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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】高周波樹脂組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20221104BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20221104BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20221104BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20221104BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C08L71/12
C08K5/00
C08L9/00
C08L35/06
C08L53/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021528890
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2019129924
(87)【国際公開番号】W WO2021012619
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】201910659227.X
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521219121
【氏名又は名称】南亜新材料科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANYA NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】158 Changxiang Road, Nanxiang Town, Jiading District Shanghai 201802 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】李 兵兵
(72)【発明者】
【氏名】粟 俊華
(72)【発明者】
【氏名】席 奎東
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168347(JP,A)
【文献】国際公開第2009/060917(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0240813(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351237(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109438960(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/12
C08K 5/00
C08L 9/00
C08L 35/06
C08L 53/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波樹脂組成物であって、
重量部で
変性ポリフェニレンエーテル樹脂 20-50部、
ブロック共重合体ゴム 15-40部、
不飽和ジエン系ゴム 10-50部、
N-置換マレイミド共重合体 5-30部、および
低分子架橋剤 10-30部
を含む樹脂組成物を高周波樹脂組成物として定義し、
前記N-置換マレイミド共重合体は、以下のモル含有量のモノマー:
N-置換マレイミド 30-70部、
ビニルモノマー 30-60部、および
不飽和酸無水物 1-20部、
を共重合してなり、
前記N-置換マレイミド共重合体の分子式は下式であり、
【化1】
(式中、x、y、zはそれぞれスチレンモノマー、N-置換マレイミド、不飽和酸無水物のモル比を示し、x:y:z=0.3~0.6:0.3~0.7:0.01~0.2である。)
前記R基はメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルビニル基、p-ヒドロキシフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基であることを特徴とする、高周波樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体ゴムは、スチレンを末端セグメントとし、ポリブタジエン、イソプレンを中間セグメントとする線状トリブロック共重合体であり、数平均分子量は5000~150000であり、スチレンセグメントは前記ブロック共重合体ゴムの総質量の10~50%であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波樹脂組成物。
【請求項3】
前記不飽和ジエン系ゴムの重合モノマーは、未変性または変性基を含有するブタジエンおよびイソプレンから選択される1種または複数種を含み、前記変性基は、エポキシ、無水マレイン酸、アクリレート、ヒドロキシルおよびカルボキシルから選択される1種または複数種であり、前記ジエン系ゴムの数平均分子量は500~20000であり、不飽和二重結合構造は前記ジエン系ゴムの主鎖の質量の60~99%であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波樹脂組成物。
【請求項4】
前記不飽和ジエン系ゴムは、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、ジビニルベンゼン-ブタジエン共重合体、ジビニルベンゼン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体およびスチレン-イソプレン-ジビニルベンゼン共重合体から選択される1種または複数種であることを特徴とする、請求項に記載の高周波樹脂組成物。
【請求項5】
前記変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂の末端基をビニルまたはメタクリレート基で変性して得られるものであり、数平均分子量は500~10000であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波樹脂組成物。
【請求項6】
前記低分子架橋剤は、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチルアリルイソシアヌレート、トリメチルアリルシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、tert-ブチルスチレン、ジアリルイソフタレート、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートから選択される1種または複数種であることを特徴とする、請求項1に記載の高周波樹脂組成物。
【請求項7】
難燃剤、フィラーおよび促進剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の高周波樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波・高速の技術分野に属し、特に高周波樹脂組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
5G時代の到来とともに、端末アプリケーションとネットワーク速度は増加し続け、デバイス間のデータ伝送速度は数百Mbpsから20Gbpsに増加してきた。現在のPCB業界の技術は、ソフトかハードかに関係なく、高周波、高速、高密度のパッケージングに向けて発展している。軽くて薄くて持ち運びに便利な多機能製品の開発傾向に対応して、材料や製法に対する要求はますます厳しくなっている。高周波、高速、小型化の需要の下で、高周波伝送と低損失の材料が伝送線路に完全に取って代わる。その中で最も重要な材料特性は、超低誘電特性、高耐熱性、および優れた難燃性である。
【0003】
高周波信号伝送回路では、電気信号伝送損失は、誘電損失、導体損失、および放射損失の合計で表される。電気信号の周波数が高いほど、誘電損失、導体損失、および放射損失が大きくなる。そのため、高周波信号伝送用の絶縁体として、誘電正接の小さい絶縁材料を選択することにより、誘電損失の増加を抑えることができる。
【0004】
現在、高周波信号伝送用の絶縁材料として、通常はポリテトラフルオロエチレン材料または炭化水素樹脂材料で製造されている。ポリテトラフルオロエチレン材料の加工が困難であるため、炭化水素材料が高周波で広く使用されている。ブロック共重合体ゴムまたは不飽和オレフィン樹脂および充填剤から製造された炭化水素樹脂は、剥離強度が低く、耐熱性が低く、曲げ強度が低いという欠点があるとともに、製造された接着シートは、ゴム材料の原因で粘着の問題が発生し、接着シートの生産、保存および輸送を影響する可能性がある。そのため、高耐熱性、高剥離強度、低誘電損失、低膨張係数の高周波基板材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する上記欠陥を克服するために炭化水素樹脂を主成分とする高周波樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の目的は以下の技術手段により実現することができる。
重量部で
変性ポリフェニレンエーテル樹脂 25-50部、
ブロック共重合体ゴム 15-40部、
不飽和ジエン系ゴム 10-50部、
N-置換マレイミド共重合体 5-30部、および
低分子架橋剤 10-50部
を含む高周波樹脂組成物。
【0007】
〈N-置換マレイミド共重合体〉
N-置換マレイミド共重合体は、モル含有量比で
スチレンモノマー 30-60部、
N-置換マレイミド 30-70部、および
不飽和酸無水物 1-20部、
を共重合してなり、
スチレン、N-置換マレイミド、無水マレイン酸共重合体の分子式は下式である。
【化1】
式中、x、y、zはそれぞれスチレンモノマー、N-置換マレイミド、不飽和酸無水物のモル比を示し、x:y:z=0.3~0.6:0.3~0.7:0.01~0.2である。
【0008】
上記N-置換マレイミド共重合体分子式において、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルビニル基、p-ヒドロキシフェニル基、ビフェニル基、またはナフチル基であり、好ましくはメチル基、フェニル基、フェニルビニル基である。分子式はそれぞれ下式である。
【0009】
a)N-メチルマレイミド共重合体
【化2】
b)N-フェニルマレイミド共重合体
【化3】
c)N-フェニルビニルマレイミド共重合体
【化4】
【0010】
本発明で使用されるN-置換マレイミド共重合体はスチレン、N-置換マレイミド、無水マレイン酸の共重合体(SMI)であり、極性と非極性樹脂の相溶性を向上でき、スチレンセグメントとゴム系材料の相溶性が良好で、マレイミドおよび無水マレイン酸セグメントが極性樹脂と良好な相溶性を有するとともに、界面強度を向上させ、金属箔との剥離強度およびガラス繊維束との結合力を向上できる。N-置換マレイミド共重合体は良好な耐熱性、優れた熱安定性(350℃で分解しない)を有し、炭化水素樹脂と混合して使用する際に炭化水素材料の耐熱改質剤として使用され、板材のガラス転移温度および耐熱性を向上させる。
【0011】
N-置換マレイミド共重合体の含有量は好ましくは5-30部である。N-置換マレイミド共重合体の添加量が少なすぎると、材料耐熱性に対する改善は不十分であり、剥離強度は低い。N-置換マレイミド共重合体の添加量が多すぎると、誘電性能は向上し、吸水率も顕著に増大する。
【0012】
N-置換マレイミド共重合体の分子量は特に制限されない。通常数平均分子量は好ましくは2000-200000であり、より好ましくは5000-50000である。樹脂組成物において高速で良好な溶解性を有するとともに、材料の信頼可能な耐熱性および熱安定性を保証できる。
【0013】
〈ブロック共重合体ゴム〉
上記ブロック共重合体ゴムは、スチレンを末端セグメントとし、ポリブタジエン、イソプレンを中間セグメントとする線状トリブロック共重合体であり、その数平均分子量は5000~150000であり、スチレンセグメントは上記ブロック共重合体ゴムの総質量の10~50%である。
【0014】
熱硬化性樹脂組成物には分子量が比較的大きいブロック共重合体ゴムを含む。上記ブロック共重合体はスチレンを末端セグメントとし、ポリブタジエン、イソプレンを中間セグメントとする線状トリブロック共重合体である。このようなブロック共重合体は通常二重結合構造を有しないため、反応性が比較的低い。上記ブロック共重合体ゴムは低極性の特徴を有し、高周波・高速材料に必要な極めて低い誘電定数および低誘電損失を示すが、材料の耐熱性が良くなく、金属箔との剥離強度が低い。このような低極性材料と少量の極性材料、例えば、ポリフェニレンエーテル、シアネート、マレイミド等の樹脂とを組み合わせることにより、良好な性能バランスを取ることができる。従って、上記ブロック共重合体ゴムは、組成物の主な成分の一つとして、そのスチレンセグメントとブタジエンセグメントの割合の選択が非常に重要である。
【0015】
上記ブロック共重合体ゴムは、好ましくはスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレン(SBIS)、水添したスチレン-ブタジエン-スチレン(HSBS)、水添したスチレン-イソプレン-スチレン(HSIS)、水添したスチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレン(HSBIS)である。
【0016】
上記ブロック共重合体ゴムの平均分子量は好ましくは5000-150000であり、共重合体の分子量が5000未満であると、材料自体が柔らかすぎるので、樹脂基材に対して顕著な強化作用を奏することができず、半硬化シートに粘着問題が発生しやすい。共重合体の分子量が150000を超えると、ブロック共重合体分子量が高すぎるため、樹脂の溶媒中での溶解性が良くなく、粘度が高すぎ、良好な加工生産条件を有せず、半硬化シートはプレスされるときに良好な流動性を有せず、不利于基板の生産、回路基板の充填、および隣接層に流入するパターン化特徴に不利である。
【0017】
スチレンセグメントは上記ブロック共重合体ゴムの総質量に占める比率が10~50%である。スチレンセグメントの比率が10%未満であると、材料のガラス転移温度は低すぎ、スチレンセグメントが50%を超えると、基材は金属箔との剥離強度が低い。スチレンセグメントはブロック共重合体に占める質量比が10-50%である場合、材料の誘電性能、ガラス転移温度、剥離強度、耐熱性等の諸性能はバランスが良い。
【0018】
〈不飽和ジエン系ゴム〉
上記不飽和ジエン系ゴムの重合モノマーは、未変性若しくは変性基を含むブタジエンまたはイソプレンのうちの1種または複数種である。上記変性基はエポキシ、無水マレイン酸、アクリレート、ヒドロキシルまたはカルボキシルから選択される1種または複数種である。ここで、上記ジエン系ゴムの数平均分子量は500~20000であり、不飽和二重結合構造は上記ジエン系ゴム主鎖の質量の60~99%を占める。
【0019】
具体的には、ジエン系ゴムは、側鎖を含むかまたは主鎖に二重結合構造が含まれるポリブタジエン、ポリイソプレンであり、好ましくは1,2-ポリブタジエン、シス1,4ポリブタジエン、1,2-ポリイソプレン、シス1,4ポリイソプレンである。
【0020】
より具体的には、上記不飽和ジエン系ゴムは、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、ジビニルベンゼン-ブタジエン共重合体、ジビニルベンゼン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体或スチレン-イソプレン-ジビニルベンゼン共重合体から選択される1種または複数種である。
【0021】
本発明で使用される不飽和ジエンゴムの数平均分子量は500-20000、好ましくは1000-10000である。不飽和高分子樹脂の分子量が500未満であると、誘電性能の低減に顕著な改善がない。不飽和高分子樹脂の分子量が20000を超えると、樹脂系のガラス転移温度および剥離強度は悪くなる。ジエン系ゴムにおける不飽和二重結合構造は、上記ジエン系ゴム主鎖の質量の60~99%である。不飽和二重結合の含有量が低すぎると、他の熱硬化性樹脂と架橋反応する基が少なく、剥離強度が低く、ガラス転移温度が低く、力学強度が十分ではない。
【0022】
不飽和ジエン系ゴム変性基は、エポキシ、無水マレイン酸、(メタ)アクリレート、ヒドロキシルおよびカルボキシルから選択される1種または複数種であり、好ましくは、無水マレイン酸、(メタ)アクリレート変性の不飽和ブタジエン系ポリマーである。変性不飽和ジエン系ゴムは、樹脂と金属箔の剥離強度、樹脂界面層間の接着強度の更なる向上に有利である。
【0023】
〈変性ポリフェニレンエーテル樹脂〉
上記変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂の末端基をビニルまたはメタクリレート基により変性して得られるものであり、その数平均分子量は好ましくは500-10000である。
【0024】
不飽和二重結合構造を有するジエン系ゴムと変性ポリフェニレンエーテル樹脂とを併用することにより、材料の誘電定数および誘電損失を減少させるとともに、樹脂と銅箔の接着強度を向上させ、樹脂界面と金属層の間の信頼性を向上させることができる。
【0025】
変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は好ましくは500-10000であり、より好ましくは1000-5000である。分子量が500未満であると、反応性ビニルが多すぎるため、低い低誘電性能を得ることが困難であり、反応速度が速く、制御しにくい。分子量が10000を超えると、ポリフェニレンエーテル樹脂の溶融粘度は高すぎ、他の樹脂との相溶性は悪くなり、製造される材料は外観不良を引き起こしやすい。
【0026】
上記変性ポリフェニレンエーテルはビニル変性またはメタクリレートでキャッピングしたポリフェニレンエーテルである。例えば、Sabic SA-9000、メタクリレートでキャッピングした変性ポリフェニレンエーテル樹脂が挙げられる。例えば、三菱化学OPE-2ST、フェニルビニルでキャッピングした変性ポリフェニレンエーテル樹脂がさらに挙げられる。
【0027】
〈低分子架橋剤〉
樹脂組成物には低分子架橋剤がさらに含まれることにより、ブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴムおよびN-置換マレイミド共重合体の架橋密度が向上し、架橋ネットワークの緻密性を増加させ、材料のガラス転移温度および耐熱性を向上させる。
【0028】
低分子架橋剤は、好ましくはトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチルアリルイソシアヌレート、トリメチルアリルシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、tert-ブチルスチレン、ジアリルイソフタレート、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートから選択される1種または複数種である。
さらに、本発明は、難燃剤、フィラーおよび促進剤をさらに含む。
【0029】
〈難燃剤〉
本発明で使用される難燃剤は好ましくは臭素含有難燃剤またはリン含有難燃剤から選択される1種または複数種の混合物である。低誘電樹脂系に適応するために、好ましい臭素含有難燃剤またはリン含有難燃剤はいずれも樹脂系に不溶であり、通常ポリフェニレンエーテル樹脂および他の樹脂と反応性がなく、耐熱性および誘電特性を低下させない添加型臭素系難燃剤またはリン系難燃剤である。
【0030】
本発明の添加型臭素含有難燃剤は、好ましくはデカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化スチレンまたはデカブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミドから選択される1種または複数種である。添加型リン含有難燃剤は、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、2,6-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノベンゼンおよび10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドから選択される1種または複数種である。
【0031】
〈フィラー〉
本発明で使用されるフィラーは特に制限されないが、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ、溶融シリカ、滑石粉、アルミナ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウムおよび二酸化チタンから選択される1種または複数種であってもよい。
【0032】
〈促進剤〉
樹脂組成物の反応を促進し、架橋密度を向上させ、ガラス転移温度および耐熱性を向上させるために、促進剤(開始剤)を用いて反応を加速することができる。
【0033】
本発明で使用される促進剤は好ましくは有機過酸化物ラジカル開始剤であり、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、ペルオキシネオデカン酸クミル、ペルオキシネオデカン酸Tert-ブチル、ペルオキシピバル酸tert-ブチル、ペルオキシイソ酪酸tert-ブチル、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸tert-ブチル、ペルオキシ酢酸tert-ブチル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシド)ブタン、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル) ペルオキシジカーボネート、ヘキサデシルペルオキシジカーボネート、テトラデシルペルオキシジカーボネート、ジ-tert‐アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキシン、ジクミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルクメンペルオキシド、ジクミルヒドロペルオキシド、ペルオキシカーボネート-2-エチルペルオキシヘキサン酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシド)ペンタン酸n-ブチル、メチルエチルケトンペルオキシドまたはシクロヘキサンペルオキシドから選択される1種または複数種である。
【0034】
本発明の高周波樹脂組成物は接着シート、金属箔張積層板およびプリント回路基板の製造に使用できる。
【0035】
接着シートの製造
本発明の高周波樹脂組成物を補強繊維に塗布して半硬化シートを形成する。上記補強繊維は有機繊維または無機繊維を編んでなる補強織物であってもよく、好ましくはガラス繊維を編んでなる繊維布(E-glass,T-glass,NE-glass,L-glassおよびQ-glassを含む)である。
【0036】
金属箔張積層板の製造
この金属箔張積層板は、上記接着シートを金属箔の一面または少なくとも両面に積層してホットプレスすることで作製される。金属箔は好ましくは銅箔であり、より好ましくは電解銅箔であり、その表面粗さRzは好ましくは5um未満である。例えば、RTF銅箔、VLP銅箔、HVLP銅箔、HVLP2銅箔が挙げられる。高周波・高速配線板の信号損失の問題をさらに改善することができる。
【0037】
プリント回路基板の製造
プリント回路基板は、少なくとも1枚の上記接着シートまたは上記金属箔張積層板を含む。本発明の樹脂組成物は、良好な力学強度および靭性、良好なガラス転移温度、剥離強度および低誘電性能を有するため、高多層プリント回路基板の加工に適用できる。
【0038】
本発明において、樹脂組成物にN-置換マレイミド系共重合体をゴムの耐熱改質剤および相溶化剤として使用する。このトリブロック共重合体にN-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造が含まれる。N-置換マレイミド系共重合体をビニル含有ブロック共重合体ゴムおよび不飽和ジエン系ゴムの樹脂基材に使用することによって、マレイミド構造によりビニルセグメントの耐熱性が向上し、樹脂基材の耐熱性能が向上するとともに、無水マレイン酸構造によりビニルセグメントの極性が向上する。
【0039】
従来技術に比べて、本発明は以下の利点を有する。
(1)N-置換マレイミド系共重合体を使用することにより、樹脂基材の耐熱性、無機材料および難燃剤と相溶性、および高樹脂基材と金属箔の界面剥離強度が向上し、本発明の樹脂組成物を絶縁体とすることにより良好な誘電性能および機械性能を有する。
(2)樹脂基材中の不飽和ジエン系ゴムの選択が最適化される。高含有量不飽和二重結合構造の液体ポリブタジエンを使用することにより、樹脂組成物の電気絶縁性、剥離強度およびガラス転移温度がさらに向上する。
(3)樹脂基材に変性ポリフェニレンエーテル樹脂を添加することにより、高周波樹脂組成物の耐熱性および銅箔剥離強度が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、具体的な実施例により本発明を詳しく説明する。以下の実施例は、当業者が本発明をさらに理解するのに役立つが、いかなる形態においても本発明を限定するものではない。なお、当業者であれば、本発明の思想から逸脱しない限り、本発明に対して複数の変形および改良を加えることができる。これらはいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0041】
高周波樹脂組成物は、重量部でブロック共重合体ゴム15-40部、変性ポリフェニレンエーテル樹脂25-50部、不飽和ジエン系ゴム10-50部、N-置換マレイミド共重合体5-30部、低分子架橋剤10-50部、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。
【0042】
〈N-置換マレイミド共重合体〉
N-置換マレイミド共重合体は、モル含有量比で
スチレンモノマー 30-60部、
N-置換マレイミド 30-70部、および
不飽和酸無水物 1-20部、
を共重合してなり、
スチレン、N-置換マレイミド、無水マレイン酸共重合体の分子式は下式である。
【化5】
式中、x、y、zはそれぞれスチレンモノマー、N-置換マレイミド、不飽和酸無水物のモル比を示し、x:y:z=0.3~0.6:0.3~0.7:0.01~0.2である。
【0043】
上記N-置換マレイミド共重合体分子式中のR基はメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルビニル基、p-ヒドロキシフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基であり、好ましくはメチル基、フェニル基、フェニルビニル基である。分子式はそれぞれ下式である。
a)N-メチルマレイミド共重合体
【化6】
b)N-フェニルマレイミド共重合体
【化7】
c)N-フェニルビニルマレイミド共重合体
【化8】
【0044】
〈ブロック共重合体ゴム〉
高周波樹脂組成物における分子量が大きいブロック共重合体ゴムは、スチレンを末端セグメントとし、ポリブタジエン、イソプレンを中間セグメントとする線状トリブロック共重合体であり、その数平均分子量は5000~150000である。スチレンセグメントは上記ブロック共重合体ゴムの総質量の10~50%である。このようなブロック共重合体は通常二重結合構造を有しないため、反応性が比較的低い。本発明の実施例におけるブロック共重合体ゴムは、好ましくはスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレン(SBIS)、水添したスチレン-ブタジエン-スチレン(HSBS)、水添したスチレン-イソプレン-スチレン(HSIS)、水添したスチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレン(HSBIS)である。
【0045】
〈不飽和ジエン系ゴム〉
樹脂組成物中の不飽和ジエン系ゴムの重合モノマーは未変性または変性基を含有するブタジエンまたはイソプレンから選択される1種または複数種を含む。ジエン系ゴムは側鎖を含むかまたは主鎖が二重結合構造を含むポリブタジエン、ポリイソプレンであり、好ましくは1,2-ポリブタジエン、シス1,4ポリブタジエン、1,2-ポリイソプレン、シス1,4ポリイソプレンである。
【0046】
不飽和ジエン系ゴム変性基は、エポキシ、無水マレイン酸、(メタ)アクリレート、ヒドロキシルおよびカルボキシルから選択される1種または複数種であり、より好ましくは無水マレイン酸、(メタ)アクリレート変性の不飽和ブタジエン系ポリマーである。変性不飽和ジエン系ゴムは、樹脂と金属箔の剥離強度、樹脂界面層間の接着強度の更なる向上に有利である。
【0047】
不飽和ジエン系ゴムの選択として、例えば、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、ジビニルベンゼン-ブタジエン共重合体、ジビニルベンゼン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体またはスチレン-イソプレン-ジビニルベンゼン共重合体から選択される1種または複数種が挙げられる。
【0048】
〈変性ポリフェニレンエーテル樹脂〉
変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂の末端基をビニルまたはメタクリル酸メチル基により変性して得られたものであり、その分子量は500~10000であってもよい。
【0049】
〈低分子架橋剤〉
低分子架橋剤として、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチルアリルイソシアヌレート、トリメチルアリルシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、tert-ブチルスチレン、ジアリルイソフタレート、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートから選択される1種または複数種が挙げられる。
さらに、本実施例は難燃剤、フィラーおよび促進剤をさらに含む。
【0050】
〈難燃剤〉
本発明で使用される難燃剤は好ましくは臭素含有難燃剤またはリン含有難燃剤から選択される1種または複数種の混合物である。低誘電樹脂系に適応するために、好ましい臭素含有難燃剤またはリン含有難燃剤はいずれも樹脂系に不溶であり、通常ポリフェニレンエーテル樹脂および他の樹脂と反応性がなく、耐熱性および誘電特性を低下させない添加型臭素系難燃剤またはリン系難燃剤である。
【0051】
本発明の添加型臭素含有難燃剤は、好ましくはデカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエタン、臭素化スチレンまたはデカブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミドから選択される1種または複数種である。添加型リン含有難燃剤は、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、2,6-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノベンゼンおよび10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドから選択される1種または複数種である。
【0052】
〈フィラー〉
本実施例で使用されるフィラーは特に限定されないが、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ、溶融シリカ、滑石粉、アルミナ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウムおよび二酸化チタンから選択される1種または複数種であってもよい。
【0053】
〈促進剤〉
樹脂組成物の反応を促進し、架橋密度を向上させ、ガラス転移温度および耐熱性を向上させるために、促進剤(開始剤)を用いて反応を加速することができる。
【0054】
本発明で使用される促進剤は好ましくは有機過酸化物ラジカル開始剤であり、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、ペルオキシネオデカン酸クミル、ペルオキシネオデカン酸Tert-ブチル、ペルオキシピバル酸tert-ブチル、ペルオキシイソ酪酸tert-ブチル、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸tert-ブチル、ペルオキシ酢酸tert-ブチル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシド)ブタン、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル) ペルオキシジカーボネート、ヘキサデシルペルオキシジカーボネート、テトラデシルペルオキシジカーボネート、ジ-tert‐アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキシン、ジクミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルクメンペルオキシド、ジクミルヒドロペルオキシド、ペルオキシカーボネート-2-エチルペルオキシヘキサン酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシド)ペンタン酸n-ブチル、メチルエチルケトンペルオキシドまたはシクロヘキサンペルオキシドから選択される1種または複数種である。
【0055】
本発明の高周波樹脂組成物は接着シート、金属箔張積層板およびプリント回路基板の製造に使用できる。
【0056】
接着シートの製造
本発明の高周波樹脂組成物を補強繊維に塗布して半硬化シートを形成する。上記補強繊維は有機繊維または無機繊維を編んでなる補強織物であってもよく、好ましくはガラス繊維を編んでなる繊維布(E-glass,T-glass,NE-glass,L-glassおよびQ-glassを含む)である。
金属箔張積層板の製造
この金属箔張積層板は、上記接着シートを金属箔の一面または少なくとも両面に積層してホットプレスすることで作製される。金属箔は好ましくは銅箔であり、より好ましくは電解銅箔であり、その表面粗さRzは好ましくは5um未満である。例えば、RTF銅箔、VLP銅箔、HVLP銅箔、HVLP2銅箔が挙げられる。高周波・高速配線板の信号損失の問題をさらに改善することができる。
【0057】
プリント回路基板の製造
プリント回路基板は、少なくとも1枚の上記接着シートまたは上記金属箔張積層板を含む。本発明の樹脂組成物は、良好な力学強度および靭性、良好なガラス転移温度、剥離強度および低誘電性能を有するため、高多層プリント回路基板の加工に適用できる。
【0058】
本実施例における高周波樹脂組成物の製造方法は、
処方に従って原料を準備するステップ(1)と、
ブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴムおよびN-置換マレイミド共重合体を溶媒に溶解し、架橋剤を加え、分散処理することで高周波樹脂組成物が得られるステップ(2)と、
を含む。
【0059】
さらに、組成物処方に難燃剤、無機フィラーおよび促進剤が含まれる場合、ステップ(2)はブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴムおよびN-置換マレイミド共重合体を溶媒に溶解し、難燃剤、無機フィラーおよび促進剤を加え、均一に撹拌し、分散処理することで低誘電樹脂組成物が得られる。
【0060】
製造された銅張積層板に対して以下の測定方法により性能測定を行う。
ガラス転移温度(Tg):DMA計を用いてIPC-TM-650 2.4.24.4に規定のDMAの測定方法により測定する。
【0061】
Z軸熱膨張係数(CTE):TMA計を用いてIPC-TM-650 2.4.24に規定のTMAの測定方法により測定する。
【0062】
銅箔剥離強度(PS):島津引張試験機を用いてIPC-TM-650 2.4.8に規定の測定方法により測定する。
【0063】
誘電定数(Dk)および誘電損失因子(Df):IPC-TM-650 2.5.5.9に規定の測定方法により測定する。
【0064】
圧力鍋調理テスト(PCT):積層板を120℃で高温調理テストし、IPC-TM-650 2.6.16に規定の測定方法により測定する。
【0065】
288℃分層溶解時間(T288):使用TMA計を用いてIPC-TM-650 2.4.24.1に規定の測定方法により測定する。
【0066】
難燃性:UL-94に規定の材料燃焼性方法により測定してグレーディングする。
【0067】
吸水率:IPC-TM-650 2.6.2.1に規定の積層板吸水率の測定方法により測定する。
【0068】
樹脂流動性:島津キャピラリーレオメーターにより樹脂流動性を測定する。2g樹脂粉末プレスインゴットを用いて一定の圧力で樹脂を小孔から押出し、樹脂がレオメーターから流出する行程に基づいて評価する。流出行程が長ければ、樹脂流の動性は良い。
【0069】
耐熱性とは、物質が加熱の条件下でも優れた物理的および機械的特性を維持できる特性を指す。
【0070】
樹脂系相溶性:基材の断面を用いてSEM下で硬化樹脂の微視的均一性を観察する。樹脂凝集現象が発生すると、樹脂が相溶しないことを示す。
【0071】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0072】
高周波樹脂組成物は、重量部で変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴム、N-置換マレイミド共重合体、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。本実施例の各成分の由来源および選択を表1に示す。各成分の含有量を表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
<実施例11>
高周波樹脂組成物は、重量部で変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴム、N-置換マレイミド共重合体、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。各成分の含有量を表2に示す。
【0076】
使用されるフィラーは高Dkフィラー(Dk>10)であるため、その誘電損失は比較的高い。
【0077】
<実施例12>
高周波樹脂組成物は、重量部で変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ブロック共重合体ゴム,不飽和ジエン系ゴム,N-置換マレイミド共重合体、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。各成分の含有量を表2に示す。
【0078】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂の末端基をビニルで変性したものである。ブロック共重合体ゴムはスチレンを末端セグメントとし、ポリブタジエン、イソプレンを中間セグメントとする線状トリブロック共重合体である。ブロック共重合体ゴムの数平均分子量は5000であり、スチレンセグメントの含有量は10%である。不飽和ジエン系ゴムはスチレン-イソプレン共重合体およびジビニルベンゼン-イソプレン共重合体であり、1,4-シス二重結合構造は60%を占め、その数平均分子量は1000である。N-置換マレイミド共重合体のモノマーはスチレン、N-フェニルマレイミド、不飽和酸無水物であり、スチレンのモル部は30部、不飽和酸無水物のモル部は1部、N-置換マレイミドのモル部は30部である。低分子架橋剤はトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチルアリルイソシアヌレート、トリメチルアリルシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートの混合物を使用する。難燃剤は臭素含有難燃剤である。フィラーは球状シリカ粉末である。低Dk材料である場合、促進剤は過酸化物系促進剤である。
【0079】
<実施例13>
高周波樹脂組成物は、重量部でブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴム、N-置換マレイミド共重合体、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。各成分の含有量を表2に示す。
【0080】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂はポリフェニレンエーテル樹脂の末端基をビニルで変性したものである。ブロック共重合体ゴムはスチレンを末端セグメントとし、ポリブタジエン、イソプレンを中間セグメントとする線状トリブロック共重合体である。ブロック共重合体ゴムの数平均分子量は15000であり、スチレンセグメントの含有量は50%である。不飽和ジエン系ゴムはスチレン-イソプレン共重合体およびジビニルベンゼン-イソプレン共重合体である。1,4-シス二重結合構造は95%を占め、その数平均分子量は10000である。N-置換マレイミド共重合体のモノマーはスチレン、N-フェニルマレイミド、不飽和酸無水物である。ここで、スチレンのモル部は60部、不飽和酸無水物のモル部は20部、N-置換マレイミドのモル部は70部である。低分子架橋剤はtert-ブチルスチレン、ジアリルイソフタレート、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物である。難燃剤は臭素含有難燃剤である。フィラーは球状シリカ粉末である。低Dk材料である場合、促進剤は過酸化物系促進剤である。
【0081】
<比較例1>
比較例1の樹脂組成物は、原料として変性ポリフェニレンエーテル樹脂、不飽和ジエン系ゴム,N-置換マレイミド共重合体、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。具体的な各成分の含有量および選択を表2に示す。
【0082】
比較例1と実施例の主な相違点は、比較例ではブロック共重合体ゴムが添加されていないことである。表1の測定データから明らかなように、比較例1の樹脂組成物のガラス転移温度は185℃であり、本発明のいずれかの実施例の樹脂組成物のガラス転移温度よりもはるかに低い。また、その銅箔剥離強度は低いことで、その機会的特性が良くないことを示している。288℃での分層時間は短いことで、その熱安定性が悪いことを示している。従って、樹脂基材にブロック共重合体ゴムを加えることは、樹脂組成物の耐熱性および剥離強度の向上に有利である。
【0083】
<比較例2>
比較例2の樹脂組成物は、原料として変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴム、BDM型マレイミド、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。具体的な各成分の含有量および選択を表2に示す。
【0084】
比較例2と実施例の主な相違点は、比較例2ではN-置換マレイミド共重合体の代わりにBDM型マレイミドを使用することである。表1の測定データから明らかなように、比較例2の樹脂組成物のガラス転移温度は205℃であり、本発明のいずれかの実施例の樹脂組成物のガラス転移温度よりも低い。その誘電損失が比較的高く、エネルギー消費が大きく、樹脂流動性が比較的悪く、耐熱性が良くない。これは、N-置換マレイミド共重合体の添加は樹脂組成物の耐熱性および剥離強度を向上できることを示している。
【0085】
<比較例3>
比較例3の樹脂組成物は、原料として変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ブロック共重合体ゴム、不飽和ジエン系ゴム、スチレン、無水マレイン酸共重合体、低分子架橋剤、難燃剤、フィラーおよび促進剤を含む。具体的な各成分の含有量および選択を表2に示す。
【0086】
比較例3と実施例の主な相違点は、比較例3ではN-置換マレイミド共重合体の代わりにスチレン、無水マレイン酸共重合体を使用することである。表1の測定データから明らかなように、比較例3の樹脂組成物の相溶性が比較的低く、この樹脂組成物の剥離強度が極めて低く、288℃での分層時間が非常に短い。従って、N-置換マレイミド共重合体の添加は非常に重要である。その中のマレイミド構造および無水マレイン酸構造と樹脂基材との間の相乗作用は、樹脂組成物の機械的特性および誘電性能の向上に有利である。
【0087】
以上、本発明の実施例を説明した。なお、本発明は上記特定の実施形態に限定されず、当業者は特許請求の範囲内において様々な変形または修正を行うことができ、本発明の実質的な内容に影響を与えない。