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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】とろみ付与用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/269 20160101AFI20221104BHJP
   A23F 3/14 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
A23L29/269
A23F3/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021533002
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2020026715
(87)【国際公開番号】W WO2021010257
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2019130294
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】川上 智美
(72)【発明者】
【氏名】早川 結樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 麻奈
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-146780(JP,A)
【文献】特開2007-124954(JP,A)
【文献】特許第3642482(JP,B2)
【文献】特開昭63-024865(JP,A)
【文献】特開2004-049225(JP,A)
【文献】国際公開第2006/095756(WO,A1)
【文献】足立典史,多様化するキサンタンガムのグレード,New Food Industry,日本,2001年,Vol.43 No.4,pp.49-55
【文献】渡瀬峰男,流れるゲル(ゼリー)物語,食品工業,第52巻第18号,2009年,pp.59-67
【文献】渡瀬峰男,凍結・解凍および加熱・冷却を反復した場合および種々のオリゴ糖を添加した場合のキサンタンガム混合ゲルの,食品工業,第44巻第7号,日本,2001年,pp.60-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F,A23L,A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
CAplus,FSTA (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含み、
前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%であり、
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である、
粉末状のとろみ付与用組成物。
【請求項2】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の30%以下である、請求項1に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項3】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の20%以下である、請求項1又は2に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項4】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の90%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項5】
前記とろみ付与用組成物の比表面積が、50m/kg~80m/kgである、請求項1~4のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項6】
前記組成物3.0gを20℃の脱イオン水100gに3rpsで撹拌しながら5秒間で添加してさらに3rpsで30秒間撹拌した直後の当該脱イオン水の粘度が350mPa・s以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項7】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の25%以上且つ50%以下であり、且つ、
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上且つ40%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項8】
レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の1%以上且つ20%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項9】
前記水溶性カルシウム塩の含有割合が0.5質量%~10.0質量%である、請求項8に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項10】
前記とろみ付与用組成物がクエン酸塩を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項11】
前記クエン酸塩の含有割合が0.5質量%~10.0質量%である、請求項10に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項12】
前記とろみ付与用組成物が賦形剤を含み、
前記賦形剤の含有割合が50質量%~75質量%である、請求項1~11のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項13】
キサンタンガム含有粉末を、バインダーを用いて造粒することによって製造される、請求項1~12のいずれか一項に記載のとろみ付与用組成物。
【請求項14】
キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含有且つ前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%である粉末を、バインダーを用いて造粒する造粒工程を含み、
前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる、
とろみ付与用組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、とろみ付与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下困難者にとって、例えば水又はお茶などの液体をそのまま摂取することは困難な場合がある。そのため、液体にとろみを付与して摂取しやすくすることがしばしば行われる。これまでに、液体にとろみを付与するための組成物に関していくつか提案されている。例えば、下記特許文献1には、キサンタンガムと水溶性カルシウム塩とを含有することを特徴とするトロミ剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-271258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
とろみ付与用組成物を液体に混合した場合にダマが生じることは望ましくない。ダマが生じる場合は、液体に与えられるとろみが不十分になることもある。また、ダマが生じる場合は、ダマが異物と認識され、飲み込みやすさに悪影響を与える可能性もある。そこで、本技術は、ダマを生じることなくとろみを液体に付与することができる新たなとろみ付与用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物について検討したところ、特定の粒度分布がダマ発生を抑制するために適していることを見出した。
【0006】
すなわち、本技術は、キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含み、前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%であり、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上である、粉末状のとろみ付与用組成物を提供する。
前記とろみ付与用組成物は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の30%以下であってよい。
前記とろみ付与用組成物は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の20%以下であってよい。
前記とろみ付与用組成物は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の90%以上であってよい。
前記とろみ付与用組成物の比表面積は、50m2/kg~80m2/kgでありうる。
前記組成物3.0gを20℃の脱イオン水100gに3rpsで撹拌しながら5秒間で添加してさらに3rpsで30秒間撹拌した直後の当該脱イオン水の粘度が350mPa・s以上であってよい。
前記とろみ付与用組成物は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の25%以上且つ50%以下であり、且つ、
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上且つ40%以下であってよい。
前記とろみ付与用組成物は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の1%以上且つ20%以下であってよい。
前記水溶性カルシウム塩の含有割合は、0.5質量%~10.0質量%であってよい。
前記とろみ付与用組成物はクエン酸塩を含んでよい。
前記クエン酸塩の含有割合は、0.5質量%~10.0質量%であってよい。
前記とろみ付与用組成物が賦形剤を含んでよく、前記賦形剤の含有割合は50質量%~75質量%であってよい。
前記とろみ付与用組成物は、キサンタンガム含有粉末を、バインダーを用いて造粒することによって製造されてよい。
また、本技術は、キサンタンガム及び水溶性カルシウム塩を含有且つ前記キサンタンガムの含有割合が20質量%~40質量%である粉末を、バインダーを用いて造粒する造粒工程を含み、前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われる、とろみ付与用組成物の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0007】
本技術のとろみ付与用組成物は、ダマを生じることなく液体にとろみを付与することができる。さらに、本技術のとろみ付与用組成物は、液体に迅速にとろみを付与することもできる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】とろみ付与用組成物を液体に添加した場合におけるダマ発生の評価結果を示す写真である。
図2】とろみ付与用組成物を脱イオン水に添加した場合の粘度の測定結果を示すグラフである。
図3】とろみ付与用組成物をお茶に添加した場合の粘度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0010】
1.本技術のとろみ付与用組成物
【0011】
本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムを含み、粉末状であり、且つ、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり且つ粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である。
キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物は、当該とろみ付与用組成物と液体との混合の仕方によっては、ダマが生じることもある。例えば、当該とろみ付与用組成物を液体に添加した後しばらく時間が経過してから撹拌を行った場合にはダマが生じうる。本発明者らは、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物について検討したところ、特定の粒度分布が、ダマの形成を防ぐために特に適していることを見出した。
また、本発明者らは、キサンタンガムを含むとろみ付与用組成物が特定の粒度分布を有する場合に、粘度の発現性に優れていることも見出した。
以下で、本技術のとろみ付与用組成物の詳細を説明する。
【0012】
(1)とろみ付与用組成物の組成
【0013】
本技術のとろみ付与用組成物はキサンタンガムを含む。キサンタンガムは、グルコース、マンノース、及びグルクロン酸を構成単位として有する多糖類である。キサンタンガムの主鎖はグルコースから構成され、且つ、キサンタンガムの側鎖はマンノース及びグルクロン酸から構成される。前記側鎖は、前記主鎖のグルコース残基に、1つおきに結合していてよい。前記側鎖の末端のマンノース残基は、ピルビン酸を有してよく又は有していなくてもよい。前記主鎖に結合したマンノース残基はアセチル化されていてよく又はアセチル化されていなくてもよい。
前記キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)により産生される多糖類であってよく、より特にはキサントモナス・キャンペストリスが菌体外に分泌した多糖類であってよい。
【0014】
前記キサンタンガムの含有割合は、例えば40質量%以下であり、好ましくは38質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらにより好ましくは33質量%以下であってよい。
前記キサンタンガムの含有割合は、例えば20質量%以上であり、好ましくは22質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、特に好ましくは27質量%以上であってよい。
前記キサンタンガムの含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば20質量%~40質量%、好ましくは22質量%~38質量%であり、より好ましくは25質量%~35質量%である。
前記キサンタンガムの含有割合が高すぎる場合は、ダマが生じやすくなることがある。また、前記キサンタンガムの含有割合が低すぎる場合は、とろみを付与するためにより多くのとろみ付与用組成物が必要となり、効率的でなくなりうる。
前記キサンタンガムの含有割合は、本技術のとろみ付与用組成物に含まれる成分のうち、バインダーとして用いられる水以外の成分の合計質量に対する、キサンタンガムの質量の割合である。すなわち、当該キサンタンガムの含有割合は、本技術のとろみ付与用組成物100質量部に対して、その原料として使用したキサンタンガムの含量の割合とほぼ同義である。本明細書内において、キサンタンガム以外の成分(例えば水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩、及び賦形剤など)の含有割合も、同様である。すなわち、本技術の組成物中の各成分の含有割合は、バインダーとして用いられる水以外の成分の合計質量に対する各成分の質量の割合である。
【0015】
本技術のとろみ付与用組成物はさらに水溶性カルシウム塩を含んでよい。当該水溶性カルシウム塩は、例えば乳酸カルシウム又は塩化カルシウムであり、より好ましくは乳酸カルシウムである。カルシウム塩は水和物であってもよく、乳酸カルシウム五水和物が好ましい。
【0016】
水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。
水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の含有割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
前記水溶性カルシウム塩の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば0.5質量%~10.0質量%、好ましくは1.0質量%~6.0質量%、より好ましくは1.5質量%~4.0質量%、さらにより好ましくは2.0質量%~3.0質量%である。
前記水溶性カルシウム塩が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生を防ぐために適しており、且つ、効率的な粘度発現に適している。
【0017】
本技術のとろみ付与用組成物はクエン酸塩をさらに含んでよい。前記クエン酸塩は、好ましくはクエン酸のアルカリ金属塩であり、より好ましくはクエン酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩、又は、クエン酸のナトリウム塩及びクエン酸のカリウム塩の混合物であり、さらにより好ましくはクエン酸のナトリウム塩である。当該クエン酸のナトリウム塩は、より好ましくはクエン酸三ナトリウムであり、例えばクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0018】
前記クエン酸塩の含有割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。
前記クエン酸塩の含有割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
前記クエン酸塩の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば0.5質量%~10.0質量%、好ましくは1.0質量%~6.0質量%、より好ましくは1.5質量%~4.0質量%、さらにより好ましくは2.0質量%~3.0質量%である。
前記クエン酸塩が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生を防ぐために適しており、且つ、効率的な粘度発現に適している。
【0019】
前記とろみ付与用組成物はさらに賦形剤を含みうる。当該賦形剤は、例えばデキストリン、澱粉、及び糖類からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよい。
前記デキストリンとして、例えばデキストリン、アミロデキストリン、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、及びシクロデキストリンを挙げることができる。
前記澱粉として、トウモロコシ由来澱粉、モチトウモロコシ由来澱粉、馬鈴薯由来澱粉、甘蔗由来澱粉、小麦由来澱粉、米由来澱粉、餅米由来澱粉、タピオカ由来澱粉、及びサゴヤシ由来澱粉などの生澱粉、及び、当該生澱粉のいずれかに物理的又は化学的処理を施した加工澱粉を挙げることができる。当該加工澱粉として、酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、例えばカルボキシメチル基又はヒドロキシアルキル基などが導入されたエーテル化澱粉、例えばアセチル基などが導入されたエステル化澱粉、澱粉の2カ所以上の水酸基間に多官能基を結合させた架橋澱粉、例えばオクテニルコハク酸基などの疎水基が導入された乳化性澱粉、及び湿熱処理又は乾熱処理された澱粉を挙げることができる。
前記糖類として、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、澱粉糖化物、還元澱粉水飴、及びトレハロースを挙げることができる。
前記賦形剤として、これら列挙された材料のうちの1つ又は2以上の組合せが用いられてよい。
【0020】
本技術の好ましい実施態様に従い、前記賦形剤はデキストリンである。デキストリンを賦形剤として用いることが、本技術の組成物の液体への分散性及び/又は溶解性の向上に貢献する。本技術において用いられるデキストリンのデキストロース当量(DE)は、好ましくは5~20であり、より好ましくは10~15である。この数値範囲内のDEを有するデキストリンが、本技術の組成物の液体への分散性及び/又は溶解性の向上に貢献する。
【0021】
前記賦形剤(特にはデキストリン)の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらにより好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは62質量%以上である。
前記賦形剤(特にはデキストリン)の含有割合は、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは73質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは68質量%以下である。
前記賦形剤の含有割合の数値範囲の上限値及び下限値は、上記で述べた値のうちからそれぞれ選択されてよく、当該含有割合は、例えば50質量%~75質量%、好ましくは55質量%~75質量%であり、より好ましくは60質量%~70質量%である。
上記数値範囲内の含有割合が、本技術の組成物の液体への分散性及び/又は溶解性の向上に貢献する。
【0022】
本技術の一つの好ましい実施態様に従い、本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムと、水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩とを含む。特に好ましくは、当該水溶性カルシウム塩は乳酸カルシウムであり、且つ、当該クエン酸塩はクエン酸のナトリウム塩である。これら三成分を含むことが、ダマ形成の抑制のために適しており、さらには粘度発現のためにも適している。また、これら三成分を含むとろみ付与用組成物に関して以下で述べる粒度分布を採用することが、ダマ形成の抑制にとって特に好ましく、さらには粘度発現のためにも特に好ましい。
これら三成分の合計含有割合が、好ましくは25質量%~45質量%、より好ましくは30質量%~40質量%、さらにより好ましくは32質量%~38質量%であってよい。この実施態様において、本技術のとろみ付与用組成物は、賦形剤としてデキストリンを含んでよい。デキストリンの含有割合が、好ましくは55質量%~75質量%、より好ましくは60質量%~70質量%、さらにより好ましくは62質量%~68質量%である。
例えば、本技術のとろみ付与用組成物は、キサンタンガムと、乳酸カルシウムと、クエン酸のナトリウム塩と、賦形剤(特にはデキストリン)の合計含有割合が90質量%以上であってよく、より好ましくは95質量%以上であってよく、さらにより好ましくは98質量%以上であってよい。
【0023】
(2)とろみ付与用組成物の特性及び形状
【0024】
本技術のとろみ付与用組成物は粉末状であり、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である。この粒度分布を有することによって、当該組成物を液体に添加及び混合した場合におけるダマの発生をより確実に防ぐことができる。例えば、当該組成物を液体に添加してしばらく経過した後に撹拌した場合においても、ダマが生じることなく、当該液体にとろみを付与することができる。
本明細書内において、「ダマ」 とは、粉末を液体に加えたときに、溶解又は分散することなく集合した粉末の集合物を意味してよく、特には肉眼で確認できる程度の大きさを有する塊をいう。
【0025】
本明細書内において、粒度分布は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定される。当該測定は、JIS Z8825-1に準拠した噴射型乾式測定である。当該測定を行うための装置として、市販入手可能なレーザー回折式粒度分析測定装置が用いられてよく、例えばMastersizer 3000(Malvern Panalytical社)が用いられる。
【0026】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、上記のとおり、全粒子数の50%以下であり、より好ましくは49%以下、さらにより好ましくは48%以下である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、例えば25%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらにより好ましくは35%以上であり、特に好ましくは37%以上である。
粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0027】
本技術の好ましい実施態様に従い、前記とろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは37%以上である。粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が上記下限値以上であることによって、本技術のとろみ付与用組成物は、ダマ発生を防ぐだけでなく、より高い粘度を液体に付与することができる。
この実施態様において、前記とろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合は、例えば35%~50%であり、より好ましくは37%~50%である。
【0028】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合は、上記のとおり、全粒子数の15%以上であり、より好ましくは18%以上、さらにより好ましくは20%以上である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合は、例えば40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらにより好ましくは30%以下である。
粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0029】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは全粒子数の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合は、例えば1%以上であり、より好ましくは2%以上であり、さらにより好ましくは3%以上である。
粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができ、より高い粘度を付与することにも貢献する。
【0030】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の30%以下であり、より好ましくは27%以下、さらにより好ましくは25%以下である。
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、例えば5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらにより好ましくは12%以上である。
粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0031】
特に好ましい実施態様において、本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の15%以上であり、より好ましくは16%以上、さらにより好ましくは17%以上である。
粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができ、且つ、より高い粘度を付与することができる。
【0032】
本技術のとろみ付与用組成物を構成する粒子のうち、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の90%以上であり、より好ましくは93%以上、さらにより好ましくは95%以上である。
粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が上記数値範囲内にあることによって、ダマの発生をより確実に防ぐことができる。
【0033】
本技術のとろみ付与用組成物の比表面積が、50m/kg~80m/kgであり、より好ましくは60m/kg~80m/kgであり、さらにより好ましくは60m/kg~75m/kgである。当該比表面積が上記数値範囲内にあることが、ダマ発生の抑制に貢献しうる。
特に好ましくは、本技術のとろみ付与用組成物の比表面積は60m/kg~80m/kgであり、さらにより好ましくは60m/kg~75m/kgであってよい。当該比表面積が上記数値範囲内にあることが、より高い粘度を液体に付与するために適している。
前記比表面積は、以下の実施例において述べるMastersizer 3000(Malvern Panalytical社)による粒度分布の測定に際して、同時に測定することができる。
【0034】
本明細書内において、「とろみ」とは、液体が多少の粘度を有する状態を意味してよく、例えば水よりも高い粘度を有する状態をいう。当該粘度は、上記で述べたとおりであってよい。
また、本明細書内において、「とろみ付与用組成物」とは、液体の粘度を増加させるために用いられる組成物、すなわち増粘するための組成物を意味してよい。「とろみ付与用組成物」は、増粘剤または増粘性組成物ということもできる。
【0035】
本技術のとろみ付与用組成物は、当該組成物3.0gを20℃の脱イオン水100gに3rpsで撹拌しながら5秒間で添加してさらに3rpsで30秒間撹拌した直後の当該脱イオン水の粘度が、好ましくは350mPa・s以上、より好ましくは360mPa・s以上、さらにより好ましくは370mPa・s以上になるというとろみ付与特性を有する。本技術のとろみ付与用組成物は、当該とろみ付与特性を有することによって、より効率的に液体に粘度を付与することができる。
【0036】
(3)とろみ付与用組成物の製造方法
【0037】
本技術のとろみ付与用組成物は、当該組成物に含まれる成分を混合及び造粒することにより製造することができる。本技術のとろみ付与用組成物の製造方法は例えば、キサンタンガム含有粉末をバインダーを用いて造粒する造粒工程を含む。当該造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われうる。
前記キサンタンガム含有粉末は、例えば、キサンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物であってよい。例えば、前記製造方法は、サンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物を得る混合工程を含みうる。
すなわち、本技術の一つの実施態様において、前記製造方法は、
キサンタンガム、水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)、クエン酸塩、及び賦形剤を混合して粉末状混合物を得る混合工程、及び
前記粉末状混合物を、バインダーを用いて造粒して組成物を得る造粒工程
を含みうる。当該組成物が、本技術のとろみ付与用組成物であってよい。
【0038】
前記混合工程において用いられるキサンタンガム、水溶性カルシウム塩、クエン酸塩、及び賦形剤は好ましくは粉末状であり、すなわち、前記混合工程において、粉末状のキサンタンガム、粉末状の水溶性カルシウム塩、粉末状のクエン酸塩、及び粉末状の賦形剤が混合されうる。これら成分の詳細は、上記「(1)とろみ付与用組成物の組成」において述べたとおりであってよい。
【0039】
また、これらの成分の、前記混合工程における配合割合は、上記「(1)とろみ付与用組成物の組成」において述べた組成が得られるように設定されてよく、例えば上記「(1)とろみ付与用組成物の組成」において述べた含有割合が、これら成分の前記混合工程における配合割合として採用されてよい。
【0040】
例えば、前記キサンタンガムの配合割合は、上記「(1)とろみ付与用組成物の組成」において述べたように、例えば40質量%以下であり、好ましくは38質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらにより好ましくは33質量%以下であってよい。前記キサンタンガムの含有割合は、例えば20質量%以上であり、好ましくは22質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、特に好ましくは27質量%以上であってよい。前記キサンタンガムの配合割合は、本技術のとろみ付与用組成物に含まれる成分のうち、バインダーとして用いられる水以外の成分の合計質量に対する、キサンタンガムの質量の割合である。本明細書内において、キサンタンガム以外の成分(例えば水溶性カルシウム塩と、クエン酸塩、及び賦形剤など)の配合割合も、同様である。
【0041】
また、前記水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の配合割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。前記水溶性カルシウム塩(特には乳酸カルシウム)の配合割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0042】
前記クエン酸塩の配合割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であってよい。前記クエン酸塩の配合割合は、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらにより好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下、3.5質量%以下、又は3.0質量%以下であってよい。
【0043】
前記賦形剤(特にはデキストリン)の配合割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、さらにより好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは62質量%以上である。前記賦形剤(特にはデキストリン)の配合割合は、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは73質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは68質量%以下である。
【0044】
本技術の一つの好ましい実施態様に従い、前記混合工程において、キサンタンガム、水溶性カルシウム塩、及びクエン酸塩の三成分の合計配合割合が、好ましくは25質量%~45質量%、より好ましくは30質量%~40質量%、さらにより好ましくは32質量%~38質量%であってよい。この実施態様において、前記混合工程において、賦形剤としてデキストリンが用いられてよい。当該デキストリンの配合割合は、好ましくは55質量%~75質量%、より好ましくは60質量%~70質量%、さらにより好ましくは62質量%~68質量%である。
本技術の特に好ましい実施態様において、前記混合工程において、キサンタンガムと、乳酸カルシウムと、クエン酸のナトリウム塩と、賦形剤(特にはデキストリン)の合計配合割合は、90質量%以上であってよく、より好ましくは95質量%以上であってよく、さらにより好ましくは98質量%以上であってよい。
【0045】
当該造粒工程における造粒条件を調整することによって、上記で述べた粒度分布を有する本技術のとろみ付与用組成物を得ることができる。代替的には、造粒工程後に、上記で述べた粒度分布を有するように、ふるいを用いてふるい分けされてもよい。
【0046】
前記造粒工程において用いられるバインダーは、例えば水であってよい。
【0047】
例えば、前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下となり、且つ、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上となるように、造粒が行われうる。
【0048】
また、前記造粒工程において、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定したときに、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の50%以下、より好ましくは49%以下、さらにより好ましくは48%以下となるように、造粒が行われうる。
また、前記造粒工程において、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、例えば25%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは35%以上、特に好ましくは37%以上となるように造粒が行われうる。
【0049】
本技術の好ましい実施態様に従い、前記造粒工程において、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは35%以上であり、より好ましくは37%以上となるように、造粒が行われうる。
また、この実施態様において、粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が、例えば35%~50%であり、より好ましくは37%~50%となるように造粒が行われうる。
【0050】
また、前記造粒工程において、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、全粒子数の15%以上、より好ましくは18%以上、さらにより好ましくは20%以上となるように、造粒が行われうる。
また、前記造粒工程において、粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が、例えば40%以下、より好ましくは35%以下、さらにより好ましくは30%以下となるように造粒が行われうる。
【0051】
前記造粒工程において、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは全粒子数の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下となるように、造粒が行われてよい。
また、前記造粒工程において、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が、例えば1%以上、より好ましくは2%以上、さらにより好ましくは3%以上となるように造粒が行われてよい。
【0052】
前記造粒工程において、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは、全粒子数の30%以下、より好ましくは27%以下、さらにより好ましくは25%以下となるように造粒が行われてよい。
前記造粒工程において、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合が、例えば5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは12%以上となるように、造粒が行われてよい。
【0053】
前記造粒工程において、粒子サイズが75μm以下である粒子の数の割合は、好ましくは、全粒子数の15%以上、より好ましくは16%以上、さらにより好ましくは17%以上となるように造粒が行われてよい。
【0054】
前記造粒工程において、粒子サイズが500μm以下である粒子の数の割合が、好ましくは、全粒子数の90%以上、より好ましくは93%以上、さらにより好ましくは95%以上となるように造粒が行われてよい。
【0055】
前記混合工程及び前記造粒工程は、市販入手可能な造粒装置を用いて行われてよく、例えば、流動層造粒装置を用いることができる。
【0056】
(4)とろみ付与用組成物の使用方法
【0057】
本技術のとろみ付与用組成物は、液体にとろみを付与するために用いられる。当該液体は、好ましくは水を含む液体であり、より好ましくは水を母体として含む液体である。
当該液体は、好ましくは液状飲食品である。当該液状飲食品は、例えば茶成分を含む液体、蛋白質及び/又は脂肪を含む液体、酸成分を含む液体、塩分を含む液体、又はミネラルを含む液体でありうる。当該液状飲食品のより具体的な例は、以下のとおりである。
水;
乳性飲料、例えば牛乳、加工乳、乳飲料、乳酸菌飲料、及びドリンクヨーグルトなど;
清涼飲料、例えば果汁又は野菜汁入りの清涼飲料、スポーツ飲料、機能性成分含有飲料、イオン飲料、ビタミン含有飲料など;
果汁飲料、例えばオレンジジュースなど;
野菜汁飲料、例えばトマトジュース及びニンジンジュースなど;
茶飲料、例えば緑茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、玄米茶飲料、抹茶飲料、及びほうじ茶飲料など;
コーヒー飲料;
ココア飲料;
栄養補給用飲料、例えばビタミン補給用飲料など;
酒、例えば果実酒(ワインなど)、日本酒、及びウィスキーなど;
スープ、例えば味噌汁、清汁、コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ、及び中華スープなど;
液状最終食品、例えばシチュー、カレー、及びグラタンなど;
特殊食品又は治療食、例えば蛋白質・リン・カリウム調整食品、塩分調整食品、油脂調整食品、整腸作用食品、カルシウム・鉄・ビタミン強化食品、低アレルギー食品、濃厚流動食、ミキサー食、及びキザミ食など;及び
液状調味料、例えば醤油及びソースなど。
本技術のとろみ付与用組成物は、液状飲食品のこれらの具体例のいずれかにとろみを付与するために用いられてよい。
すなわち、本技術は、本技術のとろみ付与用組成物を含む飲食品組成物も提供する。当該飲食品組成物は、例えば10mPa・s~1000mPa・sの粘度、特には100mPa・s~800mPa・s、より特には200mPa・s~600mPa・s、さらにより特には300mPa・s~500mPa・sを有しうる。当該粘度を有する飲食品組成物は、例えば嚥下困難者用であってよいが、嚥下困難者以外のヒトにより摂取されてもよい。
【0058】
本技術のとろみ付与用組成物は、例えば液体(特には上記液状飲食品)の粘度を10mPa・s~1000mPa・sにするために用いられてよく、例えば10mPa・s未満の粘度を有する液体(特には上記液状飲食品)の粘度を10mPa・s~1000mPa・sとするために用いられてよい。当該粘度は、100mPa・s~800mPa・s、200mPa・s~600mPa・s、又は、300mPa・s~500mPa・sであってもよい。
本技術のとろみ付与用組成物によるとろみ付与後の液体の粘度は、上記のとおり10mPa・s~1000mPa・sであり、100mPa・s~800mPa・sであり、例えば200mPa・s~600mPa・sであってよい。当該粘度は、当該液体を摂取する対象(ヒト)の口腔機能に応じて適宜設定されてよい。
本明細書内において、粘度は、E型回転粘度計(品番:MCR302、製造会社名:株式会社アントンパール・ジャパン)を用いて以下の条件下で測定される。
ずり速度:50sec-1
コーン角度:1°
コーン半径:50mm
ギャップ:100μm
【0059】
本技術のとろみ付与用組成物によって液体にとろみを付与するために、当該組成物は当該液体(特には上記液状飲食品)に添加及び混合される。液体へのとろみ付与のために、例えば液体150gに対して好ましくは0.1g~15g、より好ましくは0.3g~13g、さらにより好ましくは0.5g~10gの当該組成物が添加及び混合されてよい。
【0060】
本技術のとろみ付与用組成物によってとろみ付与される液体の温度は、好ましくは0℃~60℃、より好ましくは3℃~55℃、さらにより好ましくは5℃~50℃であってよい。本技術のとろみ付与用組成物は溶解性及び/分散性に優れているので、このような幅広い温度の液体に添加されても、ダマを生じることなく液体にとろみを付与することができる。
【0061】
以下で実施例を参照して本技術をより詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0062】
1.とろみ付与用組成物の製造
【0063】
キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)30質量部、乳酸カルシウム五水和物(第一化成社製)2.6質量部、クエン酸三ナトリウム二水和物2.4質量部、及びデキストリン(東亜化成社製)65質量部を流動層造粒装置により造粒して造粒物を得た。当該造粒物を、60M(メッシュ)(目開き250μm)、100M(目開き150μm)、及び200M(目開き75μm)の3つの篩(いずれもJIS標準篩)を用いて篩分けした。当該篩分けにより、100Mパス200Mオンの粉末状組成物(以下「実験例1の組成物」という)、60Mパス100Mオンの粉末状組成物(以下「実験例2の組成物」という)、及び60Mオンの粉末状組成物(以下「実験例3の組成物」という)を得た。
【0064】
実験例1~3の組成物それぞれについて、レーザー回折式粒度分析測定装置(Mastersizer 3000、Malvern Panalytical社)を用いてレーザー回折式粒度分析
測定法により粒度分布を測定した。測定条件は以下のとおりであった。
非球形粒子のモード:「はい」を選択
Fraunhoferタイプ:「いいえ」を選択
分散媒:「Dry dispersion」
散乱強度の下限:1.00%
散乱強度の上限:10.00%
分散ユニット:Aero S(乾式の分散ユニット)
フィードレート:41
空気圧:3.5bar
ベンチュリの種類:標準ベンチュリ
トレイの種類:汎用トレイ
ホッパーのギャップ:2.00mm
洗浄シーケンス:強力
解析モデル:汎用
シングル測定結果モード:「いいえ」を選択
オフの検出器数:0
乾燥微粉末モード:「いいえ」を選択
【0065】
粒度分布の測定結果を以下表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
また、上記粒度分布測定に際して、各実験例の組成物についての比表面積も測定した。比表面積の測定結果を以下表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
2.とろみ付与用組成物の評価
【0070】
(1)ダマ発生の有無についての評価
【0071】
3.0gの実験例1の組成物を、20℃に温度調節された脱イオン水100gに一度に添加し、添加直後から3rpsで10秒間撹拌し、そして20秒間静置した。同じ操作を、実験例2及び3の組成物についても行った。
【0072】
当該静置後の溶液の状態を図1上部の(A)行に示す。(A)行に示されるとおり、実験例1の組成物を水に溶解させた場合は、小さいサイズのダマが多数確認された。一方で、実験例2及び実験例3の組成物を水に溶解させた場合は、ダマは確認されなかった。
【0073】
次に、3.0gの実験例1の組成物を、20℃に温度調節された脱イオン水100gに一度に添加し3秒静置した。当該静置後、3rpsで30秒間撹拌した。同じ操作を、実験例2及び3の組成物についても行った。
【0074】
当該撹拌後の溶液の状態を図1の下部の(B)行に示す。図1に示されるとおり、実験例1の組成物を水に溶解させた場合は、大きいサイズのダマが多数確認された。一方で、実験例2及び実験例3の組成物を水に溶解させた場合は、ダマは確認されなかった。
【0075】
以上のとおり、実験例2及び3の組成物は、実験例1の組成物よりも、水に溶解した場合にダマが生じにくい。実験例1~3の組成物は、上記表1に示されるとおりの粒度分布を有する。そのため、キサンタンガムを含む組成物が、例えば粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の50%以下であり且つ粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上である粒度分布を有する場合に、当該組成物の液体への溶解時におけるダマの発生が抑制されることが分かる。
【0076】
(2)粘度発現についての評価
【0077】
3.0gの実験例1の組成物を、20℃の温度調節された脱イオン水100gに3rpsで撹拌しながら5秒間で添加し、当該添加後3rpsでさらに30秒間撹拌した。当該撹拌後の60分間に、溶液の粘度を複数回測定した。同じ操作を、実験例2及び3の組成物についても行った。当該粘度の測定は、E型回転粘度計(MCR302、株式会社アントンパール・ジャパン)を用いて行われ、50sec-1で2分間測定後の数値が読み取られた。粘度の測定結果を、以下の表3及び図2に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3及び図2に示されるとおり、実験例1及び2の組成物を用いた場合は、実験例3の組成物と比べて、水に付与される粘度がより高かった。さらに、実験例2の組成物が、水に付与される粘度が最も高かった。
また、実験例1及び2の組成物を用いた場合は、前記30秒間の撹拌直後において、粘度が350mPa・s以上であった。一方、実験例3の組成物を用いた場合は、前記30秒間の撹拌直後において、粘度が350mPa・s未満であった。
【0080】
次に、3.0gの実験例1の組成物を、20℃の温度調節された緑茶(茶飲料である)100gに撹拌しながら添加し、当該添加後3rpsでさらに30秒間撹拌した。当該撹拌後60分間に、溶液の粘度を複数回測定した。同じ操作を、実験例2及び3の組成物についても行った。当該粘度は、上記と同じ方法で測定された。粘度の測定結果を、以下の表4及び図3に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
表4及び図3に示されるとおり、実験例1及び2の組成物を用いた場合は、実験例3の組成物と比べて、緑茶に付与される粘度がより高かった。さらに、実験例2の組成物が、緑茶に付与される粘度が最も高かった。
【0083】
以上のとおり、実験例1及び2の組成物は、実験例3の組成物よりも、より高い粘度を液体に付与することができる。実験例1~3の組成物は、上記表1に示されるとおりの粒度分布を有する。そのため、キサンタンガムを含む組成物が、例えば粒子サイズが75μm超であり且つ150μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の35%以上且つ50%以下であり且つ粒子サイズが150μm超であり且つ250μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の15%以上であることに加え、粒子サイズが250μm超であり且つ500μm以下である粒子の数の割合が全粒子数の20%以下である粒度分布を有することによって、液体に溶解させた場合におけるダマの発生を抑制することに加え、より高い粘度を液体に付与することができることが分かる。
図1
図2
図3