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特許7170194COVID-19を含む生物学的種を殺すための加熱フィルターを有する移動式浄化装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】COVID-19を含む生物学的種を殺すための加熱フィルターを有する移動式浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20221107BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20221107BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20221107BHJP
   A61L 2/02 20060101ALI20221107BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20221107BHJP
   F24F 8/20 20210101ALI20221107BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20221107BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20221107BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20221107BHJP
   B01D 46/84 20220101ALI20221107BHJP
【FI】
A61L9/16 Z
A61L9/20
A61L2/04
A61L2/02 100
A61L2/10
F24F8/20
F24F8/80 135
F24F3/16
F24F13/28
B01D46/84
【請求項の数】 32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020129203
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2021171621
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】63/018,442
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/018,448
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/883,981
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520284816
【氏名又は名称】インテグレイテッド バイラル プロテクション ソリューションズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Integrated Viral Protection Solutions,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モンザー エー.ホーラーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジーフェン レン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ユ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-137871(JP,A)
【文献】実開昭50-128324(JP,U)
【文献】特開平01-210010(JP,A)
【文献】特表2018-509499(JP,A)
【文献】特表2004-508163(JP,A)
【文献】特開昭60-193517(JP,A)
【文献】特開昭47-044891(JP,A)
【文献】特開2011-224121(JP,A)
【文献】国際公開第2004/006969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-20
A61L 2/02-14
B01D 46/80-84
F24F 3/16
F24F 7/003
F24F 8/20-28
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体について環境の空気を処理するために供給電力を用いて使用される装置において、
前記環境で移動可能であって、吸気口及び排気口を有するハウジングと、
前記吸気口と前記排気口の間で前記ハウジングに配置されて、前記環境の空気を前記吸気口から前記排気口へと前記ハウジングを通して移動させるように動作する少なくとも1つの主ムーバーと、
前記ハウジングに配置されており、金属材料を有する通気バリアを備える少なくとも1つのヒーターと、
前記ハウジングに配置された少なくとも1つの紫外線光源と、
を備えており、
前記少なくとも1つのヒーターの前記通気バリアは、前記通気バリアに移動空気を通すために前記吸気口と前記排気口の間に配置されており、最大で高空隙率限界まで前記移動空気を通すように構成されており、前記少なくとも1つのヒーターの前記通気バリアの前記金属材料は、前記供給電力に電気的に接続されており、
前記通気バリアは、前記通気バリアを通る病原体に作用するように構成された活性表面領域を有しており、前記活性表面領域は、前記病原体に少なくともダメージを与えるようにされた表面温度に前記供給電力によって加熱され、前記活性表面領域による空気の加熱は前記通気バリアに局在化されており
前記紫外線光源は、前記供給電力と電気的に接続されて、移動空気が前記吸気口から前記排気口へと通過する前記ハウジングの少なくとも1つの部分に紫外線放射の作用場を生成するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記ハウジングに配置されて且つ第1の材料を含む少なくとも1つのフィルターを更に備えており、前記フィルターは、それを通る移動空気を最大でろ過限界までろ過するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルターの前記第1の材料は金属材料である、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ハウジングの吸気口にて交換可能な前記少なくとも1つのカートリッジを更に備えており、前記少なくとも1つのカートリッジは入口及び出口を有するプレナムを有し、前記少なくとも1つのカートリッジは前記少なくとも1つの通気バリアを有する、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのカートリッジは、前記プレナムにわたって配置されて且つ第1の材料を含む少なくとも1つのフィルターを更に備えており、前記フィルターは、それを通る移動空気を最大でろ過限界までろ過するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記ハウジングの前記吸気口にて交換可能な少なくとも1つのカートリッジを更に備えており、前記少なくとも1つのカートリッジは、入口と出口を有するプレナムを有しており、前記少なくとも1つのカートリッジは、前記少なくとも1つの紫外線光源と前記通気バリアとを有する、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記紫外線光源が、前記プレナムに配置されている1又は複数のUV-C灯、或いは複数のUV-C発光ダイオードを備えている、請求項又は請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカートリッジは、前記入口の開放側と反対側にある前記出口の開放側との間で前記プレナムを囲む複数の側壁を備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記通気バリアの端部と前記少なくとも1つのカートリッジの前記複数の側壁との間に配置された電気絶縁体を更に備える、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記主ムーバーは、1又は複数の送風機若しくはファンを備えている、請求項1乃至の何れかに記載の装置。
【請求項11】
前記ハウジングに配置されて前記供給電力を供給する電源装置を備えている、請求項1乃至10の何れかに記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのヒーターの前記通気バリアは、メッシュ、発泡体、スクリーン、又は蛇行状媒体を備える、請求項1乃至11の何れかに記載の装置。
【請求項13】
前記通気バリアの前記金属材料はニッケル、ニッケル系合金、鉄系合金、チタン、又は鋼合金である、請求項1乃至12の何れかに記載の装置。
【請求項14】
最大で前記空隙率限界まで前記通気バリアに空気を通すために、前記少なくとも1つのヒーターの前記通気バリアは少なくとも80%の前記空隙率限界を与えて、最大で20%のインピーダンス限界までそれを通る空気を妨げるように構成されている、請求項1乃至13の何れかに記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのヒーターの前記通気バリアは、少なくとも約56℃(133°F)よりも高い表面温度に加熱される、請求項1乃至14の何れかに記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つのヒーター及び前記少なくとも1つの主ムーバーと電気的に接続して配置されたコントローラを更に備えており、前記コントローラは、(i)前記供給電力による前記少なくとも1つのヒーターの前記通気バリアの加熱と、(ii)前記供給電力を用いて前記少なくとも1つの主ムーバーによって生成された前記吸気口から前記排気口へと前記ハウジングを通る空気流とを制御するように構成されている、請求項1乃至15の何れかに記載の装置。
【請求項17】
前記コントローラは、前記通気バリアに接続されたヒーター回路と電気的に接続して配置され、前記コントローラは、前記供給電力によって給電された前記ヒーター回路で前記通気バリアの加熱を制御するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記通気バリアに隣接して配置され、前記コントローラと電気的に接続して配置された温度センサを更に備えており、前記温度センサは、前記通気バリアの加熱に関する温度を測定するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
記コントローラは、前記紫外線光源に接続された駆動回路と電気的に接続されて配置されており、前記コントローラは、前記供給電力によって給電された前記駆動回路を用いて前記紫外線光源の紫外線放射を制御するように構成されている、請求項16、請求項17、又は請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記紫外線光源に隣接して配置され、前記コントローラと電気的に接続して配置された光センサを更に備えており、前記光センサは、前記紫外線光源の紫外線放射を測定するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラは、前記主ムーバーに接続されたモータ駆動回路と電気的に接続して配置されており、前記コントローラは、前記供給電力で駆動された前記モータ駆動回路を用いて前記主ムーバーを制御するように構成されている、請求項16乃至20の何れかに記載の装置。
【請求項22】
前記ハウジングに配置され、前記コントローラと電気的に接続されて配置された流れセンサを更に備えており、前記流れセンサは、前記ハウジングを通過する空気流を測定するように構成され、前記コントローラは、測定された空気流に基づいて制御を構成する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記プレナム内に配置された炭素媒体を更に備える、請求項1乃至22の何れかに記載の装置。
【請求項24】
病原体について環境の空気を処理するために供給電力を用いて使用される装置において、
前記環境で移動可能であって、吸気口及び排気口を有するハウジングと、
前記吸気口と前記排気口の間で前記ハウジングに配置されて、前記環境の空気を前記吸気口から前記排気口へと前記ハウジングを通して移動させるように動作する少なくとも1つの主ムーバーと、
前記ハウジングに設けられた少なくとも1つの通気バリアであって、前記通気バリアに移動空気を通すために前記吸気口と前記排気口の間に配置されており、前記通気バリアに最大で高空隙率限界まで空気を通すように構成されている、少なくとも1つの通気バリアと、
前記少なくとも1つの通気バリアの金属材料であって、前記供給電力に電気的に接続されている金属材料と、
前記少なくとも1つの通気バリアの活性表面領域であって、前記通気バリアを通る病原体に作用するように構成されており、前記病原体に少なくともダメージを与えるようにされた表面温度に前記供給電力によって加熱され、前記活性表面領域による空気の加熱は前記通気バリアに局在化されている、活性表面領域と、
前記ハウジングに配置された少なくとも1つの紫外線光源と、
を備えており、
前記紫外線光源は、前記供給電力と電気的に接続され、移動空気が前記吸気口から前記排気口へと通過する前記ハウジングの少なくとも1つの部分に紫外線放射の作用場を生成するように構成されている、装置。
【請求項25】
前記病原体はウイルスであって、前記通気バリア前記活性表面領域は、前記ウイルスに少なくともダメージを与えるようにされた200℃までの表面温度に加熱される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの通気バリアは、厚さを有する多孔質金属発泡体の1又は複数の層からなり、前記活性表面領域は、前記多孔質金属発泡体の厚さを通して規定された曲がりくねったチャネルの格子体を備える、請求項24又は請求項25の何れかに記載の装置。
【請求項27】
前記1又は複数の層は波形である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記空気が前記少なくとも1つの通気バリアを通過している場合に、及び/又は、前記空気が前記少なくとも1つの通気バリアを通過していない場合に、前記少なくとも1つの通気バリアの前記活性表面領域の加熱を断続的に制御するように構成されているコントローラを更に備える、請求項24乃至27の何れかに記載の装置。
【請求項29】
前記表面温度に加熱された前記活性表面領域と前記少なくとも1つの通気バリアの前記空隙率限界とは、局在化しており、下流において前記空気に散逸する加熱をもたらすように構成されている、請求項24乃至28の何れかに記載の装置。
【請求項30】
最大で前記空隙率限界まで前記空気を通すために、前記通気バリアは少なくとも80%の前記空隙率限界を与えて、最大で20%のインピーダンス限界までそれを通る前記空気を妨げるように構成されている、請求項24乃至29の何れかに記載の装置。
【請求項31】
病原体について環境の空気を処理するための方法であって、
移動式ハウジング内のプレナムを通る空気を、前記プレナムに配置された主ムーバーに給電して吸気口から排気口へと移動させる工程と、
前記プレナムに配置されたフィルターを介して、前記空気を最大でろ過限界までろ過する工程と、
前記プレナムに配置されたヒーターの通気バリアに前記空気を最大で高空隙率限界まで通す工程であって、前記通気バリアは金属材料及び表面活性領域を有しており、前記表面活性領域は前記通気バリアを通る病原体に作用するように構成されている、工程と、
前記病原体に少なくともダメージを与えるようにされた表面温度に前記通気バリアの前記表面活性領域を加熱する工程であって、前記ヒーターの前記通気バリアにわたって電圧電位を印加することにより、前記活性表面領域による空気の加熱は前記通気バリアに局在化されている、工程と、
前記ハウジングに配置された紫外線光源に給電することで、前記プレナム内に紫外線放射の作用場を生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項32】
前記通気バリアに前記空気を最大で空隙率限界まで通す工程は、前記通気バリアに少なくとも80%の空隙率限界を与えて、最大で20%のインピーダンス限界まで前記空気を妨げる工程を含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の参照>
本願は、2020年4月30に出願された米国仮出願第63/018,442及び第63/018,448の優先権を主張する。これら米国仮出願は、参照により本明細書の一部となる。本願は、代理人管理番号1766-0002US1を有しており、「Purification Device Having Heated Filter for Killing Biological Species,Including COVID-19」と題する米国特許出願第16/883,977と同時継続しており、当該米国特許出願は、全体として、参照により本明細書の一部となる。
【背景技術】
【0002】
細菌、ウイルス、その他の微生物を含む様々な感染性病原体は、ヒトに病気を引き起こす可能性がある。致死的なヒトSARS-CoV-2株(COVID-19)のパンデミックは、世界中で生活のあらゆるレベルで人間に影響を与えている。COVID-19感染は、主要な伝染機構である循環気流によって持続的に広がる。COVID-19から公衆を守るための有効な戦略はほとんどなく、現在、戦略が広く検討されているがコストがかかり、非効率的である。エアロゾル化したCOVID-19に直ちに対抗するためには、全ての環境において循環空気を調整して浄化するための受動的アプローチが必要とされる。これは、現在のフィルター及び空気浄化技術では、サイズが小さい(0.05乃至0.2ミクロン)のCOVID-19ウイルスを殺すことに成功していないからである。
【0003】
一般的に、空気ろ過は、暖房システム、換気システム、及び空調(HVAC)システムにおいて使用されており、システムによって、塵、花粉、カビ、微粒子等を施設を通って移動している空気から除去する。ろ過に使用されるフィルターには幾つかの形態があり、所定の大きさの粒子を所定の効率でろ過するように構成することができる。
【0004】
例えば、高効率微粒子空気(HEPA)フィルターは、クリーンルーム、手術室、薬局、家庭等で一般的に使用されている。これらのフィルターは、グラスファイバー媒体、ePTFE媒体等の様々な種類の媒体で作られてよく、活性炭ベースの材料を有してよい。一般に、HEPAフィルターは、所定のサイズ(例えば、0.3ミクロン又はサイズ)の直径を有する粒子の99%超をろ過することができる。その効率をもってしても、HEPAフィルターは、サイズが非常に小さい病原体(バイロン、細菌等)を阻止できないことがある。
【0005】
紫外線(UV)殺菌灯は、細菌、ウイルス、カビ等の病原体を殺すことができる。紫外線殺菌灯は紫外線を発生し、紫外線は、微生物の遺伝物質にダメージを与える。そのダメージは病原体を殺すか、増殖できなくする。紫外線に長時間曝すことで、照射された表面に付着した病原体を分解することもできる。
【0006】
紫外線システムの一例として、上側室内空気紫外線殺菌照射(UVGI)システムがある。UVGIシステムでは、紫外線殺菌灯が、使用される部屋の天井付近に設置される。そして、空間上部において、天井付近で対流により循環する空気は、紫外線殺菌灯の活性領域内で照射を受ける。UVGIシステムは、HVACシステムのダクトに設置することもでき、空気がダクトを通って流れる際に、微生物を含む浮遊微小粒子に照射できる。
【0007】
ろ過及び殺菌照射用の既存のシステムは、空気を処理して微粒子を除去したり、病原体にダメージを与えたりすることには有効であるが、細菌、ウイルス、カビ等の病原体の拡散を更に抑えるために、施設、家庭、作業場、病院、老人ホーム、スポーツ会場などの人口密集地の空気を浄化することが引き続き必要とされている。
【0008】
特に、2019年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的な健康に重要な新規ウイルスであって、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染によって引き起こされる。COVID-19は、密接に接触している人から人へと、呼吸の飛沫を介して広がると考えられている。研究によると、このウイルスは一度に数時間生き延びることができ、空気流によって持続的に運ばれ得る。このため、人々が部屋の中で長時間一緒に過ごす状況では、単に空気流によって伝染するので、定常的な6フィートの分離は効果がないと考えられている。
【0009】
例えば、COVID-19(Sars-CoV-2)は、空気中で咳をした後に液滴中で最大3時間存することができ、空気の対流が感染拡大の主なメカニズムであると考えられている。従って、液滴飛沫及び対流は空気中の直接感染を促進する可能性があり、人々が長時間一緒に過ごす密閉された環境では、ソーシャルディスタンスは効果を発揮しない可能性がある。
【0010】
現在、COVID-19の治療法はないので、環境浄化戦略は、ウイルスの拡散を遅らせるのに役立つ。残念ながら、循環空気を処理する現在のシステムは高価であって、主にUV殺菌光を使用している。これらの製品は専門家による設置を必要とし、それ自体に一般人がアクセスすることはできず、COVID-19を殺すためには使用されていない。更に、HVACシステムでのろ過には効果がないことがある。COVID-19の大きさは0.05乃至0.2ミクロンであるが、HEPAフィルターがろ過できるのは0.3ミクロンよりも大きな微粒子なので、COVID-19の拡散に対しては更なる保護を要する。
【0011】
これらの理由から、本開示の主題は、上述した問題の1又は複数を克服すること、或いは、少なくともその影響を軽減することに向けられている。
【発明の概要】
【0012】
本開示の主題は、空気をろ過して、病原体(ウイルス、細菌、カビ、及び花粉など)やその他の要素、例えば、揮発性有機化合物、アレルゲンや汚染物質を破壊することを試みる移動式浄化装置に向けられている。その浄化装置は、価格が手頃であり、設置が容易であり、アクセス可能であり、住宅及び商業的な設定の両方で使用可能であることが意図されている。浄化装置は、循環空気中のCOVID-19等のウイルスや他の病原体を最も効果的に低減するために現実世界の解決策に適用することができ、浄化装置は、商業、住宅、大量輸送、及び公共の場で使用するための特別な加熱フィルターとして配備できる。
【0013】
例えば、以下で説明されるように、浄化装置は、バリアヒーター又は加熱フィルターを含むんでおり、バリアヒーター又は加熱フィルターは、高効率ニッケル発泡体/メッシュについて目標を定めた熱伝導を利用しており、コロナウイルス(例えば、COVID-19)のような病原体を殺すことが証明されている温度まで昇温される。浄化装置は、UV-C光を使用してウイルスを破壊する紫外線(UV)光源を更に含んでよい。紫外線光源及びバリアヒーターは、難燃性及び耐燃性のあるろ過システムにて一緒に組み合わされており、空港ターミナル、教会、病院、ワークショップ、オフィススペース、住宅、輸送車両、学校、ホテル、クルーズ船、レクリエーション会場のような施設又は人口密集環境において所望により移動して配置されてよい。現在、COVID-19及び他の多くの病原体に対する治療法がないので、環境浄化戦略は、ウイルスの拡散を遅らせるのに役立ち、開示された装置によって提供される空気浄化は、感染に対する最初の防御をもたらし得る。
【0014】
ある実施形態によれば、装置は、施設で空気流を処理するための供給電力を用いて使用される。ハウジングと、少なくとも1つの主ムーバー(prime mover)と、少なくとも1つの紫外線光源と、少なくとも1つのヒーターとを備えている。
【0015】
ハウジングは、環境において移動可能である。ハウジングはまた、環境において移動するための動力付き車輪を有するロボットであってよい。ハウジングは吸気口及び排気口を有する。少なくとも1つの主ムーバーは、吸気口と排気口の間でハウジング内に配置されており、環境中の空気を吸気口から排気口へとハウジング内で移動させるために動作可能である。ハウジング内に配置された少なくとも1つの紫外線光源は、供給電力と電気的に接続されており、移動空気が吸気口から排気口へと通過するハウジングの少なくとも1つの部分において紫外線の作用場を発生させるように構成されている。少なくとも1つのヒーターはハウジングの表面領域にわたって配置され、金属材料の通気バリアを備えている。通気バリアは、移動空気流を最大でインピーダンス限界まで妨げるように構成されており、通気バリアは供給電力と電気的に接続されて、表面温度まで加熱される。
【0016】
別の構成では、環境中の空気を処理するための方法が使用される。空気流は、移動式ハウジングのプレナム内に配置された主ムーバーに給電することにより、プレナムを通って吸気口から排気口へと移動する。空気流は、プレナムの表面領域にわたって配置されたフィルターを介して、最大でろ過限界までろ過される。プレナム内の紫外線放射の作用場は、プレナム内に配置された紫外線光源に給電することでハウジング内で生成される。一方、空気流は、プレナムの表面領域にわたって配置されており、且つ金属材料を有するヒーターの通気バリアを介して最大でインピーダンス限界まで妨げられる。通気バリアは、通気バリアに電位を印加することで表面温度まで加熱される。
【0017】
上記の概要は、本開示の潜在的な実施形態の各々を又は本開示の全ての態様を要約することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示に従った移動式浄化装置を有する空気ハンドリングシステムを有する環境を示す図である。
【0019】
図2A図2Aは、本開示に従った移動式浄化装置の正面図を示す。
図2B図2Bは、本開示に従った移動式浄化装置の側面図を示す。
図2C図2Cは、本開示に従った移動式浄化装置の平面図を示す。
【0020】
図3A図3Aは、本開示の浄化装置用の浄化カートリッジの正面図を示す。
図3B図3Bは、本開示の浄化装置用の浄化カートリッジの側面図を示す。
図3C図3Cは、本開示の浄化装置用の浄化カートリッジの端面図を示す。
【0021】
図4A図4Aは、浄化装置の構成要素の構成と共に浄化装置の一部の概要を示す側面図である。
図4B図4Bは、浄化装置の構成要素の構成と共に浄化装置の一部の概要を示す側面図である。
【0022】
図4C図4Cは、別の浄化装置の構成要素の構成の概要を示す側面図である。
【0023】
図5A図5Aは、開示された浄化装置のバリアヒーターの特性のグラフである。
図5B図5Bは、開示された浄化装置のバリアヒーターの特性のグラフである。
図5C図5Cは、開示された浄化装置のバリアヒーターの特性のグラフである。
【0024】
図6A図6Aは、フレームのプレナムに配置されており、電源制御部に接続された複数の電気素子を有する別の加熱構成を示す。
【0025】
図6B図6Bは、開示された浄化装置のカートリッジの別の配置を示す。
図6C図6Cは、開示された浄化装置のカートリッジの別の配置を示す。
図6D図6Dは、開示された浄化装置のカートリッジの別の配置を示す。
【0026】
図7A図7Aは、移動式浄化装置が施設環境でどのように移動するかを示す。
【0027】
図7B図7Bは、開示されている浄化装置の主ムーバー用に配置された複数の電動ファンを有する構成を示す。
【0028】
図8図8は、マスター制御ユニットの対象となる複数の浄化装置を有する構成を説明する図である。
【0029】
図9A図9Aは、平面配置である開示されたヒーター用の通気バリアの側面図を示す。
図9B図9Bは、波形配置である開示されたヒーター用の通気バリアの側面図を示す。
【0030】
図10A図10Aは、平面配置を有するバリアヒーターについてのグラフである。
図10B図10Bは、平面配置を有するバリアヒーターについてのグラフである。
【0031】
図11A図11Aは、波形配置を有するバリアヒーターについてのグラフである。
図11B図11Bは、波形配置を有するバリアヒーターについてのグラフである。
【0032】
図12図12は、暴露時間と温度のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示の主題は、COVID-19ウイルスのような病原体をろ過し、高温(200℃以上)(392°F以上)に曝すことにより、循環空気から病原体を瞬時に消し去るための浄化装置に向けられている。そのようにすることで、本開示の主題は、将来のパンデミックを引き起こし得るウイルスや他の生物学的種の感染伝播を減少させる一方で、COVID-19後の世界において、公衆が仕事、学校、生活、レクリエーション、及び医療に復帰するための安心感及び心の平安をもたらし得る。
【0034】
浄化装置の第1の作用機構は特殊な加熱フィルター又はバリアヒーターであって、これは、難燃性フレームに入れられており、高性能で高耐性の多孔質金属発泡体の低エネルギーで目標を定めた熱伝導を利用している。開示された加熱フィルター又はバリアヒーターは、高効率のHVACフィルターと組み合わせられてよい。更に、紫外線(UV-C)が、殺傷効果を付加するためにシステム環境に加えられてよい。研究によれば、熱及び短波長光は、暴露の経過と共にCOVID-19を正常に不活性化することが証明されている。
【0035】
以下に説明されるように、移動式/ロボットCOVID-19浄化装置が、公共の場、医療施設、介護施設、学校、飛行機、列車、クルーズ船、催し会場、劇場、教会、食料品店及び小売店、刑務所などで使用するために配備されてよい。同じ技術を用いて、本開示の浄化装置は、施設、車両、又は他の環境の空気ハンドリングシステムに組み込まれてよい。詳細は、代理人管理番号第1766-0002US1を有する同時係属中の米国特許出願第16/883,977号、発明の名称「Purification Device Having Heated Filter for Killing Biological Species, Including COVID-19」に記載されており、その全体は、参照により本明細書の一部となる。
【0036】
図1に示すように、家、病院、オフィス空間、空港ターミナル、教会、又はその他の密閉環境などの施設環境10は、加熱換気空調(HVAC)システムのような空気ハンドリングシステム20を有しているが、他の空気ハンドリングシステムが使用されてよい。典型的には、HVACシステム20は、室内空間から引き出された還気をシステム20のブロア22、熱交換器24、及び冷却コイル26に向けるためのリターン部30、縦溝32、戻りダクト34等を含む。そして、システム20は、供給ダクト36、通気口38等を介して、調整された供給空気を空間に供給する。熱交換器24は、空気を加熱するための電気ファーネス又はガスファーネスを含んでよい。冷却コイル26は、凝縮器、圧縮器、膨張弁等の施設外における他の従来の構成要素に冷却回路で接続された蒸発器であってよい。
【0037】
1又は複数の移動式浄化装置50は、施設環境において空気を浄化するために使用される。本図に示すように、移動式浄化装置50は、施設環境の空間で使用されてよい。施設環境の幾つかの空間が、このような移動式浄化装置50を有してよい。
【0038】
簡単に述べると、移動式浄化装置50は、環境において移動可能であり且つ吸気口62及び排気口66を有するハウジング60を含む。移動式浄化装置50は、1又は複数の浄化エレメント若しくはカートリッジ100と、主ムーバー150とを有する。吸気口62に向かって配置された浄化エレメント100は、少なくとも1又は複数の紫外線光源と、1又は複数の通気バリアとを含んでよい。移動式浄化装置50はまた、1又は複数のフィルターを吸気口62に含んでよい。可動性のために、移動式ハウジング60は、キャスターホイール61、牽引ヒッチ63、及びハンドル65を有してよい。
【0039】
会議室とオフィス空間の空気流の研究は、会議テーブルの椅子の間やオープンなオフィス空間のキュービクル(cubicles)の間で対流パターンが持続的に感染媒体を運ぶことを示している。このことは、人と人の分離への依存は、人が多い環境では空気の対流のために効果がないことを示している。
【0040】
移動式浄化装置50の制御は、ローカルコントローラ200によって完全に処理されてよく、ローカルコントローラ200は、装置の動作を独立に決定する。或いは、ローカルコントローラ200は、HVACシステム20用のシステムコントローラ25と統合されてよく、システムコントローラ25は、HVACシステム20の起動を信号化してよい。更なる代替例では、移動式浄化装置50は、ローカル制御を欠いていてよく、システムコントローラ25によって集中的に制御されてよい。理解されるように、これらの制御構成は、施設10、複数の浄化装置100、調節ゾーン等で任意の組合せで使用されてよい。
【0041】
図2A、2B、及び2Cは、環境中の空気を処理する本開示に従った移動式浄化装置50の正面図、側面図、及び平面図を示す。上述したように、装置50は、主ムーバー150を有するハウジング60を含む。装置50は、1又は複数の透過性バリアヒーター140を含んでよく、また、1又は複数のUV光源130を含んでよい。上述したように、バリアヒーター140は、装置のハウジング60に装着された1又は複数のエレメント又はカートリッジ100に収容されてよい。UV光源130もまた、カートリッジ100に収容されてよい。吸気口62に配置するフィルター120は、符号を付されているが、図示されていない。
【0042】
図示されているように、吸気口62は、大きな表面積にわたって環境空気を取り込むためのハウジング60の開放側であってよく、一方、排気口66は、ハウジング60の頂部から出るポートであって、処理された空気の向きを環境の上側領域に変える。ハウジング60は、吸気口62から排気口66への空気流を通過させるための内部プレナム又は主プレナム64を囲む側壁を有する。少なくとも1つの主ムーバー150が、吸気口62と排気口66の間でハウジング60内に配置されており、吸気口62を介して環境から空気を取り込み、処理された空気を排気口66を介して環境に排気するように動作可能である。
【0043】
本明細書に概ね記載されているように、装置50は、ハウジング60内に配置された少なくとも1つのフィルター120を含むことが好ましく、当該フィルター120は、吸気口62に配置されることが好ましい。少なくとも1つのフィルター120は、移動空気を最大でろ過限界までろ過するように構成されている。1又は複数のバリアヒーター140は、それを通る移動空気流を最大でインピーダンス限界まで妨げるようにハウジング60内に配置されている。1又は複数のバリアヒーター140は、供給電力と電気的に接続されて、目標表面温度まで加熱される。
【0044】
使用される場合には、1又は複数の紫外線光源130がハウジング60内に配置されて、供給電力と電気的に接続され、移動空気が吸気口62から排気口66へと通過するハウジング60の少なくとも一部において紫外線放射を発生させるように構成されている。
【0045】
図2A乃至2Cに特に示されているように、装置50は、ハウジング60の吸気口62に交換可能に配置されるように構成された少なくとも1つの浄化エレメント又はカートリッジ100を有する(図には2つのカートリッジ100が示されている)。カートリッジ100は入口と出口の間にプレナムを有しており、紫外線光源130及び通気バリアヒーター140がカートリッジ100に収容されている。カートリッジ100は吸気口に専用のフィルター120を含んでよく、複数のカートリッジ100上の複数のフィルター120は、装置のハウジング60の吸気口62を覆うことができる。或いは、ハウジング60は、カートリッジ100とは別個に吸気口62を覆う一体型フィルター(図示せず)を有してよい。
【0046】
本開示の利点と共に理解されるように、ハウジング60のプレナム64に1又は複数のUV光源130及びバリアヒーター140が装着されて維持されてもよいので、カートリッジ100の使用は厳密には必須ではない。しかしながら、カートリッジ100の使用は浄化装置50をよりモジュール化して、メンテナンス及び交換を容易にする。例えば、カートリッジ100は、ハウジング60内の取り外し交換可能な構成要素であってよく、それによって、浄化装置50は、異なる要素を用いて所与の実施形態について構成されてよく、従って、使用する構成要素を交換することができる。1又は複数のカートリッジ100は、ハウジングの吸気口62の表面積にわたって配置されているように示されているが、他の構成が使用されてよい。例えば、カートリッジ100は、空気流を直列に処理するために直列に配置されてよく、また、並列に配置されてもよい。
【0047】
環境中の空気を処理するために、空気流は、主プレナム64に配置された主ムーバー150に給電することにより、吸気口62から排気口66へと移動式ハウジング60の主プレナム64を通って移動する。図示されているように、主ムーバー150は、空気が装置50を通って引き込まれるように、フィルター120、紫外線光源130、及びバリアヒーター140の下流側に配置されてよく、これは、ろ過目的に適している。通常、主ムーバー150は、1又は複数の送風機、ファン等から構成される。例えば、主ムーバー150の複数の送風機が使用されて、ハウジング60の表面積を覆ってよい。
【0048】
電力は、従来のACコンセントのような環境下で利用可能な電源から移動式浄化装置50に供給されてよい。ここに示すように、装置50は、設備電源に接続するための電源コードを含んでよい。装置50は、供給電力を供給するために、ハウジングに配置されたそれ自身の電源40を含んでよい。例えば、充電式電池が電源40に使用されてよい。
【0049】
空気流は、プレナム64に配置された(即ち、吸気口62に配置された、或いは、吸気口62又はその一部にわたって配置された)1又は複数のフィルター120を介して、最大でろ過限界までろ過される。紫外線放射は、プレナム64内に配置された紫外線光源130に給電することで、ハウジング60内で生成される。更に、空気流は、プレナム64に配置された1又は複数のバリアヒーター140を通って最大でインピーダンス限界まで妨げられる。バリアヒーター140は、それらにわたって電圧電位を印加することにより、表面温度まで加熱される。引き出された空気はその後、ハウジング60の頂部に向かって排気口66を通過し、加熱された流れと最近処理された空気とが周囲の人々及び物体から離れるように排気される。
【0050】
移動式浄化装置50はまた、UV光源130、バリアヒーター140及び主ムーバー150と電気的に接続して配置されたコントローラ200を含む。以下に更に詳細に説明するように、コントローラ200は、(i)供給電力で給電されるUV光源130の放射と、(ii)供給電力で給電されるバリアヒーター140の加熱と、(iii)吸気口62から排気口68へとハウジング60を通って主ムーバー150によって引き出される空気流とを制御するように構成されている。
【0051】
移動式浄化装置50がどのように使用され、どこに設置できるかを理解した上で、説明は次に、開示された浄化装置50の特定の詳細に向かう。上述したように、移動式浄化装置50は、フィルター120、UV光源130及びバリアヒーター140を一体化した1又は複数のカートリッジ100を使用してよい。例えば、図3A図3B及び図3Cは、本開示の例示的な浄化カートリッジ100の正面図、側面図、及び端面図を図示する。カートリッジ100は、移動式装置のハウジング60の吸気口62に取り付けられるように構成されたフレーム110を含む。
【0052】
全般的に、フレーム110は、プレナム内部116を囲む4つの側壁を有しており、対向する開放面(1つは吸気口112用であり、もう1つはプレナム116の排気口118用である)で露出している。必要に応じて、吸気口112はリム114を含んでよく、このリム114は、典型的には、吸気口62(図2A乃至2C)の開口周りに係合するであろう。ファスナー(図示せず)が、リムを周囲の構造物に固定してよい。特定の実施形態のために構成されているものの、フレーム110の典型的なサイズは、幅20インチ×高さ30インチ×奥行き7インチの全体的な寸法を含んでよい。
【0053】
図3Aに最もよく示されているように、吸気口112又はリム114は、フレームのプレナム116に入る空気流をろ過するためのフィルター(図示せず)を保持するためのレセプタクルを形成してよい。プレナム116の内側で、フレーム110はバリアヒーター140を保持する。ここに簡略的に示されているように、バリアヒーター140は通気バリア142を含んでおり、通気バリア142は金属で構成され、また、メッシュ、発泡体、スクリーン、又は蛇行状(tortuous)媒体を備えており、プレナム116にわたって配置されることで、後述するように空気流を処理するための通気表面領域を提供する。
【0054】
また、プレナム116の内側には、フレームは、バリアヒーター140に加えて付加的な処理としてのUV光源130を保持できる。(本明細書に開示される他の実施形態は、UV光源130を含まなくてもよい。)ここで簡単に図示されているように、UV光源130は、プレナム116にわたって配置された2つのUV-C発光ダイオード(LED)ストリップを含んでおり、後述するように、空気流を処理するための作用場を提供する。より多くの又はより少ない光源130が使用されてもよく、タイプが異なる光源130が設けられてよい。
【0055】
図4Aに目を向けると、浄化装置50の側面図が示されており、その構成要素の配置を有する。前述したように、浄化カートリッジ100は、移動装置のハウジング60の吸気口62にて使用されてよい。浄化カートリッジ100のフレーム110は、吸気口62の窓、即ちレセプタクルに収まって、プレナム64への開口の表面積の少なくとも一部を覆う。ここで、吸気口62は、カートリッジ100を支持するために、ハウジング60内に棚61を含む。フィルター120はフレーム110のレセプタクルに収まってよく、又は、フィルター120はフレーム110の吸気口に当接してよい。典型的には、フィルター120は単にレセプタクルにぴったりと収まるが、留め具が使用できるであろう。
【0056】
好ましくは、カートリッジ100のフィルター120はまず、フィルター120を介して最大でろ過限界まで空気流をろ過する。このようにして、フィルター120は、塵埃や他の微粒子がカートリッジ100に引き込まれて、更に装置のハウジング60に引き込まれることを防ぐ。
【0057】
既に述べたように、カートリッジ100のプレナム116に配置されたUV光源130に給電することにより、プレナム116内に紫外線放射の作用場を生成できる。カートリッジのプレナム116において、空気流は、プレナム116に配置されたバリアヒーター140を介して最大でインピーダンス限界まで妨げられる。バリアヒーター140は、ニッケル、ニッケル合金、チタン、鋼合金のような金属材料の通気バリア142(例えば、メッシュ、発泡体、スクリーン、蛇行状媒体)を含む。通気バリア142は、平ら、波形、湾曲状、ひだ状などであってよく、1又は複数の層で配置されてよい。バリアヒーター140の金属メッシュ/発泡体142は、メッシュ/発泡体142にわたって電圧電位を印加することにより表面温度まで加熱される。好ましくは、UV光源130は、プレナム116内にて、フィルター120とバリアヒーター140の間に配置されており、光源130からの放射は通過する空気流を処理でき、更に、フィルター120とバリアヒーター140の露出面も処理できる。
【0058】
次に図4Bを見ると、浄化装置100の概略を示す別の側面図が示されており、その構成要素の配置を有する。カートリッジ100のフレーム110は、そのプレナム116内にフィルター120、紫外線光源130及びバリアヒーター140を保持しているように示されており、カートリッジ100は、ハウジングの吸気口62の主プレナム64に取り付けられているように示されている。カートリッジ100は、制御回路及び電力を用いて使用される。例えば、制御回路は、浄化装置50及びカートリッジエレメント130,140に電力を供給して制御するための適切な電源回路及び処理回路を有するコントローラ200を含む。コントローラ200は、施設の利用可能なAC電源、バッテリ電源、又はその他の電源のような1又は複数の種類の電源40に接続されてよい。コントローラ200の電源回路は、必要に応じて供給電力を変換して、直流電力及び電圧レベルが生成されてよい。
【0059】
カートリッジ100を見ると、フィルター120は、フレーム110のプレナム116に配置され、吸気口112に向いてレセプタクル115に保持される。フィルター120は、第1の材料で構成され、最大でろ過限界までそこを通る空気流をろ過するように構成されている。好ましくは、フィルター120は、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる金属フィルター媒体122であって、空気流の量と必要とされるろ過のレベルとに応じて1又は複数の層でメッシュ化されている。フィルター120はケース125を有しており、ケース125も金属で構成されており、金属フィルター媒体を嵌め込んでいる。概して、金属フィルター120は、耐火性及び難燃性、そして、高効率等級を有しており、金属製で厚さ1インチのHVACフィルターであってよい。
【0060】
バリアヒーター140はまた、プレナム116に配置され、排気口118に向いて据え付けられてよい。熱及び電気の両方のための絶縁材145が、フレーム110からバリアヒーター140を隔ててよい。バリアヒーター140は、金属材料のメッシュ/発泡体を含んでおり、そこを通る空気流を最大でインピーダンス限界まで妨げるように構成されている。
【0061】
UV光源130は、プレナム116内に配置されてよく、上述したように、好ましくは金属フィルター120とバリアヒーター140の間に配置されてよい。UV光源130は、プレナム116内にUV-C光の作用場を生成し、通過する空気流を処理する。本明細書に記載されているように、ウイルスなどの病原体は、投与量の紫外線に曝して除去することができる。例えば、大きさが0.11μmまでのsRNAコロナウイルスは、約611μj/cmのUVGI線量だけで>99%除去することができる。
【0062】
UV光源130とバリアヒーター140の両方は、コントローラ200を介して電源40と電気的に接続されており、コントローラ200は、光源130の照明とプレナム116内でのバリアヒーター140の加熱とを制御する。
【0063】
UV光源130は、プレナム116に配置された1又は複数のUV-Cランプ、複数の発光ダイオードなどを含んでよい。例えば、光源130は、水銀蒸気ランプなどの1又は複数の紫外線殺菌ランプを使用してよい。光源130はまた、UV-C放射を放出する半導体を有する発光ダイオードを使用してよい。
【0064】
1又は複数の構造物が、フレーム110に配置されてUV光源140を支持してよい。使用される構造物は使用される光源140の種類によって異なってよく、ランプ用の固定具とUV-C発光ダイオード用のストリップとを含んでよい。例えば、UV光源130は、プレナム116にわたって延びるUV-C発光ダイオードの複数のストリップを使用してよい。
【0065】
空気流の中でのUVGI処理の効果は、対象の微生物学的種、曝露強度、曝露時間、空気の湿度量などの多くの要因に依存する。十分な放射量は、DNAベースの微生物を殺すことができる。従って、UVGI処理の強度、曝露時間及びその他の因子は、所望の有効性に達するように浄化装置100及びHVACシステムにおいて構成、更には制御されてよい。
【0066】
浄化カートリッジ100が提供するUVGI処理は、COVID-19のような病原体を破壊するのに有効であり得る。UV光源で発生される、波長が100乃至280ナノメートルのUV-C光又は短波長光は、実証された殺菌効果を有してよい。特に、222ナノメートルの少量遠UVC光は、曝露の時間の経過と共にエアロゾル化したウイルスを死滅させ、不活性化させるのに有効である。
【0067】
HVACシステムにおけるUVGIの従来の使用とは対照的に、開示された浄化装置は、高額な費用と、空気還流システム又はダクトシステムへの特別な据え付けとを必要としない。それどころか、開示された浄化カートリッジ100は、家庭内で1乃至3ヶ月ごとにHVACフィルターを交換するのと同じくらい簡単で実用的な設置及び操作を提供する。
【0068】
以下でより詳細に説明するように、バリアヒーター140の金属材料は、ニッケルメッシュ/発泡体を含んでよい。バリアヒーター140は、発泡体に少なくとも80%の空隙率を与えて、そこを通る空気流を最大で20%のインピーダンス限界まで妨げるように構成されている。
【0069】
浄化カートリッジ100は、1又は複数の表面に抗微生物コーティングを含んでおり、生きた細菌及びウイルスを排除してよい。例えば、フィルター120は、フィルター媒体によって捕捉された病原体を排除するために、抗微生物コーティングを有してよい。フレームのプレナム116の内壁も、抗微生物コーティングを有してよい。加熱条件下で実用的であれば、バリアヒーター140のメッシュ/発泡体は、抗菌コーティングを有してよい。
【0070】
図4Bに更に示すように、UV光源130、バリアヒーター140及び主ムーバー150と電気的に接続して配置された浄化装置50のコントローラ200は、(i)電源40によって給電されたUV光源130の放射と、(ii)電源40によるバリアヒーター140の加熱と、(iii)電源40によって給電された主ムーバー150によって生成された空気流とを制御するように構成されている。このコントローラ200はローカルコントローラであって、通信インターフェース212を含んでおり、他の浄化装置50と、施設内の空気ハンドリングシステム20(図1)の他の構成要素、例えばシステムコントローラ25と通信してよい。ローカルコントローラ200は、浄化装置50がオン/オフにされることを示す信号をHVACシステム20から受信してよい。コントローラ200はその後、受信した信号に基づいて、バリアヒーター140の加熱及びUV光源130の照明を制御してよい。制御装置200はその後、受信した信号に基づいて、照明、暖房、空気流の動きを制御してよい。
【0071】
これを行うために、コントローラ200は、バリアヒーター140に接続されたヒーター回路214と電気接続して配置される。少なくとも、空気が浄化装置50を通過する(主ムーバー150によって引き込まれる)期間、コントローラ200は、電源40によって給電されたヒーター回路214によってバリアヒーター140の加熱を制御してよい。理解されるように、コントローラ200及びヒーター回路214は、バリアヒーター140に供給される電力を調整及び制御するために必要とされる任意のスイッチ、リレー、タイマー、電源トランスなどを含む。
【0072】
コントローラ200は、少なくとも、コントローラ200が、装置50を通して空気を流すために主ムーバー150を作動させている場合に、バリアヒーター140を加熱する。主ムーバー1450が環気を引き込む前の予備加熱は、目標温度に予め到達できるように、空気が浄化装置50を介して引き込まれる前に起こってよい。これは、システムコントローラ200からのアドバンス信号を必要とするか、又は、ある程度の基準温度を維持するためにバリアヒーター140の断続的な加熱を伴ってよい。主ムーバー150がオフになった後の後加熱も、幾つかの理由から有益であるかもしれない。
【0073】
また、コントローラ200は、UV光源130に接続された駆動回路213と電気接続されて配置されている。少なくとも、空気が浄化装置50を通過する(主ムーバー150によって引き込まれる)期間、コントローラ200は、電源40によって給電される駆動回路213を用いて、UV光源130の照明を制御してよい。理解されるように、コントローラ200及び駆動回路213は、光源130に供給される電力を調整及び制御するために必要な任意のスイッチ、リレー、タイマー、電源トランス、電子バラストなどを含む。
【0074】
少なくとも、コントローラ200が主ムーバー150に給電している場合に、コントローラ200は光源130を明るくする。目標照度に到達するために、空気が浄化装置100を通って引き込まれる前にUV光源130のランプ等が完全な照度に到達するために幾つかの予備照明が必要とされてよい。これは、システムコントローラ200からのアドバンス信号を必要としてよい。主ムーバー150がオフになった後の光源130の後照明も、幾つかの理由から有益であるかもしれない。
【0075】
コントローラ200はまた、主ムーバー150に接続されたモータ駆動回路215と電気的に接続して配置されている。環境空気を処理するために、モータ駆動回路215は、主ムーバー150を作動させ、これにより、装置50を通して空気を移動させることができる。図示されているように、主ムーバー150は、ろ過の構成に適した方法で装置50を通して空気を引き込むために使用されてよい。もちろん、他の構成も使用できるであろう。制御装置200は、UV光源130が明るくされて且つバリアヒーター140が目標温度に加熱されるまで、主ムーバー150を作動させなくてよい。
【0076】
監視及び制御のために、コントローラ200は、1又は複数のセンサ216、217、及び218を含んでよい。例えば、コントローラ200は温度センサ216を含んでよく、温度センサ216は、プレナム116内にてバリアヒーター140に隣接して配置され、コントローラ200と電気接続して配置される。温度センサ216は、コントローラ200が目標温度に到達できるように、バリアヒーター140の加熱に関連した温度を測定するように構成される。実施形態と影響を受ける病原体とに応じて、バリアヒーター140は、約54℃(130°F)以上の表面温度に加熱されてよい。実際、約56℃又は約56乃至67℃(133乃至152°F)を超える温度での加熱はSARSコロナウイルスを殺すことができること、そして、222ナノメートルの遠UVC光はエアロゾル化されたウイルスを殺して不活性化させるのに有効であることが、研究によって示されている。
【0077】
コントローラ200は、UV光源130の照度、強度、波長、動作などを監視するために、フォトセルやその他の光検知素子のような光センサ218に接続されてよい。例えば、UV光源130は、プレナム116内の作用場において、少なくとも611μJ/cmの線量の紫外線殺菌照射を生成するように構成されてよく、光センサ218からの測定値は放射線を監視してよい。
【0078】
コントローラ200は、更に別のセンサ217、例えば、プレナム116を通過する流れ、速度等を検知するための流れセンサに接続されてよい。流れセンサ217での空気流の検知は、既に合図されていないならば、UV光源130及びヒーターバリア140の動作を開始するためにコントローラ200によって利用されてよい。空気流の速度が流れセンサ217によって測定されて、バリアヒーター140による空気流の加熱が検出された流速と目標加熱レベルとに調整されるように、浄化装置100を通過する目標流速が調整されてよい。また、流れの速度が、UV光源140による空気流の照射の目標照射量を調整するために監視されて、適切な曝露レベルが達成されてよい。
【0079】
流れセンサ217は、装置50を通過する空気流及び速度を監視してよい。次に、この検知された情報は、コントローラ200によるフィードバックとして使用されて、主ムーバー150の動作が調整されてよい。このようにして、コントローラ150は、UV光源130のUV照明とバリアヒーター140の熱とに曝されてプレナム116を通過する空気を処理するのに最適なレベルに流量及び速度を調節できる。実施形態又は環境状態に応じて、空気を効果的に処理する目標照射量及び温度に最も適した空気流の目標速度が達成されてよい。
【0080】
本明細書で述べられているように、浄化装置50は、熱エネルギーをUV-C光と組み合わせており、そして、難燃性及び耐燃性のあるろ過システム内に構築される。浄化装置50は、環境に配置されてよい。本明細書に開示されるように、浄化装置100の実施形態はバリアヒーター140を含んでおり、それによって、バリアヒーター140に関して上述したコントローラ200、センサ等の様々な特徴を含んでよい。幾つかの実施形態はUV光源130を含まなくてよいが、他の実施形態は、UV光源130に関して上述したコントローラ200、センサ等の様々な特徴と共にUV光源130を含んでよい。特に、図4Cは、UV光源のない構成要素の配置を有する浄化装置100の概略の別の側面図を示す。同様の構成要素には、他の実施形態と同じ符号が付与されており、ここでは再度説明しない。
【0081】
提案されているように、開示された浄化装置500は、粒子の99.97%(ASME,U.S.DOE)まで空気をろ過する一方で、COVID-19のような病原体を排除することができる。本明細書の一部となる同時継続出願に開示されているように、この構成は、施設の空気ハンドリングシステム20に統合されてよい。
【0082】
浄化カートリッジ50は、フレーム110に空気フィルターを収容するフレーム110を含むとして説明されているが、カートリッジ50は、フィルターを既に収容しているハウジング60に設けられるフレーム110を含んでよい。このタイプの構成では、浄化カートリッジ100は、先と同様に、フレーム110、UV光源130、及びバリアヒーター140を含んでよいが、フレーム110は、必ずしも空気フィルター120を保持しなくて又は受け入れなくてよい。代わりに、別個の空気フィルターがハウジング60の吸気口62に設置されてよい。
【0083】
説明は、次に、開示された浄化装置100のバリアヒーター140の詳細に向かう。バリアヒーター140の金属メッシュ/発泡体は、材料の1又は複数の層を有してよく、また、適切な厚さを有してよい。一例として、メッシュ/発泡体は、0.5mm乃至2.0mmの厚さを有してよい。ニッケル(Ni)から構成される場合、メッシュ/発泡体は、1.43×10C/mの表面電荷密度(σ)を有してよい。Niメッシュ/発泡体は導電性を有しており、高多孔質であって、ランダムな三次元チャネルが規定されている。メッシュ/発泡体は約00.178Ωの抵抗を示し、例示的なNi発泡体の電気抵抗率は約1.51×10-5Ωmであると計算される。
【0084】
例えば、図5Aは、単位供給電力(W)当たりのバリアヒーター用の例示的なNi発泡体材料によって生じる温度(℃)の第1のグラフ90Aを示す。1.65mm×195mm×10mmの大きさを有する発泡体のサンプルが調べられた。電圧を印加した後、温度が安定するまで温度は測定された。グラフ90Aに示すように、温度は、約7ワットで約120℃の温度が得られるように、単位供給電力当たり概ね線形に上昇することが示されている。
【0085】
図5Bは、ある温度に加熱された例示的なバリアヒーター用Ni発泡体材料を通って流れた後のガス(例えば、N)の測定温度の第2のグラフ90Bを示す。室温が約21.7℃である間、測定用ガスは、加熱されたNi発泡体材料から約3.5cmの上流側の距離にて送られた。温度測定は、約115℃(239°F)の初期温度に加熱された例示的なNi発泡体材料に対して様々な下流側距離で行われた。見られるように、ガスの測定温度は、例示的なNi発泡体材料から1cmから4cmまでの範囲の下流側距離について、約29℃から約23℃(84°Fから73°F)まで低下した。このことは、このような例示的なNi発泡体材料で構成されたバリアヒーター140によって生じる加熱は、空気流及び任意の病原体が当たり得る複雑な加熱表面積をもたらすが、加熱は局在化されており、下流の空気流散逸することを示している。
【0086】
図5Cは、別の初期温度の例示的なNi発泡体材料に対する様々な下流側距離で行われた測定温度の別のグラフ90Cを示す。ここでは、Ni発泡体材料は、約54℃の初期温度にある。ガスの測定温度は、例示的なNi発泡体材料から1cmから4cmまで範囲の距離に対して、約24.5℃から21.7℃(76°Fから71°F)まで低下した。
【0087】
本明細書に記載されているように、バリアヒーター140は、ニッケル、或いは、高いサービス温度と腐食性環境での用途のために開発されたニッケル系合金又は鉄系合金を使用できるであろう。ニッケルは、室温で空気によってゆっくりと酸化され、耐腐食性を有していると考えられている。ニッケルは、周囲や通過する空気分子への熱伝達が最小限であって、高温に到達するように簡単に調整することができる高性能金属である。例えば、ニッケル製メッシュ/発泡体(1.43×10σ)に電圧を印加すると、その金属は、接触時にCOVID-19を含む病原体を殺すのに十分に熱い目標温度までエネルギーを伝導する。目標温度は、56℃乃至66℃以上、更には93℃以上(133°F乃至150°F以上、更には200°F以上)であってよい。このようにして、Niメッシュ/発泡体(0.5mm乃至2.0mm)は、加熱された格子体によって、病原体が当たって排除されるための加熱帯電した表面領域を提供する。一方、バリアヒーター140の発泡体/メッシュの空隙率(80乃至90%)は、空気流を過度に妨げず、また、主ムーバー150を動作させるために浄化装置50から必要とされるエネルギーをひどく増加させない。
【0088】
既に開示されているように、プレナム116の加熱は、メッシュ/発泡体を有するバリアヒーター140によって達成されてよく、メッシュ/発泡体は、目標温度に加熱されて、メッシュ/発泡体を通過する環気のための曲がりくねった経路を提供する。他の形態の加熱が利用されてよい。既に開示されているように、プレナム116のUV照明は、UV光ストリップを用いて達成されてよい。他の形態のUV照明が使用されてよい。
【0089】
例えば、図6Aは、フレーム110のプレナム116に配置されると共に、電源制御装置201に接続された複数の電気素子(UV光源130及びバリアヒーター140)を有する浄化カートリッジ100の別の構成を示す。プレナム116は、吸収及び浄化のために1又は複数の側壁に炭素媒体152を含んでいる。プレナム116はまた、吸気口に配置されたフィルター120を含んでよい。
【0090】
上述したように、開示された浄化カートリッジ100は、他の浄化カートリッジ100とは別個に、又は、それらと組み合わせて使用されてよい。一例として、図6Bは、制御/電源回路202によって制御されるUV光源130及びバリアヒーター140を含む、本開示に基づく浄化カートリッジ100の構成を示す。UV光源130及びバリアヒーター140は、本明細書に開示されたものと同様であってよく、空気ハンドリングシステムの空気流に適合するようにハウジング又はフレーム110内に一緒に収容されてよい。例えば、ハウジング又はフレーム110は、吸気口又は他の場所を通って装置のハウジング60内に収納されてよい。ろ過は、ハウジング60の他の場所で実現されてよい。その部分では、制御/電源回路201は、UV光源130及びバリアヒーター140を制御するために、本明細書に開示されている必要な構成要素を有していてよい。
【0091】
別の例では、図6Cは、本開示による浄化カートリッジ100の別の構成を示しており、制御/電源回路203によって制御されるバリアヒーター140を含んでいる。図示されているこの装置100はUV光源を含まなくてよいが、そのような光源は、施設又は他の環境における別の場所で使用できるであろう。バリアヒーター140は、本明細書に開示されたものと同様であってよく、装置のハウジング60に収まるようにハウジング又はフレーム110内に収容されてよい。例えば、ハウジング又はフレーム110は、装置のハウジング60の吸気口に収められてよく、或いは、空気流の他の場所に収められてよい。ろ過は、空気ハンドリングシステムの他の場所で実現されてよく、又は、本明細書の他の場所で開示されるようなフィルター(図示せず)を使用してフレーム110に組み込まれてよい。その部分では、制御/電源回路203は、バリアヒーター140を制御するために本明細書に開示されている必要な構成要素を有してよい。
【0092】
更に別の例として、図6Dは、本開示に基づく浄化カートリッジ100a-bの更に別の構成を示しており、当該構成は、制御/電源回路204によって制御されるUV光源130を含み、制御/電源回路203によって制御されるバリアヒーター140を含む。UV光源130及びバリアヒーター140は、本明細書に開示されたものと同様であってよく、装置のハウジング60に収まるように別個のハウジング又はフレーム110a-bに収容されてよい。例えば、ハウジング又はフレーム110a-bは、ハウジング60の吸気口に収められてよく、又は、空気流の他の場所に配置されてよい。ろ過は、他の場所で実現されてよく、又は、本明細書の他の場所で開示されているフィルター(図示せず)を使用して、フレーム110a-bの一方又は両方に組み込まれてよい。その部分について、制御/電源回路203,204は夫々、UV光源130及びバリアヒーター140を制御するために、本明細書に開示されている必要な構成要素を有してよい。
【0093】
図7Aは、浄化装置50が施設環境においてどのように動き回るかを示している。キャスターホイール61、牽引ヒッチ63、及びハンドル65は、装置50を所望のように配置することを可能にする。特定の実施形態のために設定されているが、ハウジング60の典型的なサイズには、幅20乃至40インチ×高さ60インチ×奥行き24インチの全体的な寸法が挙げられる。カートリッジ100が使用される場合、カートリッジ100の寸法はハウジング60の全体的な寸法に合わせられてよい。カートリッジ100の典型的な寸法には、幅20乃至40インチ×高さ30乃至60インチ×奥行き7乃至14インチの全体的な寸法が挙げられる。これらの値は、例示的な実施形態のためだけに与えられている。
【0094】
上述したように、ハウジング60内の空気を移動させるための浄化装置50の主ムーバー150は、1又は複数の送風機又はファンを使用してよい。図7Bは、空気を移動させるためにハウジング60に配置され得る一組のファン152の一例を示している。本図では、6つのファン152が単に例として示されている。各ファン152の大きさに応じて、より多くの又はより少ないファンが使用されてハウジング60にわたる表面領域を覆ってよい。複数のファン152が表面領域にわたって使用されて、ハウジング60の吸気口62を通って安定して空気が引き込まれることが好ましい。このような配置に適したファン152には、キャビネット設置や聴視覚筐体等用に冷却ファンとして一般的に使用されているような、可変速度制御を有する電動ファンが挙げられる。
【0095】
上述したように、1又は複数の浄化装置50が施設環境で使用されてよく、これらの浄化装置50は、遠隔制御又は局所制御のための制御構成を有してよい。例えば、図8は、施設環境の様々なゾーンに配置された複数の異なる移動式浄化装置50を示している。マスター制御ユニット250は、中央処理ユニット252を有しており、また、施設環境102における異なるゾーン104a-nの複数のローカルコントローラ200a-nと有線及び/又は無線通信256を介して通信するために使用される通信インターフェース245を有している。ローカルコントローラ200a-nの各々は、装置50の1又は複数の浄化カートリッジ100a-nを制御してよい。
【0096】
前述したように、本明細書に開示されたバリアヒーター140の通気バリア142は、種々な層及び構成を有してよい。図9Aでは、バリアヒーター140aの一部が示されており、通気バリア142は平らであって、規定の厚さT1を有する。そのような1又は複数の平らなバリア142は直列に互いに隣接して使用されて、衝突する空気流を妨げて相互作用してよい。表面積及び相互作用を増加させるために、図9Bに示されているように、バリアヒーター140bの一部は、通気バリア142に折り目、波形、又はひだ142を有する。通気バリア142のメッシュ材料は、その元の厚さT1を有してよいが、波形バリアヒーター140bは、衝突する空気流について厚さT2を示す。このような1又は複数の波形バリア142は、衝突する空気流を妨げて相互作用するために直列に隣接されて使用されてよい。
【0097】
Ni発泡体の可撓性を考慮すると、波形バリアヒーター140bは、幾つかの利点をもたらす。第1に、Ni発泡体の抵抗は曲げ144によってはるかに大きくなり、このことは、住宅用電圧(110V)で使用される場合にバリアヒーター140のためになる。第2に、図9Bに図示されているように、曲げ144は厚さT1の数倍であって、衝突する空気と相互作用する有効距離T2を生じる。熱いNi発泡体の曲げ144間の隙間は、病原体を損傷させるのに有効な高温を生じる。屈曲数、屈曲長さ等は容易に制御でき、屈曲長さが長いほどより高温に達することに留意すべきである。第3に、2つの主面が空気に露出している平らなNi発泡体に比べて、図9Bの折り曲げられたNi発泡体バリア140bは、出入りする空気に露出している面積がはるかに小さく、熱損失が最小限に抑えられるので、バリアヒーター140の温度をより急速に上昇させることができ、同じ電力消費ではるかに高い値に達することができる。
【0098】
例えば、図10Aは、平らなNi発泡体構成を有するバリアヒーター140aに生じる電流に対する入力電圧のグラフを示す。図10Bは、平らなNi発泡体構成を有するバリアヒーター140に生じる温度レベルに対する電流のグラフを示す。一方、図11Aは、波形Ni発泡体構成を有するバリアヒーター140bに生じる電流に対する入力電圧のグラフを示す。図11Bは、波形Ni発泡体構成を有するバリアヒーター140bに生じる温度レベルに対する電流のグラフを示す。図10B及び図11Bから分かるように、同じ電圧1.0Vでは、波形バリアヒーター140bの温度は、平らなバリアヒーター140aの温度の2倍以上になる。
【0099】
理解されるように、UV光源130及びバリアヒーター140を有する開示された浄化装置100の様々な特徴は、特定の実施形態に適合して特定の病原体のために空気を処理するように構成されてよい。実際の病原体を用いた試験は慎重な管理を必要とし、実験室環境で実施されている。
【0100】
UV光源130に関しては、UV光源130からの紫外線の強度、活性領域、波長、及び他の変数は、特定の病原体について空気を処理するように構成されてよく、それら変数は、制御された実験室の設定で実際の病原体を用いた直接的な試験によって最も良く決定される。
【0101】
バリアヒーター140に関しては、バリアヒーター140の通気バリア142の厚さ、材料、活性表面積、通右記性、波形、温度、及び他の変数は、特定の病原体のために空気を処理するように構成されてよく、それら変数は、制御された実験室の設定で実際の病原体を用いた直接的な試験によって最も良く決定される。
【0102】
SARS-CoV及びMERS-CoVを用いた以前の研究で、コロナウイルスを熱によって不活化できることが確立されている。例えば、Leclerca,2014年;Darnell,2004年;Pastorino,2020年を参照のこと。BSL3施設での予備研究の結果は、SARS-CoV-2がエンベロープされたRNAウイルスに対して著しく耐熱性を有することを示した。100℃(212°F)で10分間のプロトコルのみがウイルスを完全に不活化させた。
【0103】
特に、ヒトSARS-CoV-2株(COVID-19)の耐熱性は、BSL3施設で研究されている。研究のためのプロトコルは、水及び生理食塩水を室温又は沸騰温度の何れかで使用することを含んでいた(図12)。後者については、10LのSARS-CoV-2を、100℃(212°F)で予熱した90Lの水又は生理食塩水に加えた。これらの溶液は、100℃で30秒又は10分間インキュベートされたが、対照群では室温でインキュベートされた。
【0104】
インキュベーション後、900Lの室温培地が加えられて、滴定された。室温で10分30秒インキュベーションした対照群は、ウイルス負荷の低減には効果がないままであった。対照的に、100℃-30秒のプロトコルは傾向を示した。しかしながら、明らかに暴露は、効果的にウイルス負荷を減少させるには十分な時間ではなかったが、水中のウイルス負荷は生理食塩水に比べて相対的に低かった。水又は生理食塩水の何れかの100℃-10分だけがウイルスを完全に不活化させることができた(>5Log10の減少)。
【0105】
生成されたデータから、ウイルスはエンベロープされたRNAウイルスとして非常に耐熱性が高いことが確認された。熱不活化に関する更なる研究は、可変温度(50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、及び300℃)及び暴露持続時間(1秒、5秒、15秒、30秒、1分、3分、及び5分)について曲線を図示でき、これは次に、通気性Ni発泡体を有するような、本明細書に開示されるバリアヒーターによって引き起こされると予想される熱損傷と相関させることができる。
【0106】
最近の研究によれば、しかしながら、開示されたバリアヒーター140の加熱フィルターは、COVID-19を殺すために、高温[(200~250℃)(392~482°F)]で安全に使用できる。特に、研究は、ガルベストン国立研究所/NIAIDバイオディフェンス研究所ネットワーク(バイオセーフティレベル4)で行われており、対照実験の知見を含んでいる。この研究は、本開示の特殊な加熱フィルターシステム(即ち、開示されたバリアヒーター140)と接触すると、COVID-19がエアロゾル化された空気中で蒸発することを発見した。この結果は、加熱されたバリアヒーター140によるCOVID-19の活性ウイルスの100倍の減少と、100%の殺傷率とを示している。この研究は、COVID-19を空気中から排除できることを示している。
【0107】
開示された浄化装置100は、約250℃(482°F)の高温で循環空気中のウイルス及び細菌を効率的に殺すことができる。本明細書に開示されているように、ニッケル(Ni)発泡体のようなバリアヒーター140は、低コストであり、電気伝導性を有しており、ランダムなチャネルがある多孔質であり、機械的に強く、良好な可撓性を有しているので、HVACシステム又は他の環境における殺菌及び消毒のための良好なフィルターとして作用する。また、曲げられたNi発泡体は、高抵抗、低電圧の構造をもたらし、殺菌のための表面積を増加させる。温度を利用した機械的破壊と、加圧された高性能金属とが、COVID-19の設定に適用されてよい。
【0108】
本明細書に開示されている他の関連する研究は、高い性能及び設計を踏まえると、開示されている加熱フィルターを通過する空気には際だった温度上昇がないことを発見している。このフィルター及びその伝導性の主たる研究は、ヒューストン大学のテキサス超伝導センターで行われた。研究パートナーには、テキサスA&M大学の工学部及び工学実験ステーションと、テキサス大学医学部とが含まれている。図示されているように、Ni発泡体のバリアヒーター140の温度は非常に速く上昇し、ワット数が低い電力で高温に加熱できる。バリアヒーター140の加熱Ni発泡体を通過した後、空気の温度は非常に速く低下し、100℃を超える温度であっても、4cm離れると室温になる。
【0109】
好ましい実施形態及び他の実施形態の上記の説明は、出願人によって考え出された発明概念の範囲又は適用可能性を制限することを意図するものではない。開示された主題の任意の実施形態又は態様に基づいて上述した特徴が、開示された主題の任意の他の実施形態又は態様において、単独で又は他の記載された特徴と組み合わされて利用できることは、本開示の利益によって理解されるであろう。
【0110】
出願人は、本明細書に述べられた発明概念を開示することと引き換えに、添付の特許請求の範囲によって与えられる全ての特許権を希望する。従って、添付の特許請求の範囲には、以下の特許請求の範囲又はその均等物の範囲に収まる限りにおいて、全ての修正及び変更が含まれることが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12