(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】COVID-19を含む生物学的種を殺すための加熱フィルターを有する浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/16 20060101AFI20221107BHJP
A61L 2/02 20060101ALI20221107BHJP
A61L 2/04 20060101ALI20221107BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20221107BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20221107BHJP
F24F 3/16 20210101ALI20221107BHJP
F24F 8/20 20210101ALI20221107BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20221107BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20221107BHJP
B01D 46/84 20220101ALI20221107BHJP
【FI】
A61L9/16 Z
A61L2/02 100
A61L2/04
A61L2/10
A61L9/20
F24F3/16
F24F8/20
F24F8/80
F24F13/28
B01D46/84
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020129200
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2021-02-25
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520284816
【氏名又は名称】インテグレイテッド バイラル プロテクション ソリューションズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Integrated Viral Protection Solutions,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モンザー エー.ホーラーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジーフェン レン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ユ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-137871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0092181(US,A1)
【文献】特開2005-013687(JP,A)
【文献】特開平01-210010(JP,A)
【文献】特開2004-130173(JP,A)
【文献】特開2015-104400(JP,A)
【文献】特表2018-509499(JP,A)
【文献】特表2004-508163(JP,A)
【文献】特開昭61-171514(JP,A)
【文献】特開昭47-044891(JP,A)
【文献】実開昭50-128324(JP,U)
【文献】特開2011-224121(JP,A)
【文献】国際公開第2004/006969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-20
A61L 2/02-14
B01D 46/80-84
F24F 3/16
F24F 7/003
F24F 8/20-28
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体について空気ハンドリングシステムの空気流を処理するために供給電力を用いて使用される装置において、
吸気口及び排気口を有するプレナムを有するフレームであって、前記空気ハンドリングシステムの前記空気流を通過させるために、前記空気流中に配置されるように構成されているフレームと、
前記プレナムにわたって配置されており、第1の材料で構成されているフィルターであって、前記プレナムを通過する前記空気流を最大でろ過限界までろ過するように構成されているフィルターと、
前記プレナムにわたって配置されており、金属材料を有する通気バリアを備えるヒーターであって、前記通気バリアは、前記空気流が前記通気バリアを通るように前記吸気口と前記排気口の間に配置され、前記通気バリアは、前記空気流を最大で空隙率限界まで通すように構成されており、前記通気バリアの金属材料は、前記供給電力に電気的に接続されており、前記通気バリアは、前記通気バリアを通る前記病原体に作用するように構成された活性表面領域を有しており、前記活性表面領域は、前記病原体に少なくともダメージを与えるようにされた表面温度に前記供給電力によって加熱され、前記活性表面領域による前記空気流の加熱は前記通気バリアに局在化されている、ヒーターと、
を備える装置。
【請求項2】
前記ヒーターの前記通気バリアは、メッシュ、発泡体、スクリーン、又は蛇行状媒体を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記通気バリアの前記金属材料はニッケル、ニッケル系合金、鉄系合金、チタン、又は鋼合金である、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルターの前記第1の材料は金属材料である、請求項1乃至3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記プレナムに配置された紫外線光源を更に備えており、前記紫外線光源は、前記供給電力と電気的に接続され、前記プレナム内に紫外線放射の作用場を生成するように構成されている、請求項1乃至4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
前記紫外線光源と電気的に接続して配置されたコントローラを更に含んでおり、前記コントローラは、(i)前記供給電力による通気バリアの加熱と、(ii)前記供給電力による前記紫外線光源の放射とを制御するように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記紫外線光源に接続された駆動回路と電気的に接続して配置されており、前記コントローラは、前記供給電力で給電された前記駆動回路で前記紫外線光源の紫外線放射を制御するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記紫外線光源に隣接して配置され、前記コントローラと電気的に接続して配置された光センサを更に備えており、前記光センサは、前記紫外線光源の紫外線放射を測定するように構成されている、請求項6又は請求項7に記載の装置。
【請求項9】
最大で前記空隙率限界まで前記空気流を通すために、前記ヒーターの前記通気バリアは少なくとも80%の前記空隙率限界を与えて、前記プレナムにわたって前記通気バリアが配置されていない前記装置を空気流が通るインピーダンスがない場合と比較して最大で20%のインピーダンス限界まで前記通気バリアを通る前記空気流を妨げるように構成されている、請求項1乃至8の何れかに記載の装置。
【請求項10】
前記ヒーターの前記通気バリアは、少なくとも約56℃(133°F)よりも高い表面温度に加熱される、請求項1乃至9の何れかに記載の装置。
【請求項11】
前記通気バリアの端部と前記フレームとの間に配置された電気絶縁体を更に備える、請求項1乃至10の何れかに記載の装置。
【請求項12】
前記フィルターは前記吸気口に向いて前記プレナムに配置され、前記通気バリアは前記排気口に向いて前記プレナムに配置され、前記紫外線光源は前記フィルターと前記バリアヒーターの間に配置される、請求項5に記載の装置。
【請求項13】
前記通気バリアと電気的に接続して配置され、前記供給電力によって前記通気バリアの加熱を制御するように構成されたコントローラを更に備える、請求項1乃至12の何れかに記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記通気バリアに接続されたヒーター回路と電気的に接続して配置されており、前記コントローラは、前記ヒーター回路が前記供給電力によって給電されると前記通気バリアの加熱を制御するように構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記通気バリアに隣接して配置され、前記コントローラと電気的に接続して配置された温度センサを更に備えており、前記温度センサは、前記通気バリアの加熱に関する温度を測定するように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記コントローラは、前記空気ハンドリングシステムと通信可能な通信インターフェースを備えており、前記装置内の前記空気流の通過を示す信号を受信するように構成されており、前記コントローラは受信した前記信号に基づいて制御を構成する、請求項13、請求項14又は請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プレナムに隣接して配置され、前記コントローラと電気的に接続して配置された流れセンサを更に備えており、前記流れセンサは、前記プレナムを通過する前記空気流を測定するように構成され、前記コントローラは、測定された前記空気流に基づいて制御を構成する、請求項13乃至16の何れかに記載の装置。
【請求項18】
前記フレームは、
施設内の前記空気ハンドリングシステムのリターン部、
施設内の前記空気ハンドリングシステムのファーネスの吸気口、
施設内の前記空気ハンドリングシステムの排気口、及び
乗物の前記空気ハンドリングシステムの混合チャンバ
の少なくとも1つに配置されるように構成されている、請求項1乃至17の何れかに記載の装置。
【請求項19】
前記プレナム内に配置された炭素媒体を更に含む、請求項1乃至18の何れかに記載の装置。
【請求項20】
病原体について空気ハンドリングシステムの空気流を処理するために供給電力を用いて使用する装置において、
金属材料を有する通気バリアを備えるヒーター
と、
吸気口と排気口の間に配置されたプレナムを有するフレームと、
を備えており、
前記通気バリアは前記空気流に曝されて最大で空隙率限界まで前記通気バリアに前記空気流を通すように構成されており、
前記通気バリアの前記金属材料は、前記供給電力に電気的に接続されており、
前記通気バリアは、前記通気バリアを通る前記病原体に作用するように構成されており、前記病原体に少なくともダメージを与えるようにされた表面温度に前記供給電力によって加熱される活性表面領域を有しており、前記活性表面領域による前記空気流の加熱は前記通気バリアに局在化されて
おり、
前記フレームは、前記空気ハンドリングシステムの前記空気流中に配置されるように構成され、前記ヒーターは前記プレナムに配置されており、
前記プレナムには紫外線光源が配置されており、前記紫外線光源は、前記供給電力と電気的に接続され、前記プレナム内に紫外線放射の作用場を生成するように構成されている、装置。
【請求項21】
前記病原体がウイルスであり、前記通気バリアの前記活性表面領域は、前記ウイルスに少なくともダメージを与えるようにされた200℃までの表面温度に加熱される、請求項20
に記載の装置。
【請求項22】
前記通気バリアは、厚さを有する多孔質金属発泡体の1又は複数の層からなり、前記活性表面領域は、前記多孔質金属発泡体の厚さを通して規定された曲がりくねったチャネルの格子体を備える、請求項20乃至2
1の何れかに記載の装置。
【請求項23】
前記1又は複数の層は波形である、請求項2
2に記載の装置。
【請求項24】
前記空気流が前記通気バリアを通過している場合に、及び/又は、前記空気流が前記通気バリアを通過していない場合に、前記通気バリアの前記活性表面領域の加熱を断続的に制御するように構成されているコントローラを更に備える、請求項20乃至2
3の何れかに記載の装置。
【請求項25】
前記表面温度に加熱された前記活性表面領域と前記通気バリアの前記空隙率限界とは、下流において前記空気流に局在化して散逸する加熱をもたらすように構成されている、請求項20乃至2
4の何れかに記載の装置。
【請求項26】
最大で前記空隙率限界まで前記空気流を通すために、前記ヒーターの前記通気バリアは少なくとも80%の前記空隙率限界を与えて、前記プレナムにわたって前記通気バリアが配置されていない前記装置を空気流が通るインピーダンスがない場合と比較して最大で20%のインピーダンス限界までそれを通る前記空気流を妨げるように構成されている、請求項20乃至2
5の何れかに記載の装置。
【請求項27】
病原体について空気ハンドリングシステムの空気流を処理するための方法であって、 前記空気流を通過させる前記空気ハンドリングシステムのフレームを配置する工程と、
吸気口と排気口の間で前記フレームのプレナムにわたって配置されたフィルターを介して、前記空気流を最大でろ過限界までろ過する工程と、
前記プレナムにわたって配置されたヒーターの通気バリアに前記空気流を最大で空隙率限界まで通す工程であって、前記通気バリアは活性表面領域を有しており、前記活性表面領域は、前記病原体に作用するように構成されている、工程と、
前記ヒーターの前記通気バリアにわたって電圧電位を印加することにより、前記病原体に少なくともダメージを与えるようにされた表面温度に前記通気バリアの前記活性表面領域を加熱する工程と、
前記プレナムに配置された紫外線光源に給電することで、前記プレナム内に紫外線放射の作用場を生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
前記通気バリアに前記空気流を最大で空隙率限界まで通す工程は、前記通気バリアに少なくとも80%の空隙率限界を与えて、前記プレナムにわたって前記通気バリアが配置されていない前記装置を空気流が通るインピーダンスがない場合と比較して最大で20%のインピーダンス限界まで前記空気流を妨げる工程を含む、請求項
27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の参照>
本願は、2020年4月30に出願された米国仮出願第63/018,442及び第63/018,448の優先権を主張する。これら米国仮出願は、参照により本明細書の一部となる。本願は、代理人管理番号1766-0002US2を有しており、「Mobile Purification Device Having Heated Filter for Killing Biological Species, Including COVID-19」と題する米国特許出願第16/883,981と同時継続しており、当該米国特許出願は、全体として、参照により本明細書の一部となる。
【背景技術】
【0002】
細菌、ウイルス、その他の微生物を含む様々な感染性病原体は、ヒトに病気を引き起こす可能性がある。致死的なヒトSARS-CoV-2株(COVID-19)のパンデミックは、世界中で知られているように生活のあらゆるレベルで人間に影響を与えている。COVID-19感染は、主要な伝染機構である循環気流によって持続的に広がる。COVID-19から公衆を守るための有効な戦略はほとんどなく、現在の戦略は広く検討されているがコストがかかり、非効率的である。エアロゾル化したCOVID-19に直ちに対抗するためには、全ての環境において循環空気を調整して浄化するための受動的アプローチが必要とされる。これは、現在のフィルター及び空気浄化技術では、サイズが小さい(0.05乃至0.2ミクロン)のCOVID-19ウイルスを殺すことに成功していないからである。
【0003】
一般的に、空気ろ過は、暖房システム、換気システム、及び空調(HVAC)システムにおいて使用されており、システムによって、塵、花粉、カビ、微粒子等を施設を通って移動している空気から除去する。ろ過に使用されるフィルターには幾つかの形態があり、所定の大きさの粒子を所定の効率でろ過するように構成することができる。
【0004】
例えば、高効率微粒子空気(HEPA)フィルターは、クリーンルーム、手術室、薬局、家庭等で一般的に使用されている。これらのフィルターは、グラスファイバー媒体、ePTFE媒体等の様々な種類の媒体で作られてよく、活性炭ベースの材料を有してよい。一般に、HEPAフィルターは、所定のサイズ(例えば、0.3ミクロン以上のサイズ)の直径を有する粒子の99%超をろ過することができる。その効率をもってしても、HEPAフィルターは、サイズが非常に小さい病原体(ビリオン、細菌等)を阻止できないことがある。
【0005】
紫外線(UV)殺菌灯は、細菌、ウイルス、カビ等の病原体を殺すことができる。紫外線殺菌灯は紫外線を発生し、紫外線は、微生物の遺伝物質にダメージを与える。そのダメージは病原体を殺すか、増殖できなくする。紫外線に長時間曝すことで、照射された表面に付着した病原体を分解することもできる。
【0006】
紫外線システムの一例として、上側室内空気紫外線殺菌照射(UVGI)システムがある。UVGIシステムでは、紫外線殺菌灯が、使用される部屋の天井付近に設置される。そして、空間上部において、天井付近で対流により循環する空気は、紫外線殺菌灯の活性領域内で照射を受ける。UVGIシステムは、HVACシステムのダクトに設置することもでき、空気がダクトを通って流れる際に、微生物を含む浮遊微小粒子に照射できる。
【0007】
ろ過及び殺菌照射用の既存のシステムは、空気を処理して微粒子を除去したり、病原体にダメージを与えたりすることには有効であるが、細菌、ウイルス、カビ等の病原体の拡散を更に抑えるために、施設、家庭、作業場、病院、老人ホーム、スポーツ会場などの人口密集地の空気を浄化することが引き続き必要とされている。
【0008】
特に、2019年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的な健康に重要な新規ウイルスであって、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染によって引き起こされる。COVID-19は、密接に接触している人から人へと、呼吸の飛沫を介して広がると考えられている。研究によると、このウイルスは一度に数時間生き延びることができ、空気流によって持続的に運ばれ得る。このため、人々が部屋の中で長時間一緒に過ごす状況では、単に空気流によって伝染するので、定常的な6フィートの分離は効果がないと考えられている。
【0009】
例えば、COVID-19(Sars-CoV-2)は、空気中で咳をした後に液滴中で最大3時間生存することができ、空気の対流が感染拡大の主なメカニズムであると考えられている。従って、液滴飛沫及び対流は空気中の直接感染を促進する可能性があり、人々が長時間一緒に過ごす密閉された環境では、ソーシャルディスタンスは効果を発揮しない可能性がある。
【0010】
現在、COVID-19の治療法はないので、環境浄化戦略は、ウイルスの拡散を遅らせるのに役立つ。残念ながら、循環空気を処理する現在のシステムは高価であって、主にUV殺菌光を使用している。これらの製品は専門家による設置を必要とし、それ自体に一般人がアクセスすることはできず、COVID-19を殺すためには使用されていない。更に、HVACシステムでのろ過には効果がないことがある。COVID-19の大きさは0.05乃至0.2ミクロンであるが、HEPAフィルターがろ過できるのは0.3ミクロンよりも大きな微粒子なので、COVID-19の拡散に対しては更なる保護を要する。
【0011】
これらの理由から、本開示の主題は、上述した問題の1又は複数を克服すること、或いは、少なくともその影響を軽減することに向けられている。
【発明の概要】
【0012】
本開示の主題は、空気をろ過して、ウイルス、細菌、カビ、花粉、揮発性有機化合物、アレルゲン、及び汚染物質を破壊することを試みる浄化装置に向けられている。その浄化装置は、価格が手頃であり、設置が容易であり、アクセス可能であり、住宅及び商業的な設定の両方で使用可能であることが意図されている。浄化装置は、循環空気中のCOVID-19等のウイルスや他の病原体を最も効果的に低減するために現実世界の解決策に適用することができ、浄化装置は、商業、住宅、大量輸送、及び公共の場で使用するための特別な加熱フィルターとして配備できる。
【0013】
例えば、以下で説明されるように、浄化装置は、バリアヒーター又は加熱フィルターを含んでおり、バリアヒーター又は加熱フィルターは、高効率ニッケル発泡体/メッシュについて目標を定めた熱伝導を利用しており、コロナウイルス(例えば、COVID-19)のような病原体を殺すことが証明されている温度まで昇温される。浄化装置は、UV-C光を使用してウイルスを破壊する紫外線(UV)光源を更に含む。紫外線光源及びバリアヒーターは、難燃性及び耐燃性のあるろ過システムにて一緒に組み合わされており、空港ターミナル、教会、病院、ワークショップ、オフィススペース、住宅、輸送車両、学校、ホテル、クルーズ船、レクリエーション会場のような施設又は人口密集環境における空気ハンドリングシステムの空気リターン部、ファーネスの吸気口や他の部分に直接結合されてよい。現在、COVID-19及び他の多くの病原体に対する治療法がないので、環境浄化戦略は、ウイルスの拡散を遅らせるのに役立ち、開示された装置によって提供される空気浄化は、感染に対する最初の防御をもたらし得る。
【0014】
ある実施形態では、装置は、施設の空気ハンドリングシステムにおける空気流を処理するための供給電力を用いて使用される。装置は、フレームと、フィルターと、紫外線光源と、ヒーターとを備えている。フレームは、吸気口及び排気口があるプレナムを有しており、空気流を通過させるために、空気ハンドリングシステムの空気流の中に配置されるように構成されている。
【0015】
フィルターはプレナムの表面領域にわたって配置され、金属のような第1の材料を含んでいる。フィルターは、それを通る空気流を最大でろ過限界までろ過するように構成される。紫外線光源は、プレナムに配置される。紫外線光源は、供給電力と電気接続可能に接続されており、紫外線放射の作用場をプレナムに発生させるように構成される。ヒーターは、プレナムの表面領域にわたって配置されており、金属材料の通気バリアを備えている。ヒーターの通気バリアは、それを通る空気流を最大でインピーダンス限界まで妨げるように構成される。更に、ヒーターの通気バリアは、供給電力に電気的に接続されて、表面温度に加熱される。
【0016】
別の構成では、装置は、施設内の空気ハンドリングシステムの空気流を処理するために、空気フィルター及び供給電源と共に使用される。この装置は、フレームと、紫外線光源と、上記に開示されたものと同様なヒーターとを備えている。フィルターは、フレームに隣接して取り付けられてよく、又は、空気ハンドリングシステムに別個に取り付けられてよい。
【0017】
更に別の構成では、施設内の空気ハンドリングシステムの空気流を処理するための方法が使用される。フレームは、空気ハンドリングシステム内に配置されて空気流を通過させる。空気流は、吸気口と排気口の間でフレームのプレナムの表面領域にわたって配置されたフィルターを介して、最大でろ過限界までろ過される。プレナム内の紫外線放射の作用場は、プレナム内に配置された紫外線光源に給電することで生成される。空気流は、プレナムの表面領域にわたって配置されており、且つ金属材料を有するヒーターの通気バリアを介して最大でインピーダンス限界まで妨げられる。ヒーターの通気バリアは、通気バリアに電位を印加することで表面温度まで加熱される。
【0018】
上記の概要は、本開示の潜在的な実施形態の各々を又は本開示の全ての態様を要約することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本開示に基づく浄化装置を有する空気ハンドリングシステムを有する施設を示す図である。
【0020】
【
図2A】
図2Aは、空気ハンドリングシステムで使用される開示された浄化装置のその他の構成を図示している。
【
図2B】
図2Bは、空気ハンドリングシステムで使用される開示された浄化装置のその他の構成を図示している。
【
図2C】
図2Cは、空気ハンドリングシステムで使用される開示された浄化装置のその他の構成を図示している。
【
図2D】
図2Dは、空気ハンドリングシステムで使用される開示された浄化装置のその他の構成を図示している。
【
図2E】
図2Eは、空気ハンドリングシステムで使用される開示された浄化装置のその他の構成を図示している。
【0021】
【0022】
【
図4A】
図4Aは、浄化装置の構成要素の構成と共に浄化装置の概要を示す側面図である。
【
図4B】
図4Bは、浄化装置の構成要素の構成と共に浄化装置の概要を示す側面図である。
【0023】
【
図4C】
図4Cは、別の浄化装置の構成要素の構成と共に別の浄化装置の概要を示す側面図である。
【0024】
【
図5A】
図5Aは、開示された浄化装置のバリアヒーターの特性を詳細に示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、開示された浄化装置のバリアヒーターの特性を詳細に示すグラフである。
【
図5C】
図5Cは、開示された浄化装置のバリアヒーターの特性を詳細に示すグラフである。
【0025】
【
図6A】
図6Aは、フレームのプレナムに配置されており、電源制御部に接続された複数の電気素子を有する別の加熱構成を示す。
【0026】
【0027】
【
図7】
図7は、複数の浄化装置を有する空気ハンドリングシステムの構成の概要を示す図である。
【0028】
【
図8A】
図8Aは、マスター制御ユニットの対象となる複数の浄化装置を有する構成を説明する図である。
【0029】
【
図8B】
図8Bは、マスター環境制御の対象となる環境構成要素及び複数の浄化装置を有する別の構成を示す図である。
【0030】
【
図9A】
図9Aは、平面配置である開示されたヒーター用の通気バリアの側面図を示す。
【
図9B】
図9Bは、波形配置である開示されたヒーター用の通気バリアの側面図を示す。
【0031】
【0032】
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の主題は、COVID-19ウイルスのような病原体をろ過し、高温(200℃以上)(392°F以上)に曝すことにより、循環空気から病原体を瞬時に消し去るための浄化装置に向けられている。そのようにすることで、本開示の主題は、将来のパンデミックを引き起こし得るウイルスや他の生物学的種の感染伝播を減少させる一方で、COVID-19後の世界において、公衆が仕事、学校、生活、レクリエーション、及び医療に復帰するための安心感及び心の平安をもたらし得る。
【0035】
浄化装置の第1の作用機構は特殊な加熱フィルター又はバリアヒーターであって、これは、難燃性フレームに入れられており、高性能で高耐性の多孔質金属発泡体の低エネルギーで目標を定めた熱伝導を利用している。開示された加熱フィルター又はバリアヒーターは、高効率のHVACフィルターと組み合わせられてよい。更に、紫外線(UV-C)が、殺傷効果を付加するためにシステム環境に加えられてよい。研究によれば、熱及び短波長光は、暴露の経過と共にCOVID-19を正常に不活性化することが証明されている。
【0036】
以下に説明されるように、本開示の浄化装置は、施設、乗物、又は他の任意の環境における空気ハンドリングシステムに組み込まれてよい。同じ技術を使用して、移動式/ロボットCOVID-19浄化装置が、公共の場、医療施設、介護施設、学校、飛行機、列車、クルーズ船、催し会場、劇場、教会、食料品店及び小売店、刑務所などで使用するために配備されてよい。詳細は、代理人管理番号第1766-0002US2を有する同時係属中の米国特許出願第16/883,981号、発明の名称「Mobile Purification Device Having Heated Filter for Killing Biological Species, Including COVID-19」に記載されており、その全体は、参照により本明細書の一部となる。
【0037】
図1に示すように、家、病院、オフィス空間、空港ターミナル、教会、又はその他の密閉環境などの施設10は、空気ハンドリングシステム20を有している。本図に示すように、システム20は、加熱換気空調(HVAC)システムであるが、他の空気ハンドリングシステムが使用されてよい。典型的には、HVACシステム20は、室内空間から引き出された還気をシステム20のブロア22、熱交換器24、及び冷却コイル26に向けるためのリターン部30、縦溝32、戻りダクト34等を含む。そして、システム20は、供給ダクト36、通気口38等を介して、調整された供給空気を空間に供給する。熱交換器24は、空気を加熱するための電気ファーネス又はガスファーネスを含んでよい。冷却コイル26は、凝縮器、圧縮器、膨張弁等の施設外における他の従来の構成要素に冷却回路で接続された蒸発器であってよい。
【0038】
このシステム20に統合されて又は組み込まれて、1又は複数の浄化装置100は、空気流を浄化するために施設で使用される。ある構成では、図示されているように、浄化装置100は、HVACシステム20の空気リターン部30において使用される。環気は、空気リターン部30を通って引き込まれて、HVACシステム20の調節要素を通過する。施設内の各空気リターン部30は浄化装置100を有しており、環気が、HVACシステム20の運転中に浄化装置100を介して引き込まれてよい。HVACシステム20は、サイズが様々である異なる複数のフィルターを使用することから、浄化装置100は、様々なフィルターサイズに合った寸法を有してよい。
【0039】
後述するように、浄化装置100は、フラッシュ加熱で環気を加熱しようとする。このため、浄化装置100は、冷却ユニット26の環気上流側に配置されることが好ましい。これにより、冷却ユニット26で冷却する前に熱の一部を空気流に放散させることができる。室内空間を加熱する場合、浄化装置100は、単にシステム20によって提供される熱を増加させてよい。空気を分配するシステム20の通気口28が、このような浄化装置100を有することも考えられるであろう。しかしながら、浄化装置100は空気流を拡散させる傾向があり、フィルターを介して空気流を押し出すことは効率が悪く、通気口に装置100を使用することは可能ではあるが、あまり好ましくない。
【0040】
会議室とオフィス空間の空気流の研究は、会議テーブルの椅子の間やオープンなオフィス空間のキュービクル(cubicles)の間で対流パターンが持続的に感染媒体を運ぶことを示している。このことは、人と人の分離への依存は、空気の対流のために効果がないことを示している。
【0041】
浄化装置100の制御は、ローカルコントローラ200によって完全に処理されてよく、ローカルコントローラ200は、空気流が浄化装置100を通って導かれているか否かを独立に判定する。或いは、ローカルコントローラ200は、HVACシステム20用のシステムコントローラ50と統合されてよく、システムコントローラ50は、HVACシステム20の起動を信号化し、空気流が浄化装置100を通って導かれていることをローカルコントローラ200に示してよい。更なる代替例では、浄化装置100は、ローカル制御を欠いていてよく、システムコントローラ50によって集中的に制御されてよい。理解されるように、これらの制御構成は、施設10、複数の浄化装置100、調節ゾーン、HVAC構成要素などで任意の組合せで使用されてよい。
【0042】
図1は、空気ハンドリングシステム20の縦溝32のリターン部30に配置された浄化装置100を示しているが、他の構成も使用されてよい。全般的に、浄化装置100は、商業的に使用されている典型的なファーネスの開口(14~20インチ×25インチ)で使用するための大きさにされてよい。複数のHVACゾーンはその後、浄化装置の対象にされてよい。
【0043】
例えば、
図2Aは、ブロア22のすぐ上流側に配置された浄化装置100と、HVACシステム20のその他の構成要素とを示しており、HVACシステム20には、水平ファーネス24がある。
図2Bは、ブロア22に隣接して配置された浄化装置100と、水平ファーネス等のシステム20の他の構成要素とを示す。最後に、
図2Cは、下降流ファーネスのブロアの上方に配置されている浄化装置100を示す。これら及び他の構成が使用されてよい。ファーネスには、場合によってはガスバーナー又は電気加熱要素が使用されてよく、他の調節構成要素が更に下流側に設置されてよい。
【0044】
図2Dは、本開示の浄化装置100を有する飛行機70における空気ハンドリングシステム80を図示する。飛行機70では、キャビン74内の空気は1時間に20乃至30回交換されてよく、その約半分がフィルターを介して循環処理される。キャビン74は加圧されているので、外気は、エンジン72から高温高圧でシステム80の吸気口82に入る。高温圧縮空気は飛行機70の空調ユニット84に達し、そこで、空気はかなり冷却される。暖房用に、入った空気の一部は、頭上排気口75を通ってキャビン74に入ってよい。冷房用に、空調ユニット84からの空気は混合マニホールド86aを通り、ここで、冷却外気は機内空気と組み合わされて、50/50の混合物が生成される。混合マニホールド86aからの混合空気は、その後、頭上排気口75を介してキャビン74内を循環してよい。吸気口77からのキャビン74内の空気の一部は、その後、バランスを維持するために、キャビン74に入る外気と等量で排気口79から排出され、バッファマニホールド86bを介した機内空気の別の部分は、混合チャンバ86aで再循環される。外気は新たなものであるので、本開示の浄化装置100は、空気ハンドリングシステム80の混合マニホールド86a及び/又はバッファマニホールド86bに配置され、再循環された機内空気を処理する。
【0045】
図2Eは、クルーズ船で使用される空気ハンドリングシステム90を示しており、空気ハンドリングシステム90は本開示の浄化装置100を有する。図示されているように、戻りダクト92aを通って引き込まれた還気/リリーフ空気は、方向を変えられてブロワ96aの側のフィルター94を通り、これによって空気はヒートホイール98を通って流される。追加のブロワ96bは、その後、排気口93aから大気に空気を出す。
【0046】
一方、吸気口92bに入った外気は、フィルター94、そしてヒートホイール98の他端を通過した後、冷却要素及びろ過要素に送られる。戻りダクト92aでは、還気/リリーフ空気も、冷却要素及びろ過要素に向けられる。これらの要素について、空気は、フィルター94、冷却コイル95、紫外線処理97、更なるフィルター94、及び蒸気加湿処理99を通過して、供給空気ダクト93bに抜ける。
【0047】
図2Eに示すように、浄化装置100は、システム90を介して再利用される戻りダクト92aからの環気に使用されてよい。クルーズ船全体を通して、ダクトヒーター、軸流ファン、ダンパー等の様々な構成要素が空気を案内するために使用される。様々な埋め込み型ユニットヒーターも、クルーズ船の様々な場所で使用されてよい。クルーズ船は施設によく似ているので、船内全体で使用されている様々なリターン部、ダクト、ベント、スタンドアロンユニットに浄化装置を組み込むことができる。
【0048】
理解されるように、空気ハンドリングシステムを有する他の乗物及び大量輸送システムは、飛行機及びクルーズ船と同様の方法で利益を得ることができる。例えば、大量輸送で使用されるバス、列車、及び地下鉄は通常、外気及び再生空気の両方を使用する空気ハンドリングシステムを有する。開示された浄化装置100は、上述した方法と同様の方法で、これらの空気ハンドリングシステムに組み込むことができる。
【0049】
浄化装置100がどのように使用され、施設でどこに設置され得るかを理解した上で、次に、開示された浄化装置100の具体的な詳細を解説する。
図3A、3B、及び3Cは、本開示の例示的な浄化装置100の正面図、側面図、及び端面図である。浄化装置100はフレーム110を含んでおり、フレーム110は、施設の既存の空気リターン部に挿入されるように、既存のリターン部を完全に取り替えるように、又はファーネスの吸気口で使用されるように構成されている。
【0050】
全般的に、フレーム110は、プレナム内部116を囲む4つの側壁を有しており、対向する開放面(1つは吸気口112用であり、もう1つはプレナム116の排気口118用である)で露出している。必要に応じて、吸気口112はリム114を含んでよく、このリム114は、典型的には、リターン部30(
図1)のための壁の開口周りに係合するであろう。ファスナー(図示せず)が、リムを周囲の構造物に固定してよい。特定の実施形態のために構成されているものの、フレーム110の典型的なサイズは、幅20インチ×高さ30インチ×深さ7インチの全体的な寸法を含んでよい。
【0051】
図3Aに最もよく示されているように、吸気口112又はリム114は、プレナム116に入る空気流をろ過するためのフィルター(図示せず)を保持するためのレセプタクルを形成してよい。プレナム116の内側で、フレーム110はバリアヒーター140を保持する。ここに簡略的に示されているように、バリアヒーター140は通気バリア142を含んでおり、通気バリア142は金属で構成され、また、メッシュ、発泡体、スクリーン、又は蛇行状(tortuous)媒体を備えており、プレナム116にわたって配置されることで、後述するように空気流を処理するための通気表面領域を提供する。
【0052】
また、プレナム116の内側には、フレームは、バリアヒーター140に加えて付加的な処理としてのUV光源130を保持できる。(本明細書に開示される他の実施形態は、UV光源130を含まなくてもよい。)ここで簡単に図示されているように、UV光源130は、プレナム116を横切って配置された2つのUV-C発光ダイオード(LED)ストリップを含んでおり、後述するように、空気流を処理するための作用場を提供する。より多くの又はより少ない光源130が使用されてもよく、タイプが異なる光源130が設けられてよい。
【0053】
図4Aに目を向けると、浄化装置100の側面図が示されており、その構成要素の配置を有する。前述したように、浄化装置100は、空気ハンドリングシステムのリターン部30に使用できる。リターン部30の壁開口は通常、内部構成要素を保護するための環気グリル31を有してよい。浄化装置100のフレーム110は、リターン部30に収まって、ボルトやネジなどの固定具(図示せず)によって保持できる。既に述べたように、空気フィルター120は、フレーム110のレセプタクルに収まることができる。典型的には、フィルター120は単にレセプタクルにぴったりと収まるが、留め具が使用できるであろう。
【0054】
好ましくは、浄化装置100はまず、フィルター120を介して
最大でろ過限界まで空気流をろ過する。このようにして、フィルター120は、塵埃や他の微粒子が浄化装置100に引き込まれ、更にHVACシステム20(
図1)に引き込まれることを防ぐことができる。
【0055】
既に述べたように、浄化装置100のプレナム116に配置されたUV光源130に給電することにより、プレナム116内に紫外線放射の作用場を生成できる。浄化装置100のプレナムにおいて、空気流は、プレナム116に配置されたバリアヒーター140を介して最大でインピーダンス限界まで妨げられる。バリアヒーター140は、ニッケル、ニッケル合金、チタン、鋼合金のような金属材料の通気バリア142(例えば、メッシュ、発泡体、スクリーン、蛇行状媒体)を含む。通気バリア142は、平ら、波形、湾曲状、ひだ状などであってよく、1又は複数の層で配置されてよい。ヒーター140の金属メッシュ/発泡体142は、メッシュ/発泡体の両側に電圧電位を印加することにより、表面温度まで加熱される。好ましくは、UV光源130は、プレナム116内にて、フィルター120とバリアヒーター140の間に配置されており、光源130からの照射は、通過する空気流を処理でき、更に、フィルター120とバリアヒーター140の露出面も処理できる。
【0056】
次に
図4Bを見ると、浄化装置100の概略を示す別の側面図が示されており、その構成要素の配置を有する。浄化装置100のフレーム110は、フィルター120、UV光源130、及びバリアヒーター140をプレナム116に保持するように示されている。浄化装置100は、制御回路及び供給電力を用いて使用される。例えば、制御回路は、浄化装置100に電力を供給して制御するための適切な電源回路及び処理回路を有するコントローラ200を含む。コントローラ200は、施設の利用可能なAC電源、バッテリ電源、又はその他の電源のような1又は複数の種類の電源40に接続されてよい。コントローラ200の電源回路は、必要に応じて供給電力を変換して、直流電力及び電圧レベルが生成されてよい。
【0057】
フレーム110を見ると、フィルター120は、フレーム110のプレナム116に配置され、吸気口112に面してレセプタクル115に保持される。フィルター120は、第1の材料で構成され、最大でろ過限界までそこを通る空気流をろ過するように構成されている。好ましくは、フィルター120は、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる金属フィルター媒体122であって、空気流の量と必要とされるろ過のレベルとに応じて1又は複数の層でメッシュ化されている。フィルター120はケース125を有しており、ケース125も金属で構成されており、金属フィルター媒体を嵌め込んでいる。概して、金属フィルター120は、耐火性及び難燃性、そして、高効率等級を有しており、金属製で厚さ1インチのHVACフィルターであってよい。
【0058】
バリアヒーター140はまた、プレナム116に配置され、排気口118に面して据え付けられてよい。熱及び電気の両方のための絶縁材145が、フレーム110からバリアヒーター140を隔ててよい。バリアヒーター140は、金属材料のメッシュ/発泡体を含んでおり、そこを通る空気流を最大でインピーダンス限界まで妨げるように構成されている。
【0059】
UV光源130は、プレナム116内に配置されてよく、前記したように、好ましくは、金属フィルター120とバリアヒーター140の間に配置されてよい。UV光源130は、プレナム116内にUV-C光の作用場を生成し、通過する空気流を処理する。本明細書に記載されているように、ウイルスなどの病原体は、投与量の紫外線に曝して除去することができる。例えば、大きさが0.11μmまでのsRNAコロナウイルスは、約611μj/cm2のUVGI線量だけで>99%除去することができる。
【0060】
UV光源130とバリアヒーター140の両方は、コントローラ200を介して電源40と電気的に接続されており、コントローラ200は、光源130の照明とプレナム116内でのバリアヒーター140の加熱とを制御する。
【0061】
UV光源130は、プレナム116に配置された1又は複数のUV-Cランプ、複数の発光ダイオードなどを含んでよい。例えば、光源130は、水銀蒸気ランプなどの1又は複数の紫外線殺菌ランプを使用してよい。光源130はまた、UV-C放射を放出する半導体を有する発光ダイオードを使用してよい。
【0062】
1又は複数の構造物が、フレーム110に配置されてUV光源140を支持してよい。使用される構造物は、使用される光源140の種類に依存してよく、ランプ用の固定具とUV-C発光ダイオード用のストリップとを含んでよい。例えば、UV光源130は、プレナム116にわたって延びるUV-C発光ダイオードの複数のストリップを使用してよい。
【0063】
空気流の中でのUVGI処理の効果は、対象の微生物学的種、曝露強度、曝露時間、空気の湿度量などの多くの要因に依存する。十分な放射量は、DNAベースの微生物を殺すことができる。従って、UVGI処理の強度、曝露時間及びその他の因子は、所望の有効性に達するように浄化装置100及びHVACシステムにおいて構成、更には制御されてよい。
【0064】
浄化装置100が提供するUVGI処理は、COVID-19のような病原体を破壊するのに有効であり得る。UV光源で発生される、波長が100乃至280ナノメートルのUV-C光又は短波長光は、実証された殺菌効果を有してよい。特に、222ナノメートルの短遠UVC光は、曝露の時間の経過と共にエアロゾル化したウイルスを死滅させ、不活性化させるのに有効である。
【0065】
HVACシステムにおけるUVGIの従来の使用とは対照的に、開示された浄化装置100は、高額な費用と、空気還流システム又はダクトシステムへの特別な据え付けとを必要としない。それどころか、開示された浄化装置100は、家庭内で1乃至3ヶ月ごとにHVACフィルターを交換するのと同じくらい簡単で実用的な設置及び操作を提供する。
【0066】
以下でより詳細に説明するように、バリアヒーター140の金属製通気バリアは、ニッケルメッシュ/発泡体を含んでよい。バリアヒーター140は、発泡体に少なくとも80%の空隙率を与えて、そこを通る空気流を最大で20%のインピーダンス限界まで妨げるように構成されている。
【0067】
浄化装置100は、1又は複数の表面に抗微生物コーティングを含んでおり、生きた細菌及びウイルスを排除してよい。例えば、フィルター120は、フィルター媒体によって捕捉された病原体を排除するために、抗微生物コーティングを有してよい。フレームのプレナム116の内壁も、抗微生物コーティングを有してよい。加熱条件下で実用的であれば、バリアヒーター140のメッシュ/発泡体は、抗菌コーティングを有してよい。
【0068】
図4Bに更に示すように、UV光源130及びバリアヒーター140と電気的に接続して配置されたコントローラ200は、(i)電源40によって給電されたUV光源130の放射と、(ii)電源40によるバリアヒーター140の加熱とを制御するように構成されている。このコントローラ200は、ローカルコントローラであってよく、通信インターフェース212を含んでおり、他の浄化装置と、施設内の空気ハンドリングシステム20(
図1)の他の構成要素、例えばシステムコントローラ50と通信してよい。ローカルコントローラ200は、HVACシステム20がオン/オフであることを示す信号を受信でき、当該信号は、装置100を通る空気流の通過を示す。コントローラ200はその後、受信した信号に基づいて、バリアヒーター140の加熱及びUV光源130の照明を制御してよい。
【0069】
これを行うために、コントローラ200は、バリアヒーター140に接続されたヒーター回路214と電気接続して配置される。少なくとも、空気が浄化装置100を通過する(HVACシステムによって引き込まれる)期間、コントローラ200は、電源40によって給電されたヒーター回路214によってバリアヒーター140の加熱を制御してよい。理解されるように、コントローラ200及びヒーター回路214は、バリアヒーター140に供給される電力を調整及び制御するために必要とされる任意のスイッチ、リレー、タイマー、電源トランスなどを含む。
【0070】
コントローラ200は、少なくとも、HVACシステム20が動作しており浄化装置100を通る空気流を知らせていることが信号でコントローラ200に通知されている間、バリアヒーター140を加熱する。HVACシステム20が環気を引き込む前の予備加熱は、目標温度に予め到達できるように、空気が浄化装置100を介して引き込まれる前に起こってよい。これは、システムコントローラ50からのアドバンス信号を必要とするか、又は、ある程度の基準温度を維持するためにバリアヒーター140の断続的な加熱を伴ってよい。HVACシステム20がオフになった後の後加熱も、幾つかの理由から有益であるかもしれない。
【0071】
また、コントローラ200は、UV光源130に接続された駆動回路213と電気接続されて配置されている。少なくとも、空気が浄化装置100を通過する(HVACシステムによって引き込まれる)期間、コントローラ200は、電源40によって給電される駆動回路213を用いて、UV光源130の照明を制御してよい。理解されるように、コントローラ200及び駆動回路213は、光源130に供給される電力を調整及び制御するために必要な任意のスイッチ、リレー、タイマー、電源トランス、電子バラストなどを含む。
【0072】
少なくとも、コントローラ200が、HVACシステム20が動作しており浄化装置100を通る空気流を知らせていることを信号で通知されている場合、コントローラ200は、光源130を照明する。目標照度に到達するために、空気が浄化装置100を通って吸引される前に、UV光源130のランプ等が完全な照度に到達するために幾つかの予備照明が必要とされてよい。これは、システムコントローラ50からのアドバンス信号を必要としてよい。HVACシステム20がオフになった後の光源130の後照明も、幾つかの理由から有益であるかもしれない。
【0073】
監視及び制御のために、コントローラ200は、1又は複数のセンサ216、217、及び218を含んでよい。例えば、コントローラ200は温度センサ216を含んでよく、温度センサ216は、プレナム116内にてバリアヒーター140に隣接して配置され、コントローラ200と電気接続して配置される。温度センサ216は、コントローラ200が目標温度に到達できるように、バリアヒーター140の加熱に関連した温度を測定するように構成される。実施形態と影響を受ける病原体とに応じて、バリアヒーター140は、約54℃(130°F)以上の表面温度に加熱されてよい。実際、約56℃又は約56乃至67℃(133乃至152°F)を超える温度での加熱は、SARSコロナウイルスを殺すことができること、及び、222ナノメートルの遠UVC光は、エアロゾル化されたウイルスを殺して不活性化させるのに有効であることが、研究によって示されている。
【0074】
コントローラ200は、UV光源130の照度、強度、波長、動作などを監視するために、フォトセルやその他の光検知素子のような光センサ218に接続されてよい。例えば、UV光源130は、プレナム116内の作用場において、少なくとも611μJ/cm2の線量の紫外線殺菌照射を生成するように構成されてよく、光センサ218からの測定値は放射線を監視してよい。
【0075】
コントローラ200は、更に別のセンサ217、例えば、プレナム116を通過する流れ、速度等を検知するための流れセンサに接続されてよい。流れセンサ217での空気流の検知は、遠隔から合図されないならば、浄化装置100の動作を開始するためにコントローラ200によって利用されてよい。空気流の速度が流れセンサ217によって測定されて、バリアヒーター140による空気流の加熱が検出された流速と目標加熱レベルとに調整されるように、浄化装置100を通過する目標流速が調整されてよい。装置100が、様々な流量レベルで動作可能なHVACシステム20と統合される場合、その後、流れセンサ217からのフィードバックは、装置100を介して引き出された空気のレベルを制御又は示すために使用されてよい。空気流の速度はまた、適切な曝露レベルが達成されるように、UV光源140による空気流の目標照射を調整するために監視されてよい。
【0076】
本明細書で述べられているように、浄化装置100は、熱エネルギーをUV-C光と組み合わせており、そして、難燃性及び耐燃性のあるろ過システム内に構築される。浄化装置100は、環気用のHVACグリルの背後にあるリターン部に配置されてよい。本明細書に開示されるように、浄化装置100の実施形態はバリアヒーター140を含んでおり、それによって、バリアヒーター140に関して上述したコントローラ200、センサ等の様々な特徴を含んでよい。幾つかの実施形態はUV光源130を含まなくてよいが、他の実施形態は、UV光源130に関して上述したコントローラ200、センサ等の様々な特徴と共にUV光源130を含んでよい。特に、
図4Cは、UV光源のない構成要素の配置を有する浄化装置100の概略の別の側面図を示す。同様の構成要素には、他の実施形態と同じ符号が付与されており、ここでは再度説明しない。
【0077】
提案されているように、開示された浄化装置100は、粒子の99.97%(ASME,U.S.DOE)まで空気をろ過する一方で、COVID-19のような病原体を排除することができる。本明細書の一部となる同時継続出願に開示されているように、その構成は、感染性空気粒子を低減するために、空港ターミナル、教会、病院、及び他の閉じた領域を含む、より大きな公共の場で使用するための移動式ハウジングに組み込まれてよい。
【0078】
浄化装置100は、フレーム110に空気フィルターを収容するフレーム110を含むとして説明されているが、浄化装置100は、フィルターを既に収容して従来の空気リターン部30の背後に設けられるフレーム110を含んでよい。或いは、浄化装置100は、別個に保持された空気フィルター120の下流にてファーネスの吸気口に設けられるフレーム110を含んでよい。浄化装置100は、商業用途用のファーネスの開口(例えば、14乃至20インチ×25インチ)に合ったサイズにされてよい。HVACゾーンがその後、対象とされてよい。このタイプの構成では、浄化装置100は、先と同様に、フレーム110、UV光源130、及びバリアヒーター140を含んでよいが、フレーム110は、必ずしも空気フィルター120を保持しなくて又は受け入れなくてよい。代わりに、別個の空気フィルターが、リターン部などのHVACシステム内の別の場所に設置されてよい。
【0079】
説明は、次に、開示された浄化装置100のバリアヒーター140の詳細に向かう。バリアヒーター140の金属メッシュ/発泡体は、材料の1又は複数の層を有してよく、また、適切な厚さを有してよい。一例として、メッシュ/発泡体は、0.5mm乃至2.0mmの厚さを有してよい。ニッケル(Ni)から構成される場合、金属メッシュ/発泡体は、1.43×107C/m2の表面電荷密度(σ)を有してよい。Niメッシュ/発泡体は導電性を有しており、高多孔質であって、ランダムな三次元チャネルが規定されている。メッシュ/発泡体は約00.178Ωの抵抗を示し、例示的なNi発泡体の電気抵抗率は約1.51×10-5Ωmであると計算される。
【0080】
例えば、
図5Aは、単位供給電力(W)当たりのバリアヒーター用の例示的なNi発泡体材料によって生じる温度(℃)の第1のグラフ60Aを示す。1.65mm×195mm×10mmの大きさを有する発泡体のサンプルが調べられた。電圧を印加した後、温度が安定するまで温度は測定された。グラフ60Aに示すように、温度は、約7ワットで約120℃の温度が得られるように、単位供給電力当たり概ね線形に上昇することが示されている。
【0081】
図5Bは、ある温度に加熱された例示的なバリアヒーター用Ni発泡体材料を通って流れた後のガス(例えば、N
2)の測定温度の第2のグラフ60Bを示す。室温が約21.7℃である間、測定用ガスは、加熱されたNi発泡体材料から約3.5cmの上流側の距離にて送られた。温度測定は、約115℃(239°F)の初期温度に加熱された例示的なNi発泡体材料に対して、様々な下流側距離で行われた。見られるように、ガスの測定温度は、例示的なNi発泡体材料から1cmから4cmまでの範囲の下流側距離について、約29℃から約23℃(84°Fから73°F)まで低下した。このことは、このような例示的なNi発泡体材料で構成されたバリアヒーター140によって生じる加熱は、空気流及び任意の病原体が当たり得る複雑な加熱表面積をもたらすが、加熱は
局在化されており、下流の空気流
に散逸することを示している。
【0082】
図5Cは、別の初期温度の例示的なNi発泡体材料に対する様々な下流側距離で行われた測定温度の別のグラフ60Cを示す。ここでは、Ni発泡体材料は、約54℃の初期温度にある。ガスの測定温度は、例示的なNi発泡体材料から1cmから4cmまで範囲の距離に対して、約24.5℃から21.7℃(76°Fから71°F)まで低下した。
【0083】
本明細書に記載されているように、バリアヒーター140はニッケルを使用してよいが、高いサービス温度と腐食性環境での用途のために開発されたニッケル系合金又は鉄系合金も使用できるであろう。ニッケルは、室温で空気によってゆっくりと酸化され、耐腐食性を有していると考えられている。ニッケルは、周囲や通過する空気分子への熱伝達が最小限であって、高温に到達するように簡単に調整することができる高性能金属である。例えば、ニッケル製メッシュ/発泡体(1.43×107σ)に電圧を印加すると、その金属は、接触時にCOVID-19を含む病原体を殺すのに十分に熱い目標温度までエネルギーを伝導する。目標温度は、56℃乃至66℃以上、更には93℃以上(133°F乃至150°F以上、更には200°F以上)であってよい。このようにして、Niメッシュ/発泡体(0.5mm乃至2.0mm)は、加熱された格子体によって、病原体が当たって排除されるための加熱帯電した表面領域を提供する。一方、バリアヒーター140の発泡体/メッシュの空隙率(80乃至90%)は、空気流を過度に妨げず、また、HVACシステムから必要とされるエネルギーをひどく増加させない。
【0084】
既に開示されているように、プレナム116の加熱は、メッシュ/発泡体を有するバリアヒーター140によって達成されてよく、メッシュ/発泡体は、目標温度に加熱されて、メッシュ/発泡体を通過する環気のための曲がりくねった経路を提供する。他の形態の加熱が利用されてよい。既に開示されているように、プレナム116のUV照明は、UV光ストリップを用いて達成されてよい。他の形態のUV照明が使用されてよい。
【0085】
例えば、
図6Aは、フレーム110のプレナム116に配置されると共に、電源制御装置201に接続された複数の電気素子(UV光源130及びバリアヒーター140)を有する別の構成を示す。プレナム116は、吸収及び浄化のために1又は複数の側壁に炭素媒体152を含んでいる。プレナム116はまた、吸気口に配置されたフィルター120を含んでよい。
【0086】
上述したように、開示された浄化装置100は、空気ハンドリングシステムと他の浄化装置100とは別個に、又は、それらと組み合わせて使用されてよい。一例として、
図6Bは、制御/電源回路202によって制御されるUV光源130及びバリアヒーター140を含む、本開示に基づく浄化装置100の構成を示す。UV光源130及びバリアヒーター140は、本明細書に開示されたものと同様であってよく、空気ハンドリングシステムの空気流に適合するようにハウジング又はフレーム110内に一緒に収容されてよい。例えば、ハウジング又はフレーム110は、空気ハンドリングシステムの既存のダクトに後付け又は追加されてよく、空気ハンドリングシステムの操作可能な構成要素の上流に配置することができ、又は空気流の他の場所に配置されてよい。ろ過は、空気ハンドリングシステムの他の場所で実現されてよい。その部分では、制御/電源回路201は、UV光源130及びバリアヒーター140を制御するために、本明細書に開示されている必要な構成要素を有していてよい。
【0087】
別の例では、
図6Cは、本開示による浄化装置100の別の構成を示しており、制御/電源回路203によって制御されるバリアヒーター140を含んでいる。図示されているこの装置100はUV光源を含まなくてよいが、そのような光源は、施設又は他の環境における別の場所で使用できるであろう。バリアヒーター140は、本明細書に開示されたものと同様であってよく、空気ハンドリングシステムの空気流に適合するようにハウジング又はフレーム110内に収容されてもよい。例えば、ハウジング又はフレーム110は、空気ハンドリングシステムの既存のダクトに後付け又は追加されてよく、空気ハンドリングシステムの動作可能な構成要素の上流に配置されてよく、或いは、空気流の他の場所に配置されてよい。ろ過は、空気ハンドリングシステムの他の場所で実現されてよく、又は、本明細書の他の場所で開示されるようなフィルター(図示せず)を使用してフレーム110に組み込まれてよい。その部分では、制御/電源回路203は、バリアヒーター140を制御するために本明細書に開示されている必要な構成要素を有してよい。
【0088】
更に別の例として、
図6Dは、本開示に基づく浄化装置100の更に別の構成を示しており、当該構成は、制御/電源回路204によって制御されるUV光源130を含み、制御/電源回路203によって制御されるバリアヒーター140を含む。UV光源130及びバリアヒーター140は、本明細書に開示されたものと同様であってよく、空気ハンドリングシステムの空気流に適合するように別個のハウジング又はフレーム110a-bに収容されてよい。例えば、ハウジング又はフレーム110a-bは、空気ハンドリングシステムの既存のダクトに後付け又は追加されてよく、空気ハンドリングシステムの動作可能な構成要素の上流に配置されてよい、或いは、空気流の他の場所に配置されてよい。ろ過は、空気ハンドリングシステムの他の場所で実現されてよく、又は、本明細書の他の場所で開示されているフィルター(図示せず)を使用して、フレーム110a-bの一方又は両方に組み込まれてよい。その部分について、制御/電源回路203,204は夫々、UV光源130及びバリアヒーター140を制御するために、本明細書に開示されている必要な構成要素を有してよい。
【0089】
先に示唆したように、開示された浄化装置100は、空気ハンドリングシステム及び他の浄化装置100と別個に、又は、それらと組み合わされて使用されてよい。
図7は、複数の浄化装置100a-nを有する空気ハンドリングシステム20の構成の概略を示す。上述したように、1又は複数の浄化装置100a-nが施設内で使用されてよく、これらの浄化装置100a-nは、遠隔制御又は局所制御のための制御構成を有してよい。
【0090】
例えば、空気ハンドリングシステム20(例えば、HVACシステム)は、そのシステムコントローラ50を含んでよく、ユーザ/通信インターフェース52を有してよい。システムコントローラ50は、環境コントローラにおいて通常見られるような中央処理ユニット及びメモリを含む。ユーザ/通信インターフェース502は、環境コントローラにおいて通常見られるようなグラフィカルユーザインターフェース、制御パネル、有線通信、及び無線通信を含んでよい。前述したように、HVACシステム20は、ブロア22、ファーネス24、圧縮機27、サーモスタット29のような構成要素と、他の任意の慣用構成要素とを含む。
【0091】
システムコントローラ50は、施設内に配置された1又は複数のスタンドアロン型浄化装置110a-100nと有線又は無線通信を介して通信してよい。これらのスタンドアロン型浄化装置110a-100nは、ローカルコントローラ210及びユーザ/通信インターフェース212を有する。ローカルコントローラ210は、環境コントローラにおいて通常見られるような中央処理ユニット及びメモリを含む。ユーザ/通信インターフェース212は、環境コントローラにおいて通常見られるようなグラフィカルユーザインターフェース、制御パネル、有線通信、及び無線通信を含んでよい。前述したように、スタンドアロン装置100a-100nは、開示された浄化構成要素、例えば、UV源ドライバ213、ヒーター回路214、センサ216等を含む。
【0092】
更に図示されているように、システムコントローラ50は、同様に、施設内に配置された1又は複数の統合浄化装置110bと有線又は無線通信を介して通信してよい。これらの統合浄化装置110bは、ローカル制御を持たず、システムコントローラ50によって直接制御されてよい。前述のように、統合浄化装置100bは、UV源ドライバ213、ヒーター回路214、センサ216などの開示された浄化構成要素を含む。
【0093】
上記構成に基づいて、施設は、施設の異なるゾーン、部屋、エリア等のために複数のシステム構成要素を有するように構成できることが理解されるであろう。簡単に説明すると、
図8Aは、マスター制御ユニット250を示しており、マスター制御ユニット250は、施設構成102の異なるゾーン104a-nの複数のローカルコントローラ200a-nと有線及び/又は無線通信256を介して通信するための中央処理ユニット252及び通信インターフェース245を有する。各ローカルコントローラ200a-nは、所与のゾーン104a-nの1又は複数の浄化装置100a-nを制御することができる。
【0094】
別の簡単な例として、
図8Bは、施設構成102の複数のシステム構成要素と有線及び/又は無線通信56を介して通信するための中央処理装置及び通信インターフェース52a-bを有するマスター環境制御装置50を示している。マスター環境制御装置50は、施設構成102の異なるゾーン104a-nにあるローカルコントローラ200a-nと通信してよい。ローカルコントローラ200a-nの各々は、所定のゾーン104a-n内の1又は複数の浄化装置100a-nを制御してよい。更に、マスター制御装置50は、施設の空気ハンドリングシステム20のローカル環境システム21a-nと通信してよい。これらのローカル環境システム21a-nは、施設の異なるゾーン(例えば、フロア、部屋、建物など)に専用化されてよい。
【0095】
前述したように、本明細書に開示されたバリアヒーター140の通気バリア142は、種々な層及び構成を有してよい。
図9Aでは、バリアヒーター140aの一部が示されており、通気バリア142は、平らであって、規定の厚さT1を有する。そのような1又は複数の平らなバリア142は、直列に互いに隣接して使用されて、衝突する空気流を妨げて相互作用してよい。表面積及び相互作用を増加させるために、
図9Bに示されているように、バリアヒーター140bの一部は、通気バリア142に折り目、波形、又はひだ142を有する。通気バリア142のメッシュ材料は、その元の厚さT1を有してよいが、波形バリアヒーター140bは、衝突する空気流について厚さT2を示す。このような1又は複数の波形バリア142は、衝突する空気流を妨げて相互作用するために直列に隣接されて使用されてよい。
【0096】
Ni発泡体の可撓性を考慮すると、波形バリアヒーター140bは、幾つかの利点をもたらす。第1に、Ni発泡体の抵抗は曲げ144によってはるかに大きくなり、このことは、住宅用電圧(110V)で使用される場合にバリアヒーター140のためになる。第2に、
図9Bに図示されているように、曲げ144は、厚さT1の数倍であって、衝突する空気と相互作用する有効距離T2を生じる。熱いNi発泡体の曲げ144間の隙間は、病原体を損傷させるのに有効な高温を生じる。屈曲数、屈曲長さ等は容易に制御でき、屈曲長さが長いほどより高温に達することに留意すべきである。第3に、2つの主面が空気に露出している平らなNi発泡体に比べて、
図9Bの折り曲げられたNi発泡体バリア140bは、出入りする空気に露出している面積がはるかに小さく、熱損失が最小限に抑えられるので、バリアヒーター140の温度をより急速に上昇させることができ、同じ電力消費ではるかに高い値に達することができる。
【0097】
例えば、
図10Aは、平らなNi発泡体構成を有するバリアヒーター140aに生じる電流に対する入力電圧のグラフを示す。
図10Bは、平らなNi発泡体構成を有するバリアヒーター140に生じる温度レベルに対する電流のグラフを示す。一方、
図11Aは、波形Ni発泡体構成を有するバリアヒーター140bに生じる電流に対する入力電圧のグラフを示す。
図11Bは、波形Ni発泡体構成を有するバリアヒーター140bに生じる温度レベルに対する電流のグラフを示す。
図10B及び
図11Bから分かるように、同じ電圧1.0Vでは、波形バリアヒーター140bの温度は、平らなバリアヒーター140aの温度の2倍以上になる。
【0098】
理解されるように、UV光源130及びバリアヒーター140を有する開示された浄化装置100の様々な特徴は、特定の実施形態に適合して、特定の病原体のために空気を処理するように構成されてよい。実際の病原体を用いた試験は、慎重な管理を必要とし、実験室環境で実施されている。
【0099】
UV光源130に関しては、UV光源130からの紫外線の強度、活性領域、波長、及び他の変数は、特定の病原体について空気を処理するように構成されてよく、それら変数は、制御された実験室の設定で実際の病原体を用いた直接的な試験によって最も良く決定される。
バリアヒーター140に関しては、バリアヒーター140の通気バリア142の厚さ、材料、活性表面積、通右記性、波形、温度、及び他の変数は、特定の病原体のために空気を処理するように構成されてよく、それら変数は、制御された実験室の設定で実際の病原体を用いた直接的な試験によって最も良く決定される。
【0100】
SARS-CoV及びMERS-CoVを用いた以前の研究で、コロナウイルスを熱によって不活化できることが確立されている。例えば、Leclerca,2014年;Darnell,2004年;Pastorino,2020年を参照のこと。BSL3施設での予備研究の結果は、SARS-CoV-2がエンベロープされたRNAウイルスに対して著しく耐熱性を有することを示した。100℃(212°F)で10分間のプロトコルのみがウイルスを完全に不活化させた。
【0101】
特に、ヒトSARS-CoV-2株(COVID-19)の耐熱性は、BSL3施設で研究されている。研究のためのプロトコルは、水及び生理食塩水を室温又は沸騰温度の何れかで使用することを含んでいた(
図12)。後者については、10LのSARS-CoV-2を、100℃(212°F)で予熱した90Lの水又は生理食塩水に加えた。これらの溶液は、100℃で30秒又は10分間インキュベートされたが、対照群では室温でインキュベートされた。
【0102】
インキュベーション後、900Lの室温培地が加えられて、滴定された。室温で10分30秒インキュベーションした対照群は、ウイルス負荷の低減には効果がないままであった。対照的に、100℃-30秒のプロトコルは傾向を示した。しかしながら、明らかに暴露は、効果的にウイルス負荷を減少させるには十分な時間ではなかったが、水中のウイルス負荷は生理食塩水に比べて相対的に低かった。水又は生理食塩水の何れかの100℃-10分だけがウイルスを完全に不活化させることができた(>5Log10の減少)。
【0103】
生成されたデータから、ウイルスはエンベロープされたRNAウイルスとして非常に耐熱性が高いことが確認された。熱不活化に関する更なる研究は、可変温度(50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、及び300℃)及び暴露持続時間(1秒、5秒、15秒、30秒、1分、3分、及び5分)について曲線を図示でき、これは次に、通気Ni発泡体を有するような、本明細書に開示されるバリアヒーターによって引き起こされると予想される熱損傷と相関させることができる。
【0104】
最近の研究によれば、しかしながら、開示されたバリアヒーター140の加熱フィルターは、COVID-19を殺すために、高温[(200~250℃)(392~482°F)]で安全に使用できる。特に、研究は、ガルベストン国立研究所/NIAIDバイオディフェンス研究所ネットワーク(バイオセーフティレベル4)で行われており、対照実験の知見を含んでいる。この研究は、本開示の特殊な加熱フィルターシステム(即ち、開示されたバリアヒーター140)と接触すると、COVID-19がエアロゾル化された空気中で蒸発することを発見した。この結果は、加熱されたバリアヒーター140によるCOVID-19の活性ウイルスの100倍の減少と、100%の殺傷率とを示している。この研究は、COVID-19を空気中から排除できることを示している。
【0105】
開示された浄化装置100は、約250℃(482°F)の高温で循環空気中のウイルス及び細菌を効率的に殺すことができる。本明細書に開示されているように、ニッケル(Ni)発泡体のようなバリアヒーター140は、低コストであり、電気伝導性を有しており、ランダムなチャネルがある多孔質であり、機械的に強く、良好な可撓性を有しているので、HVACシステム又は他の環境における殺菌及び消毒のための良好なフィルターとして作用する。また、曲げられたNi発泡体は、高抵抗、低電圧の構造をもたらし、殺菌のための表面積を増加させる。温度を利用した機械的破壊と、加圧された高性能金属とが、COVID-19の設定に適用されてよい。
【0106】
本明細書に開示されている他の関連する研究は、高い性能及び設計を踏まえると、開示されている加熱フィルターを通過する空気には際だった温度上昇がないことを発見している。このフィルター及びその伝導性の主たる研究は、ヒューストン大学のテキサス超伝導センターで行われた。研究パートナーには、テキサスA&M大学の工学部及び工学実験ステーションと、テキサス大学医学部とが含まれている。図示されているように、Ni発泡体のバリアヒーター140の温度は非常に速く上昇し、ワット数が低い電力で高温に加熱できる。バリアヒーター140の加熱Ni発泡体を通過した後、空気の温度は非常に速く低下し、100℃を超える温度であっても、4cm離れると室温になる。
【0107】
好ましい実施形態及び他の実施形態の上記の説明は、出願人によって考え出された発明概念の範囲又は適用可能性を制限することを意図するものではない。開示された主題の任意の実施形態又は態様に基づいて上述した特徴が、開示された主題の任意の他の実施形態又は態様において、単独で又は他の記載された特徴と組み合わされて利用できることは、本開示の利益によって理解されるであろう。
【0108】
出願人は、本明細書に述べられた発明概念を開示することと引き換えに、添付の特許請求の範囲によって与えられる全ての特許権を希望する。従って、添付の特許請求の範囲には、以下の特許請求の範囲又はその均等物の範囲に収まる限りにおいて、全ての修正及び変更が含まれることが意図される。