(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・カゼイ由来の二種類のプロモーターを用いた二種の目的タンパク質の同時表面発現ベクター、およびこれを用いたタンパク質の微生物表面発現方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/74 20060101AFI20221104BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20221104BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20221104BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221104BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221104BHJP
A23L 33/135 20160101ALN20221104BHJP
【FI】
C12N15/74 110Z
C12N15/31 ZNA
C12N15/52 Z
C12N1/21
C12P21/02 C
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2021518746
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 KR2019013261
(87)【国際公開番号】W WO2020076079
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0120547
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519220124
【氏名又は名称】バイオリーダース コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン チュル
(72)【発明者】
【氏名】キ デ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ナム ギョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン セ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ムン ハ ナ
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハム キュン ス
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-514469(JP,A)
【文献】特表2010-521984(JP,A)
【文献】特開2010-088332(JP,A)
【文献】特表2011-501668(JP,A)
【文献】Mol. Biotechnol. (2013) Vol.53, pp.129-138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;及び、第2プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;を含む目的タンパク質の表面発現ベクター
として、
前記第1プロモーターは、配列番号1で示される乳酸菌由来のアルドラーゼ・プロモーター(Pald)であり、
前記第2プロモーターは、配列番号2で示される乳酸菌由来のガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター(Pgm)であり、
前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子は、pgsAであり、配列番号21~23および32~34のうちのいずれか一つの塩基配列からなることを特徴とする目的タンパク質の表面発現ベクター。
【請求項2】
前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子は、ポリガンマグルタミン酸を産生するバチルス属菌株に由来したことを特徴とする請求項1に記載の目的タンパク質の面発現ベクター。
【請求項3】
前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子の末端部位にリンカーが挿入されており、前記挿入されたリンカーに目的タンパク質をコードする遺伝子が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の目的タンパク質の表面発現ベクター。
【請求項4】
前記目的タンパク質は、表面発現に有利であるように目的タンパク質のアミノ酸配列のうちの一部分が除去された
タンパク質または位置特異的に突然変異された
タンパク質を含むことを特徴とする請求項1に記載の目的タンパク質の表面発現ベクター。
【請求項5】
前記ベクターは、グラム陰性菌またはグラム陽性菌に適用されることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一に記載の目的タンパク質の表面発現ベクター。
【請求項6】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の表面発現ベクターで形質転換された微生物。
【請求項7】
形質転換に用いられた微生物は、目的タンパク質の細胞表面発現に有利であるように、発現された目的タンパク質を分解することに関わる細胞内または細胞外のタンパク質分解酵素を産生できないように変形されたものであることを特徴とする請求項
6に記載の形質転換された微生物。
【請求項8】
微生物は、乳酸菌であることを特徴とする請求項
6に記載の形質転換された微生物。
【請求項9】
請求項
6に記載の形質転換された微生物を培養して目的タンパク質を細胞の表面に発現するステップおよび目的タンパク質が表面に発現された細胞を回収するステップを含む目的タンパク質の細胞表面発現方法。
【請求項10】
下記のステップを含むことを特徴とするグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞の表面に目的タンパク質を発現する方法:
(a)請求項
5に記載の微生物表面発現用ベクターに目的タンパク質をコードする遺伝子を挿入して組換えベクターを製造するステップ;
(b)前記組換えベクターでグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞を形質転換するステップ;及び
(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して目的タンパク質を宿主細胞の表面に発現するステップ
。
【請求項11】
目的タンパク質は、ホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、シグナル伝達タンパク質もしくはその一部分、抗体もしくはその一部分、一本鎖抗体、結合タンパク質、結合ドメイン、ペプチド、抗原、付着タンパク質、構造タンパク質、調節タンパク質、毒素タンパク質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子および植物生体防御誘導タンパク質よりなる群から選ばれるいずれか一種であることを特徴とする請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の方法により製造され、抗原が表面に発現された細胞をヒト以外の脊椎動物に投与して体液性免疫または細胞性免疫を誘導することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のアルドラーゼ(aldolase)・プロモーターとガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)・プロモーターを用いて二種の目的タンパク質を微生物の表面に同時に発現するベクター、及びこのようなベクターで形質転換された微生物に関する。
【0002】
また、本発明は、バチルス属菌株由来のポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質(pgsA)を用いて外来タンパク質を微生物の表面に効果的に発現する新規なベクターに関するものであり、さらに、本発明は、バチルス属菌株由来のポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質を用いて外来タンパク質を微生物の表面に発現するタンパク質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞表面発現とは、タンパク質やペプチドなどを適切な表面発現母体(anchoring motif)と融合してグラム陰性・陽性菌、カビ、酵母、動物細胞の表面に発現する技術のことをいう(Lee S. Y.,et al.,Trends Biotechnol.,21:4552,2003)。最初の細胞表面発現技術は、1980年代に相対的に表面が単純なファージを用いてペプチドや小さなタンパク質を繊維状ファージ(filamentous phage)のpIIIと融合して発現してこれを表面発現システム(surface-expression system)と名付けたものである。ファージを用いた細胞表面発現は、抗体のスクリーニングや、エピトープ、高親和性リガンドなどのスクリーニングに用いられたが、ファージの表面に発現され得るタンパク質の大きさが相対的に制限されているため、限界を曝け出すことに至った。したがって、その代案として、バクテリアを用いた細胞表面発現が開発された。バクテリアや酵母などの微生物の表面タンパク質を表面発現母体(surface anchoring motif)として用いて外来タンパク質を微生物の表面に安定的に発現する分野である。
【0004】
特定の有機体の外膜タンパク質を用いて外来タンパク質を細胞の表面に発現するためには、適当な表面タンパク質と外来タンパク質を遺伝子のレベルで互いに連結して融合タンパク質が生合成されるようにし、これらが安定的に細胞内膜を通過して細胞の表面に付着されて保たれるようにしなければならない。このためには、次のような性質を有するタンパク質を表面発現の母体として用いることが好ましい:第一に、細胞内膜を通過できる分泌シグナル(secretion signal)をN-末端に有しており、第二に、細胞外膜の表面に安定的に付着され得る標的シグナル(targeting signal)を有していなければならず、第三に、細胞の成長に悪影響を及ぼさない範囲内において細胞の表面に多量に発現されてタンパク質の活性が高く現れることができ、かつ、最後に、タンパク質の大きさとは無関係に安定的に発現されて様々な反応に利用できなければならない(Georgiou et al.,TIBTECH,11:6,1993)。このような表面発現母体は、宿主細胞の表面に外膜タンパク質のN-末端やC-末端、またはタンパク質の中央に挿入されるように遺伝的に操作する必要もある(Lee et al.,TIBTECH,21:45,2003)。
【0005】
細菌の表面にタンパク質が発現されるためには、細胞内において生合成されたタンパク質が細胞膜を通過できる分泌シグナル(secretion signal)がそのタンパク質の一次配列の上になければならない。また、グラム陰性細菌である場合には、細胞内膜と細胞膜空間を通過して細胞外膜に挿入・付着されて膜の外部に突出するように定着されなければならない。
【0006】
細菌の場合、このような分泌シグナルと細胞の表面に定着されるようにする標的シグナル(targeting signal)を有しているタンパク質としては、表面タンパク質、特殊の酵素、毒素タンパク質などが挙げられる。実際に、これらのタンパク質が有する分泌シグナルと標的シグナルなどを適当なプロモーターと併用すれば、細菌の表面にタンパク質を成功的に発現することができる。
【0007】
一方、乳酸菌で有用な外来タンパク質を産生するための試みは、主に誘導物質を用いた誘導性プロモーター(inducible promoter)を用いて、または高効率のプロモーターを確保することにより行われてきた。上述したように、目的タンパク質を発現する乳酸菌の様々な用途が開発され、学問的研究が活発に行われているが、今のところは発現される目的タンパク質の発現量が不十分であり、誘導性発現プロモーターを用い、体内への投与時に継続的な発現ができない可能性があるなどの問題がある。
【0008】
最近、アメリカおよびヨーロッパにおいて、乳酸菌を用いたライブワクチンの開発、有用なホルモン剤の腸内運搬体に関する研究およびこのための効率よい遺伝子源の確保と乳酸菌用挿入ベクターの開発への取り組みが行われている。特に、乳酸菌に含有されている多量の構成成分である非メチル化された(unmethylated)CpG DNA、リポタイコ酸(lipoteichoic acid)、ペプチドグリカンなどが免疫上昇剤(adjuvant)としての役割を果たすことが知られているので、乳酸菌のワクチン伝達体(vehicle)としての有用性が高く評価されている。また、乳酸菌は、胆汁酸および胃酸に抵抗性を示して腸までの抗原の伝達が可能であるので、腸内粘膜免疫を誘導することができるという点で多くの利点を有している。
【0009】
しかしながら、乳酸菌をワクチン伝達体として用いるためには、疾病予防用抗体の生成のための抗原タンパク質を菌体の内部または外部に提示して抗原抗体反応が円滑に行われるようにする技術の開発が必要である。
【0010】
一方、ガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)は、D-ガラクトース異化作用の代謝経路であるルロワール経路においてβ-D-ガラクトースのα-D-ガラクトースへの転換を触媒することにより、正常なガラクトース代謝において重要な役割を果たすことが知られている。しかしながら、乳酸菌におけるガラクトース・ムタロターゼの分子生物学的特性に関する研究は不十分であるのが現状である。
【0011】
そこで、本発明者らは、HPVのE7タンパク質を細胞の表面に発現する菌株を用いて、1つのベクター内において異なる二種の外来タンパク質を微生物の表面に効果的に発現する新規な表面発現ベクター、および微生物の表面に異なる二種の外来タンパク質を安定的に大量発現する方法を開発し、さらに、本発明者らは、バチルス属菌株由来のポリガンマグルタミン酸の合成遺伝子(pgsA)を新規な表面発現母体として活用することについて鋭意検討し且つ研究したところ、pgsA遺伝子を用いて、外来タンパク質を微生物の表面に効果的に発現する新規なベクター、および微生物の表面に外来タンパク質を多量に発現する方法を開発して本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微生物の表面に二種の外来タンパク質を大量発現できる表面発現母体としてバチルス(Bacillus subtilis var.Chungkookjang)属菌株由来のポリガンマグルタミン酸の合成複合体遺伝子を使用し、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のアルドラーゼ(aldolase)・プロモーター及びガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)・プロモーターを用いて、二種の目的タンパク質を微生物の表面に同時に発現する表面発現ベクターと、これにより形質転換された様々な形質転換体において異なる二種の外来タンパク質を効率よく形質転換体の表面に発現する方法とを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、微生物の表面に外来タンパク質を大量に発現し得る表面発現母体としてバチルス属菌株に由来したポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質を選択し、これを用いて、外来タンパク質やペプチドを微生物の表面に発現し得る目的タンパク質の表面発現ベクターを製造し、これにより形質転換された様々な形質転換体において外来タンパク質を効率よく形質転換体の表面に発現する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、第1プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;及び、第2プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;を含む目的タンパク質の表面発現ベクターを提供する。
【0015】
本発明において、第1プロモーターは、配列番号1で示されることを特徴としてもよい。
【0016】
本発明において、第2プロモーターは、配列番号2で示されることを特徴としてもよい。
【0017】
本発明において、前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子は、ポリガンマグルタミン酸を産生するバチルス属菌株に由来したことを特徴としてもよい。
【0018】
本発明において、前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子の末端部位にリンカーが挿入されており、前記挿入されたリンカーに目的タンパク質をコードする遺伝子が挿入されていることを特徴としてもよい。
【0019】
本発明において、前記目的タンパク質は、表面発現に有利であるように目的タンパク質のアミノ酸配列のうちの一部分が除去されたり位置特異的に突然変異されたりしたものであることを特徴としてもよい。
【0020】
本発明において、前記第1プロモーターは、乳酸菌由来のアルドラーゼ・プロモーター(Pald)であることを特徴としてもよい。
【0021】
本発明において、前記第2プロモーターは、乳酸菌由来のガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター(Pgm)であることを特徴としてもよい。
【0022】
本発明において、前記ベクターは、グラム陰性菌またはグラム陽性菌に適用されることを特徴としてもよい。
【0023】
本発明は、また、前記表面発現ベクターで形質転換された微生物を提供する。本発明において、形質転換に用いられた微生物は、目的タンパク質の細胞表面発現に有利であるように、発現された目的タンパク質を分解することに関わる細胞内または細胞外のタンパク質分解酵素を産生できないように変形されたものであることを特徴としてもよい。
【0024】
本発明において、前記微生物は、乳酸菌であることを特徴としてもよい。本発明において、前記乳酸菌は、ラクトバチルス属、ストレプスコッカス属およびビフィドバクテリウム属を含んでいてもよい。代表的に、ラクトバチルス属は、ラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L. ferementum)、ラクトバチルス・デルブルエッキイー(L. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニーLJI(L. johnsonii LJI)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)およびラクトバチルス・ブルガリクス(L. bulgaricus);ストレプスコッカス属は、ストレプスコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus);ビフィドバクテリウム属は、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B. psuedolongum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.・breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティスBb-12(B. lactis Bb-12)およびビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B. adolescentis)などを宿主として用いることができ、さらに好ましくは、ラクトバチルス属である。
【0025】
本発明は、また、前記形質転換された微生物を培養して目的タンパク質を細胞の表面に発現するステップおよび目的タンパク質が表面に発現された細胞を回収するステップを含む目的タンパク質の細胞表面発現方法を提供する。
【0026】
本発明において、目的タンパク質は、ホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、シグナル伝達タンパク質もしくはその一部分、抗体もしくはその一部分、一本鎖抗体、結合タンパク質、結合ドメイン、ペプチド、抗原、付着タンパク質、構造タンパク質、調節タンパク質、毒素タンパク質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子および植物生体防御誘導タンパク質よりなる群から選ばれるいずれか一種であることを特徴としてもよい。
【0027】
本発明は、さらに、(a)前記微生物表面発現用ベクターに目的タンパク質をコードする遺伝子を挿入して組換えベクターを製造するステップ;(b)前記組換えベクターでグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞を形質転換するステップ;及び(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して目的タンパク質を宿主細胞の表面に発現するステップ;を含むことを特徴とするグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞の表面に目的タンパク質を発現する方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsAと目的タンパク質をコードする遺伝子を含む目的タンパク質の表面発現ベクターを提供する。
【0029】
本発明において、前記遺伝子pgsAは、ポリガンマグルタミン酸を産生するバチルス属菌株に由来したことを特徴としてもよい。
【0030】
本発明において、前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsAは、配列番号21~25および32~34のうちのいずれか一つの塩基配列を有することを特徴としてもよい。好ましくは、前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsAは、配列番号21~24および32~34のうちのいずれか一つの塩基配列を有することを特徴としてもよい。
【0031】
本発明において、前記遺伝子pgsAの末端部位にリンカーが挿入されており、前記挿入されたリンカーに目的タンパク質をコードする遺伝子が挿入されていることを特徴としてもよい。
【0032】
本発明において、前記目的タンパク質は、表面発現に有利であるように目的タンパク質のアミノ酸配列のうちの一部分が除去されたり位置特異的に突然変異されたりしたものであることを特徴としてもよい。
【0033】
本発明において、前記プロモーターは、乳酸菌由来のアルドラーゼ・プロモーターであることを特徴としてもよい。
【0034】
本発明は、また、前記表面発現ベクターで形質転換された微生物を提供する。本発明において、形質転換に用いられた微生物は、目的タンパク質の細胞表面発現に有利であるように、発現された目的タンパク質を分解することに関わる細胞内または細胞外のタンパク質分解酵素を産生できないように変形されたものであることを特徴としてもよい。
【0035】
本発明は、また、前記形質転換された微生物を培養して目的タンパク質を細胞の表面に発現するステップおよび目的タンパク質が表面に発現された細胞を回収するステップを含む目的タンパク質の細胞表面発現方法を提供する。
【0036】
本発明において、目的タンパク質は、ホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、シグナル伝達タンパク質もしくはその一部分、抗体もしくはその一部分、一本鎖抗体、結合タンパク質、結合ドメイン、ペプチド、抗原、付着タンパク質、構造タンパク質、調節タンパク質、毒素タンパク質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子および植物生体防御誘導タンパク質よりなる群から選ばれるいずれか一種であることを特徴としてもよい。
【0037】
本発明は、さらに、前記方法により製造され、抗原が表面に発現された細胞をヒト以外の脊椎動物に投与して体液性免疫または細胞性免疫を誘導することを特徴とする方法を提供する。
【0038】
本発明は、さらにまた、前記方法により製造され、抗原が表面に発現された細胞をヒト以外の脊椎動物に投与して免疫反応を誘導し、前記免疫反応により生成された抗体を回収することを特徴とする脊椎動物から抗体を製造する方法を提供する。
【0039】
本発明は、さらにまた、前記ベクターは、グラム陰性菌またはグラム陽性菌に適用されることを特徴とする目的タンパク質の表面発現ベクターを提供する。
【0040】
本発明は、さらにまた、(a) 微生物表面発現用ベクターに目的タンパク質をコードする遺伝子を挿入して組換えベクターを製造するステップ;(b)前記組換えベクターでグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞を形質転換するステップ;及び(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して目的タンパク質を宿主細胞の表面に発現するステップ;を含むことを特徴とするグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞の表面に目的タンパク質を発現する方法を提供する。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る表面発現ベクターは、一つのベクター中に異なる二つのプロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、および前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体遺伝子と連結された目的タンパク質をコードする遺伝子が存在するため、従来の発明に比べて、一つのベクターで二種の目的タンパク質を同時に発現することができ、同時に、前記表面発現ベクターで形質転換された微生物を用いるため、二回の形質転換の過程で起こり得る変形の可能性を最小限に抑えることができるという利点があり、また、本発明は、一つのベクター中に異なる二つのプロモーターが存在し、従来の発明に比べて、より短い時間で効率よく目的タンパク質を発現することができ、これを用いて高い薬剤の可能性を有する物質を早期に選別し、一つの表面発現ベクターで二種の目的タンパク質を発現することにより、薬剤開発のコストを劇的に減少させる効果に優れている。また、本発明に係る目的タンパク質の表面発現ベクターは、目的タンパク質を安定的に発現することができ、本発明に係る表面発現ベクターは、目的タンパク質を常時的に発現しながら、これと同時に、組換え微生物に表面発現して必要とするワクチン製造用抗原の製作などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による一つのベクターにおいて二種の目的タンパク質を微生物表面発現することができる表面発現ベクターを構築する方法を示すものである。
【
図2】本発明による表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図3】本発明の表面発現ベクターで形質転換した微生物においてHPV16 E7及びEGFPタンパク質の発現を示すウェスタンブロッティング結果を示すものである。
【
図4】本発明の表面発現ベクターにより乳酸菌の表面に二種の抗原が同時に安定的に発現されていることを共焦点蛍光顕微鏡を用いて観察したものである。
【
図5】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター、pKV-Pald-PgsA-EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図6】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA1)、PgsA motif 1-60 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図7】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA2)、PgsA motif 1-70 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図8】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA3)、PgsA motif 1-80 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図9】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA4)、PgsA motif 1-100 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図10】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA5)、pKV-PgsA 1-188 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図11】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA6)、PgsA motif 25-60 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図12】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA7)、PgsA motif 25-70 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図13】本発明によるラクトバチルス・カゼイを宿主とする表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA8)、PgsA motif 25-100 a.a -EGFPの遺伝子地図を示すものである。
【
図14】本発明の表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA1~pKV-Pald-pgsA8で形質転換したラクトバチルス・カゼイにおけるEGFPタンパク質の表面発現を示すウェスタンブロッティング写真を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
実施例1:二重抗原同時表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPの構築
前記二重抗原同時表面発現ベクターを製造するために、pKV-Pald-PgsA-E7(pKV-Pald-pgsA380L-HPV16E7、大韓民国登録特許第10-1471043号参照)から製造された表面発現ベクターを用いて、Pald-pgsA-HPV16E7のC-端末にPgm-pgsA-EGFPをコードする遺伝子を挿入して乳酸菌において二種の目的タンパク質を同時表面発現できるベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPを確保した。
【0044】
まず、EGFP発現ベクターを製造するために、pKV-Pald-PgsA-E7(大韓民国登録特許第10-1471043号参照)からpgsAと融合されたHPV16 E7遺伝子を除去し、EGFPをコードする遺伝子を挿入した。
【0045】
合成EGFP遺伝子断片を鋳型として用い、かつ、配列番号3と配列番号4をプライマーとして用いてPCRを行った。。
【0046】
配列番号3:
5’-TGGTGGATCCGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG-3’
【0047】
配列番号4:
5’-TGACTCTAGAACTAGTGTCGACGGTACCTTACTTGTACAGCTCGTCC-3’
【0048】
その結果、5’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれており、3’末端にはXbaI制限酵素部位が含まれているEGFP遺伝子755bpの切片を確保した。確保されたDNA切片にBamHIとXbaI制限酵素を処理し、pKV-Pald-pgsA-E7をBamHIとXbaIで切断してHPV16 E7遺伝子部分を除去した後、EGFP遺伝子と切断したベクターとを連結してpKV-Pald-pgsA-EGFPを完成した。
【0049】
そして、pKV-Pald-pgsA-EGFPベクターにおいてアルドラーゼ・プロモーターをガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターに置換するために、ラクトバチルス・カゼイのゲノムにおいて配列番号5と配列番号6をプライマーとして用いてPCRを行い、5’末端にはSphI制限酵素部位が含まれ、3’末端にはXbaI制限酵素部位が含まれているガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター切片を得た。確保されたDNA切片にSphIとXbaI制限酵素を処理し、pKV-Pald-pgsA-EGFPをも同じ制限酵素で切断してアルドラーゼ・プロモーター部分を除去した後、ガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターと切断したベクターとを連結してpKV-Pgm-pgsA-EGFPを完成した。
【0050】
配列番号5:
5’-TACGGCATGCTTGAATTGGTTTCTTACGAT-3’
【0051】
配列番号6:
5’-TACGCTCGAGGTTGAATTACCTCCTAATAG-3’
【0052】
最終的にpKV-Pald-pgsA-E7ベクターE7部位のC-端末にPgm-pgsA-EGFPを挿入するために、pKV-Pgm-pgsA-EGFPベクターを鋳型として用い、かつ、配列番号7と配列番号8をプライマーとして用いてPCRを行った。
【0053】
配列番号7:
5’-GCGCGAATTCTTGAATTGGTTTCTTACGA-3’
【0054】
配列番号8:
5’-GCGCTGCGCATTACTTGTACAGCTCGTC-3’
【0055】
その結果、Pgm-pgsA-EGFP遺伝子が含まれている2608bpの切片を確保した。なお、前記切片の5’末端にはEcoRI制限酵素部位が含まれており、前記切片の3’末端にはFspI制限酵素部位が含まれている。前記確保されたDNA切片を、8563bp切片のpKV-Pald-pgsA-HPV16E7表面発現ベクターのEcoRI及びFspI制限酵素部位を用いてPgm-pgsA-EGFPをコードする遺伝子を挿入して、1,1171bp切片のpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPを完成した(
図1及び
図2)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、微生物の表面に二種の外来タンパク質を大量に発現できる表面発現母体としてバチルス(Bacillus subtilis var. Chungkookjang)属菌株由来のポリガンマグルタミン酸の合成複合体遺伝子を用い、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のアルドラーゼ(aldolase)・プロモーター及びガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)・プロモーターを用いて、二種の目的タンパク質を微生物の表面に同時に発現する表面発現ベクターと、これにより形質転換された様々な形質転換体において異なる二種の外来タンパク質を効率よく形質転換体の表面に発現する方法と、を提供する。
【0057】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0058】
本発明は、第1プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;及び、第2プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;を含む目的タンパク質の表面発現ベクターを提供する。
【0059】
本発明において、「プロモーター」とは、転写を導くのに十分な最小限の配列のことをいう。
【0060】
本発明のアルドラーゼ(aldolase)・プロモーターまたはガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)・プロモーターは、それぞれラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)に存在するアルドラーゼ遺伝子とガラクトース・ムタロターゼ遺伝子の発現を誘導するプロモーターである。一般に、プロモーターは、RNA(リボ核酸)重合酵素が結合して転写の開始を誘導する部分を含み、プロモーターの塩基配列に応じてRNAの合成の度合いが決定されるため、プロモーターに応じて遺伝子の発現強度が異なる可能性がある。本発明においては、アルドラーゼ・プロモーターとガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターを得るために、PCR方法を用いてラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)のゲノムから増幅し、遺伝子クローニング技術を用いてラクトバチルス・カゼイ由来406bpのプロモーター(配列番号1)及び607bpのプロモーター(配列番号2)を分離した。
【0061】
本発明において、「ベクター」とは、好適な宿主内で目的遺伝子を発現できるように、好適な調節配列に作動可能に連結された遺伝子の塩基配列を含む遺伝子作製物のことをいう。前記調節配列には、転写を開始できるプロモーター、その転写を調節するための任意のオペレーター配列、並びに転写及び解読の終結を調節する配列が含まれ得る。本発明のベクターは、細胞内で複製可能なものであれば特に限定されるものではなく、当業界で公知の任意のベクターを用いることができ、例としては、プラスミド、コスミド、ファージ粒子、ウイルスベクターが挙げられる。
【0062】
前記ベクターは、プロモーターなどをさらに含み得、前記第1プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;及び、第2プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;の作動を妨げず、目的タンパク質の表面発現に役立つことができる構成であれば何でも良い。
【0063】
本発明において、前記「表面発現ベクター」は、発現させようとする目的タンパク質の暗号化遺伝子が作動可能に連結されている場合、適切な宿主細胞において前記目的タンパク質を高効率で発現できる目的タンパク質の発現ベクターとして使用可能であり、さらに、前記表面発現ベクターは、宿主細胞で発現可能である。
【0064】
本発明において、「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的な機能を行うように核酸発現調節配列と目的するタンパク質をコードする核酸配列とが機能的に連結されていることをいう。例えば、プロモーターとタンパク質またはRNAをコードする核酸配列とが作動可能に連結されて、コード配列の発現に影響を与えることができる。表面発現ベクターとの作動可能な連結は、当該技術分野で公知の遺伝子組換え技術を用いて行われてもよく、部位特異的DNA切断との連結は、当該技術分野で周知の酵素などを使用する。
【0065】
本発明において、第1プロモーターは、配列番号1で表されてもよく、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明において、第2プロモーターは、配列番号2で表されてもよく、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記配列番号1または2で示される塩基配列の変異体もまた、本発明の範囲内に含まれる。本発明の第1プロモーターであるアルドラーゼ・プロモーター及び第2プロモーターであるガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター核酸分子は、これを構成する核酸分子の作用性等価物、例えば、第1プロモーターであるアルドラーゼ・プロモーター及び第2プロモーターであるガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターの一部塩基配列が欠失(deletion)、置換(substitution)または挿入(insertion)によって変形されたが、第1プロモーターであるアルドラーゼ・プロモーター及び第2プロモーターであるガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター核酸分子と機能的に同様の作用を行える変異体(variants)を含む概念である。具体的には、前記第1プロモーターであるアルドラーゼ・プロモーター及び第2プロモーターであるガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターは、各配列番号1または2の塩基配列とそれぞれ70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでいてもよい。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することにより確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。
【0068】
本発明において、前記第1プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;及び第2プロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、及び目的タンパク質をコードする遺伝子;は、相次いで配列されているもので、「一つのベクター内」に位置するそれぞれ異なる二種のプロモーターによる目的タンパク質の発現が互いに独立して行われるようにする。それぞれ独立して作動するプロモーターが一つのベクター内に存在するので、従来の発明に比べて、表面発現ベクターの製造ステップを効果的に省略することにより、目的タンパク質をより効率的に細胞の表面に発現することができる。
【0069】
また、本発明は、一つのベクター内に異なる二つのプロモーターが存在するので、既存の二種の目的タンパク質を表面発現するため二回の形質転換の確立の過程で発生する可能性のある細胞の変形の可能性を最小限に抑えることができるという利点がある。なお、この発明に係る細胞表面発現は、二つの遺伝子発現がそれぞれのプロモーターによって独立して発現されることであり、それぞれ異なる目的タンパク質の発現を独立して確認することができるという利点がある。
【0070】
他の観点からみて、本発明は、前記表面発現ベクターで形質転換された微生物を提供することを目的とする。前記微生物は、好ましくは乳酸菌、さらに好ましくはプロバイオティック(probiotic)のグラム陽性菌である乳酸菌のことをいい、一般的なプロバイオティック微生物の選別基準には、(i)ヒト由来の微生物であること;(ii)胆汁、酸、酵素および酸素に安定的であること;(iii)腸内粘膜に付着する能力があること;(iv)消化器官内においてコロニーを形成できる能力があること;(v)抗バクテリア性物質を産生できること;および(vi)効能や安定性が証明できることなどの条件が含まれている。前記条件を根拠として、乳酸菌は、人体内における成長が親和的であり、しかも、無害な菌であることが明らかである。したがって、乳酸菌を宿主とする形質転換体を人体に適用して疾病の予防または治療のための遺伝子の伝達またはタンパク質の伝達などの用途に用いる場合、菌株を用いる通常のワクチンの製造方法とは異なり、菌株の非毒性化または無毒性化の段階が求められない。
【0071】
本発明において、前記微生物は、ラクトバチルス属、ストレプスコッカス属およびビフィドバクテリウム属を含んでいてもよい。代表的に、ラクトバチルス属は、ラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L. ferementum)、ラクトバチルス・デルブルエッキイー(L. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニーLJI(L. johnsonii LJI)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)およびラクトバチルス・ブルガリクス(L. bulgaricus);ストレプスコッカス属は、ストレプスコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus);ビフィドバクテリウム属は、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B. psuedolongum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティスBb-12(B. lactis Bb-12)およびビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B. adolescentis)などを宿主として用いることができ、さらに好ましくは、ラクトバチルス属である。
【0072】
また、本発明において形質転換に用いられた微生物は、目的タンパク質の細胞表面発現に有利であるように、発現された目的タンパク質を分解することに関わる細胞内または細胞外のタンパク質分解酵素を産生できないように変形されたものであることを特徴とする形質転換された微生物を含む。
【0073】
さらに他の観点からみて、本発明は、前記表面発現ベクターで形質転換された微生物を培養して目的タンパク質を細胞の表面に発現するステップ;及び目的タンパク質が表面に発現された細胞を回収するステップ;を含む目的タンパク質の細胞表面発現方法を提供することを目的とする。特に、本発明の表面発現ベクターを用いて外来タンパク質を微生物の表面に発現することにより、細胞の破砕またはタンパク質の分離精製過程を経ずとも効率よく目的タンパク質を利用できる目的タンパク質の製造方法を提供する。
【0074】
さらに、本発明において、前記「目的タンパク質」または「外来タンパク質」とは、前記タンパク質を発現する形質転換された宿主細胞においては正常的に存在し得ないタンパク質のことをいう。例えば、乳酸菌においてウィルス由来または腫瘍由来タンパク質を人為的に発現するように操作した場合、前記タンパク質を目的タンパク質と名付ける。
【0075】
より具体的に、前記目的タンパク質は、好ましくは、感染性微生物、免疫疾患由来抗原または腫瘍由来の抗原、例えば、真菌性病原体、バクテリア、寄生虫、腸内寄生虫(helminth)、ウィルスまたはアレルギー誘発物質などを含んでいてもよく、これらに何ら限定されない。さらに詳しくは、前記抗原は、破傷風トキソイド(tetanus toxoid)、インフルエンザウィルスの赤血球凝集素(hemagglutinin)または核タンパク質、ジフテリアトキソイド(diphtheria toxoid)、HIVのgp120またはその断片、HIVのgagタンパク質、IgAプロテアーゼ(protease)、インスリンペプチドB、ばれいしょ粉状そうか病菌(Spongospora subterranea)抗原、ビブリオース(Vibriose)抗原、サルモネラ(Salmonella)抗原、ニューモコッカス抗原(Pmeumococcus)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV:Respiratory syncytial virus)抗原、インフルエンザ菌(Hemophilus influenza)外膜タンパク質、ストレプスコッカス・ニューモニエ(肺炎レンサ球菌)(Streptococcus pneumoniae)抗原、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のウレアーゼ(urease)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のピリン(pilin)、淋菌(N. gonorrhoeae)のピリン(pilin)、黒色腫関連抗原(melanoma associated antigens:TRP2、MAGE-1、MAGE-3、gp100、チロシナーゼ、MART-1、HSP-70、beta-HCG)、HPV-16、-18、-31、--35、または-45に由来するE1、E2、E6およびE7を含むヒトパピローマウイルス(Human papillomma virus)の抗原、CEA腫瘍抗原、正常または変異型rasタンパク質、正常または変異型p53、Muc1、pSAなどを含み、かつ、コレラ、ジフテリア、ヘモフィルス(Haemophilus)、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、脳炎、おたふく風邪、百日咳、天然痘、肺炎球菌性肺炎(pneumococcal pneumonia)、ポリオ、狂犬病、風疹(rubella)、破傷風、結核、アジソン病(Addison’s disease)、免疫反応誘発物質(immunogen)、アレルギー誘発物質(allergen)、固形腫瘍および血液担持腫瘍を含む癌、後天性免疫不全症候群、腎臓移植、心臓移植、膵臓移植、肺移植、骨移植、および肝臓移植などの移植拒絶反応のときに関与する因子などに由来する当業界において知られている抗原および自己免疫を誘発する抗原などを含んでいてもよい。
【0076】
したがって、本発明の表面発現方法により産生された目的タンパク質を様々な用途に供することができる。この用途には、抗体および酵素の効果的な産生があり、これらの他にも、抗原、付着または吸着タンパク質および新規な生理活性物質をスクリーニングするためのペプチドライブラリーの産生などが含まれる。
【0077】
さらに他の観点からみて、本発明は、(a)前記微生物表面発現用ベクターに目的タンパク質をコードする遺伝子を挿入して組換えベクターを製造するステップ;(b)前記組換えベクターでグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞を形質転換するステップ;及び(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して目的タンパク質を宿主細胞の表面に発現するステップ;を含むことを特徴とするグラム陰性またはグラム陽性宿主細胞の表面に目的タンパク質を発現する方法を提供する。
【0078】
具体的には、本発明は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のアルドラーゼ(aldolase)・プロモーター及びガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)・プロモーターを用いて、二種の目的タンパク質を微生物の表面に同時に発現する表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPを提供する。
【0079】
特に一実施形態によれば、ラクトバチルス・カゼイ由来のアルドラーゼ・プロモーター及びガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターを用いたが、ラクトバチルス・カゼイ由来のアルドラーゼ・プロモーター及びガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター遺伝子の塩基配列と80%以上の相同性を有する他の菌株由来のアルドラーゼ・プロモーター及びガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター遺伝子を用いてベクターを製造したり、外来タンパク質を表面発現したりすることも本発明の範囲に含まれる筈である。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、タンパク質が効率よく乳酸菌の表面に発現されるかどうかを調べるためにHPV由来のタンパク質であるE7及び強化緑色蛍光タンパク質(enhanced Green fluorescent protein;EGFP)をモデルタンパク質として選択して確認した。
【0081】
前記「HPV16E7」は、癌を引き起こす発癌性(oncogenic)HPV type16の遺伝子であり、すべてのE7タンパク質は、HPVを媒介とした細胞の不死化と細胞形質転換に関連している。E7タンパク質は、Rbタンパク質と直接結合して過剰リン酸化を誘導し、このようなHPV由来のタンパク質であるE7は、ひたすらHPVに感染した癌のみを殺すことができる特定のターゲットとしてHPVによって誘導された癌の治療における薬物標的として活用されている。また、前記「EGFP(enhanced Green fluorescent protein;強化緑色蛍光タンパク質)」は、生体内において緑色の光を発光して当該タンパク質を発現する細胞を容易に観察できるようにする遺伝子であって、蛍光顕微鏡で観察が可能であるという利点がある。GFPは、クラゲ(jellyfish:Aequorea Victoria)から起源する緑色蛍光タンパク質であって、色々な研究分野において遺伝子発現の重要なマーカーとして用いられている。EGFPは、GFPの突然変異体であって、そもそもGFPの64番目のフェニルアラニン(Phenylalanine)アミノ酸配列をロイシン(Leucine)に、かつ、65番目に位置しているセリン(Serine)アミノ酸配列はトレオニン(Threonine)に置き換えることにより、本来のGFPよりもさらに強い蛍光シグナルを発光するという利点がある。
【0082】
本発明者らは、前記製作された表面発現ベクターにHPV16E7及びEGFP遺伝子を挿入して表面発現ベクターを製作し、これを用いてラクトバチルス・カゼイを形質転換した後、培養して発現を誘導し、培養液を一定量採取してタンパク質を得た。得た前記タンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて分析し、抗EGFP及び抗HPV16E7抗体を用いてウェスタンブロッティング(western blotting)を行った結果、前記製作されたpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFP表面発現ベクターにタンパク質HPV16E7及びEGFPが成功的に挿入されて細胞の表面に同時発現されたことを確認した。
【0083】
前記実施形態においては、HPV16E7及びEGFPタンパク質を外来タンパク質として用いたが、その他の酵素、抗原、抗体、付着タンパク質または吸着タンパク質などいかなるタンパク質もまた外来タンパク質になり得るということはいうまでもない。
【0084】
また、本発明の表面発現ベクターによって発現される二種の異なる目的タンパク質は、菌体の表面に発現され、したがって、本発明の形質転換された微生物は、ワクチン(vaccine)として用いることができる。
【0085】
本発明は、さらに他の観点からみて、前記表面発現ベクターで形質転換された乳酸菌を用いることを特徴とする微生物ワクチンの製造方法に関するものである。
【0086】
ワクチンは、疾病に対する予防の目的で生有機物を用いて免疫システムを刺激するのに用いられる薬剤である。免疫活性化とは、有機体内において抗体の生成、T-リンパ球の刺激、または他の免疫細胞(例えば、大食細胞)を刺激して抗原を効率よく除去するための過程のことをいう。上記に関する詳しい免疫学の概観は、当業界における通常の技術を有する者にとって容易に理解される(Barrett,J. T.,Textbook of Immunology,1983)。
【0087】
抗原としての目的タンパク質を発現する形質転換された微生物ワクチンの投与の対象は哺乳動物であってもよく、さらに好ましくは、ヒトであってもよい。
【0088】
前記ワクチン組成物の製法は、標準技法を用いたものであってもよく、投与者に適した投与量は、遺伝子生成物の抗原性に応じて変わり、存在するワクチンの典型的な免疫反応を誘導するのに十分な量であればよく、日常的な実験過程を経て必要量を容易に判断することができる。典型的な初期のワクチンの容量は、体重1kg当たりに抗原0.001~1mgであり、好適なレベルの保護を提供するために、必要に応じて、量を増やしたり多重容量を用いたりする。上記の量は、当該技術分野に属する専門家により決定可能であり、製剤化方法、投与方式、投与者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性などの要因によっても様々に処方可能である。
【0089】
ワクチンが抗体を生成するに当たって効果的であるためには、抗原性物質がワクチン処理の施された対象の抗体生成機序が実現できるように体内に放出されなければならない。したがって、免疫反応のためには、遺伝子産物の微生物運搬体が体内に先に取り込まれなければならない。本発明の形質転換体において提示される抗原による好適な反応を刺激するためには、静脈注射、筋肉注射、皮下注射などの投与方法が採用可能であるが、経口投与、胃挿入により、または噴霧剤の形態で腸または肺に直接的に投与することが好ましい。
【0090】
ワクチン組成物を投与者に経口投与するためには、親液性の形態、例えば、カプセルの形態で提供されることが有用である。前記カプセルは、Eudragate S(登録商標)、Eudragate L(登録商標)、セルロースアセテート、セルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶被覆として提供される。前記カプセル類は、それ自体で用いてもよく、投与する前に懸濁液のように親液性物質を再組成して用いてもよい。再組成は、形質転換された微生物の生存に適したpHの緩衝液において行うことが効果的である。胃酸から前記形質転換された微生物およびワクチンを保護するために、毎回、ワクチンの投与前に重炭酸ナトリウム製剤を投与することが有用である場合がある。選択的に、ワクチンは、非経口投与、鼻内投与または乳腺内投与用に製造されてもよい。
【0091】
本発明のプロモーターを含み、抗原として作用できる目的タンパク質を発現する遺伝子を含有している形質転換された乳酸菌は、消化器官内の粘膜においてコロニーを形成しながら目的とする効能が得られるようにし、上記の乳酸菌が目的とする形質転換性質を保ち、円滑なコロニーの形成のためにベクター内の選択抗生物質を同時に投与してもよく、上記の手段をもって、形質転換体が分裂する過程にいて派生され得るベクターを有さない目的としない乳酸菌の発生を制御することができる。上記の選別方法は、当業界における通常の技術により容易に行われることができ、前記過程において使用できる選択抗生物質は、発現ベクター内に含まれている抗生物質遺伝子に応じて異なってくることがある。
【0092】
また、本発明は、下記の実施例4において製造された表面発現ベクター(pKV-Pald-PgsA-EGFP)を用いて乳酸菌宿主においてさらに安定的に高い発現率を示せるように、PgsAの遺伝子を断片とする改良を行った。
【0093】
まず、PgsA断片のうち、1-60 a.a、1-70 a.a、1-80 a.a、1-100 a.a、1-188 a.aを含むPgsA断片を確保するために、表面発現ベクター(pKV-Pald-PgsA-EGFP)を鋳型として用い、かつ、配列番号11~20のプライマーを用いてPCRを行って得た。
【0094】
その結果、アルドラーゼ・プロモーターを含み、それぞれのPgsA motif断片を含むDNA切片を確保した。なお、前記切片の5’末端にはSphI制限酵素が含まれており、前記切片の3’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれている。確保されたDNA切片にSphIとBamHIを処理して切片を確保した。なお、それぞれのPgsA1~A5 motif断片が配列番号21~25の塩基配列を有することを確認した。
【0095】
一方、PgsA断片のうち、25-60 a.a、25-70 a.a、25-100 a.aを含むPgsA断片を確保するために、表面発現ベクター(pKV-Pald-PgsA-EGFP)を鋳型として用い、かつ、配列番号26~31のプライマーを用いてPCRを行って得た。
【0096】
その結果、それぞれのPgsA motif断片を含むDNA切片を確保した。なお、前記切片の5’末端にはEcoRV制限酵素が含まれており、前記切片の3’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれている。確保されたDNA切片にEcoRVとBamHIを処理して切片を確保した。なお、それぞれのPgsA motif断片が配列番号32~34の塩基配列を有することを確認した。
【0097】
本発明は、微生物の表面に外来タンパク質を大量に発現できる新規な表面発現母体としてバチルス属菌株に由来したポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質を選択し、これを用いて外来タンパク質やペプチドを微生物の表面に発現できる表面発現ベクターを製造し、これにより形質転換された様々な形質転換体において外来タンパク質を効率よく形質転換体の表面に発現する方法を提供することを目的とする。
【0098】
前記目的を達成するために、本発明は、ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をなす遺伝子pgsAを含む微生物表面発現ベクターおよび前記ベクターにより形質転換された菌株を提供する。
【0099】
本発明は、また、前記目的を達成するために、前記微生物表面発現ベクターを用いて外来タンパク質を形質転換菌株の表面に発現する方法を提供する。
【0100】
遺伝子pgsAがコードするタンパク質は、バチルス属に存在する細胞外膜タンパク質であって、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis IFO3336;納豆菌;Biochem.Biophy.Research Comm.,263,6-12,1999)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis ATCC9945;Biotech.Bioeng.57(4),430-437,1998)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis;J.Bacteriology,171,722-730,1989)などから産生される食用、水溶性、陰イオン性、生分解性高分子物質であるポリガンマグルタミン酸の合成に関与するタンパク質である。
【0101】
納豆菌(Bacillus subtilis IFO3336)の場合、細菌から分離された細胞外膜タンパク質は、合計で922個のアミノ酸からなるタンパク質であって、pgsB、pgsCおよびpgsAからなっており、pgsBは393アミノ酸から、pgsCは149アミノ酸から、そしてpgsAは380アミノ酸から構成されている。アシウチ(Ashiuchi)らは、バチルス納豆菌由来のポリガンマグルタミン酸の合成遺伝子をクローニングし、大腸菌に形質転換して大腸菌におけるポリガンマグルタミン酸の合成を観察したことがある[Ashiuchi et al.,Biochem.Biophy.Res.Communications,263:6-12(1999)]。
【0102】
しかしながら、前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をなすタンパク質pgsAの具体的な役割および機能については未だ判明されていない。但し、複合体構成タンパク質のうち、pgsBは、アミドリガーゼ系であって、pgsBのN-末端の特異アミノ酸が細胞膜もしくは細胞壁と相互作用をし、pgsAの場合、N-末端とC-末端に親水性の特異アミノ酸配列を有していて、pgsBの援助とともにこれらのアミノ酸配列が細胞内膜を通過できる分泌シグナルと標的および付着シグナルを有していると推察される。
【0103】
本発明者らの研究の結果、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質は、そのアミノ酸一次配列の構造と特性からみて、外来タンパク質を細胞の表面に発現する表面発現母体として多くの利点を有していることが判明された:第一に、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質は、ポリガンマグルタミン酸の合成および細胞外への分泌のために細胞の表面に多量に発現でき、第二に、発現されたポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質は、細胞周期からみて、休止期においても安定的に保たれ、第三に、構造的に、特に、pgsAの場合、細胞の表面に突出されており、第四には、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質はその起源がグラム陽性細菌の表面であって、様々なグラム陽性細菌だけではなく、グラム陰性細菌の表面において安定的に発現できるなどの利点がある。
【0104】
本発明は、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質の特性を用いて外来タンパク質を細菌の表面に発現できる有用なベクターを提供するところにその目的がある。特に、本発明の目的タンパク質の表面発現ベクターは、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質の一次配列の上に有している分泌シグナルと標的シグナルを含む。
【0105】
また、本発明は、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質の特性を用いた表面発現ベクターを用いて外来タンパク質を微生物の表面に発現する方法を提供するところにその目的がある。特に、本発明は、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質を用いて外来タンパク質を微生物の表面に発現することにより、細胞の破砕またはタンパク質の分離精製過程を経ずとも効率よく外来タンパク質を利用できる外来タンパク質の製造方法を提供する。
【0106】
バチルス属菌株に由来したポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質をはじめとするあらゆる種類のポリガンマグルタミン酸の合成に関与する遺伝子を用いた表面発現ベクターは、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【0107】
また、本発明のポリガンマグルタミン酸の合成遺伝子を用いた表面発現ベクターは、外来タンパク質を微生物の表面に発現するためにあらゆる菌株に適用することができ、好ましくは、グラム陰性細菌、さらに好ましくは、大腸菌、サルモネラ・ティフィ、サルモネラ・ティフィムリウム、ビブリオ・コレラ(コレラ菌)、マイコバクテリウム・ボビス(ウシ型結核菌)、赤痢菌、およびグラム陽性細菌、好ましくは、バチルス、ラクトバチルス、ラクトコッカス、スタフィロコッカス(ブドウ球菌)、リステリア・モノサイトゲネス、ストレプトコッカス(レンサ球菌)菌株などに適用することができる。前記菌株を用いたあらゆる外来タンパク質の製造方法は、本発明の範囲に含まれる。
【0108】
必要に応じて、ポリガンマグルタミン酸の合成遺伝子のN-末端もしくはC-末端に全部または一部の制限酵素の様々な認識部位を挿入してもよく、これらの制限酵素部位が挿入された表面発現ベクターは、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【0109】
具体的に、本発明は、バチルス属菌株に由来したポリガンマグルタミン酸合成遺伝子であるpgsAを含み、pgsAのC-末端に制限酵素認識部位を挿入して様々な外来タンパク質遺伝子を手軽にクローニングできる表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA1~pKV-Pald-pgsA8を提供する。
【0110】
本発明は、ポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質の複合体のうち、細胞外膜タンパク質の複合体であるpgsAから構成されてpgsAのC-末端にEGFPタンパク質のN-末端を連結して、EGFPタンパク質を融合タンパク質の形態でグラム陽性菌の表面に発現し得る表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA1~pKV-Pald-pgsA8を提供する。
【0111】
特に、一実施形態によれば、バチルス・サブチルス・チョンクッジャン(Bacillus subtilis var.chungkookjang,KCTC0697BP)からポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質の遺伝子pgsAを取得したが、遺伝子は、ポリガンマグルタミン酸を産生するあらゆるバチルス属菌株からpgsAを取得してベクターを製造したり、外来タンパク質を表面発現したりすることも本発明の範囲に含まれる筈である。例えば、バチルス・サブチルス・チョンクッジャンに存在するpgsA遺伝子の塩基配列と80%以上の相同性を有する他の菌株由来のpgsA遺伝子を用いてベクターを製造したり、外来タンパク質を表面発現したりすることも本発明の範囲に含まれる筈である。
【0112】
本発明の別の実施形態によれば、タンパク質が効率よく大腸菌細胞の表面に発現されるかどうかを調べるために強化緑色蛍光タンパク質(enhanced Green fluorescent protein;EGFP)をモデルタンパク質として選択して確認した。「EGFP(enhanced Green fluorescent protein;強化緑色蛍光タンパク質)遺伝子」は、生体内において緑色の光を発光して当該タンパク質を発現する細胞を容易に観察できるようにする遺伝子であって、蛍光顕微鏡で観察が可能であるという利点がある。GFPは、クラゲ(jellyfish:Aequorea Victoria)から起源する緑色蛍光タンパク質であって、色々な研究分野において遺伝子発現の重要なマーカーとして用いられている。EGFPは、GFPの突然変異体であって、そもそもGFPの64番目のフェニルアラニン(Phenylalanine)アミノ酸配列をロイシン(Leucine)に、かつ、65番目に位置しているセリン(Serine)アミノ酸配列はトレオニン(Threonine)に置き換えることにより、本来のGFPよりもさらに強い蛍光シグナルを発光するという利点がある。
【0113】
本発明者らは、前記製作されたpKV-Pald-pgsA1~pKV-Pald-pgsA8組換えベクターにEGFP遺伝子を挿入して表面発現ベクターを製作し、これを用いてラクトバチルス・カゼイを形質転換した後、培養して発現を誘導し、培養液を一定量採取してタンパク質を得た。得た前記タンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて分析し、抗EGFP抗体を用いてウェスタンブロッティング(western blotting)を行った結果、前記製作されたpKV-Pald-pgsA1~pKV-Pald-pgsA8組換えベクターにタンパク質EGFPが成功的に挿入されて細胞の表面に発現されたことを確認した。
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものにすぎず、本発明の要旨に基づいて、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0115】
また、下記の実施例においては、EGFPタンパク質を外来タンパク質として用いたが、その他の酵素、抗原、抗体、付着タンパク質または吸着タンパク質などいかなるタンパク質もまた外来タンパク質になり得るということはいうまでもない。
【0116】
また、下記の実施例においては、グラム陽性菌に適用される表面発現ベクターを製造し、宿主細胞としてラクトバチルス・カゼイを用いたが、ラクトバチルス・カゼイ以外のいかなるグラム陽性菌もまた宿主細胞として活用することができ、グラム陽性菌の他にいかなるグラム陰性菌およびその他の細菌で形質転換することもまた当業者にとって自明であるといえる。
【0117】
実施例1:二重抗原同時表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPの構築
前記二重抗原同時表面発現ベクターを製造するために、pKV-Pald-pgsA-E7(pKV-Pald-pgsA380L-HPV16E7、大韓民国登録特許第10-1471043号参照)から製造された表面発現ベクターを用いて、Pald-pgsA-HPV16E7のC-端末にPgm-pgsA-EGFPをコードする遺伝子を挿入して乳酸菌において二種の目的タンパク質を同時表面発現できるベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPを確保した。
【0118】
まず、EGFP発現ベクターを製造するために、pKV-Pald-PgsA-E7(大韓民国登録特許第10-1471043号参照)からpgsAと融合されたHPV16 E7遺伝子を除去し、EGFPをコードする遺伝子を挿入した。
【0119】
合成EGFP遺伝子断片を鋳型として用い、かつ、配列番号3と配列番号4をプライマーとして用いてPCRを行った。
【0120】
配列番号3:
5’-TGGTGGATCCGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG-3’
【0121】
配列番号4:
5’-TGACTCTAGAACTAGTGTCGACGGTACCTTACTTGTACAGCTCGTCC-3’
【0122】
その結果、5’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれており、3’末端にはXbaI制限酵素部位が含まれているEGFP遺伝子755bpの切片を確保した。確保されたDNA切片にBamHIとXbaI制限酵素を処理し、pKV-Pald-PgsA-E7をBamHIとXbaIで切断してHPV16 E7遺伝子部分を除去した後、EGFP遺伝子と切断したベクターとを連結してpKV-Pald-pgsA-EGFPを完成した。
【0123】
そして、pKV-Pald-pgsA-EGFPベクターにおいてアルドラーゼ・プロモーターをガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターに置換するために、ラクトバチルス・カゼイのゲノムにおいて配列番号5と配列番号6をプライマーとして用いてPCRを行い、5’末端にはSphI制限酵素部位が含まれ、3’末端にはXbaI制限酵素部位が含まれているガラクトース・ムタロターゼ・プロモーター切片を得た。確保されたDNA切片にSphIとXbaI制限酵素を処理し、pKV-Pald-pgsA-EGFPをも同じ制限酵素で切断してアルドラーゼ・プロモーター部分を除去した後、ガラクトース・ムタロターゼ・プロモーターと切断したベクターとを連結してpKV-Pgm-pgsA-EGFPを完成した。
【0124】
配列番号5:
5’-TACGGCATGCTTGAATTGGTTTCTTACGAT-3’
【0125】
配列番号6:
5’-TACGCTCGAGGTTGAATTACCTCCTAATAG-3’
【0126】
最終的にpKV-Pald-pgsA-E7ベクターE7部位のC-端末にPgm-pgsA-EGFPを挿入するためにpKV-Pgm-pgsA-EGFPベクターを鋳型として用い、かつ、配列番号7と配列番号8をプライマーとして用いてPCRを行った。
【0127】
配列番号7:
5’-GCGCGAATTCTTGAATTGGTTTCTTACGA-3’
【0128】
配列番号8:
5’-GCGCTGCGCATTACTTGTACAGCTCGTC-3’
【0129】
その結果、Pgm-pgsA-EGFP遺伝子が含まれている2608bpの切片を確保した。なお、前記切片の5’末端には、EcoRI制限酵素部位を含んでおり、前記切片の3’末端にはFspI制限酵素部位が含まれている。前記確保されたDNA切片を、8563bp切片のpKV-Pald-pgsA-HPV16E7表面発現ベクターのEcoRI及びFspI制限酵素部位を用いてPgm-pgsA-EGFPをコードする遺伝子を挿入して、1,1171bp切片のpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFPを完成した(
図1及び
図2)。
【0130】
実施例2:ウェスタンブロッティングを用いた二種の目的タンパク質の発現確認
この実施例においては、実施例1において製作されたpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFP表面発現ベクターでラクトバチルス・カゼイを形質転換し、前記形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイを培養してHPV16E7及びEGFPタンパク質の発現を確認した。前記形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイにおけるHPV16E7及びEGFPタンパク質の発現有無を、ウェスタンブロッティングを用いて調べた。
【0131】
本発明の表面発現ベクターで形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイをMRS培地(Lactobacillus MRS,米国ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー(BD)社製)、30℃において静置培養してHPV16E7及びEGFPタンパク質の表面発現を誘導した。
【0132】
前記培養されたラクトバチルス・カゼイの全細胞に対して、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびpgsA、HPV16E7、EGFPのそれぞれに対する特異抗体を用いたウェスタンブロッティングを行って前記融合タンパク質の発現を確認した。
【0133】
具体的に、発現が誘導された形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイの全細胞を同じ細胞濃度で得たタンパク質で変性(denature)させて試料を用意し、これをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析した後、分画されたタンパク質を二フッ化ポリビニリデン(PVDF:polyvinylidene-difluoride membranes,Bio-Rad社製)メンブレンに移した。タンパク質の移されたPVDFメンブレンをブロッキング緩衝液(50mM Tris-HCl,5%脱脂乳(skim milk),pH 8.0)において1時間ブロッキングした後、pgsA、HPV16E7およびEGFPのそれぞれに対する各ウサギ由来のポリクローン1次抗体をブロッキング緩衝溶液に1000倍希釈して1時間反応させた。反応が終わったメンブレンは緩衝溶液で洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:Horseradish Peroxidase)が接合されたウサギ由来抗体に対する2次抗体をブロッキング緩衝溶液に10000倍希釈して1時間反応させた。反応が終わったメンブレンは緩衝溶液で洗浄し、洗浄されたメンブレンに基質(Lumigen PS-3 acridan,H
20
2)を添加して約2分間発色させ、CCD(電荷結合素子)カメラでpgsA、HPV16E7、EGFPのそれぞれに対する特異抗体と前記融合タンパク質との間の特異的な結合を確認した(
図3)。
【0134】
図3は、本発明の細胞表面発現ベクターで形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイの全細胞においてpgsA、HPV16 E7、EGFPの発現量を確認するためにウェスタンブロッティングを行った結果を示すものである。それぞれ、レーンSMは、タンパク質サイズマーカー、レーン1は、ラクトバチルス・カゼイ(空きベクター)、レーン2は、ラクトバチルス・カゼイ(pKV-Pald-pgsA)、レーン3は、ラクトバチルス・カゼイ(pKV-Pald-pgsA-HPV16E7)、レーン4は、ラクトバチルス・カゼイ(pKV-Pgm-pgsA-EGFP)、レーン5は、ラクトバチルス・カゼイ(pKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFP)の発現を示す。
【0135】
目的タンパク質の単一表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA-HPV16E7(レーン3)及びpKV-Pgm-pgsA-EGFP(レーン4)と比べて、本発明のpKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFP(レーン5)表面発現ベクターにおいて二種の目的タンパク質が効果的に同時発現されることを確認した。これは、互いに異なる二種のプロモーターがそれぞれ独立して表面発現ベクター内において互いに干渉せず目的タンパク質を安定的に同時発現することができるということを示唆する。
【0136】
実施例3:共焦点蛍光顕微鏡を用いた両目的タンパク質の微生物表面発現の確認
本発明の表面発現ベクターの発現の度合いを確認するために蛍光イメージを共焦点顕微鏡(Confocal microscopy,Carl Zeiss LSM800)を用いて観察した。
【0137】
本発明の表面発現ベクター(pKV-Pald-pgsA-HPV16E7_Pgm-pgsA-EGFP)で形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイをMRS培地(Lactobacillus MRS,米国ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー(BD)社製)、30℃において静置培養してHPV16E7及びEGFPタンパク質の表面発現を誘導した。そして、それぞれの特異抗体で結合した後、HPV16 E7はAlexa594(red)で、EGFPはAlexa488(green)でそれぞれ免疫染色して共焦点顕微鏡で各抗原の細胞表面発現を確認した。
【0138】
その結果、
図4に示すように、本発明の表面発現ベクターで形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイにおいて安定的に2色の蛍光が同時に発現されることを確認することができた。
【0139】
したがって、本発明の表面発現ベクターは、乳酸菌への形質転換を通じて、通常のワクチンの製造方法とは異なり、菌株の非毒性化または無毒性化の段階が求められないそれぞれ異なる二種の目的タンパク質を同時により短い時間で効率よく発現する方法で活用できることが期待される。
【0140】
実施例4:表面発現ベクターpKV-Pald-pgsA-EGFPの製造
前記EGFP発現ベクターを製造するために、pKV-Pald-PgsA-E7(大韓民国登録特許第10-1471043号参照)から製造された表面発現ベクターを用いて、PgsAのC-末端にEGFPタンパク質をコードする遺伝子を挿入して乳酸菌において表面発現できるベクターpKV-Pald-PgsA-EGFPを確保した。
【0141】
まず、pKV-Pald-PgsA-E7ベクターからpgsAと融合されたHPV16 E7遺伝子を除去し、EGFPをコードする遺伝子を挿入した。合成EGFP遺伝子断片を鋳型として用い、かつ、配列番号9と配列番号10をプライマーとして用いてPCRを行って得た。
【0142】
配列番号9:
5’-TGGTGGATCCGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTG-3’
【0143】
配列番号10:
5’-TGACTCTAGAACTAGTGTCGACGGTACCTTACTTGTACAGCTCGTCC-3’
【0144】
その結果、EGFP遺伝子を含んでいる755bpの切片を確保した。なお、前記切片の5’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれており、前記切片の3’末端にはXbaI制限酵素部位が含まれている。確保されたDNA切片にBamHIとXbaI制限酵素を処理して切断して741bp切片を確保した。
【0145】
pKV-Pald-PgsA-E7をBamHIとXbaIで切断してHPV16 E7遺伝子部分を除去し、ベクター部分を確保した。
【0146】
BamHIとXbaIで切断したE7遺伝子を含有しているDNA断片を同じ制限酵素で切断したベクターと連結してpKV-Pald-PgsA-EGFPを完成した(
図5)。
【0147】
実施例5:表面発現ベクターPgsA motifの改良
この実施例においては、実施例4において製造された表面発現ベクター(pKV-Pald-PgsA-EGFP)を用いて乳酸菌宿主においてさらに安定的に高い発現率を示し得るようにPgsAの遺伝子を断片とする改良を行った。
【0148】
まず、PgsA断片のうち、1-60 a.a、1-70 a.a、1-80 a.a、1-100 a.a、1-188 a.aを含むPgsA断片を確保するために、表面発現ベクター(pKV-Pald-PgsA-EGFP)を鋳型として用い、かつ、以下のプライマーを用いてPCRを行って得た。
【0149】
PgsA motif 1-60 a.a
【0150】
配列番号11:
5’-TCGAGCATGCAATACCCACTTATTGCGATTTGCT-3’
【0151】
配列番号12:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTGAGAGTACGTCGTCAGAATACGTT-3’
【0152】
PgsA motif 1-70 a.a
【0153】
配列番号13:
5’-TCGAGCATGCAATACCCACTTATTGCGATTTGCT-3’
【0154】
配列番号14:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTCCCATCATAATATCGCCTACAAAT-3’
【0155】
PgsA motif 1-80 a.a
【0156】
配列番号15:
5’-TCGAGCATGCAATACCCACTTATTGCGATTTGCT-3’
【0157】
配列番号16:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTTTTTGCTCCGTTACTTTTTCAACA-3’
【0158】
PgsA motif 1-100 a.a
【0159】
配列番号17:
5’-TCGAGCATGCAATACCCACTTATTGCGATTTGCT-3’
【0160】
配列番号18:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTGCTACATAATCCGAGGCTCTAAAG-3’
【0161】
PgsA motif 1-188 a.a
【0162】
配列番号19:
5’-TCGAGCATGCAATACCCACTTATTGCGATTTGCT 3’
【0163】
配列番号20:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCGACTTTCTGGTACGAAATTTTCTTT-3’
【0164】
その結果、アルドラーゼ・プロモーターを含み、それぞれのPgsA motif断片を含むDNA切片を確保した。なお、前記切片の5’末端にはSphI制限酵素が含まれており、前記切片の3’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれている。確保されたDNA切片にSphIとBamHIを処理して切片を確保した。また、それぞれのPgsA1~A5 motif断片が以下のような塩基配列を有することを確認した。
【0165】
PgsA 1-60 a.a断片配列(PgsA1)
【0166】
配列番号21:
5’-ATGAAAAAAGAACTGAGCTTTCATGAAAAGCTGCTAAAGCTGACAAAACAGCAAAAAAAGAAAACCAATAAGCACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCA-3’
【0167】
PgsA 1-70 a.a断片配列(PgsA2)
【0168】
配列番号22:
5’-ATGAAAAAAGAACTGAGCTTTCATGAAAAGCTGCTAAAGCTGACAAAACAGCAAAAAAAGAAAACCAATAAGCACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCAGCCTCATTTGTAGGCGATATTATGATGGGA-3’
【0169】
PgsA 1-80 a.a断片配列(PgsA3)
【0170】
配列番号23:
5’-ATGAAAAAAGAACTGAGCTTTCATGAAAAGCTGCTAAAGCTGACAAAACAGCAAAAAAAGAAAACCAATAAGCACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCAGCCTCATTTGTAGGCGATATTATGATGGGACGCTATGTTGAAAAAGTAACGGAGCAAAAA-3’
【0171】
PgsA 1-100 a.a断片配列(PgsA4)
【0172】
配列番号24:
5’-ATGAAAAAAGAACTGAGCTTTCATGAAAAGCTGCTAAAGCTGACAAAACAGCAAAAAAAGAAAACCAATAAGCACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCAGCCTCATTTGTAGGCGATATTATGATGGGACGCTATGTTGAAAAAGTAACGGAGCAAAAAGGGGCAGACAGTATTTTTCAATATGTTGAACCGATCTTTAGAGCCTCGGATTATGTAGCA-3’
【0173】
PgsA 1-188 a.a断片配列(PgsA5)
【0174】
配列番号25:
5’-ATGAAAAAAGAACTGAGCTTTCATGAAAAGCTGCTAAAGCTGACAAAACAGCAAAAAAAGAAAACCAATAAGCACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCAGCCTCATTTGTAGGCGATATTATGATGGGACGCTATGTTGAAAAAGTAACGGAGCAAAAAGGGGCAGACAGTATTTTTCAATATGTTGAACCGATCTTTAGAGCCTCGGATTATGTAGCAGGAAACTTTGAAAACCCGGTAACCTATCAAAAGAATTATAAACAAGCAGATAAAGAGATTCATCTGCAGACGAATAAGGAATCAGTGAAAGTCTTGAAGGATATGAATTTCACGGTTCTCAACAGCGCCAACAACCACGCAATGGATTACGGCGTTCAGGGCATGAAAGATACGCTTGGAGAATTTGCGAAGCAAAACCTTGATATCGTTGGAGCGGGATACAGCTTAAGTGATGCGAAAAAGAAAATTTCGTACCAGAAAGTC-3’
【0175】
前記pKV-Pald-PgsA-EGFPをSphIとBamHIで切断してアルドラーゼ・プロモーターとPgsA遺伝子部分を除去したベクター部分を確保した。
【0176】
SphIとBamHIで切断したアルドラーゼ・プロモーターを含み、それぞれのPgsA motif断片遺伝子を含有しているDNA断片を同じ制限酵素で切断したベクターと連結して改良されたベクターを完成した(
図6から
図10)。
【0177】
一方、PgsA断片のうち、25-60 a.a、25-70 a.a、25-100 a.aを含むPgsA断片を確保するために、表面発現ベクター(pKV-Pald-PgsA-EGFP)を鋳型として用い、かつ、以下のプライマーを用いてPCRを行って得た。
【0178】
PgsA motif 25-60 a.a
【0179】
配列番号26:
5’-CGCTGGATATCTACATGCACGTATTTATTGCCATTCCG-3’
【0180】
配列番号27:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTGAGAGTACGTCGTCAGAATACGTT-3’
【0181】
PgsA motif 25-70 a.a
【0182】
配列番号28:
5’-CGCTGGATATCTACATGCACGTATTTATTGCCATTCCG-3’
【0183】
配列番号29:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTCCCATCATAATATCGCCTACAAAT-3’
【0184】
PgsA motif 25-100 a.a
【0185】
配列番号30:
5’-CGCTGGATATCTACATGCACGTATTTATTGCCATTCCG-3’
【0186】
配列番号31:
5’-TACGGGATCCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCAGAACCACCTGCTACATAATCCGAGGCTCTAAAG-3’
【0187】
その結果、それぞれのPgsA motif断片を含むDNA切片を確保した。なお、前記切片の5’末端にはEcoRV制限酵素が含まれており、前記切片の3’末端にはBamHI制限酵素部位が含まれている。確保されたDNA切片にEcoRVとBamHIを処理して切片を確保した。また、それぞれのPgsA motif断片が以下のような塩基配列を有することを確認した。
【0188】
PgsA25-60 a.a断片配列(PgsA6)
【0189】
配列番号32:
5’-CACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCA-3’
【0190】
PgsA25-70 a.a断片配列(PgsA7)
【0191】
配列番号33:
5’-CACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCAGCCTCATTTGTAGGCGATATTATGATGGGA-3’
【0192】
PgsA25-100 a.a断片配列(PgsA8)
【0193】
配列番号34:
5’-CACGTATTTATTGCCATTCCGATCGTTTTTGTCCTTATGTTCGCTTTCATGTGGGCGGGAAAAGCGGAAACGCCGAAGGTCAAAACGTATTCTGACGACGTACTCTCAGCCTCATTTGTAGGCGATATTATGATGGGACGCTATGTTGAAAAAGTAACGGAGCAAAAAGGGGCAGACAGTATTTTTCAATATGTTGAACCGATCTTTAGAGCCTCGGATTATGTAGCA-3’
【0194】
pKV-Pald-PgsA-EGFPをEcoRVとBamHIで切断してPgsA遺伝子部分を除去したベクター部分を確保した。
【0195】
EcoRVとBamHIで切断したそれぞれのPgsA motif断片遺伝子を含有しているDNA断片を同じ制限酵素で切断したベクターと連結して改良されたベクターを完成した(
図11から
図13)。
【0196】
実施例6:PgsA motif改良表面発現ベクター形質転換体の発現確認
この実施例においては、実施例2において製作されたPgsA motif改良表面発現ベクターにラクトバチルス・カゼイを形質転換し、前記形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイを培養してEGFPタンパク質の発現を確認した。形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイで改良された断片pgsA1~A8のうちのいずれか一つと融合されたEGFPタンパク質の発現するかどうかを調査した。
実施例6:PgsA motif改良表面発現ベクター形質転換体の発現の確認
この実施例においては、実施例2において製作されたPgsA motif改良表面発現ベクターでラクトバチルス・カゼイを形質転換し、前記形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイを培養してEGFPタンパク質の発現を確認した。形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイにおいて改良された断片pgsA1~A8のうちのいずれか一つと融合されたEGFPタンパク質の発現有無を調べた。
【0197】
PgsA motif断片表面発現ベクターで形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイをMRS培地(Lactobacillus MRS,米国ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー(BD)社製)、30℃において静置培養してポリガンマグルタミン酸を合成する遺伝子断片pgsA1~A8のうちのいずれか一つのC-末端と融合されたEGFPタンパク質の表面発現を誘導した。
【0198】
前記培養されたラクトバチルス・カゼイの全細胞に対して、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびEGFPに対する特異抗体を用いたウェスタンブロッティングを行って前記融合タンパク質の発現を確認した。
【0199】
具体的に、発現が誘導された形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイの全細胞を同じ細胞において得たタンパク質で変性(denature)させて試料を用意し、これをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析した後、分画されたタンパク質をPVDF(polyvinylidene-difluoride membranes;Bio-Rad社製)メンブレンに移した。タンパク質の移されたPVDFメンブレンをブロッキング緩衝溶液(50mMトリス塩酸、5%脱脂乳(skim milk)、pH 8.0)において1時間振とうしてブロッキングした後、EGFPに対するウサギ由来のポリクローン1次抗体をブロッキング緩衝溶液に1000倍希釈して1時間反応させた。反応が終わったメンブレンは緩衝溶液で洗浄し、HRPが接合されたウサギに対する2次抗体をブロッキング緩衝溶液に10000倍希釈して1時間反応させた。反応が終わったメンブレンは緩衝溶液で洗浄し、洗浄されたメンブレンに基質(lumigen PS-3 acridan,H
20
2)を添加して約2分間発色させ、CCDカメラでEGFPに対する特異抗体と前記融合タンパク質との間の特異的な結合を確認した(
図14)。
【0200】
図14は、本発明と比較して対照群として設定された未改良のpgsAが挿入されたpKV-Pald-pgsA組換え発現ベクターに伴うラクトバチルス・カゼイにおける発現様相(レーン6および11)および本発明に係る改良されたpgsA1~A8が挿入されたpKV-Pald-pgsA1~A8組換え発現ベクターに伴うラクトバチルス・カゼイにおける発現様相(レーン1~5およびレーン7~10)を示す。
【0201】
具体的に、
図14のレーン1は、PgsA motif 1-60 a.aにEGFPを発現した形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイであり、レーン2は、PgsA motif 1-70 a.a、レーン3は、PgsA motif 1-80 a.a、レーン4は、PgsA motif 1-100 a.aにEGFPが形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイの発現である。レーン5は、PgsA motif 1-188 a.aにEGFPが形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイのタンパク質の発現を示す。レーン6は、pKV-Pald-PgsA-EGFPが形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイのタンパク質の発現を示す。
【0202】
また、
図14のレーン7は、PgsA motif 25-60 a.aにEGFPを発現した形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイであり、レーン8は、PgsA motif 25-70 a.a、レーン9は、PgsA motif 25-100 a.aにEGFPが形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイの発現である。レーン10は、PgsA motif 1-188 a.aにEGFPが形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイのタンパク質の発現を示す。レーン11は、pKV-Pald-PgsA-EGFPが形質転換された組換えラクトバチルス・カゼイのタンパク質の発現を示す。
【0203】
未改良のpKV-Pald-pgsA-EGFP表面発現ベクターによるEGFP融合タンパク質の発現と比較すれば、改良されたPgsA motif断片を含むEGFP融合タンパク質がさらに強く発現されることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のアルドラーゼ(aldolase)・プロモーターとガラクトース・ムタロターゼ(galactose mutarotase)・プロモーターを用いて二種の目的タンパク質を微生物の表面に同時に発現するベクターと、これらのベクターに形質転換された微生物、およびバチルス属菌株由来のポリガンマグルタミン酸の合成に関与する細胞外膜タンパク質(pgsA)を用いて外来タンパク質を微生物の表面に効果的に発現する新規なベクターに関するものであり、本発明に係る表面発現ベクターは、一つのベクター中に異なる二つのプロモーター、表面発現のためのポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子、および前記ポリガンマグルタミン酸合成酵素複合体遺伝子と連結される目的タンパク質をコードする遺伝子が存在するため、従来の発明に比べて、一つのベクターで二種の目的タンパク質を同時に発現することができ、同時に、前記表面発現ベクターで形質転換された微生物を用いるため、二回の形質転換の過程で起こり得る変形の可能性を最小限に抑えることができるという利点があり、また、本発明は、一つのベクター中に異なる二つのプロモーターが存在し、従来の発明に比べて、より短い時間で効率よく目的タンパク質を発現することができ、これを用いて高い薬剤の可能性を有する物質を早期に選別し、一つの表面発現ベクターで二種の目的タンパク質を発現することにより、薬剤開発のコストを劇的に減少させる効果に優れているという点で、産業上の利用可能性が認められると言えるであろう。
[配列目録フリーテキスト]
配列番号1
5’-ccatgcaata cccacttatt gcgatttgct tttctattag ttagcatttt aaattgtgaa acgtgccact tataaacaaa tttccgtctt ctttttatga gagtaatctc atttaatctt gactaaatat ccgattgcgg tcacacaact accagtttca aacaaatttc aatttgatgg tcatttttta ttttgtcggc aaaaagtgag caaatcagta gcattttccc tgattacggg gtacattcaa agtgactttg cgtacacaca gacatatgta tgacgggtgt tataaaaagc cgtcacgctg ctcgagtagc tctcatcatt ttctcgccct tttctcccgc aacatatgat aaaatacaac ggttgtgaat tgtttatttc ctaggaggat atctac-3’
配列番号2
5’-aattcagcaa gccgcaatac aatgtttctg ttttgaagct tgaagttcca gttgatcaaa agtttgttga aggctacacc gatgacggcg ttacccctgt ttacagcaag gaagaagccg ctaagtatta caaggaacag tcagatgcaa cggatctccc attcatcttc ctgtccgctg gtgtcaccaa cgaattgttc cttgaagaac tcaagtttgc taagcaagca ggttcagcct ttaatggtgt tctctgtggc cgtgcaactt ggaagccggg tgttaagcca tatgctgctg aaggcgaagc tgctggtaag aagtggctgc agaccgaagg caaggctaac attgatcgtt tgaacaaggt gcttgcagaa actgcaaccc cttggactga caaagttgaa ggttaatctt taaccatagt tgcaagaaag gaccgattat gatgatcggt tcttttttta tgactgcgga catgtttttg tgaccactgc aaacatcaaa atgaagttcg aaaaacttgc taacaatcat tacaggtcag tgatccagtg gtagactggt attgaatgcg ttttcgtcta ttaggaggta attcaac-3’
配列番号3
5’-tggtggatcc gtgagcaagg gcgaggagct g-3’
配列番号4
5’-tgactctaga actagtgtcg acggtacctt acttgtacag ctcgtcc-3’
配列番号5
5’-tacggcatgc ttgaattggt ttcttacgat-3’
配列番号6
5’-tacgctcgag gttgaattac ctcctaatag-3’
配列番号7
5’-gcgcgaattc ttgaattggt ttcttacga-3’
配列番号8
5’-gcgctgcgca ttacttgtac agctcgtc-3’
配列番号9
5’-tggtggatcc gtgagcaagg gcgaggagct g-3’
配列番号10
5’-tgactctaga actagtgtcg acggtacctt acttgtacag ctcgtcc-3’
配列番号11
5’-tcgagcatgc aatacccact tattgcgatt tgct-3’
配列番号12
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct gagagtacgt cgtcagaata cgtt-3’
配列番号13
5’-tcgagcatgc aatacccact tattgcgatt tgct-3’
配列番号14
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct cccatcataa tatcgcctac aaat-3’
配列番号15
5’-tcgagcatgc aatacccact tattgcgatt tgct-3’
配列番号16
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct ttttgctccg ttactttttc aaca-3’
配列番号17
5’-tcgagcatgc aatacccact tattgcgatt tgct-3’
配列番号18
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct gctacataat ccgaggctct aaag-3’
配列番号19
5’-tcgagcatgc aatacccact tattgcgatt tgct-3’
配列番号20
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccaccg actttctggt acgaaatttt cttt-3’
配列番号21
5’-atgaaaaaag aactgagctt tcatgaaaag ctgctaaagc tgacaaaaca gcaaaaaaag aaaaccaata agcacgtatt tattgccatt ccgatcgttt ttgtccttat gttcgctttc atgtgggcgg gaaaagcgga aacgccgaag gtcaaaacgt attctgacga cgtactctca-3’
配列番号22
5’-atgaaaaaag aactgagctt tcatgaaaag ctgctaaagc tgacaaaaca gcaaaaaaag aaaaccaata agcacgtatt tattgccatt ccgatcgttt ttgtccttat gttcgctttc atgtgggcgg gaaaagcgga aacgccgaag gtcaaaacgt attctgacga cgtactctca gcctcatttg taggcgatat tatgatggga-3’
配列番号23
5’-atgaaaaaag aactgagctt tcatgaaaag ctgctaaagc tgacaaaaca gcaaaaaaag aaaaccaata agcacgtatt tattgccatt ccgatcgttt ttgtccttat gttcgctttc atgtgggcgg gaaaagcgga aacgccgaag gtcaaaacgt attctgacga cgtactctca gcctcatttg taggcgatat tatgatggga cgctatgttg aaaaagtaac ggagcaaaaa-3’
配列番号24
5’-atgaaaaaag aactgagctt tcatgaaaag ctgctaaagc tgacaaaaca gcaaaaaaag aaaaccaata agcacgtatt tattgccatt ccgatcgttt ttgtccttat gttcgctttc atgtgggcgg gaaaagcgga aacgccgaag gtcaaaacgt attctgacga cgtactctca gcctcatttg taggcgatat tatgatggga cgctatgttg aaaaagtaac ggagcaaaaa ggggcagaca gtatttttca atatgttgaa ccgatcttta gagcctcgga ttatgtagca-3’
配列番号25
5’-atgaaaaaag aactgagctt tcatgaaaag ctgctaaagc tgacaaaaca gcaaaaaaag aaaaccaata agcacgtatt tattgccatt ccgatcgttt ttgtccttat gttcgctttc atgtgggcgg gaaaagcgga aacgccgaag gtcaaaacgt attctgacga cgtactctca gcctcatttg taggcgatat tatgatggga cgctatgttg aaaaagtaac ggagcaaaaa ggggcagaca gtatttttca atatgttgaa ccgatcttta gagcctcgga ttatgtagca ggaaactttg aaaacccggt aacctatcaa aagaattata aacaagcaga taaagagatt catctgcaga cgaataagga atcagtgaaa gtcttgaagg atatgaattt cacggttctc aacagcgcca acaaccacgc aatggattac ggcgttcagg gcatgaaaga tacgcttgga gaatttgcga agcaaaacct tgatatcgtt ggagcgggat acagcttaag tgatgcgaaa aagaaaattt cgtaccagaa agtc-3’
配列番号26
5’-cgctggatat ctacatgcac gtatttattg ccattccg-3’
配列番号27
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct gagagtacgt cgtcagaata cgtt-3’
配列番号28
5’-cgctggatat ctacatgcac gtatttattg ccattccg-3’
配列番号29
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct cccatcataa tatcgcctac aaat-3’
配列番号30
5’-cgctggatat ctacatgcac gtatttattg ccattccg-3’
配列番号31
5’-tacgggatcc accagaacca ccagaaccac cagaaccacc agaaccacct gctacataat ccgaggctct aaag-3’
配列番号32
5’-cacgtattta ttgccattcc gatcgttttt gtccttatgt tcgctttcat gtgggcggga aaagcggaaa cgccgaaggt caaaacgtat tctgacgacg tactctca-3’
配列番号33
5’-cacgtattta ttgccattcc gatcgttttt gtccttatgt tcgctttcat gtgggcggga aaagcggaaa cgccgaaggt caaaacgtat tctgacgacg tactctcagc ctcatttgta ggcgatatta tgatggga-3’
配列番号34
5’-cacgtattta ttgccattcc gatcgttttt gtccttatgt tcgctttcat gtgggcggga aaagcggaaa cgccgaaggt caaaacgtat tctgacgacg tactctcagc ctcatttgta ggcgatatta tgatgggacg ctatgttgaa aaagtaacgg agcaaaaagg ggcagacagt atttttcaat atgttgaacc gatctttaga gcctcggatt atgtagca-3’
【配列表】