(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20221104BHJP
G05F 3/26 20060101ALI20221104BHJP
G05F 3/30 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G05F1/56 310E
G05F1/56 310T
G05F3/26
G05F3/30
(21)【出願番号】P 2021137068
(22)【出願日】2021-08-25
(62)【分割の表示】P 2020000622の分割
【原出願日】2020-01-07
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511062254
【氏名又は名称】ウィンボンド エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】中谷 真史
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-330658(JP,A)
【文献】特表2017-526077(JP,A)
【文献】特開平09-034566(JP,A)
【文献】特開2006-277360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/12-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
電源電圧に依存しない基準電流を生成する基準電流生成部と、
正の温度係数を有する温度依存電流を生成する温度依存電流生成部と、
前記基準電流生成部で生成された前記基準電流に基づき出力電流を生成する出力電流生成部とを含み、
前記基準電流生成部は、基準電圧に基づき負の温度係数の基準電流を生成する第1の回路と、前記温度依存電流に基づき正の温度係数の基準電流を生成する第2の回路とを含み、
前記基準電流生成部は、前記負の温度係数の基準電流と前記正の温度係数の基準電流とを合算することで前記基準電流を生成し、
前記第1の回路は、前記基準電圧を生成する出力ノードと基準電位との間の第1の経路に接続された抵抗と、前記抵抗を流れる前記負の温度係数の基準電流の大きさを調整する第1の調整回路を含み、
前記出力電流生成部は、前記基準電流から前記出力電流を生成するためのカレントミラー回路と、電源電圧と前記カレントミラー回路との間に接続されたトランジスタとを含み、当該トランジスタは、外部からのイネーブル信号に応答して前記出力電流を負荷に供給する、定電流回路。
【請求項2】
前記第1の調整回路は、前記抵抗の複数のタップ間にそれぞれ並列に接続された第1の複数のスイッチを含み、当該第1の複数のスイッチは、外部からの制御により開閉可能であり、前記第1の調整回路は、選択された第1のスイッチを閉じることで前記抵抗の一部を短絡させて抵抗値を調整する、請求項1に記載の定電流回路。
【請求項3】
前記第2の回路は、前記第1の経路と並列関係の第2の経路に、前記温度依存電流に基づき前記正の温度係数の基準電流を生成するためのカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路のミラーレシオを調整する第2の調整回路とを含み、前記第2の経路に前記正の温度係数の基準電流が生成され、
前記第2の調整回路は、並列接続された第1の複数のトランジスタと、当該第1の複数のトランジスタとそれぞれ直列に接続された第2の複数のスイッチとを含み、当該第2の複数のスイッチは、外部からの制御により開閉可能であり、前記第2の調整回路は、選択された第2のスイッチを閉じることで選択された第1のトランジスタに流れるドレイン電流を調整する、請求項
2に記載の定電流回路。
【請求項4】
前記第1の回路は、前記出力ノードに前記基準電圧を生成するように動作するユニティゲインバッファを含み、
前記基準電流は、前記第1の経路を流れる負の温度係数の基準電流と前記第2の経路を流れる正の温度係数の基準電流との合算により生成される、請求項
3に記載の定電流回路。
【請求項5】
前記ユニティゲインバッファは、反転入力端子に前記基準電圧を入力する反転入力端子と、前記出力ノードが短絡された非反転入力端子とを含むオペアンプである、請求項4に記載の定電流回路。
【請求項6】
前記温度依存電流生成部は、前記温度依存電流を流すNMOSタイプの第2のトランジスタを含み、
前記第1の複数のトランジスタはNMOSタイプであり、
前記第1の複数のトランジスタと第2のトランジスタとは前記カレントミラー回路を構成する、請求項
3に記載の定電流回路。
【請求項7】
前記第1の調整回路および前記第2の調整回路は、前記基準電流の温度係数がゼロになるように前記負の温度係数の基準電流および前記正の温度係数の基準電流を調整する、請求項
3に記載の定電流回路。
【請求項8】
前記第1の調整回路および前記第2の調整回路は、前記基準電流の温度係数が正または負になるように前記負の温度係数の基準電流および前記正の温度係数の基準電流を調整する、請求項
3に記載の定電流回路。
【請求項9】
前記基準電圧生成部は、バンドギャップリファレンス回路を含み、
前記温度依存電流生成部は、前記バンドギャップリファレンス回路に接続され、
前記温度依存電流生成部は、前記バンドギャップリファレンス回路において前記基準電圧を生成するためのバンドギャップリファレンス電流に基づき前記温度依存電流を生成する、請求項1に記載の定電流回路。
【請求項10】
前記バンドギャップリファレンス回路は、前記バンドギャップリファレンス電流を生成するPMOSタイプの第3のトランジスタを含み、
前記温度依存電流生成部は、前記第3のトランジスタとカレントミラー回路を構成するPMOSタイプの第4のトランジスタを含む、請求項9に記載の定電流回路。
【請求項11】
請求項
3に記載の定電流回路と、当該定電流回路を制御するコントローラとを含み、
前記コントローラは、前記第1の複数のスイッチ、前記第2の複数のスイッチおよび前記イネーブル信号の少なくとも1つを制御する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流を供給する定電流回路に関し、特に半導体装置等の定電流源として利用可能な定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
定電流回路にカレントミラー回路を用いたものが従来から知られており、こうした定電流回路が、例えば特許文献1に開示されている。また、電源電圧に依存せずに一定の電流を出力する定電流回路が、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-234890号公報
【文献】特開2013-97751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に、従来の定電流回路の構成を示す。同図に示すように、定電流回路10は、オペアンプOP、PMOSトランジスタQ1、Q2、可変抵抗R
Tを含み、オペアンプOPの非反転入力端子(+)には基準電圧V
REFが入力され、反転入力端子(-)には負帰還によりノードNの電圧V
Nが入力される。電源電圧VDDとGNDとの間に直列にPMOSトランジスタQ1と可変抵抗R
Tが直列に接続され、トランジスタQ1のゲートがオペアンプOPの出力に接続される。可変抵抗R
Tは、回路素子のバラツキ等に応じて抵抗値がトリミングされる。また、トランジスタQ1とカレントミラー回路を構成するようにPMOSランジスタQ2のゲートがオペアンプOPの出力に接続される。オペアンプOPは、ノードNの電圧V
Nが基準電圧V
REFに等しくなるように(V
N=V
REF)トランジスタQ1のゲート電圧を制御する。つまり、オペアンプOPは、ユニティゲインバッファとして機能する。その結果、トランジスタQ1を流れる基準電流は、I
REF=V
REF/R
Tで表され、基準電流I
REFは、電源電圧の変動に依存しない定電流となる。また、トランジスタQ2は、トランジスタQ1を流れる電流I
REFに応じた出力電流I
MIRRORを生成し、この電流が負荷に供給される。
【0005】
アナログ回路の設計では、定電流回路または定電流源の温度依存性が回路設計においてしばしば問題となり得る。例えば、発振器は、発振のサイクル時間(周期)を決定するために遅延回路を含むが、この遅延回路は、電源電圧の変動等による遅延時間の電圧依存性を避けるために定電流回路を使用することがある。しかしながら、定電流回路から供給される定電流が温度依存性を有すると、遅延回路は、温度に対して遅延時間の変動を生じさせ、発振器のサイクル時間が温度によって変化してしまう。例えば、
図1に示すような定電流回路10の場合、高濃度に不純物ドープされた導電性ポリシリコン層やN+の拡散領域または金属等で可変抵抗R
Tが構成されることで、抵抗値が正の温度係数(温度の上昇に伴い抵抗が高くなり、反対に温度の低下に伴い抵抗が低くなる)を有するため、基準電流I
REFは負の温度係数を有し、複製される出力電流I
MIRRORも負の温度係数を有し、負荷に供給される電流が温度によって変化してしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、温度補償された定電流を供給する定電流回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る定電流回路は、基準電圧を生成する基準電圧生成部と、電源電圧に依存しない基準電流を生成する基準電流生成部と、正の温度係数を有する温度依存電流を生成する温度依存電流生成部とを含み、前記基準電流生成部は、前記基準電圧に基づき負の温度係数の基準電流を生成する第1の回路と、前記温度依存電流に基づき正の温度係数の基準電流を生成する第2の回路とを含み、前記基準電流生成部は、前記負の温度係数の基準電流と前記正の温度係数の基準電流とを合算することで前記基準電流を生成する。
【0008】
ある実施態様では、前記第1の回路は、出力ノードに前記基準電圧を生成するように動作するユニティゲインバッファと、前記出力ノードと基準電位との間の第1の経路に接続された抵抗とを含み、前記第1の経路に前記負の温度係数の基準電流が生成され、前記第2の回路は、前記第1の経路と並列関係の第2の経路を含み、前記第2の経路に前記正の温度係数の基準電流が生成され、前記基準電流は、前記第1の経路を流れる負の温度係数の基準電流と前記第2の経路を流れる正の温度係数の基準電流との合算により生成される。ある実施態様では、前記ユニティゲインバッファは、反転入力端子に前記基準電圧を入力する反転入力端子と、前記出力ノードが短絡された非反転入力端子とを含むオペアンプであり、前記第2の回路は、前記第2の経路に前記正の温度係数の基準電流を生成するNMOSタイプの第1のトランジスタを含む。ある実施態様では、前記第1の回路は、前記負の温度係数の基準電流の大きさを調整する第1の調整回路を含む。ある実施態様では、前記第1の調整回路は、前記第1の経路上の抵抗の抵抗値を調整する。ある実施態様では、前記第2の回路は、前記正の温度係数の基準電流の大きさを調整する第2の調整回路を含む。ある実施態様では、前記第2の調整回路は、前記第1のトランジスタを流れるドレイン電流を調整する。ある実施態様では、前記温度依存電流生成部は、前記温度依存電流を流すNMOSタイプの第2のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタと第2のトランジスタとはカレントミラー回路を構成する。ある実施態様では、前記第2の調整回路は、前記カレントミラー回路のミラーレシオを調整する。ある実施態様では、前記第1の調整回路および前記第2の調整回路は、前記基準電流の温度係数がゼロになるように前記負の温度係数の基準電流および前記正の温度係数の基準電流を調整する。ある実施態様では、前記第1の調整回路および前記第2の調整回路は、前記基準電流の温度係数が正または負になるように前記負の温度係数の基準電流および前記正の温度係数の基準電流を調整する。ある実施態様では、前記基準電圧生成部は、バンドギャップリファレンス回路を含み、前記温度依存電流生成部は、前記バンドギャップ回路に接続され、前記温度依存電流生成部は、前記バンドギャップリファレンス回路において前記基準電圧を生成するためのバンドギャップリファレンス電流に基づき前記温度依存電流を生成する。ある実施態様では、前記バンドギャップリファレンス回路は、前記バンドギャップリファレンス電流を生成するPMOSタイプの第3のトランジスタを含み、前記温度依存電流生成部は、前記第3のトランジスタとカレントミラー回路を構成するPMOSタイプの第4のトランジスタを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電源電圧に依存しない基準電流を生成する基準電流生成部が、負の温度係数の基準電流と正の温度係数の基準電流とを合算することで基準電流を生成するようにしたので、温度補償された基準電流を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施例に係る定電流回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施例に係る定電流回路の構成を示す図である。
【
図4】
図4(A)は、抵抗のトリミング例を示す図、
図4(B)は、カレントミラーレシオのトリミング例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る定電流回路は、フラッシュメモリ、ダイナミックメモリ(DRAM)、スタティックメモリ(SRAM)、抵抗変化型メモリ(RRAM)、磁気メモリ(MRAM)等の記憶装置や、ロジック、信号処理等の半導体装置において利用することができる。
【実施例】
【0012】
次に、本発明の実施例に係る定電流回路について図面を参照して説明する。
図2は、本実施例の定電流回路の構成を示すブロック図、
図3は、定電流回路の回路構成を示す図である。本実施例の定電流回路100は、電源電圧の変動や温度変化への依存性が少ない基準電圧V
BGRを生成するバンドギャップリファレンス回路(以下、BGR回路)110と、正の温度係数を有する温度依存電流を生成する温度依存電流生成部120と、基準電圧V
BGRおよび温度依存電流を利用して温度補償された基準電流(または定電流)I
REFを生成する基準電流生成部130と、基準電流生成部130で生成された基準電流I
REFに基づき出力電流を生成する出力電流生成部140とを含んで構成される。
【0013】
BGR回路110は、半導体材料のシリコンの物性であるバンドギャップ電圧を利用して、温度や電源電圧の変動に対して依存性の少ない安定した基準電圧V
BGRを生成する。BGR回路110は、
図3に示すように、電源電圧VDDとGND間に第1および第2の電流経路を含み、第1の電流経路は、直列に接続されたPMOSトランジスタQ10、抵抗R1、ダイオードD1を含み、第2の電流経路は、直列に接続されたPMOSトランジスタQ11(トランジスタQ10と同一構成)、抵抗R2(抵抗R1と同じ抵抗値)、抵抗Rf、ダイオードD2を含む。BGR回路110はさらに、抵抗R1とダイオードD1の接続ノードN1を非反転入力端子(+)に接続し、抵抗R2と抵抗Rfの接続ノードN2を反転入力端子(-)に接続し、出力端子をトランジスタQ10、Q11のゲートに共通接続するオペアンプ112を含む。
【0014】
ダイオードD1とダイオードD2の面積比または並列接続された個数比は1対N(Nは、1より大きい数)であり、ダイオードD1の電流密度はダイオードD2のN倍である。ここではダイオードD1、D2を例示するが、ダイオードD1、D2に代えてダイオード接続されたバイポーラトランジスタであってもよい。
【0015】
オペアンプ112は、ノードN1の電圧Vf1とノードN2の電圧とが等しくなるように、トランジスタQ10、Q11のゲート電圧を制御し、これにより、第1の電流経路にはトランジスタQ10を介して電流IBが流れ、第2の電流経路にはトランジスタQ11を介して第1の電流経路と同じ電流IBが流れる。
【0016】
ダイオードD1とダイオードD2には同じ電流I
Bが流れるが、両者の面積比は1対Nであるため、次式が成立する。
【数1】
【0017】
Vf1はダイオードD1の端子電圧(ノードN1の電圧)、Vf2はダイオードD2の端子電圧、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電子の電荷量である。
【0018】
また、抵抗Rfに流れる電流I
Bは、次式で表される。
【数2】
温度に依存する因数はT/Rfであり、一般的に電流I
Bは正の温度係数を有する。
【0019】
基準電圧V
BGRは、第2の電流経路から生成することができ、
図3の例では、基準電圧V
BGRは、抵抗R2の選択されたタップ位置における抵抗R2’から生成され、これは、次式で表される。
【数3】
【0020】
BGR回路110によって生成された基準電圧V
BGRは、電圧依存性および温度依存性が少ない電圧であり、この基準電圧V
BGRは、
図3に示すように基準電流生成部130のオペアンプOPの非反転入力端子(+)に入力される。基準電流生成部130は、オペアンプOP、PMOSトランジスタQ1、可変抵抗R
NPおよびNMOSトランジスタQ
TCを含んで構成される。オペアンプOP、トランジスタQ1および可変抵抗R
NPは、
図1に示した定電流回路10と同様に機能し、すなわち、オペアンプOPは、ノードNの電圧V
Nが基準電圧V
BGRと等しくなるようにトランジスタQ1の動作を制御し、トランジスタQ1を流れる基準電流I
REFは、I
REF=V
BGR/R
NPで表され、電源電圧の変動に依存しない定電流である。
【0021】
ノードNは、オペアンプの反転入力端子(-)に負帰還され、ノードNには、2つの電流経路が並列に接続される。一方の電流経路は、ノードNとGNDとの間に抵抗RNPを含み、負の温度係数の基準電流IREFNを生成し、他方の電流経路は、ノードNとGNDとの間にNMOSトランジスタQTCを含み、正の温度係数の基準電流IREFPを生成する。つまり、基準電流IREFは、ノードNに接続された2つの電流経路を流れる負の温度係数の基準電流IREFNと正の温度係数の基準電流IREFPとを合算した電流となる。
【0022】
抵抗R
NPは、例えば、高濃度に不純物ドープされた導電性のポリシリコン層、N+の拡散領域または金属等から構成され、正の温度係数を有する。それ故、抵抗R
NPを流れる電流I
REFNは、負の温度係数を有する。この抵抗R
NPは、トリミングより抵抗値を調整することができ、これにより抵抗R
NPを流れる負の温度係数の基準電流I
REFNの大きさ(電流値)を調整することができる。抵抗R
NPのトリミング方法は任意であるが、例えば、
図4(A)に示すように抵抗R
NPの複数のタップ間にスイッチSW1、SW2~SWnをそれぞれ接続し、選択されたスイッチSW1~SWnをオンし、抵抗R
NPの一部を短絡することで抵抗値が調整される。各スイッチSW1~SWnの制御は、例えば、定電流回路を搭載する半導体装置のコントローラによって行うことができる。
【0023】
トランジスタQ
TCは、温度依存電流生成部120で生成された温度依存電流に基づき正の温度係数の基準電流I
REFPを生成する。トランジスタQ
TCは、例えば、
図3に示すように、温度依存電流生成部120のNMOSトランジスタQ21とカレントミラー回路を構成し、トランジスタQ21を流れる正の温度係数の温度依存電流I
Bから正の温度係数の基準電流I
REFPを生成する。
【0024】
温度依存電流生成部120は、正の温度係数の温度依存電流を生成し、これを基準電流生成部130へ提供する。温度依存電流生成部120は、それ自身の回路によって温度依存電流を生成してもよいし、あるいは
図3に示すように、BGR回路110において基準電圧V
BGRを生成するための電流I
Bを利用して温度依存電流を生成してもよい。
図3の例では、温度依存電流生成部120は、電源電圧VDDとGNDとの間に電流経路を含み、この電流経路は、直列に接続されたPMOSトランジスタQ20とNMOSトランジスタQ21とを含む。トランジスタQ20は、トランジスタQ10、Q11と同一構成であり、トランジスタQ20のゲートにはオペアンプ112の出力が接続され、トランジスタQ10は、トランジスタQ10、Q11とともにカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタQ20を介して電流経路には電流I
Bが生成される。
【0025】
また、トランジスタQ21は、ゲートがドレインに接続され、かつトランジスタQTCのゲートに接続され、トランジスタQ21とトランジスタQTCはカレントミラー回路を構成する。トランジスタQ20を介して電流IBが流されたとき、トランジスタQ21が導通し、トランジスタQTCにもカレントミラーレシオに応じた正の温度係数の基準電流IREFPが流れる。電流IBは、数式(2)に示したように、正の温度係数を有するため、基準電流IREFPも正の温度係数を有する。
【0026】
基準電流I
REFPの大きさは、電流I
Bとのカレントミラーレシオをトリミングすることにより調整することができる。トリミング方法は任意であるが、例えば、
図4(B)に示すように、トランジスタQ
TCは、n個の並列接続されたトランジスタQ
TC1~Q
TCnを含み、これらの各トランジスタに直列にスイッチSW1~SWnを接続し、選択されたスイッチSW1~SWnをオンすることで選択されたトランジスタQ
TC1~Q
TCnを動作させる。つまり、導通されたトランジスタのドレイン電流の合計が基準電流I
REFPとなる。各スイッチSW1~SWnの制御は、例えば、定電流回路を搭載する半導体装置のコントローラによって行うことができる。
【0027】
基準電流生成部130において生成される基準電流IREFは、トランジスタQTCを流れる正の温度係数の基準電流IREFPと、抵抗RNPを流れる負の温度係数の基準電流IREFNとを合算した大きさであり、正の温度係数の基準電流IREFPと負の温度係数の基準電流IREFNとの比を適切にトリミングすることにより、基準電流IREFの温度係数をゼロに調整することが可能である。基準電流IREFの温度係数ゼロを実現するための基準電流IREFPとIREFNの最適な比は、2つもしくはそれ以上の異なる温度条件において電流をトリミングすることによって見つけることができる。
【0028】
出力電流生成部140は、基準電流生成部130で生成された温度補償された基準電流I
REFに基づき負荷に供給する出力電流I
MIRRORを生成する。例えば、
図3に示すように、出力電流生成部140は、基準電流生成部130のトランジスタQ1とカレントミラーを構成するトランジスタQ2を含み、基準電流I
REFに基づき温度補償された出力電流I
MIRRORを生成する。また、1つの態様では、トランジスタQ2と電源電圧VDDとの間にもう1つのPMOSトランジスタQ3を含み、トランジスタQ3のゲートには、出力電流生成部140をイネーブルするための信号ENが印加される。イネーブル信号ENがローレベルに駆動されたとき、出力電流生成部140は、出力電流I
MIRRORを負荷に供給する。なお、イネーブル信号ENは、例えば、定電流回路を搭載する半導体装置のコントローラによって行うことができる。
【0029】
上記実施例では、温度依存電流生成部120は、BGR回路110の電流IBから正の温度係数の温度依存電流IBを生成したが、必ずしもBGR回路110を利用する必要はない。つまり、温度依存電流生成部120は、BGR回路110とは独立して正の温度係数を有する温度依存電流を生成し、この温度依存電流を基準電流生成部130に供給するようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施例では、基準電流生成部130が温度係数ゼロの基準電流IREFを生成する例を示したが、これは一例である。例えば、基準電流生成部130は、正の温度係数の基準電流または負の温度係数の基準電流を要求される場合には、正の温度係数を有する基準電流IREFPと負の温度係数を有する基準電流IREFNとの比を適切に調整することによって、温度補償された正の温度係数の基準電流IREF、あるいは負の温度係数の基準電流IREFを生成することも可能である。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
10、100:定電流回路
110:BGR回路
112:オペアンプ
120:温度依存電流生成部
130:基準電流生成部
140:出力電流生成部