IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 内山工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-配管接続構造及び接続部材 図1
  • 特許-配管接続構造及び接続部材 図2
  • 特許-配管接続構造及び接続部材 図3
  • 特許-配管接続構造及び接続部材 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】配管接続構造及び接続部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20221107BHJP
   F16L 27/10 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
F16L5/00 A
F16L27/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018207251
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020070911
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】田中 武史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆介
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227701(JP,A)
【文献】特開2013-029169(JP,A)
【文献】特開2003-023718(JP,A)
【文献】特表2007-517167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であって、
前記接続部材は、弾性体からなり、前記第一配管の接続端部に外嵌され前記第一配管を密封するリップ部を有する第1保持部と、前記第二配管の接続端部に外嵌される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを備えた筒状体とされ、
前記第一配管の前記接続端部の外周面には、該外周面の一部を構成する内壁と、該内壁に対向して設けられる外壁と、底部と、開口部とを有する環状の凹部が設けられ、
前記内壁及び前記外壁に嵌合するように前記第1保持部が設けられ、前記底部から前記開口部に至るように前記外壁に沿ってスリット部が形成されており、
前記スリット部は、前記第1保持部が嵌合により圧縮変形されても、空気通路を確保できる隙間を有していることを特徴とする配管接続構造。
【請求項2】
それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であって、
前記接続部材は、前記第一配管の接続端部に外嵌され前記第一配管を密封するリップ部を有する第1保持部と、前記第二配管の接続端部に外嵌される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを備えた筒状体とされ、
前記第一配管の前記接続端部の外周面には、該外周面の一部を構成する内壁と、該内壁に対向して設けられる外壁と、底部と、開口部とを有する環状の凹部が設けられ、
前記内壁及び前記外壁に嵌合するように前記第1保持部が設けられ、前記底部から前記開口部に至るように前記外壁に沿ってスリット部が形成されており、
前記第1保持部は、その内周面に前記リップ部が複数設けられるとともに、その外周面は前記外壁に当接する平坦部とされていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1保持部は、その内周面に前記リップ部が複数設けられるとともに、その外周面は前記外壁に当接する平坦部とされていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の配管接続構造に用いられる接続部材であって、
前記第一配管の接続端部に装着される第1保持部と、前記第二配管の接続端部に装着される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを有していることを特徴とする接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造及びこれに用いられる接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用インバータには、インバータケース内に冷却媒体が流通する内部配管が組み込まれ、該内部配管には、インバータケースの壁体に設けられた貫通孔に通じて例えばコンバータに繋がる外部配管が接続される。このような内部配管と外部配管とを接続する接続部材に関するものとして、下記特許文献1が挙げられる。
下記特許文献1には、2本の配管のそれぞれに装着される2個の把持部と、2個の把持部を繋ぐ繋ぎ部とを有した接続部材を用いた配管接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-227701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような配管に接続部材を組み付ける際には、シール性を確保するため、第1保持部が配管の接続端部に強固に外嵌される設計になっているため、挿入性をよくするための助剤を塗布する場合もある程に挿入しにくい構造になっている。しかし、挿入しやすい構造にするとシール性を確保し難くなり、また組付けが確実になされていないと、組付け部位に空気が残り、その空気が高温時に膨張する接続部材が抜けようとする反力が作用し問題となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、シール性を維持しながらも組付け性を向上し得る配管接続構造とこれに用いる接続部材とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る配管接続構造は、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であって、前記接続部材は、弾性体からなり、前記第一配管の接続端部に外嵌され前記第一配管を密封するリップ部を有する第1保持部と、前記第二配管の接続端部に外嵌される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを備えた筒状体とされ、前記第一配管の前記接続端部の外周面には、該外周面の一部を構成する内壁と、該内壁に対向して設けられる外壁と、底部と、開口部とを有する環状の凹部が設けられ、前記内壁及び前記外壁に嵌合するように前記第1保持部が設けられ、前記底部から前記開口部に至るように前記外壁に沿ってスリット部が形成されており、前記スリット部は、前記第1保持部が嵌合により圧縮変形されても、空気通路を確保できる隙間を有していることを特徴とする。
また、本発明に係る他の配管接続構造は、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であって、前記接続部材は、前記第一配管の接続端部に外嵌され前記第一配管を密封するリップ部を有する第1保持部と、前記第二配管の接続端部に外嵌される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを備えた筒状体とされ、前記第一配管の前記接続端部の外周面には、該外周面の一部を構成する内壁と、該内壁に対向して設けられる外壁と、底部と、開口部とを有する環状の凹部が設けられ、前記内壁及び前記外壁に嵌合するように前記第1保持部が設けられ、前記底部から前記開口部に至るように前記外壁に沿ってスリット部が形成されており、前記第1保持部は、その内周面に前記リップ部が複数設けられるとともに、その外周面は前記外壁に当接する平坦部とされていることを特徴とする。
また本発明に係る配管接続構造に用いられる接続部材であって、前記第一配管の接続端部に装着される第1保持部と、前記第二配管の接続端部に装着される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材は、上述の構成としたことで、シール性を維持しながらも組付け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材の一実施形態を示す要部を模式的に示した断面図である。
図2】同実施形態に係る第一配管と接続部材を説明するための図であり、同第一配管に接続部材を組み付ける前の状態を模式的に示す断面図である。
図3】(a)は同実施形態に係る第一配管の接続端部を模式的に示した正面図であり、(b)は同第一配管の接続端部を模式的に示した一部拡大斜視図である。
図4】(a)~(d)は同実施形態に係る第一配管の接続端部に設けられた凹条部のスリット部のバリエーションを模式的に示す一部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0010】
本実施形態に係る配管接続構造は、壁体101の貫通孔10において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管1及び第二配管2を接続部材3を介して接続する配管接続構造である。接続部材3は、第一配管1の接続端部1aに外嵌され第一配管1を密封する内周リップ部32を有する第1保持部30と、第二配管2の接続端部2aに外嵌される第2保持部40と、第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ繋ぎ部50とを備えた筒状体とされる。第一配管1の接続端部1aの外周面1aaには、該外周面1aaの一部を構成する内壁11aと、該内壁11aに対向して設けられる外壁11bと、底部11cと、開口部11dとを有する環状の凹部11が設けられ、内壁11aと外壁11bに嵌合するように第1保持部30が設けられ、底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿ってスリット部13が形成されている。
【0011】
本実施形態の配管接続構造は、例えば自動車用電子機器を冷媒によって冷却する冷却器の冷却パイプと外部ホースとを接続する構造として適用することができる。この場合、冷媒の漏洩防止だけでなく外部からの雨水等の浸入、車両等を高圧洗浄する際の水の噴射にも耐えられ、さらには配管が偏心しても維持できるシール性が求められる。そしてこのようなシール性を有するとともに、上述のとおり、組付け性の向上を図ることも求められる。以下では、自動車用インバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とを接続部材3によって接続する配管接続構造について説明する。
【0012】
自動車の駆動源として電動機を備えたものの場合、電動機の動作はインバータにより制御されている。電動機はバッテリから電力を得て駆動力を発生するモータ等として働き、インバータは、バッテリ等から供給される直流電源をスイッチング作用により交流電源に変換して電動機に電力の供給を行っている。このような自動車に用いられるインバータは大きな電力量を求められ、スイッチング素子等に大電流が流れるため、発熱量が多い。そこで、インバータを収容するインバータケース100内に冷却水や冷却液等の冷媒が流れる冷媒流路を構成し、インバータを冷却するシステムが採用されている。
【0013】
<配管接続構造>
インバータケース100は、上下に分割して構成された略直方体形状の箱体とされ、図1では壁体101として示す上ケースと下ケースとを備えている。インバータケース100は、断面視して略凹状の下ケースの上に断面視して略凹状の上ケースが被さるようにして接合されて構成されており、互いがボルト等の連結具で締結され一体とされる。インバータケース100はアルミニウム等の金属材等からなり、インバータケース100内には、インバータを冷却するための冷却水や冷却液などの冷媒を流通させるための冷媒流路が設けられ、第二配管2(冷却パイプ)は、その冷媒流路の一部を構成するように配設されている。上ケースと下ケースとの側壁には、両者が接合されインバータケース100とした際に貫通孔10が形成されるように向かい合う位置に半円形の切欠孔が形成されている。第二配管2は、図1に示すようにその接続端部2aの先側が、貫通孔10内に位置するように配されているので、インバータケース100の外側から貫通孔10を通じてインバータケース100の内部を覗くと、第二配管2の接続端部2aの先側を視認することができる。貫通孔10の形状は特に限定されるものではなく、第二配管2と接続される第一配管1(外部ホース)の形状、大きさに応じて形成されている。貫通孔10の径は、挿通される第一配管1の外径よりも大になるよう形成される。
なお、ここで第二配管2は、冷媒流路の一部を構成するものとして説明するが、これに限定されず、別途設けられる冷媒流路と連通するものであってもよい。また図中、Lはインバータケース100に設けられた貫通孔10の軸心を示し、L1は第一配管1の軸心、L2は第二配管2の軸心、L3は接続部材3の軸心を示す。よって、図1のように軸心L、軸心L1~L3が一致している状態が接続状態として望ましいが、本実施形態の接続構造はこれら軸心L~L3が偏心することを想定した構造である。
【0014】
<接続部材>
接続部材3は、第一配管1と第二配管2とを接続し、冷媒流路を形成するための部材であり、全体がエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等のゴム材、エラストマー、合成樹脂等からなる弾性体による筒状の成型体とされている。図2に示すように接続部材3は、第1保持部30と、第2保持部40と、繋ぎ部50とを有している。第1保持部30は、第一配管1の接続端部1aに被さるように外嵌されるとともに貫通孔10の内周面10aに内嵌される。第2保持部40は、第二配管2の接続端部2aに被さるように外嵌される。繋ぎ部50は、第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ部材であり、繋ぎ部50自体が弾性を備えているので、これによって、第一配管1、第二配管2が偏心しても、径方向の変位が可能となる。
第一配管1の外径は、第二配管2の外径より若干大とされ、これに伴い、第1保持部30の内径は、第2保持部40の内径より大とされている。よって、これら第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ繋ぎ部50は、第1保持部30から第2保持部40に向けて漸次縮径するテーパ形状とされている。
【0015】
<第一配管,第二配管>
第一配管1は、樹脂材等の中空の円筒状体からなり、インバータケース100内の冷媒流路となる第二配管2へ冷媒を送り込むよう構成されている。第二配管2は、樹脂材等の中空の円筒状体からなり、第一配管1から供給された冷媒が内部を流通する。
第一配管1の接続端部1aには、環状の凹部11と、凹部11のさらに外周に径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12とが設けられている。図1及び図2に示すように凹部11は、内壁11aと、内壁11aに対向して設けられる外壁11bと、底部11cと、開口部11dとを有し、内壁11a及び外壁11bに嵌合するように第1保持部30が設けられる。そして、底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿ってスリット部13が形成されている。
なお、図1は、凹部11に接続部材3の第1保持部30を嵌合させた状態で、貫通孔10に通じ接続部材3によって第一配管1と第二配管2とを接続させた状態を示しており、図2は、第一配管1に接続部材3を組み付ける前の状態を示している。
【0016】
凹部11の外壁11bに形成されるスリット部13は、空気通路となるように筋状の溝で軸方向(L1方向)に沿って形成されている。このようにスリット部13が、底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿って形成されているので、第一配管1に接続部材3の第1保持部30を組み付ける際に、スリット部13から空気が抜け、挿入しやすい。よって、第1保持部30の端部35を凹部11の底部11cまで確実に挿入することができ、組付け性がよいものとすることができる。またこのように確実に組付けができるので、凹部11内に空気が残らず、残空気や高温時の空気膨張によって抜けようとする力が作用することを防止できる。
スリット部13については、後に図示しながら、さらに詳述する。
【0017】
鍔部12は、第一配管1と第二配管2とが接続部材3によって接続された状態で、壁体101に当接するように貫通孔10よりも大きい径とされ、この鍔部12には、ビス等の固定具が挿通される挿通孔12a,12bが形成されている。そしてこの鍔部12に形成された挿通孔12a,12bに不図示の固定具を挿通し、壁体101の外側面に鍔部12を固着することにより外部配管である第一配管1が壁体101に固定される。
一方、第二配管2の接続端部2aの先側は、接続部材3が脱着され易いように若干径が他の部位より小さい傾斜した先側部2abを備えている。
なお、鍔部12に形成されている挿通孔12a,12bの形状、形成位置等は図例に限定されるものではない。
【0018】
<第1保持部>
第1保持部30は、内周リップ部32と、内周突部33と、外周リップ部31と、平坦部34と、端部35とを有している。内周リップ部32は、周方向に連続した環状のリップであり、第一配管1の外周面1aaに弾接し、内周リップ部32は弾性変形した状態で凹部11に嵌合される。内周突部33は、内周リップ部32に隣接して設けられている。外周リップ部31は、周方向に連続した環状のリップであり、貫通孔10の内周面10aに曲げ変形に伴う締め代を有して弾接する。平坦部34は、凹部11の外壁11bに沿って当接するように平坦に形成されている。端部35は、凹部11の底部11cに沿って当接するように平坦に形成されている。
【0019】
図2に示すように外周リップ部31の突出量は、内周リップ部32の突出量より大とされている。内周リップ部32は、複数、並んで設けられ、複数の内周リップ部32,32が配された内周側の領域を内シール領域S1という。また外周リップ部31が配された外周側の領域を外シール領域S2という。これら内シール領域S1と外シール領域S2とは、径方向に重ならない位置に設けられ、内シール領域S1が一方の配管、すなわち第一配管1に外嵌され、外シール領域S2が貫通孔10に内嵌される。
【0020】
内周突部33は、内シール領域S1に設けられた内周リップ部32,32に隣接して設けられ、外周リップ部31が形成された位置に対応する内周面30aに形成されている。内周リップ部32は、図1に示すように、弾性変形し倒れる程の長さを有して形成され、内壁11aに弾接する弾接部分が先細の断面山型形状に形成されている。
【0021】
第1保持部30の外周面30bには、貫通孔10の内周面10aに弾性変形した状態で当接する外周リップ部31が設けられている。外周リップ部31は、図2に示すように第一配管1の挿入方向に対して反対側となる一方の面31Aは直線状をなし、他方の面31Bは先端部に向けて次第に先細になる傾斜状をなしている。一方の面31Aの外周リップ部31の基部には、貫通孔10の内周面10aに弾接する際に外周リップ部31の屈曲点となる屈曲部31bを有している。屈曲部31bは、外周面30bから一方の面31Aへと傾斜して形成された傾斜部31aと一方の面31Aとの交点とされる。また外周リップ部31は、図1に示すように倒れた状態に変形して貫通孔10の内周面10aに弾接する。
【0022】
<スリット部>
第1保持部30が嵌合される凹部11に形成されたスリット部13に関し、図3図4を参照しながら、さらに説明する。
図3(a)及び図3(b)に示すスリット部13は、外壁11bに適宜間隔を空けて、凹部11の底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿って複数形成されている。スリット部13は、正面視において半円形状に凹状に形成されている。ここではスリット部13が複数設けられた例を示しているが、一本であってもよい。スリット部13は、第1保持部30の内シール領域S1のように締め代を持って弾接するようなリップが形成されていない面と弾接する面のどこかに形成されていればよい。
このようにスリット部13が凹部11の底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿って形成されたものとすれば、第1保持部30を嵌合する際にスリット部13から空気が抜け、接続部材3の第1保持部30を第一配管1の外周面1aa(凹部11の内壁11aにも相当する)に挿入しやすい。
【0023】
スリット部13の形状は図3(a)及び図3(b)に限定されず、図4(a)~(d)に示すように第1保持部30が嵌合により圧縮変形されても、空気通路Dを確保できる隙間を有するように形成されていればよい。図中、2点鎖線は、外壁11bに弾接する第1保持部30を示している。なお、図3(a)及び図3(b)の例も第1保持部30が嵌合により圧縮変形されても、空気通路を確保できる隙間を有していることはいうまでもない。
図4(a)は、スリット部13が正面視においてV字状に凹状に形成された例である。
図4(b)は、スリット部13が正面視において略台形状に凹状に形成された例であり、溝底13a側の寸法が開口13b側の寸法より小さく形成されている。
図4(c)は、スリット部13が正面視において略長方形状に凹状に形成された例であり、溝底13a側の寸法と開口13b側の寸法とが略同じ寸法に形成されている。
図4(d)は、スリット部13が正面視において略長方形状の凹所13dの略中央に略半円形状の突部13cが形成された例である。この突部13cは外壁11bの深さ方向(軸方向L1)に沿って連続して形成されていてもよいし、断続的に形成されるものとしてもよい。
図4(a)~図4(d)に示すようにスリット部13の形状は第1保持部30が嵌合により圧縮変形されても、空気通路Dを確保できる隙間を有するように形成されていれば、特に限定されるものではない。このように第1保持部30を凹部11に組み付けた後でも空気通路Dが確保されたものとすれば、上述のように挿入性が向上するだけでなく、例えば接続部材3を第一配管1に挿入し組付ける際に挿入しやすいよう挿入助剤を塗布する場合であっても、空気通路Dが形成されるので、組付け後、乾燥させることができる。
【0024】
<繋ぎ部>
繋ぎ部50は、第一配管1の接続端部1aに装着される第1保持部30と、第二配管2の接続端部2aに装着される第2保持部40とを繋ぎ、弾性変形可能とされている。第1保持部30及び第2保持部40は第一配管1及び第二配管2の径に応じて互いに径が異なるため、繋ぎ部50はテーパ形状とされている。
【0025】
繋ぎ部50には、外周リップ部31の挿入方向側(第2保持部40側)に隣接して断面山型形状で且つ貫通孔10の内周面10aに弾接する外周突部51が設けられている。外周突部51は、周方向に沿って連続して形成されているものとしてもよいし、適宜間隔を空けて形成されているものとしてもよい。外周突部51は、外周リップ部31より小さい突出量の断面山型形状に形成されている。
【0026】
<第2保持部>
第2保持部40の内周面40aは、第二配管2の外周面2aaに当接され環状のリップ部42が設けられたリップ形成領域A(図2参照)を有している。この内周面40aに形成されたリップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bには、底部41bと一対の溝壁部41a,41aとを有する環状の凹条部41が設けられている。凹条部41は周方向に沿って環状に形成されており、凹条部41には、第二配管2への嵌合を補強する補強リング4が嵌合した状態で収容されている。補強リング4は金属材、合成樹脂材等からなる環状体であり、凹条部41の溝深さ及び溝幅の寸法に応じて形成されている。リップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bに補強リング4が配される。
【0027】
接続部材3の他方端3b側には、リップ部42に隣接して、突部43が形成されている。突部43は、周方向に沿って連続して形成され、第二配管2に接続部材3を挿入しやすいように、その頂部は、挿入方向とは反対側に傾斜した断面山型形状に形成されている。突部43は、第二配管2の外周面2aaに弾接するように形成されている。突部43の突出量及び隣接するリップ部42との間隔は、突部43が第二配管2の外周面2aaに嵌合され頂部が若干弾性変形し、リップ部42側に倒れた際でも、リップ部42には当接しない程度の突出量及び間隔を空けて形成されることが望ましく、リップ部42の突出量よりも突部43の突出量の方が小さい構造としている。
【0028】
第2保持部40に設けられた凹条部41の底部41bは、補強リング4の内周面4aに当接する当接部41baと、補強リング4の内周面4aに当接しない凹状の窪み部41cとを有している。当接部41baは、リップ部42の繋ぎ部50側(接続部材3の一方端3a側)の基部42aに対応する位置に形成され、窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側(接続部材3の他方端3b側)の基部42bに対応する位置に形成されている。
【0029】
複数のリップ部42は、いずれも同大同形の断面山型形状でなり、周方向に沿って環状に形成されている。当接部41baは、リップ部42の頂部42cに対応する位置及びリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置を含んで形成されている。
【0030】
また窪み部41cは、リップ部42が形成されていない部位に対応する位置に形成されている。具体的には、図1図2に示す例は、窪み部41cが計3個形成されており、そのうち、最も繋ぎ部50に設けられた窪み部41cは、繋ぎ部50側に配されたリップ部42の頂部42cに対応する位置から、隣接するリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置まで形成されている。また繋ぎ部50側から2つ目に形成された窪み部41cも、繋ぎ部50側に配されたリップ部42の頂部42cに対応する位置から、隣接するリップ部42の繋ぎ部50側の基部42aに対応する位置まで形成されている。そして最も反繋ぎ部側、すなわち他方端3bに設けられた窪み部41cは、最も反繋ぎ部側に配されたリップ部42の頂部42cに対応する位置から、最も反繋ぎ部側に配されたリップ部42の基部42bに対応する位置よりも、さらに他方端3b側まで形成されている。
【0031】
第2保持部40に設けられたリップ部42,42,42は、一定の距離(間隔)を空けて形成されている。リップ部42,42,42の突出量は、隣接するリップ部42,42間の距離より大とされる。リップ部42は、第二配管2に対し、締め代を持って弾接するよう構成され、隣接するリップ部42,42間の距離は、リップ部42の締め代より大とされる。
【0032】
続いて、前記のように構成された接続部材3を用いて、第一配管1及び第二配管2を貫通孔10において接続する要領を説明する。
<接続要領>
まず、第一配管1の凹部11に接続部材3の第1保持部30を嵌合し、第一配管1に接続部材3を組み付けた状態とする。このとき、凹部11の外壁11bには、スリット部13が形成されているため、スリット部13から空気が抜け、挿入しやすい。またスリット部13から空気が抜けるので、第1保持部30の端部35を凹部11の底部11cまで確実に挿入することができる。
この組み付け時に内周リップ部32は、底部11cから11dに向かって斜めに倒れた状態に弾性変形する。
この前に接続部材3に補強リング4を予め第2保持部40の凹条部41に嵌合させ収容しておいてもよい。このとき、補強リング4が収容される凹条部41に窪み部41cが形成されているので、補強リング4の接触面が少なくなり、摩擦による抵抗が低減され、補強リング4が組付けやすい。
【0033】
そして、壁体101の貫通孔10に外部より接続部材3、続いて第一配管1を挿通させていく(図1の白抜き矢印方向参照)。接続部材3の他方端3bが、第二配管2の接続端部2aに至り、はじめに突部43の頂部が、第二配管2の先側部2abに弾接する。先側部2abは、第二配管2の他部位より、径が小さく漸次拡径するように傾斜して形成されているので、挿入方向とは反対側に傾斜した突部43はスムーズに弾性変形する。そして、次いで他方端3b側に配置されたリップ部42が第二配管2の外周面2aaに弾接して、圧縮されながら弾性変形し、斜めに傾斜した状態で第二配管2に被さるように外嵌される。
【0034】
そして、第一配管1の鍔部12が壁体101に当接する程度まで、接続部材3を第二配管2に向けて挿通させていく。すると、貫通孔10の内周面10aに外周リップ部31が弾接した状態となる。このとき、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。またこのとき、繋ぎ部50が弾性を有して径方向に変位することができるので、貫通孔10の軸心Lと、第二配管2の軸心L2とに多少の芯ずれがあっても、繋ぎ部50の弾性変形によって吸収される。特に、繋ぎ部50はテーパ形状とされているから、繋ぎ部50自体が弾性体からなることと相俟って、偏心のずれ分の吸収が効果的になされる。さらに外周リップ部31は屈曲部31bを備えているので、貫通孔10の内周面10aに弾接される際、屈曲部31bを屈曲点として外周リップ部31を急激に折れるように屈曲させることできる。これにより、貫通孔10に第一配管1を挿入するときの挿入荷重を下げることができ、挿入性能を高めることができる。
最後に、第一配管1の鍔部12の挿通孔12a,12bに固定具(不図示)を挿通し、固定具によって壁体101に固定すれば、2本の配管1,2の接続が完了する。
【0035】
この接続部材3による接続状態では、第1保持部30の第一配管1に対する外嵌部分及び第2保持部40の第二配管2に対する外嵌部分には、それぞれ環状の内周リップ部32、リップ部42が圧縮状態で介在するので、シール性の高い接続構造とすることができ、第一配管1と第二配管2との間を、冷媒が接続部材3を介して流通可能となる。また、第1保持部30と貫通孔10との間に環状の外周リップ部31が圧縮状態で介在することによって、貫通孔10を通じたインバータケース100の内外がシールされ、貫通孔10を通じて外部から塵埃等がインバータケース100内に侵入することを防止できる。
【0036】
次いで、前記のように接続された第一配管1を引き抜く際の引き抜き要領を説明する。
<引き抜き要領>
まずは、第一配管1の鍔部12の挿通孔12a,12bに挿通され、第一配管1を壁体101に固定する固定具を外し、第一配管1の鍔部12等をつかんで第二配管2から引き離す方向、すなわち引き抜き方向に力を加える。すると、リップ部42,突部43及び外周リップ部31が反転して、これらの頂部が挿入方向に倒れた状態となる。このとき、凹条部41に窪み部41cが設けられているので、引き抜き時に発生するリップ部42の面圧を低減することができる。また複数のリップ部42が所定の距離(間隔)を空けて形成され、リップ部42は所定の突出量で形成されているので、隣り合うリップ部42,42同士の相互の固着が発生せず、リップ反力が上昇することもない。よって、引き抜き荷重の上昇を防止できる。
そして、上述の状態で、そのまま引く抜き方向に力を加えていけば、接続部材3が第二配管2から離脱し、第一配管1とともに接続部材3も、第二配管2からスムーズに引き抜くことができる。
【0037】
なお、前記実施形態では、自動車用インバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とを接続部材3によって接続する配管接続構造及びこれに用いられる接続部材3に適用した例について述べたが、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であれば、他の配管接続構造にも同様に適用可能である。また、接続部材3の構成も一例であって、図例に限定されるものではなく、リップ部42,突部43,外周リップ部31,内周リップ部32,内周突部33,外周突部51の個数・形状(突出量、突出幅等)等も図例に限定されるものではない。さらに図示していないが、例えば第2保持部40に設けられる当接部41ba及び窪み部41cの構成も図例に限定されず、当接部41ba及び窪み部41cの形成面積に大小があってもよいし、リップ部42の形成個数と一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0038】
100 インバータケース
101 壁体
10 貫通孔
10a 内周面
1 第一配管
11 凹部
13 スリット部
1aa 外周面
2 第二配管
3 接続部材
30 第1保持部
30b 外周面
31 外周リップ部
40 第2保持部
50 繋ぎ部
51 外周突部
図1
図2
図3
図4