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  • 特許-音波減衰を改善するための対称ガラス 図1
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  • 特許-音波減衰を改善するための対称ガラス 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】音波減衰を改善するための対称ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221107BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20221107BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60J1/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019539246
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 US2018014677
(87)【国際公開番号】W WO2018136869
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】62/448,657
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513099131
【氏名又は名称】ピッツバーグ グラス ワークス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ランプマン デウィット
(72)【発明者】
【氏名】ウリジオ マイケル
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527280(JP,A)
【文献】特表2016-522138(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158694(WO,A1)
【文献】特表2015-516934(JP,A)
【文献】特開2008-037094(JP,A)
【文献】特表2005-503309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00 - 29/00
B32B 1/00 - 43/00
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量対称ガラスの生産方法であって、
(a)第1の外側透明層と、第1の内側透明層と、前記第1の外側透明層と前記第1の内側透明とを接合するための第1の中間層とを有する非対称ガラスを選択するステップであって、前記第1の外側透明層の厚みは、前記第1の内側透明層の厚みよりも大きく、前記第1の外側透明層の前記厚み及び前記第1の内側透明層の前記厚みは、全体的ガラス強度、ガラス剛性、音波減衰、石衝撃耐性及びこれらの組み合わせを含む群から選択された要因に従って選択されるステップと、
(b)前記非対称ガラスの前記第1の外側透明層の前記厚みを、前記非対称ガラスの前記第1の内側透明層の前記厚みに加算することによって、前記非対称ガラスの透明体の全厚を決定するステップと、
(c)前記軽量対称ガラスを生産するステップであって、
(1)前記非対称ガラスの前記透明体の全厚の2分の1の厚みを有する第1の透明シートと、前記非対称ガラスの前記透明体の全厚の2分の1の厚みを有する第2の透明シートとの間に、ポリマー材料のシートを配置して、前記第1の透明シート、前記ポリマー材料のシート及び前記第2の透明シートが対称積層スタックを形成するステップと、
(2)前記対称積層スタックを加熱して、前記ポリマー材料のシートが前記第1の透明シートと接合し、前記ポリマー材料のシートが前記第2の透明シートと接合して、前記軽量対称ガラスを形成し、前記軽量対称ガラスが、前記非対称ガラスと同じ単位面積当たり重量を有するが前記非対称ガラスの2,500~8,000Hzの範囲におけるコインシデンス下落よりも小さいコインシデンス下落を2,500~8,000Hzの範囲において有するようにするステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記対称積層スタックを加熱する前記ステップは、オートクレーブにおいて行われる、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、自動車用途における使用に適した窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、自動車車両は、2枚の板ガラス又はその他の透明材料と、2つのガラス層間に位置する光透過性ポリマー材料のシートとを加熱工程において接合した窓ガラスを採用している。通常、このガラスはフロートガラスである。一般に、ポリマーは、ポリビニルブチラール(PVB)及びエチレン酢酸ビニルを含む材料群から選択される。
【0003】
最近では、自動車車両の燃費効率にますます重点が置かれている。この重点への取り組みは、一部には車両重量の低減を通じて行われている。自動車ガラスについては、ガラス積層体の厚みの減少による軽量化に重点が置かれている。
【0004】
自動車ガラス積層体の厚みを減少させる工程では、数多くの検討事項に取り組まなければならない。これらの検討事項の中には、ガラス設計における変数の矛盾をもたらすものもある。一例としては、機械的剛性及び安定性、光学的歪み、摩耗抵抗、光透過率及びコストなどが挙げられる。商業的に受け入れられる自動車ガラスを有するには、これらの全ての検討事項に合理的に対応しなければならない。
【0005】
先行技術では、ガラス積層体におけるガラス透明体(glass transparencies)が、一般に同じ厚みのものであった。しかしながら、一定の性能要件を満たしたままでガラス重量を低減する1つの方法は、一方のガラスパネルのみの厚みを減少させるか、或いは一方のガラスパネルの厚みを他方よりも減少させることであると認識されてきた。本明細書では、ガラス層の一方が他方よりも薄いガラス積層体を「非対称ガラス」と呼ぶ。対照的に、本明細書では、ガラス層が同じ呼び厚を有するガラス積層体を「対称ガラス」と呼ぶ。
【0006】
自動車ガラスについては、軽量化による最も大きな潜在的利益が、ほとんどの車両において最大のガラス領域を占めるという理由でフロントガラスに関する。しかしながら、車両の前方に面した配向を有していないガラスにとっては、機械的強度と石衝撃耐性という矛盾する検討事項がそれほど重要でないため、フロントガラスを除く他の自動車ガラスでは、非対称ガラスを用いた軽量化の長所によって非対称ガラスの適用も支持されている。しかしながら、特に自動車の側面及び後面の窓ガラスでは、コスト及びその他の検討事項によって対称ガラスの継続使用が依然として支持されている。
【0007】
先行技術では、音波減衰がガラス設計における重要な検討事項になっている。例えば、積層ガラスは、積層ガラスの「拘束層効果(constrained layer effect)」によって同じ重量のモノリシックガラスよりも多くの音を吸収できることが知られていた。「拘束層効果」は、2つの透明体間に拘束された中間層による音波減衰を意味する。中間層は、PVBなどの粘弾性ポリマーで構成される。外側透明体(outer tranparency)の外面にぶつかった音波は、外側透明体を通じて中間層に伝播し、ここで中間層を変形させて層内に剪断力を引き起こす。中間層の剪断力エネルギーの一部は熱に変換される。このエネルギー変換により、中間層から内側透明体(inner tranparency)に、そして最終的には車両の客室に伝わる機械的振動エネルギーが減少する。従って、音エネルギーから熱への変換によって、ガラスから客室に伝わる音響エネルギーが低下する。時として、音響特性を高めた中間層が開発され、このような中間層を有する積層ガラスの方が標準的なポリマー中間層よりもさらに多くの音を吸収するようになっている。
【0008】
質量の大きなガラスの方が多くの音を吸収する傾向にあることも知られている。しかしながら、車両の軽量化にますます重点が置かれ、結果として軽量の(すなわち、質量の小さな)ガラスへと向かう流れが、自動車ガラスの音波減衰を低下させる一般的傾向を後押ししている。
【0009】
軽量自動車ガラスの騒音減衰の研究の中には、対称ガラスと比較した非対称ガラスによる音波減衰の大きな違いを識別していないものもある。Tousignant,T.,Govindswamy,K.,Bhatia,V.,Polasani,S.他著、「車室内騒音レベルと音質に対する自動車用軽量ガラス材によるアセスメント(Assessment of Lightweight Automotive Glass Solutions on Interior Noise Levels & Sound Quality)」、SAE Technical Paper 2017-01-1814,2017を参照されたい。しかしながら、音波減衰の重要性は、自動車ガラスにおけるガラス音減衰特性の識別及び最適化を行って、さらに十分な情報に基づく効率的に実装されるガラス設計選択を支持しようとするさらなる試みを必要なこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国仮特許出願第62/448,657号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Tousignant,T.,Govindswamy,K.,Bhatia,V.,Polasani,S.他著、「車室内騒音レベルと音質に対する自動車用軽量ガラス材によるアセスメント(Assessment of Lightweight Automotive Glass Solutions on Interior Noise Levels & Sound Quality)」、SAE Technical Paper 2017-01-1814,2017
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示する発明によれば、軽量ガラスの生産方法が、対称ガラスの音波減衰利点を、非対称ガラスを上回って最適化する。開示する工程は、ガラス強度、ガラス剛性、音波減衰、石衝撃耐性、及びその他の考えられる要因の検討に基づく適切な軽量非対称ガラスを選択するステップを含む。好ましい非対称ガラスを決定したら、非対称ガラスにおいて使用されている透明体の全厚を決定する。その後、外側透明シートと内側透明シートとの間にポリマー中間層を配置することによって、接合されていないガラス成分層の積層スタックを準備する。外側透明シートと内側透明シートの厚みは同じであり、非対称ガラスについて決定された透明体の全厚の2分の1である。ガラスを形成するために、好ましくはオートクレーブにおいて積層スタックを加熱して、中間層が外側透明体及び内側透明体を接合してガラス積層体を形成するようにする。
【0013】
当業者には、開示する発明の現在のところ好ましい実施形態を進めるにつれて、開示する発明の他の利点及び特徴が明らかになるであろう。
【0014】
以下の添付図面に関連して開示する発明の現在のところ好ましい実施形態を図示し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】構造を開示しやすくするために一部を切断した対称ガラスの断面の上面斜視図である。
図2】構造を開示しやすくするために一部を切断した、本明細書で開示する非対称ガラスの実施形態の断面の上面斜視図である。
図3】構造を開示しやすくするために一部を切断した、図2に示す非対称ガラスの断面の底面斜視図である。
図4】50Hz~10,000Hzの周波数範囲にわたる非対称ガラス及び非対称ガラスの音波減衰を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対称及び非対称自動車ガラスの音波減衰の重要な側面は、出願人が米国仮特許出願第62/448,657号として出願した、2017年2月28日に公開された「フロントガラス軽量化に向けた設計面の考察(Practical Design Considerations for Lightweight Windshield Application)」に記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に明確に組み入れられる。
【0017】
本開示の発明は、特に前方に面していない自動車ガラスにおける対称ガラスに関連する音波減衰に関する。自動車の軽量化の重視は、特にフロントガラス及びその他の前方に面したガラスにおける非対称ガラスの使用を支持する傾向にあった。非対称ガラスの軽量化は、時に非対称性の度合いを極端なものにし、すなわち先行技術の非対称ガラスの内側及び外側透明体に比べて内側透明体の厚みが外側透明体の厚みよりもはるかに小さなものになっている。
【0018】
非対称ガラスの音波減衰は、同等の重量の対称ガラスの音波減衰とそれほど大きく異なるものではないと言われている。このような仮定は、非対称ガラスの使用を自動車の側面及び後面の窓に広げることを支持する傾向にある。しかしながら、このような傾向は、コスト及びその他の要因によって相殺されることもある。例えば、非対称ガラス用の薄い内側透明シートは、0.7mmの厚みにまで至るものが検討されている。しかしながら、従来の1.4mmのガラスの厚みと比べると、0.7mmガラスはさらに高価な原料を必要とし、より多くの製造工程ステップを伴う。具体的に言えば、1.4mmガラスは熱焼戻しによって強化できるのに対し、一般に0.7mmガラスは、(ソーダ石灰ケイ酸ガラスとは対照的に)より高価なアルミノケイ酸塩ガラスを使用し、熱焼戻しでなくイオン交換工程を通じて強化される。このような原料及び処理ステップの違いによって、製造コストが大幅に高くなってしまうこともある。
【0019】
図1に、いくつかの自動車ガラスにおいて使用されているタイプの対称ガラス10を示す。対称ガラス10は、第1の表面14及び第2の表面16を定める外側透明シート12を含み、第2の表面16は、シート12上の第1の表面14とは反対側に配置される。第1の表面14及び第2の表面16は、第1の表面14及び第2の表面16の各々に対して直角に配向された厚み寸法18によって互いに分離される。
【0020】
対称ガラス10は、第1の表面22及び第2の表面24を有するポリマー材料層を定める中間層20をさらに含み、第2の表面24は、このポリマー層上の第1の表面22とは反対側に配置される。中間層20の第1の表面22は、外側透明シート12の第2の表面16に対向する。
【0021】
対称ガラス10は、第1の表面28及び第2の表面30を定める内側透明シート26をさらに含み、第2の表面30は、シート26上の第1の表面28とは反対側に配置される。第1の表面28及び第2の表面30は、第1の表面28及び第2の表面30の各々に対して直角に配向された厚み寸法32によって互いに分離される。対称ガラス10は、外側透明体12の厚み18が内側透明シート26の厚み32と名目上同じであるという点で「対称」である。
【0022】
図2及び図3は、非対称ガラス積層体34の平面斜視図及び底面斜視図である。非対称ガラス積層体34の構造の大半は、対称ガラス積層体10の構造と同様であるが、重要な違いもある。
【0023】
図2及び図3に示すように、非対称ガラス34は、第1の表面38及び第2の表面40を定める外側透明シート36を含み、第2の表面40は、シート36上の第1の表面38とは反対側に配置される。第1の表面38及び第2の表面40は、第1の表面38及び第2の表面40の各々に対して直角に配向された厚み寸法42によって互いに分離される。
【0024】
非対称ガラス34は、第1の表面46及び第2の表面48を有するポリマー材料層を定める中間層44をさらに含み、第2の表面48は、このポリマー層上の第1の表面46とは反対側に配置される。中間層44の第1の表面46は、外側透明シート36の第2の表面40に対向する。
【0025】
非対称ガラス34は、第1の表面52及び第2の表面54を定める内側透明シート50をさらに含み、第2の表面54は、シート50上の第1の表面52とは反対側に配置される。第1の表面52及び第2の表面54は、第1の表面52及び第2の表面54の各々に対して直角に配向された厚み寸法56によって互いに分離される。非対称ガラス34は、外側透明シート36の厚み42が内側透明シート50の厚み56よりも大きいという点で「非対称」である。
【0026】
対称ガラス10の中間層20、及び非対称ガラス34の中間層44は、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及びこれらの組み合わせなどのポリマー材料とすることができる。中間層20及び44は、当業で周知のオートクレーブ工程に従ってそれぞれの対称及び非対称ガラス10及び34の外側透明シートを内側透明シートに接合する。オートクレーブ工程後には、中間層20及び44の厚みを0.71mm~0.81mmにすることができる。
【0027】
通常、人間の聴覚認識は、約20Hz~約20,000Hzの範囲の音について行われるが、一般に、人間は約2,000Hz~約5,000Hzの範囲の音に最も敏感である。本開示の発明に関連して、50~8,000Hzの周波数範囲における対称ガラス及び非対称ガラスの音波減衰性能は、約2,500~8,000Hzの周波数範囲を除いて密接に近似する。2,500~8,000Hzの範囲では、非対称ガラスが、同等の重量の対称ガラスにおける共鳴条件(本明細書では、「コインシデンス下落」とも呼ぶ)よりも顕著な(すなわち、大きな)コインシデンス下落を示す。例えば、1.4mmの外側透明体(すなわち、外部条件に曝される透明体)及び1.4mmの内側透明体(すなわち、客室に曝される透明体)を含む対称ガラスは、2.1mmの外側透明体及び0.7mmの内側透明体を含む非対称ガラスと同等の重量を有する。しかしながら、対称ガラスのコインシデンス下落の方が、非対称ガラスのコインシデンス下落よりも弱い。
【0028】
「コインシデンス下落」は、材料の振動周波数が入射音圧波の振動周波数に一致することに起因するものであると考えられている。ガラスにおいて一致条件を生み出す周波数は、一般に「一致周波数」と呼ぶことができる。いくつかの一致周波数では、外側透明体にぶつかった音波がガラスを共振させて、ガラスから客室への音の伝達を強める。従って、一致周波数を、とりわけ人間が高い感度を有する2,000Hz~5,000Hzの範囲の周波数を減衰させることによって音波減衰が改善される。
【0029】
開示する方法によれば、異なるガラスは、内側透明体と外側透明体の厚みの比率に応じて異なる一致周波数を有することができる。本開示の方法は、一致周波数と透明体の厚み比率との間の関係を自動車ガラスの軽量化と組み合わせて利用して、コインシデンス下落の小さな軽量ガラスを生産する。
【0030】
図4は、2.1mmの外側透明体層と0.7mmの内側透明体層とを有する非対称ガラスの「コインシデンス下落」を示すグラフである。図4には、1.4mmの外側透明体層と1.4mmの内側透明体層とを有する対称ガラスの「コインシデンス下落」も示す。対称ガラスの単位面積当たり重量は、非対称ガラスのものと同じである。非対称ガラスは、約2,500Hz~約8,000Hzの範囲のコインシデンス下落を有する。対称ガラスもコインシデンス下落を有するが、非対称ガラスよりも顕著ではなく、重要なこととして、対称ガラスのコインシデンス下落は、ほとんどの人間の最高感度範囲から外れた6,300Hzよりも高い周波数で発生する。
【0031】
図4のそれぞれの線グラフを比較すると、1.4mm/1.4mmの対称ガラスは、2.1mm/0.7mmの非対称ガラスと同じ軽量化をもたらすが、音波減衰では対称ガラスの方に重要な強みがあることが分かる。人間の最高感度周波数範囲では、対称ガラスの音波減衰の方が非対称ガラスに比べて約5dB大きい。
【0032】
また、コスト面でも、対称ガラスの方に非対称ガラスに勝る重要な強みがある。対称ガラスは、内側透明体及び外側透明体の両方に1.4mmガラスを使用する。1.4mmガラスと比べると、非対称ガラスで使用される0.7mmガラスは、1.4mmガラスよりも高価な原料を必要とし、多くの加工ステップを伴う。具体的に言えば、1.4mmガラスは熱焼戻しによって強化できるのに対し、一般に0.7mmガラスは、(コストの低い熱焼戻し工程とは対照的に)イオン交換工程を通じて強化される(コストの低いソーダ石灰ケイ酸ガラスとは対照的に)アルミノケイ酸塩ガラスを使用する。従って、対称ガラスは、比較的コストの高いガラス及び複雑な強化工程の必要性を避けることによって、非対称ガラスに比べてコストを削減する。
【0033】
開示する発明は、軽量化の利点を維持しながら、高度に非対称なガラスと比較した対称ガラスの音波減衰の改善という利点及びその他の利点を実現するための工程を含む。第1のステップにおいて、好ましい非対称ガラスを決定する。当業で周知の要因に従って、非対称ガラスの内側及び外側透明体の好ましい厚みの選択を行う。このような要因は、全体的ガラス強度、ガラス剛性、石衝撃耐性、及びこれらを組み合わせた要件を含む。
【0034】
非対称ガラス設計を選択した後に、非対称ガラスの透明体の全厚を決定する。この決定は、外側透明体の厚みを内側透明体の厚みに単純に加算することによって行うことができる。
【0035】
次に、外側透明シートと内側透明シートとの間にポリマー材料で形成された中間層を配置して積層スタックを形成する。積層スタックの外側透明シート及び内側透明シートは、それぞれ非対称ガラスの透明体の全厚の2分の1として決定された厚みと同じ厚みを有する。
【0036】
その後、オートクレーブ又はその他の加熱工程において積層スタックを加熱して、中間層が外側透明体及び内側透明体を接合して対称ガラスを形成するようにする。
【0037】
この工程を通じて、非対称ガラス設計の軽い重量と、人間の高感度範囲の音を大きく減衰させる利点とを有する対称ガラスを生産する。
【符号の説明】
【0038】
10 対称ガラス
12 外側透明シート
14 外側透明シートの第1の表面
16 外側透明シートの第2の表面
18 外側透明シート12の厚み
20 中間層
22 中間層の第1の表面
24 中間層の第2の表面
26 内側透明シート
28 内側透明シートの第1の表面
30 内側透明シートの第2の表面
32 内側透明シートの厚み
図1
図2
図3
図4