なことは、その初期のチクソトロピー指数であるチクソトロピー指数TI0がいずれも5.5以上であり、3ヶ月保存後のチクソトロピー指数であるチクソトロピー指数TI3がいずれも5.5以上であり、かつTI0とTI3との数値変化が小さく、良好な揺変性能が示されており、かつ揺変性能の安定性が優れる。
【0108】
比較から分かるように、本発明の実施例3で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤は、比較例1で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤と比較して、両者の相違点は使用された反応性有機ケイ素揺変剤における置換基が異なることのみであり、ここで本発明の実施例3で採用された反応性有機ケイ素揺変剤E3はフェニル基を含有するのに対して、比較例1で採用された反応性有機ケイ素揺変剤CE1はフェニル基を含有しない。表1から分かるように、採用された反応性有機ケイ素揺変剤はフェニル基を含有しないため、比較例1で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤は、より低い透明度、力学的性能及び接着性能が示され、同時に、より低い揺変性能及び揺変性能の安定性が示されている。
【0109】
比較から分かるように、本発明の実施例3で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤は、比較例2で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤と比較して、両者の相違点は使用された有機ケイ素揺変剤の反応性が異なることのみであり、ここで本発明の実施例3は反応性有機ケイ素揺変剤E3が採用されており、それはヒドロシリル化反応活性を有するのに対して、比較例2は非反応性有機ケイ素揺変剤CE2が採用されている。表1から分かるように、採用された有機ケイ素揺変剤はヒドロシリル化反応性を有しないため、比較例2で調製された有機ケイ素パッケージ接着剤では、より低い透明度、力学的性能及び接着性能が示され、同時に、より低い揺変性能及び揺変性能の安定性が示されている。
【0110】
以上から分かるように、本発明において、フェニル基を含有する環状水素含有ポリシロキサン又は分岐水素含有ポリシロキサンと不飽和ポリエーテルとが、前記環状水素含有ポリシロキサン又は前記分岐水素含有ポリシロキサンにおけるSiH結合の総量と前記不飽和ポリエーテルにおけるエチレン結合の総量との比が1より大きいことを保証するという条件下で、ヒドロシリル化反応を行うことにより、反応性有機ケイ素揺変剤が調製され、それは有機ケイ素パッケージ接着剤に安定した揺変性能、高透明度及び優れた力学的性能及び接着性能を同時に付与することができ、これによりパッケージ性能に優れたLED素子を製造することができる。
【0111】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の実質的な内容から逸脱することなく、当業者が想到しうる任意の変形、改良、置換はいずれも本発明の範囲に属する。