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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】鉄筋径の呼び名の判定器具
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/38 20060101AFI20221104BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20221104BHJP
   E04C 5/16 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01B3/38
E04G21/18 A
E04C5/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022085366
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2022-05-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 智之
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 浩則
(72)【発明者】
【氏名】久家 啓
(72)【発明者】
【氏名】濱井 洋
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-205474(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115417(JP,U)
【文献】登録実用新案第3018332(JP,U)
【文献】米国特許第05459936(US,A)
【文献】実開昭61-060101(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2129332(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0229137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-3/08
3/11-3/56
E04G 21/18
E04C 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具であって、
上辺、両側辺、下辺を含む基部と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される一方の側部であって、当該一方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の一部と結合する、前記一方の側部と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される他方の側部であって、当該他方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の別の一部と結合する、前記他方の側部と、
溝部であって、当該溝部は、前記基部の前記上辺の残りの一部と、前記一方の側部の前記内側辺と、前記他方の側部の前記内側辺とからなり、前記基部の前記上辺は、前記一部と前記別の一部と前記残りの一部とからなる、前記溝部と、
を備え、
前記一方の側部の前記内側辺と前記他方の側部の前記内側辺の少なくとも一方には、複数の呼び名の目盛りがあり、
前記内側辺の少なくとも一方は、階段状であり、
前記呼び名の目盛りの幅yは、y=√(4bc-4c^2)で求められ、対象とする鉄筋の最外径の半径をb、その一つ小さい異形棒鋼の最外径の半径をcとすることを特徴とすることを特徴とする判定器具。
【請求項2】
異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具であって、
上辺、両側辺、下辺を含む基部と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される一方の側部であって、当該一方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の一部と結合する、前記一方の側部と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される他方の側部であって、当該他方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の別の一部と結合する、前記他方の側部と、
溝部であって、当該溝部は、前記基部の前記上辺の残りの一部と、前記一方の側部の前記内側辺と、前記他方の側部の前記内側辺とからなり、前記基部の前記上辺は、前記一部と前記別の一部と前記残りの一部とからなる、前記溝部と、
を備え、
前記一方の側部の前記内側辺と前記他方の側部の前記内側辺の少なくとも一方には、複数の呼び名の目盛りがあり、
前記内側辺の少なくとも一方は、階段状であり、
前記呼び名の目盛りの幅yは、y=√(K^2-(2*J’-J)^2)で求められ、対象とする異形棒鋼の短軸の最外径の最大値の半分をJとし、長軸の最外径の最大値の半分をKとし、その一つ小さい異形棒鋼の最大値の半分をJ’とすることを特徴とする判定器具。
【請求項3】
さらに、呼び名を判定する測定補助手段を備え、当該測定補助手段は、測定対象となる異形棒鋼に固定するための固定手段を有し、
前記補助手段における呼び名の目盛りの長さは、基準となる節を基準として、対象となる呼び名の節の平均間隔の最大値のN倍の長さであり、Nは1以上の整数であることを特徴とする請求項1または2の判定器具。
【請求項4】
前記呼び名の目盛りの範囲は、前記呼び名の目盛りの高さ以下で、且つ前記呼び名のひとつ下の規格の呼び名の目盛りの高さより高く、
ここで、前記呼び名の目盛りが最も小さい場合における前記呼び名の目盛りの範囲は、前記呼び名の目盛りの高さ以下で、且つ前記基部の上辺の高さより高いことを特徴とする請求項1、2、3のいずれか一項に記載の判定器具。
【請求項5】
前記基部の前記下辺から前記溝部への貫通部と、当該貫通部を通過して異形棒鋼の呼び名を判定する補助具とを備えることを特徴とする、請求項1または2の判定器具。
【請求項6】
異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の製造方法であって、
上辺、両側辺、下辺を含む基部を成形する工程と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される一方の側部であって、当該一方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の一部と結合する、前記一方の側部を成形する工程と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される他方の側部であって、当該他方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の別の一部と結合する、前記他方の側部を成形する工程と、
溝部であって、当該溝部は、前記基部の前記上辺の残りの一部と、前記一方の側部の前記内側辺と、前記他方の側部の前記内側辺とからなり、前記基部の前記上辺は、前記一部と前記別の一部と前記残りの一部とからなる、前記溝部を成形する工程と、
更に、前記一方の側部の前記内側辺と前記他方の側部の前記内側辺の少なくとも一方には、複数の呼び名の目盛りを付する工程と、
を備え、
前記内側辺の少なくとも一方は、階段状であり、
前記呼び名の目盛りの幅yは、y=√(4bc-4c^2)で求められ、対象とする鉄筋の最外径の半径をb、その一つ小さい異形棒鋼の最外径の半径をcとすることを特徴とする判定器具の製造方法。
【請求項7】
異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の製造方法であって、
上辺、両側辺、下辺を含む基部を成形する工程と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される一方の側部であって、当該一方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の一部と結合する、前記一方の側部を成形する工程と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される他方の側部であって、当該他方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の別の一部と結合する、前記他方の側部を成形する工程と、
溝部であって、当該溝部は、前記基部の前記上辺の残りの一部と、前記一方の側部の前記内側辺と、前記他方の側部の前記内側辺とからなり、前記基部の前記上辺は、前記一部と前記別の一部と前記残りの一部とからなる、前記溝部を成形する工程と、
更に、前記一方の側部の前記内側辺と前記他方の側部の前記内側辺の少なくとも一方には、複数の呼び名の目盛りを付する工程と、
を備え、
前記内側辺の少なくとも一方は、階段状であり、
前記呼び名の目盛りの幅yは、y=√(K^2-(2*J’-J)^2)で求められ、対象とする異形棒鋼の短軸の最外径の最大値の半分をJとし、長軸の最外径の最大値の半分をKとし、その一つ小さい異形棒鋼の最大値の半分をJ’とすることを特徴とする判定器具の製造方法。
【請求項8】
更に、前記基部の側部の一部または下側の一部を切断する工程を備えることを特徴とする、請求項6または7の判定器具の製造方法。
【請求項9】
請求項3の判定器具を用いた対象鉄筋の呼び名を測定する方法であって、
測定対象の鉄筋の基準となる節に前記測定補助手段の前記固定手段を押し当てるステップと、
前記基準となる節から、N番目の節の外側に記載されている呼び名を判断するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋径の判定器具に関するものであり、特に、異形棒鋼の呼び名を判定する器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋とは、コンクリート製の建造物を作るときに、建造物の全体の強度を増すために、中に入れる鋼鉄の棒である。鉄筋には、表面に突起のある異形棒や丸棒などの種類があるが、現在ではほぼ異形棒鋼が使用されている。
【0003】
鉄筋は引っ張りには強いが、細長く曲がりやすいので圧縮力をかけると曲がってしまう。その一方で、コンクリートは、圧縮力には強いが、引っ張り力にはほとんど抵抗せず、引っ張り力と圧縮力の組み合わせである曲げをかけた場合は折れてしまう。そこで、コンクリートの中に鉄筋を入れることにより、両者の短所を補い合い、引っ張り力、圧縮力、曲げのいずれに対しても強い建造物とすることができる。建造物を作る現場では、鉄筋の種類(特に、鉄筋の径)を適切に選択することが必要である。
【0004】
鉄筋コンクリート造における鉄筋の役割は非常に大きく、必要な強度、本数等が設計図書に記載され定められている。
【0005】
鉄筋の本数は目視確認が容易だが、径に関しては経験が浅い技術者には判定が難しい。また、建物は通常構造計算によって必要な鉄筋の強度、径、本数を決めているので、設計図書で決められている径より大きければいいというものではない。
【0006】
鉄筋径を間違えた場合、その是正には多くの費用と期間が必要となる。建物が完成してから判明した場合は、大掛かりな補強、是正もしくは建て替えが必要となる場合も考えられる。
【0007】
建築で使用される鉄筋は異形棒鋼(異形鉄筋)と呼ばれるもので、太さごとに呼び名が決められている。建設工事で使用される鉄筋は、一般的には呼び名D10~D38(更に、D41、D51)がある。このDは異形棒鋼を表し、そのあとの数字は鉄筋の径を表す。この鉄筋の径は規格で定められた公称直径と称されるものを丸めた値であり、実際には測定で確認することはできない。また公称直径も測定できない。
【0008】
異形棒鋼の材料には径が刻印で明記されているが、建設現場でその明記されている刻印を探すことが困難な場合も少なくない。また径は計測位置によって異なる為、専用の計測器が必要であると考えた。
【0009】
現場に組み立てられた鉄筋の径を確認することは、現実には難しい。例えば、D19の異形棒鋼は,「直径19mm」に相当するという意味であるが、公称直径は19.1mmであり、最外径は21mm程度である。建造物を作る現場には、多様な鉄筋が搬入されるので、鉄筋の径をすぐに見極めるための測定方法や測定装置があるとよい。
【0010】
異形棒鋼を測定する従来例としては、以下の特許文献1、特許文献2が挙げられる。
【0011】
特許文献1は、簡易ジグを用いた測定方法を開示している。
【0012】
特許文献2は、スライドゲージによる測定方法を開示している。
【0013】
非特許文献1は、鉄筋用ゲージ(ランドアーク株式会社)として販売されている。
【0014】
非特許文献2は、異形棒鋼を判定するための現状の現場の知恵が記載されている。
【0015】
しかしながら、いずれの文献も、異形棒鋼を迅速且つ精度良く判定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2020-2538号公報
【文献】特開2018-179729号公報
【非特許文献】
【0017】
【文献】https://www.land-art.co.jp/products/detail.php?product_id=51032
【文献】https://kenchikuchishiki.com/kouzouhinshitsu/tekkin/tekkinhanbetsu/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の一態様によると、建設現場において、鉄筋の決められた箇所を測定することで、鉄筋の呼び名を判断できるようにした判定器具を提供する。
【0019】
本発明の一態様によると、いつでも手軽に携帯することが出来るもので、素早く鉄筋の呼び名を明確にするための判定器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によると、異形棒鋼の径(呼び名)を判定できる判定器具であって、
上辺、両側辺、下辺を含む基部と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される一方の側部であって、当該一方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の一部と結合する、前記一方の側部と、
上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される他方の側部であって、当該他方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の別の一部と結合する、前記他方の側部と、
溝部であって、当該溝部は、前記基部の前記上辺の残りの一部と、前記一方の側部の前記内側辺と、前記他方の側部の前記内側辺とからなり、前記基部の前記上辺は、前記一部と前記別の一部と前記残りの一部とからなる、前記溝部と、
を備え、
前記一方の側部の前記内側辺と前記他方の側部の前記内側辺の少なくとも一方には、複数の呼び名の目盛りがあることを特徴とする判定器具を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によると、構造が単純で、電源等を用いず故障等の発生が起きない器具を提供することができる。
【0022】
本発明の別の一態様によると、技術者(使用者)の技術的判断を必要とせず、また、技術力や経験を問わず、直感的に判断できる器具を提供することができる。
【0023】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の概略を示す。
図2図2は、本発明の一実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示しており、異形棒鋼に挿入して測定している状態を示す。
図3図3は、図2の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の一部を示す。
図4図4は、本発明の追加的な実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示す。
図5図5は、本発明の別の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の概略を示す。
図6図6は、本発明の別の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示す。
図7図7は、本発明の別の実施例によるネジ異形棒鋼(ネジ鉄筋)の呼び名を判定できる判定器具を示す。
図8図8は、本発明の別の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の変形例を示す。
図9図9は、本発明の追加的な実施例(補助手段)による測定手法を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の一実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の概略を示す。なお、本実施例の測定対象は建設現場で使用する異形棒鋼である。
【0026】
図1の判定器具100は、基部110、側部(左側の側部120および右側の側部130)、溝部140から構成される。
【0027】
基部110は、長方形の形状をしており、使用者が判定器具を手で持つ部分である。基部110は、上辺111、両側辺(左側辺112、右側辺113)、下辺114からなる。
【0028】
一方の側部(本実施例では左側の側部)120は、台形の形状をしており、左の側部と右の側部とは、本実施例では左右対称である。左の側部120の少なくとも一方の面には、異形棒鋼の呼び名(D10など)が記載されている。左側の側部120は、上辺121、内側辺122、外側辺123、下辺124から構成される。右側の側部130は、上辺131、内側辺132、外側辺133、下辺134から構成される。
【0029】
また、側部120の下辺124は、基部110の上辺111の一部と結合するように構成されている。
【0030】
左右の側部120、130の少なくとも一方の内側辺122、132には、異形棒鋼の呼び名を判定するための(呼び名の)目盛りが記載されている。本実施例においては、目盛りに記載する呼び名は、一般的に使用されるD10~D38までとするがD51まで測定可能とすることも可能である。なお、本実施例では、右側の側部130も、左側の側部120と同様の構成であるので、これ以上の説明を省略する。
【0031】
溝部140は、上述したように、基部110の上辺111の一部と、左右の側部120、130の下辺124、134とを結合させることにより構成される部分であり、異形棒鋼が差し込めるように溝形または逆台形の形状をしている。
【0032】
溝部140は、基部110の上辺111の残りの一部(左右の側部120の下辺124に結合していない上辺111の部分に相当)141と、左右の側部120、130の内側辺122、132からなる。
【0033】
上述したような構成により、測定対象の異形棒鋼を溝部140に入れ、異形棒鋼が溝部140に引っかかるときに、ユーザが、その位置における目盛りを読み取ることにより、異形棒鋼の呼び名を判断することができる。
【0034】
また、本実施例の判定器具を製造するにあたり、基部や側部が大きい場合には、基部の下側の一部や側部の一部を切断してもよい。これにより、基部の(左辺及び右辺の)高さを低くすることや側部の幅を小さくすることができる。
【0035】
また、本実施例の判定器具を製造するにあたり使用する材料は、加工の容易性や単価や歩留まりなどを考慮すると、例えば、ステンレスやアルミニウム(またはアルミニウム合金)などが挙げられるが、その他の材料でも、本実施例を適用することが可能である。
【0036】
図2は、本発明の一実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示しており、異形棒鋼を挿入して測定している状態を示す。
【0037】
図3は、図2の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の一部を示す。
【0038】
基部110の下辺を基準(例えば、内側辺122と132の延長線上の交点)とした目盛りの高さaは、角度αおよび測定対象の異形棒鋼の最外径の半径bを用いて、a=cosα×eであり、e=b/tanαなので、a=cosα×(b/tanα)で求められる。なお、図2の目盛りの高さaは、D22の目盛りの高さを示している。
【0039】
目盛りの高さaは、基部の下辺を基準としているが、本実施例の判定器具では、左右の側部の内側辺(の延長線)が、基部の下辺で交差するように構成されていることが、図3からも理解できる。
【0040】
角度αは、側部120の内側辺122(または、側部130の内側辺132)と、基部110の上辺111に対して垂直方向に延びる垂線115とがなす角度である。図2の実施例では、角度αは、12度を示している。また、本実施例において、角度αは、0度より大きく90度よりも小さい範囲である。
【0041】
なお、角度αの12度は測定のしやすさと器具の大きさ(本実施例の器具は、図1に示すように、103mm×72.1mmの大きさを有している。)などの実用性や使い勝手を考慮して決めたが、他の角度でも実施可能である。ただし、角度αが狭くなると、器具の高さが高くなる一方で器具の幅が狭くなり、角度αが広くなると、器具の高さが低くなる一方で器具の幅が広くなる。
【0042】
ここで、一般に、異形棒鋼の呼び名に対する公称直径と最外径の関係は、表1に示す通りである。
【0043】
【表1】
【0044】
なお、異形鉄筋の径は測定場所や製造メーカーによって異なるため、本実施例の判定器具においては、比較的相違が少ない最外部(最外径)を測定して呼び名を判断する事とした。
【0045】
本実施例の判定器具においては、異形棒鋼と器具の接触点が、対象となる呼び名の目盛りの範囲内に記載されている呼び名を確認することにより、異形棒鋼の呼び名の判別を明確にするような構造になっている。ここで、対象となる呼び名の目盛りの範囲とは、対象となる呼び名の目盛りの高さよりも下方向の部分且つ対象となる呼び名の1つ小さい規格の目盛りの高さよりも上方向の部分(対象となる呼び名が最小の時は、基部の上辺の上方向)となる。
【0046】
例えば、図2では、異形棒鋼の円周部分が、本実施例の判定器具の溝部に挿入されている。特に、図2では、D22の呼び名の目盛りの線上で接触しているが、D22の異形棒鋼の径が最外径(25mm)だからである。通常は、D22の異形棒鋼の径は、D22の最外径(25mm)よりも小さいことが一般的であるので、D22の呼び名の目盛りの線よりも下側(D22の呼び名の目盛りの線と、D22よりも規格がひとつ下であるD19の呼び名の目盛りの線との間)で、異形棒鋼の円周部分が、測定器具(内側辺)と溝部内で、接触することになる。
【実施例2】
【0047】
図4は、本発明の追加的な実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示す。
【0048】
具体的には、図4に示すように、異形棒鋼を器具の溝部に挿入した後に、基部の下辺から棒状の判定器具の補助具(棒状)を差し込めるような構成とすることにより、異形棒鋼の呼び名を判定することができる。棒状の補助具を差し込むために、本実施例の判定器具の基部の下辺から溝部にかけて貫通部が設けられている。棒状の補助具の幅は、貫通部の幅よりも狭い。このような構成により、図2図3で示した判定器具の目盛りで異形棒鋼の呼び名を判定するのが困難となる可能性や読み間違う可能性を更に防ぐことができる。すなわち、図2図3で示した実施例よりも若干構造が複雑になるが、呼び名の判断を更にわかりやすくすることができる。
【0049】
本実施例の判定器具の補助具の使用例を説明する。測定対象の異形棒鋼を、本実施例の判定器具の溝部に挿入する。その後、本実施例の判定器具の補助具を、判定器具の下辺から差し込み、補助具が異形棒鋼と接触して、止まったところが異形棒鋼の呼び名となる。図4では、D16の異形棒鋼が最外径の18mmであった場合の例を示しているので、D16の表記が隠れてしまう可能性があるが、D19の目盛りに達していないので、本実施例の判定器具に挿入された異形棒鋼はD16であると判別できる。なお、一般的には、異形棒鋼の最外径よりも小さいので、D16の目盛りであることは容易に判別できる。また、図4では明示されていないが、補助具に表記されているD16を更に読みやすくするために、基部の表面の一部をくり抜いてもよい。なお、更なる実施例として、補助具の各目盛りに異なる色を付して視覚的にも判別できるようにしてもよい。
【0050】
本実施例の補助具の目盛りの付し方について説明する。図4において、D16の時、h=f’-bであり、f’=b/sinαのとき、h=b/sinα-bの関係を利用する。ここで、bは、対象となる呼び名の最外径の半径を示す。そして、補助具の先端(異形棒鋼との接触する部分)から、対象となる呼び名の目盛りまでの距離がhになるように目盛りを付せばよい。
【実施例3】
【0051】
図5は、本発明の別の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具の概略を示す。図1の実施例との違いのひとつは、右側の側部130の内側辺132が階段状に形成されていることである。両側の側部の内側辺により、溝部内に各幅が形成される。この幅は、異形棒鋼の最外径を基に計算される。詳細については図6以降の実施例を用いて説明する。
【0052】
図6は、本発明の別の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示しており、異形棒鋼を挿入して測定している状態を示す。
【0053】
図2から図4で示した実施例と比較して、判定器具の構造が若干複雑になるが、異形棒鋼の呼び名の判断が更にわかりやすくすることができる。
【0054】
本実施例の使用方法について説明する。本実施例においては、測定対象の異形棒鋼を、本実施例の判定器具の溝部に挿入して、異形棒鋼が止まったところ(異形棒鋼と判定器具との接点に相当する目盛り)が鉄筋の呼び名となる。
【0055】
本実施例の判定器具の形状について説明する。
【0056】
本実施例においては、幅は各異形棒鋼の最外径、高さは最外径の半径とする。
【0057】
mの部分は余裕の部分であるため、この余裕の部分だけ高さを低くすることで判定器具全体の大きさを小さくし携帯性を向上することも出来る。
【0058】
ここで、図6において、ひとつの目盛りの寸法y=√(4bc-4c^2)である。ここで、図6において、目盛りの余裕の部分m=b-y(yは符号なし。絶対値)であり、対象とする鉄筋の最外径の半径をb、その一つ小さい鉄筋の最外径の半径をcとする。なお、最も小さい鉄筋の最外径(図6の実施例においてはD10)において寸法yを計算するときは、c<bであればよく、例えばc=0でよい。計算結果の一例を表2に示す。なお、計算結果の数値は、小数点第二位を四捨五入している。
【0059】
鉄筋の最外径の円の中心を原点とすると、円はx^2+y^2=b^2で表すことができる。ここで、x=―b+2×cとすると、寸法y=±√(4bc-4c^2)を求めることができる。ここで、図6の実施例において、yは座標を表しているので、符号(±)は関係がない。
【0060】
【表2】
【実施例4】
【0061】
図7は、本発明の更に別の実施例による異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を示す。
【0062】
図6の実施例の判定器具の溝部の構造をネジ異形棒鋼(ネジ鉄筋)用に改良したものである。図7に示すように、判定器具で使用するネジ異形棒鋼は、図6の異形棒鋼とは異なり左右の側部が平面になっている。ネジ鉄筋については各部位の寸法がメーカー毎に決められている。本実施例においては、鉄筋はD13以上とした。
【0063】
各メーカーの呼び名の最大値を基準値としてもよい。
【0064】
対象とする異形棒鋼の短軸の最外径の最大値の半分をJとし、長軸の最外径の最大値の半分をKとする。図7に示すように、Jは、水平方向(異形棒鋼の挿入方向に対して90度異なる方向)の最外径の最大値であり、Kは、異形棒鋼の挿入方向の最外径の最大値である。
【0065】
その一つ小さい異形棒鋼の最大値の半分をJ’及びK’とする。
【0066】
この時の高さは各異形棒鋼の最大値k、高さは最外径の半径Kとする。
【0067】
mの部分に余裕があるため、この分だけ高さを低くすることで判定器具全体の大きさを小さくし携帯性を向上することも出来る。
【0068】
yの寸法は±√(K^2-(2*J’-J)^2)である。
【0069】
m=K-y(yは符号なし。絶対値)となる。
【0070】
yの寸法の計算式について、以下に説明する。
【0071】
測定対象はJの平面部分なので、その分高さを短くすることで、判定器具を小さくすることが出来る。
【0072】
ネジ鉄筋に場合は、各メーカーでj及びkの寸法が決められている。jの面が平面なので、jの寸法を測定することで鉄筋の種類が判断できる。
【0073】
この時、図6の実施例と同様に計算することで測定器具を小さくすることができる。
【0074】
【表3】
【実施例5】
【0075】
図9は、本発明の追加的な実施例(測定補助手段)による測定手法を示す。
【0076】
挿入タイプの場合、異形棒鋼が込み入った場所では挿入が困難な場合がある。例えば、異形棒鋼の一部が、既に、コンクリートに埋め込まれている場合である。判定器具の側部がコンクリートに当たってしまい、異形棒鋼が溝部内に挿入困難になる。
【0077】
そのような場合でも、異形棒鋼径の呼び名が判断できるようにする。
【0078】
異形棒鋼の節の芯から芯までの寸法は測定しづらいので、角から角までとする。
【0079】
表4で示すように、節の間隔の平均の最大値が一般的に決められているので、一つの節の間隔を測定するのではなく、本実施例では、3つの節の間隔を測定して判断する。
【0080】
本実施例の原理について説明する。例えば、基準となる節(0番目の節)を基準として、節を3個数えて,1番目から3番目までの距離(節と節の一つ分の間隔の3倍)をスケールで測る。そして、スケールで測った値を3で割る。例えば、スケールで測った値が60mmであれば、3で割って20mmになるとする。そうすると、測定された異形棒鋼の呼び名は「D29」となることがわかる。
【0081】
本実施例では、測定対象の鉄筋の基準となる節に測定器具(測定補助手段の固定手段)を押し当て、基準となる節から、3つ目の節の外側に記載されている呼び名が対象鉄筋の呼び名と判断できるように構成されている。対象鉄筋の呼び名の目盛りの長さは、基準となる節から、対象となる呼び名の節までの平均の間隔の最大値のN倍の長さとなる。図9の上側の異形棒鋼は、基準となる節から3つ目の節の上側までの長さが、本実施例の測定器具のD25の目盛りに一致している。よって、図9の上側の異形棒鋼の呼び名は、D25であると判定できる。同様に、図9の下側の異形棒鋼の呼び名はD32であると判定できる。目盛りの長さ(N=3)の一例を表4に示す。
【0082】
本実施例のような手法で測定することで異形棒鋼径の呼び名を判断する測定補助手段を、図1から7に示すような挿入型判定器具に合わせて付けることで、判定の精度を向上させることができる。
【0083】
また、本実施例による判定器具を、対象となる異形棒鋼の基準となる節の内側に固定するための固定手段(図9のD10の目盛りの下側にある突起物)を設ける。これにより、安定して測定をすることができる。
【0084】
なお、本実施例では、3つ分の節を基準に、異形棒鋼の呼び名を判定する判定器具の例を説明したが、節の数は、1以上の整数(N>=1、2、3、4、…)であればいくつでもよい。
【0085】
【表4】
【0086】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【0087】
例えば、本実施例では、異形棒鋼の呼び名を判定する器具について説明をしたが、異形棒鋼以外でも、呼び名と外径の関係性が予め決められているようなその他の種類の棒鋼やその他の材料にも適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
判定器具100、基部110、左側の側部120、右側の側部130、溝部140上辺111、左側辺112、右側辺113、下辺114、上辺121、内側辺122、外側辺123、下辺124、上辺131、内側辺132、外側辺133、下辺134
【要約】
【課題】異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具を提供する。
【解決手段】異形棒鋼の呼び名を判定できる判定器具であって、上辺、両側辺、下辺を含む基部と、上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される一方の側部であって、当該一方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の一部と結合する、前記一方の側部と、上辺、内側辺、外側辺、下辺から構成される他方の側部であって、当該他方の側部の下辺が前記基部の前記上辺の別の一部と結合する、前記他方の側部と、溝部であって、当該溝部は、前記基部の前記上辺の残りの一部と、前記一方の側部の前記内側辺と、前記他方の側部の前記内側辺とからなり、前記基部の前記上辺は、前記一部と前記別の一部と前記残りの一部とからなる、前記溝部と、を備え、前記一方の側部の前記内側辺と前記他方の側部の前記内側辺の少なくとも一方には、複数の目盛りがある。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9