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特許71701423D金属印刷方法およびかかる方法のための装置
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  • 特許-3D金属印刷方法およびかかる方法のための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】3D金属印刷方法およびかかる方法のための装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/36 20210101AFI20221104BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20221104BHJP
   B22F 10/362 20210101ALI20221104BHJP
   B22F 10/364 20210101ALI20221104BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20221104BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20221104BHJP
【FI】
B22F10/36
B22F10/28
B22F10/362
B22F10/364
B22F10/366
B22F12/41
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021532512
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 DE2019100723
(87)【国際公開番号】W WO2020035109
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】102018120015.3
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521069238
【氏名又は名称】バリュー アンド インテレクチュアル プロパティーズ マネージメント ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALUE & INTELLECTUAL PROPERTIES MANAGEMENT GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】521069249
【氏名又は名称】エイム スウェーデン アーベー
【氏名又は名称原語表記】AIM SWEDEN AB
(73)【特許権者】
【識別番号】521069250
【氏名又は名称】アディティブ イノベーション アンド リサーチ スウェーデン アーベー
【氏名又は名称原語表記】ADDITIVE INNOVATION AND RESEARCH SWEDEN AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーア、カイ カー.オー.
(72)【発明者】
【氏名】ノイリンガー、カール
(72)【発明者】
【氏名】ラナー、ラース-エリック
(72)【発明者】
【氏名】コプチュク、アンドレイ
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007059865(DE,A1)
【文献】米国特許第05908569(US,A)
【文献】特表2017-532719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発材料としての金属粉末または金属フィラメントから立体金属製品を作成する3D金属印刷プロセスであって、
出発材料の層を先に作成された層それぞれに適用し、該層の所定の地点を該粉末の焼結または溶融温度を超えて選択的に局所加熱し、溶融地点を下にある層と焼結または融合し、任意に該地点をアニーリングすることによって、該粉末または該フィラメントが一層ずつ構築され、
少なくとも新たに適用されたそれぞれの出発材料層が、少なくとも5mm2より広い面積を有する放射スポットが該出発材料層の表面上に形成されるような大きい面積にわたって、パワー密度が1MW/m2より高いIR放射を照射することによって予熱に続いて選択的局所加熱され、および/または選択的局所加熱によって同時に加熱され、および/または選択局所加熱に続いて後処理されて熱応力が均等化される、
3D金属印刷プロセス。
【請求項2】
前記新たに適用された出発材料層の予熱および前記選択的局所加熱中の追加の加熱が行われるような形で、IR放射の面照射が行われ、所定の温度範囲が所定の期間維持される、請求項1に記載の3D金属印刷プロセス。
【請求項3】
前記IR放射が、前記それぞれの出発材料層の表面全体の部分区画へと部分ごとに連続的に照射され、該部分区画が、形成される前記金属製品の少なくとも1つの横方向寸法に対応する長さの、狭い長方形の形状を有する、請求項1または2に記載の3D金属印刷プロセス。
【請求項4】
2900Kから3200Kの範囲のラジエータ温度での、少なくとも1つのハロゲンラジエータの放射が、IR放射として使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の3D金属印刷プロセス。
【請求項5】
リフレクタを伴う1つを超えるロッド状のIRエミッタを使用して、細い長方形の放射スポットが作成される、請求項4に記載の3D金属印刷プロセス。
【請求項6】
所定の地点の前記選択的局所加熱が、前記出発材料層を電子ビームで走査することによって行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の3D金属印刷プロセス。
【請求項7】
堆積された各原材料層が、少なくとも150μmより大きい厚さを有し、厚さ全体を通して前記IR放射によって加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の3D金属印刷プロセス。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、
前記立体金属製品を一層ずつ構築する基礎としての作業台と、
金属粉末の出発材料層または出発材料フィラメントを該作業台のエリア内で連続的に適用する粉末適用デバイスと、
パワー密度が1MW/m2より高い前記IR放射によって、少なくとも5mm2より広い面積を有する放射スポットを生成するIR照射デバイスを備える、予熱または熱的後処理のためにそれぞれの新しい出発材料層を表面加熱する表面加熱デバイスと、
該新しい出発材料層の所定の地点を、該金属粉末の焼結または溶融温度を超えて選択的に局所加熱する手段と、
を備える、装置。
【請求項9】
出発材料の予め適用された層の所定の地点を選択的に局所加熱する前記手段が、電子放射を前記所定の地点に逐点照射する電子ビーム発生器を備え、前記装置が高真空になる真空チャンバ内に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記IR照射デバイスが、リフレクタを伴う少なくとも1つのIR照射器を備え、該リフレクタは、そのまたはそれぞれの赤外線照射器の放射が前記作業台の方向で集束され、少なくとも5mm2より広い面積を有する前記放射スポットが、出発材料の最後の層上に形成されるように関連して形成される、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
リフレクタを伴う前記IR照射器または複数のIR照射器が、XY平面の少なくとも1つの軸方向で前記作業台の上方に移動可能に搭載される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
ハロゲンラジエータが、2900Kから3200Kの範囲のラジエータ温度で動作するように設計される、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記IR照射デバイスが、作成される前記金属製品の少なくとも1つの寸法に対応する長さの、少なくとも1つのロッド状のIRラジエータを備え、該IRラジエータをXY平面の正確に1つの軸方向で移動させるデバイスを備える、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
制御出力を介して前記表面加熱デバイスおよび選択的局所加熱を行う前記手段に接続され、新たな出発材料層において所定の期間、所定の温度範囲内の温度が維持されるように、加熱制御プログラムにしたがって、前記表面加熱デバイスおよび前記手段を制御する、加熱制御デバイスを備える、請求項9から13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に金属粉末または金属フィラメントから立体金属製品を作成する3D金属印刷プロセス、特に電子ビームに基づくプロセスであって、出発材料の層を先に作成された層それぞれに適用し、層の所定の地点を焼結または溶融温度を超えて選択的に局所加熱し、溶融地点に対応する地点で下にある層と焼結または融合することによって、金属製品が一層ずつ構築され、既存の部分金属製品の予熱および/または熱的後処理が実施される、プロセスに関する。本発明は、更に、かかるプロセスを実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体金属製品を一層ずつ構築する様々なプロセスが開発されてきており、それらはまとめて「付加製造」または「3D印刷」と呼ばれる。これらのプロセスは、部分的には溶融および固化ステップに基づいており、先に適用された出発材料層の選択的局所加熱を含み、それは本明細書では、「逐点(point-by-point)」または「点走査(point-scanning)」加熱とも呼ばれる。特にチタンなどの比較的高融点の金属から、金属製品を製造する場合、出発材料層の上を移動させることができる、座標制御されたレーザー・ビームまたは電子ビームが通常使用される。
【0003】
実際には、レーザー・ビーム・プロセス(LMB)が現在主流であるが、構築中の製品の最上層を局所溶融させるのに高温が必要であるため、高エネルギー・レーザー・ビームを使用しなければならない。結果として上層が軟化し熱応力が生じるため、製品の幾何学形状によっては、複雑な支持構造が必要な場合があり、多大な費用をかけてそれを完成製品から除去しなければならない。高温は、製造される製品の外形の外側における、出発材料粉末または出発材料フィラメントの望ましくない「ケーキング」にもつながる。このように固化した粉末またはフィラメント部分を完成製品から除去することは、労力を要し、しばしば製品表面に望ましくない不均一さが残る場合がある。更に、固化した出発材料は、簡単には回収できず、更なる製品の製造に使用することができないので、かかるプロセスにおける出発材料の利用には、様々なことが要望されている。
【0004】
一般に、完成製品には、製造プロセス中に生じた時間的な熱応力による応力を軽減するため、後に続く熱処理(アニーリング)を施さなければならない。製品のサイズおよび幾何学形状に応じて、これには相当量の時間がかかり、したがって、このようなレーザー・ベースのプロセスの生産性を著しく低減させてしまう。
【0005】
電子ビーム・プロセス(EBMプロセス)は、多量の機器を要し、現在は、比較的小さい寸法の製品にのみ経済的に実行可能であり、したがって、まだ比較的稀である。これらのプロセスでは、出発材料の上層は、通常、電子ビームによる表面全体の「確率的」走査を用いて局所溶融する前に予熱されるが、それによって機器および制御コストが更に増加し、製品の製造時間も大幅に延びる。他方で、この場合の熱応力は非常に少なく、それらを制御するか、またはそれらによる結果を排除する、上述したような手段がほとんど不要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述されたタイプの改善されたプロセスおよびそれを実施するための装置を提供するという目的に基づくものであり、それにより、生産性が高く経済的な材料利用、および消費エネルギーを抑制し、製品コスト全体の低減と同時に、高品質要件を満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このタスクは、そのプロセス態様においては、請求項1の特徴を有する3D金属印刷プロセスによって、またその装置態様においては、請求項9の特徴を有する装置によって解決される。本発明の有用な更なる実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の発想は、新たに適用された材料層を局所的に「逐点」溶融する前の予熱、および/または実際に処理され、結果として得られる金属製品の範囲(層)のみを逐点溶融する間に並列補助加熱を実施することである。
【0009】
本発明の相対的に独立した態様によれば、熱的後処理は、範囲ごとまたは層ごとに均等に、局所溶融の直後に実施される。
【0010】
本発明の更なる発想は、確立されている電子ビーム方法のような点ごとではなく、(電子ビームの点径に比べて)比較的大きい面積にわたって、予熱または後熱を実施することである。特に、予熱は、少なくとも5mm2より広い、より詳細には20mm2より広い、更に詳細には100mm2より広い面積に対して実施されるべきである。放射スポットの様々な外形が実現され得るが、実用上の観点から、通常は長方形となる。長方形の放射スポットによれば、それぞれの出発材料層の表面全体の走査予熱または後熱を、信頼性が高く、比較的少ない労力での制御および短い処理時間で実現することができる。
【0011】
非常に安価で利用可能な赤外線(IR)放射がエネルギー源として使用され、これは明示的に、近赤外線放射、即ち0.8~1.5μmの波長範囲で最大放射密度を有する放射を使用することを含む。
【0012】
実際に顕著な実施形態では、使用される金属粉末は、アルミニウム、ステンレス鋼、もしくはチタンの粉末、または高融点金属粉末、またはこれらの金属との合金から作られた粉末である。セラミックまたは他の非金属粉末との組み合わせも採用され得る。原則的に、プロセスは、フィラメント状または顆粒としての出発材料で実施することもできる。
【0013】
一実施形態では、IR放射は、それぞれの出発材料層の表面全体の部分区画へと連続的に区画単位で照射され、それによって、予熱された一部の部分内の所定の地点に対してそれぞれ、焼結または溶融温度を上回る選択的局所加熱が実施される。したがって、予熱または応力を低減する二次元後熱は、特に、焼結または溶融温度を上回る局所加熱の準備段階で、またはそれに伴って、処理されるそれぞれの出発材料層の表面上を「さまよう」。
【0014】
現在における好ましい実施形態としては、ストリップ状の、即ち細い長方形の形態の放射スポットが、構築されている金属製品の表面上に作られ、製品の全幅または全長にわたって延在する。この「バンド」は次に、その延長方向に対して垂直に表面上を移動させられて、出発材料の最後の層の表面全体が連続的に予熱される。
【0015】
放射スポットの幾何学形状、特に、バンド状の放射スポットの幅は、到達するパワー密度がプロセス要件を満たすように、使用されるIRエミッタまたはNIRエミッタのパラメータと調整して、適切な幾何学形状を有するリフレクタを選択することによって調節される。ここで重要な態様は、放射スポットで予熱される表面全体の通過が、焼結および溶融のための材料のその後の選択的局所(時間的)加熱と調整されることである。プロセスにおける経済性を高めるという観点から、プロセス全体の所要時間はできるだけ短時間であるべきである。しかしながら、IR放射の適用が、応力の低減やアニーリングなどのために後熱を行う目的に役立つ場合、達成されるべき効果に対して物理的条件をまず考慮しなければならない。
【0016】
従来のプロセスのように、更なる実施形態では、焼結または溶融のため、および焼戻しのための、所定の点の選択的局所加熱は、出発材料層を電子ビームで走査することによって行われる。電子ビームによる予熱された出発材料層の選択的曝露を、予熱に有用な放射に対する、上述した範囲ごと、特に、ストリップ状の曝露と同期させることは道理にかなっている。特に、電子ビームは、出発材料層の最適に予熱された(かつ、まだある程度冷却されていない)地点に当たるべきである。したがって、電子ビームの偏向の制御は、IR照射デバイスの制御とリンクさせなければならない。
【0017】
プロセスの実際の実施形態では、出発材料の最上層の表面において「静的な」または「移動する」形で照射されるIR放射のパワー密度は、1MW/m2より高く、ラジエータ温度が3200K以下、特に2900K~3200Kの範囲にある、少なくとも1つのハロゲンラジエータ、特に複数のハロゲンラジエータの放射が、近赤外線放射として使用される。
【0018】
本発明による予熱は、以前のEBMプロセスの場合よりもかなり厚い材料層の適用を可能にし、現在の観点からすれば、厚さが150μmをより大きい、300μmより大きい、さらには500μmより大きい材料層を適用することができる。本発明は、出発材料層が完全に加熱されることを確保し、必要に応じて、下層への十分な伝熱が、連続層のより良好な結合または性質の改善に寄与することを確保する。
【0019】
このような厚さの材料層から高い生産性で高品質の製品をどの程度構築することができるかは、電子ビーム・ベースのプロセスの場合、強力な電子ビーム源および関連する偏向および集光デバイスを使用できる可能性に依存する。いずれの場合も、ここで提案されるプロセスにより、これに関する広範囲に及ぶ必要条件が作られる。
【0020】
提案される方法の更なる実施形態では、溶融温度および処理される金属もしくは合金の更なるパラメータの関数として選択される予熱温度が、また特に600~1200℃の範囲で設定され、特に、IR放射における面照射の時間および/または放射密度制御によって制御されることが提案される。例えば、600~800℃の範囲の温度設定は、チタン合金の処理向けであり、1000~1200℃の範囲は、ニッケル系合金またはいわゆる超合金向けである。
【0021】
プロセス全体を最適化するため、特に電子ビーム・ベースのプロセスでは、それぞれの処理される層の材料特有の温度範囲(「ウィンドウ」)を所定の時間を維持することが重要である。したがって、二次元IR放射対スポット状電子ビームの効果は、好ましくは、このような温度/時間ウィンドウを確保するように制御側で調節されるべきである。
【0022】
全体として、提案する解決策は、層や製品全体の観点において、50%以上のプロセス時間の大幅な低減を可能にする。
【0023】
提案する装置の有利な実施形態は、上記に説明したプロセスの態様に基づいて、当業者にはほぼ明らかであるため、装置の詳細な説明はほとんど省略する。しかしながら、デバイスの以下の態様については指摘する。
【0024】
装置全体の構造は、主に層で適用される金属粉末またはフィラメントの連続的な局所溶融に基づく機能を有する既知の3Dプリンタに対応するが、局所溶融の前の予熱、および/または溶融直後の応力補償に対する熱的後処理という意味で、それぞれの出発材料の最上層を二次元加熱する装置の設計が、特別な特徴である。
【0025】
この装置は、作業台の面の少なくとも5mm2、より詳細には20mm2より広い、更に詳細には100mm2広い所定の範囲に、高いパワー密度でIRを照射するIR照射デバイスを有する。現在の観点から、本発明を組み込んだEBM技術の更なる開発によって、特に技術が発展し、生産されてきたものよりも著しく大型の製品に適用される場合、かなり大きい表面積を同時に予熱することも考慮してもよい。
【0026】
「作業台の面」という語句は、一般的な意味で理解されるべきであり、IR照射デバイスが作業台の真上に配置されること、または横方向への延長が作業台と一致することを意味するものではない。適切なリフレクタの幾何学形状により、IR照射デバイスは、作業台よりも小さい設置面積とすることができ、また、作業台の斜め情報に、または更にはそこから横方向に配置することができる。
【0027】
本発明が、EBMプロセスで使用して、高真空において実施される場合、NIR照射デバイスは、特に真空チャンバ内で配置され操作されなければならず、電子ビームによる製品表面の走査とのいかなる干渉も防ぐように配置されなければならない。
【0028】
実際に証明された実施形態では、特別なNIR照射デバイスは、少なくとも1つのロッド状(直線)のハロゲンラジエータ、特に複数のハロゲンラジエータと、またはそれぞれの赤外線ラジエータの放射が作業台の方向で集光されるように関連するリフレクタを有する。しかしながら、他の実施形態では、IR照射デバイスはまた、高出力NIRレーザー・ダイオードのアレイを備えることができ、このような実施形態は、特別なリフレクタを省略可能であっても構わない。
【0029】
更なる実施形態では、関連するリフレクタを伴う複数のハロゲンラジエータは、XY平面の少なくとも1つの軸方向で位置制御された形で、作業台の上方に搭載される。この設計は、作成されている金属製品の特定の部分表面区画に対してのみ予熱が実施され、この範囲が処理される表面の上を「移動する」、プロセス制御を実現するのに役立つ。
【0030】
あるいは、関連するリフレクタを伴う複数のハロゲン・スポットライトは、作業台の上方で固定的にまたは最大限の高さ調節が可能となるように搭載されて提供され得る。
【0031】
それ自体知られている方法では、予め適用された出発材料層の所定の地点を選択的に局所加熱させる手段は、電子ビーム銃と、それに関連する、所望の製品の幾何学形状によってビームの位置決めを行う偏向デバイスとを備える。
【0032】
本発明は、少なくとも特定の実施形態では、従来技術の方法を上回るいくつかの顕著な利点を提供する。
【0033】
加熱チャンバの解決策と比較して、主に局所焼結または融合の直前に出発材料の最終層のみを加熱することで、大量の工作物を加熱することができるため、本質的に省エネルギーであり、デバイス全体に対する熱的負荷が低減される。
【0034】
更に、本発明による手順は、前のプロセス・ステップで処理された原料層のプログラミングされた非焼結または融合範囲が比較的高温に恒久的に曝露されることを低減し、したがって、それらの層における非焼結粉末の意図しない軟化および劣化が低減され、製品が完成した後の再利用可能な金属粉末の回収効率を大幅に改善することができる。
【0035】
本発明によれば、より大きい温度差を、融合されるべき粉末またはフィラメント層とそうではないものとの「地点」の間に設定することができるので、このような望ましくない軟化作用が、完全には排除されないとしても大幅に低減される。従来のプロセスでは、このような接着性の軟化部分の完成製品を多額の費用をかけて洗浄することが必要な場合が多いが、かかる洗浄ステップは、本発明を使用するときはほぼ省略することができる。それに加えて、プロセスから戻される原料のスクリーニングまたは他の準備をほぼ省略することができる。
【0036】
既知のEBMプロセスと比べて、本発明者らが見出したことによれば、本発明は、定性的に改善された融合または焼結プロセスの基礎として、出発材料の改善された乾燥を可能にし、また、特に電子ビーム予熱と比べて所望の変化が加速されるという意味で、電子ビームへの後に続く選択的曝露によって、金属粉末の伝導性に対する好ましい影響があるように思われる。
【0037】
本発明者らが見出したことによれば、最後に適用された出発材料層のより大きい範囲の加熱を、アニーリングの意味で、前に適用され選択的に融合または焼結された材料層の後熱と組み合わせることもできる。これにより、作成される金属製品の構造的な品質改善の可能性が提供される。
【0038】
特に、支持構造が製品上に設けられる、レーザー・ベースのプロセスと比較すると、本発明はまた、かかる支持構造が広範囲にわたって排除され、したがってそれらの除去に関わる後処理ステップも排除されることによって、顕著な時間およびコストの削減という利点を提供する。同じく重要な点は、応力緩和にかかる完成製品の熱的後処理全体の排除または少なくとも短縮によって、削減された時間および結果として得られる生産性の利点である。
【0039】
本発明の利点および有用性は、単一の図面に基づいた一実施形態の例についての以下の説明にも見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】金属粉末を一層ずつ適用し、走査によって個々の層を局所加熱することで、金属粉末床101から形成される、立体金属製品P(ここではまだ全体が図示されない)の付加製造の装置100の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
装置は、作業台103を備え、その上で金属粉末床101が一層ずつ適用され、金属製品Pが形成される。矢印Aによって示されるように、作業台103は、層の適用が進むにつれて高さが増加するのに応じて、金属粉末床101の表面を同じ高さレベルで維持するために、垂直に移動可能である。
【0042】
金属粉末を実際の作業エリア内へと供給する粉末適用デバイスは、矢印Bの方向で、即ち矢印Aとは反対の方向で垂直に移動させることができるパンチ105と、粉末適用ブレード107とを備え、ブレードは、矢印Cの方向で移動させることができ、いずれの場合も所定の厚さの個々の層として作業エリア内に(即ち、図面右側の粉末床101内に)供給物として、パンチ105上に提供された金属粉末109を動かす。金属粉末床101が形成される作業台に粉末の層を連続して適用する手段は、図面に例として抽象的に示されているものであり、本発明の実現に関連したこの作業ステップの実際の実行は、確立された技術に従って実施することができる点が注目されるべきである。
【0043】
NIR放射源111は、この例では、単一のハロゲンランプ111aおよび関連するリフレクタ111bで構成され、作業エリアの上方に配置されている。NIR放射源111は、矢印D1およびD2によって図示されるように、粉末床101の上を横方向で前後に移動させることができ、粉末床のそれぞれ照射された区画を、金属粉末の焼結または溶融温度未満の温度まで予熱する役割を果たす。任意に、直前に局所的に溶融された層を熱アニーリングするのにも使用され、例えば、予熱のために矢印D1の方向で放射源を粉末床101の表面上で移動させていた場合は、NIR放射源を矢印D2の方向に「戻す」ことによって、行うことができる。NIR放射源111はまた、いくつかのハロゲンランプおよびそれに応じて適宜整形されたリフレクタを備えてもよい。
【0044】
電子ビーム管113は、関連する座標制御される偏向ユニット115とともに、作業エリアの上方に配置される。偏向ユニット115は、電子ビーム管113によって生成された電子ビームEを、金属製品Pの個々の層に関して製作図によって予め定められた、予熱された粉末床101の表面上の任意の地点に方向付ける。電子ビームは、NIR放射によって表面が予熱された粉末床101を、製品の幾何学形状にしたがって予め定められた衝突点において焼結または溶融温度を超えて加熱する。これにより、それらの地点でそれぞれの下層とともに焼結され、したがって金属製品Pの次の層が形成される。通常の方式では、金属粉末109は、焼結または溶融温度を超えて加熱されていないそれらの地点では粉末状態のままであり、作業台から除去した後に金属製品Pからふるい落とすか、または洗い落とすことができる。
【0045】
電子管113の(図示されない)出力操作電流制御を用いて、電子ビームEの出力、およびしたがって衝突点で達成可能な温度を、ほぼ遅延なく制御することができる。これにより、中でも特に、一方では、焼結または溶融ステップの正確なT制御の実行が、他方ではそれに続く、適用された金属層のアニーリング・ステップが可能になる。
【0046】
装置全体は真空チャンバ117に収容され、真空チャンバは、製品の製造プロセス中に真空チャンバ内に高真空を発生させる、真空発生器119と関連付けられる。
【0047】
更に、本発明はまた、本明細書で図示される例および上記に強調した本発明の態様を、様々な変形例として実現することができる。
図1